説明

照明装置及びその製造方法

【課題】LEDを光源に用いた光源装置において、簡易な構成で広範囲を照明可能であり、かつ、振動が生じてもLEDやその実装部が損傷を受ける可能性が低い照明装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる絶縁フィルム2、絶縁フィルム2上に形成された配線層3、及び配線層3上に形成された熱可塑性樹脂からなる絶縁層4を有し、少なくとも1箇所に曲率半径R(mm)を有する折り曲げ部1aが形成されている変形可能なフレキシブル回路基板1と、フレキシブル回路基板1に実装される複数のLED7と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLED(発光ダイオード)を光源として用いた照明装置及びその製造方法に関する。更に詳しくは、家庭や公共施設等で使用される照明装置をはじめ、耐振動性が要求される自動車やアミューズメント施設、道路等の照明装置に最適なLEDを用いた照明装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDが照明装置の光源として用いられるようになってきている。LEDは白熱電球等と比べて長寿命で発熱が少ないため、複数個連結して使用することが可能であり、例えば、複数個のLEDを薄板状の導体により連結して帯状の光源連結体(LEDモジュール)を形成することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第02/089222号のパンフレット
【特許文献2】特開2007−48638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のLEDを用いる照明装置及びその製造方法には、以下の課題がある。
【0005】
一般にLEDは照射する光の指向性が強いため、広い角度範囲を照明するには複数のLEDを異なる方向に向けて配置する必要がある。そのため、例えば、直線形の蛍光灯のように周方向360度にわたって均一に光を発するような長寸の照明装置にLEDを用いる場合、複数のLEDを周方向及び軸線方向に分散配置する必要があり、そのため、煩雑な製造工程を必要とし、製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
また、LEDを用いた照明装置の一例として、特許文献2には、LEDモジュール、LED駆動用の回路基板、ケース、口金などから構成されたLED電球が提案されている。しかし、従来のLED電球では、光源であるLEDを平面上に実装しているので、広範囲に渡って照明することが難しかった。
【0007】
さらに、自動車やアミューズメント施設、道路等の振動を伴う場所でもLEDを光源とした照明装置が使われている。しかしながら、振動によりLEDやその実装部が損傷を受け、照明装置が故障するという問題があった。
【0008】
即ち、従来では、LEDを光源に用いた光源装置において、簡易な構成で広範囲を照明可能であり、かつ、振動が生じてもLEDやその実装部が損傷を受けにくい照明装置に関しては何ら開示されていない。そこで本発明の目的は、LEDを光源に用いた光源装置において、簡易な構成で広範囲を照明可能であり、かつ、振動が生じてもLEDやその実装部が損傷を受ける可能性が低い照明装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
熱可塑性樹脂からなる絶縁フィルム、前記絶縁フィルム上に形成された配線層、及び前記配線層上に形成された熱可塑性樹脂からなる絶縁層を有し、少なくとも1箇所に曲率半径R(mm)を有する折り曲げ部が形成されている変形可能なフレキシブル回路基板と、
前記フレキシブル回路基板に実装される複数のLEDと、
を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、曲率半径R(mm)を有する折り曲げ部が形成されているフレキシブル回路基板を備えていることにより、平面状の基板にLEDを実装する場合と比較すると広範囲を照明可能となる。また、平面状の基板と比較すると、限られたスペースにより多くのLEDを実装することが可能になる。つまり、単位領域あたりに実装されるLEDの数を多くすることができるので、照明の明度を向上させることができる。また、折り曲げ部が形成されていることでフレキシブル回路基板が変形可能に構成されているので、外力等が作用して振動が生じた場合も、フレキシブル回路基板全体で振動を吸収することができ、振動が生じてもLEDが損傷を受ける可能性が低い。また、フレキシブル回路基板が熱可塑性樹脂によって形成されているので、加熱・加圧することにより、フレキシブル回路基板を自在に成形可能であり、即ち、照明範囲を容易に変更することができる。さらに、不要になった熱可塑性樹脂は再度加熱することで元の形状に戻すことができるので、資源の再利用が可能になる。
【0011】
また、
前記曲率半径R(mm)は0.3mm以上であると共に、
前記フレキシブル回路基板は、
前記曲率半径R(mm)を維持した状態で変形可能に構成されていると好適である。
【0012】
かかる構成によれば、折り曲げ部の曲率半径R(mm)が0.3mm以上であるので、配線幅を更に微細化した場合も、折り曲げ部において配線層にかかる応力を、配線層の剥離、破断が生じないレベルに抑えることができる。また、フレキシブル回路基板は、曲率半径R(mm)を維持した状態で変形可能に構成されているので、折り曲げ部において配線層が絶縁フィルムに沿って形状を維持できる。即ち、繰り返し曲げ伸ばしされる、曲率が大きくなるように折り曲げられる、又は温度の上昇下降が繰り返されて熱膨張によってフレキシブル回路基板が変形したとしても、折り曲げ部において配線層の剥離、破断が生じる可能性が低く、優れた接続信頼性を維持することができる。さらに、折り曲げ部において曲率半径R(mm)が維持され、即ち、フレキシブル回路基板、及び照明装置の立体形状が自立的に維持されることになるので、照明を行うにあたり、フレキシブル回路基板、又は照明装置の立体形状を維持するための形状支持手段(支柱など)を設ける必要がない。従って、製造工程を簡略化し、製造コストを低減することができる。
【0013】
また、
前記フレキシブル回路基板の両端には、
前記LEDに電力を供給する駆動回路に接続される接続手段が設けられていると好適である。
【0014】
かかる構成によれば、接続手段を設けることによって駆動回路に対して照明装置を容易に取り付けることができるので、照明装置の製造コストを低減させることができる。また、フレキシブル回路基板の交換が容易に行えるので、ユーザビリティの向上につながる。
【0015】
また、
前記接続手段とは、オス・メスのクリンプ式のコンタクトであると好適である。
【0016】
かかる構成によれば、比較的安価な接続手段であるオス・メスのクリンプ式のコンタクトを照明装置に設けるので、照明装置の製造コストを低減させることができる。
【0017】
また、
前記熱可塑性樹脂とは、液晶ポリマーであると好適である。
【0018】
かかる構成によれば、比較的安価で、かつ成形容易な液晶ポリマーをフレキシブル回路基板の材料として用いることにより、照明装置の製造コストを抑えることが可能になる。
【0019】
また、
前記フレキシブル回路基板は、少なくとも一部が透明であると好適である。
【0020】
かかる構成によれば、LEDから射出された光が、フレキシブル回路基板の透明部分を透過することができるので、照明装置によってより広範囲を照明することができる。
【0021】
また、上記目的を達成するために本発明にあっては、
上記照明装置の製造方法であって、
前記LEDが実装されている状態のフレキシブル回路基板を成形装置によって折り曲げ、フレキシブル回路基板に曲率半径R(mm)の折り曲げ部を形成する第1の工程と、
曲率半径R(mm)の折り曲げ部が形成されている状態の前記フレキシブル回路基板に対して、少なくとも前記折り曲げ部を加熱する第2の工程と、
を有していることを特徴とする。
【0022】
かかる製造方法によれば、比較的に簡易な製造方法によって、フレキシブル回路基板に対して折り曲げ部を形成することができるので、照明装置の製造コストを抑えることができる。
【0023】
また、
前記第1の工程において、
前記フレキシブル回路基板の両端にテンションを加えた状態で、前記フレキシブル回路基板の厚さ方向から、前記成形装置を押し当てることにより、前記フレキシブル回路基板に、曲率半径R(mm)の折り曲げ部を複数形成すると好適である。
【0024】
かかる製造方法によれば、例えば蛇腹構造のような、折り曲げ部が複数形成されたフレキシブル回路基板を備える照明装置を容易に製造することができ、照明装置の製造コストを低減できる。また、折り曲げ部を複数設けることによって、より広範囲を照明することが可能になる。
【0025】
また、
前記第1の工程、及び前記第2の工程における前記フレキシブル回路基板との接触領域にゴム状弾性部材が設けられている前記成形装置を用いて、前記第1の工程、及び前記第2の工程を行うと好適である。
【0026】
かかる製造方法によれば、ゴム状弾性部材が緩衝材として機能することにより、フレキシブル回路基板及びLEDを衝撃、摩擦等から保護することができる。即ち、製造工程において、フレキシブル回路基板に実装されているLEDを成形装置によって押潰する虞がない。また、ゴム状弾性部材を介してLEDと成形装置とが接触するので、加熱時にLEDに直接的に熱が伝わらず、熱によるLEDの破損、劣化を防ぐことが可能になる。
【0027】
また、
前記熱可塑性樹脂とは液晶ポリマーであって、
前記第2の工程では、
加熱温度が、前記フレキシブル回路基板の表面温度が150℃以上かつ液晶ポリマーの熱変形開始温度未満となる温度であって、
加熱時間が1時間以内であると好適である。
【0028】
かかる製造方法によれば、液晶ポリマーの熱変形開始未満の加熱温度で液晶ポリマーを加熱するので、液晶ポリマーが流動することがなく、フレキシブル回路基板の外観、性能を損なうことがない。また、フレキシブル回路基板の表面温度が150℃以上となる加熱温度であるので、液晶ポリマーに対して折り曲げ部を確実に形成することができ、さらに、加熱が終わった後も折り曲げ部が元の形状に戻ることはない(曲率半径R(mm)が維持される)。また、加熱時間が1時間以内であれば、生産効率を向上させることができると共に、長時間加熱することで生じる、液晶ポリマー変色、熱変形の問題、及びLEDの損傷を回避することが可能になる。さらに、比較的低い温度で加熱を行っているので、製造エネルギーを低減でき、照明装置の製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、LEDを光源に用いた光源装置において、簡易な構成で広範囲を照明可能であり、かつ、振動が生じてもLEDやその実装部が損傷を受ける可能性が低い照明装置及びその製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る照明装置の概略構成図。
【図2】本実施形態におけるフレキシブル回路基板の製造方法を示す概略図。
【図3】本実施形態におけるフレキシブル回路基板の製造方法を示す概略図。
【図4】本実施形態における照明装置の製造工程を示す図。
【図5】本実施形態における振動試験の方法を示す概略図。
【図6】従来のフレキシブル回路基板の模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0032】
[実施形態]
(1:照明装置の概略構成)
図1を参照して、本実施形態に係る照明装置10の概略構成について説明する。照明装置10は、複数のLED7、LED7を実装したフレキシブル回路基板1、フレキシブル回路基板1の両端に設けられ、LED7を駆動する駆動回路部10bに接続される接続手段1b、LED7を覆うドーム状の透光部10a、及び外部電源に接続される円筒状の口金部10cを備えている。即ち、本実施形態に係る照明装置10は、フィラメント部に対して、LED実装済みのフレキシブル回路基板1が使用されている。
【0033】
LED7としては、各種の半導体素子を利用することができ、たとえば、GaAs(ガリウム砒素)、GaP(ガリウムリン)、GaAsP(ガリウム砒素リン)、GaAlAs(ガリウムアルミニウム砒素)、AlGaInP(ガリウムアルミニウムインジウムリン)、SiC(シリコンカーバイド:炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)などの化合物を原料としたものを含むもので、これらのp型、i型、n型半導体を積層したpin型接合、或いは該pin型接合を複層したタンデム型のものを用いることができる。シリコンを用いる場合は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、単結晶化合物及び多結晶化合物などを含むものを用いてもよい。
【0034】
透光部10aは、LED7を覆って保護すると共に、LED7から射出される光を透光
させるものである。透光部10aは、耐衝撃性及び耐熱性に優れたものが良く、例えば、乳白色のポリカーボネート樹脂製などが好ましい。
【0035】
口金部10cは、内側に空洞を有しており、一端側が開口し、他端側には底が設けられている。口金部10cの外周面は一極端子の役割をなしており、底面には外周面の一極端子と絶縁された他極端子が突設されている。他極端子及び一極端子は、リード線を介して接続手段1bに電気的に接続可能である。
【0036】
接続手段1bには、フレキシブル回路基板1と、LED7を駆動する駆動回路部10bとを容易に電気的に接続するため、オス・メスのクリンプ式のコンタクトを使用することが好ましい。オス・メスのクリンプ式のコンタクトとしては、例えば、タイコ エレクト
ロニクス アンプ社製のYD/YDD/YZ/YK/YMシリーズやYZ/YE/YK/
YMシリーズ、YPシリーズ、YT/YPシリーズ等が好ましい。
【0037】
(2:フレキシブル回路基板の概略構成)
本実施形態に係る照明装置10は、少なくとも1箇所に折り曲げ部1aが形成されているフレキシブル回路基板1に対して複数のLED7が設けられている。以下、フレキシブル回路基板の概略構成について説明する。
【0038】
図6に、従来より用いられているフレキシブル回路基板100の概略構成を示す。図6(a)に示すように、フレキシブル回路基板100は、絶縁フィルム20上に形成された配線層30と、配線層30上に形成された絶縁層40(一般的に、カバーレイ層(CL層)と称される)とを有している。さらに、図6(b)に示すように、これらを複層化したフレキシブル回路基板も知られている。図示するように、複層化されたフレキシブル回路基板100には、各々の配線層30を電気的に接続するためのスルーホール50が設けられており、これにより、配線同士の複雑な接続が可能になっている。なお、絶縁フィルム20、及び絶縁層40には、ポリイミドフィルムが用いられている。このようなフレキシブル回路基板100が繰り返し曲げ伸ばしされる、あるいは曲率が大きくなるように折り曲げられると、折り曲げ部において、曲げ応力に起因して絶縁性材料(即ち、絶縁フィルム、および適宜設けられる接着層)から配線層(即ち、銅箔)が剥離し、または配線層が破断し、その結果、接続不良を招くことがある。また、熱膨張を繰り返すことでも、同様の接続不良を招くことがある。つまり、このような従来のフレキシブル回路基板を照明装置に用いることは現実的ではない。そこで本実施形態では、フレキシブル回路基板1の接続信頼性を高め、かつ、照明装置10の耐振動性を向上させることが可能なフレキシブル回路基板1を照明装置10に用いている。
【0039】
図1(c)に、本実施形態におけるフレキシブル回路基板1の模式的断面図を示す。図示するように、フレキシブル回路基板1は、絶縁フィルム2、絶縁フィルム2上に形成された配線層3、配線層3上に形成された絶縁層4、及び配線層3に実装されたLED7とから構成されている。なお、配線層3は接着層5によって絶縁フィルム2上に接着されているが、接着層5を設けない構成であってもよい。また、図1(b)に示すように、フレキシブル回路基板1には、少なくとも1箇所に、曲率半径R(mm)の折り曲げ部1a(立体成形部、又は湾曲部ともいう)を有している。本実施形態では、複数の折り曲げ部1aを有する蛇腹形状のフレキシブル回路基板1について説明するが、フレキシブル回路基板1の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、折り曲げ部1aが1箇所設けられた、略U字形状であってもよい。
【0040】
配線層3は、圧延銅箔および電解銅箔等の公知の金属箔を、接着層5で絶縁フィルム2に貼り付けることにより形成されている。あるいは、配線層3は、絶縁フィルム2の表面(または絶縁フィルム2に形成された接着層5の表面)に、銅または銀のような金属を用
いて、蒸着またはスパッタ等の方法により形成することもできる。接着層5は、ポリイミド等の公知の熱可塑性樹脂、またはシアネートエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、フェノール系樹脂、ナフタレン樹脂、ユリア樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ケイ素樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びポリウレタン樹脂等の公知の熱硬化性樹脂を用いて形成される。あるいは、接着層5は、上述の有機樹脂に、シリカまたはアルミナ等の無機フィラーを分散させたもので形成することもできる。
【0041】
絶縁フィルム2、及び絶縁層4は、以下の熱可塑性樹脂が推奨され、液晶ポリマー(例えば、商品名「ロードラン」(ユニチカ社製)、「EPE」(三菱化学社製)、「出光LCP」(出光石油化学社製)、「エコノール」(住友化学社製)、「ザイダー」(日本石油化学社製)、「LCP」(東ソー社製)、「ベクトラ」(ヘキスト−セラニーズ社製)、「SRP」(ICI社製)、「べクスター」(クラレ社製)、「バイアック」(ジャパンゴアテックス社製)、「スミカスーパーLCP」(住友化学社製))、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP、例えば商品名「ゼオネックス」(日本ゼオン製)、「ゼオノア」(日本ゼオン製))等が挙げられる。絶縁フィルム2、及び絶縁層4に用いられる熱可塑性樹脂は、同じ材料であってもよいし、それぞれ異なる材料が選択されてもよい。なお、以下では絶縁フィルム2、及び絶縁層4に液晶ポリマーを用いた場合について説明する。
【0042】
上述したように、本実施形態に係るフレキシブル回路基板1は、複数箇所に曲率半径R(mm)の折り曲げ部1aを有する蛇腹形状に形成されている。かかる形状を有する場合、フレキシブル回路基板1が伸縮変形することが可能になり、かつ、外力が作用した場合も、フレキシブル回路基板1全体が伸縮変形することで、局所的に応力が集中することを防止できる。よって、振動が生じてもLED7やその実装部が損傷を受ける可能性が低い。また、例えば、図1(b)に示すように、各々の折り曲げ部1aの両側(折り曲げ部1aは除く)にLED7を実装すれば、LED7によって広範囲を照明することが出来ると共に、平面状の基板に実装する場合と比較すると、単位領域あたりに実装されるLEDの個数が増えるので、照明の明度を向上させることができる。なお、ここではフレキシブル回路基板1が1つ設けられている場合について説明しているが、図1(d)に示すように、1つの照明装置に複数のフレキシブル回路基板1に設ける構成であってもよい。この場合は、照明範囲をさらに広範囲に広げることが可能になる。
【0043】
さらに、本実施形態に係るフレキシブル回路基板1は、以下の特徴たる構成を有している。即ち、通常、フレキシブル回路基板に折り曲げ部を形成すると、外力が作用して振動した場合などに折り曲げ部に局所的に応力が集中することで、折り曲げ部の曲率半径が変化し、配線層の剥離、破断が生じてしまう。しかしながら本実施形態では、後述する製造方法によってフレキシブル回路基板1を製造することで、振動した場合でも、折り曲げ部1aの曲率半径R(mm)が維持されるフレキシブル回路基板1を得ることができる。よって、折り曲げ部1aの曲率半径R(mm)を一定に保つことができ、折り曲げ部1aで配線の剥離、破断が生じる虞がなく、照明装置10の耐振動性を向上させることができる。
【0044】
(3:照明装置の製造方法)
本実施形態に係る照明装置10は、フレキシブル回路基板1を製造し、製造されたフレキシブル回路基板1にLED7を実装し、さらに、LED7が実装されたフレキシブル回路基板1を後述の方法によって折り曲げることで製造されるものである。以下、順に照明装置10の製造方法について説明する。
【0045】
まず、図2、図3を参照して、フレキシブル回路基板1の製造工程について説明する。
図2は、片面フレキシブル回路基板1の製造工程を示す概略図であり、図3は、3層構造を有する多層フレキシブル回路基板1の製造工程を示す概略図である。
【0046】
片面フレキシブル回路基板1を製造する際は、まず、図2(a)に示すように、金属張りフィルム11を用意する。金属張りフィルム11は、熱可塑性樹脂からなる絶縁フィルム2の表面に接着層5を形成し、接着層5の表面に金属箔3Aを積層し、熱圧着により3つの層を一体化することにより形成できる。なお、金属張りフィルム11を形成する別の手法としては、金属箔上に絶縁フィルムの前駆体であるワニスを塗布し、この前駆体を乾燥させる手法、絶縁フィルム上に蒸着またはスパッタリング等で金属層を形成する手法、および導電性ペーストを塗布した絶縁フィルムに電解めっきにより配線層を形成する手法などが挙げられる。
【0047】
次に図2(b)に示すように、金属層(金属箔3A)を所望の配線パターンにエッチングして配線層3を形成し、フレキシブル回路基板1を得る。次に図2(c)に示すように、配線層3の上に熱可塑性樹脂を塗布することによって絶縁層4を形成する。あるいは、絶縁層4は、熱可塑性樹脂から成る絶縁フィルムを熱圧着することにより形成してもよい。そして、このようにして絶縁層4を形成した後に、LED7を所望の位置に固定し、LED7と配線層3とを電気的に接続させる。以上、図2(a)〜(c)に示す工程により、LED7が実装された片面フレキシブル回路基板1が得られる。また、上述した接続手段1bをフレキシブル回路基板1の両端に取り付けてもよい。なお、LED7は、折り曲げ部となる部分を除く領域、即ち折り曲げ部形成時に金型(詳細は後述する)が接触しない領域に実装されるとよい。
【0048】
本実施形態に係るフレキシブル回路基板1は、上述した片面構造のみならず、以下に示す多層構造も採用することができる。図3を参照して、3層構造を有する多層フレキシブル回路基板の製造方法について説明する。
【0049】
まず、図3(a)に示すように、図2(a)に示す金属張りフィルム11、片面フレキシブル回路基板1、および金属箔9を用意し、さらに、これら3つのシートを接合するための接着シート6を2枚用意する。接着シート6としては、上述した絶縁層4用の熱可塑性樹脂をシート状に成形したものを使用する。これらを図示するように積層し、積層したものを加熱押圧することにより一体化させる。
【0050】
次に図3(b)に示すように、所望の位置にドリルやレーザーを用いて貫通孔8を形成し、スルーホールめっき8aして、配線層3間を電気的に接続させる。図3(b)には、配線層間をめっきにより接続した形態を示している。なお、別の方法として、貫通孔8内に導電性ペーストを充填し、導電性ペーストを硬化させることにより、配線層間を電気的に接続することも可能である。
【0051】
次に図3(c)に示すように、エッチング等の手法で、それぞれの表面に設けられている金属箔3A、9を所望の配線パターンを有する配線層3とする。その後、上述した手法(図2(c)参照)と同様にして、絶縁層4を形成し、LED7を実装する。これにより、LED7が実装された3層構造を有する多層フレキシブル回路基板を製造することができる。なお、ここでは3層構造を有する形態について説明しているが、多層フレキシブル回路基板の構造は3層構造に限られるものではない。
【0052】
次に図4を参照して、上述の製造方法によって製造されたフレキシブル回路基板1に対して、折り曲げ部1aを形成する方法について説明する。
【0053】
フレキシブル回路基板1に折り曲げ部1aを形成する場合は、LED7が実装されてい
る状態のフレキシブル回路基板1を成形装置によって折り曲げ、曲率半径R(mm)の折り曲げ部1aを形成する第1の工程と、曲率半径R(mm)の折り曲げ部1aが形成されている状態のフレキシブル回路基板1に対して、少なくとも折り曲げ部1aを加熱する第2の工程と、を有している。また、図4に示すように本実施形態では、成形装置として、バキューム32を有し、折れ曲がり可能な金型31と、フレキシブル回路基板1の厚さ方向からフレキシブル回路基板1に対して移動可能な押圧部材33(部分金型ともいう)を備えている。なお、本実施形態では押圧部材33が移動可能に構成されているが、金型31、及び押圧部材33のいずれかが移動可能に構成されていればよい。
【0054】
第1の工程では、図4(a)に図示するように、金型31上にフレキシブル回路基板1を載置し、バキューム32によってフレキシブル回路基板1を金型31上に吸着固定する。なお、この状態では既にLED7は実装されており、両端には接続手段1bが取り付けられているとよい。次に、図4(b)に図示するように、金型31上に吸着固定された状態で金型31が変形し、これにより、フレキシブル回路基板1に折り曲げ部1aが形成される。なお、ここでは複数の折り曲げ部1aが形成されているが、折り曲げ部1aは少なくとも1箇所に形成されていればよい。次に、図4(c)に図示するように、フレキシブル回路基板1の厚さ方向(図4(a)〜図4(d)の上下方向)において金型31と対向して設けられている押圧部材33が移動し、それぞれの押圧部材33がフレキシブル回路基板1の折り曲げ部1aに圧接する。この際、押圧部材33が、フレキシブル回路基板1に実装されているLED7と接触することはなく、押圧部材33との接触によってLED7が破損する虞はない。なお、少なくとも図4(b)以降では、フレキシブル回路基板1の両端には不図示の加圧手段によってテンションが加えられているものとする。ここで、折り曲げ部1aの曲率半径R(mm)は、金型31、押圧部材33の形状を変えることで変更することができ、同様に、折り曲げ部1aの数、折り曲げ部1a同士の間隔等も、金型31、押圧部材33の寸法、間隔を変更することで自在に設定することができる。また、押圧部材33によってフレキシブル回路基板1を押圧する際の押圧力は、少なくともフレキシブル回路基板1に折り曲げ部1aが確実に形成される押圧力であればよく、フレキシブル回路基板1の厚さ、材質等に応じて適宜変更することができる。
【0055】
第2の工程では、両端にテンションがかけられ、押圧部材33が押し当てられていることによって複数の折り曲げ部1aが形成されている状態のフレキシブル回路基板1の少なくとも折り曲げ部1aを加熱している。本実施形態では、折り曲げ部1aが形成されているフレキシブル回路基板1を、金型31及び押圧部材33ごと加熱装置に入れることでフレキシブル回路基板1を加熱しているが、金型31、及び押圧部材33の少なくとも一方の内部に加熱部材を設け、これらから生じる熱によってフレキシブル回路基板1の少なくとも折り曲げ部1aを加熱する構成であってもよい。なお、本実施形態(液晶ポリマーを用いた場合)では、加熱温度が、フレキシブル回路基板1の表面温度が150℃以上かつ液晶ポリマーの熱変形開始温度未満となる温度であって、加熱時間が1時間以内に設定されている。フレキシブル回路基板1の表面温度が150℃以上かつ液晶ポリマーの熱変形開始温度未満となる温度で加熱を行えば、液晶ポリマーが流動することがなく、フレキシブル回路基板1の外観、性能を損なうことがなく、かつ、フレキシブル回路基板1の表面温度が150℃以上となる加熱温度であるので、液晶ポリマーに対して折り曲げ部1aを確実に形成することができ、さらに、加熱が終わった後も折り曲げ部1aが元の形状に戻ることはない(曲率半径R(mm)が維持される)。また、加熱時間が1時間以内であれば、生産効率を向上させることができると共に、長時間加熱することで生じる、液晶ポリマー変色、熱変形の問題、配線層3の損傷、及びLED7の損傷、劣化を回避することが可能になる。なお、ここでは絶縁フィルム2、絶縁層4に液晶ポリマーを用いた場合について説明しているが、上述したように絶縁フィルム2、絶縁層4に適用可能な材料はこれに限られるものではなく、他の材料を選択した場合は、上記加熱温度、加熱時間を適宜変更することで、折り曲げ部1aを形成することができる(但し、加熱温度の上限は、選択
された材料の熱変形開始温度未満となる温度である)。
【0056】
上述した第1の工程、及び第2の工程を行うことにより、少なくとも1箇所に曲率半径R(mm)を有し、かつ、曲率半径R(mm)を維持した状態で伸縮変形可能なLED実装済みのフレキシブル回路基板1を製造することが可能になる。その後、例えば図1(a)に示すフィラメント部に上述のフレキシブル回路基板1を装着し、接続手段1bを駆動回路部10bと接続させることで、広範囲を照明可能な照明装置10を得ることが可能になる。なお、上述の第1の工程と第2の工程とを同時に行ってもよい。即ち、折り曲げ部1aを加熱しつつ、押圧部材33によってフレキシブル回路基板1を折り曲げていく方法も採用し得る。なお、金型31、及び押圧部材33には、第1の工程、及び第2の工程におけるフレキシブル回路基板1との接触領域に、ゴム状弾性部材が設けられているとよい。かかる構成によると、ゴム状弾性部材が緩衝材として機能することにより、フレキシブル回路基板1を衝撃、摩擦等から保護することができる。ゴム状弾性材料としては耐摩耗性、耐衝撃性、耐座屈性等があれば特に限定されるものではなく、例えばウレタンゴム、クロロプレンゴム、NBR、フッ素ゴム、シリコンゴム、天然ゴムなどを使用することができる。
【0057】
(4:効果の検証)
本実施形態に係る照明装置及びその製造方法の効果を検証すべく、下記に示す検証実験の下、実施例1〜6と比較例1〜12との比較を行った。その検証結果について説明する。
【0058】
まず、実施例1〜6では、銅張りフィルムとして、片面銅張り液晶ポリマーフィルムであるエスパネックスL(商品名)(新日鉄化学製、フィルム厚:50μm、圧延銅箔の厚さ18:μm、熱変形開始温度:290℃)を用意した。これに対して、比較例1〜6では、銅張りフィルムとして、片面銅張り2層ポリイミドフィルムであるエスパーフレックス(商品名)(住友金属鉱山製、ポリイミドフィルム:Kapton−EN、フィルム厚:50μm、銅箔の厚さ:18μm)を用意した。また、比較例7〜12では、銅張りフィルムとして、片面銅張り3層ポリイミドフィルム(ポリイミドフィルム:Kapton−EN、フィルム厚:50μm、圧延銅箔の厚さ:18μm、接着剤:エポキシ樹脂、接着剤の厚さ:10μm)を用意した。なお、比較例1〜12で用いられているポリイミドフィルム:Kapton−ENは、熱硬化性を有しており、少なくともこの点で、比較例1〜12の回路基板と実施例1〜6に係るフレキシブル回路基板1とは異なっている。
【0059】
次いで、これらのサンプルをエッチング処理して、図5(a)に示すような配線パターンを有する配線層3を形成し、片面フレキシブル回路基板1を得た。回路基板の幅、配線の幅等は、図中に示すとおりである。次いで、得られた片面フレキシブル回路基板1を、表1に記載の条件(曲率半径(mm)、基板の表面温度(℃)、成形時間(h))で成形した。なお、ここでは成形装置として、図4(a)〜図4(c)に示すものと同一のものを使用している。
【0060】
【表1】

【0061】
各々のサンプルに対して表1の条件で折り曲げ部を形成した後、各サンプルのLEDに破損がないか否かを評価するために、LED点灯試験を行った。試験数(N)は、各サンプルについて20とした。結果を表2に示す。
【0062】
次に、振動を伴う環境での使用を想定した接続信頼性試験を実施した。得られた各サンプルの接続信頼性を評価するために、IPC−240Cに示されている「繰り返し曲げ試験」を行った。図5(b)を参照して、試験方法を簡単に説明する。図5(b)に、「繰り返し曲げ試験」に使用する装置を模式的に示す。まず最初に、フレキシブル回路基板1の両端を、固定部18で、固定板19、及び振動板20にそれぞれ固定する。このとき、固定板19と振動板20との間の距離は、フレキシブル回路基板1の曲率半径R(mm)になるように設定した。次いで、振動板20をストローク25.4mm、周波数25Hzで、10,000,000回振動させた。振動後、配線層3の抵抗値が振動前の配線層3の抵抗値から10%以上上昇したものを「不良」とみなした。試験数(N)は、各サンプルについて、20とした。かかる試験結果を表2に示す。なお、表2における「形状維持可否」は、試験後の形状について、折り曲げ部の曲率半径R(mm)が維持されているか否かに関する評価である。また、「成形可否」は、金型からフレキシブル回路基板を取り出した後に、曲率半径R(mm)の折り曲げ部が形成されているか否かについて調べたものである。
【0063】
なお、表2において、成形可否の基準、形状維持可否の基準は、
○:曲率半径が設計値の±10%未満、
△:曲率半径が設計値の±10%以上±20%未満、
×:曲率半径が設計値の±20%以上、
であって、外観の基準は、
○:絶縁フィルム又は絶縁層の流出が認められない、
×:絶縁フィルム又は絶縁層の流出が認められる、とする。
【0064】
【表2】

【0065】
この試験結果より次のことがいえる。まず「成形可否」「形状維持可否」については、実施例1〜6では許容レベルに達している(つまり、曲率半径R(mm)の折り曲げ部が形成され、かつ「繰り返し曲げ試験」を行った後も、曲率半径R(mm)が維持されている)ものの、比較例1〜12では、折り曲げ部が形成されない場合や、折り曲げ部が形成されても「繰り返し曲げ試験」を通じてその曲率半径R(mm)が維持されない場合が見られた。即ち、熱硬化性樹脂を用いる場合は、折り曲げ部を成形すること、または折り曲げ部の曲率R(mm)を維持することは出来ない、ということがわかる。また、この場合は、折り曲げ部が形成されないために光の照明範囲が狭く、光度にムラが生じていた。また、「外観」については、実施例1〜6は全て許容レベルに達していた。また、「LED点灯試験不良発生数」に関しては、実施例1〜6では「不良」とされた場合がない一方で、比較例8、9、11、12では、「不良」とみなされる場合があった。また、「接続信頼性試験」についても、実施例1〜6では、全てで満足のいく接続信頼性を得ることができた一方で、比較例1〜12では満足のいく接続信頼性を得ることができなかった。また、実施例1〜3では、曲率半径R(mm)が0.3mmであったが、折り曲げ部1aで配線層3の剥離、破断が生じることなく、十分な接続信頼性を得ることができた。曲率半径R(mm)を大きくしていくと、折り曲げ部1aにおいて配線層3にかかる曲げ応力(ストレス)は小さくなるので、少なくとも曲率半径R(mm)が0.3mm以上であれば、十分な接続信頼性を得られることがわかる。
【0066】
以上より、実験結果をまとめると以下のようになる。
・熱硬化性樹脂を用いる場合は、折り曲げ部を成形すること、または折り曲げ部の曲率R(mm)を維持することは出来ない。また、LED点灯試験でも「不良」とされる可能性がある。
・熱可塑性樹脂を用いる場合(液晶ポリマーの場合)は、加熱温度が、フレキシブル回路基板の表面温度が150℃以上かつ液晶ポリマーの熱変形開始温度未満となる温度であって、成形時間が1時間程度であると、折り曲げ部1aを形成することができ、かつ、上述の「繰り返し曲げ試験」を行っても、折り曲げ部1aの曲率半径R(mm)を維持することができ、配線層の剥離、切断が生じないことがわかった。また、外観も許容レベルであることがわかった。なお、ここでは加熱時間を1時間に設定しているが、発明者らの鋭
意検討によると、加熱時間が1時間以内であっても、「成形可否」「形状維持可否」「外観」「接続信頼性」は、十分に許容レベルに達することがわかった。
・曲率半径R(mm)が0.3mm以上で、加熱時間が1時間以内であれば、接続信頼性の高いフレキシブル回路基板を得ることができる。
【0067】
即ち、本実施形態に係る照明装置及びその製造方法の効果をまとめると、
・折り曲げ部を有するフレキシブル回路基板にLEDを実装しているので、照明範囲を広げることができるとともに、光量を向上させることが可能になる。
・折り曲げ部が形成されているので、照明装置に外力等が作用して振動した場合も、フレキシブル回路基板全体が変形することで振動を吸収することができ、振動によってLEDが破損する可能性が低い。
・折り曲げ部は曲率半径R(mm)を維持した状態で変形可能であるので、振動が生じた場合も、折り曲げ部で配線層が剥離、破断する可能性が低い。よって照明装置の耐振動性を向上させることができる。
・従来では、広範囲を照明するためには、照明装置の形状に合わせてLEDを分散配置させるといった煩雑な工程を必要としたが、本実施形態によれば、平面状のフレキシブル回路基板にLEDを実装した後に、LEDを実装したフレキシブル回路基板を任意の形状に変形させることで、様々な形態の照明装置に応用することが可能であるので、煩雑な工程を必要とせず、広範囲を照明可能であり、かつ、振動が生じてもLEDやその実装部が損傷を受ける可能性が低い照明装置を容易に製造することができる。また、煩雑な工程を必要としないので、製造コストを低減することが可能になる。
【0068】
よって、本実施形態に係る照明装置及びその製造方法によれば、LEDを光源に用いた光源装置において、簡易な構成で広範囲を照明可能であり、かつ、振動が生じてもLEDやその実装部が損傷を受ける可能性が低い照明装置及びその製造方法を提供することが可能になる。
【0069】
(その他の実施形態)
上記では、金型31と押圧部材33とを用いて、図4(a)〜図4(d)に示す工程でフレキシブル回路基板1に折り曲げ部1aを形成する方法について説明した。しかしながら、フレキシブル回路基板1に折り曲げ部1aを形成する方法はこれに限定されるものではない。液晶ポリマー、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー等の熱可塑性樹脂を絶縁フィルム2、及び絶縁層4に用いる場合は、図4(e)に示すように、LEDに接触する部分に溝などの空間(不図示)が設けられている金型34を、フレキシブル回路基板1の厚さ方向両側から互い違いにフレキシブル回路基板1に接触させ、フレキシブル回路基板1のほぼ全体を金型34に接触させて加熱を行えばよい。なお、さらに図中左右方向からフレキシブル回路基板1を挟むようにしてフレキシブル回路基板1を加圧することで、フレキシブル回路基板1の両端に十分なテンションがかけられた状態で折り曲げ部1aを加熱することができる。よって、上述したような不図示の加圧手段によって別途、テンションをかける必要がない。このような製造方法によると、低温加熱で折り曲げ部1aを形成することが可能になるので、LED7を熱による破損、劣化から保護することができる。
【0070】
また、上述の金型34には、第1の工程、及び第2の工程におけるフレキシブル回路基板1との接触領域にゴム状弾性部材が設けられているとよい。これにより、ゴム状弾性部材が緩衝材として機能することにより、フレキシブル回路基板1、及びLED7を衝撃、摩擦等から保護することができる。即ち、製造工程において、LED7をこれらの成形装置によって押潰する虞がない。また、ゴム状弾性部材を介してLED7と成形装置とが接触するので、加熱時にLED7に直接的に熱が伝わらず、熱によるLED7の破損を防ぐことが可能になる。なお、ゴム状弾性材料としては耐摩耗性、耐衝撃性、耐座屈性等があ
れば特に限定されるものではなく、例えばウレタンゴム、クロロプレンゴム、NBR、フッ素ゴム、シリコンゴム、天然ゴムなどを使用することができる。
【0071】
また、上記では照明装置のフィラメント部に、折り曲げ部が形成されたフレキシブル回路基板を適用しているが、上述したフレキシブル回路基板は、フィラメント部以外の部位に対しても適用可能である。即ち、曲率半径R(mm)を維持した状態で自在に形状を変えることができるので、照明装置の形状、照射範囲等にあわせてフレキシブル回路基板の形状を変更することにより、様々な照明装置へ適用することが可能になる。
【0072】
また、上述したフレキシブル回路基板1は、少なくとも一部が透明であってもよい。フレキシブル回路基板1の一部を透明材料(PETなど)によって構成することで、実装されているLED7から射出された光が透明部分を透過し、より広範囲を照明することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…フレキシブル回路基板 2…絶縁フィルム 3…配線層 4…絶縁層 5…接着層 7…LED 10…照明装置 1a…折り曲げ部 31…金型 33…押圧部材(部分金型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる絶縁フィルム、前記絶縁フィルム上に形成された配線層、及び前記配線層上に形成された熱可塑性樹脂からなる絶縁層を有し、少なくとも1箇所に曲率半径R(mm)を有する折り曲げ部が形成されている変形可能なフレキシブル回路基板と、
前記フレキシブル回路基板に実装される複数のLEDと、
を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記曲率半径R(mm)は0.3mm以上であると共に、
前記フレキシブル回路基板は、
前記曲率半径R(mm)を維持した状態で変形可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記フレキシブル回路基板の両端には、
前記LEDに電力を供給する駆動回路に接続される接続手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記接続手段とは、
オス・メスのクリンプ式のコンタクトであることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂とは、
液晶ポリマーであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記フレキシブル回路基板は、
少なくとも一部が透明であること特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の照明装置の製造方法であって、
前記LEDが実装されている状態のフレキシブル回路基板を成形装置によって折り曲げ、フレキシブル回路基板に曲率半径R(mm)の折り曲げ部を形成する第1の工程と、
曲率半径R(mm)の折り曲げ部が形成されている状態の前記フレキシブル回路基板に対して、少なくとも前記折り曲げ部を加熱する第2の工程と、
を有していることを特徴とする照明装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の工程において、
前記フレキシブル回路基板の両端にテンションを加えた状態で、前記フレキシブル回路基板の厚さ方向から、前記成形装置を押し当てることにより、前記フレキシブル回路基板に、曲率半径R(mm)の折り曲げ部を複数形成することを特徴とする請求項7に記載の照明装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の工程、及び前記第2の工程における前記フレキシブル回路基板との接触領域にゴム状弾性部材が設けられている前記成形装置を用いて、前記第1の工程、及び前記第2の工程を行うことを特徴とする請求項7または8に記載の照明装置の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂とは液晶ポリマーであって、
前記第2の工程では、
加熱温度が、前記フレキシブル回路基板の表面温度が150℃以上かつ液晶ポリマーの熱変形開始温度未満となる温度であって、
加熱時間が1時間以内である、
ことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の照明装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−134874(P2011−134874A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292639(P2009−292639)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】