説明

熱交換器およびヒートポンプ式給湯装置

【課題】冷媒が水通路に混入することを防止することができる熱交換器を提供する。
【解決手段】給湯用熱交換器14は、コアプレート25の厚み方向Yを含む仮想一平面で切断した切断面において、複数のチューブ23がチューブ用面部28にそれぞれろう付け接合されるチューブ接合部分31と、フィン24がフィン用面部27にろう付け接合されるフィン接合部分32とが、コアプレート25を介して対向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯装置、およびヒートポンプ式給湯装置に用いられる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術のヒートポンプ式給湯装置は、冷凍サイクルを構成するヒートポンプ装置と、水が循環する循環回路とを備える。ヒートポンプ装置は、循環回路の一部を構成する水通路と、冷凍サイクルの一部を構成する冷媒通路を備える水−冷媒熱交換器を備える。この熱交換器において、ヒートポンプ装置の圧縮機から吐出された高温冷媒と循環回路を循環する水とを熱交換する。これによって循環回路を循環する水が加熱され、加熱された水は、循環回路が備えるタンクなどに貯留される。
【0003】
このような従来からよく知られた形態の熱交換器は、水が流れる水通路に設けられるフィンおよびコアプレートと、冷媒が流れる冷媒通路を形成するチューブとを有する。フィンとコアプレートとチューブとは、ろう付けによってそれぞれ接合される。ろう付けに用いられるろう材は、水通路および冷媒通路に基づいて適宜選択される(たとえば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−153390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8は、従来の技術の熱交換器50の一部を拡大して示す断面図である。フィン51、コアプレート52およびチューブ53は、伝熱性に優れる銅が用いられる。このような銅から成る部材同士を接合するために、ろう材54は銅−燐合金からなる。
【0005】
従来の技術の熱交換器50のフィン51およびコアプレート52が循環させている水にさらされると、ろう材54から銅が水に溶け出し、ろう材54に欠陥が生じる。銅が水に溶け出すと、ろう材54の銅と燐との含有率が変化し、燐の含有率が高くなる。これによって銅が溶け出した部分(Pリッチ部分)と、フィン51またはコアプレート52を構成する銅とで電位差が生じ、異種金属接触による腐食が生じる。この腐食が孔食55となり、図8に示すように、コアプレート52およびチューブ53の内部に進行する。チューブ53の内部に進行すると、チューブ53とコアプレート52とが1つの孔で連通される。したがってチューブ53を流れる冷媒が、水通路に混入するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、冷媒が水通路に混入するような腐食の進行を防止することができる熱交換器、および熱交換器を備えるヒートポンプ式給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0008】
本発明は、内部に冷媒が通過する冷媒通路(21)を形成する複数のチューブ(23)と、
水が通過する水通路(22)に設けられるフィン(24)と、
複数のチューブおよびフィンがろう材(26)によってろう付け接合されるコア部材(25)とを含み、
コア部材は、少なくとも一部が板状に形成され、
複数のチューブがろう付け接合されるチューブ用面部(28)と、
チューブ用面部の裏面部であって、フィンがろう付け接合されるフィン用面部(27)とを含み、
コア部材の板状の部分の厚み方向を含む仮想一平面で切断した切断面において、複数のチューブがチューブ用面部にそれぞれろう付け接合されるチューブ接合部分(31)と、フィンがフィン用面部にろう付け接合されるフィン接合部分(32)とが、コア部材の板状の部分を介して対向することを特徴とする熱交換器である。
【0009】
本発明に従えば、切断面において、チューブ接合部分とフィン接合部分とが、コア部材の板状の部分を介して対向する。したがってチューブ接合部分とフィン接合部分とがコア部材を介して最も近接させることができる。これによってコア部材のフィン用面部に孔食が発生した場合、孔食はコア部材内を厚み方向の外方に向かって進行するが、複数のチューブまでに進行するためには、複数のチューブに対向する位置にフィンが設けられるので、孔食が厚み方向に交差する方向に進行する必要がある。したがって孔食の進行距離は、複数のチューブに至るためには、残余の部位より進行距離が大きくなる。これによって複数のチューブに孔食が進行することを確実に防止することができる。これによってフィンにおける孔食の発生に起因して、複数のチューブから不所望に冷媒が漏洩することを防ぐことができる。したがって冷媒がフィンを通過する水に混入することを確実に防止することができる。
【0010】
また本発明は、切断面において、チューブ接合部分は、フィン接合部分を厚み方向に投影した範囲内に設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明に従えば、チューブ接合部分は、フィン接合部分を厚み方向に投影した範囲内に設けられるので、フィン接合部分の端部からチューブ接合部分までの距離をコア部材の厚み寸法以上にすることができる。孔食が発生するのは、ろう材が水にさらされている部分であるので、フィン接合部分の端部から発生する可能性が高い。このようなフィン接合部分の端部から孔食が発生した場合であっても、チューブ接合部分までの距離は、チューブ用面部より長いので、孔食がチューブ接合部分まで達する可能性をより小さくすることができる。
【0012】
さらに本発明は、複数のチューブは、コア部材より電位が高い材料からなることを特徴とする。
【0013】
本発明に従えば、複数のチューブは、コア部材より電位が高い材料からなるので、フィンを水が通過することによって孔食が発生した場合、孔食は電位が低い方向に進行するが、複数のチューブはコア部材より電位が高いので、複数のチューブに孔食が進行することを防止することができる。これによってフィンにおける孔食の発生に起因して、複数のチューブから不所望に冷媒が漏洩することを防ぐことができる。したがって冷媒がフィンを通過する水に混入することを確実に防止することができる。
【0014】
さらに本発明は、圧縮機(13)、前述の熱交換器(14)、減圧手段(15)および蒸発用熱交換器(16)を、冷媒が循環可能に環状に接続して構成されるヒートポンプユニット(2)と、
熱交換器の水通路に水を流通させる循環回路(3)とを含むことを特徴とするヒートポンプ式給湯装置である。
【0015】
本発明に従えば、前述のような孔食の進行を防止する効果を有する熱交換器が、ヒートポンプユニットに用いられる。したがってヒートポンプユニットによって循環回路の水を熱交換器にて加熱することができる。また熱交換器に発生する孔食に起因して、循環回路に流通する水に冷媒が混入することを確実に防ぐことができる。したがって循環回路を循環する水を、たとえば給湯用に用いる場合であっても、冷媒が混入した水が用いられることを確実に防ぐことができる。これによって腐食に対する信頼性の高いヒートポンプ式給湯装置を実現することができる。
【0016】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1〜図5を用いて説明する。図1は、ヒートポンプ式給湯装置20の全体構成を示す模式図である。ヒートポンプ式給湯装置20は、給湯用の湯を貯える貯湯タンク1、貯湯タンク1内から取水した水を沸き上げる給湯手段であるヒートポンプユニット2、貯湯タンク1とヒートポンプユニット2とを接続する循環回路3、ヒートポンプユニット2を制御する制御装置4を含んで構成される。
【0019】
先ず、貯湯タンク1に関して説明する。貯湯タンク1は、耐食性に優れた金属、たとえばステンレス鋼からなり、縦長形状に形成され、外周部に断熱材(図示せず)が配置される。これによって高温の給湯用の湯を貯湯タンク1内にて長時間に渡って保温することができる。貯湯タンク1の底面には導入口5が設けられ、この導入口5には貯湯タンク1内に水道水を導入する給水経路である導入管6が接続されている。導入管6の上流には減圧逆止弁(図示せず)を介して上水に接続されて、所定圧の水道水を導入するようになっている。
【0020】
貯湯タンク1の最上部には導出口7が設けられ、導出口7には貯湯タンク1内の湯を導出するための給湯配管8が接続されている。給湯配管8の下流側は、たとえばカラン、シャワーおよび風呂等が設けられる。給湯配管8の経路途中には、水道水を給湯配管8に混合する湯水混合手段(図示せず)が接続される。これによって貯湯タンク1内の高温の湯と水道水とを混合させて所定温度の給湯水が得られるように構成されている。貯湯タンク1の下部には、貯湯タンク1内の水を循環回路3に吸入するための吸入口1aが設けられ、貯湯タンク1の上部には、貯湯タンク1内に湯を循環回路3から吐出する吐出口1bが設けられている。
【0021】
次に、循環回路3に関して説明する。循環回路3は、上流側が貯湯タンク1の吸入口1aに接続され、下流側が貯湯タンク1の吐出口1bに接続される。また循環回路3は、ヒートポンプユニット2を構成する給湯用熱交換器14の水通路22に水を流通させる。したがって循環回路3の一部は、ヒートポンプユニット2を構成する給湯用熱交換器14内に配置されている。循環回路3は、吸入口1aから吸入した貯湯タンク1内の水を、給湯用熱交換器14を通過する高温冷媒との間で給湯用熱交換器14によって熱交換して加熱し、吐出口1bから貯湯タンク1内に戻す。これによって貯湯タンク1内の水を沸き上げる。
【0022】
吸入口1aの下流側には、沸き上げのときに循環回路3内に貯湯タンク1内の水を循環させる送水ポンプ9が設けられる。また送水ポンプ9の下流側であって、給湯用熱交換器14の上流側には、循環回路3内を循環する流量を調節する流量調節手段である流量調節弁10が設けられる。
【0023】
また給湯用熱交換器14の下流側であって、吐出口1bの上流側には、給湯用熱交換器14から流出された沸き上げ温度を検出する水温センサ11が設けられる。また送水ポンプ9の下流側であって、流量調節弁10の上流側には、給湯用熱交換器14に流入する給水の温度を検出する給水温度センサ12が設けられる。水温センサ11および給水温度センサ12は検出した温度情報を制御装置4に与える。
【0024】
次に、ヒートポンプユニット2に関して説明する。ヒートポンプユニット2は、本実施の形態では超臨界ヒートポンプによって実現される。ここでいう超臨界ヒートポンプとは、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となるヒートポンプサイクルであって、冷媒は、臨界温度の低い二酸化炭素(CO2)が用いられる。
【0025】
ヒートポンプユニット2は、圧縮機13、給湯用熱交換器14、膨張弁15、および蒸発用熱交換器16を含み、これらを順に環状に冷媒配管17によって接続して構成される。圧縮機13は、内蔵する電動モータ(図示せず)によって駆動され、蒸発用熱交換器16からの冷媒を一般的使用条件において臨界圧力以上まで圧縮して、給湯用熱交換器14に吐出する。
【0026】
給湯用熱交換器14は、圧縮機13より吐出された高圧のガス冷媒と貯湯タンク1内から取水した水とを熱交換する。これによって水が加熱される。給湯用熱交換器14を流れる冷媒は、圧縮機13で臨界圧力以上に加圧されているので、給湯用熱交換器14を流通する水に放熱して温度低下しても凝縮することがない。
【0027】
膨張弁15は、減圧手段であって、給湯用熱交換器14から流出する冷媒を減圧して、減圧した冷媒を蒸発用熱交換器16に与える。膨張弁15は、弁開度に応じて冷媒を減圧する。膨張弁15は、制御装置4によって弁開度が電気的に制御される。
【0028】
蒸発用熱交換器16は、膨張弁15で減圧された冷媒を送風機(図示せず)によって送風される大気との熱交換によって蒸発させる。蒸発用熱交換器16は、蒸発した気相冷媒を圧縮機13に与える。
【0029】
ヒートポンプユニット2は、このような構成によって冷媒を循環させることによって、給湯用熱交換器14に高温の冷媒を供給することができる。ヒートポンプユニット2は、超臨界ヒートポンプであるので、一般的なヒートポンプサイクルよりも高温(たとえば85℃以上90℃以下程度)の給湯水を沸き上げることができる。
【0030】
次に、制御装置4に関して説明する。制御装置4は、ヒートポンプユニット2を制御することによって、ヒートポンプユニット2の沸き上げ運転を行なって貯湯タンク1に給湯用の湯を貯えるものである。制御装置4は、操作盤(図示せず)からの操作信号、水温センサ11および給水温度センサ12による温度情報に基づいて、圧縮機13、膨張弁15、送水ポンプ9および流量調整弁10を制御する。制御装置4は、水温センサ11によって検出された沸き上げ温度情報に基づいて、流量調節弁10を制御する。本実施形態では、沸き上げ温度が一定となる流量に制御されている。沸き上げ運転は、貯湯タンク1の外壁面に設けられた複数の水位サーミスタ(図示せず)の温度情報により貯湯量を検出し、所定の貯湯量以下となったときに沸き上げ運転を行なうように構成されている。
【0031】
次に、給湯用熱交換器14に関して、さらに詳細に説明する。図2は、給湯用熱交換器14を示す正面図である。図3は、図2の切断面線III−IIIから見て、一部を拡大して示す斜視図である。図4は、図3の一部を拡大して示す断面図である。図5は、図4の一部を拡大して示す断面図である。給湯用熱交換器14は、前述したように圧縮機13より吐出された高温冷媒(ホットガス)と送水ポンプ9により貯湯タンク1内から供給された水とを熱交換する。給湯用熱交換器14は、冷媒が流れる冷媒通路21と、水が流れる水通路22とを有する。給湯用熱交換器14は、冷媒通路21を流れる冷媒の冷媒流下方向と水通路22を流れる水の水流下方向とが互いに逆方向となるように構成される。
【0032】
給湯用熱交換器14は、少なくとも、複数のチューブ23、フィン24および2つのコア部材であるコアプレート25とを含んで構成される。2つのコアプレート25には、複数のチューブ23およびフィン24がろう材26によってそれぞれろう付け接合される。各コアプレート25は、少なくとも一部が板状に形成され、本実施の形態では平板状に形成される。2つのコアプレート25は、それぞれの厚み方向Yが互いに略平行(用語「略平行」は平行を含む)であって、厚み方向Yに離間して設けられる。2枚のコアプレート25が厚み方向Yに対向する面部は、フィン用面部27であって、フィン24がろう付け接合される。またコアプレート25の厚み方向Yの残余の面部、すなわちフィン用面部27の裏面部はチューブ用面部28であって、複数のチューブ23がろう付け接合される。
【0033】
フィン24は、水通路22に設けられる。フィン24は、本実施の形態では2つのコアプレート25と協働して、水が通過する水通路22を形成する。フィン24は、2つのコアプレート25の間にろう付け接合によって設けられる。これによってコアプレート25とフィン24とによって、囲まれた空間が形成され、水通路22が形成される。フィン24は、波状であって、伝熱面積を増加させる目的で設けられる。したがって水通路22を流れる水に接する面積が大きくなるように形成される。フィン24は、図4に示すように、1枚の板部材が蛇行するように、換言すると凸状の部分29と凹状の部分30とが繰り返されるように形成される。
【0034】
フィン24は、2つのコアプレート25に挟まれて、各コアプレート25にろう付け接合される。フィン24は波状であるので、フィン24と厚み方向Y一方のコアプレート25にろう付け接合されるフィン接合部分32は、フィン24の隣接する凸状の部分29においては、後述する配列方向Xに間隔があくことになる。本実施の形態では、フィン24のコアプレート25に臨む外表面のうちの少なくとも一部は、コアプレート25のフィン用面部27に当接、いわゆるメタルタッチしている状態である。またフィン24は、水流通方向に関して全域でメタルタッチしてなく、部分的にはメタルタッチせずにろう材26を介してコアプレート25にろう付け接合される部分が存在することもある。このような部分が発生する原因としては、たとえばフィン24およびコアプレート25の製造上の寸法誤差の発生、ならびに製造工程におけるフィン24およびコアプレート25の変形などである。
【0035】
複数のチューブ23は、冷媒が通過する冷媒通路21を形成する。各チューブ23は、円管状に形成され、その内方の空間が冷媒通路21となる。各チューブ23は、軸線方向が略平行となるように配置される。各チューブ23は、軸線方向が、コアプレート25の厚み方向Yに略直交(用語「略直交」は直交を含む)するように配置される。また各チューブ23は、各チューブ23の軸線方向および厚み方向Yに略直交する配列方向Xに予め定める間隔をあけて、コアプレート25のチューブ用面部28に配置される。本実施の形態では、各チューブ23の半径方向外表面のうちの少なくとも一部は、チューブ用面部28に当接、いわゆるメタルタッチしている状態である。各チューブ23は、このような配置状態で、コアプレート25のチューブ用面部28にろう付け接合される。また各チューブ23は、冷媒流通方向に関して全域でメタルタッチしてなく、部分的にはメタルタッチせずにろう材6を介してろう付け接合される部分が存在する場合もある。このような部分が発生する原因としては、たとえばチューブ23およびコアプレート25の製造上の寸法誤差の発生、ならびに製造工程におけるチューブ23およびコアプレート25の変形などである。
【0036】
次に、各チューブ23がコアプレート25に接合される位置と、フィン24がコアプレート25にろう付け接合される部分との位置関係に関して説明する。図4に示すように、コアプレート25の厚み方向Yを含む仮想一平面であって、各チューブ23の軸線に垂直な仮想一平面で熱交換器14を切断した切断面において、複数のチューブ23がチューブ用面部28にそれぞれろう付け接合されるチューブ接合部分31と、フィン24がフィン用面部27にろう付け接合されるフィン接合部分32とが、コアプレート25を介して対向するように配置される。ここでフィン接合部分32とは、フィン用面部27の一部であって、フィン24をろう付け接合するためのろう材26が付着している部分と、フィン24がフィン用面部27に当接している部分とを含む。またチューブ接合部分31とは、チューブ用面部28の一部であって、各チューブ23をろう付け接合するためのろう材26が付着している部分と、チューブ23がチューブ用面部28に当接している部分とを含む。
【0037】
フィン24の凸状の部分29が対向する厚み方向Y一方側に配置されるコアプレート25(図5参照)では、チューブ接合部分31は、フィン接合部分24を厚み方向Yに投影した範囲34内に設けられる。換言すると、チューブ接合部分31は、配列方向Xに関して、フィン接合部分32内に配置される。
【0038】
さらにチューブ接合部分31とフィン接合部分32との距離は、コアプレート25の厚み寸法に略等しい。チューブ接合部分31とフィン接合部分32との厚み方向Yの距離Tが、コアプレート25の板状の部分の厚み寸法に略等しいとは、少なくとも前述の距離Tがコアプレート25の厚み寸法以上であって、厚み寸法の予め定める割合、たとえば1割増の値以下である。
【0039】
また本実施の形態では図6および図7にて仮想線で示すように、各チューブ23の軸線を通過するコアプレート25との厚み方向Yに沿って延びる仮想線が、フィン24の凸状の部分29の配列方向Xの中央を通過するように、各チューブ23とフィン24の凸状の部分29が配置される。したがって各チューブ23の軸心と、フィン24の凸状の部分29の配列方向Xの中央とは配列方向Xに関して略同位置(用語「略同位置」は同位置を含む)となるように配置される。換言すると、フィン24の凸状の部分29とチューブ23の軸心とは、厚み方向Yに延びる仮想一直線上に配置される。またフィン24の凹状の部分30が当接するコアプレート25に関しても、フィン24の凸状の部分29と同様の構成である。
【0040】
以上、説明したように本実施の形態の給湯用熱交換器14では、チューブ接合部分31とフィン接合部分32とが、コアプレート25を介して対向する。したがってチューブ接合部分31とフィン接合部分32とがコアプレート25を介して最も近接させることができる。給湯用熱交換器14に孔食が発生した場合、孔食33は、フィン用面部27にフィン24をろう付け接合するときに用いられるろう材26が、水にさらされることによって発生する。したがってフィン用面部27に前述のような孔食33が発生し、その孔食33がフィン用面部27からチューブ用面部28に向かって進行する。このように孔食33はコアプレート25内を厚み方向Yの外方に向かって進行するが、複数のチューブ23までに進行するためには、複数のチューブ23に対向する位置にフィン24が設けられるので、孔食33が厚み方向Yに交差する配列方向Xに進行する必要がある。したがって孔食33の進行距離は、複数のチューブ23に至るためには、残余の部位より進行距離が大きくなる。これによって複数のチューブ23に孔食33が進行することを確実に防止し、図5に示すように、コアプレート25だけの腐食に抑えることができる。
【0041】
これによってフィン24における孔食33の発生に起因して、複数のチューブ23から不所望に冷媒が漏洩することを防ぐことができる。したがって冷媒がフィン24を通過する水に混入することを確実に防止することができる。
【0042】
また本実施の形態では、チューブ接合部分31は、フィン接合部分32を厚み方向Yに投影した範囲34内に設けられるので、フィン接合部分32の端部からチューブ接合部分31までの距離をコアプレート25の厚み寸法以上にすることができる。孔食33が発生するのは、ろう材26が水にさらされている部分であるので、フィン接合部分32の端部から発生する可能性が高い。このようなフィン接合部分32の端部から孔食33が発生した場合であっても、チューブ接合部分31までの距離は、チューブ用面部28より長いので、孔食33がチューブ接合部分31まで達する可能性をより小さくすることができる。
【0043】
また本実施の形態では、チューブ23はチューブ用面部28とメタルタッチしている部分は、フィン接合部分32の配列方向Xの中央となるように、チューブ23が配置される。これによってチューブ23のメタルタッチしている部分から、フィン接合部分32の配列方向Xの端部、すなわちフィン接合部分32を構成するろう材26までの距離を最も長くすることができる。これによって孔食33がフィン接合部分32のろう材26付近から厚み方向Yに進行した場合であっても、最も距離が長い部分であるので、孔食33がチューブ23に至る可能性を最も小さくすることができる。
【0044】
また本実施の形態では、前述のような孔食の進行を防止する効果を有する給湯用熱交換器14が、ヒートポンプユニット2に用いられる。したがってヒートポンプユニット2によって循環回路3の水を給湯用熱交換器14にて加熱することができる。また給湯用熱交換器14に発生する孔食33に起因して、循環回路3に流通する水に冷媒が混入することを確実に防ぐことができる。したがって循環回路3を循環する水を、給湯用にしても冷媒が混入した水が用いられることを確実に防ぐことができる。これによって腐食に対する信頼性の高いヒートポンプ式給湯装置20を実現することができる。
【0045】
また給湯用熱交換器14を構成する各部材の材料は特に限定するものではないが、好ましくは、複数のチューブ23は、コアプレート25より電位が高い材料からなる。電位が高い材料とは、相対的にイオン化しにくい材料であり、電位が低い材料とは相対的にイオン化しやすい材料である。さらに好ましくは、複数のチューブ23、コアプレート25、フィン24およびろう材26のうち、フィン24が最も電位が低くなるように材料が選択される。さらに具体的には、複数のチューブ23、コアプレート25、フィン24およびろう材26のうち、ろう材26が最も電位が高く、2番目に複数のチューブ23の電位が高く、3番目にコアプレート25の電位が高く、フィン24が最も電位が低くなるように材料が選択される。このような電位関係において、複数のチューブ23は、銅合金からなり、コアプレート25は、銅からなり、フィン24は、銅合金からなる。このように熱伝導率が比較的大きい銅を主として用いることによって、冷媒と水との熱交換の性能を向上することができる。またこのような材料を用いることによって、前述のような電位の順序となる給湯用熱交換器14を実現することができる。ここで銅からなるとは、純銅からなると同義である。また銅合金は、銅を50質量%以上と合金元素とを含む合金である。
【0046】
このように銅を主として用いる場合、たとえば、複数のチューブ23は銅−ニッケル合金からなり、コアプレート25は銅からなり、フィン24は銅−亜鉛合金からなるように構成される。またたとえば複数のチューブ23は、銅−ニッケル合金からなり、コアプレート25は、銅からなり、フィン24は、銅−錫合金からなるように構成される。これによって前述のような電位の順序となる給湯用熱交換器14を実現することができる。
【0047】
またろう材26は、たとえば銅−燐合金からなる。このようなろう材26を用いることによって、銅を主として用いられるコアプレート25とフィン24、およびコアプレート25と複数のチューブ23とを確実にろう付け接合することができる。
【0048】
前述のような材料を給湯用熱交換器14に適用することによって、フィン24を水が通過することによって孔食33が発生した場合、孔食33は電位が低い方向に進行するが、複数のチューブ23はコアプレート25より電位が高いので、複数のチューブ23を避けて孔食33が進行し、コアプレート25だけの腐食で抑えることができる。このような孔食33が複数のチューブ23に進行することを防止することができる。
【0049】
このような腐食をおこしやすい水として、本件出願人は、たとえばイオン(塩素イオンおよび遊離炭酸イオンなど)の含有量の多い水であることを発見した。このようなイオンが多い水がヒートポンプ式給湯装置20に用いられることは希であるが、イオンの多い水であっても、確実に腐食が発生することを防止することができる。
【0050】
またイオンの多い水であっても、前述のような腐食がおこることは希であるが、給湯用熱交換器14の寿命を長期に、たとえば15年以上確保するため、前述のような電位設計が好適に用いられる。これによって給湯用熱交換器14の長期寿命を確保することができる。したがってヒートポンプ式給湯装置20の腐食に対する信頼性を確保することができる。
【0051】
またさらに好ましくは、複数のチューブ23、コアプレート25、フィン24およびろう材26のうち、ろう材26が最も電位が高く、2番目に複数のチューブ23の電位が高く、3番目にコアプレート25の電位が高く、フィン24が最も電位が低くなるように構成される。このようにろう材26が最も電位が高いので、コアプレート25またはフィン24にて発生した孔食33は、複数のチューブ23およびろう材26に進行することを防止することができる。したがって孔食33が発生した場合、フィン24が最も腐食しやすいので、冷媒が漏れることなく、水漏れだけで抑えることができる。また隣接する水通路22を構成する敷居となるフィン24の一部が腐食した場合は、外部に水が漏洩することがない。したがってフィン24に孔食33が発生した場合は、その部位によっては外部に水漏れすることを防止することができるので、孔食33による損傷を可及的に小さくすることができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図6を用いて説明する。図6は、給湯用熱交換器14Aの一部を拡大して示す断面図である。本実施の形態では、チューブ23の形状に特徴を有する。
【0053】
チューブ23は、内部に冷媒通路を形成する管状であって、その軸線方向に垂直な仮想一平面で切断したときの切断面が、略楕円状となるように構成される。このようなチューブ23をチューブ用面部28に配置すると、チューブ23の半径方向外表面のうちの少なくとも一部は、チューブ用面部28に当接、いわゆるメタルタッチしている状態である。このようにチューブ23がチューブ用面部28に当接している部分は、チューブ23の断面が略楕円状であるので配列方向Xに関して線接触している。このような線接触している部分は、チューブ接合部分31に含まれる。前述のようにチューブ接合部分31は、フィン接合部分32の範囲内にあって対向するように配置される。
【0054】
したがって本実施の形態では、チューブ23の断面形状が略楕円状であっても、前述の実施の形態と同様の作用および効果を達成することができる。またチューブ23の断面形状は、略楕円状に限ることはなく、矩形状であってもよく、多角形状であってもよい。たとえばチューブ23の断面形状が扁平状である場合は、仮想一平面で切断したときの切断面において、チューブ23がチューブ用面部28に当接している部分は線接触している。このように線接触している部分、すなわちチューブ接合部分31は、フィン接合部分32の範囲内にあって対向するように配置される。したがって前述の実施の形態と同様の作用および効果を達成することができる。
【0055】
また少なくともチューブ接合部分31がフィン接合部分32の範囲内にあって対向していればよいので、チューブ23の外表面の配列方向Xの寸法が、フィン接合部分32の配列方向Xの寸法より大きくてもよい。
【0056】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に関して、図7を用いて説明する。図7は、給湯用熱交換器14Bの一部を拡大して示す断面図である。本実施の形態では、1つのフィン接合部分32に対向する範囲34内に、複数、本実施の形態では2つのチューブ23が配置される点に特徴を有する。
【0057】
このように複数のチューブ23をチューブ用面部28にろう付け接合した場合であっても、複数のチューブ接合部分31がフィン接合部分32を厚み方向Yに投影した範囲34内に設けられることによって、前述の実施の形態と同様の作用および効果を達成することができる。
【0058】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0059】
前述の実施の各形態では、ヒートポンプ装置2は、圧縮機13で冷媒を臨界圧力以上に加圧する所謂超臨界冷凍サイクルを構成していたが、超臨界冷凍サイクルに限ることはない。また、冷媒は二酸化炭素であったが、これに限ることはなく、フロン等の他の冷媒であってもよい。
【0060】
また前述の実施の各形態では、給湯用熱交換器14によって実現されるが、給湯用熱交換器14に限ることはなく、他の熱交換器に適用してもよい。
【0061】
また前述の実施の各形態では、貯湯タンク1は1つだけであったが、このような構成に限ることはなく、複数の貯湯タンク1を直列、または並列に連結させてもよい。これによって貯湯タンク1の設置スペースを適宜確保することができる。また貯湯タンク1を直列に連結することによって、タンク内の水の温度分布を制御することができる。
【0062】
また前述の実施の各形態では、コア部材は平板状のコアプレート25であるが、これに限ることはなく、少なくとも一部が平板状であればよく、波状のコア部材であってもよい。またコアプレート25は、単数であっても、3枚以上であってもよい。フィン24も波状に限ることはなく、他の形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態のヒートポンプ式給湯装置20の全体構成を示す模式図である。
【図2】給湯用熱交換器14を示す正面図である。
【図3】図2の切断面線III−IIIから見て、一部を拡大して示す斜視図である。
【図4】図3の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】図4の一部を拡大して示す断面図である。
【図6】第2実施形態の給湯用熱交換器14Aの一部を拡大して示す断面図である。
【図7】第3実施形態の給湯用熱交換器14Bの一部を拡大して示す断面図である。
【図8】従来の技術の熱交換器50の一部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
2…ヒートポンプユニット
3…循環回路
13…圧縮機
14…給湯用熱交換器(熱交換器)
15…膨張弁(減圧手段)
16…蒸発用熱交換器
20…ヒートポンプ式給湯装置
21…冷媒通路
22…水通路
23…チューブ
24…フィン
25…コアプレート
26…ろう材
27…フィン用面部
28…チューブ用面部
31…チューブ接合部分
32…フィン接合部分
33…孔食

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷媒が通過する冷媒通路(21)を形成する複数のチューブ(23)と、
水が通過する水通路(22)に設けられるフィン(24)と、
前記複数のチューブおよび前記フィンがろう材(26)によってろう付け接合されるコア部材(25)とを含み、
前記コア部材は、少なくとも一部が板状に形成され、
前記複数のチューブがろう付け接合されるチューブ用面部(28)と、
前記チューブ用面部の裏面部であって、前記フィンがろう付け接合されるフィン用面部(27)とを含み、
前記コア部材の前記板状の部分の厚み方向を含む仮想一平面で切断した切断面において、前記複数のチューブが前記チューブ用面部にそれぞれろう付け接合されるチューブ接合部分(31)と、前記フィンが前記フィン用面部にろう付け接合されるフィン接合部分(32)とが、前記コア部材の前記板状の部分を介して対向することを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記切断面において、前記チューブ接合部分は、前記フィン接合部分を前記厚み方向に投影した範囲内に設けられることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記複数のチューブは、前記コア部材より電位が高い材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
圧縮機(13)、請求項1〜3のいずれか1つに記載の熱交換器(14)、減圧手段(15)および蒸発用熱交換器(16)を、冷媒が循環可能に環状に接続して構成されるヒートポンプユニット(2)と、
前記熱交換器の前記水通路に水を流通させる循環回路(3)とを含むことを特徴とするヒートポンプ式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−121712(P2009−121712A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293595(P2007−293595)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】