説明

熱交換器の解体処理方法

【課題】伝熱管に付着する溶融金属を低減できる熱交換器の解体処理方法を提供する。
【解決手段】熱交換器の解体処理方法は、管複数の伝熱管と、伝熱管の端部が挿入され固定される管板と、伝熱管が支持される複数の管支持板と、隣り合う管支持板の位置を規制する中実棒部材と、を有する熱交換器を横置きした状態で伝熱管を切断する熱交換器の解体処理方法であって、切断用のレーザを照射するレーザヘッドが、レーザを照射しながら中実棒部材の落下方向へ移動する過程で、管支持板と中実棒部材とを切り離す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の解体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラント、原子力プラント等に設けられる熱交換器は、必要に応じて新しい熱交換器へ交換される。特許文献1には、古い熱交換器が保管庫に保管されることが記載されている。この保管庫にはスペースが必要である。例えば、特許文献2には、伝熱管を押し潰し、所定長さに切断して放射性廃棄物としてのスペースを減少させるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−043577号公報
【特許文献2】特表平11−514588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
古い熱交換器を保管庫に保管するにあたり、熱交換器を解体することは保管スペースの減少に寄与できる。熱交換器の解体処理では、熱交換器内に多数存在する伝熱管を切断する効率を高める必要があった。
【0005】
伝熱管を支持する管支持板は、位置を規制するため中実棒部材であるステーロッドにより支えられている。熱交換器の解体処理では、ステーロッドも切断する必要がある。ステーロッドは中実棒部材であるため、切断時に多量の溶融金属(ドロス)が発生し、ステーロッド周囲の伝熱管に付着するおそれがある。このため、溶融金属の影響で、ステーロッドを切断する効率が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、伝熱管に付着する溶融金属を低減できる熱交換器の解体処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために熱交換器の解体処理方法は、前記伝熱管が支持される複数の管支持板と、隣り合う前記管支持板の位置を規制する中実棒部材と、を有する熱交換器を横置きした状態で前記伝熱管を切断する熱交換器の解体処理方法であって、切断用のレーザを照射するレーザヘッドが、前記レーザを照射しながら前記中実棒部材の落下方向へ移動する過程で、前記管支持板と前記中実棒部材とを切り離すことを特徴とする。
【0008】
これにより、伝熱管に付着する溶融金属を低減できる。例えば、レーザヘッドからレーザ照射すると共にレーザと同軸で流れるアシストガスで溶融金属を斜め下方へ吹き飛ばす。吹き飛んだ溶融金属は、中実棒部材下の空間へ運ばれ、周囲の伝熱管に付着する溶融金属を低減できる。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記管支持板と前記中実棒部材とを切り離す前又は後に、前記レーザヘッドが前記レーザを照射しながら前記落下方向と逆向きへ移動する過程で、隣り合う前記管支持板間、又は前記管支持板と管板との間のいずれかに支持された前記伝熱管を切断するが好ましい。これにより、切断した伝熱管を自重で落下させることができ、伝熱管の切断効率を高めることができる。
【0010】
本発明の望ましい態様として、前記レーザヘッドは、前記中実棒部材の一部を残して切断し、切断された前記中実棒部材が落下した後に、前記管支持板と残存する前記中実棒部材と切り離すことが好ましい。これにより、切断時にかかる中実棒部材の荷重を低減することができる。その結果、レーザ照射による切断中に中実棒部材が折れ曲がり又は塑性変形するおそれを低減できる。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記中実棒部材は、棒状部材と、前記棒状部材と前記管支持板とを接続する接続部材と、を含み、前記レーザヘッドは、前記接続部材を残して前記棒状部材を切断し、前記棒状部材が落下した後に、前記管支持板と前記接続部材と切り離すことが好ましい。これにより、切断時にかかる中実棒部材の荷重を低減することができる。その結果、レーザ照射による切断中に接続部材が折れ曲がり又は塑性変形するおそれを低減できる。
【0012】
本発明の望ましい態様として、前記レーザヘッドは、前記中実棒部材に前記落下方向側からレーザを照射して途中まで切り込みを入れ、次に、レーザ照射を停止してから前記中実棒部材の落下方向とは反対側へ移動し、その後、前記中実棒部材にレーザを照射しながら当該レーザが前記切り込みに到達するまで前記落下方向へ移動することが好ましい。これにより、レーザ照射による切断中に中実棒部材の荷重がかかっても切り込みの空間がつぶれる程度の変形に抑制することができる。その結果、レーザ照射による切断中に中実棒部材が折れ曲がり又は塑性変形するおそれを低減できる。
【0013】
本発明の望ましい態様として、前記中実棒部材は、棒状部材と、前記棒状部材と前記管支持板とを接続する接続部材と、を含み、前記レーザヘッドは、前記接続部材に前記落下方向側からレーザを照射して途中まで切り込みを入れ、レーザ照射を停止してから前記接続部材の落下方向とは反対側へ移動し、その後、前記接続部材にレーザを照射しながら当該レーザ前記切り込みに到達するまで前記落下方向へ移動することが好ましい。これにより、レーザ照射による切断中に中実棒部材の荷重がかかっても切り込みの空間がつぶれる程度の変形に抑制することができる。その結果、レーザ照射による切断中に接続部材が折れ曲がり又は塑性変形するおそれを低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、伝熱管に付着する溶融金属を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、原子力プラントの構成を示す説明図である。
【図2】図2は、図1に記載した原子力プラントの熱交換器である蒸気発生器の構成を示す説明図である。
【図3】図3は、横置きになった蒸気発生器の解体を説明する説明図である。
【図4−1】図4−1は、ステーロッドの配置の一例を示す模式図である。
【図4−2】図4−2は、ステーロッドの断面構造の一例を示す模式図である。
【図5】図5は、伝熱管及びステーロッドの切断の一例を示す模式図である。
【図6】図6は、伝熱管の切断状態を示す模式図である。
【図7】図7は、実施形態1のステーロッドの切断の一例を示す模式図である。
【図8】図8は、ステーロッドの切断の状態の一例を示す模式図である。
【図9−1】図9−1は、実施形態2のステーロッドの状態の一例を示す模式図である。
【図9−2】図9−2は、実施形態2のステーロッドの切断の状態の一例を示す模式図である。
【図9−3】図9−3は、実施形態2のステーロッドの切断の状態の一例を示す模式図である。
【図9−4】図9−4は、実施形態2のステーロッドの切断の状態の変形例を示す模式図である。
【図10−1】図10−1は、実施形態3のステーロッドの状態の一例を示す模式図である。
【図10−2】図10−2は、実施形態3のステーロッドの切断の状態の一例を示す模式図である。
【図10−3】図10−3は、実施形態3のステーロッドの切断の状態の一例を示す模式図である。
【図10−4】図10−4は、実施形態3のステーロッドの切断の状態の一例を示す模式図である。
【図10−5】図10−5は、実施形態3のステーロッドの切断の状態の一例を示す模式図である。
【図10−6】図10−6は、実施形態3のステーロッドの切断の状態の変形例を示す模式図である。
【図10−7】図10−7は、実施形態3のステーロッドの切断の状態の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0017】
(実施形態1)
図1は、原子力プラントの構成を示す説明図である。図2は、図1に記載した原子力プラントの蒸気発生器の構成を示す説明図である。
【0018】
原子力プラント100には、例えば、加圧水型軽水炉原子力発電設備がある(図1参照)。この原子力プラント100は、原子炉格納容器110、原子炉120、加圧器130、蒸気発生器140及びポンプ150が一次冷却材管160により順次連結されて、一次冷却材の循環経路(一次系循環経路)が構成される。また、蒸気発生器140とタービン210との間に二次冷却材の循環経路(二次系循環経路)が構成される。
【0019】
この原子力プラント100が有する原子炉120は、加圧水型軽水炉である。このため、一次系循環経路内の一次冷却材は、加圧器130で加圧されて圧力が所定の大きさに維持される。原子力プラント100は、先ず、一次冷却材が原子炉120で加熱された後、蒸気発生器140に供給される。次に、蒸気発生器140で一次冷却材と二次冷却材との熱交換が行なわれることにより、二次冷却材が蒸発して蒸気となる。そして、この蒸気となった二次冷却材がタービン210に供給されることにより、タービン210が駆動されて発電機220に動力が供給される。なお、蒸気発生器140を通過した一次冷却材は、一次冷却材管160を介して回収されて原子炉120側に供給される。また、タービン210を通過した二次冷却水は、復水器230で冷却された後に、二次冷却材管240を介して回収されて蒸気発生器140に供給される。原子力プラント100は、高温・高圧の流体や放射性物質を含む可能性のある流体を扱っている。このため、蒸気発生器140を必要に応じて新しい蒸気発生器へ交換する場合、古い蒸気発生器について厳しい管理が求められている。古い蒸気発生器は、保管庫において管理されるが、保管庫のスペースを確保するため解体し解体後の容積を減少させる必要がある。
【0020】
蒸気発生器140は、胴部1と、複数の伝熱管2と、気水分離器3と、湿分分離器4とを有する(図2参照)。胴部1は、略円筒形状かつ中空密閉構造を有し、長手方向を鉛直方向に向けて配置される。また、胴部1は、管板11及び仕切板12により区画されてなる一対の水室13、14を底部に有する。この水室13(14)は、入口側ノズル15(出口側ノズル16)を介して一次冷却材管160に接続される。
【0021】
伝熱管2は、略U字形状を有し、両端部を鉛直下方に向けて胴部1内に配置される。伝熱管2の両端部は管板11に挿入されて拡管され、固定されている。また、伝熱管2の両端部は、入口側水室13及び出口側水室14に対してそれぞれ開口する。また、円筒形状を有する管群外筒5が胴部1内に配置され、この管群外筒5内に複数の伝熱管2が配置される。
【0022】
また、管群外筒5内には、複数の管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6Gが所定間隔を隔てて配列される。これらの管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6Gは、多孔板となっており、各伝熱管2が管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6Gを貫通している。管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6Gに設けられた貫通孔と、各伝熱管2との間には所定のクリアランスが設けられている。
【0023】
また、管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6Gの位置を規制するためのステーロッド40を有している。また、ステーロッド40は、接続部材である接続金物45を含んでいる。接続金物45の詳細については、後述する。
【0024】
また、管群外筒5は、胴部1の内壁に対して隙間を開けて配置される。気水分離器3は、給水を蒸気と熱水とに分離する装置である。湿分分離器4は、分離された蒸気の湿分を除去して乾き蒸気に近い状態とする装置である。
【0025】
この蒸気発生器140は、一次冷却材が入口側ノズル15から入口側水室13に流入し、伝熱管2を通って出口側水室14に入り、出口側ノズル16から外部に排出される。また、二次冷却材が給水管17から胴部1内に導入されて管群外筒5内を通る。このとき、一次冷却材と二次冷却材との熱交換が行なわれて、二次冷却材が加熱される。つまり、蒸気発生器140は、熱交換器である。そして、この二次冷却材が気水分離器3及び湿分分離器4を通過することにより、二次冷却水の蒸気成分が取り出されてタービン210側に供給される。
【0026】
上述した蒸気発生器140を解体するには、複数の伝熱管2が例えば数千本と数が多いことから、多数存在する伝熱管を切断する効率を高める必要がある。伝熱管2の一部を切断して解体するためには、蒸気発生器140を横置きして作業することが好ましい。これにより伝熱管2が水平となる。このため、切断した伝熱管2を自重で落下させることができ、伝熱管2の切断効率を高めることができる。
【0027】
図2に示す蒸気発生器140は、ガス切断等により、胴部1を切断し、気水分離器3と、湿分分離器4とを取り外した状態とされる。また、解体作業の準備として、また、上述した入口側水室13、出口側水室14の除染作業、例えばブラスト除染を実施しておくことが好ましい。その後、伝熱管2の内部も除染作業、例えばブラスト除染を実施しておくことが好ましい。図3は、横置きになった蒸気発生器の解体を説明する説明図である。
【0028】
図3に示すように、管群外筒5の一部が残された蒸気発生器140は、支持架台60により支えられ、横置きに載置されている。蒸気発生器の周囲は、ヒューム又はダストを回収可能な回収ダクトを備えたグリーンハウス又は後述するレーザから防護する防護ハウスに、一部又は全部が覆われていることが好ましい。なお、図3に示す落下方向をZ方向とし、伝熱管2の長手方向をY方向とし、Z方向とY方向に各々垂直な水平方向をX方向とする。また、蒸気発生器140は、上述した入口側水室13と出口側水室14とが水平方向(X方向)に平行となるように横置きにされている。
【0029】
熱交換器の解体処理装置には、図3に示す切断装置30を含む。切断装置30は、例えば、隣り合う管支持板を保持可能な保持手段35、36と、レーザヘッド31A、31Bとを含んでいる。切断装置30は、レーザヘッド31A、31BをX方向、Y方向、Z方向に自在に移動可能としている。切断装置30は、消耗品の交換頻度の少ないレーザ切断を用いるので、切断作業中の消耗品の交換時間が減少し、切断作業時間を短縮できる。なお、切断装置30は、レーザヘッド31A及び31Bから切断対象の伝熱管2までの距離を計測する計測機器を備えており、レーザヘッド31A、31Bの位置を正確に設定可能である。
【0030】
切断装置30は、レーザヘッド31A、31Bの他に、例えば蒸気発生器140を挟んでX方向に向かい合わせに一対のレーザヘッドを有していてもよい。これにより、蒸気発生器140のX方向の両側から切断し、解体処理の作業時間を短縮することができる。
【0031】
切断装置30は、保持手段35、36により、例えば隣り合う管支持板6F、6Gを保持可能である。保持手段35、36により、例えば隣り合う管支持板6F、6Gの間の伝熱管2は、水平(Y方向に平行)に保たれる。
【0032】
上述のように伝熱管群は、略U字形状をしているので、図3に示すように切断装置30が先にU字形状部分を削除することが好ましい。次に、図3に示すように、切断装置30は、例えば隣り合う管支持板6F、6Gの間の伝熱管2を切断する。
【0033】
図3に示すように、切断装置30は、例えば隣り合う管支持板6F、6Gの間の伝熱管2を切断し終わると、隣り合う管支持板6E、6Fの間の伝熱管2を切断する。同様に、順次、管支持板6D、6Eの間の伝熱管2、管支持板6C、6Dの間の伝熱管2、管支持板6B、6Cの間の伝熱管2、管支持板6A、6Bの間の伝熱管2を切断する。その後、切断装置30は、管板11、管支持板6Aの間の伝熱管2を切断する。
【0034】
次に、上述したステーロッドについて図4−1及び図4−2を用いて説明する。なお、図4−1及び図4−2では、伝熱管は省略している。図4−1は、ステーロッドの配置の一例を示す模式図である。図4−2は、ステーロッドの断面構造の一例を示す模式図である。図4−1に示すように、ステーロッド40は、管支持板6Fの中心及び管支持板6Fの中心に対して点対称となるよう複数箇所(例えば、5箇所)配置されていることが好ましい。これにより、図4−2に示す後述するスペーサパイプ42が受ける管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6Gの荷重をバランスよく分散できる。なお、図4−1では、伝熱管は省略されている。ステーロッド40の下側(Z方向)に伝熱管がある場合、まず伝熱管が切断される。ステーロッド40の上側(Z方向と逆方向)に伝熱管がある場合、ステーロッド40が切断されてからステーロッド40の上側にある伝熱管が切断される。
【0035】
図4−2に示すように、ステーロッド40は、中実棒状部材であるロッド41と、スペーサパイプ42と、中実部材である接続金物45と、を含んでいる。接続金物45は、Y方向の両側からロッド41を接続できるように雌ねじが形成されている。ロッド41は、Y方向の両端が雄ねじとなっている。ロッド41は、管支持板6Fを貫通し、接続する中継部材接続金物45にねじ込まれている。ロッド41の周囲には、中空部材であるスペーサパイプ42が取り付けられており、管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6Gの荷重をうけることができる。
【0036】
次に伝熱管の切断について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、伝熱管及びステーロッドの切断の一例を示す模式図である。図6は、伝熱管の切断の状態を示す模式図である。図5に示すように、切断装置30は、図3に示すレーザヘッド31Bを矢印Z1方向へ移動させ、レーザを照射しながら伝熱管2を落下方向(Z方向)側にある最も下側から切断していくことが好ましい。これにより、切断される伝熱管2の下方には落下を邪魔する伝熱管が存在しないことになる。その結果、切断された伝熱管を下方へ確実に落下させることができる。
【0037】
例えば、切断装置30は、レーザヘッド31Bが図5に示すZ方向に並ぶ伝熱管2の列Pの落下方向(Z方向)にある最も下側の伝熱管2をレーザヘッド位置31Baで切断した後、落下方向(Z方向)と逆向きの矢印Z1方向へ順に、レーザを照射しながら列Pの伝熱管2を切断(上進切断)し、レーザヘッド位置31Bbまで移動させる。切断装置30は、レーザヘッド31Bがレーザを照射しながら、列Pの矢印Z1方向の最も上側の伝熱管2を切断すると、次に、切断装置30は、図5に示す伝熱管2の列Qの落下方向(Z方向)にある最下の伝熱管2をレーザヘッド位置31Bcで切断する。次に、切断装置30は、レーザヘッド31Bがレーザを照射しながら、矢印Z1方向へ順に列Qの伝熱管2を切断し、レーザヘッド位置31Bbの高さ位置まで移動させる。
【0038】
図6に示すように、伝熱管2は、切断される伝熱管2Aと、切り残される伝熱管(以下切り株という。)である切り株20Aと、に分断される。ここで、切り株20Aは、管支持板6A〜6G又は管板11から突き出る長さは、一定長さに揃うことが好ましい。レーザヘッド31A、31Bは、上述した図5の矢印Z1方向へ列毎に切断し終わると、図6に示すように例えば水平方向(X方向)へ進み、伝熱管2を切断していくことになる。
【0039】
この場合、レーザヘッド31A、31Bは、切り株20Aと干渉しないように、水平方向(X方向)へ進み、次の伝熱管2を切断する。レーザヘッド31A、31Bは、切り株20Aと干渉しないようにするには、レーザヘッド31A、31Bの間隔をレーザヘッド31A、31Bが水平方向(X方向)へ進むにつれて短くしていく方法もある。しかし、蒸気発生器140には数千本の伝熱管があるため、レーザヘッド31A、31Bが水平方向(X方向)へ進むにつれて、レーザヘッド31A、31B同士がぶつかるおそれがある。また、切断できる伝熱管2Aの長さが短くなり、切断位置によって切り株20Aの長さが不揃いになる。
【0040】
このため本実施形態の熱交換器の解体処理方法は、管支持板近傍位置でのレーザ切断が、レーザヘッドの管支持板側端部よりも管支持板側で切断されるようにすることが好ましい。これにより、管支持板側に切り残される伝熱管(切り株)の先端位置がレーザヘッドの進行を妨げることを抑制できる。管支持板近傍位置でのレーザ切断が、レーザヘッドの管支持板側端部よりも管支持板側で切断されるようにするには、例えばレーザヘッドを管支持板に対しレーザ照射の角度を傾斜するようにしてもよい。あるいは、管支持板近傍位置でのレーザ切断が、レーザヘッドの管支持板側端部よりも管支持板側で切断されるようにするには、レーザヘッドがX方向を向いたままでもレーザヘッドのレーザ光学系によりレーザ光の光軸を管支持板へ向くように変位させてもよい。
【0041】
言い換えると、レーザヘッド31A、31Bのレーザ光照射が管支持板6F、6Gに対して斜めに進み、切り株20Aは水平面内(XY平面内)でレーザヘッド31A、31Bに近い側が、レーザヘッド31A、31Bに遠い側に比較して管支持板6A〜6G又は管板11から突き出る長さが長くなるように傾斜切断されていることが好ましい。これにより、レーザヘッド31A、31Bは、例えば水平方向(X方向)へ伝熱管2を上述した列毎に切断しても、レーザヘッド31A、31Bが切り株20Aに邪魔されず、切り株20Aが管支持板6A〜6G又は管板11から突き出る長さを短くかつ一定とすることができる。
【0042】
図6に示すように、伝熱管2は、切断された伝熱管2Aとなり、自重によりZ方向へ落下していくことになる。落下された伝熱管2Aは、振動体等を備えたパーツフィーダ付き収容容器等に収容される。レーザヘッド31A、31Bは、例えば伝熱管2の長手方向(Y方向)の両側を同時に切断することが好ましい。これにより、伝熱管2Aは水平面(XY平面)に平行に落下することが多い。
【0043】
また、図6に示すように、伝熱管2は、管支持板6F、6Gの各々の近傍で切断される。以上説明したように、切断された伝熱管2Aは、自重落下しても落下を邪魔する他の伝熱管2が存在しない状態で順次切断していくことができる。このため、切断された伝熱管2Aは、確実にZ方向へ落下することができる。切断装置30は、列Qの矢印Z1方向の最も上側の伝熱管2を切断すると、次に、切断装置30は、図5に示すロッド41が接続された接続金物45を切断する。
【0044】
切断装置30は、レーザヘッド31Bからレーザ照射すると共にレーザと同軸で流れるアシストガスで溶融金属を吹き飛ばすことによって切断を行っている。伝熱管2は、中空材料であるため、発生する溶融金属は無視できる程度である。しかし、中実材料である接続金物45は、レーザ照射により発生する溶融金属が伝熱管2の切断で発生する溶融金属に比べ多く発生する。
【0045】
例えば、切断装置30は、レーザヘッド31Bが図5に示すレーザヘッド位置31Bbから、レーザを照射しながら矢印Z1方向へ接続金物45を切断し、レーザヘッド位置31Bdまで移動させる。切断装置30は、レーザヘッド31Bからレーザ照射すると共にレーザと同軸で流れるアシストガスで溶融金属を斜め上方へ吹き飛ばすので、接続金物45の背後にあるR列の伝熱管2の上へ溶融金属であるドロスMが付着する。矢印Z1方向へ接続金物45が切断されるにつれて、溶融金属がさらに上方から降りかかりドロスMの付着量が多くなる。このため、R列の伝熱管2と接続金物45とがドロスMにより溶着し、接続金物45の落下の障害となる。
【0046】
そこで、本実施形態の蒸気発生器140の解体処理方法では、中実棒部材であるステーロッド40の接続金物45をレーザ切断するレーザヘッド31Bは、ステーロッド40が切断後に落下する落下方向(Z方向)へ移動して、管支持板6Fとステーロッド40を切り離すことが好ましい。図7は、実施形態1のステーロッドの切断の一例を示す模式図である。なお、図7では、伝熱管2の配列は、隣り合う列、例えば、列Pと列Q、及び列Qと列Rのいずれの列でもX方向に伝熱管2が隣り合い、一直線上に並んでいる配列を例示している。伝熱管2の配列は、X方向に伝熱管2が隣り合い、一直線上に並んでいる配列以外にも、例えば千鳥配列であっても良い。千鳥配列では、図7とは異なり、列Pと列Q、及び列Qと列RでX方向に伝熱管2が互い違いに配列される。つまり、伝熱管2の千鳥配列は、X方向に隣り合う伝熱管2の列毎に、Z方向に伝熱管2が半ピッチずつずれた配列となる。
【0047】
上述したようにレーザヘッド31BがP列及びQ列の伝熱管2を上進切断した後、切断装置30は、図7に示すロッド41が接続された接続金物45を切断する。本実施形態の解体処理方法では、レーザヘッド31Bがレーザの照射を停止して接続金物45の矢印Z1方向上側(落下方向の反対側)のレーザヘッド位置31Beに移動する。その後、レーザヘッド31Bは、中実棒部材である接続金物45にレーザを照射しながら落下方向(Z方向)と平行な矢印Z2方向にレーザ切断(下進切断)する。これにより、切断装置30は、レーザヘッド31Bからレーザ照射すると共にレーザと同軸で流れるアシストガスで溶融金属を斜め下方へ吹き飛ばす。吹き飛んだ溶融金属は、既に切断されたP列及びQ列の伝熱管2があった空間へ運ばれ、R列の伝熱管2に付着することなく落下していくことが多くなる。つまり、接続金物45の周囲の伝熱管2に付着する溶融金属が低減される。なお、本実施形態の蒸気発生器140の解体処理方法は、管支持板6Fを例示して説明したが管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6Gのいずれにも適用できる。
【0048】
このため、接続金物45がR列の伝熱管2と溶着するおそれが低減され、接続金物45は確実に落下することができる。接続金物45の切り残った接続金物の切り株の長さは、切り株20Aが管支持板6A〜6G又は管板11から突き出る長さと同程度とすることができる。また、レーザヘッド31A、31Bのレーザ光照射が管支持板6F、6Gに対して斜めに進み、接続金物45の切り株は水平面内(XY平面内)でレーザヘッド31A、31Bに近い側が、レーザヘッド31A、31Bに遠い側に比較して管支持板6A〜6G又は管板11から突き出る長さが長くなるように傾斜切断されていることが好ましい。
【0049】
上述したように本実施形態の蒸気発生器の解体処理方法は、管内外で熱交換をする複数の伝熱管2と、伝熱管2の端部が挿入され固定される管板11と、伝熱管2が支持される複数の管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6Gと、これらのうち隣り合う管支持板の位置を規制するステーロッド40とを有する蒸気発生器140を横置きした状態で伝熱管2を切断する蒸気発生器140の解体処理方法であって、切断用のレーザを照射するレーザヘッド31A、31Bがレーザを照射しながらステーロッド40の落下する落下方向(Z2方向)へ移動する過程で、管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6Gのいずれかとステーロッド40とを切り離している。
【0050】
これにより、伝熱管に付着する溶融金属を低減できる。例えば、レーザヘッドからレーザ照射すると共にレーザと同軸で流れるアシストガスで溶融金属を斜め下方へ吹き飛ばす。吹き飛んだ溶融金属は、中実棒部材下の空間へ運ばれ、周囲の伝熱管に付着することなく落下していくことになる。
【0051】
また、管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6Gのいずれかとステーロッド40とを切り離す前又は後に、レーザヘッド31A、31Bがレーザを照射しながら落下方向と逆向き(Z1方向)に移動する過程で、複数の管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6Gのうち隣り合う管支持板間、又は管支持板6Aと管板11との間のいずれかに支持された伝熱管2を切断することが好ましい。これにより、切断した伝熱管2を自重で落下させることができ、伝熱管の切断効率を高めることができる。また、溶融金属(ドロスM)を落下させる空間が形成できる。
【0052】
上述したように本実施形態の蒸気発生器の解体処理方法は、ステーロッド40の接続金物45を切り離している例を例示した。接続金物45がなく、ステーロッドの棒状部分のみの場合でも、ステーロッド40は、中実棒状部材であるロッド41を含むので、本実施形態は適用すると周囲の伝熱管2に付着する溶融金属(ドロスM)を低減できる。
【0053】
(実施形態2)
図8は、ステーロッドの切断の状態の一例を示す模式図である。図9−1は、実施形態2のステーロッドの状態の一例を示す模式図である。図9−2から図9−3は、実施形態2のステーロッドの切断の状態の一例を示す模式図である。本実施形態に係る蒸気発生器の解体処理方法は、ステーロッドの一部を事前に切断して落下させ、レーザで切断される部位にかかる自重を軽減することに特徴がある。次の説明においては、実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0054】
上述した本実施形態の解体処理方法では、図7に示すように、レーザヘッド31Bがレーザの照射を停止して接続金物45のZ1方向上側(落下方向の反対側)のレーザヘッド位置31Beに移動させる。その後、レーザヘッド31Bは、中実棒部材である接続金物45にレーザを照射しながらZ方向と平行な矢印Z2方向(落下方向)にレーザ切断(下進切断)する。これにより、図8に示すように、切断空間Cができる。図3に示すレーザヘッド31A及びレーザヘッド31Bがレーザを照射することで、上述したステーロッド40を落下させる。しかし、図8に示すように、レーザヘッド31A及びレーザヘッド31Bのレーザ照射の状態によっては、中実棒部材であるステーロッド40Aのように自重が重いため、引っ張られ意図しない挙動を示すことがある。例えば、接続金物45を切断完了する前に、ステーロッド40Aは折れ曲がり切断空間Cを境に塑性変形してしまうおそれがある。このため、空間Cが広がりアシストガスの乱れにより、レーザヘッド31A及び31Bが、ステーロッド40Aの切断面を所定の形に加工できないことが多い。例えば、図8のようにレーザヘッド31A及び31Bが、切断しきれない場合もある。例えば、図7に示すR列の伝熱管を切断する場合、ステーロッド40Aの切り株の塑性変形の形状が邪魔をして、未切断の伝熱管2を切断しようとすると切り株の長さが長くなる。この結果、伝熱管の切り株は、管支持板6A〜6G又は管板11から突き出る長さが不揃いとなり、保管庫のスペースを消費してしまう。あるいは、切り株の除去作業が必要となり、作業時間の増加の原因となる。
【0055】
本実施形態の蒸気発生器140の解体処理方法では、中実棒部材が、図9−1に示すように棒状部材であるステーロッド40と、ステーロッド40とステーロッド40を接続する接続部材である接続金物45とを含んでいる。ステーロッド40には図4−2で示したように、ロッド41が含まれている。図9−2に示すように、切断装置30は、レーザヘッド31A、31Bがレーザを照射しながら移動し、切断したステーロッド40aと、ステーロッド切り株40b、40cとに分断する。接続金物45にかかるステーロッドの荷重を軽減するため、ステーロッド40aはできるだけ長くなるように、管支持板6Gに近い切断位置C1、接続金物45に近い切断位置C2で切断することが好ましい。
【0056】
図9−2に示すように、レーザヘッド31A、31Bがレーザを照射しながら移動し、切断したステーロッド40aと、ステーロッド切り株40b、40cとに分断するには、レーザヘッド31A、31Bがステーロッド40aの落下方向(Z方方向)と逆方向に切断(上進切断)してもよい。これにより、溶融金属(ドロスM)がステーロッド40の背後にある伝熱管に付着しやすくなるが、伝熱管の切断位置とドロスMの付着位置が重なり合わないので、レーザヘッド31A、31Bが伝熱管を切断する場合、障害となりにくい。レーザヘッド31A、31Bがレーザを照射しながら移動し、切断したステーロッド40aと、ステーロッド切り株40b、40cとに分断するには、レーザヘッド31A、31Bがステーロッド40aの落下方向(Z方方向)に切断(下進切断)してもよい。これにより、溶融金属(ドロスM)がステーロッド40の背後にある伝熱管に付着するおそれを低減できる。
【0057】
切断されたステーロッド40aは自重でZ方向に落下する。その後、図9−3に示すように、レーザヘッド31Bが接続金物45にレーザを照射しながら落下方向(Z方向)の上方から下方へレーザ切断(下進切断)し、切断片45aと、接続金物切り株45bと、に切断位置C4で分断する。レーザヘッド31Aがステーロッド切り株40bにレーザを照射しながら落下方向(Z方向)の上方から下方へレーザ切断(下進切断)し、ステーロッド切り株切断片40bbと、ステーロッド切り株40dと、に切断位置C3で分断する。ステーロッド40aの荷重が接続金物45にかからないので、接続金物45にかかるモーメントが低減され、図8に示す塑性変形が抑制される。また、ステーロッド40aの荷重がステーロッド切り株40dにかからないので、ステーロッド切り株40dにかかるモーメントが低減され、図8に示す塑性変形が抑制される。このため、レーザヘッド31A、31Bがステーロッド40にレーザを照射しながら落下方向(Z方向)の上方から下方へレーザ切断(下進切断)しても、切断するステーロッド40にかかるモーメントが低減されているので、切断しきれないおそれが抑制される。本実施形態の蒸気発生器140の解体処理方法は、管支持板6F、6Gを例示して説明したが管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、管板11のいずれにも適用できる。
【0058】
図9−4は、実施形態2のステーロッドの切断の状態の変形例を示す模式図である。図9−2では、切断装置30は、レーザヘッド31A、31Bがレーザを照射しながら移動し、切断したステーロッド40aと、ステーロッド切り株40b、40cとに分断したが、切断位置はこれに限られない。例えば、図9−4に示すように、レーザヘッド31Aがまず、ステーロッド40の中央(管支持板6Gと管支持板6Fとの中間近傍)の切断位置C5で切断する。その後、レーザヘッド31A及び31Bが管支持板6Gに近い切断位置C1、接続金物45に近い切断位置C2で切断する。これにより、切断されたステーロッド40c、40dはZ方向であって、中央向きに斜めに落下し、既に切断した接続金物の下方にある伝熱管2の切り株に衝突する可能性を低減できる。その後、レーザヘッド31Bが接続金物45にレーザを照射しながら落下方向(Z方向)の上方から下方へレーザ切断(下進切断)し、切断片45aと、接続金物切り株45bと、に切断位置C4で分断する。レーザヘッド31Aがステーロッド切り株40dにレーザを照射しながら落下方向(Z方向)の上方から下方へレーザ切断(下進切断)し、ステーロッド切り株切断片40bbと、ステーロッド切り株40dと、に切断位置C3で分断する。
【0059】
図9−4に示すように、レーザヘッド31Aがレーザを照射しながら移動し、ステーロッド40を切断位置C5で切断するには、レーザヘッド31Aがステーロッド40c、40dの落下方向(Z方方向)と逆方向に切断(上進切断)してもよい。これにより、溶融金属(ドロスM)がステーロッド40の背後にある伝熱管に付着しやすくなるが、伝熱管の切断位置とドロスMの付着位置が重なり合わないので、レーザヘッド31A、31Bが伝熱管を切断する場合、障害となりにくい。レーザヘッド31Aがレーザを照射しながら移動し、ステーロッド40を切断位置C5で切断するには、レーザヘッド31Aがステーロッド40c、40dの落下方向(Z方方向)に切断(下進切断)してもよい。これにより、溶融金属(ドロスM)がステーロッド40の背後にある伝熱管に付着するおそれを低減できる。
【0060】
上述したように本実施形態の蒸気発生器140の解体処理方法では、ステーロッドは、棒状部材であるロッド41と、ロッド41と管支持板6A〜6Gのいずれかと、に接続する接続部材である接続金物45とを含み、レーザヘッド31A、31Bは、接続金物45を残してステーロッド40を切断し、ステーロッド40aが落下した後に接続金物45を管支持板6A〜6Gのいずれかから切り離すことが好ましい。
【0061】
これにより、切断時にかかるステーロッド40の荷重を低減することができる。その結果、レーザ照射による切断中に接続金物45が折れ曲がり又は塑性変形するおそれを低減できる。その結果、レーザヘッド31A、31Bがステーロッド40にレーザを照射しながら落下方向(Z方向)の上方から下方へレーザ切断(下進切断)しても、切断しきれないおそれが抑制される。
【0062】
上述したように本実施形態の蒸気発生器140の解体処理方法は、ステーロッド40の接続金物45を切り離している例を例示した。接続金物45がなく、ステーロッドの棒状部分のみの場合でも、ステーロッド40は、中実棒状部材であるロッド41を含むので、本実施形態は適用することができる。
【0063】
この場合、レーザヘッド31A、31Bは、ステーロッド40の一部を残して切断し、切断されたステーロッドが落下した後に残存するステーロッドの一部を管支持板6A〜6Gのいずれかから切り離すことが好ましい。
【0064】
これにより、切断時にかかるステーロッド40の荷重を低減することができる。その結果、レーザ照射による切断中にステーロッド40が折れ曲がり又は塑性変形するおそれを低減できる。その結果、レーザヘッド31A、31Bがステーロッド40にレーザを照射しながら落下方向(Z方向)の上方から下方へレーザ切断(下進切断)しても、切断しきれないおそれが抑制される。
【0065】
(実施形態3)
図10−1は、実施形態3のステーロッドの状態の一例を示す模式図である。図10−2から図10−5は、実施形態3のステーロッドの切断の状態の一例を示す模式図である。本実施形態に係る蒸気発生器の解体処理方法は、レーザで接続金物の落下方向の下側から切り込みをもうけることに特徴がある。次の説明においては、実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0066】
上述した図8に示すように、レーザヘッド31A及びレーザヘッド31Bのレーザ照射の状態によっては、中実棒部材であるステーロッド40Aのように自重が重いため、引っ張られ意図しない挙動を示すことがある。
【0067】
本実施形態の蒸気発生器140の解体処理方法では、中実棒部材は、図10−1に示すように棒状部材であるステーロッド40と、ステーロッド40とステーロッド40を接続する接続部材である接続金物45とを含んでいる。図10−2に示すように、レーザヘッド31A、31Bは、Z方向側からレーザを照射して、ステーロッド40及び接続金物45のZ方向下側に途中まで切り込みD1、D2を設ける。
【0068】
切り込みD1、D2のZ方向の切り込み長さは、溶融金属の量を抑制するため、ステーロッド40の半径以下、又は接続金物45の半径以下とすることが好ましい。切り込みD1、D2のZ方向の切り込み長さは、ステーロッド40の半径の半分以下、又は接続金物45の半径の半分以下とすることがより好ましい。
【0069】
次に、図10−3に示すように、レーザヘッド31A、31Bは、切り込みD1、D2の加工後、レーザ照射を停止し、ステーロッド40及び接続金物45のZ方向上側(落下方向と反対側)へ移動する。移動後、レーザヘッド31A、31Bは、レーザ照射を再開し、ステーロッド40及び接続金物45のZ方向上側にレーザを照射し、切断を再開する。レーザヘッド31A、31Bは、レーザの照射により切断空間D3、D4を作りながらZ方向へ移動する。
【0070】
レーザヘッド31A及びレーザヘッド31Bのレーザ照射の状態によっては、ステーロッド40の荷重により引っ張られ意図しない挙動を示すことがある。本実施形態の蒸気発生器の解体処理方法では、予め切り込みD1、D2を設けているので、ステーロッド40及び接続金物45を切断完了する前に、ステーロッド40の折れ曲がり又は塑性変形のおそれが低減される。図10−4に示すように、例えば、ステーロッド40は折れ曲がりの角度が切り込みD2の空間がつぶれる程度で抑えられる。そして、図10−3に示すように、レーザヘッド31A、31Bは、レーザ照射により切断空間D3、D4を作りながらZ方向へ移動する。切り込みD1、D2が切断空間D3、D4の変形量を小さくできるため、切断空間D3、D4が広がることによるアシストガスの乱れのおそれが低減される。このため、図10−5に示すように、レーザヘッド31A、31Bが形成したレーザ照射により切断空間D3、D4が切り込みD1、D2と繋がり、切断位置D5、D6とすることができる。接続金物45は、接続金物切り株45b、接続金物切断部45aに切断位置D6で分断される。ステーロッド40は、ステーロッド40eと、ステーロッド切り株40dとに切断位置D5で分断される。接続金物切断部45aがステーロッド40eと共にZ方向へ自重落下する。このため、レーザヘッド31A、31Bがステーロッド40にレーザを照射しながら落下方向(Z方向)の上方から下方へレーザ切断(下進切断)しても、切断しきれないおそれが抑制されている。なお、本実施形態の蒸気発生器140の解体処理方法は、管支持板6F、6Gを例示して説明したが管支持板6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、管板11のいずれにも適用できる。
【0071】
また、ステーロッド40の折れ曲がり又は塑性変形のおそれが低減された状態で接続金物45が切断されているので、切断位置D5、D6の切断面は一定高さとされる。図7に示すR列の伝熱管を切断する場合、伝熱管の切り株は、管支持板6A〜6G又は管板11から突き出る長さが一定となり、保管庫のスペースを抑制できる。
【0072】
図10−6及び図10−7は、実施形態3のステーロッドの切断の状態の変形例を示す模式図である。例えば、図10−6に示すように、レーザヘッド31Aがまず、ステーロッドの中央(管支持板6Gと管支持板6Fとの中間近傍)の切断位置E1で切断する。その後、レーザヘッド31A及び31Bが切り込みD1、D2の加工を行ってもよい。そして、図10−7に示すように、レーザヘッド31A、31Bが切断したステーロッド40f、40gと、ステーロッド切り株40b、40cとに切断位置E2、E3で分断する。これにより、切断されたステーロッド40f、40gはZ方向であって、中央向きに斜めに切断位置E1から落下し、既に切断した接続金物の下方にある伝熱管2の切り株に衝突する可能性を低減できる。接続金物45にかかるステーロッドの荷重を軽減するため、ステーロッド40f、40gはできるだけ長くなるように、接続金物45に近い切断位置E3で切断することが好ましい。
【0073】
レーザヘッド31A、31Bがレーザを照射しながら移動し、ステーロッド40を切断位置E1、E2、E3で切断するには、レーザヘッド31A、31Bがステーロッド40f、40gの落下方向(Z方方向)と逆方向に切断(上進切断)してもよい。これにより、溶融金属(ドロスM)がステーロッド40の背後にある伝熱管に付着しやすくなるが、伝熱管の切断位置とドロスMの付着位置が重なり合わないので、レーザヘッド31A、31Bが伝熱管を切断する場合、障害となりにくい。レーザヘッド31A、31Bがステーロッド40を切断位置E1、E2、E3で切断するには、レーザヘッド31A、31Bがステーロッド40f、40gの落下方向(Z方方向)に切断(下進切断)してもよい。これにより、溶融金属(ドロスM)がステーロッド40の背後にある伝熱管に付着するおそれを低減できる。
【0074】
次に、レーザヘッド31A、31Bは、切り込みD1、D2の加工後、レーザ照射を停止し、ステーロッド40及び接続金物45のZ方向上側(落下方向と反対側)へ移動する。移動後、レーザヘッド31A、31Bは、レーザ照射を再開し、ステーロッド40及び接続金物45のZ方向上側にレーザを照射し、切断を再開する。図10−7に示すように、レーザヘッド31A、31Bは、レーザの照射をしながら移動することにより切断空間D3、D4を形成する。このため、図10−5に示すように、レーザヘッド31A、31Bが形成したレーザ照射により切断空間D3、D4が切り込みD1、D2と繋がり、切断位置D5、D6とすることができる。切断されたステーロッド40f、40gは既に落下しているので、接続金物45にかかるステーロッドの荷重を軽減されている。このため、ステーロッド40及び接続金物45が折れ曲がり又は塑性変形するおそれがより低減される。
【0075】
上述したように本実施形態の蒸気発生器140の解体処理方法は、中実棒状部材であるステーロッド40と、ステーロッド40と管支持板6A〜6Gのいずれかと、を接続する接続部材である接続金物45とを含み、レーザヘッド31A、31Bは、接続金物45の落下方向側からレーザを照射して途中まで切り込みD1、D2を入れる。次に、レーザヘッド31A、31Bは、レーザ照射を停止してからレーザヘッド31A、31Bが接続金物の落下方向とは反対側へ移動し、その後、接続金物45にレーザを照射しながら当該レーザが落下方向(Z方向)へ切り込みD1、D2に到達するまで移動することが好ましい。
【0076】
これにより、レーザ照射による切断中にステーロッド40の荷重がかかっても切り込みD1、D2の空間がつぶれる程度の変形に抑制することができる。また、レーザ照射による切断中に接続金物45が折れ曲がり又は塑性変形するおそれを低減できる。このため、切断空間が広がることによるアシストガスの乱れのおそれが低減される。その結果、レーザヘッド31A、31Bがステーロッド40にレーザを照射しながら落下方向(Z方向)の上方から下方へレーザ切断(下進切断)しても、切断しきれないおそれが抑制される。
【0077】
上述したように本実施形態の蒸気発生器140の解体処理方法は、ステーロッド40の接続金物45を切り離している例を例示した。接続金物45がなく、ステーロッドの棒状部分のみの場合でも、ステーロッド40は、中実棒状部材であるロッド41を含むので、本実施形態は適用することができる。
【0078】
この場合、レーザヘッド31A、31Bは、ステーロッド40に落下方向(Z方向)側からレーザを照射して途中まで切り込みを入れる。次に、レーザヘッド31A、31Bは、レーザ照射を停止してからステーロッド40の落下方向とは反対側へ移動し、その後、ステーロッド40にレーザを照射しながら当該レーザが落下方向へ切り込みに到達するまで移動することが好ましい。
【0079】
これにより、レーザ照射による切断中にステーロッド40の荷重がかかっても切り込みの空間がつぶれる程度の変形に抑制することができる。また、レーザ照射による切断中にステーロッド40の折れ曲がり又は塑性変形するおそれを低減できる。このため、切断空間が広がることによるアシストガスの乱れのおそれが低減される。その結果、レーザヘッド31A、31Bがステーロッド40にレーザを照射しながら落下方向(Z方向)の上方から下方へレーザ切断(下進切断)しても、切断しきれないおそれが抑制される。
【0080】
上述した実施形態は加圧水型原子力プラントの熱交換器である蒸気発生器の伝熱管の切断を例に説明してきたが、沸騰水型、高速炉型及びその他の原子力プラントの管部材にも適用可能である。また、一般の熱交換器、火力発電プラントにも応用可能である。なお、ナトリウム等で原子炉炉心を冷却する高速炉型原子炉では、ナトリウム−水反応による影響を軽減するために、1次ナトリウム系と2次ナトリウム系を設けており、この2系統間の熱交換を行なう中間熱交換器を有する。2次ナトリウムの熱は蒸気発生器において水に熱伝達されて蒸気をえる。本実施形態の熱交換器は、高速炉型原子炉の中間熱交換器、及び蒸気発生器をも解体対象として含んでいる。
【符号の説明】
【0081】
1 胴部
2 伝熱管
2A 切断された伝熱管
3 気水分離器
5 管群外筒
6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G 管支持板
11 管板
13、14 水室
20A 切り株
30 切断装置
31A、31B レーザヘッド
40 ステーロッド
41 ロッド
42 スペーサパイプ
45 接続金物
100 原子力プラント
110 原子炉格納容器
130 加圧器
160 一次冷却材管
210 タービン
220 発電機
230 復水器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管と、前記伝熱管の端部が挿入され固定される管板と、前記伝熱管が支持される複数の管支持板と、隣り合う前記管支持板の位置を規制する中実棒部材と、を有する熱交換器を横置きした状態で前記伝熱管を切断する熱交換器の解体処理方法であって、
切断用のレーザを照射するレーザヘッドが、前記レーザを照射しながら前記中実棒部材の落下方向へ移動する過程で、前記管支持板と前記中実棒部材とを切り離すことを特徴とする熱交換器の解体処理方法。
【請求項2】
前記管支持板と前記中実棒部材とを切り離す前又は後に、
前記レーザヘッドが前記レーザを照射しながら前記落下方向と逆向きへ移動する過程で、隣り合う前記管支持板間、又は前記管支持板と管板との間のいずれかに支持された前記伝熱管を切断する請求項1記載の熱交換器の解体処理方法。
【請求項3】
前記レーザヘッドは、前記中実棒部材の一部を残して切断し、切断された前記中実棒部材が落下した後に、前記管支持板と残存する前記中実棒部材と切り離す請求項1又は2に記載の熱交換器の解体処理方法。
【請求項4】
前記中実棒部材は、棒状部材と、前記棒状部材と前記管支持板とを接続する接続部材と、を含み、前記レーザヘッドは、前記接続部材を残して前記棒状部材を切断し、前記棒状部材が落下した後に、前記管支持板と前記接続部材と切り離す請求項1又は2に記載の熱交換器の解体処理方法。
【請求項5】
前記レーザヘッドは、
前記中実棒部材に前記落下方向側からレーザを照射して途中まで切り込みを入れ、
次に、レーザ照射を停止してから前記中実棒部材の落下方向とは反対側へ移動し、
その後、前記中実棒部材にレーザを照射しながら当該レーザが前記切り込みに到達するまで前記落下方向へ移動する請求項1から4のいずれか1項に記載の熱交換器の解体処理方法。
【請求項6】
前記中実棒部材は、棒状部材と、前記棒状部材と前記管支持板とを接続する接続部材と、を含み、
前記レーザヘッドは、前記接続部材に前記落下方向側からレーザを照射して途中まで切り込みを入れ、レーザ照射を停止してから前記接続部材の落下方向とは反対側へ移動し、その後、前記接続部材にレーザを照射しながら当該レーザ前記切り込みに到達するまで前記落下方向へ移動する請求項1から4のいずれか1項に記載の熱交換器の解体処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9−1】
image rotate

【図9−2】
image rotate

【図9−3】
image rotate

【図9−4】
image rotate

【図10−1】
image rotate

【図10−2】
image rotate

【図10−3】
image rotate

【図10−4】
image rotate

【図10−5】
image rotate

【図10−6】
image rotate

【図10−7】
image rotate


【公開番号】特開2012−167908(P2012−167908A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31433(P2011−31433)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】