説明

照明装置、及び車両用前照灯

【課題】レーザ光を照射したときの発光部の温度上昇を抑えることが可能な照明装置を提供する。
【解決手段】ヘッドランプ1は、レーザ光を出射する半導体レーザ2と、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含み、半導体レーザ2から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する発光部5と、を備える。これにより、ヘッドランプ1は、発光部に発生する熱を迅速に外部に放熱させることができるため、高出力・高密度のレーザ光を照射したときの発光部の温度上昇を抑えることができるという効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源と当該レーザ光源からのレーザ光により蛍光を発する発光部とを備える照明装置、特に車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、励起光源として発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)や半導体レーザ(LD;Laser Diode)等の半導体発光素子を用い、これらの励起光源から生じた励起光を、蛍光体を含む発光部に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いる照明装置の研究が盛んになってきている。
【0003】
このような照明装置の一例が特許文献1、2に開示されている。
【0004】
特許文献1の光源(照明装置)は、一次ビームを送出するための少なくとも1つのLEDと、一次ビームを二次ビームに変換するための少なくとも1つの発光変換体とを有する。そして、その発光変換体は多結晶セラミック体であり、該多結晶セラミック体自体は、部分的にまたは全体で発光体として作用する。また、セラミック体を形成するベース材料の少なくとも一部は、ドープ物質により活性化されている。
【0005】
また、特許文献2に記載の、半導体発光素子から発された光の波長を変換するプレート状のセラミックス部材は、二種類以上のセラミックス素材から構成され、複数のブロックに区画されている。それぞれのブロックは、二種類以上のセラミックス素材の中からそれぞれ選択された一種類のセラミックス素材からなり、二種類以上のセラミックス素材のうちの少なくとも一種類のセラミックス素材は、光の波長を変換する波長変換材料を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−146835号公報(平成16年5月20日公開)
【特許文献2】特開2009−177106号公報(平成21年8月 6日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術には次のような問題がある。
【0008】
すなわち、特許文献1の光源は、光源としてLEDを使用している。そのため、特許文献1は、高出力・高密度のレーザ光が発光変換体に照射されたときの発光変換体の温度上昇を低減することについて、何ら解決方法を提供するものではない。また、特許文献1の発光変換体は、酸化アルミニウム(Al)、YAGの群および/またはY(酸化イットリウム)から選択されたベース材料のセラミックス体を使用しており、蛍光体として酸窒化物蛍光体を使用するものではない。
【0009】
さらに、特許文献2のセラミックス部材は、透光性材料(Al等)と蛍光体セラミック素材とを組み合わせ、それらを別々に区画している。しかしながら、特許文献2には、蛍光体セラミックス素材が透光性を有する旨は開示も示唆もされていない。そのため、特許文献2の蛍光体セラミックス素材は、透光性を有するとともに、自身が蛍光体および放熱体であるという構成を備えるものではない。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、その目的は、レーザ光を照射したときの発光部の温度上昇を抑えることが可能な照明装置及び車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る照明装置は、上記課題を解決するために、レーザ光を出射するレーザ光源と、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含み、上記レーザ光源から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する発光部と、を備えることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、発光部は、レーザ光源から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する。そのレーザ光は、他の励起光源(例えばLED)と比べて高出力・高密度であるため、その照射を受けた発光部の温度は上昇しやすくなる。そのため、発光部は、発生する熱を迅速に外部に放熱できなければ、熱によって劣化(変色、変形)してしまう。
【0013】
この点、本発明に係る照明装置では、発光部は、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含んでおり、この酸窒化物蛍光体は、熱伝導率が他の多くの蛍光体材料と比べて高い窒化珪素(SiN:熱伝導率(約20W/mK))を母材とするものである。つまり、本発明に係る照明装置では、高い熱伝導率の酸窒化物蛍光体を含む発光部を備えることで、例えば発光部に熱伝導性部材を接触させるなどにより、発光部に発生する熱を迅速に外部に放熱させることができる。それゆえ、本発明に係る照明装置は、たとえ高出力・高密度のレーザ光が照射されたとしても、発光部が熱によって劣化する問題を容易に解決することができる。
【0014】
加えて、酸窒化物蛍光体は、焼結されて蛍光体焼結体となると透明性が増し、それにより高い透光性を示すようになる。つまり、発光部は、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含むことにより、自身が蛍光体および放熱体であると同時に、高い透光性という性質を備えるようになる。そのため、例えば、発光部が、青色レーザ光を照射されると、発光部を透過する際に青色光の一部を黄色光に変換し、かつ、その透光性ゆえに青色光の一部を透過させることができる。これにより、発光部は、青色光と黄色光とが混色された白色光を出力することができる。しかも、このとき、発光部は、自身が放熱体として機能するため、熱による劣化も併せて抑制することができる。
【0015】
このように、本発明に係る照明装置は、上記構成を備えることにより、レーザ光を照射したときの発光部の温度上昇を抑えることができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る照明装置は、上記課題を解決するために、レーザ光を出射するレーザ光源と、酸窒化物蛍光体と窒化珪素からなる封止材とを含み、上記レーザ光源から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する発光部と、を備えることを特徴としている。
【0017】
上記構成によれば、発光部は、酸窒化物蛍光体と窒化珪素からなる封止材とを含む。ここで、酸窒化物蛍光体は、熱伝導率が他の多くの蛍光体材料と比べて高い窒化珪素(SiN:熱伝導率(約20W/mK))を母材とするものである。さらに、発光部は、酸窒化物蛍光体を封止するための封止材として窒化珪素を用いている。
【0018】
このため、本発明に係る発光部は、ともに高い熱伝導率を有する酸窒化物蛍光体および封止材を含むことになるため、例えば発光部に熱伝導性部材を接触させるなどにより、発光部に発生する熱を迅速に外部に放熱させることができる。それゆえ、本発明に係る照明装置は、たとえ高出力・高密度のレーザ光が照射されたとしても、発光部が熱によって劣化する問題を容易に解決することができる。
【0019】
また、発光部は、その厚みがある範囲内に収まっておればレーザ光を透過させることができるため、上述したように、青色光と黄色光とが混色された白色光を出力するなどの構成を実現することができる。しかも、このとき、発光部は、自身が放熱体として機能するため、熱による劣化も併せて抑制することができる。
【0020】
このように、本発明に係る照明装置は、上記構成を備えることにより、レーザ光を照射したときの発光部の温度上昇を抑えることができるという効果を奏する。
【0021】
本発明に係る車両用前照灯は、上記課題を解決するために、上記の照明装置と、上記発光部から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡と、を備えることを特徴としている。
【0022】
上記構成によれば、反射鏡は、発光部からの光を反射することにより、車両用前照灯の前方へ進む光線束を形成することができる。そして、車両用前照灯は、上記照明装置を備えているため、レーザ光を照射したときの発光部の温度上昇を抑えることが可能である。それゆえ、本発明に係る車両用前照灯では、熱による発光部の劣化(変色や変形)が抑制されるため、車両前照灯そのものの寿命を延ばすことができる。
【0023】
また、本発明の照明装置では、上記蛍光体焼結体は、互いに異なる色の蛍光を発する複数種類の焼結体を含むことが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、蛍光体焼結体は、互いに異なる色の蛍光を発する複数種類の焼結体を含む。これにより、本発明の照明装置は、レーザ光が照射されることで、レーザ光を照射したときの発光部の温度上昇を抑えることができるとともに、複数の異なる色の蛍光を混色した多種多様な色の出力や、色温度の制御などを容易に実現することができる。
【0025】
また、本発明の照明装置では、上記複数種類の焼結体は、上記レーザ光の光軸に沿って積層されていることが好ましい。
【0026】
種類の異なる蛍光体を混ぜて、それを透明な焼結体に焼結することは技術的に極めて困難である。
【0027】
そこで、複数種類の焼結体をレーザ光の光軸に沿って積層すれば、互いに異なる色の蛍光を発する複数種類の焼結体を含むように発光部を作製することができ、上述した技術的な困難性を克服することができる。また、積層された複数種類の焼結体のそれぞれの特性(材料、厚みなど)を変化させることで、バリエーション豊かに、多種多様な色の出力や、色温度の制御などを実現することができる。
【0028】
また、本発明の照明装置では、上記複数種類の焼結体は、互いに隣接して配置されていることが好ましい。
【0029】
種類の異なる蛍光体を混ぜて、それを透明な焼結体に焼結することは技術的に極めて困難である。
【0030】
そこで、複数種類の焼結体を互いに隣接して配置すれば、互いに異なる色の蛍光を発する複数種類の焼結体を含むように発光部を作製することができ、上述した技術的な困難性を克服することができる。また、複数種類の焼結体の配置を変化させることで、バリエーション豊かに、多種多様な色の出力や、色温度の制御などを実現することができる。
【0031】
また、本発明の照明装置では、上記複数種類の焼結体は、青色、赤色、および緑色の蛍光をそれぞれ発することが好ましい。
【0032】
照明装置の用途によっては、例えば車両用前照灯などでは、要求される白色の色度範囲が法律により規定されている。そこで、本発明に係る照明装置が車両用前照灯に適用される場合などを想定すると、発光部が、白色光を出力することが可能な構成で実現されていることが好ましい。
【0033】
そこで、上記複数種類の焼結体は、青色、赤色、および緑色の蛍光をそれぞれ発することにより、青色、赤色、および緑色の混色によって白色を出力することができる。また、色温度についても、その3種類の焼結体の構成比率を適宜変化させることにより、市場において多くのユーザに好まれる色温度に設定することができる。
【0034】
また、本発明の照明装置では、上記酸窒化物蛍光体は、CeのドープされたCaα−SiAlON蛍光体、Ceのドープされたβ−SiAlON蛍光体、またはCeのドープされたJEM相蛍光体であることが好ましい。
【0035】
上記構成により、レーザ光が発光部を透過する際に、レーザ光の一部を青色光に変換することができ、かつ、高い発光効率を得ることができる。
【0036】
また、本発明の照明装置では、上記酸窒化物蛍光体は、EuのドープされたCASN蛍光体、またはEuのドープされたSCASN蛍光体であることが好ましい。
【0037】
上記構成により、レーザ光が発光部を透過する際に、レーザ光の一部を赤色光に変換することができ、かつ、高い発光効率を得ることができる。
【0038】
また、本発明の照明装置では、上記酸窒化物蛍光体は、Euのドープされたβ−SiAlON蛍光体であることが好ましい。
【0039】
上記構成により、レーザ光が発光部を透過する際に、レーザ光の一部を緑色光に変換することができ、かつ、高い発光効率を得ることができる。
【0040】
また、本発明の照明装置では、上記発光部は、上記レーザ光を透過する透光体を含んでいることが好ましい。
【0041】
上記構成によれば、発光部は、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体とレーザ光を透過する透光体とを含む。このとき、例えば、蛍光体焼結体が、青色のレーザ光を照射されると黄色光を出力する場合、その黄色光と、透光体を透過した青色光とが混色した白色光を出力させることができる。
【0042】
このように、本発明の照明装置は、上記構成を備えることにより、透光体を透過するレーザ光を、そのままの色で発光部から出力させることができる。したがって、発光部は、レーザ光の色に変換するための酸窒化物蛍光体を含む必要がなくなる。
【0043】
なお、レーザ光に含まれるコヒーレントな成分は人間の目に損傷を与える可能性が高く、レーザ光をそのまま照明装置の外部に出力することが問題視される場合も考えられる。その場合には、例えば透過フィルタを用いることで、コヒーレントな成分を遮断し、インコヒーレントな成分を透過するようにすればよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る照明装置は、以上のように、レーザ光を出射するレーザ光源と、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含み、上記レーザ光源から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する発光部と、を備える。
【0045】
また、本発明に係る照明装置は、以上のように、レーザ光を出射するレーザ光源と、酸窒化物蛍光体と窒化珪素からなる封止材とを含み、上記レーザ光源から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する発光部と、を備える。
【0046】
また、本発明に係る車両用前照灯は、以上のように、上記の照明装置と、上記発光部から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡と、を備える。
【0047】
それゆえ、レーザ光を照射したときの発光部の温度上昇を抑えることが可能な照明装置、及び車両用前照灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態に係るヘッドランプの概略構成を示す図である。
【図2】別の実施例の発光部を示す概略図である。
【図3】別の実施例の発光部を示す概略図である。
【図4】図3の発光部を作製する方法を説明するための図である。
【図5】別の実施例の発光部を示す概略図である。
【図6】図5の発光部を作製する方法を説明するための図である。
【図7】別の実施例の発光部を示す概略図である。
【図8】別の実施例の発光部を示す概略図である。
【図9】(a)は、半導体レーザの回路図を模式的に示した図であり、(b)は、半導体レーザの基本構造を示す斜視図である。
【図10】本発明の別の実施形態に係るヘッドランプの概略構成を示す断面図である。
【図11】本発明の別の実施形態に係るヘッドランプが備える光ファイバーの端部と発光部との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の実施の一形態について図1等に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0050】
(本発明の技術的思想)
励起光源としてレーザ光源が用いられる場合、レーザ光は、他の励起光源(例えばLED)と比べて高出力・高密度であるため、その照射を受けた発光部の温度は上昇しやすくなる。このため、発光部は、発生する熱を迅速に外部に放熱しなければならず、さもなければ、熱によって劣化(変色、変形)してしまう。ただし、放熱機能を重視するあまり、発光部の発光効率を低下させることはできない。
【0051】
本発明の発明者は、この状況を鑑み、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含み、レーザ光源から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する発光部を用いることにより、発光効率を低下させることなく、レーザ光を照射したときの発光部の温度上昇を抑えることが可能な照明装置を実現できると考えた。
【0052】
本発明の照明装置は、このような技術的思想に基づいてなされたものである。ここでは、本発明の照明装置として、自動車用の走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準を満たすヘッドランプ(照明装置、車両用前照灯)1を例に挙げて説明する。ただし、本発明の照明装置は、自動車以外の車両・移動物体(例えば、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケットなど)のヘッドランプとして実現されてもよいし、サーチライトなどその他の照明装置として実現されてもよい。
【0053】
(ヘッドランプ1の構成)
まず、本実施形態に係るヘッドランプ(照明装置)1の構成について図1を用いて説明する。図1は、ヘッドランプ1の概略構成を示す図である。同図に示すように、ヘッドランプ1は、半導体レーザ2(レーザ光源)、非球面レンズ3、導光部4、発光部5、および反射鏡6を備えている。
【0054】
(半導体レーザ2)
半導体レーザ2は、励起光を出射する励起光源として機能するものである。この半導体レーザ2は1つでもよいし、複数設けられてもよい。また、半導体レーザ2として、1つのチップに1つの発光点を有するものを用いてもよいし、複数の発光点を有するものを用いてもよい。本実施形態では、1チップに1つの発光点を有する半導体レーザ2を用いている。
【0055】
半導体レーザ2は、例えば、1チップに1つの発光点(1ストライプ)を有し、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、光出力が1.0W、動作電圧が5V、電流が0.7Aのものであり、直径5.6mmのパッケージ(ステム)に封入されているものである。また、本実施形態では、例えば、半導体レーザ2を10個用いており、光出力の合計は10Wである。なお、図1には便宜上、半導体レーザ2を1つのみ図示している。なお、半導体レーザ2が発振するレーザ光の波長は、405nmに限定されない。
【0056】
(非球面レンズ3)
非球面レンズ3は、各半導体レーザ2から発振されたレーザ光を、導光部4の一方の端部である光入射面4aに入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ3として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ3の形状および材質は特に限定されないが、405nm近傍の透過率が高く、かつ耐熱性のよい材料であることが好ましい。
【0057】
なお、非球面レンズ3は、半導体レーザ2から発振されたレーザ光を収束させ、比較的小さな(例えば、直径1mm以下)光入射面に導くためのものである。そのため、導光部4の光入射面4aが、レーザ光を収束させる必要のない程度に大きい場合には、非球面レンズ3を設ける必要はない。
【0058】
(導光部4)
導光部4は、半導体レーザ2が発振したレーザ光を集光して発光部5(発光部5のレーザ光照射面)へと導く円錐台状の導光部材であり、非球面レンズ3を介して(または、直接的に)半導体レーザ2と光学的に結合している。導光部4は、半導体レーザ2が出射したレーザ光を受光する光入射面4a(入射端部)と当該光入射面4aにおいて受光したレーザ光を発光部5へ出射する光出射面4b(出射端部)とを有している。
【0059】
光出射面4bの面積は、光入射面4aの面積よりも小さい。そのため、光入射面4aから入射した各レーザ光は、導光部4の側面に反射しつつ前進することにより収束されて光出射面4bから出射される。
【0060】
導光部4は、BK7(ボロシリケートクラウンガラス)、石英ガラス、アクリル樹脂その他の透明素材で構成する。また、光入射面4aおよび光出射面4bは、平面形状であっても曲面形状であってもよい。
【0061】
なお、導光部4は、角錐台状であってもよく、光ファイバーであってもよく、半導体レーザ2からのレーザ光を発光部5に導くものであればよい。また、導光部4を設けずに、半導体レーザ2からのレーザ光を非球面レンズ3を介して、または直接に発光部5に照射してもよい。半導体レーザ2と発光部5との間の距離が短い場合には、このような構成が可能になる。
【0062】
(発光部5の組成)
発光部5は、導光部4の光出射面4bから出射されたレーザ光を受けて白色の蛍光を発するものであり、酸窒化物系の蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含む。代表的な酸窒化物系蛍光体として、サイアロン(SiAlON(silicon aluminum oxynitride))蛍光体と通称されるものがある。サイアロン蛍光体とは、窒化ケイ素のシリコン原子の一部がアルミニウム原子に、窒素原子の一部が酸素原子に置換された物質である。このサイアロン蛍光体は、窒化ケイ素(Si)にアルミナ(Al)、シリカ(SiO)および希土類元素などを固溶させて作ることができる。励起光を受けて青色に発光するサイアロン蛍光体の例としては、Ce3+付活のCAα−SiAlON蛍光体、Ce3+付活のβ−SiAlON蛍光体などが挙げられる。
【0063】
その他の代表的な酸窒化物系蛍光体として、例えばJEM相を含む酸窒化物蛍光体(JEM相蛍光体)が挙げられる。JEM相蛍光体は、希土類元素によって安定化されたサイアロン蛍光体を調整するプロセスにおいて生成することが確認された物質である。また、JEM相は、窒化珪素系材料の粒界相として発見されたセラミックスであり、一般的に、組成式MAl(Si6−zAl)N10−z(ただし、MはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素)で表され、zをパラメータとする組成からなる特有な原子配列を有する結晶相(酸窒化物結晶)である。JEM相は、結晶の共有結合性が強いため耐熱性に優れている。
【0064】
励起光を受けて青色に発光するJEM相蛍光体の一例として、Ce3+付活(ドープされた)のJEM相蛍光体(JEM相:Ce蛍光体)が挙げられる。JEM相蛍光体にCe成分が含まれることにより、350nm〜420nm近傍の励起光を吸収し、青色から青緑色にかけての発光を得やすくなるとともに、発光の半値幅もブロードとなるため、例えば暗所視における比視感度の高い波長域を十分カバーすることができる。また、JEM相:Ce蛍光体は、励起波長が360nmのとき、ピーク波長が480nmであり、そのときの発光効率は60%である。また、励起波長が405nmのとき、ピーク波長が490nmであり、そのときの発光効率は50%である。
【0065】
また、赤色に発光する酸窒化物系蛍光体の例としては、例えば、Eu2+がドープされたCaAlSiN:蛍光体(CASN:Eu蛍光体)、Eu2+がドープされたSrCaAlSiN蛍光体(SCASN:Eu蛍光体)などが挙げられる。
【0066】
CASN:Eu蛍光体は、励起波長が350nm〜450nmのとき、赤色の蛍光を発し、そのピーク波長は650nmであり、その発光効率は73%である。また、SCASN:Eu蛍光体は、励起波長が350nm〜450nmのとき、赤色の蛍光を発し、そのピーク波長は630nmであり、その発光効率は70%である。
【0067】
これらの赤色蛍光体を用いることにより、演色性が非常に良い白色光を実現することができる。また、赤色蛍光体であれば、その白色光を照射する対象物が赤色である場合に、その対象物の視認性を高めることができる。交通標識の背景色として、赤、黄及び青が用いられているので、ヘッドランプ1が備える発光部5に赤色蛍光体が用いることは、背景色が赤色の交通標識を視認する上で有効である。
【0068】
さらに、緑色に発光する酸窒化物系蛍光体の例としては、Eu2+がドープされたβ−SiAlON蛍光体などが挙げられる。Eu2+がドープされたβ−SiAlON蛍光体は、紫外から青色の励起光により発光ピーク波長が約540nmの強い発光を示す。この蛍光体の発光スペクトル半値全幅は約55nmである。
【0069】
続いて、本実施の形態に係る発光部5のさらなる特徴について説明する。
【0070】
一般的に、発光部には封止材が使用される。封止材は、低融点の無機ガラスであることが好ましいが、極端に高出力・高光密度での励起光を用いないのであれば、シリコーン樹脂などの樹脂や、有機ハイブリッドガラスであってもよい。ただし、発光部は、蛍光体のみを押し固めたものであってもよいが、その場合には、レーザ光が照射されることにより生じる発光部5の劣化が促進される可能性がある。
【0071】
この点、発光部5は、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含む。その酸窒化物蛍光体の母材である窒化珪素(SiN)は、その熱伝導率が約20W/mKと高く、また、その熱抵抗は、通常の無機ガラス中に蛍光体を分散させたものの20分の1になる。そのため、発光部5に酸窒化物系蛍光体を用いることで、高い放熱効果が期待できる。
【0072】
さらに、酸窒化物系蛍光体を焼結処理すると、透明で透光性を有する焼結体が得られる。これにより、発光部5は、透光性を有するとともに、自身が蛍光体および放熱体としての機能を備えることができる。それゆえ、発光部5は、高出力・高光密度のレーザ光に対して高い変換効率を保つことができ、かつ、例えば発光部5に熱伝導性部材を接触させるなどにより、発光部5で発生する熱を迅速に外部に放熱することができる。また、熱による発光部5の劣化(変色や変形)が抑制されることから、ヘッドランプ1の寿命を延ばすことができる。
【0073】
〔実施例〕
以下、図2等を参照して、発光部5の幾つかの実施例を説明する。なお、既出の内容については、その説明を省略する。また、ここに記載された材質、形状、および各種の数値は、あくまで一例であり、本発明を限定するものではない。
【0074】
(実施例1)
さらに他の実施例を図2により説明する。図2は、別の実施例の発光部50を示す概略図である。
【0075】
発光部50は、互いに異なる色の蛍光を発する複数種類の蛍光体焼結体が、レーザ光の光軸に沿って積層されてなる。より具体的に、発光部50は、レーザ光が照射される側の面から順に、レーザ光が照射されると、赤色の蛍光を発する蛍光体焼結体(焼結体)50a、緑色の蛍光を発する蛍光体焼結体50b、及び青色の蛍光を発する蛍光体焼結体50cが積層されている。
【0076】
各層は、別々に作製された後、積層された状態で加熱処理を施され相互に融着される。各層は、融着時に、窒素雰囲気下で1000℃以上に加熱される。窒素雰囲気は、大気圧よりも高いことが好ましい。融着前の各層の厚みは、100ミクロン以上500ミクロン以下が好ましく、蛍光体の実効的な密度(発光中心である希土類金属がドープされた窒化珪素)は全体の1%〜15%程度とすることが好ましい。
【0077】
発光効率等を考慮して、レーザ光を照射されて赤色に発光する酸窒化物系蛍光体としては、EuがドープされたCASN系蛍光体であることが好ましく、これにSr(ストロンチウム)を含んでもよい。同様に、レーザ光を照射されて緑色に発光する酸窒化物蛍光体としては、Euがドープされたβ−SiAlON系蛍光体であることが好ましい。また、レーザ光を照射されて青色に発光する酸窒化物蛍光体としては、CeがドープされたCaα−SiAlON系蛍光体、Ceがドープされたβ−SiAlON系蛍光体、またはCeがドープされたJEM系蛍光体であることが好ましい。
【0078】
なお、互いに異なる色の蛍光を発する複数種類の焼結体がレーザ光の光軸に沿って発光部50に積層される順序は、上記に限られない。また、複数種類の焼結体は、青色、赤色、および緑色の蛍光をそれぞれ発する3種類の蛍光体焼結体に限られず、他の色の蛍光を発するものであってもよい。
【0079】
(実施例2)
さらに他の実施例を図3により説明する。図3は、別の実施例の発光部51を示す概略図である。
【0080】
発光部51は、互いに異なる色の蛍光を発する複数種類の焼結体が、互いに隣接して配置されてなる。より具体的に、レーザ光が照射されると、赤色の蛍光を発する蛍光体焼結体51a、緑色の蛍光を発する蛍光体焼結体51b、及び青色の蛍光を発する蛍光体焼結体51cが、それぞれストライプ状に形成され、かつ、隣接して配置され、それにより発光部51が形成されている。図3では、蛍光体焼結体51aが蛍光体焼結体51bと隣接し、蛍光体焼結体51bが蛍光体焼結体51cと隣接し、蛍光体焼結体51cが蛍光体焼結体51aと隣接し、そのような繰り返しにより発光部51が形成されている。
【0081】
続いて、図3に示す発光部51を作製する方法を図4により説明する。図4は、図3の発光部51を作製する方法を説明するための図である。
【0082】
図4(a)は、レーザ光が照射されると、赤色の蛍光を発する蛍光体焼結体50a、緑色の蛍光を発する蛍光体焼結体50b、及び青色の蛍光を発する蛍光体焼結体50cが積層される様子を示す。なお、各層は、別々に作製されている。
【0083】
図4(b)は、積層された各層が、加熱処理を施されて相互に融着する様子を示す。融着条件は、図2を参照して説明した条件とすることが好ましい。また、図4(b)のときに、各層は、融着ではなく、単に張り合わされた状態であってもよい。
【0084】
図4(c)は、相互に融着した蛍光体焼結体50a、蛍光体焼結体50b、及び蛍光体焼結体50cが、回転刃の付いたカッター60などで切断される様子を示す。切断方向は、特に限定されないが、蛍光体焼結体50cの表面に対して垂直に、等間隔で切断することが好ましく、それにより、後の工程で、形の整った発光部51を作製することができる。
【0085】
図4(d)は、相互に融着した蛍光体焼結体50a、蛍光体焼結体50b、及び蛍光体焼結体50cを、蛍光体焼結体50cの表面に対して垂直に、等間隔で切断した後の様子を示す。図中では、蛍光体焼結体51a、蛍光体焼結体51b、及び蛍光体焼結体51cがその順に積層され、それらを1つのブロックとして、計5つのブロックが作製されている。
【0086】
図4(e)は、互いに融着した蛍光体焼結体51a、蛍光体焼結体51b、及び蛍光体焼結体51cを横(図面左右方向)に倒し、そして、第1のブロックの蛍光体焼結体51cと第2のブロックの蛍光体焼結体51aとを融着させている。
【0087】
以上の方法により、図3の発光部51が作製される。
【0088】
(実施例3)
次に、発光部51の変形例を説明する。図3では、蛍光体焼結体51aが蛍光体焼結体51bと隣接し、蛍光体焼結体51bが蛍光体焼結体51cと隣接し、蛍光体焼結体51cが蛍光体焼結体51aと隣接し、それにより発光部51が形成されていることを説明した。
【0089】
これに対して、本実施例に係る発光部51の変形例では、蛍光体焼結体51a、蛍光体焼結体51b、及び蛍光体焼結体51cのうちの何れかに替わって、同一の位置に同様の形状からなる、レーザ光を透過する透光体が設けられる。例えば、図3において、本実施例に係る発光部51の変形例では、蛍光体焼結体51aが蛍光体焼結体51bと隣接し、蛍光体焼結体51bが透光体と隣接し、透光体が蛍光体焼結体51aと隣接し、そのような繰り返しにより発光部51が形成される。
【0090】
あるいは、本実施例に係る発光部51の変形例では、蛍光体焼結体51a、蛍光体焼結体51b、及び蛍光体焼結体51cに加えて、さらに、同様の形状からなる、レーザ光を透過する透光体が設けられる。例えば、図3において、本実施例に係る発光部51の変形例では、蛍光体焼結体51aが蛍光体焼結体51bと隣接し、蛍光体焼結体51bが蛍光体焼結体51cと隣接し、蛍光体焼結体51cが透光体と隣接し、透光体が蛍光体焼結体51aと隣接し、それにより発光部51が形成される。
【0091】
このような変形例の一例として、発光部51が、赤色の蛍光を発する蛍光体焼結体51a、緑色の蛍光を発する蛍光体焼結体51b、及び透光体からなり、かつ、発光部51に対して青色のレーザ光が照射される場合を考える。
【0092】
このとき、発光部51は、蛍光体焼結体51aから出力された赤色光、蛍光体焼結体51bから出力された緑色光、及び透過体を透過した青色のレーザ光によって、その赤色光と緑色光と青色光とが混色した白色光を出力することができる。
【0093】
つまり、発光部51は、透光体を透過するレーザ光を、そのままの色で発光部51から出力させることができるため、レーザ光の色である青色光を出力するための蛍光体焼結体51aを有する必要がなくなる。
【0094】
なお、レーザ光に含まれるコヒーレントな成分は人間の目に損傷を与える可能性が高く、レーザ光をそのまま照明装置の外部に出力することが問題となる場合がありうる。その場合には、例えばコヒーレントな光であるレーザ光を遮断するフィルタを用いることで、インコヒーレントな光のみを照明装置の外部に出力すればよい。
【0095】
また、透光体は、ガラス、Alなどの透光性材料を用いればよい。さらに、透光体は、内部を通過するレーザ光を散乱させる散乱材などを含み、それにより、自身を通過するレーザ光を多方向に散乱させる構成で実現されてもよい。透光体が散乱材を含む構成とすることによって、照明装置の外部にはインコヒーレントな光のみが出力されるようにしうる。
【0096】
(実施例4)
さらに他の実施例を図5により説明する。図5は、別の実施例の発光部52を示す概略図である。
【0097】
発光部52は、互いに異なる色の蛍光を発する複数種類の焼結体が、互いに隣接して配置されてなる。より具体的に、レーザ光が照射されると、赤色の蛍光を発する蛍光体焼結体52a、緑色の蛍光を発する蛍光体焼結体52b、及び青色の蛍光を発する蛍光体焼結体52cが、それぞれ略立方形状に形成され、かつ、一定の規則性をもってマトリックス状に隣接して配置され、それにより発光部52が形成されている。図5では、図面左下に位置する蛍光体焼結体52aを基点として見ると、横方向に、蛍光体焼結体52a、蛍光体焼結体52b、蛍光体焼結体52cがその順序で繰り返し配置されている。また、縦方向に、蛍光体焼結体52a、蛍光体焼結体52c、蛍光体焼結体52bがその順序で繰り返し配置されている。
【0098】
続いて、図5に示す発光部52を作製する方法を図6により説明する。図6は、図5の発光部52を作製する方法を説明するための図である。
【0099】
図6(a)は、図4(e)の状態を出発点として、ストライプ状の蛍光体焼結体51a、蛍光体焼結体51b、及び蛍光体焼結体51cが、その長手方向に対して垂直な方向に、カッター60によって切断される様子を示す。切断方向は、特に限定されないが、蛍光体焼結体51a等の長手方向に対して垂直な方向に、等間隔で切断することが好ましく、それにより、後の工程で、形の整った発光部52を作製することができる。
【0100】
図6(b)は、ストライプ状の蛍光体焼結体51a、蛍光体焼結体51b、及び蛍光体焼結体51cが、その長手方向に対して垂直な方向に、カッター60によって切断された後の様子を示す。図示するように、略立方形状の蛍光体焼結体52a、蛍光体焼結体52b、及び蛍光体焼結体52cがその順に融着し、それらを1つのブロックとして2つのブロックが図面横方向に融着して形成されている。
【0101】
図6(c)は、図6(b)の状態から、横方向に配列された一群の蛍光体焼結体52a、蛍光体焼結体52b、及び蛍光体焼結体52cを、列ごとに、横方向にずらした様子を示す。これにより、図面左下に位置する蛍光体焼結体52aを基点として見ると、横方向に、蛍光体焼結体52a、蛍光体焼結体52b、蛍光体焼結体52cがその順序で繰り返し配置されている。また、縦方向に、蛍光体焼結体52a、蛍光体焼結体52c、蛍光体焼結体52bがその順序で繰り返し配置されている。
【0102】
図6(d)は、図6(c)の状態から、隣接する蛍光体焼結体を互いに融着させて様子を示す。
【0103】
以上の方法により、図5の発光部52が作製される。
【0104】
(実施例5)
次に、発光部52の変形例を説明する。図5では、赤色の蛍光を発する蛍光体焼結体52a、緑色の蛍光を発する蛍光体焼結体52b、及び青色の蛍光を発する蛍光体焼結体52cが、それぞれ略立方形状に形成され、かつ、一定の規則性をもってマトリックス状に隣接して配置され、それにより発光部52が形成されていることを説明した。
【0105】
これに対して、本実施例に係る発光部51の変形例では、蛍光体焼結体51a、蛍光体焼結体51b、及び蛍光体焼結体51cのうちの何れかに替わって、同一の位置に同様の形状からなる、レーザ光を透過する透光体が設けられる。例えば、図5において、本実施例に係る発光部52の変形例では、図面左下に位置する蛍光体焼結体52aを基点として見ると、横方向に、蛍光体焼結体52a、蛍光体焼結体52b、透光体がその順序で繰り返し配置される。また、縦方向に、蛍光体焼結体52a、透光体、蛍光体焼結体52bがその順序で繰り返し配置される。
【0106】
あるいは、本実施例に係る発光部52の変形例では、蛍光体焼結体52a、蛍光体焼結体52b、及び蛍光体焼結体52cに加えて、さらに、同様の形状からなる、レーザ光を透過する透光体が設けられる。例えば、図5において、本実施例に係る発光部52の変形例では、図面左下に位置する蛍光体焼結体52aを基点として見ると、横方向に、蛍光体焼結体52a、蛍光体焼結体52b、蛍光体焼結体52c、透光体がその順序で繰り返し配置される。また、縦方向に、蛍光体焼結体52a、蛍光体焼結体52c、透光体、蛍光体焼結体52bがその順序で繰り返し配置される。
【0107】
このような変形例の一例としては、発光部52が、赤色の蛍光を発する蛍光体焼結体52a、緑色の蛍光を発する蛍光体焼結体52b、及び透光体からなり、かつ、発光部52に対して青色のレーザ光を照射する場合が考えられる。なお、その効果等は、図3を参照して説明した発光部51の変形例における効果と同様であるため、ここでの詳細説明は省略する。
【0108】
(実施例6)
さらに他の実施例を図7により説明する。図7は、別の実施例の発光部53を示す概略図である。
【0109】
発光部53は、青色のレーザ光が照射されると黄色の蛍光を発する酸窒化物蛍光体の単層のみからなり、その層は、焼結処理されて透光性を有する蛍光体焼結体をなしている。発光部53は、青色レーザ光が照射されると、発光部53を透過する際に青色光の一部を黄色光に変換し、一部を青色光のまま透過させる。すると、発光部53から出力された光は、青色光と黄色光とが混色された白色光となって出射される。
【0110】
このように、本実施の形態は、酸窒化物蛍光体の単層のみからなり、その層が焼結処理されて透光性を有する蛍光体焼結体を含む発光部も範疇に入る。
【0111】
(実施例7)
次に、発光部53の変形例である発光部54を図8により説明する。図8は、別の実施例の発光部54を示す概略図である。
【0112】
図示するように、発光部54は、青色のレーザ光が照射されると黄色の蛍光を発する酸窒化物蛍光体54aとレーザ光を透過する透光体54bとが繰り返し隣接されてなる。
【0113】
これにより、発光部54は、蛍光体焼結体54aから出力された黄色光、及び透過体を透過した青色のレーザ光によって、その黄色光と青色光とが混色した白色光を出力することができる。そして、発光部54は、蛍光体焼結体54aおよび透光体54bの材料、サイズ等を適宜変更することにより、色温度の高い白色光を出射するなど、色温度の制御を容易に実現することができる。
【0114】
(実施例8)
次に、さらに他の実施例に係る発光部を説明する。本実施例に係る発光部は、酸窒化物蛍光体と窒化珪素からなる封止材とを含む。ここで、酸窒化物蛍光体は、熱伝導率が他の多くの蛍光体材料と比べて高い窒化珪素(SiN:熱伝導率(約20W/mK))を母材とするものである。さらに、発光部は、酸窒化物蛍光体を封止するための封止材として窒化珪素を用いている。
【0115】
このため、本実施例に係る発光部は、ともに高い熱伝導率を有する酸窒化物蛍光体および封止材を含むことになるため、例えば発光部に熱伝導性部材を接触させるなどにより、発光部に発生する熱を迅速に外部に放熱させることができる。それゆえ、本実施例に係る発光部は、たとえ高出力・高密度のレーザ光が照射されたとしても、発光部が熱によって劣化する問題を容易に解決することができる。
【0116】
また、発光部は、その厚みがある範囲内に収まっておればレーザ光を透過させることができるため、上述したように、青色光と黄色光とが混色された白色光を出力するなどの構成を実現することができる。しかも、このとき、発光部は、自身が放熱体として機能するため、熱による劣化も併せて抑制することができる。
【0117】
(発光部5の配置および形状)
発光部5は、光出射面4bが位置する側の面において、反射鏡6の焦点位置またはその近傍に固定されている。発光部5の位置の固定方法は、この方法に限定されず、反射鏡6から延出する棒状または筒状の部材によって発光部5の位置を固定してもよい。
【0118】
発光部5の形状は、特に限定されず、直方体であっても、円柱状であってもよい。本実施形態では、発光部5は、例えば、直径2mm、厚み(高さ)0.8mmの円柱状である。また、発光部5にレーザ光が照射される面であるレーザ光照射面は、平面である必要は必ずしもなく、曲面であってもよい。ただし、レーザ光の反射を制御するためには、レーザ光照射面は、レーザ光の光軸に対して垂直な平面であることが好ましい。
【0119】
また、発光部5の厚みは0.8mmでなくともよい。また、ここで必要とされる発光部5の厚みは、発光部5における封止材と蛍光体との割合に従って変化する。発光部5における蛍光体の含有量が多くなれば、レーザ光が白色光に変換される効率が高まるため発光部5の厚みを薄くできる。
【0120】
(反射鏡6)
反射鏡6は、発光部5が出射したインコヒーレント光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。すなわち、反射鏡6は、発光部5からの光を反射することにより、ヘッドランプ1の前方へ進む光線束を形成する。この反射鏡6は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材であり、反射した光の進行方向に開口している。
【0121】
(半導体レーザ2の構造)
次に半導体レーザ2の基本構造について説明する。図9(a)は、半導体レーザ2の回路図を模式的に示したものであり、図9(b)は、半導体レーザ2の基本構造を示す斜視図である。同図に示すように、半導体レーザ2は、カソード電極19、基板18、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極17がこの順に積層された構成である。
【0122】
基板18は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の紫外〜青色の励起光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板の他の例として、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al、SiO、TiO、CrOおよびCeO等の酸化物絶縁体、並びに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
【0123】
アノード電極17は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
【0124】
カソード電極19は、基板18の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極17・カソード電極19に順方向バイアスをかけて行う。
【0125】
活性層111は、クラッド層113及びクラッド層112で挟まれた構造になっている。
【0126】
また、活性層111およびクラッド層の材料としては、紫外〜青色の励起光を得る為にはAlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としても良い。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnO等のII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
【0127】
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
【0128】
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
【0129】
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、励起光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
【0130】
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114より励起光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることができる。
【0131】
クラッド層113・クラッド層112は、n型およびp型それぞれのGaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSb、及びAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、並びに、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよく、順方向バイアスをアノード電極17及びカソード電極19に印加することで活性層111に電流を注入できるようになっている。
【0132】
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
【0133】
(発光部5の発光原理)
次に、半導体レーザ2から発振されたレーザ光による蛍光体の発光原理について説明する。
【0134】
まず、半導体レーザ2から発振されたレーザ光が発光部5に含まれる蛍光体に照射されることにより、蛍光体内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
【0135】
その後、この励起状態は不安定であるため、蛍光体内の電子のエネルギー状態は、一定時間後にもとの低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
【0136】
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
【0137】
白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色で構成でき、この原理・関係に基づき、半導体レーザから発振されたレーザ光の色と蛍光体が発する光の色とを、上述のように組み合わせることにより白色光を発生させることができる。
【0138】
〔ヘッドランプの別例〕
本実施形態の別例について図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、ヘッドランプ1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。ここでは、プロジェクタ型のヘッドランプ20について説明する。
【0139】
(ヘッドランプ20の構成)
まず、本実施形態に係るヘッドランプ20の構成について図10を用いて説明する。図10は、プロジェクタ型のヘッドランプであるヘッドランプ20の構成を示す断面図である。このヘッドランプ20は、プロジェクタ型のヘッドランプである点、並びに、導光部4の代わりに光ファイバー40を備えた点でヘッドランプ1とは異なる。
【0140】
同図に示すように、ヘッドランプ20は、半導体レーザ2、非球面レンズ3、光ファイバー(導光部)40、フェルール9、発光部5、反射鏡6、ハウジング10、エクステンション11、レンズ12、凸レンズ13およびレンズホルダ8を備えている。半導体レーザ2、光ファイバー40、フェルール9および発光部5によって発光装置の基本構造が形成されている。
【0141】
ヘッドランプ20は、プロジェクタ型のヘッドランプであるため、凸レンズ13を備えている。その他のタイプのヘッドランプ(例えば、セミシールドビームヘッドランプ)に本発明を適用してもよく、その場合には凸レンズ13を省略できる。
【0142】
(非球面レンズ3)
非球面レンズ3は、半導体レーザ2から発振されたレーザ光(励起光)を、光ファイバー40の一方の端部である入射端部に入射させるためのレンズである。非球面レンズ3は、光ファイバー40aの数だけ設けられている。
【0143】
(光ファイバー40)
光ファイバー40は、半導体レーザ2が発振したレーザ光を発光部5へと導く導光部材であり、複数の光ファイバー40aの束である。この光ファイバー40は、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分とするものであり、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。
【0144】
例えば、光ファイバー40は、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバー40の構造、太さおよび材質は上述のものに限定されず、光ファイバー40の長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
【0145】
この光ファイバー40は、上記レーザ光を受け取る複数の入射端部と、入射端部から入射したレーザ光を出射する複数の出射端部とを有している。複数の出射端部は、後述するように、フェルール9によって、発光部5のレーザ光照射面(受光面)に対して位置決めされている。
【0146】
(フェルール9)
図11は、光ファイバー40aの出射端部と発光部5との位置関係を示す図である。同図に示すように、フェルール9は、光ファイバー40aの出射端部を発光部5のレーザ光照射面に対して所定のパターンで保持する。このフェルール9は、光ファイバー40aを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものでもよいし、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって光ファイバー40aを挟み込むものでもよい。
【0147】
フェルール9の材質は、特に限定されず、例えばステンレススチールである。なお、図11では、光ファイバー40aを3つ示しているが、光ファイバー40aの数は3つに限定されない。また、フェルール9は、反射鏡6から延出する棒状の部材等によって固定されればよい。
【0148】
フェルール9が光ファイバー40aの出射端部を位置決めすることにより、複数の光ファイバー40aから出射されるレーザ光がそれぞれ有する光強度分布における最も光強度の大きい部分(最大光強度部分)が、発光部5の互いに異なる部分に対して照射される。この構成により、レーザ光が一点に集中することにより発光部5が著しく劣化することを防止できる。なお、出射端部は、レーザ光照射面に接触していてもよいし、僅かに間隔をおいて配置されてもよい。
【0149】
なお、各光ファイバー40aの出射端部を分散させて配置する必要は必ずしもなく、光ファイバー40の束をひとまとめにしてフェルール9で位置決めしてもよい。
【0150】
(発光部5)
発光部5は、上述したものと同様、光ファイバー40の出射端部から出射されたレーザ光を受けて白色の蛍光を発するものである。これにより、色温度の高い白色光を出射することができる。また、発光部5は、後述する反射鏡6の第1焦点の近傍に配置される。この発光部5は、反射鏡6の中心部を貫いて延びる筒状部の先端に固定されてもよい。この場合には、筒状部の内部に光ファイバー40を通すことができる。
【0151】
(反射鏡6)
反射鏡6は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された部材であり、発光部5から出射した光を反射することにより、当該光をその焦点に収束させる。ヘッドランプ20がプロジェクタ型のヘッドランプであるため、反射鏡6の基本形状は、反射した光の光軸方向に平行な断面が楕円形状となっている。反射鏡6には、第1焦点と第2焦点とが存在し、第2焦点は、第1焦点よりも反射鏡6の開口部に近い位置に存在している。後述する凸レンズ13は、その焦点が第2焦点の近傍に位置するように配置されており、反射鏡6によって第2焦点に収束された光を前方に投射する。
【0152】
(凸レンズ13)
凸レンズ13は、発光部5から出射された光を集光し、集光した光をヘッドランプ1の前方へ投影する。凸レンズ13の焦点は、反射鏡6の第2焦点の近傍であり、その光軸は、発光部5が有する発光面のほぼ中央を貫いている。この凸レンズ13は、レンズホルダ8によって保持され、反射鏡6に対する相対位置が規定されている。なお、レンズホルダ8を、反射鏡6の一部として形成してもよい。
【0153】
(その他の部材)
ハウジング10は、ヘッドランプ20の本体を形成しており、反射鏡6等を収納している。光ファイバー40は、このハウジング10を貫いており、半導体レーザ2は、ハウジング10の外部に設置される。半導体レーザ2は、レーザ光の発振時に発熱するが、ハウジング10の外部に設置することにより半導体レーザ2を効率良く冷却することが可能となる。また、半導体レーザ2は、故障する可能性があるため、交換しやすい位置に設置することが好ましい。これらの点を考慮しなければ、半導体レーザ2をハウジング10の内部に収納してもよい。
【0154】
エクステンション11は、反射鏡6の前方の側部に設けられており、ヘッドランプ20の内部構造を隠して見栄えを良くするとともに、反射鏡6と車体との一体感を高めている。このエクステンション11も反射鏡6と同様に金属薄膜がその表面に形成された部材である。
【0155】
レンズ12は、ハウジング10の開口部に設けられており、ヘッドランプ20を密封している。発光部5が発した光は、レンズ12を通ってヘッドランプ1の前方へ出射される。
【0156】
以上のように、ヘッドランプの構造そのものは、どのようなものであってもよく、本発明において重要なのは、発光部5が酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含み、たとえ高出力・高密度のレーザ光が照射されたとしても、発光部5に発生する熱を迅速に外部に放熱させることができるということである。
【0157】
〔ヘッドランプ1によって得られる効果〕
次に、ヘッドランプ1によって得られる効果を説明する。
【0158】
ヘッドランプ1は、レーザ光を出射する半導体レーザ2と、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含み、半導体レーザ2から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する発光部5と、を備えることを特徴としている。
【0159】
上記構成によれば、発光部5は、半導体レーザ2から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する。そのレーザ光は、他の励起光源(例えばLED)と比べて高出力・高密度であるため、その照射を受けた発光部5の温度は上昇しやすくなる。そのため、発光部5は、発生する熱を迅速に外部に放熱できなければ、熱によって劣化(変色、変形)してしまう。
【0160】
この点、ヘッドランプ1では、発光部5は、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含んでおり、この酸窒化物蛍光体は、熱伝導率が他の多くの蛍光体材料と比べて高い窒化珪素(SiN:熱伝導率(約20W/mK))を母材とするものである。つまり、ヘッドランプ1では、高い熱伝導率の酸窒化物蛍光体を含む発光部5を備えることで、例えば発光部5に熱伝導性部材を接触させるなどにより、発光部5に発生する熱を迅速に外部に放熱させることができる。それゆえ、ヘッドランプ1は、たとえ高出力・高密度のレーザ光が照射されたとしても、発光部5が熱によって劣化する問題を容易に解決することができる。
【0161】
加えて、酸窒化物蛍光体は、焼結されて蛍光体焼結体となると透明性が増し、それにより高い透光性を示すようになる。つまり、発光部5は、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含むことにより、自身が蛍光体および放熱体であると同時に、高い透光性という性質を備えるようになる。そのため、例えば、発光部5が、青色レーザ光を照射されると、発光部5を透過する際に青色光の一部を黄色光に変換し、かつ、その透光性ゆえに青色光の一部を透過させることができる。これにより、発光部5は、青色光と黄色光とが混色された白色光を出力することができる。しかも、このとき、発光部5は、自身が放熱体として機能するため、熱による劣化も併せて抑制することができる。
【0162】
このように、ヘッドランプ1は、上記構成を備えることにより、レーザ光を照射したときの発光部5の温度上昇を抑えることができるという効果を奏する。
【0163】
本発明に係る車両用前照灯は、ヘッドランプ1と、発光部5から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡6と、を備えることを特徴としている。
【0164】
上記構成によれば、反射鏡6は、発光部5からの光を反射することにより、車両用前照灯の前方へ進む光線束を形成することができる。そして、車両用前照灯は、ヘッドランプ1を備えているため、レーザ光を照射したときの発光部5の温度上昇を抑えることが可能である。それゆえ、車両用前照灯では、熱による発光部5の劣化(変色や変形)が抑制されるため、車両前照灯そのものの寿命を延ばすことができる。
【0165】
また、ヘッドランプ1では、蛍光体焼結体は、互いに異なる色の蛍光を発する複数種類の蛍光体焼結体50a等を含むことが好ましい。
【0166】
上記構成によれば、蛍光体焼結体は、互いに異なる色の蛍光を発する複数種類の蛍光体焼結体50a等を含む。これにより、ヘッドランプ1は、レーザ光が照射されることで、複数の異なる色の蛍光を混色した多種多様な色の出力や、色温度の制御などを容易に実現することができる。
【0167】
また、ヘッドランプ1では、蛍光体焼結体50a等は、レーザ光の光軸に沿って積層されていることが好ましい。
【0168】
種類の異なる蛍光体を混ぜて、それを透明な焼結体に焼結することは技術的に極めて困難である。
【0169】
そこで、蛍光体焼結体50a等をレーザ光の光軸に沿って積層すれば、互いに異なる色の蛍光を発する蛍光体焼結体50a等を含むように発光部50等を容易に作製することができ、上述した技術的な困難性を克服することができる。また、積層された蛍光体焼結体50a等のそれぞれの特性(材料、厚みなど)を変化させることで、バリエーション豊かに、多種多様な色の出力や、色温度の制御などを実現することができる。
【0170】
また、ヘッドランプ1では、蛍光体焼結体50a等は、互いに隣接して配置されていることが好ましい。
【0171】
種類の異なる蛍光体を混ぜて、それを透明な焼結体に焼結することは技術的に極めて困難である。
【0172】
そこで、蛍光体焼結体50a等を互いに隣接して配置すれば、互いに異なる色の蛍光を発する蛍光体焼結体50a等を含むように発光部51等を容易に作製することができ、上述した技術的な困難性を克服することができる。また、蛍光体焼結体50a等の配置を変化させることで、バリエーション豊かに、多種多様な色の出力や、色温度の制御などを実現することができる。
【0173】
また、ヘッドランプ1では、複数種類の焼結体は、青色、赤色、および緑色の蛍光をそれぞれ発するものであることが好ましい。
【0174】
照明装置の用途によっては、例えば車両用前照灯などでは、要求される白色の色度範囲が法律により規定されている。そこで、ヘッドランプ1が車両用前照灯に適用される場合などを想定すると、発光部50等が、白色光を出力することが可能な構成で実現されていることが好ましい。
【0175】
そこで、複数種類の焼結体が、青色、赤色、および緑色の蛍光をそれぞれ発することにより、青色、赤色、および緑色の混色によって白色を出力することができる。また、色温度についても、その3種類の焼結体の構成比率を適宜変化させることにより、市場において多くのユーザに好まれる色温度に設定することができる。
【0176】
また、ヘッドランプ1では、酸窒化物蛍光体は、CeのドープされたCa上記構成−SiAlON蛍光体、Ceのドープされたβ−SiAlON蛍光体、またはCeのドープされたJEM相蛍光体であることが好ましい。
【0177】
上記構成により、レーザ光が発光部50等を透過する際に、レーザ光の一部を青色光に変換することができ、かつ、高い発光効率を得ることができる。
【0178】
また、ヘッドランプ1では、酸窒化物蛍光体は、EuのドープされたCASN蛍光体、またはEuのドープされたSCASN蛍光体であることが好ましい。
【0179】
上記構成により、レーザ光が発光部50等を透過する際に、レーザ光の一部を赤色光に変換することができ、かつ、高い発光効率を得ることができる。
【0180】
また、ヘッドランプ1では、酸窒化物蛍光体は、Euのドープされたβ−SiAlON蛍光体であることが好ましい。
【0181】
上記構成により、レーザ光が発光部50等を透過する際に、レーザ光の一部を緑色光に変換することができ、かつ、高い発光効率を得ることができる。
【0182】
また、ヘッドランプ1では、発光部53等は、レーザ光を透過する透光体を含んでいることが好ましい。
【0183】
上記構成によれば、発光部51等は、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体とレーザ光を透過する透光体54bとを含む。このとき、例えば、蛍光体焼結体が、青色のレーザ光を照射されると黄色光を出力する場合、その黄色光と、透光体54bを透過した青色光とが混色した白色光を出力させることができる。
【0184】
このように、ヘッドランプ1は、上記構成を備えることにより、透光体54bを透過するレーザ光を、そのままの色で発光部51等から出力させることができる。したがって、発光部51等は、レーザ光の色に変換するための酸窒化物蛍光体を含む必要がなくなる。
【0185】
なお、レーザ光に含まれるコヒーレントな成分は人間の目に損傷を与える可能性が高く、レーザ光をそのままヘッドランプ1の外部に出力することが問題視される場合も考えられる。その場合には、例えば透過フィルタを用いることで、インコヒーレントな光のみをヘッドランプ1の外部に出力すればよい。
【0186】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明は、照明光として高い色温度が要求される照明装置や前照灯、特に車両用等のヘッドランプに適用することができる。
【符号の説明】
【0188】
1,20 ヘッドランプ(照明装置)
2 半導体レーザ
3 非球面レンズ
4 導光部
4a 光入射面
4b 光出射面
5、50〜54 発光部
6 反射鏡
8 レンズホルダ
9 フェルール
10 ハウジング
11 エクステンション
12 レンズ
13 凸レンズ
17 アノード電極
18 基板
19 カソード電極
40、40a 光ファイバー
50a〜52a、50b〜52b、50c〜52c、54a〜54c 蛍光体焼結体(焼結体)
60 カッター
103 発光点
111 活性層
112、113 クラッド層
114、115 開面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含み、上記レーザ光源から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する発光部と、
を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
上記蛍光体焼結体は、互いに異なる色の蛍光を発する複数種類の焼結体を含むことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
上記複数種類の焼結体は、上記レーザ光の光軸に沿って積層されていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
上記複数種類の焼結体は、互いに隣接して配置されていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項5】
上記複数種類の焼結体は、青色、赤色、および緑色の蛍光をそれぞれ発することを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
上記酸窒化物蛍光体は、CeのドープされたCaα−SiAlON蛍光体、Ceのドープされたβ−SiAlON蛍光体、またはCeのドープされたJEM相蛍光体であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
上記酸窒化物蛍光体は、EuのドープされたCASN蛍光体、またはEuのドープされたSCASN蛍光体であることを特徴とする請求項2から5の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
上記酸窒化物蛍光体は、Euのドープされたβ−SiAlON蛍光体であることを特徴とする請求項2から5の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項9】
上記発光部は、上記レーザ光を透過する透光体を含んでいることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項10】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
酸窒化物蛍光体と窒化珪素からなる封止材とを含み、上記レーザ光源から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する発光部と、
を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の照明装置と、
上記発光部から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡と、を備えることを特徴とする車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−123940(P2012−123940A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271752(P2010−271752)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】