熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材

【課題】高親水持続性、耐汚染性、金型磨耗性に優れたアルミニウム塗装板を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金基材と、当該基材の一方の面に親水性塗膜を形成し、前記親水性塗膜が、塗膜中にZr化合物の少なくとも1種を用いて金属架橋させたポリアクリル酸またはポリメタクリル酸またはポリヒドロキシアクリル酸あるいはその塩、またはエステルの内の1種以上あるいはそれらの共重合体からなる有機樹脂を5.0〜30wt%含有し、粒子径0.004〜0.100μmを有するシリカを5.0〜40wt%含有し、平均分子量 1000〜40000であるポリエチレングリコールを30〜70wt%含有し、平均膜厚を0.01〜15.0μmとしたことを特徴とする親水性および潤滑性に優れた熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム材の表面に高親水持続性、耐汚染性、金型磨耗性に優れた高親水性塗膜を形成したアルミニウム塗装板、ならびに、当該塗装板から加工成形される、例えば熱交換器に用いられるプレコートアルミニウムフィン材に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料の表面は親水性に乏しいため、熱交換器のフィン材や印刷の平板印刷版材には、表面に親水性塗膜が被覆されたものが使用されている。以下、空調機を例に挙げてその熱交換器のフィン材の場合について述べることとする。
【0003】
最近の空調機用熱交換器は、軽量化のために熱効率の向上とコンパクト化が要求され、フィン間隔をでき得る限り狭くする設計が取り入れられている。空調機用熱交換器では、冷房運転中に空気中の水分がアルミニウムフィン材の表面に凝縮水となって付着する。金属材料の表面は、一般に親水性に乏しいため、暖房時の室外機では、大気中の存在する水分が、フィン表面に付着し、霜となって凍りつき、フィン材間の空気の流れが妨げられることにより、通風抵抗が増大してしまう。そこで、室外熱交換器に付着した霜を融解するために、室外熱交換器に高温の冷媒を流す除霜運転が必要となる。この場合、室内熱交換器は、温度が低下し、室内を暖めるべく空気を得られなくなることになるため、このフィン表面に付着した霜を迅速に除去する必要がある。
【0004】
フィン材表面の霜を迅速に排除するための方法として、(1)アルミニウムフィン材表面に高親水性塗膜を形成し、融解した霜を流下せしめる方法、(2)アルミニウムフィン材表面に撥水性被膜を形成し、霜を表面に付着させないようにする方法、が考えられるが、(2)の方法は、現時点では極めて困難である。一方、(1)の方法は、親水性を得るために表面に被膜を形成するものであり、このような高親水性塗膜によって、アルミニウムフィン材表面における霜の排除が迅速に行われる。
従来から、親水性塗膜の形成方法が種々提案され、実用化されている。例えば、アルミニウム材表面にアルカリ珪酸塩+樹脂塗膜を形成させる方法(下記特許文献1)、親水性アクリル樹脂、疎水性アクリル及びシリカを含有する親水性塗膜を形成する方法(下記特許文献2)等が提案されている。
【0005】
しかしながら、親水性を付与するために、アルカリ珪酸塩の潤滑性被膜を形成させる方法やコロイダルシリカを含有する親水性塗膜を形成する方法は、親水性の経時的な持続性に乏しいこと、ならびに、素材に塗布されこれをフィンに加工する際に、潤滑性被膜硬度が高いために、金型の磨耗が大きく、フィン材にクラックが発生し易い問題があった。
このような金型摩耗やクラック発生等の欠点のない潤滑性被膜を形成させる塗料も提案されている(下記特許文献3〜6)。このような塗料組成物として、例えばポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、セルロース系樹脂等の水溶性の親水性樹脂を含む親水性塗料組成物や添加剤としてカーボンブラックを含有した塗膜を設けた材料等が挙げられている。
【0006】
しかしながら、ポリビニルアルコール系樹脂等によって構成される有機系親水性塗膜では、室外機などに用いると、大気中に漂っている汚染物が塗膜表面に付着したり、太陽光中の紫外線等による樹脂劣化が生じ、高親水性を維持することが出来なかった。


【特許文献1】特許3335285号
【特許文献2】特許2880308号
【特許文献4】特開平5−302042号公報
【特許文献5】特開平9−14889号公報
【特許文献6】特開2008−1080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、プレコートフィン材等の熱交換器用アルミニウム材であって、高親水持続性、潤滑性、耐汚染性、金型磨耗性に優れたアルミニウム塗装板の開発について鋭意検討してきた。その結果、アルミニウム又はアルミニウム合金の基材の少なくとも一方の面に、特定の樹脂、シリカ及び特定のカーボンブラックを含有する親水性塗膜を設けたアルミニウム塗装板が、高親水持続性、潤滑性、耐汚染性、金型磨耗性のいずれにおいても優れた性能を発揮することを見出し、本発明を完成した。
本発明の目的は、アルミニウム又はアルミニウム合金の基材表面に高親水持続性、潤滑性、耐汚染性、金型磨耗性において優れた性能を発揮する親水性塗膜を備えたアルミニウム塗装板、ならびに、このようなアルミニウム塗装板を用いた、例えば熱交換器用のプレコートアルミニウムフィン材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材と、該基材の少なくとも一方の面に形成した親水性塗膜とを備えたアルミニウム塗装板であって、
前記親水性塗膜が、塗膜中にZr化合物の少なくとも1種を用いて金属架橋させたポリアクリル酸またはポリメタクリル酸またはポリヒドロキシアクリル酸あるいはその塩、またはエステルの内の1種以上あるいはそれらの共重合体からなる有機樹脂5.0〜30wt%、
粒子径0.004〜0.100μmを有するシリカ5.0〜40wt%、
平均分子量 1000〜40000であるポリエチレングリコール30〜70wt%からなり、
該親水性塗膜の平均膜厚が0.01〜15.0μmであることを特徴とする親水性および潤滑性に優れた熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材
【0009】
前記親水性塗膜に一次粒子径0.012〜0.040μmを有するカーボンブラック3.0〜30wt%含有することを特徴とする親水性および潤滑性に優れた熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材。
【0010】
前記カーボンブラックが、カルボキシル基、水酸基及びこれらの塩から選択される少なくとも一種を有する芳香族化合物が表面に付着しているものであり、カーボンブラック100重量部に対して芳香族化合物が0.5〜100重量部付着している、請求項2に記載の熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材。
【0011】
前記芳香族化合物がフミン酸類である熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材。
【0012】
前記カーボンブラックと前記シリカとの比が、(カーボンブラック量):(シリカ微粒子量)=100:1〜100である熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材
【0013】
前記アルミニウム材の表面に、クロム系又は、ジルコニウム系の化成皮膜が形成され、該化成皮膜に金属元素換算にて2〜50mg/m2の金属が含有されていることを特徴とする、熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアルミニウム塗装板は、アルミニウム又はアルミニウム合金の基材表面に高親水持続性、潤滑性、耐汚染性、金型磨耗性において優れた性能を発揮し、これを用いて製造したプレコートアルミニウムフィン材を用いた例えば熱交換器は、長期に亘って優れた熱交換効率を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
アルミニウム塗装板
本発明に係るアルミニウム塗装板は、アルミニウム又はアルミニウム合金の基材と、当該基材の少なくとも一方の面に形成した親水性塗膜とを備える。
【0016】
アルミニウム基材
本発明で用いる基材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材である。以下において、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる基材を、単に「アルミニウム材」と記す。なお、アルミニウム以外の金属を基材に用いることもできる。
更に、アルミニウム材に耐食性下地塗膜を形成したものも用いることができる。耐食性下地塗膜としては、化成皮膜、耐食性有機塗膜、陽極酸化塗膜、ベーマイト塗膜等が挙げられ、いずれの耐食性下地塗膜を用いてもよい。耐食性、密着性、経済性の観点から、化成皮膜と有機耐食性塗膜を用いるのが好ましい。
化成処塗膜としては、クロム系、ジルコニウム系の化成皮膜が用いられるが、耐食性、被膜密着性の観点からクロム系の化成皮膜が好ましい。化成皮膜の形成方法としては、塗布型、電解型、反応型の化成処理方法等が用いられるが、いずれの方法を用いてもよい。乾燥温度も任意である。上記化成皮膜の形成方法のうち、成形性、被膜密着性、耐食性に優れた塗布型クロメート法によるのが好ましい。この場合の塗布量はCr元素換算で2〜50mg/mである。塗布量がCr元素換算で2mg/m未満では、十分な耐食性と被膜密着性が得られない。また、50mg/mを超えても耐食性や被膜密着性の効果が飽和し経済性に欠ける。好ましい塗布量はCr元素換算で5〜15mg/mである。
【0017】
親水性塗膜
本発明の親水性塗膜は、親水性樹脂成分として有機/無機複合系によって構成されうる。その中でも、樹脂中にZr化合物の少なくとも1種を用いて金属架橋させたポリアクリル酸またはポリメタクリル酸またはポリヒドロキシアクリル酸あるいはその塩、またはエステルの内の1種以上あるいはそれらの共重合体からなる有機樹脂、平均分子量 1000〜40000であるポリエチレングリコールからなる有機樹脂及び粒子径粒子径0.004〜0.100μmを有するシリカを含むことが好ましい。
本発明のアルミニウム材面に親水性塗膜を形成するには、アルミニウム材表面又はアルミニウム材表面に形成した耐食性下地塗膜表面に、親水性塗膜用の液状の被膜組成物を塗装(塗布)しこれを焼付けることが好ましい。
本発明では、それぞれの塗膜成分を含んだ塗膜組成物を用いることができる。
親水性塗膜中に存在するZr化合物の少なくとも1種を用いて金属架橋させたポリアクリル酸またはポリメタクリル酸またはポリヒドロキシアクリル酸あるいはその塩、またはエステルの内の1種以上あるいはそれらの共重合体からなる有機樹脂は、上記のアクリル系樹脂とZrを含む化合物を金属架橋することにより、塗膜中に存在できうる。
前記のアクリル系樹脂としては、α、βモノエチレン系不飽和単量体とこれに重合可能な単量体との共重合体やブロック重合体、或いは、α、βモノエチレン系不飽和単量自体の重合体からなる樹脂が用いられる。
α、βモノエチレン系不飽和単量体としては、例えばアクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸2エチルへキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2エチルブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸3エトキシプロピル等);メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nへキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸デシルオクチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2メチルへキシル、メタクリル酸3メトキシブチル等);アクリロニトリル;メタクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニル;ビニルケトン;ビニルトルエン;及びスチレン等が用いられる。
上記α、βモノエチレン系不飽和単量体と共重合し得る単量体とは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、エチレン、トルエン、プロピレン、アクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2ヒドリキシエチル、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、Nメチロールアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等が用いられる。
【0018】
上記のアクリル系樹脂にジルコニウム化合物を金属架橋されることにより、親水性塗膜の親水性低下を防ぐと共に耐食性、耐透水性を向上させる。ジルコニウム化合物は、ジルコニウムを含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、フッ化ジルコニウム(ジルコニウムフッ化水素酸)、フッ化ジルコニウムアンモニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、硝酸ジルコニウム等を用いる。分散性、塗装性、製造時の臭気発生防止などの観点より、炭酸ジルコニウムカリウムを用いることが好ましい。これらのジルコニウム化合物は、1種単独で用いても、或いは、2種以上を混合して用いてもよい。ジルコニウム化合物は、アクリル樹脂成分に100重量部に対して、5〜40重量部が好ましい。5重量部未満であると、親水性を低下してしまい、40重量部を超えても、各効果が飽和し、不経済となる。
【0019】
親水性塗膜中に存在するアクリル系樹脂量は、5.0〜30wt%である。5.0wt%未満では親水性塗膜の密着性を十分確保できなく、30wt%を超えると、親水性を阻害することになる。
又、得られる被膜の耐水溶解性を向上させるなどの目的で必要に応じてその他の架橋剤を配合されることができる。このような架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、ポリエポキシ化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、チタンキレートなどの金属キレート化合物などを挙げることができる。
【0020】
本発明において、高親水性組成物の樹脂成分を構成するシリカとしては、いわゆるシリカゾル又は微粉状シリカのいずれかの粒子を塗膜中に存在させてもよく、粒子径が0.004〜0.100μm、好ましくは0.009〜0.070μmである。粒子径が0.004μm未満であると、親水性が飽和する上、工業上、不経済となる。0.100μmを超えると、親水持続性を劣化させる。
【0021】
塗料を用いて、親水性塗膜を形成させる場合、通常、水分散液として供給されているものをそのまま使用するか、或いは、微粉状シリカを水に分散させて使用することができる。本発明において、シリカは、得られる親水性塗膜に親水性や耐汚染性を付与して水接触角を低下させる成分として作用する。
【0022】
親水性塗膜中に存在するシリカ量は、5.0〜40wt%である。5.0wt%未満では親水性等を十分確保できなく、40wt%を超えると、成形性の低下を招く。
本発明において、高親水性塗膜の樹脂成分を構成するポリエチレングリコールについては、主に塗膜の最表面に形成され、成形の際、潤滑剤の機能を果たす。ポリエチレングリコールを含有することにより、高親水性塗膜中に内在するシリカの成形性の低下を低減させる効果がある。ポリエチレングリコールとしては、好ましくはその重量平均分子量が1000〜40000、更に好ましくは8000〜25000のポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体等である。平均分子量が1000未満であると、潤滑性を低下してしまい、成形性を不足してしまう。平均分子量は、40000を超えても、潤滑性を飽和する上、工業上の汎用製品として不経済である。
【0023】
親水性塗膜中に存在するポリエチレングリコール量は、30〜70wt%である。30wt%未満では成形性を十分確保できなく、70wt%を超えると、親水性を付与するアクリル系樹脂及びシリカが相対的に少なくなり、親水性を維持することが難しくなる。
【0024】
カーボンブラック
本発明においては、親水性塗膜中にカーボンブラックを含有させることにより、親水性塗膜表面の凹凸が大きくなり、見かけの表面積が増大することにより水の接触角が低下し、脂肪酸などが付着した場合の親水性(耐汚染性)が更に向上する。
本発明に用いるカーボンブラックは公知の方法によって製造することができ、その製造方法に特に制限はないが、例えば、チャンネル法、ローラー法、ファーネス法等によって製造される。また、本発明におけるカーボンブラックの特性に適合する限りにおいて、製造したカーボンブラックに公知の酸化反応等の更なる処理を施してもよい。
本発明では、0.012〜0.040μmの一次粒子径を有するカーボンブラックが用いられる。更に、このような一次粒子径を有するものであって、30〜150cm/100gのDBP吸油量と、60〜300m/gの窒素吸着比表面積とを有するものが好適に用いられる。
カーボンブラックの一次粒子径はカーボンブラックの分散性に影響する。カーボンブラックの一次粒子径は0.012〜0.040μmであり、0.012μm未満であると工業製造上困難である。一方、一次粒子径が0.040μmを超えると、上記被膜組成物の十分な保存安定性と分散性が得られず、これにより親水性が劣ることになる。なお、一次粒子径は、顕微鏡法等の公知方法によって測定される。一般的に使われている通常のカーボンブラックの場合、被膜組成中での分散がしづらく、好ましくは0.025μm〜0.040μm、より好ましくは0.025〜0.035μmのものが用いられる。また、一次粒子径が0.025μm未満であると、殆どの一次粒子が強固な凝集体を形成する。このような凝集体は、親水性塗膜を形成するための溶液状の被膜組成物中で解離しないために、親水性塗膜による親水性が劣ることになるので、一次粒径は0.025〜0.040μmとするのが好ましい。
カーボンブラックは、樹脂3.0〜30wt、好ましくは5.0〜25wtの割合で含有される。カーボンブラック量が3.0wt未満では十分な親水性が得られない。一方、カーボンブラック量が30wtを超えると、アルミニウム塗装板をフィン材等に成形する際にカーボンブラックが親水性塗膜から脱落することがある。
【0025】
芳香族化合物が表面に付着したカーボンブラック
本発明では、カーボンブラックをそのまま用いることができるが、カルボキシル基、水酸基及びこれらの塩から選択される少なくとも一種を有する芳香族化合物を表面に付着したカーボンブラックを用いてもよい。このような芳香族化合物を表面に付着したカーボンブラックは、未付着のものに比べて分散性において更なる効果が認められる。
カルボキシル基を有する芳香族化合物としては、安息香酸、フタル酸等が挙げられる。水酸基を有する芳香族化合物としては、フェノール、クレゾール、2,4,6−トリブロモフェノール、ピクリン酸、ナフトール、カテコール、ピロガロール、酸化ビタミンC等が挙げられる。カルボン酸と水酸基の両方を有する芳香族化合物としては、フミン酸類、サリチル酸等が挙げられる。更に、カルボキシル基や水酸基の塩としては、これらの基にアルカリ金属、アンモニウム又は2価以上の陽イオンが結合した塩が挙げられる。
芳香族化合物としては、安息香酸やフェノール等の単物質をカーボンブラック表面に付着させてもよいが、付着性、薬物の毒性、水溶解性の観点や、界面活性作用、作業時の安定性、更にカーボンブラックの分散性及び親水性を大幅に向上させることが可能なことから、フミン酸類をカーボンブラック表面に付着させるのが好ましい。フミン酸類には天然物質から生成される多様な官能基(カルボキシル基、水酸基を含む)、幅広い分子量のスペクトルが存在することから、界面活性剤としての多様性に富んでいる。
本発明においてフミン酸類とは、フミン酸、フミン酸塩及びこれらの誘導体の塩類をいう。すなわち、堆積物、若年炭類を酸化剤により酸化分解して得られる生成物からアルカリ水溶液で抽出し、酸性水溶液を添加し、沈殿濾過して抽出するフミン酸;このフミン酸とアルカリ金属、アンモニウム又は2価以上の陽イオンと結合したフミン酸塩;前記フミン酸とアルデヒド類、アミン類又はフェノール類とを重縮合させた誘導体のアルカリ金属塩;等が用いられる。本発明で用いるフミン酸類は、これらのいずれかを少なくとも一種用いることができるが、これらに限定されるものではない。
上記芳香族化合物をカーボンブラック表面へ付着する方法としては、例えば、芳香族化合物を溶解又は分散した溶液(溶媒としては、水、水溶液、有機溶媒が用いられる)中にカーボンブラックの粉末を添加し、十分に攪拌混合して均一に分散し懸濁液を生成した後に、カーボンブラックを濾過して乾燥する方法が挙げられる。また、上記カーボンブラック懸濁液を親水性塗膜形成用の樹脂組成物に添加することによっても、親水性塗膜中に均一に分散することはできるが、親水性塗膜中に芳香族化合物が溶出することによって親水性塗膜の親水性が低下することもある。
【0026】
上記芳香族化合物は、カーボンブラック100重量部に対して0.5〜100重量部の量で付着させるのが好ましい。芳香族化合物量が0.5重量部未満であると、カーボンブラックへの付着量が少なく、親水性塗膜形成時におけるカーボンブラックの分散性が十分でなく、芳香族化合物量が100重量部を超えると、親水性塗膜の親水性を劣化させることになる。
【0027】
カーボンブラックとシリカ微粒子の比
上記のカーボンブラック量とシリカ微粒子量の比を(酸化チタン微粒子量):(シリカ微粒子量)=100:1〜100とすることにより、親水性塗膜の親水性、耐汚染性、密着性をバランス良く塗膜性能を両立することができる。
【0028】
添加剤
本発明の親水性塗膜には、必要に応じて、貯蔵中の腐敗防止を目的に有機銅系、有機ヨード系、イミダゾール系、イソチアゾリン系、ピリチオン系、トリアジン系、銀系等の抗菌・抗黴作用を有する防腐剤や、タンニン酸、没食子酸、フイチン酸、ホスフィン酸等の防錆剤;ポリアルコールのアルキルエステル類、ポリエチレンオキサイド縮合物等のレベリング剤;相溶性を損なわない範囲で添加されるポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミド等の充填剤;フタロシアニン化合物等の着色剤;アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩系等の界面活性剤;酸化亜鉛、酸化アルミ(アルミナ)、酸化チタン等の無機酸化物等;の添加剤を添加することができる。
【0029】
親水性塗膜の形成
本発明のアルミニウム材面に親水性塗膜用の液状の被膜組成物を塗装(塗布)しこれを焼付けることにより、親水性塗膜を形成しうる。
このような塗膜は、Zr化合物含有アクリル系樹脂、シリカ及びカーボンブラック必要に応じた上記添加剤を、溶媒に溶解、分散させて調製される。このような溶媒には、各成分を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水等の水性溶媒、アセトン等のケトン系溶剤、エタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル系溶剤;ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル系溶剤、及びエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の一連のグリコールアルキルエーテル系溶剤のエステル化物等が挙げられ、その中でも水性溶媒が好ましく、水が特に好ましい。
被膜組成物の塗布方法としては、ロールコーター法、ロールスクイズ法、ケミコーター法、エアナイフ法、浸漬法、スプレー法、静電塗装法等の方法が用いられ、被膜の均一性に優れ、生産性が良好なロールコーター法が好ましい。ロールコーター法としては、塗布量管理が容易なグラビアロール方式や、厚塗りに適したナチュラルコート方式や、塗布面に美的外観を付与するのに適したリバースコート方式等を採用することができる。また、被膜の乾燥には一般的な加熱法、誘電加熱法等が用いられる。
被膜形成する際の焼付けは、焼付け温度(到達表面温度)が180〜300℃で、焼付け時間が1〜60秒の条件で行うのが好ましい。被膜形成における焼付け温度が180℃未満であったり、焼付け時間が1秒未満である場合には、被膜が十分に形成されず被膜密着性が低下する。焼付け温度が300℃を超えたり、焼付け温度が60秒を超える場合には、被膜成分が変性し、親水性を著しく低下させることになる。
被膜厚さは、例えば熱交換器用のアルミニウム塗装板に形成する場合には、0.01〜15.0μm、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.1〜1.5μmとする必要がある。被膜厚さが0.01μm未満では、所望の高親水持続性、潤滑性、耐汚染性が得られず、15.0μmより厚いとこれら各特性が飽和して不経済となる。
このようにして作製されるアルミニウム塗装板は、その表面にプレス成形加工用の揮発性プレス油を塗布してからスリット加工やコルゲート加工等の成形加工を施すことにより、所望のフィン形状からなるプレコートアルミニウムフィン材が作製される。このようなプレコートアルミニウムフィン材は、例えば空調機用熱交換器のフィン材として好適に用いられるが、フィン材間の結露等を防止する用途であれば、空調機用熱交換器に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1〜1及び比較例1〜7
まず、所定のZr化合物を含有するポリアクリル酸、所定のシリカ、所定のポリエチレングルコール、及びカーボンブラックとして所定の一次粒子径を有する親水性塗膜用の組成物を調製した。親水性塗膜用組成物の溶媒には水を用いた。なお、Zr化合物として、炭酸Zrカリウムを用いた。
アルミニウム材表面には、親水性塗膜を以下のようにして形成した。アルミニウム合金板(1100−H24材、0.100mm厚さ)を弱アルカリ脱脂し、水洗した後に乾燥した。次いで、このように処理したアルミニウム合金板表面に、塗布型クロメート液(日本ペイント社製SAT427)、塗布型ジルコニウム処理液(フッ素−Zr−アクリル樹脂タイプ)を塗布し、180℃で10秒間焼付けし、金属クロム換算にて、クロム付着量が10mg/m2 の塗布型クロメート系の化成皮膜を下地塗膜として形成した。次に、このアルミニウム合金板に、各々の親水性塗膜用組成物をロールコーターにて塗布し、到達板表面温度(PMT)200℃で20秒間焼付けして、表1に示すアルミニウム塗装板を得た
このようにして得られたアルミニウム塗装板について親水性(初期及び持続性)、耐汚染性、密着性、耐食性、成形性(潤滑性及び金型磨耗性)、を後述の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
まず試料を以下のようにして前処理した。各試料を揮発性プレス油(出光興産社製ダフニAF−2A)に1分間浸漬し、これを取り出した後に室温で試料を垂直に30秒間保持して油を切った。次いで、180℃の熱風炉中(大気雰囲気)に2分間投入した後に室温まで冷却した。
【0034】
親水性
ゴニオメーターで純水の接触角を測定した。アルミニウム塗装板を作製した直後の親水性を初期親水性と、乾湿サイクル後の親水持続性を評価した。乾湿サイクルは、作製したアルミニウム塗装板を流量が1リットル/分の水道水に8時間浸漬した後、80℃で16時間乾燥する工程を1サイクルとしてこれを20サイクル行なった。表2中の記号の意味は以下の通りであり、◎及び○を性能を満足する合格とした。
◎:接触角が20°以下であり非常に良好であることを示す。
○:接触角が20゜を越え、かつ30°以下であり、良好であることを示す。
△:接触角が30゜を越え、かつ40゜以下であり、不良であることを示す。
×:接触角が40゜を越え非常に不良であることを示す。
【0035】
耐汚染性
作製したアルミニウム塗装板を前処理し、次いで汚染サイクル処理を実施した。汚染サイクル処理はパルミチン酸蒸気を含む50℃の空気にアルミニウム塗装板を1時間暴露することにより気相中でパルミチン酸を吸着させ、次いで水道水に6時間浸漬後、乾燥機中で乾燥することを1サイクルとし、これを10サイクル実施した。10サイクル後の親水性塗膜表面の接触角を、上記親水性評価と同様の方法で測定した。表2中の記号の意味は以下の通りであり、◎、○を性能を満足する合格とした。
◎:接触角が20°以下であり非常に良好であることを示す。
○:接触角が20゜を越え、かつ40°以下であり、良好であることを示す。
△:接触角が40゜を越え、かつ60゜以下であり、不良であることを示す。
×:接触角が60゜を越え非常に不良であることを示す。
【0036】
密着性
JIS H4001に従った付着性試験を行い、碁盤目におけるテープ剥離後の残存個数を測定した。全て残存した場合(100/100)を合格とした。
【0037】
成形性
(潤滑性)
バウデン式摩擦係数測定器を用い潤滑性を評価した。荷重100g、直径1/2インチステンレス球にて15回往復摺動させた時の動摩擦係数を測定した。評価結果である表2中の記号の意味は以下の通りであり、◎及び○を性能を満足する合格とした。
◎:0.05未満
○:0.05以上0.10未満
△:0.10以上0.15未満
×:0.15以上
【0038】
(金型磨耗性)
実機フィンプレスにてドローレス成形を実施した状況で評価した。成形条件は以下の通りである。揮発性プレスオイル:AF−2C(出光興産)を使用し、しごき率は58%、成形スピードは250spm、10万ショット後の金型のキズの発生状況を確認した。評価結果である表2中の記号の意味は以下の通りであり、○を性能を満足する合格とした。

○:金型にキズを生じていないことを示す。
×:金型にキズを生じていることを示す。

表2に示すように実施例1〜26はいずれも、初期の親水性及び親水持続性、耐汚染性、塗膜密着性、成形性(潤滑性及び金型磨耗性)とも良好であった。また、カーボンブラックを含有することにより、潤滑性に際立って優れている。
これに対し、比較例1では、シリカおよびポリエチレングリコールを含まない塗膜であるため、親水持続性、耐汚染性及び潤滑性、比較例2は、Zr化合物を含まないポリアクリル酸を用い、ポリエチレングリコールを含まない塗膜であるため、親水持続性、潤滑性及ぶ金型磨耗性を満足することは出来なかった。また、比較例3は、シリカを含まない塗膜であるため、耐汚染性を付与することが出来なかった。比較例4は、Zr化合物を含まないポリアクリル酸を用いた塗膜であったため、親水持続性、耐汚染性を満足することは出来なかった。比較例5は、Zr架橋剤の変わりにメラミンを用いたポリアクリル酸を用いた塗膜であったため、初期の親水性、親水持続性、耐汚染性の低下を招いた。比較例6は、塗膜の膜厚が所定膜厚より薄かったため、初期の親水性、親水持続性、耐汚染性を満足することは出来なかった。比較例7は、シリカの粒子径が所定の粒子径より大きかったため、金型磨耗性を満足することが出来なかった。比較例8は、ポリアクリル系樹脂が少なかったため、密着性を満足することは出来なかった。比較例9は、ポリアクリル系樹脂が多かったため、親水性を維持することはできなかった。
比較例10は、シリカの含有量が少なかったため、初期の親水性、親水持続性、耐汚染性を満足することは出来なかった。比較例11は、シリカの含有量が多かったため、金型磨耗性を満足することが出来なかった。比較例12は、ポリエチレングリコールが所定量より少ない塗膜であったため、潤滑性、金型磨耗性を満足することは出来なかった。比較例13は、ポリエチレングリコールが多かったため、親水性に寄与する成分が少なくなったため、親水持続性、耐汚染性を満足することは出来なかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム材と、該基材の少なくとも一方の面に形成した親水性塗膜とを備えたアルミニウム塗装板であって、
前記親水性塗膜が、塗膜中にZr化合物の少なくとも1種を用いて金属架橋させたポリアクリル酸またはポリメタクリル酸またはポリヒドロキシアクリル酸あるいはその塩、またはエステルの内の1種以上あるいはそれらの共重合体からなる有機樹脂5.0〜30wt%、
粒子径0.004〜0.100μmを有するシリカ5.0〜40wt%、
平均分子量 1000〜40000であるポリエチレングリコール30〜70wt%からなり、
該親水性塗膜の平均膜厚が0.01〜15.0μmであることを特徴とする、熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材
【請求項2】
該親水性塗膜に一次粒子径0.012〜0.040μmを有するカーボンブラック3.0〜30wt%含有することを特徴とする請求項1の熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材。
【請求項3】
該カーボンブラックが、カルボキシル基、水酸基及びこれらの塩から選択される少なくとも一種を有する芳香族化合物が表面に付着しているものであり、カーボンブラック100重量部に対して芳香族化合物が0.5〜100重量部付着していることを特徴とする、請求項2の熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材。
【請求項4】
該芳香族化合物がフミン酸類であることを特徴とする請求項3の熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材。
【請求項5】
該カーボンブラックと該シリカとの比が、(カーボンブラック量):(シリカ微粒子量)=100:1〜100であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材
【請求項6】
該アルミニウム材の表面に、クロム系又は、ジルコニウム系の化成皮膜が形成され、該化成皮膜に金属元素換算にて2〜50mg/m2の金属が含有されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の熱交換器用プレコートアルミニウムフィン材。

【公開番号】特開2010−96416(P2010−96416A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267224(P2008−267224)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】