説明

熱交換器

【課題】複数の熱交換器部を有する熱交換器において、熱媒体を循環させる熱媒体循環手段の流量に拘わらず、各熱交換器部を流れる熱媒体の流量を調整可能とする。
【解決手段】冷却水が流れる複数のチューブ2と、チューブ2の長手方向両端部に配置され、複数のチューブ2と連通する第1、第2タンク51、52と、第1タンク51の内部に配置されて、第1空間51Aと第2空間51Bとを仕切る第1仕切部材510と、第2タンク52の内部に配置されて、第1空間52Aと第2空間52Bとを仕切る第2仕切部材520とを備え、第1、第2仕切部材510、520のうち、少なくとも一方には、第1空間51A、52Aと第2空間51B、52Bとを連通させる連通穴523が形成された熱交換器において、連通穴523の開度を調整する開度調整弁524を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の熱交換器部を有する熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関から吸熱した冷却水を冷却する第1ラジエータと、電子部品から吸熱した冷却水を冷却する第2ラジエータとを有する熱交換器が、特許文献1に記載されている。この従来技術では、タンクの内部に、第1ラジエータを構成する第1チューブ群に連通する空間と第2ラジエータを構成する第2チューブ群に連通する空間とを仕切る仕切部材を配置するとともに、当該仕切部材に第1チューブ群に連通する空間と第2チューブ群に連通する空間とを連通させる連通穴を形成している。これにより、第2ラジエータ用のリザーブタンクを廃止して、部品点数の削減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4078766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、内燃機関、電子部品および熱交換器に冷却水を循環させる冷却水ポンプの流量によって、第1ラジエータを流れる冷却水流量および第2ラジエータを流れる冷却水流量が変化してしまう。すなわち、上記従来技術では、内燃機関に供給される冷却水の温度、および電子部品に供給される冷却水の温度を調整できないという問題がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、複数の熱交換器部を有する熱交換器において、熱媒体を循環させる熱媒体循環手段の流量に拘わらず、各熱交換器部を流れる熱媒体の流量を調整可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、熱媒体が流れる複数のチューブ(2)と、チューブ(2)の長手方向両端部に配置され、複数のチューブ(2)と連通する第1、第2タンク(51、52)と、第1タンク(51)の内部に配置されて、複数のチューブ(2)のうち第1チューブ群(2A)に連通する空間と複数のチューブ(2)のうち第2チューブ群(2B)に連通する空間とを仕切る第1仕切部材(510)と、第2タンク(52)の内部に配置されて、第1チューブ群(2A)に連通する空間と第2チューブ群(2B)に連通する空間とを仕切る第2仕切部材(520)とを備え、第1、第2仕切部材(510、520)のうち、少なくとも一方には、第1チューブ群(2A)に連通する空間と第2チューブ群(2B)に連通する空間とを連通させる連通穴(523)が形成された熱交換器において、連通穴(523)の開度を調整する開度調整手段(524)を備えることを特徴としている。
【0007】
これによれば、開度調整手段(524)によって連通穴(523)の開度を調整することができるので、第1チューブ群(2A)を流れる熱媒体の流量と第2チューブ群(2B)を流れる熱媒体の流量とを調整することができる。したがって、熱媒体を循環させる熱媒体循環手段の流量に拘わらず、第1チューブ群(2A)によって構成される熱交換器部を流れる熱媒体の流量、および第2チューブ群(2B)によって構成される熱交換器部を流れる熱媒体の流量を調整することが可能となる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の熱交換器において、第1、第2仕切部材(510、520)のうち、少なくとも第2仕切部材(520)に、連通穴(523)が形成されており、第1タンク(51)には、第1チューブ群(2A)に連通する空間に熱媒体を流入させる流入口(511)と、第2チューブ群(2B)に連通する空間から熱媒体を流出させる流出口(512)とが設けられ、第2タンク(52)には、第1チューブ群(2A)に連通する空間から熱媒体を流出させる流出口(522)が設けられていることを特徴としている。
【0009】
これによれば、第1タンク(51)の流入口(511)から第1チューブ群(2A)に連通する空間に流入した熱媒体は、第1チューブ群(2A)を流通し、第2タンク(52)の第1チューブ群(2A)に連通する空間に流入する。第2タンク(52)の第1チューブ群(2A)に連通する空間に流入した熱媒体は、第2タンク(52)の流出口(522)から流出する、または、連通穴(523)を介して第2タンク(52)の第2チューブ群(2B)に連通する空間に流入する。第2タンク(52)の第2チューブ群(2B)に連通する空間に流入した熱媒体は、第2チューブ群(2B)を流通し、第1タンク(51)の第1チューブ群(2A)に連通する空間に流入した後、流出口(512)から流出する。
【0010】
このため、第1チューブ群(2A)のみを通過した熱媒体を第2タンク(52)の流出口(522)から流出させるとともに、第1チューブ群(2A)および第2チューブ群(2B)の両方を通過した熱媒体を第1タンク(51)の流出口(512)から流出させることができる。これにより、第2タンク(52)の流出口(522)から流出される熱媒体、および第タンク(51)の流出口(512)から流出される熱媒体を異なる温度とすることができる。
【0011】
このとき、開度調整手段(524)によって第2仕切部材(520)に形成された連通穴(523)の開度を調整することで、熱媒体循環手段の流量に拘わらず、第1チューブ群(2A)を流れる熱媒体の流量、および第2チューブ群(2B)を流れる熱媒体の流量を調整することができるので、第2タンク(52)の流出口(522)から流出される熱媒体の温度、および第1タンク(51)の流出口(512)から流出される熱媒体の温度を調整することが可能となる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の熱交換器において、開度調整手段は、第1、第2タンク(51、52)の長手方向に対して垂直方向に延びる回転軸(524c)を中心として回転するロータリバルブで構成されていることを特徴としている。これによれば、ロータリバルブを駆動させるための駆動手段(525)を第1、第2タンク(51、52)に配置することができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1または2に記載の熱交換器において、開度調整手段は、第1、第2タンク(51、52)の長手方向に対して垂直方向に変位するポペットバルブで構成されていることを特徴としている。これによれば、ポペットバルブを駆動させるための駆動手段を第1、第2タンク(51、52)に配置することができる。
【0014】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る熱交換器1を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る熱交換器1が適用される冷却システムを示す模式図である。
【図3】(a)は第1実施形態における第2タンク52の要部を示す拡大断面図、(b)は流量調整弁524を示す拡大斜視図である。
【図4】第2実施形態に係る熱交換器1が適用される冷却システムを示す模式図である。
【図5】第3実施形態に係る熱交換器1が適用される冷却システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図3に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る熱交換器を、内燃機関(エンジン)および走行用電動モータから走行用駆動力を得る、いわゆるハイブリッド自動車の熱交換器に適用した場合を例として説明する。
【0018】
図1は本第1実施形態に係る熱交換器1を示す斜視図、図2は本第1実施形態に係る熱交換器1が適用される冷却システムを示す模式図である。図1に示すように、本実施形態の熱交換器1は、複数のチューブ2およびフィン3からなるコア部4と、コア部4の両端部に組み付け配置される第1、第2タンク51、52とを有している。
【0019】
チューブ2は熱媒体としての冷却水が流れる管であり、このチューブ2は、空気流れ方向が長径方向と一致するように扁平状に形成されているとともに、その長手方向が水平方向に一致するように垂直方向に複数本平行に配置されている。フィン3は、波状に成形されるとともに、チューブ2の両側の扁平面に接合されており、このフィン3により空気との伝熱面積を増大させてチューブ2内を流通する冷却水と空気との熱交換を促進している。
【0020】
第1、第2タンク51、52は、チューブ2の長手方向(以下、チューブ長手方向という)の両端部にてチューブ長手方向と直交する方向に延びて複数のチューブ2と連通するものである。
【0021】
また、コア部4おけるチューブ2の積層方向の両端部には、コア部4を補強するサイドプレート6が設けられている。サイドプレート6は、チューブ長手方向と平行に延びてその両端部が第1、第2タンク51、52に接続されている。
【0022】
コア部4は、第1、第2タンク51、52の後述する第1、第2仕切部材510、520を境に2つに分割されている。本実施形態では、コア部4は、内燃機関101(図2参照)内を循環して内燃機関101を冷却する冷却水と空気とを熱交換して冷却水を冷却する第1ラジエータ部10と、電動モータおよびインバータ回路等の電気部品102(図2参照)内を循環して電気部品102を冷却する冷却水を冷却する第2ラジエータ部20とを構成している。
【0023】
第1タンク51の内部には、複数のチューブ2のうち第1ラジエータ部10を構成する第1チューブ群2Aに連通する空間(以下、第1空間51Aという)と複数のチューブ2のうち第2ラジエータ部20を構成する第2チューブ群2Bに連通する空間(以下、第2空間51Bという)とを仕切る第1仕切部材510が配置されている。第2タンク52の内部には、第1チューブ群2Aに連通する空間(以下、第1空間52Aという)と第2チューブ群2Bに連通する空間(以下、第2空間52Bという)とを仕切る第2仕切部材520が配置されている。
【0024】
第1タンク51には、第1空間51Aに冷却水を流入させる流入口511と、第2空間51Bから冷却水を流出させる流出口512とが設けられている。また、第2タンク52には、第1空間52Aから冷却水を流出させる流出口522が設けられている
次に、第2タンク52の詳細な構成について説明する。図3(a)は本第1実施形態における第2タンク52の要部を示す拡大断面図、図3(b)は後述する流量調整弁524を示す拡大斜視図である。
【0025】
図2および図3に示すように、第2タンク52の第2仕切部材520には、第1空間52Aと第2空間52Bとを連通させる連通穴523が形成されている。また、第2タンク52には、連通穴523の開度を調整する開度調整手段としての流量調整弁524が設けられている。
【0026】
流量調整弁524は、第2タンク52の長手方向(チューブ2の積層方向)に対して垂直方向に回転するロータリバルブで構成されている。すなわち、流量調整弁524は、第2タンク52の長手方向に対して垂直方向に延びる回転軸524cを中心として回転するロータリバルブで構成されている。
【0027】
具体的には、流量調整弁524は、円柱状の弁体524aを有しており、弁体524aの側面には凹部524bが形成されている。弁体524aの軸方向(図3(a)の紙面左右方向)の端部には回転軸524cが一体に設けられている。そして、回転軸524cを第2タンク52の外部に突出させ、回転軸524cにより第2タンク52の外部から弁体524aを回転操作できるように構成されている。
【0028】
また、回転軸524cは、駆動手段としての電動モータ525に接続されている。電動モータ525は、後述する制御装置107から出力される制御信号によって、その作動(回転)が制御される。そして、この回転制御によって、連通穴523の開度、すなわち連通穴523を流通する冷却水の流量が変更される。
【0029】
続いて、本実施形態の熱交換器1が適用される冷却システムについて、図2を参照して説明する。
【0030】
本実施形態の冷却システムは、内燃機関101から流出した冷却水を熱交換器1の第1タンク51の流入口511へ導く第1通路71と、熱交換器1の第2タンク52の流出口522から流出した冷却水を内燃機関101へ導く第2通路72と、熱交換器1の第1タンク51の第1流出口512から流出した冷却水を電子部品102へ導く第3通路73と、電子部品102から流出した冷却水を第2通路72を流れる冷却水と合流させる第4通路74とを有している。
【0031】
内燃機関101の冷却水入口側には、第1〜第4通路71〜74に冷却水流れを形成するウォータポンプ103が設けられている。ウォータポンプ103は、後述する制御装置107から出力される制御信号によって、その作動が制御される電動式のポンプである。
【0032】
第2通路72における第4通路74との合流部より冷却水流れ上流側には、サーモスタット弁104が設けられている。サーモスタット弁104は、冷却水温度が所定温度以下のとき、すなわち内燃機関101の暖機が必要なときに閉じて、第1ラジエータ部10を通過した冷却水が直接内燃機関101へ流入することを防止する。
【0033】
また、冷却システムは、熱交換器1内の冷却水の体積変化を吸収するリザーブタンク105を有している。このリザーブタンク105は、熱交換器1の第1タンク51の第1空間51Aに冷却水を注入または補充する注入口106に接続されている。この注入口106は、周知の加圧型のラジエータキャップ(図示せず)にて閉塞されている。
【0034】
制御手段としての制御装置107は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された機器の作動を制御する。出力側に接続された機器としては、ウォータポンプ103、流量調整弁524の電動モータ525等が挙げられる。
【0035】
また、制御装置107の入力側には、各センサ群からの検出信号が入力される。このセンサ群としては、内燃機関101出口側の冷却水温度を検出する内燃機関温度センサ81、電子部品102入口側の冷却水温度を検出する電子部品温度センサ82等が挙げられる。
【0036】
本実施形態の冷却システムでは、第1タンク51の流入口511から第1空間51Aに流入した冷却水が、第1ラジエータ部10を流れて第2タンク52の第1空間52Aに流入する。第2タンク52の第1空間52Aに流入した冷却水の一部は、第2タンク52の流出口522から流出し、内燃機関101へ向かって流れる。これにより、内燃機関101に対して、第1ラジエータ部10で冷却された冷却水を供給することができる。
【0037】
一方、第2タンク52の第1空間52Aに流入した冷却水のうち、流出口522から流出した冷却水を除いた残りの冷却水は、連通穴523を介して第2タンク52の第2空間52Bに流入し、第2ラジエータ部20を流れて第1タンク51の第2空間51Bに流入する。第1タンク51の第2空間51Bに流入した冷却水は、第1タンク51の流出口512から流出し、電子部品102へ向かって流れる。これにより、電子部品102に対して、第1ラジエータ部10および第2ラジエータ部20の両方で冷却された冷却水を供給することができる。このため、内燃機関101よりも低温に保つ必要がある電子部品102を適切に冷却することができる。
【0038】
このとき、内燃機関温度センサ81により検出された内燃機関101出口側の冷却水温度や、電子部品温度センサ82により検出された電子部品102入口側の冷却水温度に基づいて、流量調整弁524の開度、すなわち連通穴523を流通する冷却水の流量の流量が調整される。これにより、ウォータポンプ103の流量に拘わらず、第1ラジエータ部10を流れる冷却水の流量、および第2ラジエータ部20を流れる冷却水の流量を調整することができる。このため、第2タンク52の流出口522から流出されて内燃機関101に供給される冷却水の温度、および第1タンク51の流出口512から流出されて電子部品102に供給される冷却水の温度を調整することができる。
【0039】
また、流量調整弁524を、第2タンク52の長手方向に対して垂直方向に延びる回転軸524cを中心として回転するように構成することで、駆動手段である電動モータ525を第2タンク52の外部に配置することができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1タンク51の第1仕切部材510にも連通穴を形成するとともに、その連通穴の開度を調整する開度調整手段を設けた点が異なるものである。
【0041】
図4は本第2実施形態に係る熱交換器1が適用される冷却システムを示す模式図である。図4に示すように、第1タンク51の第1仕切部材510には、第1空間51Aと第2空間51Bとを連通させる連通穴(図示せず)が形成されている。また、第1タンク51には、連通穴の開度を調整する開度調整手段としての流量調整弁514が設けられている。
【0042】
流量調整弁514は、第2タンク52の流量調整弁524とほぼ同様に構成されているため、説明を省略する。また、流量調整弁514の電動モータ(図示せず)は、制御装置107から出力される制御信号によって回転制御される。そして、この回転制御によって、連通穴の開度、すなわち連通穴を流通する冷却水の流量が変更される。
【0043】
本実施形態の冷却システムでは、制御装置107は、内燃機関温度センサ81により検出された内燃機関101出口側の冷却水温度が所定温度より高い場合、内燃機関101の暖機は不要と判断し、第1タンク51の流量調整弁514を全閉状態とするとともに、第2タンク52の流量調整弁524の開度を、内燃機関101出口側の冷却水温度や電子部品102入口側の冷却水温度に基づいて変化させる。
【0044】
これにより、ウォータポンプ103の流量に拘わらず、第1ラジエータ部10を流れる冷却水の流量、および第2ラジエータ部20を流れる冷却水の流量を調整することができる。さらに、第1ラジエータ部10および第2ラジエータ20の両方で放熱させた冷却水を電子部品102へ供給することができるので、内燃機関101よりも低温に保つ必要がある電子部品102を適切に冷却することができる。
【0045】
一方、制御装置107は、内燃機関温度センサ81により検出された内燃機関101出口側の冷却水温度が所定温度以下の場合、内燃機関101の暖機が必要と判断し、第1タンク51の流量調整弁514を全開状態とするとともに、第2タンク52の流量調整弁524を全閉状態とする。
【0046】
このとき、サーモスタット弁104により第2通路72が閉じられているため、第1流入口511から第1タンク51の第1チューブ群2Aに連通する空間51Aに流入した冷却水は第1ラジエータ部10を流れることなく、連通穴(図示せず)を介して、第2チューブ群2Bに連通する空間51Bに流入する。そして、第2チューブ群2Bに連通する空間51Bに流入は、電子部品102を流れることにより加熱された後、内燃機関101に流入する。
【0047】
このため、第1タンク51の内部空間(第1チューブ群2Aに連通する空間51Aおよび第2チューブ群2Bに連通する空間51B)を、第1ラジエータ部10を迂回させるバイパス通路として利用することができる。したがって、内燃機関101の暖機を促進することが可能となる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図5に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1タンク51に冷却水を流入させる流入口を2つ設けるとともに、第2タンク52に冷却水を流出させる流出口を2つ設けた点が異なるものである。
【0049】
図5は本第3実施形態に係る熱交換器1が適用される冷却システムを示す模式図である。図5に示すように、第1タンク51の第1仕切部材510には、第1空間51Aと第2空間51Bとを連通させる連通穴(図示せず)が形成されている。また、第1タンク51には、連通穴の開度を調整する開度調整手段としての流量調整弁514が設けられている。
【0050】
流量調整弁514は、上記第1実施形態の第2タンク52の流量調整弁524とほぼ同様に構成されているため、説明を省略する。また、流量調整弁514の電動モータ(図示せず)は、制御装置(図示せず)から出力される制御信号によって回転制御される。そして、この回転制御によって、連通穴の開度、すなわち連通穴を流通する冷却水の流量が変更される。
【0051】
第1タンク51には、第1タンク51の第1空間51Aに冷却水を流入させる第1流入口511と、第1タンク51の第2空間51Bに冷却水を流入させる第2流入口513とが設けられている。第2タンク52には、第2タンク52の第1空間52Aから冷却水を流出させる第1流出口522と、第2タンク52の第2空間52Bから冷却水を流出させる第2流出口523とが設けられている。
【0052】
第1タンク51の第1流入口511には、第1通路71が接続されており、内燃機関101から流出した冷却水が第1タンク51の第1空間51Aに流入するように構成されている。第2タンク52の第1流出口522には、第2通路72が接続されており、第2タンク52の第1空間52Aから流出した冷却水が内燃機関101に供給されるように構成されている。
【0053】
第1タンク51の第2流入口513には、第4通路74が接続されており、電子部品102から流出した冷却水が第1タンク51の第2空間51Bに流入するように構成されている。また、第2タンク52の第2流出口523には、第3通路73が接続されており、第2タンク52の第2空間52Bから流出した冷却水が電子部品102に供給されるように構成されている。
【0054】
本実施形態の第4通路74は、第2通路72に合流していないので、電子部品102を冷却した後の冷却水が直接熱交換器1に流入するようになっている。したがって、本実施形態の冷却システムでは、内燃機関101を冷却するための冷却水が循環する内燃機関用冷却回路91と、電子部品102を冷却するための冷却水が循環する電子部品用冷却回路92とが別々に構成されている。
【0055】
第2通路72におけるサーモスタット弁104の出口側は、内燃機関用冷却回路91に冷却水を循環させる第1ウォータポンプ103が配置されている。第4通路74には、電子部品用冷却回路92に冷却水を循環させる第2ウォータポンプ108が配置されている。第1、第2ウォータポンプ103、108は、制御装置(図示せず)から出力される制御信号によって、その作動が制御される電動式のポンプである。
【0056】
本実施形態の冷却システムでは、内燃機関101の作動時に、第1タンク51の流量調整弁514がほぼ全閉状態になる。これにより、第1タンク51において、第1流入口511から第1空間51A内に流入した冷却水と、第2流入口513から第2空間51Bに流入した冷却水とが混合されることを抑制できる。なお、第1タンク51の流量調整弁514は、電子部品用冷却回路92内の冷却水の体積変化を吸収するために、微小開度開けておく必要がある。
【0057】
そして、第1タンク51の第1空間51Aに流入した冷却水は、第1ラジエータ部10を流れて第2タンク52の第1空間52Aに流入する。第2タンク52の第1空間52Aに流入した冷却水は、第1流出口522から流出し、内燃機関101に向かって流れる。これにより、内燃機関101に対して、第1ラジエータ部10で冷却された冷却水を供給することができる。
【0058】
一方、第1タンク51の第2空間51Bに流入した冷却水は、第2ラジエータ部20を流れて第2タンク52の第2空間52Bに流入する。第2タンク52の第2空間52Bに流入した冷却水は、第2流出口523から流出し、電子部品102に向かって流れる。これにより、電子部品102に対して、第2ラジエータ部20で冷却された冷却水を供給することができる。
【0059】
また、本実施形態の冷却システムでは、内燃機関101の停止時に、リザーブタンク105から第1タンク51の第1空間51Aに冷却水が注入されるように構成されている。このため、内燃機関101の停止時に、第1タンク51の流量調整弁514を全開状態とすることで、第1タンク51の第2空間51Bにも、連通穴を介して冷却水を注入することができる。すなわち、電子部品用冷却回路92内に冷却水を注入することができる。
【0060】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0061】
(1)上記各実施形態では、開度調整手段としてロータリバルブを用いた例について説明したが、これに限らず、開度調整手段として、第1、第2タンク51、52の長手方向に対して垂直方向に変位するポペットバルブを用いてもよい。これにより、ポペットバルブを駆動させるための駆動手段を第1、第2タンク51、52の外部に配置することができる。
【0062】
(2)上記各実施形態では、本発明の熱交換器1を、内燃機関101から吸熱した冷却水を放熱させる第1ラジエータ部10、および電子部品102から吸熱した冷却水を放熱させる第2ラジエータ部20を有する熱交換器に適用したが、これに限らず、本発明は複数の熱交換器部を有する熱交換器一般に広く適用可能であることはもちろんである。
【0063】
(3)上記各実施形態では、第1、第2ウォータポンプ103、108として、制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される電動式のポンプを用いた例について説明したが、これに限らず、機械式のポンプを用いてもよい。
【符号の説明】
【0064】
2 チューブ
2A 第1チューブ群
2B 第2チューブ群
51 第1タンク
52 第2タンク
510 第1仕切部材
520 第2仕切部材
523 連通穴
524 流量調整弁(流量調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が流れる複数のチューブ(2)と、
前記チューブ(2)の長手方向両端部に配置され、前記複数のチューブ(2)と連通する第1、第2タンク(51、52)と、
前記第1タンク(51)の内部に配置されて、前記複数のチューブ(2)のうち第1チューブ群(2A)に連通する空間と前記複数のチューブ(2)のうち第2チューブ群(2B)に連通する空間とを仕切る第1仕切部材(510)と、
前記第2タンク(52)の内部に配置されて、前記第1チューブ群(2A)に連通する空間と前記第2チューブ群(2B)に連通する空間とを仕切る第2仕切部材(520)とを備え、
前記第1、第2仕切部材(510、520)のうち、少なくとも一方には、前記第1チューブ群(2A)に連通する空間と前記第2チューブ群(2B)に連通する空間とを連通させる連通穴(523)が形成された熱交換器であって、
前記連通穴(523)の開度を調整する開度調整手段(524)を備えることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記第1、第2仕切部材(510、520)のうち、少なくとも前記第2仕切部材(520)に、前記連通穴(523)が形成されており、
前記第1タンク(51)には、前記第1チューブ群(2A)に連通する空間に熱媒体を流入させる流入口(511)と、前記第2チューブ群(2B)に連通する空間から熱媒体を流出させる流出口(512)とが設けられ、
前記第2タンク(52)には、前記第1チューブ群(2A)に連通する空間から熱媒体を流出させる流出口(522)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記開度調整手段は、前記第1、第2タンク(51、52)の長手方向に対して垂直方向に延びる回転軸(524c)を中心として回転するロータリバルブで構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記開度調整手段は、前記第1、第2タンク(51、52)の長手方向に対して垂直方向に変位するポペットバルブで構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−202932(P2011−202932A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73144(P2010−73144)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】