説明

熱交換器、及びその熱交換器の製造方法

【課題】ヘッダの下方に液冷媒が滞留することを抑制した熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器10では、扁平管11の端部11cが、ヘッダ15の内面15cから水平面に対して傾斜した状態で突出している。扁平管11の端部11cの位置は、ヘッダ15の内部を中心軸Xが含まれる扁平管11の長手方向に平行な仮想平面で第1仮想空間と第2仮想空間に分割したとき、第1仮想空間及び前記第2仮想空間のいずれか一方に偏っている。扁平管11の端部を出た冷媒は、ヘッダ内の第1仮想空間又は第2仮想空間のいずれか一方側の内面15cに当たり一方向に旋回する。扁平管11の傾斜した端部11cは、旋回しながら向って来る冷媒を傾斜した方向に向わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平管とフィンとを備えた熱交換器、及びその熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扁平管の平面部を水平にし、平面部と平面部との間にフィンを配置した熱交換器が広く普及している。このような熱交換器を空調機に利用する場合、気液混合状態の冷媒が扁平管及び扁平管同士を連絡するヘッダ内部を流れる(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、ヘッダが垂直に立ち、下方の扁平管から出た冷媒がヘッダを通って上方の扁平管に流れる仕様の熱交換器では、液冷媒はガス冷媒よりも重いので、ヘッダの下方に滞留しやすく、上方の扁平管に液冷媒が流れ難くなり、熱交換器の性能が低下する。
【特許文献1】特開平7−55377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ヘッダの下方に液冷媒が滞留することを抑制した熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明に係る熱交換器は、複数の扁平管と、フィンと、筒状のヘッダとを備えている。フィンは、隣接する扁平管に挟まれている。ヘッダは、扁平管の端部が外面から内面へと貫通している。ヘッダの内部には、旋回流生成部と第1方向流れ生成部とが形成されている。旋回流生成部は、扁平管の端部から出た冷媒の流れをヘッダの内面に沿った旋回流にする。第1方向流れ生成部は、扁平管の端部から出た冷媒の向きを複数の扁平管の端部が並ぶ第1方向へと変える。
【0006】
この熱交換器では、旋回する冷媒が一方向へ向うことによって冷媒にその方向に向う推進力が付くので、仮に、下方の扁平管から出た冷媒がヘッダ内を通って上方の扁平管へ流れるときであっても、冷媒は重力に逆らってヘッダ内を上昇することができる。その結果、ガス冷媒だけでなく液冷媒もヘッダ内を上昇することができ、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0007】
第2発明に係る熱交換器は、第1発明に係る熱交換器であって、ヘッダの内部空間が曲面を有する柱形状である。この熱交換器では、ヘッダの内面が旋回面として利用されるので、旋回流生成部の小型化が可能となる。
【0008】
第3発明に係る熱交換器は、第2発明に係る熱交換器であって、扁平管の端部が水平面に対して垂直に或は斜めに延びている。この熱交換器では、扁平管の端部は、ヘッダの内面に沿って旋回しながら向って来る冷媒を水平面に対して垂直又は傾斜した方向に向わせることができる。その結果、仮に冷媒がヘッダ内を下方から上方へ流れる場合、ガス冷媒だけでなく液冷媒もヘッダ内を上昇することができ、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0009】
第4発明に係る熱交換器は、第2発明に係る熱交換器であって、扁平管が、中央部から前記端部にかけて捩じられている。この熱交換器では、扁平管の端部は、ヘッダの内面に沿って旋回しながら向って来る冷媒を水平面に対して垂直又は傾斜した方向に向わせることができる。その結果、仮に冷媒がヘッダ内を下方から上方へ流れる場合、ガス冷媒だけでなく液冷媒もヘッダ内を上昇することができ、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。また、扁平管の中央部は水平面と平行であるので、扁平管の中央部を通過する空気流に対する通風抵抗が減少する。
【0010】
第5発明に係る熱交換器は、第2発明に係る熱交換器であって、旋回流生成部が、ヘッダの内面と、扁平管の端部とを含んでいる。ヘッダの内部の中心軸を含み扁平管の長手方向に平行な仮想平面でヘッダの内部を第1仮想空間と第2仮想空間に分割したとき、扁平管の端部の位置が第1仮想空間及び第2仮想空間のいずれか一方に偏っている。この熱交換器では、扁平管の端部を出た冷媒は、ヘッダ内の第1仮想空間又は第2仮想空間のいずれか一方側の内面に当たるので、確実に一方向に旋回することができる。
【0011】
第6発明に係る熱交換器は、第5発明に係る熱交換器であって、扁平管の端部の先端の位置が、第1仮想空間及び第2仮想空間のいずれか一方に偏っている。この熱交換器では、扁平管の端部を出た冷媒は、ヘッダ内の第1仮想空間又は第2仮想空間のいずれか一方側の内面に当たるので、確実に一方向に旋回することができる。
【0012】
第7発明に係る熱交換器は、第5発明に係る熱交換器であって、扁平管の端部の根元及び先端の位置が共に、第1仮想空間及び第2仮想空間のいずれか一方に偏っている。この熱交換器では、扁平管の端部を出た冷媒は、ヘッダ内の第1仮想空間又は第2仮想空間のいずれか一方側の内面に当たるので、確実に一方向に旋回することができる。
【0013】
第8発明に係る熱交換器は、第2発明に係る熱交換器であって、旋回流生成部が、前記扁平管の端部から出た冷媒の向きをヘッダの内面に沿わせるコイル状部材を含んでいる。この熱交換器では、仮に冷媒がヘッダ内を下方から上方へ流れる場合、扁平管の端部を出た冷媒はコイル状部材に沿って旋回しながら上昇することができるので、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0014】
第9発明に係る熱交換器は、第2発明に係る熱交換器であって、旋回流生成部が、少なくともヘッダの内面に形成された螺旋状の流体通路を含んでいる。この熱交換器では、仮に冷媒がヘッダ内を下方から上方へ流れる場合、扁平管の端部を出た冷媒は螺旋状の流体通路に沿って旋回しながら上昇することができるので、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0015】
第10発明に係る熱交換器は、第9発明に係る熱交換器であって、螺旋状の流体通路が螺旋溝である。この熱交換器では、仮に冷媒がヘッダ内を下方から上方へ流れる場合、扁平管の端部を出た冷媒は螺旋溝に沿って旋回しながら上昇することができるので、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。また、加工が容易であるので、製造コストの削減が可能である。
【0016】
第11発明に係る熱交換器は、第2発明に係る熱交換器であって、第1方向流れ生成部が、扁平管の端部を含んでいる。扁平管の端部は、水平面に対して傾斜している。この熱交換器では、扁平管の端部は、ヘッダの内面に沿って旋回しながら向って来る冷媒を水平面に対して傾斜した方向に向わせることができる。その結果、仮に冷媒がヘッダ内を下方から上方へ流れる場合、ガス冷媒だけでなく液冷媒もヘッダ内を上昇することができ、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0017】
第12発明に係る熱交換器は、第2発明に係る熱交換器であって、第1方向流れ生成部が、水平面に対して傾斜する面によって扁平管の端部から出た冷媒の向き変える偏向部材を含んでいる。
【0018】
この熱交換器では、仮に冷媒がヘッダ内を下方から上方へ流れる場合、扁平管の端部から出た冷媒は偏向部材によって流れの向きが変えられるので、ガス冷媒だけでなく液冷媒もヘッダ内を上昇することができ、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0019】
第13発明に係る熱交換器は、第2発明に係る熱交換器であって、第1方向流れ生成部が、少なくともヘッダの内面に形成された螺旋状の流体通路を含んでいる。この熱交換器では、仮に冷媒がヘッダ内を下方から上方へ流れる場合、扁平管の端部を出た冷媒は螺旋状の流体通路に沿って旋回しながら上昇することができるので、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0020】
第14発明に係る熱交換器は、第13発明に係る熱交換器であって、螺旋状の流体通路が螺旋溝である。この熱交換器では、仮に冷媒がヘッダ内を下方から上方へ流れる場合、扁平管の端部を出た冷媒は螺旋溝に沿って旋回しながら上昇することができるので、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。また、加工が容易であるので、製造コストの削減が可能である。
【0021】
第15発明に係る熱交換器は、第1発明から第14発明のいずれか1つに係る熱交換器であって、ヘッダが、水平面に対して垂直に、或は斜めに延びている。この熱交換器では、ヘッダが水平面に対して垂直、或は傾斜している場合でも、旋回流生成部及び第1方向流れ生成部が、ヘッダ内を流れる冷媒に上昇力を与えるので、液冷媒が下方に溜まることが抑制される。
【0022】
第16発明に係る熱交換器の製造方法は、第9発明又は第13発明に記載の熱交換器の製造方法であって、螺旋状の冷媒通路は、ヘッダの外面を内面に向って螺旋状に窪ませることによって形成されている。この熱交換器の製造方法では、ヘッダの外側から加工を加えるだけで内面に冷媒通路が形成されるので、製造コストが低減される。
【発明の効果】
【0023】
第1発明に係る熱交換器では、ガス冷媒だけでなく液冷媒もヘッダ内を上昇することができ、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0024】
第2発明に係る熱交換器では、ヘッダの内面が旋回面として利用されるので、旋回流生成部の小型化が可能となる。
【0025】
第3発明に係る熱交換器では、ガス冷媒だけでなく液冷媒もヘッダ内を上昇することができ、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0026】
第4発明に係る熱交換器では、ガス冷媒だけでなく液冷媒もヘッダ内を上昇することができ、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。また、扁平管の中央部は水平面と平行であるので、扁平管の中央部を通過する空気流に対する通風抵抗が減少する。
【0027】
第5発明から第7発明のいずれか1つに係る熱交換器では、扁平管の端部を出た冷媒は、ヘッダ内の第1仮想空間又は第2仮想空間のいずれか一方側の内面に当たるので、確実に一方向に旋回することができる。
【0028】
第8発明又は第9発明に係る熱交換器では、扁平管の端部を出た冷媒は旋回しながら上昇することができるので、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0029】
第10発明に係る熱交換器では、扁平管の端部を出た冷媒は旋回しながら上昇することができるので、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。また、加工が容易であるので、製造コストの削減が可能である。
【0030】
第11発明又は第12発明に係る熱交換器では、ガス冷媒だけでなく液冷媒もヘッダ内を上昇することができ、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0031】
第13発明に係る熱交換器では、扁平管の端部を出た冷媒は旋回しながら上昇することができるので、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0032】
第14発明に係る熱交換器では、扁平管の端部を出た冷媒は旋回しながら上昇することができるので、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。また、加工が容易であるので、製造コストの削減が可能である。
【0033】
第15発明に係る熱交換器では、ヘッダが水平面に対して垂直、或は傾斜している場合でも、旋回流生成部及び第1方向流れ生成部が、ヘッダ内を流れる冷媒に上昇力を与えるので、液冷媒が下方に溜まることが抑制される。
【0034】
第16発明に係る熱交換器の製造方法では、ヘッダの外側から加工を加えるだけで内面に冷媒通路が形成されるので、製造コストが低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0036】
〔第1実施形態〕
<熱交換器10の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱交換器の斜視図であり、図2は、図1のA部の拡大斜視図である。図1、図2において、熱交換器10は、扁平管11、波形フィン12及びヘッダ15を備えている。
【0037】
(扁平管11)
扁平管11は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成形されており、伝熱面となる平面部11aと、冷媒が流れる複数の冷媒流路11bを有している(図2参照)。図2に示すように、扁平管11は、平面部11aを上下に向けた状態で複数段配列されている。
【0038】
(波形フィン12)
波形フィン12は、波形に折り曲げられたアルミニウム製またはアルミニウム合金製のフィンである。波形フィン12は、上下に隣接する扁平管11に挟まれた通風空間に配置され、谷部及び山部が扁平管11の平面部11aと接触している。なお、谷部と山部と平面部11aとはロウ付け溶接されている。
【0039】
波形フィン12の伝熱面12aは、通風空間を通過する空気と熱交換する部分であり、効率よく熱交換を行うためのルーバー12cが形成されている。ルーバー12cは、伝熱面12aの一方の面から他方の面へ貫通する開口を形成している。説明の便宜上、図2正面視において、伝熱面12aの右側の面を「第1面」、左側の面を「第2面」と呼ぶ。伝熱面12aの中央から上流側に位置するルーバー12c群は、空気流が第2面からから第1面へ流れるように傾いており、伝熱面12aの中央から下流側に位置するルーバー12c群は、空気流が第1面からから第2面へ流れるように傾いている。
【0040】
(ヘッダ15)
図1において、ヘッダ15は、上下方向に複数段配列された扁平管11の両端に連結されている。説明の便宜上、図1の正面視右側のヘッダを「第1ヘッダ151」と呼び、左側のヘッダを「第2ヘッダ152」と呼ぶ。第1ヘッダ151及び第2ヘッダ152は、扁平管11を支持する機能と、冷媒を扁平管11の冷媒流路11bに導く機能と、冷媒流路11bから出てきた冷媒を集合させる機能とを有している。
【0041】
(冷媒の流れ)
図1において、第2ヘッダ152の入口152aから流入した冷媒は、下から1段目及び2段目の扁平管11の各冷媒流路11bへほぼ均等に分配され第1ヘッダ151に向って流れる。第1ヘッダ151に達した冷媒は、下から3段目、4段目及び5段目の扁平管11の各冷媒流路11bへ均等に分配され第2ヘッダ152へ向って流れる。そして、第2ヘッダ152に達した冷媒は、下から6段目、7段目及び8段目(最上段目)の扁平管11の各冷媒流路11bへ均等に分配され第1ヘッダ151へ向って流れる。そして、第1ヘッダ151に到達した冷媒は、集合して出口151aから流出する。なお、第2ヘッダ152の内部では、下から2段目の扁平管11と下から3段目の扁平管11との間に仕切板18が設けられ、冷媒が行き来しないようになっている。また、第1ヘッダ151の内部では、下から5段目の扁平管11と下から6段目の扁平管11との間に仕切板18が設けられて、冷媒が行き来しないようになっている。
【0042】
図3は、扁平管とヘッダとの接続部側から視た熱交換器の斜視図である。図3において、扁平管11の端部がヘッダ15の内部へ貫通することによって、扁平管11とヘッダ15とが連結される。扁平管11は、ヘッダ15から所定距離だけ離れた位置から端部にかけて捩じれている。
【0043】
図4は、ヘッダの上部を一部破断させ、その破断部分側から視た熱交換器の斜視図である。図4において、ヘッダ15の内部は円柱形状をしており、鉛直方向と平行に立っている。なお、ヘッダ15の内部は円柱形状に限定されるものではなく、楕円柱形状でもよい。
【0044】
図5は、扁平管の端部が見えるようにヘッダの壁面を一部破断させ、その破断部分側から視た熱交換器の斜視図である。図5において、扁平管11は、ヘッダ15から所定距離だけ離れた位置から端部11cにかけて捩じれていることによって、端部11cは水平面に対して傾斜した状態でヘッダ15の内面15cから突出している。扁平管11の端部11cは、ヘッダ15の中心軸Xの方向に並んでいる。
【0045】
図6は、扁平管の冷媒流路が見えるようにヘッダの壁面を一部破断させ、その破断部分側から視た熱交換器の斜視図であり、図7は、ヘッダ内部の概略側面図である。図6、図7において、ヘッダ15の内部が、中心軸Xを含み扁平管11の長手方向と平行な仮想平面によって2つの仮想空間に分割された場合、端部11cの位置は2つの仮想空間のいずれか一方に偏っている。具体的には、図7に示すように、冷媒は扁平管11の端部11cから正面視手前に向って流出しており、扁平管11の端部11cの位置は、冷媒の流出方向に対向して視たときの右側に偏っている。
【0046】
その結果、扁平管11の冷媒流路11bを通って来た冷媒は、端部11cから流出した後、ヘッダ15の最も近い内面15cに沿って旋回し、傾斜した扁平管11の端部11cの平面部に当たって上昇する。上昇した冷媒は、上方の端部11cから流出して旋回している冷媒と合流し、上方の端部11cの平面部に当たってさらに上昇する。つまり、冷媒は旋回しながらヘッダ15内を上昇することになり、ガス冷媒だけでなく液冷媒も上昇することができる。
【0047】
冷媒の流出方向に対向する方向から扁平管11の端部11cを視た場合、扁平管11の端部11cが右側に偏り、右上がりに傾斜しているとき、冷媒は旋回しながら端部11cの平面部に当たって上昇する。同様に、扁平管11の端部11cが左側に偏り、左上がりに傾斜しているとき、冷媒は旋回しながら端部11cの平面部に当たって上昇する。したがって、冷媒を進めたい方向に応じて、扁平管11の端部11cの傾斜方向および偏り位置を決定しなければならない。実際には、端部11cの根元が上記のように偏っていなくても、曲げなどによって最終的に端部11cの先端面の位置が上記のように偏っていればよい。
【0048】
なお、図6、図7のヘッダ15内の矢印は、冷媒の進行方向を示している。以降、ヘッダ15の内面15cのように冷媒を旋回させる部分を旋回流生成部16と呼び、扁平管11の端部11cのように冷媒を上昇させる部分を上昇流生成部17と呼ぶ。
【0049】
<第1実施形態の特徴>
この熱交換器10では、扁平管11の端部11cが、ヘッダ15の内面15cから水平面に対して傾斜した状態で突出している。扁平管11の端部11cの位置は、ヘッダ15の内部を中心軸Xが含まれる扁平管11の長手方向に平行な仮想平面で第1仮想空間と第2仮想空間に分割したとき、第1仮想空間及び前記第2仮想空間のいずれか一方に偏っている。扁平管11の端部を出た冷媒は、ヘッダ内の第1仮想空間又は第2仮想空間のいずれか一方側の内面15cに当たり一方向に旋回する。扁平管11の傾斜した端部11cは、旋回しながら向って来る冷媒を傾斜した方向に向わせる。その結果、仮に冷媒がヘッダ内を下方から上方へ流れる場合、ガス冷媒だけでなく液冷媒もヘッダ内を上昇することができ、液冷媒がヘッダの下方に滞留することが抑制される。
【0050】
<第1変形例>
図8は、第1実施形態の第1変形例に係る熱交換器のヘッダ内部の概略側面図である。図8において、扁平管11の端部11cは、平面部が鉛直方向と平行になるように捩じられている。ヘッダ15の内部には、螺旋状に巻かれたワイヤ21が収納されている。
【0051】
扁平管11の端部11cから流出した冷媒のうちのガス冷媒は、ヘッダ15の内面15cに沿って旋回しながら、後から流出してくるガス冷媒に押されて上昇する。液冷媒は、螺旋形状のワイヤ21に沿って旋回しながら、後から流出してくる液冷媒に押されて上昇する。なお、第1変形例では、ワイヤ21が、液冷媒を旋回させ上昇させる偏向部材であり、旋回流生成部16と上昇流生成部17とを兼ねる。
【0052】
<第2変形例>
図9は、第1実施形態の第2変形例に係る熱交換器のヘッダ内部の概略側面図である。図9において、扁平管11の端部11cは、平面部が鉛直方向と平行になるように捩じられている。ヘッダ15の内面15cには、螺旋溝22が形成されている。なお、螺旋溝22は、ヘッダ15の素材である金属管を回転させながら前進させ、金属管内面にバイト(切削刃)を当てることによって形成される。
【0053】
扁平管11の端部11cから流出した冷媒のうちのガス冷媒は、ヘッダ15の内面15cに沿って旋回しながら、後から流出してくるガス冷媒に押されて上昇する。液冷媒は、螺旋溝22に沿って旋回しながら、後から流出してくる液冷媒に押されて上昇する。なお、第2変形例では、螺旋溝22が、旋回流生成部16と上昇流生成部17とを兼ねる。
【0054】
<第3変形例>
図10は、第1実施形態の第3変形例に係る熱交換器のヘッダ内部の概略側面図である。図10において、扁平管11の端部11cは、平面部が鉛直方向と平行になるように捩じられている。ヘッダ15の内面15cには、螺旋路23が形成されている。螺旋路23は、ヘッダ15の素材である金属管を回転させながら前進させ、金属管の外面から内面へ向って窪むように工具を押付けることによって形成される。
【0055】
第3変形例では、内面15cの螺旋路23を外面から形成することができるので、必要な場所に必要なだけ螺旋路23を形成することができる。扁平管11の端部11cから流出した冷媒の流れについては、第2変形例と同様であるのでここでは説明を省略する。なお、第3変形例では、螺旋路23が、旋回流生成部16と上昇流生成部17とを兼ねる。
【0056】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、扁平管の平面部が、ヘッダから所定距離だけ離れた位置から端部にかけて捩じれているが、扁平管の全体が傾斜してもよい。以下、図面を用いて第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同じ部材には、同じ符号を付与して説明を省略する。
【0057】
図11は、ヘッダの上部を一部破断させ、その破断部分側から視た第2実施形態に係る熱交換器の斜視図である。図11において、ヘッダ15の内部は円柱形状をしており、鉛直方向と平行に立っている。なお、ヘッダ15の内部は円柱形状に限定されるものではなく、楕円柱形状でもよい。
【0058】
図12は、扁平管の端部が見えるようにヘッダの壁面を一部破断させ、その破断部分側から視た第2実施形態に係る熱交換器の斜視図である。図12において、扁平管111は水平面に対して傾斜しており、端部111cは傾斜した状態でヘッダ15の内面15cから突出している。扁平管111の端部111cは、ヘッダ15の中心軸Xの方向に並んでいる。
【0059】
図13は、扁平管の冷媒流路が見えるようにヘッダの壁面を一部破断させ、その破断部分側から視た第2実施形態に係る熱交換器の斜視図である。図13において、ヘッダ15の内部が、中心軸Xを含み扁平管111の長手方向と平行な仮想平面によって2つの仮想空間に分割された場合、端部111cの位置は2つの仮想空間のいずれか一方に偏っている。
【0060】
その結果、扁平管111の冷媒流路111bを通って来た冷媒は、端部111cから流出した後、ヘッダ15の内面15cに沿って旋回し、傾斜した扁平管111の端部111cの平面部に当たって上昇する。上昇した冷媒は、上方の端部111cから流出して旋回している冷媒と合流し、上方の端部111cの平面部に当たってさらに上昇する。つまり、冷媒は旋回しながらヘッダ15内を上昇することになり、ガス冷媒だけでなく液冷媒も上昇することができる。ヘッダ15内の冷媒の旋回及び上昇は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態の第1変形例、第2変形例および第3変形例を適用することができる。
【0061】
(仕切板18の固定方法)
ここでは、ヘッダ15の内部を仕切る仕切板18の固定方法について説明する。図14は、ヘッダに仕切板を固定する前の第2実施形態に係る熱交換器の斜視図である。図14において、ヘッダ15には、中心軸Xに向って斜めに横切るスリット15dが予め設けられている。
【0062】
仕切板18は、スリット15dに挟まる程度の厚みを有する板で、小径部18a、大径部18bおよび位置決め部18cと有する。小径部18aは、ヘッダ15の内径より僅かに大きい半径を有する半円板である。大径部18bは、小径部18aの半径にヘッダ15の厚み寸法を加えた程度の半径を有する半円板である。小径部18aと大径部18bとは一枚の板材から打ち抜き加工によって一体成形される。位置決め部18cは、小径部18aと大径部18bとの段差部分である。
【0063】
仕切板18の小径部18aは、ヘッダ15のスリット15dからに挿入される。位置決め部18cがスリット15dの終端に突き当たるまで挿入されると、小径部18aの周面のエッジがヘッダ15の内面15cと接触し、大径部18bの周面はヘッダ15の外面に近づく。次に、ヘッダ15と仕切板18とをスリット15d側からロウ付け溶接することによって、ヘッダ15と仕切板18との接触部にロウが回り固定が完了する。この固定方法によれば、ヘッダ15の外側から仕切板18を固定することができるので、製造が容易である。
【0064】
<第2実施形態の特徴>
この熱交換器10では、扁平管111は水平面に対して傾斜した状態でヘッダ15に連結されているので、扁平管111の端部111cは必然的に水平面に傾斜した状態で、ヘッダ15の内面15cから突出しており、扁平管111の端部111cを捩じる必要がないので製造が容易である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明に係る熱交換器は、ヘッダが垂直に立ち、下方の扁平管から出た冷媒がヘッダを通って上方の扁平管に流れる仕様であっても、ヘッダの下方に液冷媒が滞留しないので、空調機の熱交換器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱交換器の斜視図。
【図2】図1のA部の拡大斜視図。
【図3】扁平管とヘッダとの接続部から視た熱交換器の斜視図。
【図4】ヘッダの上部を一部破断させ、その破断部分から視た熱交換器の斜視図。
【図5】扁平管の端部が見えるようにヘッダの壁面を一部破断させ、その破断部分側から視た熱交換器の斜視図。
【図6】扁平管の冷媒流路が見えるようにヘッダの壁面を一部破断させ、その破断部分側から視た熱交換器の斜視図。
【図7】ヘッダ内部の概略側面図。
【図8】第1実施形態の第1変形例に係る熱交換器のヘッダ内部の概略側面図。
【図9】第1実施形態の第2変形例に係る熱交換器のヘッダ内部の概略側面図。
【図10】第1実施形態の第3変形例に係る熱交換器のヘッダ内部の概略側面図。
【図11】ヘッダの上部を一部破断させ、その破断部分から視た第2実施形態に係る熱交換器の斜視図。
【図12】扁平管の端部が見えるようにヘッダの壁面を一部破断させ、その破断部分側から視た第2実施形態に係る熱交換器の斜視図。
【図13】扁平管の冷媒流路が見えるようにヘッダの壁面を一部破断させ、その破断部分側から視た第2実施形態に係る熱交換器の斜視図。
【図14】ヘッダに仕切板を固定する前の第2実施形態に係る熱交換器の斜視図。
【符号の説明】
【0067】
10 熱交換器
11 扁平管
11c 端部(上昇流生成部)
12 フィン
15 ヘッダ
15c 内面(旋回流生成部)
16 旋回流生成部
17 上昇流生成部(第1方向流れ生成部)
21 ワイヤ(コイル状部材)
22 螺旋溝
23 螺旋路(螺旋状の流体通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扁平管(11,111)と、
隣接する前記扁平管(11,111)に挟まれているフィン(12)と、
前記扁平管(11,111)の端部(11c,111c)が外面から内面へと貫通する筒状のヘッダ(15)と、
を備え、
前記ヘッダ(15)の内部には、
前記扁平管(11,111)の前記端部(11c,111c)から出た冷媒の流れを前記ヘッダ(15)の内面(15c)に沿った旋回流にする旋回流生成部(16)と、
前記扁平管(11,111)の前記端部(11c,111c)から出た冷媒の向きを複数の前記扁平管(11,111)の前記端部(11c,111c)が並ぶ第1方向へと変える第1方向流れ生成部(17)と、
が形成されている、
熱交換器(10)。
【請求項2】
前記ヘッダ(15)の内部空間が曲面を有する柱形状である、
請求項1に記載の熱交換器(10)。
【請求項3】
前記扁平管(11,111)の前記端部(11c,111c)が水平面に対して垂直に或は斜めに延びている、
請求項2に記載の熱交換器(10)。
【請求項4】
前記扁平管(11)が、中央部から前記端部(11c)にかけて捩じられている、
請求項2に記載の熱交換器(10)。
【請求項5】
前記旋回流生成部(16)は、
前記ヘッダ(15)の前記内面(15c)と、
前記扁平管(11,111)の前記端部(11c,111c)と、
を含んでおり、
前記ヘッダ(15)の内部の中心軸を含み前記扁平管(11,111)の長手方向に平行な仮想平面で前記ヘッダ(15)の内部を第1仮想空間と第2仮想空間に分割したとき、前記扁平管(11,111)の前記端部(11c,111c)の位置が前記第1仮想空間及び前記第2仮想空間のいずれか一方に偏っている、
請求項2に記載の熱交換器(10)。
【請求項6】
前記扁平管(11,111)の前記端部(11c,111c)の先端の位置が、前記第1仮想空間及び前記第2仮想空間のいずれか一方に偏っている、
請求項5に記載の熱交換器(10)。
【請求項7】
前記扁平管(11,111)の前記端部(11c,111c)の根元及び先端の位置が共に、前記第1仮想空間及び前記第2仮想空間のいずれか一方に偏っている、
請求項5に記載の熱交換器(10)。
【請求項8】
前記旋回流生成部(16)は、前記扁平管(11,111)の前記端部(11c,111c)から出た冷媒の向きを前記ヘッダ(15)の前記内面(15c)に沿わせるコイル状部材(21)を含んでいる、
請求項2に記載の熱交換器(10)。
【請求項9】
前記旋回流生成部(16)は、前記ヘッダ(15)の前記内面(15c)に形成された螺旋状の流体通路(23)を含んでいる、
請求項2に記載の熱交換器(10)。
【請求項10】
前記螺旋状の流体通路が、螺旋溝(22)である、
請求項9に記載の熱交換器(10)。
【請求項11】
前記第1方向流れ生成部(17)は、前記扁平管(11,111)の前記端部(11c,111c)を含んでおり、
前記扁平管(11,111)の前記端部(11c,111c)が水平面に対して傾斜している、
請求項2に記載の熱交換器(10)。
【請求項12】
前記第1方向流れ生成部(17)は、水平面に対して傾斜する面によって前記扁平管(11,111)の前記端部(11c,111c)から出た冷媒の向き変える偏向部材を含んでいる、
請求項2に記載の熱交換器(10)。
【請求項13】
前記第1方向流れ生成部(17)は、前記ヘッダ(15)の前記内面(15c)に形成された螺旋状の流体通路を含んでいる、
請求項2に記載の熱交換器(10)。
【請求項14】
前記螺旋状の流体通路が、螺旋溝である、
請求項13に記載の熱交換器(10)。
【請求項15】
前記ヘッダ(15)が、水平面に対して垂直に、或は斜めに延びている、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項16】
請求項9又は請求項13に記載の熱交換器の製造方法であって、
前記螺旋状の冷媒通路は、前記ヘッダ(15)の外面を内面(15c)に向って螺旋状に窪ませることによって形成される、
熱交換器(10)の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−25434(P2010−25434A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187012(P2008−187012)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】