説明

照明装置及び照明装置の発光色変更方法

【課題】LED照明装置の光源自身を置き換えることなく、照明光の色を低コストで変更することができる照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】回路基板及び回路基板表面に配設された複数の発光ダイオードとからなる光源ユニットと、光源ユニットを収容するハウジング部材と、ハウジング部材に支持された複数の発光ダイオードからの発光を波長変換して波長変換された光を外部に出射するための、蛍光体を含有する蛍光体含有シートとを備え、蛍光体含有シートは、複数の発光ダイオードを覆うように、且つ、脱着自在に配設されているシートであることを特徴とする照明装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード装置を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置として、白熱電球、蛍光ランプなどの光源に替わり、発光ダイオード(LED)装置を光源とするLED照明装置が普及しつつある。LEDは、PN接合半導体であり、順電圧を印加するとN領域からの電子とP領域からの正孔がPN接合部分に移動して、電子と正孔が再結合する際に発光する。このような半導体発光素子は、自由電子が再結合する際に放出されるエネルギーが光となって放射されるために狭い波長範囲の単色光しか発しない。
【0003】
LED照明装置としては、例えば、青色LED素子の発光による青色光、赤色LED素子の発光による赤色光、緑色LED素子の発光による緑色光等の異なる色の光を混色させて照明に適した昼光色、昼白色、白色、温白色、または電球色に発光させるLED電球等の照明装置が知られている。また、別の方法として、下記特許文献1に示されたように、LED素子の発光を光源とする光源ユニットからの発光を、所定の距離を隔てて取り付けられる蛍光体を含有する波長変換面体を用いて波長変換させることにより白色光を発するLED照明装置も知られている。
【0004】
これらのLED照明装置は従来の白熱電球や蛍光管を用いた照明装置に比べて、非常に寿命が長く、例えば、白熱電球に比べて数十倍、蛍光管に比べて数倍の寿命を有する。従ってLED照明は、従来の白熱電球や蛍光管のように、頻繁に交換する必要がないことが最大の長所である。一方、LED照明装置は従来の照明装置に比べて現時点においては充分に普及していないために、その価格が極めて高いという欠点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−244779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から知られたLED電球等を用いたLED照明装置は、特定の1種類の色の照明光しか発することができない。このために、家屋や店舗の部屋に特定の発光色を発光するLED照明装置を設置した場合において、時間が経って照明の雰囲気を変えたくなった場合には異なる色の光を発するLED照明装置に置き替える必要があった。しかしながら、上述のように、LED照明装置は長寿命であるために白熱電球や蛍光管のような消耗により置き換えの機会が少なく、さらに、置き換える場合には価格が極めて高価であるためにコスト負担が大きいという問題があった。特に、限られた予算内で店舗等を改装する場合において、LED照明装置を新たなものに置き換えることは極めてコスト的に負担が大きかった。
【0007】
本発明は上述した問題を解決すべく、LED照明装置の光源自身を置き換えることなく、照明光の色を低コストで変更することができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面である照明装置は、回路基板及び回路基板表面に配設された複数の発光ダイオードとからなる光源ユニットと、光源ユニットを収容するハウジング部材と、ハウジング部材に配置された複数の発光ダイオードからの発光を波長変換して該波長変換された光を外部に出射するための、蛍光体を含有する蛍光体含有シートとを備え、蛍光体含有シートは、複数の発光ダイオードを覆うように、脱着自在に配設されているシートであることを特徴とする。このような照明装置によれば、高価なLEDを用いた光源自身を置き換えることなく、蛍光体含有シートを置き換えるだけで照明光の色を変更することができる。
【0009】
また、蛍光体含有シートは、蛍光体を含有する蛍光体含有部材が支持基材に支持されてなるシートであることが好ましい。具体的には、透光性支持基材の全面に蛍光体含有部材を積層したり、支持基材に発光ダイオードに対向する領域のみに蛍光体含有部材を点在させて支持することも出来る。このような構成によれば、薄い蛍光体含有部材や不連続に形成される蛍光体含有部材を支持することが出来、また、剛性を付与することにより脱着性も向上する。
【0010】
また、回路基板表面と蛍光体含有シートとの間において、各発光ダイオードを取り囲む光拡散防止筒をさらに備えることが好ましい。このような構成によれば、拡散光を蛍光体含有シートに導くことができる。このような光拡散防止筒は、透光性支持基材の表面に支持されていても、回路基板表面に支持されていてもよい。
【0011】
また、蛍光体含有部材が複数の発光ダイオードに対向する側に位置し、透光性支持基材が、照明装置の出光側に位置し透光性支持基材の外表面の表面粗さが算術平均粗さ(Ra)0.1〜8μmの範囲であることが好ましい。このような構成によれば支持基材の外表面の表面積が大きくなるために、照明装置の出光効率を高めることができる。
【0012】
また、透光性支持基材が、外表面にレンズ構造を有することが好ましい。このような構成によれば、照明装置からの出光を拡散させることができる。
【0013】
また、蛍光体含有部材が複数の発光ダイオードに対向する側に位置し、透光性支持基材が、複数の発光ダイオードの出光側に位置し、透光性支持基材の外表面に紫外線吸収層がさらに形成されていることが好ましい。このような構成によれば、紫外光を発するような発光ダイオードを用いた場合でも、紫外線の外部への漏洩を抑制することが出来る。
【0014】
また、支持基材が、複数の発光ダイオードに対向する領域に開放窓を有する枠体であり、蛍光体含有部材が枠体により開放窓の領域に配置するように支持されていることが好ましい。このような構成によれば、高価な蛍光体の使用量を低減することが出来るとともに、支持基材による光吸収も生じない。なお、枠体の表面に反射膜を形成することにより、光が拡散することによる光取り出し効率の低下を抑制することが出来る。
【0015】
また、蛍光体含有部材がレンズ構造を有することが好ましい。このような構成によれば、照明装置からの出光を拡散させることができる。
【0016】
蛍光体含有部材が樹脂基材としてシリコーン系樹脂を含有することが好ましい。シリコーン系樹脂は光透過率に優れているために、より高い光取り出し効率が得られる。
【0017】
また、蛍光体含有部材または透光性支持基材の少なくとも一方が光拡散剤を含有することが好ましい。
【0018】
また、本発明の他の一局面の複数の照明装置の発光色変更方法は、発光ダイオードからなる光源ユニットと、複数の発光ダイオードを覆うことにより発光ダイオードからの発光を波長変換するための蛍光体を含有する蛍光体含有カバーを備えた照明装置を用い、蛍光体含有カバーは照明装置の発光面において脱着可能に支持されており、蛍光体含有カバーのみを取り替えることにより、照明装置の発光波長を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高価なLEDを用いた光源自身を置き換えることなく、照明光の色を低コストで変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本実施形態のLED照明装置10を説明するための斜視模式図である。
【図2】図2は図1のLED照明装置10のA−A'断面における断面模式図である。
【図3】図3は図1のLED照明装置10における、蛍光体含有シート2の脱着を説明する説明図である。
【図4】図4は本実施形態のLED照明装置20における、蛍光体含有シート2の支持手段の一例を説明するための模式図である。
【図5】図5は本実施形態のLED照明装置30における、蛍光体含有シート2の支持手段の他の一例を説明するための模式図である。
【図6】図6は本実施形態の蛍光体含有シート22の構成例を説明するための斜視模式図である。
【図7】図7は本実施形態の蛍光体含有シート25の他の構成例を説明するための斜視模式図である。
【図8】図8は本実施形態の蛍光体含有シート32の他の構成例を説明するための斜視模式図である。
【図9】図9は図8で示した蛍光体含有シート32を配設したLED照明装置40を説明するための模式断面図である。
【図10】図10は本実施形態の蛍光体含有シートの他の構成例を説明するための斜視模式図である。
【図11】図11は本実施形態の蛍光体含有シートの他の構成例を説明するための斜視模式図である。
【図12】図12は図11で示した蛍光体含有シート52が配設されたLED照明装置50を説明するための模式断面図である。
【図13】図13は図8で示した蛍光体含有シート32の支持基材24表面に反射膜65を形成した蛍光体含有シート62を用いたLED照明装置60を説明するための説明図である。
【図14】図14は蛍光体含有シートと回路基板との間に光拡散防止筒45を配設したLED照明装置70を説明するための説明図である。
【図15】図15は支持基材として開放窓30を有する枠体を用いた蛍光体含有シート52において、蛍光体含有部材53の表面にレンズとして作用する凸部44を形成したものの説明図である。
【図16】図16は蛍光体含有シート52が配設されたLED照明装置51を説明するための模式断面図である。
【図17】図17は支持基材24にレンズ54を設けた蛍光体含有シート42が配設されたLED照明装置41を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
はじめに、本発明の照明装置に係る第1実施形態のLED照明装置の全体構造について、図1〜図4を参照しながら詳しく説明する。
【0022】
図1は第1実施形態のLED照明装置10を説明するための斜視図であり、図2は図1のLED照明装置10のA−A'断面における断面図である。図中、1はLED装置(発光ダイオード)、2は蛍光体含有シート(蛍光体含有カバー)、3は回路基板、3aは回路基板3の表面に形成された電気回路、4は、ハウジング部材、5は回路基板3に電力を供給するためのプラグ、6は蛍光体含有シート2を支持するためのスライド溝である。なお、図1ではLED照明装置10の内部構造を説明するために、蛍光体含有シート2の一部分を透かして表現している。
【0023】
LED照明装置10においては、回路基板3の表面に形成された電気回路3aに、複数のLED装置1を2列の直線上に並べて実装して光源ユニットが構成されている。なお、LED装置1の数や配置はこのような形態に限られず、用途や目的に応じて自由に調整される。そして、プラグ5を図略のコンセントに挿入して回路基板3に電力を供給することにより、LED装置1が点灯する。また、回路基板3上には、必要に応じて、LED装置1の点灯を制御するための制御回路や光センサー、電子タイマー等を設けてもよい。そして、このような光源ユニットは、ハウジング部材4に収容されている。ハウジング部材4は、LED装置1の発光面側に、開口を有するか、光透過面を有する。
【0024】
蛍光体含有シート2は、複数のLED装置1と所定の距離を隔ててハウジング部材4に設けられたスライド溝6により支持されている。そして、1枚の蛍光体含有シート2は、複数のLED装置1を覆っている。
【0025】
そして、LED照明装置10においては、回路基板3にプラグ5から電力を供給することによりLED装置1が発光する。LED装置1の発光色は、LED装置1の発光源であるLEDチップの発光波長による。そして、LED装置1からの発光は蛍光体含有シート2に入射する。そして、蛍光体含有シート2に入射した光は、蛍光体含有シート2に含有される蛍光体により、その蛍光体組成に応じて定まる波長に波長変換され、LEDチップ自身の発光波長とは異なる波長の光を発する。
【0026】
LED装置1としては、従来から知られた紫外光、近紫外光、青色から赤色の領域の波長を示す可視光、近赤外光、赤外光等の波長領域の光を発する素子のあるLED装置が特に限定なく用いられる。これらの中でも紫外光、近紫外光、青色から緑色の領域の波長、具体的には360〜570nmの範囲にピークを有するような青色LED装置や緑色LED装置やこれらの発光波長を含む白色LED装置が幅広い色表現が可能になる点から好ましい。青色LED装置としては、GaN系,SiC系;ZnS系,ZnSe系等が挙げられる。また、緑色LED装置としては、GaP系;N系;GaP系等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上のものを組み合わせてもよい。
【0027】
また、回路基板3としては、セラミック基板,窒化アルミニウム基板のようなアルミニウム系基板等の無機基板;エポキシ樹脂基板,ポリアミド樹脂基板,芳香族系樹脂基板,シリコーン系樹脂基板等の樹脂基板等が特に限定なく用いられる。
【0028】
回路基板3に実装されるLED装置1の数及び出力は、求める照度等に応じて自由に選択することができる。
【0029】
LED照明装置10においては、蛍光体含有シート2はハウジング部材4に設けられたスライド溝6により脱着自在に支持されている。このように蛍光体含有シート2をスライド溝6により支持することにより、取り外し及び取り付けが容易になる。具体的には、図3に示すように、蛍光体含有シート2をスライド溝6に沿って矢印B方向にスライドさせることにより容易に取り外すことができ、蛍光体含有シート2をスライド溝6に沿って矢印C方向にスライドさせることにより容易に取り付けることができる。そして、予め取り付けられた蛍光体含有シート2を、別の蛍光体組成の蛍光体含有シートに置き換えることにより、LED照明装置10の発色光を容易且つ低コストで変更することができる。具体的には、例えば、波長450〜470nmの青色光を発する青色LEDをLED装置1として用い、YAG系蛍光体を含有する蛍光体含有シートを用いた場合、白色光が得られる。また、青色等の発光素子を持った白色LEDをLED装置1として用い、黄色系;橙色系;赤色系蛍光体等を含有する蛍光体含有シートを用いた場合、電球色等、元の白色より低色温度が得られる。従って、蛍光体配合組成の異なる蛍光体含有シートを使い分けることにより、LED照明装置のLED装置1自身を置き換えることなく、発光色を容易に変更することができる。従って、例えば、LED照明装置10を設置した場合において、時間が経って照明の雰囲気を変えたくなった場合,店舗などが季節に合わせて照明色を変更する場合には、目的とする発光色を発する蛍光体含有シートに置き換えるだけでよい。このようなLED照明装置10によれば、低コストでLED照明装置の発光色を変更することができる。
【0030】
次に、蛍光体含有シート2の支持手段の他の例を図4及び図5を参照して説明する。
【0031】
図4は、ハウジング部材14に段状に設けられた枠16aと固定爪16bの隙間に蛍光体含有シート2を嵌め込んで固定することにより、脱着自在に支持しているLED照明装置20の模式断面図である。LED照明装置20においては、蛍光体含有シート2を撓ませて枠16aと固定爪16bによる固定状態を解除して元の蛍光体含有シート2を取り外し、別の発光色に波長変換を行う蛍光体含有シートに置き換えて再固定することにより、LED照明装置20の発色光を容易に変更することができる。
【0032】
また、図5は、ハウジング部材18に設けられた係合部に、蛍光体含有シート2の端部に設けられた係止爪17を用いて、蛍光体含有シート2を脱着自在に支持しているLED照明装置30の模式断面図である。LED照明装置30においては、蛍光体含有シート2は、その端部に設けられた係止爪17をハウジング部材18に設けられた係合部に係止することにより、ハウジング部材18に脱着自在に支持されている。そして、係止状態を開放して、蛍光体含有シート2を取り外し、別の発光色に波長変換を行う蛍光体含有シートに置き換えて係合することにより、LED照明装置30の発色光を容易に変更することができる。また、蛍光体含有シート2の端部に係合部を設け、ハウジング部材18に設けられた係止爪を係合部に係止してもよい。
【0033】
次に、上述した蛍光体含有シート2の代表的な構成について詳しく説明する。
【0034】
蛍光体含有シート2は複数のLED装置1を覆う蛍光体を含有する1枚の樹脂シートであればその形態は特に限定されない。蛍光体含有シート2は、所定の配合組成の蛍光体を含有する単層のシートであっても、また、互いに蛍光体の種類や配合組成の異なる複数層が積層された積層体であっても、さらに、蛍光体を含有する層と蛍光体を含有しない層とが積層されてなる積層体であってもよい。さらに、蛍光体含有シート2に配合される蛍光体は、シートの全面において均一に蛍光体が分散されていても、また、蛍光体を部分的に偏在させたり、蛍光体が存在しない領域があってもよい。以下に、蛍光体含有シート2の好ましい形態について説明する。
【0035】
図6は、蛍光体含有シート2の一形態として、蛍光体含有層23と蛍光体含有層23を支持する支持基材24とが積層されてなる蛍光体含有シート22の斜視模式図を示す。
【0036】
支持基材24は、蛍光体含有シート22に剛性を付与することにより脱着性を向上させるために、積層される蛍光体含有層23を支持する層である。支持基材24としては、LED装置1から発せられる光や蛍光体含有層23により変換されて発せられる光を透過させる材料からなる基材が好ましく用いられる。このような支持基材24を構成する材料としては、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリカーカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂,シリコーン樹脂等の光透過性樹脂材料や、ガラスやシリコーン基板等の光透過性無機材料が用いられる。
【0037】
蛍光体含有層23はLED装置1から発せられる光に対する透光性及び耐光性に優れた各種樹脂材料に蛍光体を分散させることにより得られる層である。
【0038】
蛍光体含有層23に用いられる樹脂材料の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系エラストマー等のシリコーン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン系エラストマー等が挙げられる。これらの中では、シリコーン系エラストマーが、耐光性及び光透過性に優れているために長時間使用による変色等の劣化が少なく、また、蛍光体を均一に分散させやすい点から好ましい。
【0039】
次に、蛍光体含有層23中に含有される蛍光体について説明する。
【0040】
蛍光体含有層23中に含有される蛍光体は特に限定されない。その具体例としては、例えば、Y3-XGdXAl512:Ce(0≦x≦3)で表されるアルミン酸イットリウム系蛍光物質(YAG),Ca−α−SiAlON:Eu等の黄色系蛍光体;CaS:Eu,CaAlSiN3:Eu等の赤色系蛍光体;一般式AEu(1-x)Lnx28(AはLi,K,Na,及びAgよりなる群から選ばれる1種、LnはY,La,及びGdよりなる群から選ばれる1種、BはW又はMoである。)で表される赤色系蛍光体、β−SiAlON:Euで表される緑色系蛍光体等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
配合組成は、目的とする発光色(例えば、昼光色、昼白色、白色、温白色、または電球色等)に応じて適宜変更される。
【0042】
例えば、LED装置1としてGaN系青色発光素子からの発光をYAG蛍光体で波長変換して得られる白色LEDを光源とし、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体を含む蛍光体含有シートを組み合わせることにより、演色評価数(Ra)を向上させた温白色光源や電球色光源を得ることができる。
【0043】
また、青色LEDを光源とし、緑色系蛍光体、黄色系蛍光体、赤色系蛍光体等を含む蛍光体含有シートと組み合わせたり、所定の量の緑色系蛍光体、黄色系蛍光体等を含有する蛍光体含有シートと所定の量の赤色系蛍光体を含有する蛍光体含有シートとを重ねたりすることによっても所望の色の照明光を得ることができる。さらに、紫外線や近紫外線を発光するLED装置1を光源とし、青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体、YAG蛍光体等を含む蛍光体含有シートと組み合わせたり、青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体、YAG蛍光体等を含むそれぞれ独立した複数の蛍光体含有シートを重ねたりすることによってもできる。この様にすることで一般照明に適した黒体放射軌跡に沿った色の照明光や、店舗等が照明による季節感を演出する為の黒体放射軌跡近傍以外の中間色、例えば慣用名で露草色、青竹色、萌葱、山吹色、朽葉色、紅梅色等々と言う様な、デザイナーやユーザーの感性に合わせた照明光を得ることができる。
【0044】
蛍光体含有層23中に含有される蛍光体の含有割合は、特に限定されないが、白色LED光源を使用する場合は、5〜60質量%、さらには20〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0045】
また、蛍光体含有層23中には、LED装置1から発せられる光を散乱させたり、さらに着色したりする目的で無機粒子を配合してもよい。このような無機粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、ガラスパウダーや、コバルトブルー、群青、酸化鉄等の顔料が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
このような蛍光体含有層23は、蛍光体と樹脂成分とをロール、バンバリーミキサー、押出機等を用いて混練した後、Tダイで押し出したり、プレス加工やカレンダー加工によりシート化することにより得られる。
【0047】
蛍光体含有層23の厚みとしては、10〜3000μm、さらには50〜500μm程度であることが好ましい。蛍光体含有層23の厚みが上記範囲である場合には、高い寸法精度で成形することができる。
【0048】
蛍光体含有層23は上述した支持基材24の表面に積層される。積層は、例えば、蛍光体含有層23をTダイから押し出して、軟化状態で支持基材24に貼り合わせたり、支持基材24上に蛍光体含有層23を形成するための液状樹脂を塗布した後、硬化または固化させたり、予め用意した蛍光体含有層23と支持基材24とを光透過性に優れた接着剤で接着する方法により得られる。
【0049】
支持基材24の厚みとしては、10〜3000μm、さらには50〜500μm程度であることが好ましい。支持基材24が厚すぎる場合には、光透過性が低下して照度が低下する傾向があり、薄すぎる場合には、蛍光体含有シート22の剛性が不充分になり、蛍光体含有シート22を脱着する際のハンドリング性が低下する傾向がある。
【0050】
また、支持基材24の外表面は、その表面粗さが算術平均粗さ(Ra)0.1〜8μmの範囲であるような粗面を有することが好ましい。このような粗面を有する支持基材24を用いた場合、蛍光体含有層23がLED装置1に対向し、支持基材24が照明装置の出光側に向くように配置した場合には、支持基材24の外表面の表面積が大きくなるために、出光効率を高めることができる。また、このような粗面を有する支持基材24を用いた場合、支持基材24がLED装置1に対向し、蛍光体含有層23が照明装置の出光側に向くように配置した場合には、支持基材24の外表面の表面積が大きくなるために、LED装置1の発光の入光効率を高めることができる。また、このような粗面構造は照明装置の出光側の表面と、LED装置1に対向する側の両面に設けてもよい。
【0051】
また、蛍光体含有シート22の総厚みとしては、20〜6000μm、さらには、100〜1000μmであることが好ましい。蛍光体含有シート22の総厚みが薄すぎる場合には、シートの剛性が低くなるために蛍光体含有シート22の脱着性が低下する傾向があり、厚すぎる場合には光透過性が低下する傾向がある。
【0052】
このような蛍光体含有シート22は、LED照明装置10に脱着自在に配設される蛍光体含有シート2として好ましく用いられる。
【0053】
図7は、蛍光体含有シート2の他の形態として、蛍光体含有シート25の支持基材24の外表面側に、さらに、紫外線吸収層26を積層してなる蛍光体含有シート25の斜視模式図を示す。蛍光体含有シート25においては、紫外線吸収層26を設けることにより、LED装置1が紫外光を発する場合において、紫外光の外部への漏洩を抑制することができる。紫外光を発するLED装置1を用いた場合、紫外線を全て蛍光体に吸収させることは困難である。従って、支持基材24の外表面側に、紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層26を設けることが好ましい。紫外線吸収剤としては、2−(2−ハイドロキシ−3.5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等を用いることができる。このように紫外線吸収層26を設けることにより、LED照明装置10から紫外線が漏洩することを抑制することができる。紫外線吸収層26は、上述した蛍光体含有層23における蛍光体の代わりに紫外線吸収剤を配合する以外は同様の方法により製造することができる。
【0054】
図8は、蛍光体含有シート2の他の形態である蛍光体含有シート32の斜視模式図である。蛍光体含有シート32はLED照明装置10に収容された複数のLED装置1が配置された領域に対向する部分に蛍光体含有層33を設けた以外の構成は、上述した蛍光体含有シート22と同様の構成である。蛍光体含有シート32を蛍光体含有シート2として用いたLED照明装置40の断面模式図を図9に示す。この様な形態にすることにより、蛍光体の使用量を減らしつつLED装置の実装位置のズレや蛍光体含有シートの位置ズレに対する不具合を減らすことが出来る。
【0055】
図9に示すように、蛍光体含有シート32には、複数のLED装置1が並んだ列に対向する領域に蛍光体含有層33が設けられている。LED装置1が発する光は極めて高い指向性を有するために、蛍光体含有シート32のように蛍光体を面内において偏在させた形態であっても、充分に波長変換が行われる。LED照明装置を製造する製造コストを低下させるために、高価な材料である蛍光体の使用量を抑制することが求められているが、このような蛍光体含有シート32を用いることにより蛍光体の使用量を削減することができる。なお、このような場合、蛍光体含有シート32が存在しない部分に、後述する反射防止層層を設けることにより、拡散光を有効利用することが出来る。
【0056】
さらに、図10に示すように、蛍光体含有シート2の他の形態として、支持基材24の、複数のLED装置1が配置された領域に対向する部分に蛍光体含有層43を点在させるように積層した蛍光体含有シート42のような形態であってもよい。このような蛍光体含有シート42を用いることにより蛍光体の使用量をさらに大幅に削減することができる。
【0057】
また、さらに蛍光体含有シート2の別の形態として、図11に、複数のLED装置1に対向する領域に開放窓30を有する枠体である支持基材34と、開放窓30に蛍光体含有部材53を配置してなる蛍光体含有シート52の斜視模式図を示す。また、図12は、蛍光体含有シート52を蛍光体含有シートとして用いたLED照明装置50の断面模式図を示す。図11及び図12に示すように、支持基材34は開放窓30を有する枠体であり、蛍光体を含有する樹脂材料である蛍光体含有部材53は枠体により支持されて開放窓30に配置されている。このような形態によれば、蛍光体含有部材53は、上述した蛍光体含有シート22,25、32、または42のように支持基材24に積層された構造にならない。そのために、支持基材による光吸収が生じないためにより高い照度を確保することができる。蛍光体含有部材53としては、上述した蛍光体含有層と同様の樹脂シートが用いられる。また、開放窓30を有する支持基材34に蛍光体含有部材53を固定する方法は特に限定されず、例えば、支持基材34に蛍光体含有部材53を接着等により固定する方法や、開放窓30に蛍光体含有部材53を嵌合させる方法等が用いられうる。
【0058】
なお、上述した蛍光体含有シート32,42、52においては、それぞれ、蛍光体含有層33、43、または蛍光体含有部材53が発光部となる。この場合においてより高い照度を得るために、発光部以外の領域に反射層を設けることが好ましい。
【0059】
図13は、一例として、蛍光体含有シート32の支持基材24の内側表面の蛍光体含有層33が形成されていない領域に、反射層65が設けられた蛍光体含有シート62を用いたLED照明装置60の模式断面図である。
【0060】
LED装置1が発する光は極めて高い指向性を有するために、その対向する領域のみに蛍光体含有層33を設けることにより、LED装置1の発光の大部分は蛍光体含有層33に入射する。しかしながら、LED装置と蛍光体含有シートとの距離や、複数のLED装置間の距離や、ハウジング部材4の内部構造等の影響により、一部の光が拡散光となって照明光として有効に利用されないことがある。照明効率をより向上させるためには、このような光を利用することが重要になる。この場合において、図13のLED照明装置60中の矢印Lで示しているように、蛍光体含有層33が形成されていない領域に、反射層65を設けることにより、拡散光を蛍光体含有層33に導き、有効に利用することができる。この時、回路基板3やハウジング部材4にも反射層が設けられていればより有効に光を利用できる。
【0061】
このような反射層65は、支持基材表面の蛍光体含有層が形成されていない領域に、従来から知られた選択的に薄膜を形成する方法により、反射率の高い薄膜を形成させて得られる。具体的には、支持基材表面の蛍光体含有層が形成される部分をマスクし、それ以外の領域に対して、従来から知られた蒸着、スパッタリング、塗布、メッキ等の方法を用いて反射率の高い金属膜等を形成することができる。
【0062】
また、このような拡散光を蛍光体含有層33に導き、有効に利用する方法として、図14に示すように、回路基板3の表面と蛍光体含有シート32との間において、蛍光体含有層33とLED装置1とを収容するような光拡散防止筒45を設けてもよい。この場合、図14のLED照明装置70中の矢印Rで示しているように、LED装置1からの発光を光拡散防止筒45の壁面における反射により効率的に蛍光体含有層33に導くことができる。このような光拡散防止筒45には、その内面に反射率の高い薄膜が形成されている樹脂筒等により形成される。このような光拡散防止筒45は回路基板3上に支持されていても、支持基材表面に支持されていても、回路基板3及び支持基材の両方に支持されていてもよい。
【0063】
さらに、蛍光体含有シートの蛍光体含有層または蛍光体含有部材が形成されている領域には、レンズ構造を設けてもよい。このようなレンズ構造を設けることにより、照明光を拡散させることができる。LED装置1からの発光は指向性が高いために、必然的にLED照明装置が発する光も指向性が高くなる。このような場合において、レンズ構造を設けることにより、指向性が緩和されて拡散性が高くなるために、広い範囲に光を照射することができる。
【0064】
具体的には、例えば、図15の斜視模式図に示すように、支持基材として開放窓30を有する枠体を用いた蛍光体含有シート52において、蛍光体含有部材53の表面にレンズとして作用する凸部44を形成することができる。このようなレンズ構造を設けた場合には、図16の矢印Nに示すように、LED装置1からの指向性の高い発光を、拡散性の高い照明光にすることができる。
【0065】
このようなレンズ構造は、図15及び図16に示したように、蛍光体含有部材53の表面に設けても、図17に示すように支持基材の表面に凸部54を設けてもよい。
【0066】
以上説明したLED照明装置は、室内照明のような照明装置のほか、各種ディスプレイ用の光源としても好ましく用いられうる。
【符号の説明】
【0067】
1 LED装置
2,22,25,32,42,52,62 蛍光体含有シート
3 回路基板
3a 電気回路
4,14,18 ハウジング部材
5 プラグ
6 スライド溝
10,20,30,40,50,60,70 LED照明装置
16a 枠
16b 固定爪
17 係止爪
24,34 支持基材
23,33,43 蛍光体含有層
24 ハウジング部材
26 紫外線吸収層
30 開放窓
44,54 凸部(レンズ)
45 光拡散防止筒
53 蛍光体含有部材
65 反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板及び前記回路基板表面に配設された複数の発光ダイオードとからなる光源ユニットと、前記光源ユニットを収容するハウジング部材と、前記ハウジング部材に支持された前記複数の発光ダイオードからの発光を波長変換して該波長変換された光を外部に出射するための、蛍光体を含有する蛍光体含有シートとを備え、
前記蛍光体含有シートは、前記複数の発光ダイオードを覆うように、脱着自在に配設されているシートであることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記蛍光体含有シートは、蛍光体を含有する蛍光体含有部材が支持基材に支持されてなるシートである請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記支持基材が透光性支持基材であり、前記蛍光体含有部材が該透光性支持基材に積層されている請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記蛍光体含有部材が、前記複数の発光ダイオードに対向する領域に蛍光体を偏在させた領域を有するシートである請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記回路基板表面と前記蛍光体含有シートとの間において、前記各発光ダイオードを取り囲む光拡散防止筒をさらに備える請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記光拡散防止筒が、前記透光性支持基材の表面に配設されている請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記蛍光体含有部材が前記複数の発光ダイオードに対向する側に位置し、前記透光性支持基材が、照明装置の出光側に位置し、
前記透光性支持基材の外表面の表面粗さが算術平均粗さ(Ra)0.1〜8μmの範囲である請求項4〜6の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記透光性支持基材が、前記外表面にレンズ構造を有する請求項7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記蛍光体含有部材が前記複数の発光ダイオードに対向する側に位置し、前記透光性支持基材が、前記複数の発光ダイオードの出光側に位置し、
前記透光性支持基材の外表面に紫外線吸収層がさらに形成されている請求項4〜8の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項10】
前記支持基材が、前記複数の発光ダイオードに対向する領域に開放窓を有する枠体であり、前記蛍光体含有部材が前記枠体により前記開放窓の領域に配置するように支持されている請求項2に記載の照明装置。
【請求項11】
前記回路基板表面と前記蛍光体含有シートとの間において、前記各発光ダイオードを取り囲む光拡散防止筒をさらに備える請求項10に記載の照明装置。
【請求項12】
前記光拡散防止筒が、前記枠体に配設されている請求項11に記載の照明装置。
【請求項13】
前記蛍光体含有部材がレンズ構造を有する表面を有する請求項10〜12の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項14】
前記枠体の表面に反射膜が形成されている請求項8〜13の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項15】
前記蛍光体含有部材が樹脂基材としてシリコーン系樹脂を含有する請求項2〜14の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項16】
前記蛍光体含有部材または前記透光性支持基材の少なくとも一方が光拡散剤を含有する請求項2〜15の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項17】
複数の発光ダイオードからなる光源ユニットと、前記複数の発光ダイオードを覆うことにより発光ダイオードからの発光を波長変換するための蛍光体を含有する蛍光体含有カバーを備えた照明装置を用い、
前記蛍光体含有カバーは該照明装置の発光面において脱着可能に支持されており、
前記蛍光体含有カバーのみを取り替えることにより、該照明装置の発光波長を変更することを特徴とする照明装置の発光色変更方法。
【請求項18】
前記蛍光体含有カバーが、前記光源ユニットを収容するハウジング部材に支持された前記複数の発光ダイオードからの発光を波長変換して該波長変換された光を外部に出射するための、蛍光体を含有する蛍光体含有シートである請求項17に記載の照明装置の発光色変更方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−124189(P2011−124189A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283339(P2009−283339)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】