説明

熱交換器およびヒートポンプ給湯装置

【課題】熱交換器を含む装置のAPFを向上させることができる熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器1は、互いに絡み合う一対の螺旋状の内管20で構成された捩り管2と、捩り管2を収容する外管3と、を備えている。外管3の内周面には、一対の内管20とは逆向きの螺旋状のリブ31が、2〜18本設けられている。この構成によれば、熱交換器1を含む装置のAPFを向上させることができる。熱交換器1は、例えばヒートポンプ給湯装置に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの流体の間で熱交換を行う熱交換器、およびその熱交換器を用いたヒートポンプ給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つの流体の間で熱交換を行う熱交換器が広く使用されている。例えば、特許文献1には、図6(a)および(b)に示すような水と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器100が開示されている。
【0003】
この熱交換器100では、外管120内に、互いに絡み合う一対の螺旋状の内管115で構成された捩り管110が配置されている。外管120の内周面には、多数(図例では24個)の螺旋状のリブ121が設けられており、これらのリブ121の間に多数の溝が形成されている。
【0004】
リブ121の螺旋方向は一対の内管115の螺旋方向と同じであり、リブ121の螺旋ピッチ(1つのリブ121の同一位置での軸方向距離)は各内管115の螺旋ピッチと同じである。このため、一対の内管115の間にそれらの外周面によって形成されるV溝は全長に亘ってリブ121と平行であり、捩り管110と外管120の内周面との間に形成される断面扇状の流路には、V溝およびリブ121に沿って水がスムーズに流れるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−38271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した構成の熱交換器100では、外管120の内周面に設けられたリブ121により水に乱流を生じさせて熱伝達率を向上させることが期待できるものの、水がリブ121に沿って流れるため、乱流の効果は十分であるとは言えない。また、リブ121によって水の圧力損失が増加するために、水を圧送するポンプの負荷が増大する。それ故に、熱交換器を含む装置(特許文献1ではヒートポンプ給湯装置)全体としてAPF(通年エネルギー消費効率(Annual Performance Factor))が充分に改善されないことも懸念される。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、熱交換器を含む装置のAPFを充分に向上させることができる熱交換器、およびこの熱交換器を用いたヒートポンプ給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、リブの本数を抑えた上でリブの螺旋方向を一対の内管の螺旋方向と逆向きにすれば、圧力損失の増加によるポンプの負荷の増大よりも乱流による熱伝達率の向上の効果により、APFが上昇することを見出した。本発明は、このような観点からなされたものである。
【0009】
すなわち、本発明の熱交換器は、互いに絡み合う一対の螺旋状の内管で構成された捩り管と、前記捩り管を収容する外管と、を備え、前記外管の内周面には、前記一対の内管とは逆向きの螺旋状のリブが、2〜18本設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のヒートポンプ給湯装置は、冷媒を循環させるヒートポンプ回路中の放熱器として上記の熱交換器を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱交換器によれば、熱交換器を含む装置のAPFを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱交換器の縦断面図
【図2】(a)は図1に示す熱交換器を構成する外管の縦断面図、(b)は同外管に収容される捩り管の側面図
【図3】図1のIII−III線に沿った横断面図
【図4】図1に示す熱交換器が用いられるヒートポンプ給湯装置の構成図
【図5】(a)および(b)はシミュレーションの結果を示すグラフであり、(a)はリブ数と熱伝達率および圧力損失の関係を示し、(b)はリブ数とAPF変化率の関係を示す
【図6】(a)は従来の熱交換器の縦断面図、(b)は(a)のVIB−VIB線に沿った横断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0014】
図1に、本発明の一実施形態に係る熱交換器1を示す。この熱交換器1は、相対的に低温の水(第1流体)と相対的に高温の冷媒(第2流体)との間で熱交換を行うものである。ただし、第1流体および第2流体はこれらに限定されない。例えば、水に代えて、油、ブラインなどを第1流体として使用することも可能である。また、第1流体および第2流体の双方が液体または気体であってもよい。
【0015】
具体的に、熱交換器1は、捩り管2と、この捩り管2を収容する外管3とを備えている。冷媒は捩り管2内を流れ、水は外管3と捩り管2の間を流れる。すなわち、捩り管2は冷媒が流れる冷媒流路を構成し、外管3は水が流れる水流路を構成する。なお、捩り管2内を流れる冷媒と外管3と捩り管2の間を流れる水は、対向流を形成するように互いに逆向きに流れることが好ましい。
【0016】
捩り管2は、図2(b)に示すように、互いに絡み合う一対の螺旋状の内管20で構成されている。一対の内管20は、図3に示すように、対称な位置を保ったままで回転するように寄り合わされている。すなわち、各内管20は、1本の直線の回りを旋回している。本実施形態では、各内管20の螺旋方向は、図1の左から右に向かって時計回りである。
【0017】
各内管20は、同一位置での軸方向距離である螺旋ピッチP1を有する。螺旋ピッチP1は、捩り管2の捩りピッチでもある。各内管20の外径をDとしたときに、螺旋ピッチP1は、例えば、4D〜20Dである。
【0018】
内管20としては、良好な熱伝達性を有する金属管が好適に用いられる。また、内管20としては、図3に示すような内周面に溝が設けられた大径管22内に小径管21が挿入された二重管(漏洩検知管)を用いることが好ましい。このような二重管によれば、万が一、小径管21が破損した場合であっても、大径管22の溝を伝って冷媒や潤滑油を逃がすことができ、冷媒や潤滑油が水中に混入することを防ぐことができる。
【0019】
外管3は、内管20の外径Dの2倍よりも少し大きな内径を有する。外管3の内周面には、図2(a)および図3に示すように、螺旋状のリブ31が設けられている。リブ31の螺旋方向は、図1の左から右に向かって反時計回りである。すなわち、リブ31の螺旋状は、一対の内管20の螺旋状とは逆向きである。
【0020】
リブ31の本数は、2本以上18本以下であることが好ましい。リブ31の本数がこの範囲内にあれば、圧力損失の増加によるポンプの負荷の増大よりも乱流による熱伝達率の向上の効果により、リブ31が設けられていない熱交換器に比べて、熱交換器を含む装置のAPFを0.5%以上向上させることができるからである。また、リブ31は、等角度間隔で配置されていることが好ましい。
【0021】
各リブ31は、同一位置での軸方向距離である螺旋ピッチP2を有する。リブ31の螺旋ピッチP2は、内管20の螺旋ピッチP1と等しくてもよいし、それよりも大きくても小さくてもよい。例えば、リブ31の螺旋ピッチP2は、(1/3)P1〜3P1の範囲内で選択することが可能である。
【0022】
また、各リブ31のアスペクト比(高さ/幅)は、例えば0.5〜1.5である。なお、各リブ31の断面形状は、特に限定されるものではない。例えば、各リブ31の断面形状は、矩形状や台形状であってもよいし、外管3の内周面から滑らかに盛り上がり、頂点も丸みを帯びた略三角形状であってもよい。
【0023】
外管3は、金属で構成されていてもよいが、高分子材料で構成されていることが好ましい。高分子材料は、金属に比べて、軽量、安価、腐食しない、スケールが付着し難いという利点がある。しかも、高分子材料からなる外管3を用いれば、捩り管2がリブ31に接触したとしても、冷媒の熱が外管3の外周面から外部に放熱されることを抑制することができる。高分子材料からなる外管3としては、ポリフェニレンサルフィド、フッ素樹脂などの高性能樹脂を最内面に、ポリアミドやポリプロピレンなどの汎用樹脂を外面に配した積層チューブなどを用いることも可能である。
【0024】
以上説明した本実施形態の熱交換器1は、図4に示すようなヒートポンプ給湯装置200に好適に用いられる。ヒートポンプ給湯装置200は、湯を生成するヒートポンプユニット205と、生成された湯を貯える貯湯タンク220を備えており、貯湯タンク222に貯えられた湯は給湯栓230に供給される。ヒートポンプユニット205は、圧縮機211、放熱器212、膨張弁213および蒸発器214がこの順に接続された、冷媒を循環させるヒートポンプ回路210を有している。そして、放熱器212として本実施形態の熱交換器1が用いられる。なお、膨張弁213に代えて、冷媒の膨張エネルギーを回収可能な容積式膨張機が用いられていてもよい。冷媒としては、二酸化炭素や代替フロン等を用いることができるが、GWP(Global Warming Potential)が低く、かつ、水を沸点に近い温度まで加熱することができる二酸化炭素を用いることが好ましい。
【0025】
(シミュレーション)
以下に、本実施形態の熱交換器1の効果を確認するために行ったシミュレーションを説明する。
【0026】
図1〜3に示す構成に対応する、リブの螺旋方向が一対の内管の螺旋方向と反対の7つのモデルを作成した。これらのモデルに対し、流体解析ソフトウェア「Fluent」を用いて、単位長さ(90mm)当たりの水の圧力損失と冷媒から水への熱伝達率を算出した。
【0027】
解析条件としては、水の流量を0.35L/分、水の温度を40℃、捩り管の温度を45℃とした。また、外管の内径を8.6mmとし、各内管の外径を3.9mm、螺旋ピッチを30mmとした。リブについては、螺旋ピッチを30mm、高さを0.2mm、幅を0.4mmとした。
【0028】
モデル1〜7では、リブの本数を0本から24本まで4本ずつ増加させた。すなわち、モデル1は、リブが設けられていない熱交換器に相当する。
【0029】
シミュレーションにより得られた圧力損失および熱伝達率を図5(a)に示す。また、得られた圧力損失および熱伝達率から、各モデルをヒートポンプ給湯装置に用いたときのAPFを求め、モデル1(リブなし)に対してモデル2〜7ではAPFがどれだけ変化したかを図5(b)に示す。
【0030】
図5(a)から、水の圧力損失が、リブの本数が少ないうちはリブの本数に比例して増加するが、リブの本数が多くなるとそれほど増加しないことが分かる。一方で、冷媒から水への熱伝達率は、リブの本数が12本でピークとなり、リブの本数がそれよりも多くなると大きく低下する。それらの影響により、図5(b)に示すように、APFの変化は上向きに凸となる曲線を描く。そして、図5(b)から、リブの本数を2〜18本にすれば、APFを約0.5〜1.6%向上できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の熱交換器は、ヒートポンプ式給湯機、温水暖房装置などの装置に使用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 熱交換器
2 捩り管
20 内管
3 外管
31 リブ
200 ヒートポンプ給湯装置
212 放熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに絡み合う一対の螺旋状の内管で構成された捩り管と、
前記捩り管を収容する外管と、を備え、
前記外管の内周面には、前記一対の内管とは逆向きの螺旋状のリブが、2〜18本設けられている、熱交換器。
【請求項2】
前記外管は、高分子材料で構成されている、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記外管と前記捩り管の間を流れる第1流体と前記捩り管内を流れる第2流体は対向流を形成する、請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記外管と前記捩り管の間を流れる第1流体は水であり、前記捩り管内を流れる第2流体は冷媒である、請求項1〜3の何れか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
冷媒を循環させるヒートポンプ回路中の放熱器として請求項4に記載の熱交換器を備える、ヒートポンプ給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−96656(P2013−96656A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240826(P2011−240826)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】