説明

熱伝導性両面粘着シート

【課題】 被着体同士を貼合せたり剥離させたりする際の作業性を向上させることができる熱伝導性両面粘着シートを提供する。
【解決手段】 熱伝導性物質とアクリルポリマー成分とが含有されている熱伝導性粘着剤組成物がシート状に成形されてなる粘着剤層を備える熱伝導性両面粘着シートであって、被着体に対する一方の面の粘着力が他方の面の粘着力よりも強くなるように、前記一方の面を形成する強粘着剤層と前記他方の面を形成する弱粘着剤層とが積層されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性を向上させた両面粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱する機械や電子部品などの発熱体は、内部に熱が蓄積されると性能が低下したり、破損したりする虞があるため、表面に放熱体を接着して外部へ熱を放散させることで、性能の維持と破損の防止が図られている。
【0003】
発熱体と放熱体とを接着する際には、熱伝導性を有する両面粘着シートが広く用いられている。該熱伝導性両面粘着シートは、樹脂組成物から構成された粘着剤層中に熱伝導性物質を含有するものであり、該熱伝導性物質が含有されることで、樹脂組成物単体で粘着剤層が構成された場合よりも熱伝導率を向上させたものである。これにより、熱伝導性両面粘着シートの一方の面に貼り付けられた発熱体の熱を他方の面に貼り付けられた放熱体側へ効果的に移動させて放散させることができる。
【0004】
上記のような熱伝導性両面粘着シートを用いて発熱体及び放熱体(以下、被着体と記す)を接着する際には、熱伝導性両面粘着シートの両面に貼り付けられた剥離フィルムの一方を剥がして、一方の被着体に貼り付けた後、他方の剥離フィルムを剥がして、他方の被着体の所定の場所へ貼り付けられる。
【0005】
このように、熱伝導性両面粘着シートは、被着体に貼り付けられた状態で剥離フィルムが剥がされるため、剥離フィルムを剥がす際の力によって被着体から剥離してしまわないような粘着力を有する必要がある。また、熱伝導性両面粘着シートが貼り付けられた被着体に半田リフロー等の熱処理を行なう場合もあるため、熱処理の影響によっても被着体から剥離してしまわないような粘着力を有する必要がある。
【0006】
また、被着体同士を接着する際に、被着体同士の貼り付け位置がズレてしまったり、熱伝導性両面粘着シートと被着体との間に気泡が混入してしまったりする場合がある。斯かる場合には、貼り直しをするために被着体同士を剥離させる必要がある。また、被着体同士を分別して廃棄したり、どちらか一方を交換したりする場合にも被着体同士を剥離させる必要がある。つまり、熱伝導性両面粘着シートは、要するときに被着体から容易に剥離できる程度の粘着力を有する必要がある。
【0007】
上記のように、熱伝導性両面粘着シートは、被着体から意図せずに剥離してしまうことがなく、且つ、要するときには容易に剥離させることが可能な粘着力を有することが必要である。特許文献1には、このような粘着力を有するように構成された熱伝導性粘着剤組成物から構成された粘着剤層を備える熱伝導性両面粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−316953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のような熱伝導性両面粘着シートは、単一の熱伝導性粘着剤組成物から粘着剤層が形成されており、両面の粘着力が同一なものとなっているため、例えば、上記のように一方の面に被着体を貼り付けた状態で熱処理を行なったりした場合に、加熱によって被着体に対する粘着力が低下してしまい、他方の面の剥離フィルムを剥がす際の力によって被着体から意図せずに剥離してしまうなどの虞がある。このように、上記のような熱伝導性両面粘着シートは、被着体同士を貼合せたり剥離させたりする際の作業性が低いものとなっている。
【0010】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑み、被着体同士を貼合せたり剥離させたりする際の作業性を向上させることができる熱伝導性両面粘着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る熱伝導性両面粘着シートは、熱伝導性物質とアクリルポリマー成分とが含有されている熱伝導性粘着剤組成物がシート状に成形されてなる粘着剤層を備える熱伝導性両面粘着シートであって、被着体に対する一方の面の粘着力が他方の面の粘着力よりも強くなるように、前記一方の面を形成する強粘着剤層と前記他方の面を形成する弱粘着剤層とが積層されてなることを特徴とする。
【0012】
斯かる構成によれば、前記粘着剤層の一方の面に貼り付けられる被着体に対する粘着力と、他方の面に貼り付けられる被着体に対する粘着力とが異なるように構成されてなることで、例えば、一方の面の粘着力が他方の面の粘着力よりも強くなるように構成された場合、一方の面に被着体が貼り付けられた状態で他方の面に貼り付けられている剥離フィルムを剥がす際にも被着体から意図せずに剥離してしまうのを防止することができる。また、他方の面に貼り付けられた被着体からは、一方の面に貼り付けられた被着体からよりも容易に剥離させることができる。これにより、被着体同士を貼合せたり剥離させたりする際の作業性を向上させることができる。
【0013】
また、一方の面の粘着力を被着体から剥離できない程度に構成した場合であっても、他方の面の粘着力を被着体から容易に剥離可能な程度に構成することができ、被着体の種類や使用環境に応じて、どちらの面にどのような被着体を貼り付けるか選択して用いることが可能となる。
【0014】
また、強粘着剤層と弱粘着剤層とが積層されてなることで、強粘着剤層と弱粘着剤層との粘着力の組み合わせを容易に行なうことができる。具体的には、1つの強粘着剤層(又は弱粘着剤層)に対して、複数の異なる粘着力を有する弱粘着剤層(又は強粘着剤層)から選択して積層させることができ、容易に粘着力の組み合わせを変更することができる。
【0015】
また、前記強粘着剤層は、アクリルポリマー成分100重量部に対し、熱伝導性物質を150重量部未満含有していると共に、前記弱粘着剤層は、アクリルポリマー成分100重量部に対し、熱伝導性物質を150重量部以上含有していることが好ましい。
【0016】
また、前記弱粘着剤層のSUS304鋼板に対する粘着力は、5.0N/20mm未満であることが好ましく、前記強粘着剤層のSUS304鋼板に対する粘着力は、5.0N/20mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、被着体同士を貼合せたり剥離させたりする際の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0019】
本発明に係る熱伝導性両面粘着シートは、熱伝導性物質とアクリルポリマー成分とを含有する熱伝導性粘着剤組成物がシート状に形成された粘着剤層を備えるものである。例えば、前記熱伝導性粘着剤組成物自体がシート状に保形されて粘着剤層が形成されているものや、樹脂フィルムなどの支持体上に前記熱伝導性粘着剤組成物がシート状に積層されて粘着剤層が形成されているものなどが挙げられる。
【0020】
また、本発明に係る熱伝導性両面粘着シートは、前記粘着剤層の一方の面に貼り付けられる被着体に対する粘着力と、他方の面に貼り付けられる被着体に対する粘着力とが異なるように構成されている。具体的には、シート状に形成されて粘着剤層となった際に異なる粘着力を有するように構成された2種類の熱伝導性粘着剤組成物を用いて粘着剤層が形成されたものである。以下の説明において、2種類の熱伝導性粘着剤組成物のうち、粘着剤層となった際に粘着力が強くなるように構成された方を強粘着剤組成物、粘着力が弱くなるように構成された方を弱粘着剤組成物と記す。
【0021】
なお、本発明では、前記各粘着剤組成物によって形成された粘着剤層の粘着力は、熱伝導性物質の配合量を調整することによって調整可能である。これにより、粘着力の調整に加えて熱伝導性(熱伝導率)に関しても適宜調整することが可能となり、特に好ましい。さらに、粘着剤層の粘着力は、例えば、各粘着剤組成物を構成するアクリルポリマーの種類や分子量を調整したり、ゲル分率を調整したりすることで調整することも可能である。また、粘着付与樹脂やシランカップリング剤等の添加剤の配合量を調整することでも粘着剤層の粘着力を調整することが可能である。
【0022】
熱伝導性両面粘着シートの両面の粘着力としては、SUS304鋼板に対する粘着力が一方の面(強粘着面)では、5.0N/20mm以上、好ましくは、6.0N/20mm以上、さらに好ましくは、7.0N/20mm以上となるように構成され、通常は、20N/20mm以下となるように構成されている。また、他方の面(弱粘着面)では、0N/20mmを超えて5.0N/20mm未満、好ましくは、4.5N/20mm以下、さらに好ましくは、4.3N/20mm以下となるように構成されている。なお、この“SUS304鋼板に対する粘着力”は、後述する実施例に記載の方法によって測定されるものである。
【0023】
前記アクリルポリマー成分としては、特に限定されるものではなく、一般に用いられているアクリルポリマーを用いることができる。該アクリルポリマーは、モノマー単位として、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル系モノマーから構成されるものを用いることができる。
【0024】
【化1】

(ただし、R1は、水素またはメチル基、R2は、炭素数2〜14のアルキル基である)
【0025】
上記一般式(1)において、R1は、水素またはメチル基である。また、上記一般式(1)において、R2は、炭素数2〜14のアルキル基であるが、炭素数3〜12のものが好ましく、4〜9のものがより好ましい。また、R2のアルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれも使用することができ、ガラス転移点が低いことから分岐鎖のものを使用することが好ましい。
【0026】
一般式(1)で表される(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
本発明において、上記の一般式(1)で表される(メタ)アクリル系モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。また、上記の(メタ)アクリル系モノマー全体の含有量は、アクリルポリマーを構成するモノマー全体に対して、50〜98重量%であり、60〜98重量%であることが好ましく、70〜90重量%であることがより好ましい。(メタ)アクリル系モノマーの含有量を50重量%以上とすることで、良好な粘着性を有するものとなる。
【0028】
上記アクリルポリマーは、モノマー単位として、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーなどの極性基含有モノマーを含有することが好ましい。極性基含有モノマーの含有量としては、アクリルポリマーを構成するモノマー全体に対して、0.1〜20重量%であることが好ましく、0.2〜10重量%であることがより好ましく、0.2〜7重量%であることがさらに好ましい。上記極性基含有モノマーの含有量が上記範囲内であることで、凝集力がより十分に発揮される。また、上記極性基含有モノマーの含有量を20重量%以下とすることで、良好な粘着性を有するものとなる。
【0029】
上記水酸基含有モノマーとは、モノマー構造中に1以上の水酸基を有する重合性モノマーをいう。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。なかでも、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどを用いることが好ましい。
【0030】
上記カルボキシル基含有モノマーとは、モノマー構造中に1以上のカルボキシル基を有する重合性モノマーをいう。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。なかでも、アクリル酸、及びメタクリル酸を用いることが好ましい。
【0031】
本発明におけるアクリルポリマーには、上記のモノマー以外のモノマーとして、アクリルポリマーのガラス転移点や剥離性を調整するための重合性モノマーなどを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0032】
本発明のアクリルポリマーにおいて用いられるその他の重合性モノマーとしては、例えば、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ならびにビニルエーテルモノマーなどの粘着力向上や架橋化基点として働く官能基を有す成分などを適宜用いることができる。さらには、上記一般式(1)において、R2が炭素数1または炭素数15以上のアルキル基であるモノマーなども適宜用いることができる。これらのモノマー化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
【0034】
リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどが挙げられる。
【0035】
シアノ基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0036】
ビニルエステルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0037】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0038】
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0039】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。
【0040】
イミド基含有モノマーとしては、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、イタコンイミドなどが挙げられる。
【0041】
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0042】
ビニルエーテルモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0043】
炭素数1または炭素数15以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
また、アクリルポリマーを構成するモノマーには、凝集力等の特性を高めるため、必要に応じて、その他の共重合性モノマーが含まれていてもよい。このような共重合性モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエンなどのビニル化合物;シクロペンチルジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。
【0045】
上記その他の共重合性モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量がアクリルポリマーを構成するモノマー全体に対して、0〜50重量%であることが好ましく、0〜35重量%であることがより好ましく、0〜25重量%であることがさらに好ましい。
【0046】
また、上記アクリルポリマーは、重量平均分子量が60万以上であることが好ましく、70万〜300万であることがより好ましく、80万〜250万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が60万以上であることで、良好な耐久性を有するものとなる。一方、作業性の観点より、前記重量平均分子量は、300万以下であることが好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0047】
また、粘着剤層の粘着性のバランスが取りやすい理由から、上記アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、−5℃以下、好ましくは、−10℃以下であることが望ましい。ガラス転移温度が−5℃以下であることで、アクリルポリマーの流動性が良好なものとなって被着体に対して十分な濡れ性を有するものとなり、良好な粘着力を有するものとなる。なお、アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより上記範囲内に調整することができる。
【0048】
このようなアクリルポリマーは、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法によって製造できる。また、得られるアクリルポリマーは、ホモポリマーであっても共重合体であってもよく、共重合体である場合には、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0049】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤として、例えば、モノマー全量100重量部に対して、アゾビスイソブチロニトリル0.01〜0.2重量部加え、通常、50〜70℃程度で、8〜30時間程度行われる。
【0050】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。
【0051】
本発明に用いられる重合開始剤としては、たとえば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
上記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。重合開始剤全体としての含有量は、モノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0053】
また、本発明においては、重合において連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることにより、アクリルポリマーの分子量を適宜調整することができる。
【0054】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどを用いることができる。
【0055】
これらの連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。連鎖移動剤全体としての含有量は、通常、モノマー100重量部に対して、0.01〜0.1重量部程度である。
【0056】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などを用いることができる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0057】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、例えば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(ADEKA社製)などを用いることができる。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなるので好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0058】
また、粘着剤層の粘着力、耐久力をより向上させる目的で、熱伝導性粘着剤組成物におけるアクリルポリマーを構成する成分として架橋剤を含有させることが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤など従来周知の架橋剤を用いることが出来るが、特にイソシアネート系架橋剤を含有することが好ましい。
【0059】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどを用いることができる。
【0060】
より具体的には、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどを用いることができる。
【0061】
上記架橋剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。架橋剤全体の含有量は、アクリルポリマー100重量部に対し、0.02〜5重量部であることが好ましく、0.04〜3重量部であることがより好ましく、0.05〜2重量部であることがさらに好ましい。架橋剤を上記範囲で用いることにより、より確実に凝集力や耐久性の向上したものとすることができる。また、2重量部以下とすることで、適度な架橋形成となり、良好な粘着性を有するものとなる。
【0062】
本発明においては、架橋された熱伝導性粘着剤組成物のゲル分率が、40〜90重量%となるように架橋剤の添加量を調整することが好ましく、50〜85重量%となるように調整することがより好ましく、55〜80重量%となるように調整することがさらに好ましい。ゲル分率を40重量%以上とすることで、凝集力が向上すると共に、良好な耐久性を有するものとなる。また、90重量%以下とすることで、良好な粘着性を有するものとなる。
【0063】
前記ゲル分率(重量%)は、架橋された熱伝導性粘着剤組成物から乾燥重量W1(g)の試料を採取し、これを酢酸エチルに浸漬した後、前記試料の不溶分を酢酸エチル中から取り出し、乾燥後の重量W2(g)を測定し、(W2/W1)×100を計算して求めることができる。
【0064】
前記熱伝導性物質とは、粘着剤層中に含有されることで熱伝導性両面粘着シートの熱伝導率を向上させ得るものである。本発明において用いられる熱伝導性物質としては、特に限定されるものではないが、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ガリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル、アンチモン酸ドープ酸化スズ、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、銅、銀、金、ニッケル、アルミニウム、白金、カーボンブラック、カーボンチューブ(カーボンナノチューブ)、カーボンファイバー、ダイヤモンドなどが挙げられる。これらの熱伝導性物質の中でも、熱伝導性が高く、電気絶縁性を有するという理由から、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムを用いることが好ましい。これらの熱伝導性物質は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0065】
本発明において用いる熱伝導性物質の形状は、特に限定されるものではなく、バルク状、針形状、板形状、層状であってもよい。バルク形状には、例えば、球形状、直方体形状、破砕状またはそれらの異形形状が含まれる。
【0066】
本発明において、熱伝導性物質がバルク形状(球状)である場合には、その1次平均粒子径は、0.1〜1000μm、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは2〜20μmである。1次平均粒子径を1000μm以下とすることで、粘着剤層を1000μm未満の厚みで形成した際にも、バルク形状の熱伝導性物質が粘着剤層の厚みを超えて、粘着剤層の厚みにバラツキが生じる原因となるのを防止することができる。
なお、1次平均粒子径は、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められる体積基準の値である。具体的には、レーザー散乱式粒度分布計により、D50値を測定することによって求められるものである。
【0067】
熱伝導性物質が針形状または板形状である場合には、その最大長さは、0.1〜1000μm、好ましくは、1〜100μm、さらに好ましくは、2〜20μmである。最大長さを1000μm以下とすることで、針形状または板形状の熱伝導性物質同士の凝集が抑制されて取り扱いが容易となる。さらに、これらのアスペクト比(針状結晶の場合には、長軸長さ/短軸長さ、または長軸長さ/厚みで表現される。また板状結晶の場合には、対角長さ/厚み、または長辺長さ/厚みで表現される)は、1〜10000、好ましくは、10〜1000である。
【0068】
上記のような熱伝導性物質は、一般に用いられているものを用いることができ、例えば、窒化ホウ素としては、水島合金鉄社製「HP−40」、モメンティブ社製「PT620」等を、水酸化アルミニウムとしては、昭和電工社製「ハイジライトH−32」「ハイジライトH−42」等を、酸化アルミとしては、昭和電工社製「AS−50」等を、水酸化マグネシウムとしては、協和化学エ業社製「KISUMA 5A」等を、アンチモンドープ酸化スズとしては、石原産業社製の「SN−100S」「SN−100P」「SN−100D(水分散品)」等を、酸化チタンとしては、石原産業社製の「TTOシリーズ」等を、酸化亜鉛としては、住友大阪セメント社製の「SnO−310」「SnO−350」「SnO−410」等を用いることができる。
【0069】
本発明において熱伝導性物質の使用量は、熱伝導性粘着剤組成物がシート状に形成されて粘着剤層となった際の粘着力に応じて、適宜選択される。具体的には、強粘着剤組成物を作製する際には、アクリルポリマー100重量部に対し、熱伝導性物質を150重量部未満とすることが好ましく、10〜150重量部とすることがより好ましく、50〜130重量部とすることがさらに好ましい。また、弱粘着剤組成物を作製する際には、アクリルポリマー100重量部に対し、熱伝導性物質を150重量部以上とすることが好ましく、150〜1000重量部とすることがより好ましく、180〜600重量部とすることがさらに好ましい。熱伝導性物質の使用量を上記のようにすることで、良好な可撓性を有するものとなると共に、良好な粘着力を有するものとなる。また、十分な熱伝導性を付与することができる。
【0070】
また、熱伝導性粘着剤組成物を製造するに際し、熱伝導性物質とアクリルポリマーとの親和性を向上させる目的や、粘着剤層の粘着力や耐久力を向上させる目的で、シランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0071】
例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのインシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。このようなシランカップリング剤を使用することは、耐久性を向上させるのに好ましい。
【0072】
上記シランカップリング剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。シランカップリング剤全体の含有量は、前記アクリルポリマー100重量部に対し、前記シランカップリング剤0.01〜10重量部とするのが好ましく、0.02〜5重量部とするのがより好ましく、0.05〜2重量部とするのがさらに好ましい。上記シランカップリング剤を上記範囲で用いることにより、より確実に凝集力や耐久性を向上させることができる。また、0.01重量部以上とすることで、粒子状の熱伝導性物質の表面を十分に被覆することができ、アクリルポリマーとの親和性を向上させることができる。また、10重量部以下とすることで、良好な熱伝導性を有するものとなる。
【0073】
また、前記熱伝導性粘着剤組成物を製造するに際し、粘着剤層の粘着力、耐久力をより向上させる目的で、粘着付与樹脂を用いることができる。該粘着付与樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知のものを適宜選択して用いることができる。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン樹脂、及びエラストマーなどを用いることができる。
【0074】
上記粘着付与樹脂の含有量としては、アクリルポリマー100重量部に対し、10〜100重量部のいずれかであることが好ましく、20〜80重量部のいずれかであることがより好ましく、30〜50重量部のいずれかであることがさらに好ましい。
【0075】
また、ここでは詳述しないが、前記熱伝導性粘着剤組成物には、上記のようなアクリルポリマー成分、熱伝導性物質など以外に、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、安定剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、顔料などといったゴム、プラスチック配合薬品として一般に用いられるものを本発明の効果を損なわない範囲において適宜加えることができる。
【0076】
次に、上記のような構成成分からなる熱伝導性粘着剤組成物を用いて熱伝導性両面粘着シート(両面に剥離フィルムが貼り付けられているもの)を作製する方法について説明する。
【0077】
まず始めに、上述したような成分から構成されたアクリルポリマー成分と、熱伝導性物質と、その他の成分とをトルエンなどの溶媒中で混合して撹枠し、液状の熱伝導性粘着剤組成物(コーティング液)を2種類(具体的には、強粘着剤組成物の溶液と弱粘着剤組成物の溶液)作製する。この際、分散性を向上させるために分散剤を含有させてもよい。
【0078】
前記2種類のコーティング液は、アクリルポリマーに対する熱伝導性物質の含有量が異なるように配合されており、シート状に形成されて粘着剤層となった状態で、粘着力が異なるように構成されている。即ち、一方のコーティング液(強粘着剤組成物の溶液)によって粘着力の強い粘着剤層(強粘着剤層)が形成され、他方のコーティング液(弱粘着剤組成物の溶液)によって粘着力の弱い粘着剤層(弱粘着剤層)が形成されることとなる。
【0079】
次に、剥離剤(シリコーンなど)によって一方の面が処理された剥離フィルム上に前記2種類のコーティング液をそれぞれ塗布する。具体的には、1つの剥離フィルムにおける剥離処理された面上に、一方のコーティング液(強粘着コーティング液)を塗布して、所定の厚みの強粘着剤層を形成する。同様に、他の1つの剥離フィルムにおける剥離処理された面上に、他方のコーティング液(弱粘着コーティング液)を塗布して、所定の厚みの弱粘着剤層を形成する。
【0080】
前記コーティング液を剥離フィルム上に所定の厚みで塗布(コーティング)する方法としては、従来広く用いられている方法を採用することができる。例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法を用いることができる。
【0081】
剥離フィルム上に形成される粘着剤層の厚みとしては、0.5〜250μmであることが好ましく、2.5〜100μmであることがより好ましく、5〜50μmであることがさらに好ましい。また、前記強粘着剤層及び弱粘着剤層の熱伝導率は、0.5W/m・K以上であることが好ましく、0.6W/m・K以上であることがより好ましい。熱伝導率が0.5W/m・K以上であることで、例えば、半導体モジュールのヒートシンクなどに接着されて用いられる場合であっても、十分な熱伝導性能を発揮することができる。
【0082】
剥離フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、及びこれらのラミネート体などの薄葉体などが挙げられ、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0083】
該プラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどを用いることができる。
【0084】
前記剥離フィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理をしてもよい。特に、前記剥離フィルムの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0085】
前記剥離フィルムの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。
【0086】
そして、強粘着剤層付き剥離フィルムと弱粘着剤層付き剥離フィルムとを粘着剤層同士が重なり合うように積層する。これにより、強粘着剤層側の面(強粘着面)の粘着力が弱粘着剤層側の面(弱粘着面)の粘着力よりも強く、両面に剥離フィルムが貼付けられた熱伝導性両面粘着シートが形成される。
【0087】
強粘着剤層と弱粘着剤層とが積層されてなる粘着剤層の厚みとしては、1〜500μmであることが好ましく、5〜200μmであることがより好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。
【0088】
または、強粘着剤層付き剥離フィルムと弱粘着剤層付き剥離フィルムとを積層する際に、強粘着剤層と弱粘着剤層との間に支持体を配置してもよい。これにより、強粘着剤層と弱粘着剤層との間に支持体が介在した熱伝導性両面粘着シートが形成される。
【0089】
前記支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルフィルムなどのプラスチック基材や、紙、不織布などの多孔質材料、ならびに金属箔などがあげられる。
【0090】
プラスチック基材としては、シート状やフィルム状に形成できるものであれば特に限定されるものでなく、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミドなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどがあげられる。前記フィルムの厚みは、通常4〜100μm、好ましくは4〜25μm程度である。
【0091】
プラスチック基材には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの静電防止処理をすることもできる。
【0092】
このように構成された熱伝導性両面粘着シートは、前記粘着剤層の一方の面に貼り付けられる被着体に対する粘着力と、他方の面に貼り付けられる被着体に対する粘着力とが異なるように構成されてなることで、両面に貼り付けられる被着体同士を異なる粘着力で接着することができる。これにより、一方の面の粘着力を被着体から剥離できない程度の強さで構成した場合であっても、他方の面の粘着力を被着体から容易に剥離可能な程度の弱さで構成することができ、被着体の種類や使用環境に応じて、どちらの面にどのような被着体を貼り付けるか選択して用いることが可能となる。
【実施例】
【0093】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0094】
<実施例1>
1.アクリルポリマー溶液の調整
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル70重量部、2エチルヘキシルアクリレート30重量部、アクリル酸3重量部、4ヒドロキシブチルアクリレート0.05重量部、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(開始剤)0.1重量部、トルエン155重量部を加えた後、系内を窒素ガスで十分に置換した。そして、80℃で3時間加熱して固形分が40.0重量%のアクリルポリマー溶液を得た。
【0095】
2.熱伝導性強粘着剤組成物(強粘着コーティング液)の調整
上記アクリルポリマー溶液100重量部に、粘着付与材(荒川化学社製、商品名「ベンセルD−125」)30重量部、熱伝導性物質として熱伝導性水酸化アルミ粉末(昭和電工社製、商品名「ハイジライトH−32」、1次平均粒子径8μm)100重量部、分散剤(第一工業製薬社製、商品名「プライサーフA212E」)1重量部、架橋剤として多官能イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)2重量部を配合し、ディスパーにて15分間攪絆して強粘着コーティング液を調整した。
【0096】
3.熱伝導性弱粘着剤組成物(弱粘着コーティング液)の調整
上記アクリルポリマー溶液100重量部に、粘着付与材(荒川化学社製、商品名「ベンセルD−125」)30重量部、熱伝導性物質として熱伝導性水酸化アルミ粉末(昭和電工社製、商品名「ハイジライトH−32」)200重量部、分散剤(第一工業製薬社製、商品名「プライサーフA212E」)1重量部、架橋剤として多官能イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)2重量部を配合し、ディスパーにて15分間攪絆して弱粘着コーティング液を調整した。
【0097】
4.熱伝導性両面粘着シート(以下、粘着シートと記す)の作製
ポリエチレンテレフタレートの片面をシリコーン剥離剤で処理した剥離フィルムの剥離処理面に、得られた強粘着コーティング液を乾燥後の厚みが50μmとなるよう塗布し、70℃で15分間乾燥して剥離フィルム上に強粘着剤層を形成した。また、他の離型フィルムの剥離処理面に、得られた弱粘着コーティング液を乾燥後の厚みが50μmとなるよう塗布し、70℃で15分間乾燥して剥離フィルム上に弱粘着剤層を形成した。
乾燥後の強粘着剤層に占める熱伝導性物質の割合は、29体積%であり、弱粘着剤層に占める熱伝導性物質の割合は、45体積%である。
そして、強粘着剤層と弱粘着剤層とが重なり合うように、強粘着剤層付き剥離フィルムと弱粘着剤層付き剥離フィルムとを積層させて、強粘着剤層と弱粘着剤層とから構成された粘着剤層を備える粘着シートを作製した。該粘着シートの両面には、剥離フィルムが貼付いた状態となっている。
【0098】
<実施例2>
弱粘着コーティング液を調整するに際し、アクリルポリマー100重量部に対して、熱伝導性水酸化アルミ粉末を400重量部用いてしたこと以外は、実施例1と同一条件で粘着シートを作成した。乾燥後の弱粘着剤層に占める熱伝導性物質の割合は、45体積%である。
【0099】
<比較例1>
実施例1の強粘着コーティング液を乾燥後の厚みが100μmとなるように剥離フィルム上に塗布し、70℃で15分間乾燥して強粘着剤層のみからなる粘着剤層を備える粘着シートを作製した。
【0100】
<比較例2>
実施例2の弱粘着コーティング液を乾燥後の厚みが100μmとなるように剥離フィルム上に塗布し、70℃で15分間乾燥して弱粘着剤層のみからなる粘着剤層を備える粘着シートを作製した。
【0101】
<粘着力の測定>
1.測定1
各実施例の粘着シートにおける弱粘着剤層側の面(弱粘着面)に、厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせ、これを幅20mm、長さ150mmに切断して測定用サンプルを作製した。
次に、強粘着剤層側の面(強粘着面)から剥離フィルムを剥がし、測定用サンプルを23℃、50%RH雰囲気下でSUS304鋼板に2kgローラー1往復により貼り付けた。そして、この評価用サンプルが貼り付けられたSUS304鋼板を23℃で30分間養生した。
なお、前記SUS304鋼板は、粘着シートを貼り付ける前に、その表面を360番の耐水研磨紙で研磨処理し、さらに、トルエンでの脱脂を十分に施した後に、23℃、50%RHの雰囲気下で30分乾燥後に用いた。
養生後、ミネベア株式会社製 万能引張試験機「TCM−1kNB」を用いて剥離試験を行ない、SUS304鋼板に対する強粘着面の粘着力の測定を行なった。剥離試験の条件としては、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で試験を行った。測定結果は、下記表1に示す。
【0102】
2.測定2
各実施例の粘着シートにおける強粘着面に、厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせ、これを幅20mm、長さ150mmに切断して測定用サンプルとし、弱粘着面の粘着力の測定を測定1と同一条件で行なった。測定結果は、下記表1に示す。
【0103】
3.測定3
各比較例の粘着シートにおける一方の面に、厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせ、これを幅20mm、長さ150mmに切断して測定用サンプルとし、他方の面の粘着力の測定を測定1と同一条件で行なった。測定結果は、下記表1に示す。
【0104】
4.測定4
各比較例の粘着シートにおける他方の面に、厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせ、これを幅20mm、長さ150mmに切断して測定用サンプルとし、一方の面の粘着力の測定を測定1と同一条件で行なった。測定結果は、下記表1に示す。

【表1】

【0105】
<熱伝導率の測定>
1.測定1
各実施例、各比較例の粘着シートにおける強粘着剤層の熱伝導率の測定を行なった。熱伝導率は、アイフェイズ社製 商品名「ai−phase mobile」により熱拡散率を求め、該熱拡散率に示差走査熱量計(DSC)で測定した粘着シートの単位体積あたりの熱容量を乗じることにより算出した。測定結果は、下記表2に示す。
【0106】
2.測定2
各実施例の粘着シートにおける弱粘着剤層の熱伝導率の測定を測定1と同様に行なった。測定結果は、下記表2に示す。
【表2】

【0107】
<粘着特性評価>
1.評価用サンプルの作製
各実施例の粘着シートにおける強粘着面に貼付けられている剥離フィルムを剥がして強粘着面にガラスエポキシ基板を貼付けた後、弱粘着面に貼付けられている剥離フィルムを剥がして弱粘着面にSUS304剛板を貼付けて評価用サンプルを作製した。
また、各比較例の粘着シートの一方の面に貼付けられている剥離フィルムを剥がして一方の面にガラスエポキシ基板を貼付けた後、他方の面に貼付けられている剥離フィルムを剥がして他方の面にSUS304剛板を貼付けて評価用サンプルを作製した。
【0108】
2.評価方法
粘着シートがガラスエポキシ基板に貼付けられた状態で、弱粘着面または他方の面に貼付いている剥離フィルムを剥がした際に、ガラスエポキシ基板から粘着シートが剥がれてしまうか否かについて評価を行なった。
また、それぞれの評価用サンプルを80℃で24時間加熱処理した後、ガラスエポキシ基板をSUS304剛板から剥離させた際の状態についても評価を行なった。
剥離フィルムを剥がす際に、ガラスエポキシ基板から粘着シートが剥がれなかったものであって、ガラスエポキシ基板とSUS304剛板との剥離を容易に行なうことができたものを「○」、剥離フィルムを剥がす際に、ガラスエポキシ基板から粘着シートが剥がれてしまったり、ガラスエポキシ基板とSUS304剛板との剥離を容易に行なえなかったりした場合を「×」として評価した。評価結果は、下記表3に示す。

【表3】

【0109】
上記の試験結果及び評価結果を見ると、比較例1の粘着シートは、強粘着剤層のみから粘着剤層が構成されているため、両面の粘着力が強くなっており、ガラスエポキシ基板とSUS304とを容易に剥離させることができなかった。また、比較例2の粘着シートは、弱粘着剤層のみから粘着剤層が構成されているため、両面の粘着力が弱くなっており、ガラスエポキシ基板に貼付けられた状態で他方の面の剥離フィルムを剥がした際に、ガラスエポキシ基板から粘着シートが剥がれてしまった。つまり、比較例1及び2は、被着体同士を貼合せたり剥離させたりする際の作業性が悪いものとなってしまった。
これらに対し、実施例1及び2の粘着シートは、強粘着面の粘着力が弱粘着面の粘着力よりも強くなっているため、強粘着面がガラスエポキシ基板に貼付けられた状態で弱粘着面の剥離フィルムを剥がす際にもガラスエポキシ基板から粘着シートが剥がれることがなかった。さらに、弱粘着面の粘着力が弱いものであるため、ガラスエポキシ基板とSUS304とを容易に剥離させることができた。つまり、実施例1及び2の粘着シートは、被着体同士を貼合せたり剥離させたりする際の作業性を向上させることが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性物質とアクリルポリマー成分とが含有されている熱伝導性粘着剤組成物がシート状に成形されてなる粘着剤層を備える熱伝導性両面粘着シートであって、
被着体に対する一方の面の粘着力が他方の面の粘着力よりも強くなるように、前記一方の面を形成する強粘着剤層と前記他方の面を形成する弱粘着剤層とが積層されてなることを特徴とする熱伝導性両面粘着シート。
【請求項2】
前記強粘着剤層は、アクリルポリマー成分100重量部に対し、熱伝導性物質を150重量部未満含有していると共に、前記弱粘着剤層は、アクリルポリマー成分100重量部に対し、熱伝導性物質を150重量部以上含有していることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性両面粘着シート。
【請求項3】
前記弱粘着剤層のSUS304鋼板に対する粘着力は、5.0N/20mm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱伝導性両面粘着シート。
【請求項4】
前記強粘着剤層のSUS304鋼板に対する粘着力は、5.0N/20mm以上であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の熱伝導性両面粘着シート。

【公開番号】特開2011−162582(P2011−162582A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23330(P2010−23330)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】