説明

照明光学系及びこの照明光学系を用いたプロジェクタ装置

【課題】均一で明るく、光路長が短く小型化が可能な照明光学系と、この照明光学系を用いたプロジェクタ装置を提供する。
【解決手段】プロジェクタ装置10に用いられる照明光学系11は、光源1側から順に、集光光学系(集光レンズ群)2と、2次元的に配置された複数の単位レンズを有し、各々の単位レンズから光を射出するマイクロレンズアレイ3と、このマイクロレンズアレイ3の単位レンズの各々から射出した光を重ね合わせて所定の照明領域に照射する重畳光学系4と、を有し、重畳光学系4は、光源側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群Gと、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光学系及びこの照明光学系を用いたプロジェクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ装置は、液晶デバイス(LCD,LCOS)やDMD等を空間光変調素子として用い、その表示画像を投射光学系によりスクリーン等に拡大投射する装置である。このようなプロジェクタ装置において、例えば、投射される画像を明るく、高コントラストにするために、マイクロレンズアレイから出射した光を照射面に重畳させる重畳光学系を正の屈折力を有する2つのレンズ群で構成することが知られている(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−192891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、重畳光学系を正の屈折力を有する2つのレンズ群で構成すると、明るく、且つ、高コントラストの画像が投射されるが、マイクロレンズアレイから照明領域(空間光変調素子)までの距離を短縮してこのプロジェクタ装置を小型化させるには不十分である。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、均一で明るく、光路長が短く小型化が可能な照明光学系と、この照明光学系を用いたプロジェクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る照明光学系は、光源側から順に、この光源からの光を集光する集光光学系と、2次元的に配置された複数の単位レンズを有し、各々の単位レンズから光を射出するマイクロレンズアレイと、このマイクロレンズアレイの単位レンズの各々から射出した光を重ね合わせて所定の照明領域に照射する重畳光学系と、を有し、重畳光学系は、光源側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、を有する。そして、この照明光学系は、第1レンズ群を通過する光束の最大径をφ1とし、第2レンズ群を通過する光束の最大径をφ2とし、第3レンズ群を通過する光束の最大径をφ3としたとき、次式
φ2 < φ1 < φ3
の条件を満足することを特徴とする。
【0007】
このような照明光学系は、次式
1 < φ1/φ2 < 1.3
1 < φ3/φ1 < 1.4
0.6 < φ2/φ3 < 0.8
の条件を満足することが好ましい。
【0008】
また、このような照明光学系において、照明領域は矩形であり、マイクロレンズアレイを射出する光束の最大径をφMLとし、照明領域の対角長をφAとしたとき、次式
1 < φML/φA < 1.4
の条件を満足することが好ましい。
【0009】
また、このような照明光学系は、第1レンズ群及び第3レンズ群の屈折力の平均値をPpとし、第2レンズ群の屈折力をPnとしたとき、次式
Pp/Pn < −0.75
の条件を満足することが好ましい。
【0010】
また、このような照明光学系において、重畳光学系は、第1レンズ群及び第3レンズ群を構成する光学要素の少なくとも一つが、同じ形状であることが好ましい。
【0011】
また、このような照明光学系において、重畳光学系は、第1レンズ群及び第3レンズ群を構成する光学要素の少なくとも一つが、同じ材質であることが好ましい。
【0012】
また、このような照明光学系は、集光光学系とマイクロレンズアレイとの間に、ダイクロイックミラーを配置することができる。
【0013】
また、このような照明光学系は、重畳光学系と照明領域との間に偏光ビームスプリッタを配置することができる。
【0014】
また、本発明に係るプロジェクタ装置は、光源と、この光源から放射された光を照明領域に照射する上述の照明光学系のいずれかと、この照明領域に配置された空間光変調素子と、空間光変調素子からの光を被投射面に投射する投射光学系と、を有することを特徴とする。
【0015】
このようなプロジェクタ装置において、光源はLEDであることが好ましい。
【0016】
また、このようなプロジェクタ装置は、照明光学系と投射光学とを収納する筐体を有し、被投射面は、筐体の載置面と略平行になることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る照明光学系及びプロジェクタ装置を以上のように構成すると、均一で明るく、光路長が短く小型化が可能な照明光学系と、この照明光学系を用いたプロジェクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プロジェクタ装置の構成を示す説明図である。
【図2】重畳光学系を通過する光束の最大径とマイクロレンズアレイの射出面との関係を説明するための説明図であって、(a)は条件を満足する重畳光学系を示し、(b)は条件を満足しない重畳光学系を示す。
【図3】実施例に係るプロジェクタ装置の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いてプロジェクタ装置の構成について説明する。このプロジェクタ装置10は、LEDで構成された光源1と、この光源1から放射された照明光を反射型の空間光変調素子6(例えば、LCOS(シリコン基板の上に液晶を形成した反射型の液晶表示パネル))に照射する照明光学系11と、この空間光変調素子6で反射した光の像を実像として被投射面(スクリーン等)に拡大投射する投射光学系12と、から構成される。
【0020】
照明光学系11は、光源1と空間光変調素子6との間に設けられており、光源1側から順に、集光光学系2と、マイクロレンズアレイ3と、重畳光学系4と、偏光ビームスプリッタ5と、が光軸上にこの順で並んで配置されている。また、投射光学系12は、照明光学系11と偏光ビームスプリッタ5を共用し、空間光変調素子6側から順に、偏光ビームスプリッタ5と、投射レンズ群7と、がこの順で光軸上に並んで配置されている。
【0021】
このような構成のプロジェクタ装置10において、光源1から放射された照明光は、集光光学系2で集光されて略平行光に変換された後、マイクロレンズアレイ3に入射する。ここで、このマイクロレンズアレイ3は、多数個の矩形形状の単位レンズが2次元的に配置されている。このマイクロレンズアレイ3を構成する単位レンズは、入射面と射出面との曲率半径が等しく、両面の頂点が互いに他の焦点に配されている。マイクロレンズアレイ3は、この単位レンズを数十個、入射面及び射出面の各々において各頂点が同一平面上に並ぶように束ねて配置されている。また、各単位レンズの入射面は、図1に示した重畳光学系4を介して照明領域と共役に配置され、その像は単位レンズの位置に無関係に重畳光学系4の後側焦点に生じ、この後側焦点に配置された照明領域(すなわち、空間光変調素子6)を重畳的に照明する。マイクロレンズアレイ3の入射面上の照度は光源1の放射角度特性により不均一に照明されるが、各単位レンズの入射面が空間光変調素子6に重畳的に投射されるため、被照明領域での照度の均一性が向上する。
【0022】
重畳光学系4から出射した照明光は、さらに、偏光ビームスプリッタ5に入射する。そして、この偏光ビームスプリッタ5に入射した照明光のうち、S偏光成分の光は偏光分離面5aで反射されてこの偏光ビームスプリッタ5から外部に放射され、P偏光成分の光は偏光分離面5aを透過して空間光変調素子6に照射される。
【0023】
本実施の形態に係る空間光変調素子6は、上述のようにシリコン基板とガラス基板との間に液晶を介在させた液晶パネル(LCOS)であり、シリコン基板上にはTFT等のスイッチング素子や電極が画素の各サブピクセルに対応して設けられている。また、シリコン基板の最表面には光を反射させるアルミ層が形成されている。そして、透明電極が形成されたガラス基板との間に介在する液晶層を電気的に駆動して映像を表示させることができる。不図示の駆動回路から入力される映像信号のレベルに基づいて空間光変調素子6の各画素に設けられた電極への電圧の印加を制御することにより、映像信号のレベルに応じて空間光変調素子6の各電極に電圧が印加されると、液晶層の液晶分子の配列が変化してこの液晶層が位相板の役目を果たすようになる。その結果、電圧印加状態に応じた映像パターンが空間光変調素子6に形成され、空間光変調が行われる。すなわち、空間光変調素子6のガラス基板側から入射したP偏光成分の光は、シリコン基板側の反射面(アルミ層)で反射されて再びガラス基板から射出されるが、その間に白画素部に入射したP偏光成分の光は偏光方向が90°回転されてS偏光成分の光に変調(偏光変換)される。一方、黒画素部に入射したP偏光成分の光は偏光状態が変化せず、P偏光成分のまま射出される。なお、空間光変調素子6は、カラーフィルタを備えたカラー表示のLCOSを用いることで、カラー画像の表示が可能になる。
【0024】
そして、この空間光変調素子6で反射して射出した光は、再び偏光ビームスプリッタ5に入射する。ここで、空間光変調素子6の黒画素部を透過したP偏光成分の光のほとんどは、偏光分離面5aを透過して光源1側へと戻る。一方、空間光変調素子6の白画素部で変調されて射出されたS偏光成分の光は偏光分離面5aで反射した後この偏光ビームスプリッタ5から射出され、投射レンズ群7により不図示のスクリーンに投射される。その結果、空間光変調素子6に表示された画像の拡大画像がスクリーン上に投射される。
【0025】
なお、空間光変調素子6は、S偏光成分の光で照明して白画素部で空間光変調されたP偏光成分の光を投射レンズ群7で投射するように構成することも可能である。このような構成の場合、偏光ビームスプリッタ5に対して、空間光変調素子6は、照明光が偏光分離面5aで反射して射出する面側に配置され、また、投射レンズ群7は、この空間光変調素子6で反射された光が偏光分離面5aを透過して射出される面側に配置される(後述する実施例の構成がこの配置である)。
【0026】
このようなプロジェクタ装置10に用いられる照明光学系11において、マイクロレンズアレイ3の単位レンズの各々から出射した照明光を空間光変調素子6に照射する重畳光学系4は、光源1側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、及び、正の屈折力を有する第3レンズ群G3からなる3つのレンズ群で構成されている。この重畳光学系4を、正の屈折力を有する1つのレンズ群で構成すると、マイクロレンズアレイ3の射出面から照明領域までの寸法が重畳光学系4の焦点距離のおよそ2倍になってしまう。そのため照明光学系11のサイズが大きくなってしまう。また、この重畳光学系4を、正の屈折力を有する2つのレンズ群で構成すると、1群構成のときよりはサイズが小さくなるが、小型化という観点では不十分である。さらに、重畳光学系4を4つ以上のレンズ群で構成すると、レンズ枚数が増えてしまい、これらのレンズの厚みにより、寸法の縮小効果が薄れてしまう。さらにレンズ群が増えることによりコストも増加する。以上より、マイクロレンズアレイ3から照明領域までの寸法を小さくするためには、重畳光学系4を3つのレンズ群で構成することが望ましい。さらには、上述のように第1レンズ群G1の屈折力を正、第2レンズ群G2の屈折力を負、第3レンズ群G3の屈折力を正とすることが望ましい。
【0027】
なお、この重畳光学系4の構成により、空間光変調素子6としてLCOSを用いる場合だけでなく、透過型のLCDや反射型のDMDを用いた場合でも、サイズ縮小の効果がある。
【0028】
ここで、マイクロレンズアレイ3の射出面から照明領域までの寸法を小さくするためには、重畳光学系4を構成する第1レンズ群G1を通過する光束の最大径をφ1とし、第2レンズ群G2を通過する光束の最大径をφ2とし、第3レンズ群G3を通過する光束の最大径をφ3としたとき、照明光学系11が、次に示す条件式(1)を満足することが望ましい。
【0029】
φ2 < φ1 < φ3 (1)
【0030】
図2に示すように、条件式(1)を満足している重畳光学系4に対して、φ1≧φ3(第1レンズ群G1を通過する光束の最大径が第3レンズ群G3を通過する光束の最大径以上になる)となる重畳光学系4′では、マイクロレンズアレイ3の射出面3aから重畳光学系4′の第1面(最も光源1側の面)までの光軸上の距離Dが増大してしまう。図2の場合、重畳光学系4,4′の全長はほぼ同じであることから、距離Dが増大する分だけ照明光学系11が大きくなってしまう。
【0031】
さらには、マイクレンズアレイ3の射出面から照明領域までの寸法を小さくするために、照明光学系11は、次の条件式(2)を満足することが望ましい。この条件式(2)を満足しない場合、マイクロレンズアレイ3の射出面から照明領域までの寸法が大きくなってしまうおそれがある。
【0032】
1 < φ1/φ2 < 1.3
1 < φ3/φ1 < 1.4 (2)
0.6 < φ2/φ3 < 0.8
【0033】
ところで、この照明光学系11により照明される照明領域に配置されるLCOS等の空間光変調素子6の形状は矩形である。そのため、照明領域を矩形にすることで、最も効率良く空間光変調素子6を照明することができる。このとき、照明領域の対角長をφAとし、マイクロレンズアレイ3を射出する光束径をφMLとしたとき、照明光学系11は、次に示す条件式(3)を満足することが望ましい。
【0034】
1 < φML/φA < 1.4 (3)
【0035】
マイクロレンズアレイ3を射出する光束径と照明領域の対角長との比が、この条件式(3)の上限値以上になると、少なくとも重畳光学系4を構成する第1レンズ群G1のサイズが大型化してしまい、マイクロレンズアレイ3の射出面から照明領域までの寸法も大きくなってしまう。反対に、マイクロレンズアレイ3を射出する光束径と照明領域の対角長との比が、この条件式(3)の下限値以下になると、マイクロレンズアレイ3の射出面から照明領域までの寸法を小さくすることはできるが、マイクロレンズアレイ3のサイズが小さくなることによる悪影響がある。すなわち、第1に、マイクロレンズアレイ3での光束のNAが増大するため、マイクロレンズアレイ3を構成する単位レンズの曲率半径が小さくなり、製造が困難になる。また、第2に、マイクロレンズアレイ3を射出する光束径の縮小に伴い、集光光学系2の光束径も小さくしなければならず、そのため、集光光学系2の屈折力(光学パワー)を強くするか、要素数を増やす必要があり、製造が難しくなるか、コストが増大してしまう。
【0036】
また、マイクロレンズアレイ3の射出面から照明領域までの寸法を小さくするために、重畳光学系4は、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3(正のレンズ群)の屈折力(光学パワー)の平均値をPpとし、第2レンズ群G2(負のレンズ群)の屈折力(光学パワー)をPnとしたとき、次に示す条件式(4)を満足することが望ましい。
【0037】
Pp/Pn < −0.75 (4)
【0038】
重畳光学系4を構成する正のレンズ群と負のレンズ群の屈折力(光学パワー)の比が条件式(4)の範囲から外れると、この重畳光学系4において、正の屈折力に対して負の屈折力が小さくなるため、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3との距離が広がってしまい、結果として照明光学系11のサイズが大きくなってしまう。
【0039】
なお、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3は、それぞれ、複数の光学要素(レンズ)で構成しても良いし、1つの光学要素(レンズ)で構成しても良い。また、正の屈折力(光学パワー)を有する第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3は、これらのレンズ群を構成するレンズの少なくとも一つを、同じ形状のレンズで構成しても良い。さらに、材質も同じであれば、この第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3を製造するための金型も一つで済むので、製造コストの削減につながる。
【0040】
なお、このプロジェクタ装置10は、照明光学系11と投射光学12とを収納する図示しない筐体を有し、スクリーン等の被投射面は、この筐体の載置面と略平行になることが好ましい。
【実施例】
【0041】
上述の照明光学系11を構成する重量光学系4の実施例について図3を用いて説明する。この図3に示すプロジェクタ装置100は、赤色光源1r、青色光源1b及び緑色光源1gを有し、これらの光源1r,1b,1gから放射される赤色光、青色光及び緑色光を重ね合わせて白色光を生成して空間光変調素子6に照射するように構成されている。これらの光源1r,1b,1gのそれぞれには、集光光学系2r,2b,2gが設けられている。また、このプロジェクタ装置100は、赤色光と青色光とを重ね合わせるために第1のダイクロイックミラー8aが設けられ、さらにこれらの光に緑色光を重ね合わせるために第2のダイクロイックミラー8bが設けられている。さらに、第1のダイクロイックミラー8aと第2のダイクロイックミラー8bとの間には集光レンズ9が設けられている。その他の構成は、上述のプロジェクタ装置10と同じである。
【0042】
第1のダイクロイックミラー8aは赤色光だけを透過するように構成されている。そのため、赤色光源1rから放射された赤色光は集光光学系2rで略平行光に変換されて第1のダイクロイックミラー8aに入射し、この第1のダイクロイックミラー8aを透過する。一方、青色光源1bから放射された青色光は、集光光学系2bで略平行光に変換されて第1のダイクロイックミラー8a入射し、この第1のダイクロイックミラー8aで反射されて赤色光と重ね合わされる。
【0043】
一方、第2のダイクロイックミラー8bは緑色光だけを透過するように構成されている。そのため、第1のダイクロイックミラー8aから射出した赤色光及び青色光は集光レンズ9で集光されて第2のダイクロイックミラー8bに入射し、この第2のダイクロイックミラー8bで反射されてマイクロレンズアレイ3に導かれる。一方、緑色光源1gから放射された緑色光は、集光光学系2gで略平行光に変換されて第2のダイクロイックミラー8bに入射し、この第2のダイクロイックミラー8bを透過して赤色光及び青色光に重ね合わされてマイクロレンズアレイ3に導かれる。なお、緑色光源1gから放射される緑色光に比べて、赤色光源1r及び青色光源1bから放射される赤色光及び青色光の方が光路が長くなるため、明るさのロスを防ぐために、集光レンズ9が設けられている。このようにして重ね合わされた赤色光、青色光及び緑色光(照明光)が空間光変調素子6に照射され、この空間光変調素子6に表示された画像が投射される構成は、上述のプロジェクタ装置10と同じである。なお、赤色光源1r、青色光源1b及び緑色光源1gの配置は、この図3に示す構成に限定されることはない。
【0044】
このように、本実施例に係るプロジェクタ装置100では、集光光学系2r,2b,2gとマイクロレンズアレイ3との間に2つのダイクロイックミラー8a,8bが配置されている。このダイクロイックミラーの分光特性は入射する光線の入射角度に依存して変化する。そのため、赤色光、青色光及び緑色光のような複数の波長の異なる光源光を合成する光学系において、マイクロレンズアレイ3と照明領域(空間光変調素子6)との間にダイクロイックミラーを配置すると、照明領域にダイクロイックミラーの角度依存性に起因する照明ムラが発生する可能性がある。また、波長毎に角度依存性が異なるため色ムラが発生する可能性もある。一方、本実施例のように、集光光学系2r,2b,2gとマイクロレンズアレイ3との間にダイクロイックミラー8a,8bを配置した光学系の場合、各色光はダイクロイックミラー8a,8bの角度依存性の影響を受けることになるが、その後にマイクロレンズアレイ3に入射し、分割・重畳されるため、照明領域にはダイクロイックミラー8a,8bに起因する照明ムラや色ムラが発生することはない。
【0045】
ここで、このプロジェクタ装置100において照明光学系11を構成する重畳光学系4は、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2及び正の屈折力を有する第3レンズ群G3を有し、それぞれのレンズ群が1枚の非球面レンズで構成されている(球面レンズで構成することも可能である)。なお、このプロジェクタ装置100においては、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3は同じ形状、同じ材質のレンズで構成した場合について示している。
【0046】
このような構成の重畳光学系4の諸元を以下の表1に示す。この表1において、第1欄mは光源側からの各光学面の番号を、第2欄rは各光学面の曲率半径(非球面の場合は基準球面の曲率半径)を、第3欄dは各光学面から次の光学面までの光軸上の距離(面間隔)を、第4欄neはe線に対する屈折率を、そして、第5欄φは各光学面を通過する光束の最大径をそれぞれ示している。ここで、第0面はマイクロレンズアレイ3の射出面を示し、第7面は照明領域(空間光変調素子6の反射面)を示している。また、空気の屈折率は省略してある。さらに、曲率半径∞は平面を表している。また、面番号は図3の重畳光学系4に示した番号0〜7に対応している。なお、以下の諸元において掲載される曲率半径や面間隔その他長さの単位は、特記の無い場合、一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることはなく、他の適当な単位を用いることができる。
【0047】
m r d ne φ
0 ∞ 0.50 12.00(φML)
1 12.2189 4.20 1.5273 12.76(φ1)
2 -78.3716 3.00 12.53
3 16.8239 1.20 1.5855 11.09(φ2)
4 7.0000 12.72 9.98
5 78.3716 4.20 1.5273 14.89(φ3)
6 -12.2189 10.43 14.85
7 ∞ 0 9.43(φA)

条件対応値
(1)φ2=11.09<φ1=12.76<φ3=14.89
(2)φ1/φ2=1.15
φ3/φ1=1.17
φ2/φ3=0.74
(3)φML/φA=1.27
(4)Pp/Pn=-1.05
【0048】
以上のように、この実施例に示すプロジェクタ装置100に用いられている照明光学系11及び重畳光学系4では、条件式(1)〜(4)は全て満たされていることが分かる。
【符号の説明】
【0049】
1(1r,1b,1g) 光源 2 集光光学系 3 マイクロレンズアレイ
4 重畳光学系 5 偏光ビームスプリッタ 6 空間光変調素子
7 投射レンズ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源側から順に、
前記光源からの光を集光する集光光学系と、
2次元的に配置された複数の単位レンズを有し、各々の前記単位レンズから前記光を射出するマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイの前記単位レンズの各々から射出した前記光を重ね合わせて所定の照明領域に照射する重畳光学系と、を有し、
前記重畳光学系は、前記光源側から順に、
正の屈折力を有する第1レンズ群と、
負の屈折力を有する第2レンズ群と、
正の屈折力を有する第3レンズ群と、を有し、
前記第1レンズ群を通過する光束の最大径をφ1とし、前記第2レンズ群を通過する光束の最大径をφ2とし、前記第3レンズ群を通過する光束の最大径をφ3としたとき、次式
φ2 < φ1 < φ3
の条件を満足することを特徴とする照明光学系。
【請求項2】
次式
1 < φ1/φ2 < 1.3
1 < φ3/φ1 < 1.4
0.6 < φ2/φ3 < 0.8
の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の照明光学系。
【請求項3】
前記照明領域は矩形であり、
前記マイクロレンズアレイを射出する光束の最大径をφMLとし、前記照明領域の対角長をφAとしたとき、次式
1 < φML/φA < 1.4
の条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の照明光学系。
【請求項4】
前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群の屈折力の平均値をPpとし、前記第2レンズ群の屈折力をPnとしたとき、次式
Pp/Pn < −0.75
の条件を満足することを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項5】
前記重畳光学系は、前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群を構成する光学要素の少なくとも一つが、同じ形状であることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項6】
前記重畳光学系は、前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群を構成する光学要素の少なくとも一つが、同じ材質であることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項7】
前記集光光学系と前記マイクロレンズアレイとの間に、ダイクロイックミラーが配置されていることを特徴とする請求項1〜6いずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項8】
前記重畳光学系と前記照明領域との間に偏光ビームスプリッタが配置されていることを特徴とする請求項1〜7いずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項9】
光源と、
前記光源から放射された光を前記照明領域に照射する請求項1〜8いずれか一項に記載の照明光学系と、
前記照明領域に配置された空間光変調素子と、
前記空間光変調素子からの光を被投射面に投射する投射光学系と、を有することを特徴とするプロジェクタ装置。
【請求項10】
前記光源はLEDであることを特徴とする請求項9に記載のプロジェクタ装置。
【請求項11】
前記照明光学系と前記投射光学とを収納する筐体を有し、
前記被投射面は、前記筐体の載置面と略平行になることを特徴とする請求項9または10に記載のプロジェクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−248053(P2011−248053A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120507(P2010−120507)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】