説明

熱交換器の製造装置

【課題】 占有床面積を小とし、コンパクトで熱効率の良い熱交換器の製造装置の提供。
【解決手段】 炉1内に上下方向に環状に循環駆動される環状搬送体2を配置し、その環状搬送体2に多数の熱交換器支持体3を設ける。そして、炉1内の上部に加熱用ヒータ4を有する予熱ゾーン5,ろう付けゾーン6を設ける。炉1内の下部には、熱交換器の出入口8を設け、その下流側に準備ゾーン9を設け、出入口8の上流側に冷却ゾーン10を設け、準備ゾーン9,予熱ゾーン5,ろう付けゾーン6に不活性ガスを導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニューム製熱交換器やステンレス製熱交換器をろう付けする製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器のろう付け工程は、各部品の接触部表面にろう材を予め被覆或いは塗布しておき、全体を組み立てた状態で高温の炉内に挿入し、ろう材を溶融して、各部品間を一体にろう付け固定するものである。
アルミニューム製熱交換器のろう付けは、現在フラックスを用いたノコロック工法のろう付けが主流になっている。このろう付け装置は、不活性ガス中(窒素ガス)で行い、ろう付け炉本体は平面的に細長く長尺に形成され、上流側から予熱ゾーン、ろう付けゾーン、冷却ゾーンを有し、予熱およびろう付けゾーンには窒素ガスが導入されている。
【0003】
【特許文献1】特公昭57−42420号公報
【特許文献2】特開昭62−176672号公報
【特許文献3】特許第2768163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な生産炉では、炉の長さが30〜50mになり、内部にコンベアが敷設されている。そのコンベアの下流端は炉本体の出口から入口に、炉の外側を、リターンコンベアで連結し、全体が循環するように構成している。そのため、炉全体の占有床面積が極めて大きくなると共に、ライン全体が長い壁面を形成し、それを横断することができないため設置場所に制約があり、自由な位置に配置できない欠点がある。
そこで本発明は、コンパクトで熱効率が良く、不活性ガスが必要最小限で済む経済的な熱交換器の製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、組み立てられた熱交換器が炉(1)内に導かれて、それが一体にろう付け固定される熱交換器の製造装置において、
炉(1)内に、上下方向に環状に循環駆動される環状搬送体(2)および、その環状搬送体(2)に互いに離間してつり下げられる多数の熱交換器支持体(3)と、
それぞれ炉(1)内の上部に位置し、加熱用ヒータ(4)を有する予熱ゾーン(5)およびその下流側のろう付けゾーン(6)と、
炉(1)内の下部に位置し、熱交換器(7)を前記熱交換器支持体(3)に取り付けまたは収納および、それから取出す熱交換器の出入口(8)と、
それぞれ炉(1)内の下部に位置し、その出入口(8)の下流側に配置された準備ゾーン(9) と、その出入口(8)の上流側に位置する冷却ゾーン(10)と、
を具備し、前記準備ゾーン(9)、予熱ゾーン(5)、ろう付けゾーン(6)に不活性ガスが導かれる熱交換器の製造装置である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
前記冷却ゾーン(10)および出入口(8)が、それ以外のゾーンから側部仕切(11)および天井仕切(12)により区分され、それらの仕切の一部に前記熱交換器支持体(3)の通過部(13)が設けられた熱交換器の製造装置である。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項2において、
前記準備ゾーン(9)と予熱ゾーン(5)との間が天井仕切(12)により区分された熱交換器の製造装置である。
請求項4に記載の本発明は、請求項3において、
各天井仕切(12)が空間を隔てて二重に設けられ、それぞれに前記熱交換器支持体(3)の通過部(13)が設けられた熱交換器の製造装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造装置は、上下方向に環状に循環駆動される環状搬送体2を有する炉1内の上部に、予熱ゾーン5及びろう付けゾーン6を有し、その下部に準備ゾーン9及び冷却ゾーン10を有し、ろう付けの際の熱効率の良い製造装置を提供できる。即ち、不活性ガスを有する炉の上部に、高温で軽くなった気体を保持し、熱交換器を予熱ゾーンで予熱し、加熱ゾーンで各部品に被覆または塗布されたろう材を効率良く溶融させ、ろう付け後に炉1の下部の冷却ゾーン10で冷却して、熱交換器を取り出すことができる。
また、本熱交換器の製造装置は、上下方向に環状に循環駆動されるコンベアを内装するものであるから、占有床面積を少なくしコンパクトな装置となる。
【0009】
上記構成において、冷却ゾーン10および出入口8をそれ以外のゾーンから側部仕切11および天井仕切12によって区分し、その仕切の一部に熱交換器支持体3の通過部13を設けることができる。この場合には、冷却ゾーンをより低温に保ち、ろう付け後の熱交換器の冷却を迅速に行うことができる。それと共に、熱交換器の出入口8における作業環境を良好に保持し得る。また、仕切の存在により不活性ガスの流出を必要最小限にしてランニングコストを低下させることができる。
【0010】
上記構成において、準備ゾーン9と予熱ゾーン5との間を天井仕切12により区分することができる。この場合には、さらに不活性ガスの使用を少なくすることができる。
上記構成において、天井仕切12を空間を隔てた二重に設け、それぞれの仕切に熱交換器支持体3の通過部13を設けることができる。この場合には、各ゾーンの分離をより有効に行い熱効率を向上させると共に、ろう付け後の冷却を良好にし且つ、不活性ガスの使用をさらに少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明の装置の正面説明図であり、図2はその縦断面説明図、図3は図1のIII部拡大図、図4は同装置の正面図における各ゾーン説明図である。
この熱交換器の製造装置は、アルミニューム製熱交換器をろう付けする装置である。ここで使用される熱交換器はろう材がクラッドされたアルミニューム材からなる部品を組立てられてなり、非腐食性フラックスを付着した部品どうしが、不活性ガス(窒素ガス)の雰囲気でろう付けされるものである。
【0012】
この装置は、炉1が偏平で方形に形成され、その中心に回転軸18が配置されている。回転軸18の両端部は軸受24に支持されると共に、歯車20を介してモータ19に連結されている。回転軸18には、一対づつの多数の放射フレーム2aがその中心から伸び、放射フレーム2aの外周間を円形フレーム2cが連結し、対向する一対の円形フレーム2c間を水平フレーム2bで連結し、環状搬送体2を構成する。そして、夫々の水平フレーム2bには熱交換器支持体3として、金網バスケットが吊り下げられ、その内部に、組み立てられた熱交換器7が挿脱自在に収納される。
なお、熱交換器7は適宜な係止部材を介して水平フレーム2bに直接垂下させてもよい。
【0013】
炉1内の上部の対向面には、多数の加熱用ヒータ4が並列され、図示しない温度モニターによって常に炉内温度を監視できるようになっている。この例では、図1に示す如く、炉1内の上部と下部は天井仕切12により仕切られている。その天井仕切12は互いに離間して一対設けられ、それらの間並びに下側の天井仕切12と炉1の底部との間に側部仕切11が配置されている。
なお、環状搬送体2の回転軌跡上においては、側部仕切11および天井仕切12に通過部13を有し、そこに夫々開閉自在な扉14が設けられている。そして、熱交換器支持体3が通過の度毎に扉14は実線の状態から鎖線の状態に開閉される。
【0014】
この例では熱交換器支持体3が時計方向に回転され、図1の最下部中央に熱交換器7の出入口8が設けられている。そして、側部仕切11を隔ててその下流側に準備ゾーン9が設けられる。なお、準備ゾーン9にも加熱用ヒータ4を配置することができる。
そして、天井仕切12を隔てて準備ゾーン9の下流側に順に予熱ゾーン5,ろう付けゾーン6が設けられ、出入口8の位置するところに冷却ゾーン10が設けられている。その準備ゾーン9と予熱ゾーン5とろう付けゾーン6とには、窒素ガス管15に連通するノズル16が配置され、内部を窒素ガスで空気と置換する。このとき、パージする各ゾーンにパージセンサー等を設置し、炉内部の窒素パージ状況をモニタリングし、開閉弁17の開度を調節することで窒素ガスの消費量を小さくすることができる。
そして、準備ゾーン9および冷却ゾーン10には、内部空気を放出する排気22用の排出口が開閉自在に設けられている。また、冷却ゾーン10には冷却用の給気23を導入する給気口が開閉自在に設けられている。なお、この装置の駆動部分であるモータ19や加熱用ヒータ4、開閉弁17そして、内部空気の排気口と給気口をそれぞれコンピュータ制御することで、より効率的なろう付け装置となる。
【0015】
〔使用方法〕
冷却ゾーン10の出入口8から各熱交換器支持体3内に熱交換器7が収納され、それがゴンドラ状に時計回りに回転される。そして、準備ゾーン9および予熱ゾーン5により熱交換器7が予熱され、ろう付けゾーン6でろう材が溶融して、冷却ゾーン10内でそれが冷却し、各部品間が一体的にろう付け固定される。そして、出入口8において熱交換器7が外部に取り出されると共に、新たな熱交換器7が熱交換器支持体3内に収納される。
【0016】
熱交換器7がアルミニューム製の場合には、準備ゾーン9および予熱ゾーン5で550℃程度まで昇温され、ろう付けゾーン6で550℃から600℃まで昇温される。
熱交換器7は、図2の如くその両側から加熱用ヒータ4によって直接加熱される。図3は扉14の説明図であり、一例としてスプリング27により扉14を閉状態に付勢し、金網バスケットの通過の際には、物理的にそれが押し上げられ、通過後に復帰する。図4は炉1内の各ゾーンを示すものである。
【0017】
次に、図5は本製造装置の他の例であって、炉1を上下方向に細長く形成し、環状搬送体2の循環路を縦長の楕円状に形成したものである。そして環状搬送体2にチェーンを設け、駆動軸25に固定されたスプロケット26にそれを歯合して、循環駆動するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の熱交換器の製造装置の縦断面上の正面説明図。
【図2】同製造装置の横断面上の側面説明図。
【図3】図1のIII部拡大図。
【図4】炉1の各ゾーンを示す説明図。
【図5】本発明の熱交換器の製造装置の他の例を示す説明図。
【符号の説明】
【0019】
1 炉
2 環状搬送体
2a 放射フレーム
2b 水平フレーム
2c 円形フレーム
3 熱交換器支持体
4 加熱用ヒータ
5 予熱ゾーン
【0020】
6 ろう付けゾーン
7 熱交換器
8 出入口
9 準備ゾーン
10 冷却ゾーン
11 側部仕切
12 天井仕切
【0021】
13 通過部
14 扉
15 窒素ガス管
16 ノズル
17 開閉弁
18 回転軸
19 モータ
【0022】
20 歯車
21 窒素ガス
22 排気
23 給気
24 軸受
25 駆動軸
26 スプロケット
27 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み立てられた熱交換器が炉(1)内に導かれて、それが一体にろう付け固定される熱交換器の製造装置において、
炉(1)内に、上下方向に環状に循環駆動される環状搬送体(2)および、その環状搬送体(2)に互いに離間してつり下げられる多数の熱交換器支持体(3)と、
それぞれ炉(1)内の上部に位置し、加熱用ヒータ(4)を有する予熱ゾーン(5)およびその下流側のろう付けゾーン(6)と、
炉(1)内の下部に位置し、熱交換器(7)を前記熱交換器支持体(3)に取り付けまたは収納および、それから取出す熱交換器の出入口(8)と、
それぞれ炉(1)内の下部に位置し、その出入口(8)の下流側に配置された準備ゾーン(9) と、その出入口(8)の上流側に位置する冷却ゾーン(10)と、
を具備し、前記準備ゾーン(9)、予熱ゾーン(5)、ろう付けゾーン(6)に不活性ガスが導かれる熱交換器の製造装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記冷却ゾーン(10)および出入口(8)が、それ以外のゾーンから側部仕切(11)および天井仕切(12)により区分され、それらの仕切の一部に前記熱交換器支持体(3)の通過部(13)が設けられた熱交換器の製造装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記準備ゾーン(9)と予熱ゾーン(5)との間が天井仕切(12)により区分された熱交換器の製造装置。
【請求項4】
請求項3において、
各天井仕切(12)が空間を隔てて二重に設けられ、それぞれに前記熱交換器支持体(3)の通過部(13)が設けられた熱交換器の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−34693(P2009−34693A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198962(P2007−198962)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】