説明

照明光学系およびそれを用いた画像投射装置

【課題】 被照射面を光量損失の少ない明るく効率良く照明することができる照明光学系を得ること。
【解決手段】 光源手段から出射した光束を収斂光として出射する光束集光手段と、
第1断面において、光束集光手段から出射する収斂光を複数の平行光束に変換する第1レンズアレイと、第1断面と垂直な第2断面において、複数の収斂光束を複数の平行光束に変換する第2レンズアレイと、偏光分離面とを有し、第1レンズアレイのレンズセルの表面と第2レンズアレイのレンズセルの表面と、第1断面において、第1レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面と、第2レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面と、第2断面において、第1レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面と、第2レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面との位置を適切に設定したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源手段から射出された光束を用いて被照明面を照明する照明光学系に関する。さらにはその照明光学系を用いて被照明面に設けた液晶パネル等の画像表示素子を照明し、画像表示素子からの光をスクリーン等の被投影面に投影する画像投射装置(液晶プロジェクター等)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子などの画像表示素子を用いて画像情報に対応して変調された光束を投射レンズによってスクリーンなどに拡大投射する構成のプロジェクター(画像投射装置)が種々と提案されている(特許文献1)。
【0003】
図16は、特許文献1に開示されている画像投射装置の概略図である。
【0004】
図16の画像投射装置では、光源102からの光を第1のフライアイレンズ301で複数の光束に分割し、射出光の光束を所定方向について狭めている。そして第1のフライアイレンズ301から射出した光を第2のフライアイレンズ302で集光している。
【0005】
そして第2のフライアイレンズ301からの光束を色分解系107、平行化レンズ108を介して液晶パネル109を照明している。
【0006】
図16に示す画像投射装置では、第1のフライアイレンズ301の周辺部のセルは、曲率半径の中心が、第1フライアイレンズ301の中央部方向に偏心している。これにより、該所定方向には、第1のフライアイレンズ301から射出した後、光束の幅が狭まって第2フライアイレンズ302に入射することになり、色分離系107に入射する光の角度も小さくなる。この光学系は、色分離系107の偏光分離膜の面に入射する光の角度範囲も狭くなるため、画像コントラスト特性が良い。
【特許文献1】特開平07−181392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の照明光学系では、所定方向の光束を第1フライアイレンズ301で圧縮しているが、図16に示すように、第1フライアイレンズ301の隣合うセルの間に、段差が生じている。
【0008】
フライアイレンズの成型上、図16のように各セルに段差がある場合、加工が難しい上、その段差によって照明光束がケラレてしまうため、照明効率が低下してしまう。
【0009】
本発明は、被照射面を光量損失の少ない明るく効率良く照明することができる照明光学系の提供を目的とする。
【0010】
この他、本発明は明るく高いコントラストを有する画像を投射することができる画像投射装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の照明光学系は、被照明面を照明する照明光学系であって、
光源手段から出射した光束を収斂光として出射する光束集光手段と、
前記照明光学系の光軸を含む第1断面において、前記光束集光手段から出射する収斂光を複数の平行光束に変換する第1レンズアレイと、
前記照明光学系の光軸を含み前記第1断面と垂直な第2断面において、前記第1レンズアレイから出射する複数の収斂光束を複数の平行光束に変換する第2レンズアレイと、
前記第2レンズアレイから出射した複数の光束を前記被照明面に導く偏光分離面と、
を有する照明光学系であって、
前記光束集光手段と前記第1、2レンズアレイは、前記光束集光手段に入射する光束を圧縮しており、
前記第2断面は、前記偏光分離面の法線と平行であり、
前記照明光学系の光軸上における、前記第1レンズアレイのレンズセルの表面と前記第2レンズアレイのレンズセルの表面との距離をL0、
前記第1断面において、前記第1レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面と、前記第2レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面との、前記光軸方向の距離をL1、
前記第2断面において、前記第1レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面と、前記第2レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面との、前記光軸方向の距離をL2とするとき、
L0とL1のうち距離が長い方を距離が短い方で割った値が1より大きく1.2より小さい、及び/又は、L0とL2のうち距離が長い方を距離が短い方で割った値が1より大きく1.2より小さいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被照射面を光量損失の少ない明るく効率良く照明することができる照明光学系が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施例の照明光学系は、被照明面を照明する照明光学系であって、光束集光手段と、第1レンズアレイと、第2レンズアレイと、偏光分離面(偏光分離素子、偏光分離プリズム)とを備えている。ここで、光束集光手段は、光源手段から出射した光束を収斂光として出射する。第1レンズアレイは、複数のレンズセルで構成されており、照明光学系の光軸を含む第1断面において、光束集光手段から出射する収斂光を複数の平行光束に変換する。第2レンズアレイは、複数のレンズセルで構成されており、照明光学系の光軸を含み第1断面と垂直な第2断面において、第1レンズアレイから出射する複数の収斂光束を複数の平行光束に変換する。偏光分離面(偏光分離素子)は、第2レンズアレイから出射した複数の光束を被照明面(画像表示素子、液晶パネル)に導いている。ここで、光束集光手段と第1、2レンズアレイは、光束集光手段に入射する光束を圧縮している(光束集光手段から出射する時点での光束径を狭めて平行光束として出射している)。また、前述の第2断面は偏光分離面の法線と実質的に平行である。尚、第1断面は偏光分離面の法線とは非平行である。ここで、照明光学系の光軸上における、第1レンズアレイのレンズセルの表面と第2レンズアレイのレンズセルの表面との距離をL0とする。また、第1断面において、第1レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部の(最も光軸から遠い)レンズセルの表面と、第2レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面との、光軸方向の距離をL1とする。また、第2断面において、第1レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面と、第2レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面との、光軸方向の距離をL2とする。このとき、L0とL1のうち距離が長い方を距離が短い方で割った値が1より大きく1.2より小さく、L0とL2のうち距離が長い方を距離が短い方で割った値が1より大きく1.2より小さい点が本実施例の特徴である。
【0014】
次に、L1とL2とL0が、以下の条件式のうちいずれか1つ以上を満足すると好ましい。
【0015】
0.9<L2/L1<1.1
1<L1/L0<1.2
1<L2/L0<1.2
また、第1断面内と第2断面内の光束の圧縮率を各々β、αとするとき
α<1
β<1
α<β
を満足すると好ましい。
【0016】
第1及び第2レンズアレイは、レンズセルが構成された面が互いに外側を向いている、或いは互いに向かい合っているように構成すると好ましい。
【0017】
また、第1レンズアレイ及び第2レンズアレイの中央部を除いた各レンズセルの曲率中心位置が、各レンズセルの中心に対して第1断面あるいは第2断面内において、光軸から離れる方向に偏心していることが望ましい。
【0018】
また、本実施例の画像投射装置は、画像表示素子と、画像表示素子を照明する前述の照明光学系とを備えている。更に、画像表示素子の画像を投影する投射光学系を有していると尚好ましい。
【0019】
以下に図面を用いた各実施例1、2、3を詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の照明光学系を有する画像投射装置の実施例1の中心軸O(光軸La)を含む断面における要部概略図である。図2は図1の中心軸0の(光軸La)を含み紙面に直交する断面内の要部概略図である。
【0021】
本実施例の照明光学系は、光源手段と、光源手段から出射した光束を収斂光(収斂光束、集光光束)として出射する光束集光手段と、光束集光手段からの光束を平行光束とし出射する平行化手段とを有している。
【0022】
更に平行化手段からの光束の偏光状態を揃えて出射する偏光変換素子と、偏光変換素子からの偏光状態の揃った光束を集光する集光レンズとを備えている。更に、集光レンズからの光束を被照射面に設けた画像表示素子に入射させる偏光分離面を有する偏光分離手段とを有している。ここで、前述の偏光分離手段が持つ偏光分離面の法線は、yz平面(第2断面)と平行であり、xz平面(第1断面)とは非平行である。また、偏光変換素子が持つ偏光分離面の法線は、xz平面(第1断面)と平行であり、yz平面(第2断面)とは非平行である。
【0023】
図1、図2において1は光源手段であり、高圧水銀ランプ(メタルハライドランプ等でも構わない)の白色光を放射する光源である。2はリフレクターであり、光源手段1からの光束を効率良く反射する回転楕円面(凹面鏡)から成っている。
【0024】
3は集光レンズであり、リフレクター(光束集光手段)2からの光束を集光している。リフレクター2と集光レンズ3は光束集光手段の一要素を構成している。
【0025】
4は第1レンズアレイ(第1フライアイレンズ)であり、集光手段3からの光束を複数の光束に分割している。5は第2レンズアレイ(第2フライアイレンズ)であり、第1レンズアレイ4に対応して配置されている。
【0026】
第1、第2レンズアレイ4、5は平行化手段の一要素を構成している。ここで、平行化とは、レンズアレイのレンズセルの中心に入射した光束が光軸に対して平行な光束にすることを意味している。別の言い方をすれば、平行化とは、複数に分割された各光束の主光線(中心光線)が照明光学系の光軸と平行になるように変換することを意味している。
【0027】
6は偏光変換素子(偏光ビームスプリッター)であり、偏光分離面を有し、それによって所定の偏光状態の光を反射し、それと直交する偏光状態の光を透過させている。尚、この偏光変換素子が有する偏光分離面の法線は、図1に記載したようにxz断面(第1断面)と(実質的に)平行である。
【0028】
7は第1のコンデンサーレンズである。8は第2のコンデンサーレンズである。第1、第2コンデンサーレンズ7、8は集光レンズを構成している。9は偏光分離素子(偏光分離プリズム)である。
【0029】
10は被照射物体(画像表示素子)としての反射型の液晶パネル(ライトバルブ、以下「パネル」とも言う)である。
【0030】
Prは投射光学系であり、パネル10に基づく画像情報をスクリーン(所定面上)Sに投射している。
【0031】
図1、図2のx、y、z軸の方向について説明する。偏光分離プリズム9に関し、偏光分離面11の法線と照明光束の中心軸0によって規定される面が第1平面(第1断面、yz平面)であり、図2に示す断面である。この第1平面と平行で中心軸0と直交する方向をy軸方向とする。y軸と中心軸0の両方に直交する方向をx軸方向とする。前記照明光束の中心軸0をz軸方向とする。
【0032】
x軸方向と中心軸0を含む面は第2平面(第2断面)である。図1は、実施例1のxz断面(第2平面、第2断面)における構成図であり、図2はyz断面(第1断面)における構成図である。
【0033】
パネル10が長方形状のときは、x軸方向が長辺方向、y軸方向が短辺方向である。
【0034】
平行化手段は図1の第2断面内において、光束集光手段2、3からの光束を平行光束とする複数のレンズセルを2次元的に配列した第1レンズアレイ4を有している。
【0035】
更に、図2の第1断面内において光束集光手段2、3からの光束を平行光束とする複数のレンズセルを2次元的に配列した第2レンズアレイ5と、を有している。
【0036】
光束集光手段2、3と、平行化手段4、5は第1断面内と第2断面内とで異なる圧縮率で光束を圧縮している。
【0037】
第1、第2レンズアレイ4、5は、それぞれにおいて複数のレンズセルが2次元的に配置されて構成されている。
【0038】
図3は第1レンズアレイ4の斜視図、図4は第2レンズアレイ5の斜視図を示している。第1及び第2レンズアレイ4、5はレンズアレイ側の面が互いに外側を向いている。
【0039】
図5、図6は第1レンズアレイ4の説明図である。
【0040】
第1レンズアレイ4はx方向に関して、各セルの曲率中心位置Pが中心軸0に対して外側に偏心している。
【0041】
また、本実施例においては、レンズアレイ周辺部で各セル16、17、18の曲率中心位置Pが外側に偏心しているために、各セル16、17、18の厚みを一定にした場合には、図5の実線部のような段差を持つ形状となる。
【0042】
図5の段差19について、この段差をなくすために、セルの厚みを増すようにしたのが、図の点線である。セル16がセル12のように光軸方向にシフトされる。同様にセル17、18がセル13、14のようにシフトされる。
【0043】
このようにして、レンズアレイの各セルは外周部へいくほど厚みが増すような構成となる。
【0044】
第2レンズアレイ5の各セルについては、図4に示すようにy方向に関して第1レンズアレイ4と同様に、周辺部へいくほど各セルの厚みが増すような構成となっている。
【0045】
以上のように本実施例では、第1レンズアレイ4及び第2レンズアレイ5は、中央部を除いた各セルは該セルの曲率中心位置が第1断面又は第2断面において、照明光学系の光軸0に対して離れるように外側に偏心している。
【0046】
図22は偏光変換素子6の一部分の説明図である。
【0047】
偏光変換素子6は、平行化手段の光出射側又はその光路中に設けて用いられる。
【0048】
偏光変換素子6は、複数の偏光分離面6aと、複数の反射面6bと、複数の1/2波長板6cとを有する。
【0049】
ここでの偏光変換素子6は、具体的には、偏光分離面6aと反射面(偏光分離面でも可)6bと1/2波長板6cとを1セットとし、このセットを複数個配列した(光軸に対して略直交する方向に)アレイ状の光学素子(偏光変換素子)である。
【0050】
従って、ここでの偏光変換素子6は、偏光変換素子アレイと称しても良い。この偏光変換素子6において、各偏光分離面6aに入射した光のうち所定の偏光方向を有する偏光成分はこれを透過して偏光変換素子6から射出する。
【0051】
一方、各偏光分離面6aに入射した光のうち上記所定の偏光方向に直交する偏光方向を有する偏光成分は、該偏光分離面6aで反射し、さらに反射面6bで反射する。そして、1/2波長板6cでその偏光方向が90度変換されて偏光変換素子6から射出する。
【0052】
こうして、偏光変換素子6は、入射した無偏光光を所定の偏光方向を有する直線偏光に変換して射出する。
【0053】
ここで、1/2波長板6cは偏光分離面6aを透過した光の光路上にのみ配置していても構わない。また、この偏光変換素子6は、各色ごと(各パネルに対応する波長領域ごと)に無偏光を直線偏光にすれば良く、それらの直線偏光の方向は必ずしも同一である必要は無い。
【0054】
光源手段1から発せられた光は、反射面が放物面形状のリフレクター2により反射され、平行光として集光レンズ3に入射する。集光レンズ3に入射した光は、正の屈折力によって収束光として第1レンズアレイ4に入射する。第1レンズアレイ4に入射した光は、複数のレンズセルによって複数の光束に分割され、第2レンズアレイ5を介して偏光変換素子6の光入射面又はその近傍に複数の光源像(2次光源像)を形成する。
【0055】
複数の集光された光源像に基づく光束は、偏光変換素子6を透過し、所定の偏光方向に偏光が揃えられ、出射して第1のコンデンサーレンズ7及び第2のコンデンサーレンズ8で集光される。そして偏光分離プリズム9を透過し、複数の光源像に基づく光束は各々パネル10面において重ね合わされてパネル10を照明する。
【0056】
これにより、液晶パネル10は均一な分布を有する照明光束によって照明される。液晶パネル10において画像変調及び反射された光は、偏光ビームスプリッタ9の偏光分離面11で反射されて投射レンズ(投射光学系)Prに導かれる。
【0057】
本実施例では、液晶パネル10を1枚のみ示しているが、実際の一般的なカラープロジェクタでは、1枚以上の画像表示素子としてR、G、B色光に対応した3つの液晶パネルが設けられる。
【0058】
偏光ビームスプリッタ9は、これら3つの液晶パネルに対してR、G、Bの各色照明光を導き、3つの液晶パネルからの各色画像光を合成する、いわゆる色分解合成光学系の一部を構成する。
【0059】
本実施例では、楕円リフレクター2で反射した収束光束(収斂光)は、図1のXZ断面では第1レンズアレイ4で平行光束としている。又、図2のYZ断面では第2のレンズアレイ5で平行光束としている。
【0060】
すなわち、XZ断面においては楕円リフレクター2と第1レンズアレイ4とによって構成される圧縮系(平行化手段)によって光束を圧縮している。またYZ断面においては楕円リフレクター2と第2レンズアレイ5とによって構成される圧縮系(平行化手段)によって、光束を圧縮している。
【0061】
このように、本実施例では、楕円リフレクター2から収束光束を射出させ、楕円リフレクター2から第1および第2レンズアレイ4、5までの距離差を利用して、xz断面よりも大きな光束圧縮率(平行化倍率)をyz断面で得ている。
【0062】
これにより、偏光分離プリズム9における光束角度分布に敏感な方向(yz断面)での光束角度分布を小さくして明るさむらやコントラスト低下を抑制しつつ、明るい画像を投射している。
【0063】
偏光分離プリズム9における光束角度分布に鈍感な方向(xz断面)についても光束角度分布を小さくすることで、この方向での光束角度分布が大きい場合に比べれば、明るさむらやコントラスト低下に寄与することができる。
【0064】
本実施例では、液晶パネル10のパネル面に対する入射光束の角度分布は、図2の液晶パネル10の短辺方向に平行なyz断面(第1断面)に比べて、図1の長辺方向に平行なxz断面(第2断面)の方が大きい。
【0065】
光源手段1と偏光分離プリズム9との間に設けられ、照明光学系における互いに直交する第1断面(yz断面)および第2断面(xz断面)においてそれぞれ光束を圧縮する平行化手段4、5を有する。
【0066】
そして、平行化手段4、5による光束の圧縮率(平行化倍率)は、第1断面と第2断面とで互いに異なっている。
【0067】
尚、光束の圧縮とは、光束集光手段2、3で光束径を縮小した後、平行化手段4、5で平行光束として出射することを言う。
【0068】
そして、圧縮率とは、平行化手段4、5を通過した後の幅L(LX、LY)を、光束集光手段2、3から出射した直後の光束の幅(光軸と垂直な方向の幅)Lrで割った値L/Lrをいう。
【0069】
ここで、第1断面(yz断面)における光束の圧縮率をβ、第2断面(xz断面)における光束の圧縮率αとする。
【0070】
このとき、
β=LX/Lr
α=LY/Lr
である。ここで、
α≠β
α<1、β<1
α<β
である。
【0071】
第1、第2レンズアレイ4、5の光学作用について説明する。図1、図2に示すように光源手段1から発せられた光は集光レンズ3に入射し、集光レンズ3に入射した光は、収束光となり、第1レンズアレイ4に入射する。
【0072】
図6に示すように、集光レンズ3を出射した光のうち第1レンズアレイ4における例えばセル21の中心部Aに入射する光線L0について説明する。セル21の曲率中心Pは点線O1上にあり、セル21の中心部Aに対してx軸方向に外側へ偏心している。
【0073】
この偏心によって、集光レンズから出射後の光L0はxz断面(図1面内)において照明系の光軸Oに略平行な光線L1となる。
【0074】
同様にして、第2レンズアレイ5についても、第2レンズアレイ5を透過後、yz断面(図2面内)において照明系の光軸Oに略平行な光線となる。
【0075】
また、集光レンズ3から第2レンズアレイ5までの距離が、集光レンズ3から第1レンズアレイ4までの距離よりも長い。
【0076】
このため、第1、第2レンズアレイ4、5を透過後の光束の幅に関し、y方向においてはx方向よりも狭まった光束となる。
【0077】
これにより、偏光分離プリズム9の偏光分離膜11に入射する光の角度範囲がy方向において狭くなるため、投射画像のコントラスト特性に有利となる。
【0078】
上記実施例のxz平面において、図1に示すように、第1レンズアレイ4と第2レンズアレイ5の対応する周辺部セルの光軸方向のセル間隔をL1、中心部セルのセル間隔をL0としたとき、
1.0<L1/L0<1.2 ・・・(1)
を満足する。
【0079】
好ましくは、
1<L1/L0<1.1
を満足するように構成すると良い。このとき、フライアイレンズの周辺部と中央部によるパネル面における照明範囲の差が小さくなるため、照明効率を高めることができる。
【0080】
また、yz平面において、図2に示すように、第1レンズアレイ4と第2レンズアレイ5の対応する周辺部セルの光軸方向のセル間隔をL2、中心部セルのセル間隔をL0としたとき、
1.0<L2/L0<1.2 ・・・(2)
を満足する。
【0081】
好ましくは、
1<L2/L0<1.1(2a)
を満足するように構成すると良い。
【0082】
このとき、フライアイレンズの周辺部と中央部によるパネル面における照明範囲の差が小さくなるため、照明効率を高めることができる。
【0083】
本実施例においては、上述の条件式(1)、(2)を共に満足しているが、その限りでは無く、条件式(1)、(2)のいずれか一方のみを満足し、他方を満足しなくても構わない。
【0084】
さらに、間隔L1と間隔L2について、
0.9<L2/L1<1.1 ・・・(3)
を満足するようにしている。
【0085】
ここで、
0.95<L2/L1<1.05 ・・・(3a)
を満足すると尚好ましい。
【0086】
尚、ここで、セル間隔L0、L1、L2等はセル間隔であるが、その間隔は、各レンズアレイを構成するレンズセル(微小レンズ)のレンズ面の頂点同士の間隔を指している。言い換えると、第1レンズアレイの2次元的に複数の微小レンズ面が構成されている側の面において、中心部(光軸に最も近い)或いは周辺部(光軸から最も遠い)に配置された微小レンズ面の頂点と、その微小レンズ面に対応する微小レンズ面の頂点との距離である。この「セル間隔」の定義は実施例2以降も同じである。
【0087】
次に条件式(3)の技術的意味を説明する。
【0088】
図7はレンズアレイの間隔を広げたときの照明エリアの変化を説明する図である。点Aから発せられ、第1レンズアレイ24の中央部セル33の周辺部に入射する光LAは、第2レンズアレイ25のレンズアレイ側の面の中央部セル36の中心位置OAに入射する。そしてコンデンサーレンズ26によって屈折され、パネル27に入射する。
【0089】
一方、レンズアレイ間隔が広いときの説明のために、第1レンズアレイ24を第2レンズアレイ25から離したときの第1レンズアレイ28を図7の点線で示している。
【0090】
この図のように、点Bから発せられた光LBは、第1レンズアレイ28の中央部セル30の周辺部で屈折し、光軸上の点OBを通過し、第2レンズアレイ25の中央部セル36に入射する。
【0091】
その後、コンデンサーレンズ26で屈折し、パネル面27に入射する。
【0092】
ここで、実線の光LAと比べて、点線の光LBのほうが、パネル27面で内側(光軸O側)に入射する。
【0093】
ここで、より詳細に説明するために、第2レンズアレイ25での光路の拡大図を図8に示す。
【0094】
光LA、LBは光軸Oに対して同じ傾きを持った状態(ここでは光軸Oに対して同じ角度θ0をなす状態)で、第2レンズアレイ25の出側面36に入射する。光LBは出射面36の点OB´で屈折し、光LAは出射面36の点OAで屈折するため、光LBの方が光LAよりも出射面36において大きく屈折する。ここで、その出射面36を出射した光LA’、LB’が、光軸0との成す角度をそれぞれθA、θBとする。
【0095】
このとき、
θA > θB
と言う関係が成り立つ。
【0096】
このため、図6の点線で示した光は、実線の光よりもコンデンサーレンズ26に対して浅い角度で入射するために、パネル面10でやや内側に入射する光となる。
【0097】
このことから、フライアイ周辺部において、第1及び第2レンズアレイ4、5の対応する各セルの、光軸方向のセル中心間距離が長い場合、レンズアレイ中央部よりも、パネル面での照明領域は狭まることが分かる。
【0098】
逆に、レンズアレイ周辺部において、第1及び第2のレンズアレイの対応する各セルの、光軸方向のセル中心間距離が短い場合、レンズアレイ中央部よりも、パネル面での照明領域は広がる。
【0099】
すなわち、レンズアレイのセル間隔が狭いときは、倍率が大きくなり、セル間隔が広いときは倍率が小さくなる。
【0100】
照明領域を最適化するにあたって、x方向の周辺部のセルと、y方向の周辺部のセルにおける照明倍率がなるべく同等であることが望ましい。
【0101】
その理由は以下の通りである。レンズセルによって照明倍率が異なる場合、最も倍率の小さいレンズセルの照明領域が、画像表示部(パネルの有効範囲)をカバーするようにする。このとき倍率の大きいレンズセルについては、パネル面上(被照明面上)における照明範囲がパネルの有効範囲よりも大きくなってしまうため、光量損失が発生してしまう。従って、中央部のレンズセル、x方向の周辺部のレンズセル、y方向の周辺部のレンズセルとで、倍率が同じである(なるべく同等)ことが望ましい。
【0102】
これらのことを考慮すると、x方向とy方向で、第1レンズアレイ4と第2レンズアレイ5の対応するセルの光軸方向の間隔が同等又はほぼ同等となるように、条件式(1)の範囲を設定している。
【0103】
これを満足することで、対応する各セルの位置によって照明領域が大きく変化しないようにすることができる。
【0104】
図9は、パネル10の正面説明図である。図9において、38が画像表示部であり、39がレンズアレイ中央部による照明領域である。40がx方向のレンズアレイ外周部による照明領域、41がy方向のレンズアレイ外周部による照明領域を示す。このように、対応する各セルによる照明エリアが大きく変化しないため、光量損失を抑えることができて、パネル面10での光量アップが容易となる。
【0105】
又、以上の本実施例によれば偏光変換手段9の偏光面の角度分布が敏感な断面において角度分布を小さくしながらも、画像表示素子上の明るさが均一で、明るく高いコントラストで画像を投射することができる画像投射装置が得られる。
【実施例2】
【0106】
図10は、本発明の照明装置を有する画像投射装置の実施例2の要部概略図である。図11は図10の中心軸0(光軸La)を含み紙面に直交する断面内の要部概略図である。
【0107】
実施例2の構成、そして各部材は、第1、第2レンズアレイ45、46を除いて実施例1と同じである。
【0108】
実施例1では第1、第2レンズアレイ45、46がフライアイレンズ面を互いに外側へ向けて配置されていた。これに対し本実施例では、フライアイレンズ面を向き合うように配置したことが実施例1と異なっている。
【0109】
図10、図11において図1、図2で示す部材と同一部材には同じ番号を付している。
【0110】
実施例2は第1、第2レンズアレイ45、46のそれぞれの単体の構成は実施例1と同様であるが、フライアイレンズ面が互いに向かい合うように配置している。
【0111】
ここで、図10に示すように、xz平面において第1レンズアレイ45と第2レンズアレイ46の対応する周辺部セルの光軸方向の間隔をL3、中心部セルの光軸方向の間隔をL0´とする。このとき、

1.0<L0´/L3<1.2 ・・・(4)
を満足するように構成している。
より好ましくは、
1.0<L0´/L3<1.1 ・・・(4a)
を満足すると尚好ましい。このとき、フライアイレンズの周辺部と中央部によるパネル面における照明範囲の差が小さくなるため、照明効率を高めることができる。
【0112】
また、図11に示すyz断面において第1レンズアレイ45と第2レンズアレイ46の対応する周辺部セルの光軸方向の間隔をL4、中心部セルの間隔をL0’とする。このとき、
1.0<L0´/L4<1.2 ・・・(5)
を満足するように構成している。
より好ましくは、
1.0<L0´/L3<1.1 ・・・(5a)
を満足すると尚好ましい。このとき、フライアイレンズの周辺部と中央部によるパネル面における照明範囲の差が小さくなるため、照明効率を高めることができる。
【0113】
さらに、間隔L3と間隔L4について、
0.9 < L4/L3 < 1.1 (6)
を満足するようにしている。
【0114】
これらの関係を満足することにより、パネル面10での照明領域は、図12に示すように、画像表示部38に対して所定の照明余裕量を持った照明領域となり、望ましい。
【0115】
その理由は実施例1で述べた理由と同様である。
【0116】
ここで、図12の39はx方向のレンズアレイ外周部セルによる照明領域である。40はy方向のレンズアレイ外周部セルによる照明領域である。41はレンズアレイ中央部セルによる照明領域である。これにより、光量損失を抑えることができて、パネル面10での光量アップが容易となる。
【実施例3】
【0117】
図13は、本発明の照明装置を有する画像投射装置の実施例3の要部概略図である。図14は図13の中心軸0(光軸La)を含み紙面に直交する断面内の要部概略図である。
【0118】
実施例3の構成、そして各部材は、第1、第2レンズアレイ59の構成を除いて実施例1と同じである。
【0119】
図13、図14において図1、図2で示す部材と同一部材には同符番を付している。
【0120】
第1レンズアレイ4の単体の構成は実施例1と同様である。第2レンズアレイ59は、入射側の面がyz平面(図14)に負の屈折力を有するシリンドリカル面であり、光出射面はxy平面内に2次元的に配列されたフライアイレンズより成っている。
【0121】
ここで、図13に示すように、xz平面において、第1レンズアレイ4と第2レンズアレイ59の対応する周辺部セルの光軸方向の間隔をL5、中心部セルの間隔をL0´´とする。
【0122】
このとき、
1.0<L5/L0´´<1.2 ・・・(7)
を満足するように構成している。
より好ましくは、
1.0<L5/L0´´<1.1 ・・・(7a)
を満足すると尚好ましい。このとき、フライアイレンズの周辺部と中央部によるパネル面における照明範囲の差が小さくなるため、照明効率を高めることができる。
【0123】
また、図14に示すようにyz平面において、第1レンズアレイ4と第2レンズアレイ59の対応する周辺部セルの光軸方向の間隔をL6とする。
【0124】
このとき、
0.9<L6/L0´´<1.1 ・・・(8)
を満足するように構成している。
より好ましくは、
0.95<L5/L0´´<1.05 ・・・(8a)
を満足すると尚好ましい。
更に好ましくは、
L6 = L0´´
を満足すると良い。さらに、間隔L5と間隔L6について、
0.9 < L6/L5 < 1.1 ・・・(9)
を満足するようにしている。
【0125】
これらの関係を満足することにより、パネル面10での照明領域は、図15に示すように、画像表示部38に対して所定の照明余裕量を持った照明領域となり、望ましい。その理由は実施例1で述べた理由と同様である。
【0126】
ここで、図15の39はx方向のレンズアレイ外周部セルによる照明領域である。40はy方向のレンズアレイ外周部セルによる照明領域であり、41はレンズアレイ中央部セルによる照明領域である。
【0127】
上述の各実施例の中の条件式(1)、(2)、(4)、(5)、(7)において、L1とL0、L2とL0、L3とL0´、L4とL0´、L5とL0´´の各々の関係について規定した。しかしながら、これらの条件式において分子と分母を逆にしても構わない。これらの条件式において分子と分母を逆にする場合は、実施例中の第1、2レンズアレイのレンズセルが構成される面を逆の面にすれば良い。
【0128】
これにより、光量損失を抑えることができて、パネル面での光量アップが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】:本発明第1実施例のxz断面の構成図
【図2】:本発明の実施例1のyz断面の構成図
【図3】:本発明の実施例1の第1フライアイレンズの斜視図
【図4】:本発明の実施例1の第2フライアイレンズの斜視図
【図5】:本発明の実施例1の第1フライアイレンズの形状説明図
【図6】:本発明の実施例1の第1フライアイレンズの光学作用説明図
【図7】:フライアイレンズ間隔と照明領域との関係説明図
【図8】:第2フライアイレンズでの光路拡大図
【図9】:本発明の実施例1における照明領域の説明図
【図10】:本発明の実施例2のxz断面の構成図
【図11】:本発明の実施例2のyz断面の構成図
【図12】:本発明の実施例2における照明領域の説明図
【図13】:本発明の実施例3のxz断面の構成図
【図14】:本発明の実施例3のyz断面の構成図
【図15】:本発明の実施例3における照明領域の説明図
【図16】:従来の画像投射装置の構成図
【図17】:本発明の照明光学系に係る偏光変換素子の説明図
【符号の説明】
【0130】
1 光源手段
2 リフレクター
3 集光レンズ
4 第1レンズアレイ
5 第2レンズアレイ
6 偏光変換素子
7 第1コンデンサーレンズ
8 第2コンデンサーレンズ
9 偏光分離手段
10 画像表示素子
Pr 投射光学系
S スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照明面を照明する照明光学系であって、
光源手段から出射した光束を収斂光として出射する光束集光手段と、
前記照明光学系の光軸を含む第1断面において、前記光束集光手段から出射する収斂光を複数の平行光束に変換する第1レンズアレイと、
前記照明光学系の光軸を含み前記第1断面と垂直な第2断面において、前記第1レンズアレイから出射する複数の収斂光束を複数の平行光束に変換する第2レンズアレイと、
前記第2レンズアレイから出射した複数の光束を前記被照明面に導く偏光分離面と、
を有する照明光学系であって、
前記光束集光手段と前記第1、2レンズアレイは、前記光束集光手段に入射する光束を圧縮しており、
前記第2断面は、前記偏光分離面の法線と平行であり、
前記照明光学系の光軸上における、前記第1レンズアレイのレンズセルの表面と前記第2レンズアレイのレンズセルの表面との距離をL0、
前記第1断面において、前記第1レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面と、前記第2レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面との、前記光軸方向の距離をL1、
前記第2断面において、前記第1レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面と、前記第2レンズアレイのレンズセルのうち最周辺部のレンズセルの表面との、前記光軸方向の距離をL2とするとき、
L0とL1のうち距離が長い方を距離が短い方で割った値が1より大きく1.2より小さい、及び/又は、L0とL2のうち距離が長い方を距離が短い方で割った値が1より大きく1.2より小さいことを特徴とする照明光学系。
【請求項2】
L1とL2が、
0.9<L2/L1<1.1
なる条件を満足することを特徴とする請求項1記載の照明光学系。
【請求項3】
L0、L1、L2が、
1<L1/L0<1.2
1<L2/L0<1.2
なる条件を満足することを特徴とする請求項1又は2記載の照明光学系。
【請求項4】
前記第1断面内と第2断面内の光束の圧縮率を各々β、αとするとき
α<1
β<1
α<β
であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項の照明光学系。
【請求項5】
前記第1及び第2レンズアレイは、レンズセルが構成された面が互いに外側を向いていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の照明光学系。
【請求項6】
前記第1及び第2レンズアレイは、レンズセルが構成された面が互いに向かい合っていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の照明光学系。
【請求項7】
前記第1レンズアレイ及び前記第2レンズアレイの中央部を除いた各レンズセルの曲率中心位置が、各レンズセルの中心に対して前記第1断面あるいは第2断面内において、前記照明光学系の光軸から離れる方向に偏心するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の照明光学系。
【請求項8】
画像表示素子と、前記画像表示素子を照明する、請求項1乃至7いずれか1項に記載の照明光学系と、前記画像表示素子の画像を投影する投射光学系とを有することを特徴とする画像投射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−276720(P2009−276720A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130620(P2008−130620)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】