熱カシメ留め部の構造及びその熱カシメ留め方法
【課題】 熱カシメ留めにおいて、溶着チップの強度に影響せず、かつ、溶着チップの外部に漏れ出した余剰樹脂(バリ)がカシメ留め部から離脱しない熱カシメ留め構造及びそのカシメ留め方法を提供する。
【解決手段】 被固定物10に穿設された熱カシメ留め用の固定穴11の周囲に複数の小穴12または切り欠き13を穿設することにより、溶着チップ30の凹部36と溶着チップ30の外部とが連通された余剰溶融樹脂迂回誘導流路12を形成する。
その結果、カシメ留め部38と余剰樹脂37である環状体50とが小穴12の効果にて繋がっているため、ここを通って余剰溶融樹脂は外に流出し、溶着ボス21側と一体となって固化することから、従来の熱カシメのように余剰樹脂37がバリとなって不安定に形成されることがなく、その結果、バリがカシメ部から離脱して製品内に異物となって散在したりするのを防止できる。
【解決手段】 被固定物10に穿設された熱カシメ留め用の固定穴11の周囲に複数の小穴12または切り欠き13を穿設することにより、溶着チップ30の凹部36と溶着チップ30の外部とが連通された余剰溶融樹脂迂回誘導流路12を形成する。
その結果、カシメ留め部38と余剰樹脂37である環状体50とが小穴12の効果にて繋がっているため、ここを通って余剰溶融樹脂は外に流出し、溶着ボス21側と一体となって固化することから、従来の熱カシメのように余剰樹脂37がバリとなって不安定に形成されることがなく、その結果、バリがカシメ部から離脱して製品内に異物となって散在したりするのを防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂成形品へ被固定物を固定する際、熱可塑性樹脂成形品の一部に溶着ボスと称される溶着又は変形部を予め形成しておき、この溶着ボスを被固定物側の固定孔内に通してその先端を固定孔内から突き出し、この突き出した先端側を熱で溶融又は変形することにより、熱可塑性樹脂成形品に被固定物をカシメ留めする熱カシメ留め部の構造及びその熱カシメ留め方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂で成形された成形品に被固定物を固定する方法として、まず、成形品に一体成形された溶着ボスを被固定物側に形成された固定孔に通す。
次に、この固定孔から突き出た溶着ボスの先端側を電熱式溶着チップ(以下「溶着チップ」と称する)を押し当てて溶着チップの先端に形成された凹部へ溶融樹脂を充満させ、さらに冷却することにより、固定孔より大きいきのこの傘のようなカシメ留め部を形成し、このカシメ留め部により被固定物を成形品にカシメ留め(固定)するという熱カシメ留め方法が知られている。
【0003】
しかし、被固定物の肉厚にバラツキがある場合、例えば、電気部品を実装するプリント基板では、生産ロットによりプリント基板の肉厚が異なる場合がある。
図16、図17にその事例を示す。図16は設定通りにカシメ部2が形成された断面図、図17は、溶融樹脂が溶着チップ7外に流出した場合の断面図である。
【0004】
例えば、プリント基板1の肉厚が薄い場合、成形品3に一体成形された溶着ボス4が固定穴5から突き出る溶着ボス4が長い(高い)ため溶融する樹脂量が多くなり、溶着チップ7の凹部内に収容しきれなくなって、溶着チップ7の先端から図17(a)に示す様に溶着チップの外に流出してしまう場合がある。流出した樹脂は通称バリ6と呼ばれているものであり、製品に組み込まれた時、このバリ6が図17(b)に示す様にかしめ部2から離脱し、組み込んだ製品内に混入する不都合を生じさせる。
また、漏れ出した溶融樹脂が溶着チップ7の外側側面に付着し、その結果、溶着チップ7が汚れる原因でカシメ留め品質に悪影響を与える場合がある。
【0005】
そこで、バリを発生させない接合方法として、特開2004−262041号公報には超音波接合方法が紹介されている。
それは、超音波溶着用ホーンの先端部分に切欠きが形成されるとともに、超音波溶着時に生じる溶着用突部先端部分の余剰樹脂が前記切欠きを通して超音波溶着用ホーン対向側のトリムメンバーの裏面に誘導することを特徴とする樹脂部品の超音波接合方法である。
【0006】
しかし、超音波溶着用ホーンの先端部分に切欠きが形成されると、先端部分の強度が低下し、高価な超音波溶着ホーンの寿命に悪影響を及ぼす場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−262041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記公知例が持つ欠点を解消するのが目的であって、その目的は、熱カシメ留めにおいて、溶着チップ(超音波溶着ホーン)の強度に影響せず、かつ、溶着チップの外部に漏れ出した余剰樹脂(バリ)がカシメ留め部から離脱しない熱カシメ留め部の構造及びそのカシメ留め方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件発明は、上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、樹脂基材に溶着ボスを突設し、この溶着ボスを被固定物側に形成した固定孔内に通して溶着ボスの先端を固定孔内から突出させ、この突出した溶着ボスの先端に溶着チップの先端面に形成した凹状の当接面を押し当てて溶着ボスが固定孔から突き出た部分を加熱溶融し、固定孔の直径より大きい直径を持つカシメ部を形成することにより樹脂基材に被固定物を固定するカシメ留め部構造において、前記被固定物における固定穴の周囲であって、溶着チップを押し当ててその凹状当接面の周壁の先端が被固定物に当接したときに、その先端を迂回するように余剰溶接樹脂が前記周壁の外に流出して溶着ボスのカシメ部と一体に固化する余剰溶融樹脂の迂回誘導流路部を形成して成ることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、溶着チップが溶着ボスを溶融し続け、最終的に溶着チップの周壁の先端が被固定物の表面に当接したとき、余剰溶融樹脂を迂回流路部を経由して溶着チップの周壁の外に流出させ、この流出した余剰溶融樹脂をカシメ留め部と一緒に冷却固化させることができる。
【0011】
更に請求項2記載の発明においては、請求項1記載の熱カシメ部構造において、前記溶融樹脂迂回誘導流路部は前記固定穴の周囲に断続的に形成された穴又は溝形状であることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、簡単な加工技術により余剰溶融樹脂の迂回誘導流路部を形成することができる。
【0013】
更に請求項3記載の発明においては、請求項1及び請求項2に記載の前記熱カシメ留め構造を有する前記被固定物を樹脂製の基材に熱カシメ留めする際、前記基材に突設された溶着ボスを前記固定穴に通した後、前記溶着チップを前記溶着ボスに押し当てながら溶着ボスを溶融させ、更に、溶融した樹脂であって、溶着ボスの凹状当接面の周囲に形成された周壁で囲まれた空間からはみ出した余剰の樹脂を前記余剰樹脂迂回誘導流路部を経由して前記溶着チップの先端に形成された周壁の先端から外に流出させて溶着ボスのカシメ部と一体に固化させることにより余剰樹脂を処理する熱カシメ留め方法である。
【0014】
この発明によれば、溶着チップの熱で溶融した溶着ボスの溶融樹脂は、迂回誘導流路部を経由して溶着チップの先端から外に流出し、カシメ留め部と一体となって冷却固化するため、従来のように薄いバリとは異なり確実にカシメ留め部と連結し、カシメ部から容易に離脱して製品内に異物となって散在したりすることがない。
また、被固定物は、迂回誘導流路部内で固化した余剰溶融樹脂の作用で溶着ボスに固定されていることから、特に溶着ボスが1本の場合に、被固定物が溶着ボスを中心に回転するのを阻止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上説明したように、溶着チップの当接面からはみ出した余剰の溶融樹脂を、カシメ留め部と一体に固化させているため、余剰樹脂がバリ等となって製品内に散在したりすることがない。
また、被固定物は、固化した余剰樹脂の作用でカシメ部と連結しているため、被固定物が溶着ボスを中心に回転しない。また、余剰樹脂が溶着チップの側面に付着することがなく、溶着チップの清掃回数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】プリント基板の平面図
【図2】実施例1における熱カシメ留め部構造の説明図
【図3】溶着チップの説明図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)はA−A’線断面図
【図4】溶着チップの当接面と小穴との位置及び寸法関係の説明図
【図5】実施例2における熱カシメ留め部構造の説明図
【図6】実施例3の熱カシメ工程の説明図であって、カシメ直前の説明図
【図7】実施例3の熱カシメ工程の説明図であって、カシメ途中の説明図
【図8】実施例3の熱カシメ工程の説明図であって、カシメ終了時の説明図
【図9】実施例3のカシメ部の天面図
【図10】実施例3のカシメ部のB-B´断面図
【図11】実施例3のカシメ部のC-C´断面図
【図12】実施例4の熱カシメ工程の説明図であって、カシメ直前の説明図
【図13】実施例4の熱カシメ工程の説明図であって、カシメ途中の説明図
【図14】実施例4の熱カシメ工程の説明図であって、カシメ終了時の説明図
【図15】実施例4のカシメ部の断面図
【図16】設定通りにカシメ部が形成された従来例における断面図
【図17】比較例の説明図であって(a)はカシメ終了時の説明図、(b)は余剰の樹脂が飛散している状況の説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の熱カシメ留め部の構造及びその熱カシメ留め方法は、被固定物に穿設された熱カシメ留め用の固定穴の周囲に複数の小穴または切り欠き等により溶着チップの先端が被固定物に当接したときに溶着チップの内と外部とが連通される流路部を形成し、この流路部の作用で目的を達成する。
【0018】
なお、被固定物から突き出た部分の溶着ボスの体積と溶着チップ凹部容量との関係は、溶着ボスの体積が溶着チップ凹部の容量に対し大きくしておくことが必要であり、望ましくは、溶着チップの凹部の容量に対し溶着ボスの体積は1.3〜1.5倍に設計するとよい。
【実施例1】
【0019】
本実施例1では、請求項1に記載した熱カシメ留め部の構造を説明する。
図1は被固定物であるプリント基板10の平面図、図2はプリント基板10に穿設された円形の小穴12の説明図、図3は本実施例に用いた溶着チップ30の説明図で、図3(a)は当接面31から見た斜視図、図3(b)は溶着チップ30を当接面31から見た正面図、図3(c)は図3(b)におけるA−A´部断面図である。
【0020】
各図に基づいて詳細に説明すると、図1に表記した被固定物10は電子部品を実装するプリント基板であり、樹脂製基材20に突設された溶着ボス21を溶融し、形成されたカシメ留め部38を固化させて樹脂基材20にカシメ留めするものである。プリント基板10の厚さは1.6mmである。そのプリント基板10には、溶着ボス21を通すための固定穴11を4箇所穿設し、その周囲4箇所へ円形の小穴12を穿設している。本実施例の場合、固定穴11の直径L1は、3.8mm及び小穴L2の直径L2は2.0mmである。
本実施例では、小穴12の個数を4箇所としたが、その個数については任意に選択することができる。
39は溶着チップの当接面の位置を示す仮想線である。
【0021】
図3に本実施例に用いた溶着チップ30について図示している。図3(a)は当接面31からみた斜視図で、当接面31には凹状に凹んだ溶着面32が形成されている。溶着チップ30の側面44には対面する位置にスリット33が切り込まれており、スリット33で分断された溶着チップ30の開口部側壁44に電線(図示せず)を電気的に接続することにより、溶着チップ30へ電圧を印加させ発熱させることができる。
図3(c)における溶着チップ30の先端部側壁34の肉厚tは0.6mmである。
【0022】
溶着チップ30の当接面31と余剰溶融樹脂の迂回誘導流路を形成する小穴12との位置及び寸法関係について、プリント基板10へ溶着チップ30を当接させた様子を示す図4を用いて説明する(溶着ボスは図示していない)。
【0023】
小穴12の位置は、小穴12のほぼ中心に溶着チップ30が到達するように固定穴11の周囲に配設する。また、小穴11の直径と溶着チップ30の肉厚tの関係は、少なくとも肉厚tに対して小穴12の直径寸法が大きくしないと、溶着チップ30の凹部36内の溶融樹脂は、溶着チップ30の肉厚tと小穴12の直径とのクリアランス40及びクリアランス41により小穴12を介して外部へ流出することができない。
【0024】
溶着チップ30と小穴12との各クリアランスについては、樹脂の種類(流動性)、溶着ボスの大きさ(溶融樹脂量)、溶着チップの温度、等、鑑みて選択することができる。
本実施例において、小穴12は被固定物を貫通させたが有底としても良く、また小穴12の形状は円形に限らず角形状であっても良い。
また、小穴12の数は任意であるが、多過ぎると被固定物10側の固定穴11の強度を低下させることになるので、2個以上6個位の範囲に抑えるのが良い。
【実施例2】
【0025】
実施例1では、熱カシメ留め部構造において、プリント基板10に形成された小穴12を円形の形状としたが、実施例2では、固定穴11と連続した複数の放射状の切り欠き13にて余剰樹脂迂回誘導流路部を形成した事例について紹介する。図5は、プリント基板10に穿設された切り欠き13の説明図である。
本実施例では、固定穴11の周囲に90度の間隔で4方向へ放射状の長穴形状である切り欠き13を設けた。切り欠き13の中心からの長さは、実施例1に記載されている様に、溶着チップ30と切り欠きと13との開口部が樹脂流動に支障のない寸法に選択する。
【実施例3】
【0026】
実施例3では、実施例1に記載した熱カシメ留め部の構造を形成したプリント基板10を用いて樹脂製基材20に固定する熱カシメ留め方法を図6〜11を基に説明する。
本実施例における小穴12は貫通した形状を用いた。
図6は溶着チップ30を溶着ボス30の先端面22に押し当てた状態を示す説明図、図7は溶着チップ30の熱で溶着ボス21が溶融し始めた状態を示す説明図、図8は溶融した樹脂が小穴12を介して外部へ流動した状態を示す説明図、図9は熱カシメ工程が完了したカシメ部38の天面図、図10は図9におけるB−B´部断面図、図11は図9におけるC−C´部断面図である。
【0027】
まず、図6に示す様に、樹脂製基材(ABS樹脂製)20に一体成形された溶着ボス(φ3.4mm)21をプリント基板10に穿設された固定穴(φ3.8mm)11に通して樹脂製基材20の上面に乗せる。
次に、溶着チップ30を溶着ボス21の先端面22に押し付け、溶着チップ30の熱で溶着ボス21を溶融させる。溶着チップ30に電圧を印加して発熱させるタイミングは、発熱させてから押し付ける場合でも、押し付けてから発熱させる場合でもどちらも可能である。
溶着ボス21を溶着チップ30にて更に加圧しながら加熱させることにより、図7に示すように、溶着チップ30の凹部(当接面)36に溶融した樹脂が満たされていく。
【0028】
加圧を続け最終的にプリント基板10の表面に溶着チップ30の当接面(周壁の先端)31が当接した様子を図8に示す。
凹部36の体積より多く溶融している余剰樹脂37は、溶着チップ30の当接面31と小穴12とのクリアランス40(幅:0.7mm)から小穴12内に入りこみ、小穴12内は余剰樹脂で充填されていく。その後、小穴12内が余剰樹脂で充填されると溶着チップ30の側面と小穴とのクリアランス41(幅:0.7mm)から溶着チップ30の外部へ流出する。
【0029】
その後、溶着チップ30を冷却させ、カシメ留め部38から離脱させる、または、溶着チップ30を離脱させた後、カシメ留め部38を冷却させることにより熱カシメ工程が完了する。
以上の熱カシメ作業によりカシメ留め部38の平面図である図9に示すように、カシメ留め部38と繋がる余剰樹脂37が固化して出来た余剰成形体50が形成される。
【0030】
図10及び図11にカシメ留め部38の断面図を示す。図10から判るように、カシメ留め部38と余剰樹脂37である余剰成形体50とが小穴12の効果にて繋がっているため、従来の熱カシメ留めのように余剰樹脂がバリとなって不安定に形成されることなく、その結果、カシメ留め部から離脱して製品内に異物として散在するようになることがない。
なお、小穴12に余剰樹脂37が入り込むためプリント基板(被固定物)10が溶着ボス21を中心に回転することを抑制する効果も得られる。
【0031】
表1に回り止め強度を測定したデータを示す。
なお、実施例2に記載した放射状の切り欠きを形成した被固定物を用いた熱カシメ方法においては、実施例3に記載した方法と同一なので、説明を省略する。
【実施例4】
【0032】
実施例4では、プリント基板に形成する小穴の形状として、被固定物における肉厚の約1/3のみ空隙である有底タイプを用いた熱カシメ留め方法を図12〜15を基に説明する。
【0033】
図12は溶着チップ30を溶着ボス30の先端面22に押し当てた状態を示す説明図、図13は溶着チップ30の熱で溶着ボス21が溶融し始めた状態を示す説明図、図14は溶融した樹脂が小穴12を介して外部へ流動した状態を示す説明図、図15は熱カシメ工程が完了したカシメ部38の断面図である。
小穴12における底部の形状は、余剰樹脂の流動が円滑に行われる様にお椀形をしている。
【0034】
熱カシメ留め方法について説明する。基本的に実施例3と同様であり、図12に示す様に溶着チップ30を溶着ボス21の天面22に押し当て溶着ボスを溶融する。
【0035】
更に、図13に示すごとく溶着チップ30の凹部36を溶融した樹脂で満たしながら降下し、被固定物10の表面に当接すると凹部36の体積より多く溶融している余剰樹脂37は、溶着チップ30の当接面31と小穴12とのクリアランス40から小穴内に入りこみ、次に、小穴12の底面のお椀形に沿って溶着チップ30の側面と小穴とのクリアランス41から溶着チップ30の外部へ流出する(図14)。
【0036】
その後、溶着チップ30を冷却させ、カシメ留め部38から離脱させる、または、溶着チップ30を離脱させた後、カシメ留め部38を冷却させることにより熱カシメ工程が完了する。
以上の熱カシメ作業によりカシメ留め部38の断面図である図15に示すように、カシメ留め部38と繋がる余剰樹脂37が固化して出来た余剰成形体50が形成される。
表1に回り止め強度を測定したデータを示す。
【0037】
比較例1として、従来の固定穴の周囲に小穴や切り欠きを形成しないで行う熱カシメ方法を行った。
その結果、図17(a)に示すごとく、カシメ留め部2の周囲に余剰樹脂であるバリ6が発生し、図17(b)の様に、バリ6が離脱して製品の中に異物として混入する不都合が生じた。
また、実施例3と同様に回り止めを測定したが、被固定物が溶着ボスを中心として容易に被固定物が回転してしまった。
【0038】
表1に回り止め強度を測定したデータを示す。
【表1】
【符号の説明】
【0039】
10 プリント基板
11 固定穴
12 小穴
20 基材
21 溶着ボス
30 溶着チップ
37 余剰樹脂
40、41 クリアランス
50 余剰成形体
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂成形品へ被固定物を固定する際、熱可塑性樹脂成形品の一部に溶着ボスと称される溶着又は変形部を予め形成しておき、この溶着ボスを被固定物側の固定孔内に通してその先端を固定孔内から突き出し、この突き出した先端側を熱で溶融又は変形することにより、熱可塑性樹脂成形品に被固定物をカシメ留めする熱カシメ留め部の構造及びその熱カシメ留め方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂で成形された成形品に被固定物を固定する方法として、まず、成形品に一体成形された溶着ボスを被固定物側に形成された固定孔に通す。
次に、この固定孔から突き出た溶着ボスの先端側を電熱式溶着チップ(以下「溶着チップ」と称する)を押し当てて溶着チップの先端に形成された凹部へ溶融樹脂を充満させ、さらに冷却することにより、固定孔より大きいきのこの傘のようなカシメ留め部を形成し、このカシメ留め部により被固定物を成形品にカシメ留め(固定)するという熱カシメ留め方法が知られている。
【0003】
しかし、被固定物の肉厚にバラツキがある場合、例えば、電気部品を実装するプリント基板では、生産ロットによりプリント基板の肉厚が異なる場合がある。
図16、図17にその事例を示す。図16は設定通りにカシメ部2が形成された断面図、図17は、溶融樹脂が溶着チップ7外に流出した場合の断面図である。
【0004】
例えば、プリント基板1の肉厚が薄い場合、成形品3に一体成形された溶着ボス4が固定穴5から突き出る溶着ボス4が長い(高い)ため溶融する樹脂量が多くなり、溶着チップ7の凹部内に収容しきれなくなって、溶着チップ7の先端から図17(a)に示す様に溶着チップの外に流出してしまう場合がある。流出した樹脂は通称バリ6と呼ばれているものであり、製品に組み込まれた時、このバリ6が図17(b)に示す様にかしめ部2から離脱し、組み込んだ製品内に混入する不都合を生じさせる。
また、漏れ出した溶融樹脂が溶着チップ7の外側側面に付着し、その結果、溶着チップ7が汚れる原因でカシメ留め品質に悪影響を与える場合がある。
【0005】
そこで、バリを発生させない接合方法として、特開2004−262041号公報には超音波接合方法が紹介されている。
それは、超音波溶着用ホーンの先端部分に切欠きが形成されるとともに、超音波溶着時に生じる溶着用突部先端部分の余剰樹脂が前記切欠きを通して超音波溶着用ホーン対向側のトリムメンバーの裏面に誘導することを特徴とする樹脂部品の超音波接合方法である。
【0006】
しかし、超音波溶着用ホーンの先端部分に切欠きが形成されると、先端部分の強度が低下し、高価な超音波溶着ホーンの寿命に悪影響を及ぼす場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−262041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記公知例が持つ欠点を解消するのが目的であって、その目的は、熱カシメ留めにおいて、溶着チップ(超音波溶着ホーン)の強度に影響せず、かつ、溶着チップの外部に漏れ出した余剰樹脂(バリ)がカシメ留め部から離脱しない熱カシメ留め部の構造及びそのカシメ留め方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件発明は、上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、樹脂基材に溶着ボスを突設し、この溶着ボスを被固定物側に形成した固定孔内に通して溶着ボスの先端を固定孔内から突出させ、この突出した溶着ボスの先端に溶着チップの先端面に形成した凹状の当接面を押し当てて溶着ボスが固定孔から突き出た部分を加熱溶融し、固定孔の直径より大きい直径を持つカシメ部を形成することにより樹脂基材に被固定物を固定するカシメ留め部構造において、前記被固定物における固定穴の周囲であって、溶着チップを押し当ててその凹状当接面の周壁の先端が被固定物に当接したときに、その先端を迂回するように余剰溶接樹脂が前記周壁の外に流出して溶着ボスのカシメ部と一体に固化する余剰溶融樹脂の迂回誘導流路部を形成して成ることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、溶着チップが溶着ボスを溶融し続け、最終的に溶着チップの周壁の先端が被固定物の表面に当接したとき、余剰溶融樹脂を迂回流路部を経由して溶着チップの周壁の外に流出させ、この流出した余剰溶融樹脂をカシメ留め部と一緒に冷却固化させることができる。
【0011】
更に請求項2記載の発明においては、請求項1記載の熱カシメ部構造において、前記溶融樹脂迂回誘導流路部は前記固定穴の周囲に断続的に形成された穴又は溝形状であることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、簡単な加工技術により余剰溶融樹脂の迂回誘導流路部を形成することができる。
【0013】
更に請求項3記載の発明においては、請求項1及び請求項2に記載の前記熱カシメ留め構造を有する前記被固定物を樹脂製の基材に熱カシメ留めする際、前記基材に突設された溶着ボスを前記固定穴に通した後、前記溶着チップを前記溶着ボスに押し当てながら溶着ボスを溶融させ、更に、溶融した樹脂であって、溶着ボスの凹状当接面の周囲に形成された周壁で囲まれた空間からはみ出した余剰の樹脂を前記余剰樹脂迂回誘導流路部を経由して前記溶着チップの先端に形成された周壁の先端から外に流出させて溶着ボスのカシメ部と一体に固化させることにより余剰樹脂を処理する熱カシメ留め方法である。
【0014】
この発明によれば、溶着チップの熱で溶融した溶着ボスの溶融樹脂は、迂回誘導流路部を経由して溶着チップの先端から外に流出し、カシメ留め部と一体となって冷却固化するため、従来のように薄いバリとは異なり確実にカシメ留め部と連結し、カシメ部から容易に離脱して製品内に異物となって散在したりすることがない。
また、被固定物は、迂回誘導流路部内で固化した余剰溶融樹脂の作用で溶着ボスに固定されていることから、特に溶着ボスが1本の場合に、被固定物が溶着ボスを中心に回転するのを阻止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上説明したように、溶着チップの当接面からはみ出した余剰の溶融樹脂を、カシメ留め部と一体に固化させているため、余剰樹脂がバリ等となって製品内に散在したりすることがない。
また、被固定物は、固化した余剰樹脂の作用でカシメ部と連結しているため、被固定物が溶着ボスを中心に回転しない。また、余剰樹脂が溶着チップの側面に付着することがなく、溶着チップの清掃回数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】プリント基板の平面図
【図2】実施例1における熱カシメ留め部構造の説明図
【図3】溶着チップの説明図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)はA−A’線断面図
【図4】溶着チップの当接面と小穴との位置及び寸法関係の説明図
【図5】実施例2における熱カシメ留め部構造の説明図
【図6】実施例3の熱カシメ工程の説明図であって、カシメ直前の説明図
【図7】実施例3の熱カシメ工程の説明図であって、カシメ途中の説明図
【図8】実施例3の熱カシメ工程の説明図であって、カシメ終了時の説明図
【図9】実施例3のカシメ部の天面図
【図10】実施例3のカシメ部のB-B´断面図
【図11】実施例3のカシメ部のC-C´断面図
【図12】実施例4の熱カシメ工程の説明図であって、カシメ直前の説明図
【図13】実施例4の熱カシメ工程の説明図であって、カシメ途中の説明図
【図14】実施例4の熱カシメ工程の説明図であって、カシメ終了時の説明図
【図15】実施例4のカシメ部の断面図
【図16】設定通りにカシメ部が形成された従来例における断面図
【図17】比較例の説明図であって(a)はカシメ終了時の説明図、(b)は余剰の樹脂が飛散している状況の説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の熱カシメ留め部の構造及びその熱カシメ留め方法は、被固定物に穿設された熱カシメ留め用の固定穴の周囲に複数の小穴または切り欠き等により溶着チップの先端が被固定物に当接したときに溶着チップの内と外部とが連通される流路部を形成し、この流路部の作用で目的を達成する。
【0018】
なお、被固定物から突き出た部分の溶着ボスの体積と溶着チップ凹部容量との関係は、溶着ボスの体積が溶着チップ凹部の容量に対し大きくしておくことが必要であり、望ましくは、溶着チップの凹部の容量に対し溶着ボスの体積は1.3〜1.5倍に設計するとよい。
【実施例1】
【0019】
本実施例1では、請求項1に記載した熱カシメ留め部の構造を説明する。
図1は被固定物であるプリント基板10の平面図、図2はプリント基板10に穿設された円形の小穴12の説明図、図3は本実施例に用いた溶着チップ30の説明図で、図3(a)は当接面31から見た斜視図、図3(b)は溶着チップ30を当接面31から見た正面図、図3(c)は図3(b)におけるA−A´部断面図である。
【0020】
各図に基づいて詳細に説明すると、図1に表記した被固定物10は電子部品を実装するプリント基板であり、樹脂製基材20に突設された溶着ボス21を溶融し、形成されたカシメ留め部38を固化させて樹脂基材20にカシメ留めするものである。プリント基板10の厚さは1.6mmである。そのプリント基板10には、溶着ボス21を通すための固定穴11を4箇所穿設し、その周囲4箇所へ円形の小穴12を穿設している。本実施例の場合、固定穴11の直径L1は、3.8mm及び小穴L2の直径L2は2.0mmである。
本実施例では、小穴12の個数を4箇所としたが、その個数については任意に選択することができる。
39は溶着チップの当接面の位置を示す仮想線である。
【0021】
図3に本実施例に用いた溶着チップ30について図示している。図3(a)は当接面31からみた斜視図で、当接面31には凹状に凹んだ溶着面32が形成されている。溶着チップ30の側面44には対面する位置にスリット33が切り込まれており、スリット33で分断された溶着チップ30の開口部側壁44に電線(図示せず)を電気的に接続することにより、溶着チップ30へ電圧を印加させ発熱させることができる。
図3(c)における溶着チップ30の先端部側壁34の肉厚tは0.6mmである。
【0022】
溶着チップ30の当接面31と余剰溶融樹脂の迂回誘導流路を形成する小穴12との位置及び寸法関係について、プリント基板10へ溶着チップ30を当接させた様子を示す図4を用いて説明する(溶着ボスは図示していない)。
【0023】
小穴12の位置は、小穴12のほぼ中心に溶着チップ30が到達するように固定穴11の周囲に配設する。また、小穴11の直径と溶着チップ30の肉厚tの関係は、少なくとも肉厚tに対して小穴12の直径寸法が大きくしないと、溶着チップ30の凹部36内の溶融樹脂は、溶着チップ30の肉厚tと小穴12の直径とのクリアランス40及びクリアランス41により小穴12を介して外部へ流出することができない。
【0024】
溶着チップ30と小穴12との各クリアランスについては、樹脂の種類(流動性)、溶着ボスの大きさ(溶融樹脂量)、溶着チップの温度、等、鑑みて選択することができる。
本実施例において、小穴12は被固定物を貫通させたが有底としても良く、また小穴12の形状は円形に限らず角形状であっても良い。
また、小穴12の数は任意であるが、多過ぎると被固定物10側の固定穴11の強度を低下させることになるので、2個以上6個位の範囲に抑えるのが良い。
【実施例2】
【0025】
実施例1では、熱カシメ留め部構造において、プリント基板10に形成された小穴12を円形の形状としたが、実施例2では、固定穴11と連続した複数の放射状の切り欠き13にて余剰樹脂迂回誘導流路部を形成した事例について紹介する。図5は、プリント基板10に穿設された切り欠き13の説明図である。
本実施例では、固定穴11の周囲に90度の間隔で4方向へ放射状の長穴形状である切り欠き13を設けた。切り欠き13の中心からの長さは、実施例1に記載されている様に、溶着チップ30と切り欠きと13との開口部が樹脂流動に支障のない寸法に選択する。
【実施例3】
【0026】
実施例3では、実施例1に記載した熱カシメ留め部の構造を形成したプリント基板10を用いて樹脂製基材20に固定する熱カシメ留め方法を図6〜11を基に説明する。
本実施例における小穴12は貫通した形状を用いた。
図6は溶着チップ30を溶着ボス30の先端面22に押し当てた状態を示す説明図、図7は溶着チップ30の熱で溶着ボス21が溶融し始めた状態を示す説明図、図8は溶融した樹脂が小穴12を介して外部へ流動した状態を示す説明図、図9は熱カシメ工程が完了したカシメ部38の天面図、図10は図9におけるB−B´部断面図、図11は図9におけるC−C´部断面図である。
【0027】
まず、図6に示す様に、樹脂製基材(ABS樹脂製)20に一体成形された溶着ボス(φ3.4mm)21をプリント基板10に穿設された固定穴(φ3.8mm)11に通して樹脂製基材20の上面に乗せる。
次に、溶着チップ30を溶着ボス21の先端面22に押し付け、溶着チップ30の熱で溶着ボス21を溶融させる。溶着チップ30に電圧を印加して発熱させるタイミングは、発熱させてから押し付ける場合でも、押し付けてから発熱させる場合でもどちらも可能である。
溶着ボス21を溶着チップ30にて更に加圧しながら加熱させることにより、図7に示すように、溶着チップ30の凹部(当接面)36に溶融した樹脂が満たされていく。
【0028】
加圧を続け最終的にプリント基板10の表面に溶着チップ30の当接面(周壁の先端)31が当接した様子を図8に示す。
凹部36の体積より多く溶融している余剰樹脂37は、溶着チップ30の当接面31と小穴12とのクリアランス40(幅:0.7mm)から小穴12内に入りこみ、小穴12内は余剰樹脂で充填されていく。その後、小穴12内が余剰樹脂で充填されると溶着チップ30の側面と小穴とのクリアランス41(幅:0.7mm)から溶着チップ30の外部へ流出する。
【0029】
その後、溶着チップ30を冷却させ、カシメ留め部38から離脱させる、または、溶着チップ30を離脱させた後、カシメ留め部38を冷却させることにより熱カシメ工程が完了する。
以上の熱カシメ作業によりカシメ留め部38の平面図である図9に示すように、カシメ留め部38と繋がる余剰樹脂37が固化して出来た余剰成形体50が形成される。
【0030】
図10及び図11にカシメ留め部38の断面図を示す。図10から判るように、カシメ留め部38と余剰樹脂37である余剰成形体50とが小穴12の効果にて繋がっているため、従来の熱カシメ留めのように余剰樹脂がバリとなって不安定に形成されることなく、その結果、カシメ留め部から離脱して製品内に異物として散在するようになることがない。
なお、小穴12に余剰樹脂37が入り込むためプリント基板(被固定物)10が溶着ボス21を中心に回転することを抑制する効果も得られる。
【0031】
表1に回り止め強度を測定したデータを示す。
なお、実施例2に記載した放射状の切り欠きを形成した被固定物を用いた熱カシメ方法においては、実施例3に記載した方法と同一なので、説明を省略する。
【実施例4】
【0032】
実施例4では、プリント基板に形成する小穴の形状として、被固定物における肉厚の約1/3のみ空隙である有底タイプを用いた熱カシメ留め方法を図12〜15を基に説明する。
【0033】
図12は溶着チップ30を溶着ボス30の先端面22に押し当てた状態を示す説明図、図13は溶着チップ30の熱で溶着ボス21が溶融し始めた状態を示す説明図、図14は溶融した樹脂が小穴12を介して外部へ流動した状態を示す説明図、図15は熱カシメ工程が完了したカシメ部38の断面図である。
小穴12における底部の形状は、余剰樹脂の流動が円滑に行われる様にお椀形をしている。
【0034】
熱カシメ留め方法について説明する。基本的に実施例3と同様であり、図12に示す様に溶着チップ30を溶着ボス21の天面22に押し当て溶着ボスを溶融する。
【0035】
更に、図13に示すごとく溶着チップ30の凹部36を溶融した樹脂で満たしながら降下し、被固定物10の表面に当接すると凹部36の体積より多く溶融している余剰樹脂37は、溶着チップ30の当接面31と小穴12とのクリアランス40から小穴内に入りこみ、次に、小穴12の底面のお椀形に沿って溶着チップ30の側面と小穴とのクリアランス41から溶着チップ30の外部へ流出する(図14)。
【0036】
その後、溶着チップ30を冷却させ、カシメ留め部38から離脱させる、または、溶着チップ30を離脱させた後、カシメ留め部38を冷却させることにより熱カシメ工程が完了する。
以上の熱カシメ作業によりカシメ留め部38の断面図である図15に示すように、カシメ留め部38と繋がる余剰樹脂37が固化して出来た余剰成形体50が形成される。
表1に回り止め強度を測定したデータを示す。
【0037】
比較例1として、従来の固定穴の周囲に小穴や切り欠きを形成しないで行う熱カシメ方法を行った。
その結果、図17(a)に示すごとく、カシメ留め部2の周囲に余剰樹脂であるバリ6が発生し、図17(b)の様に、バリ6が離脱して製品の中に異物として混入する不都合が生じた。
また、実施例3と同様に回り止めを測定したが、被固定物が溶着ボスを中心として容易に被固定物が回転してしまった。
【0038】
表1に回り止め強度を測定したデータを示す。
【表1】
【符号の説明】
【0039】
10 プリント基板
11 固定穴
12 小穴
20 基材
21 溶着ボス
30 溶着チップ
37 余剰樹脂
40、41 クリアランス
50 余剰成形体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材に溶着ボスを突設し、この溶着ボスを被固定物側に形成した固定孔内に通して溶着ボスの先端を固定孔内から突出させ、この突出した溶着ボスの先端に溶着チップの先端面に形成した凹状の当接面を押し当てて溶着ボスが固定孔から突き出た部分を加熱溶融し、固定孔の直径より大きい直径を持つカシメ部を形成することにより樹脂基材に被固定物を固定するカシメ留め部構造において、前記被固定物における固定穴の周囲であって、溶着チップを押し当ててその凹状当接面の周壁の先端が被固定物に当接したときに、その先端を迂回するように余剰溶接樹脂が前記周壁の外に流出して溶着ボスのカシメ部と一体に固化する余剰溶融樹脂の迂回誘導流路部を形成して成る熱カシメ留め部構造。
【請求項2】
請求項1記載の熱カシメ留め構造において、前記溶融樹脂迂回誘導流路部は前記固定穴の周囲に断続的に形成された穴又は溝形状であることを特徴とする熱カシメ留め部構造。
【請求項3】
請求項1及び請求項2に記載の前記熱カシメ留め構造を有する前記被固定物を樹脂製の基材に熱カシメ留めする際、前記基材に突設された溶着ボスを前記固定穴に通した後、前記溶着チップを前記溶着ボスに押し当てながら溶着ボスを溶融させ、更に、溶融した樹脂であって、溶着ボスの凹状当接面の周囲に形成された周壁で囲まれた空間からはみ出した余剰の樹脂を前記余剰樹脂迂回誘導流路部を経由して前記溶着チップの先端に形成された周壁の先端から外に流出させて溶着ボスのカシメ部と一体に固化させることにより余剰樹脂を処理する熱カシメ留め方法。
【請求項1】
樹脂基材に溶着ボスを突設し、この溶着ボスを被固定物側に形成した固定孔内に通して溶着ボスの先端を固定孔内から突出させ、この突出した溶着ボスの先端に溶着チップの先端面に形成した凹状の当接面を押し当てて溶着ボスが固定孔から突き出た部分を加熱溶融し、固定孔の直径より大きい直径を持つカシメ部を形成することにより樹脂基材に被固定物を固定するカシメ留め部構造において、前記被固定物における固定穴の周囲であって、溶着チップを押し当ててその凹状当接面の周壁の先端が被固定物に当接したときに、その先端を迂回するように余剰溶接樹脂が前記周壁の外に流出して溶着ボスのカシメ部と一体に固化する余剰溶融樹脂の迂回誘導流路部を形成して成る熱カシメ留め部構造。
【請求項2】
請求項1記載の熱カシメ留め構造において、前記溶融樹脂迂回誘導流路部は前記固定穴の周囲に断続的に形成された穴又は溝形状であることを特徴とする熱カシメ留め部構造。
【請求項3】
請求項1及び請求項2に記載の前記熱カシメ留め構造を有する前記被固定物を樹脂製の基材に熱カシメ留めする際、前記基材に突設された溶着ボスを前記固定穴に通した後、前記溶着チップを前記溶着ボスに押し当てながら溶着ボスを溶融させ、更に、溶融した樹脂であって、溶着ボスの凹状当接面の周囲に形成された周壁で囲まれた空間からはみ出した余剰の樹脂を前記余剰樹脂迂回誘導流路部を経由して前記溶着チップの先端に形成された周壁の先端から外に流出させて溶着ボスのカシメ部と一体に固化させることにより余剰樹脂を処理する熱カシメ留め方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−167900(P2011−167900A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33107(P2010−33107)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(509294922)ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(509294922)ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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