説明

熱伝導性補強シート、成形品およびその補強方法

【課題】優れた熱伝導性と、優れた補強性とを両立させることのできる熱伝導性補強シートと、熱伝導性および機械強度の両方が向上された成形品およびその補強方法とを提供すること。
【解決手段】補強層2を備える熱伝導性補強シート1であって、熱伝導性補強シート1を厚み1.0mmのアルミニウム板に貼着し、80℃で10分間加熱後の1mm変位の曲げ強度が10N以上、かつ、補強層2の熱伝導率が0.25W/m・K以上である熱伝導性補強シート1を、成形品4に貼着し、次いで、80℃以上に加熱して、熱伝導性補強シート1を成形品4に密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性補強シート、成形品およびその補強方法、詳しくは、熱伝導性補強シートと、それを用いた成形品の補強方法と、それにより補強される成形品とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種産業製品において、発熱体を収容する筐体には、発熱体から発生する熱を迅速に熱伝導させるべく、例えば、熱伝導シートを、筐体の表面に配置することが知られている。
【0003】
そのような熱伝導シートとして、例えば、シリコーン系共重合体と熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−7039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、筐体には、その用途および目的に応じて、機械強度が必要とされる場合がある。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の熱伝導シートでは、筐体の機械強度を十分に向上させることができないという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、優れた熱伝導性と、優れた補強性とを両立させることのできる熱伝導性補強シートと、熱伝導性および機械強度の両方が向上された成形品およびその補強方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の熱伝導性補強シートは、補強層を備える熱伝導性補強シートであって、前記熱伝導性補強シートを厚み1.0mmのアルミニウム板に貼着し、80℃で10分間加熱後の1mm変位の曲げ強度が10N以上、かつ、前記補強層の熱伝導率が0.25W/m・K以上であることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の熱伝導性補強シートでは、前記補強層をアルミニウム板に貼着し、80℃で10分間加熱後に、剥離速度300mm/分でJIS Z0237(2000年)の90度ピール試験により測定されるアルミニウム板に対する粘着力が、4N/25mm以上であることが好適である。
【0010】
また、本発明の熱伝導性補強シートでは、前記補強層が、熱接着型の粘着剤組成物から形成されていることが好適であり、また、前記粘着剤組成物が、共役ジエン類を含む単量体の重合体および/または前記重合体の水素添加物と、熱伝導性粒子とを含有していることが好適であり、また、前記粘着剤組成物が、さらに、粘着付与剤を含有していることが好適である。
【0011】
また、本発明の熱伝導性補強シートは、前記補強層の片面に積層される拘束層を備えていることが好適である。
【0012】
また、本発明の成形品の補強方法は、上記した熱伝導性補強シートを成形品に貼着し、次いで、80℃以上に加熱して、前記熱伝導性補強シートを前記成形品に密着させることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の成形品の補強方法では、前記熱伝導性補強シートを、予め、80℃以上に加熱し、次いで、前記熱伝導性補強シートを前記成形品に貼着することが好適である。
【0014】
また、本発明の成形品は、上記した熱伝導性補強シートが貼着されて密着していることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の成形品は、家庭電化製品の筐体、電気機器の筐体および電子機器の筐体からなる群から選択される少なくとも1つの筐体であることが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱伝導性補強シートは、特定温度の曲げ強度が特定範囲であり、かつ、熱伝導率が特定範囲にあるので、本発明の成形品およびその補強方法によれば、熱伝導性補強シートを成形品に貼着し、次いで、特定温度で加熱して、熱伝導性補強シートを成形品に密着させることにより、成形品の機械強度を向上させて、成形品を確実に補強することができるとともに、成形品の熱伝導性を向上させることができる。
【0017】
その結果、本発明の成形品の機械強度および熱伝導性の両方を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の成形品用補強シートを成形品に貼着して密着させることにより補強する、本発明の成形品の補強方法の一実施形態を示す説明図であって、(a)は、熱伝導性補強シートを用意して、離型フィルムを剥がす工程、(b)は、熱伝導性補強シートを成形品に貼着して、加熱により密着させる工程を示す。
【図2】図2は、本発明の成形品用補強シートを成形品に貼着して密着させることにより補強する、本発明の成形品の補強方法の他の実施形態(成形品用補強シートが補強層のみからなる態様)を示す説明図であって、(a)は、熱伝導性補強シートを用意して、離型フィルムを剥がす工程、(b)は、熱伝導性補強シートを成形品に貼着して、加熱により密着させる工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の熱伝導性補強シートは、補強層を備えている。
【0020】
補強層は、例えば、粘着剤組成物をシート状に成形することにより、形成されている。
【0021】
粘着剤組成物は、熱接着型であって、詳しくは、例えば、80℃以上の加熱によって、接着性(粘着性)を発現する。
【0022】
粘着剤組成物は、例えば、ポリマー成分と、熱伝導性粒子とを含有している。
【0023】
ポリマー成分は、共役ジエン類を含む単量体の重合体および/またはその重合体の水素添加物(水素化物)である。
【0024】
単量体は、好ましくは、共役ジエン類を必須成分として含有し、共役ジエン類と共重合可能な共重合性単量体を任意成分として含有している。
【0025】
共役ジエン類としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、クロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン)などが挙げられる。
【0026】
共重合性単量体としては、少なくとも1つの二重結合を有する単量体であって、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン(2−メチルプロペン)などの脂肪族ビニル単量体(オレフィン類)、例えば、スチレンなどの芳香族ビニル単量体、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル単量体、例えば、1,2−ブタジエンなどの非共役ジエン類などが挙げられる。
【0027】
これら共重合性単量体は、単独または2種以上併用することができる。好ましくは、芳香族ビニル単量体が挙げられる。
【0028】
上記した共役ジエン類を含む単量体の重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、クロロプレン重合体(CR)など、上記した共役ジエン類のみからなる単量体の単独重合体や、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン(ランダム)共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン(ブロック)共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン(ランダム)共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(ブロック)共重合体(SIS)、イソブチレン−イソプレン(ランダム)共重合体など、上記した共役ジエン類および共重合性単量体からなる単量体の共重合体などが挙げられる。
【0029】
なお、重合体が上記した共重合体である場合には、共重合における共重合性単量体の配合割合が、単量体の総量100質量部に対して、例えば、5〜50質量部である。
【0030】
重合体は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0031】
重合体として、好ましくは、SBSが挙げられる。
【0032】
上記した重合体の水素添加物は、共役ジエン類に由来する不飽和結合(二重結合部分)が完全水素化または部分水素化され、好ましくは、完全水素化されている。水素添加物は、具体的には、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(ブロック)共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(ブロック)共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−スチレン(ブロック)共重合体(SES)などが挙げられる。
【0033】
水素添加物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0034】
これら水素添加物のうち、好ましくは、SEBSが挙げられる。
【0035】
水素添加物は、上記した重合体の水素化により、不飽和結合を実質的に含有していないため、高温雰囲気下において熱劣化しにくく、そのため、補強層の耐熱性を向上させることができる。
【0036】
上記したポリマー成分の重量平均分子量(GPCによるポリスチレン換算値)は、例えば、20000以上、好ましくは、25000〜100000である。
【0037】
また、ポリマー成分のムーニー粘度は、例えば、20〜80(ML1+4、at100℃)、好ましくは、30〜70(ML1+4、at100℃)である。
【0038】
また、ポリマー成分の25質量%トルエン溶液粘度(25℃)は、例えば、100〜100,000mPa・s、好ましくは、500〜10,000mPa・sである。
【0039】
また、ポリマー成分のメルトフローレート(MFR)は、温度190℃、質量2.16kgで、例えば、10g/10分以下であり、また、温度200℃、質量5kgで、例えば、20g/10分以下である。
【0040】
また、上記したポリマー成分のうち、好ましくは、耐熱性の観点から、水素添加物が挙げられる。
【0041】
熱伝導性粒子を形成する熱伝導性材料としては、例えば、無機材料、有機材料が挙げられ、好ましくは、無機材料が挙げられる。
【0042】
無機材料としては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ガリウムなどの窒化物、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、例えば、酸化ケイ素(例えば、シリカなど)、酸化アルミニウム(例えば、アルミナなど)、酸化チタン(例えば、チタニアなど)、酸化亜鉛、酸化錫(例えば、アンチモンドープ酸化錫などのドープ酸化錫を含む。)、酸化銅、酸化ニッケルなどの酸化物、例えば、炭化ケイ素などの炭化物、例えば、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸カリウムなどのチタン酸塩などの金属酸塩、例えば、銅、銀、金、ニッケル、アルミニウム、白金などの金属などが挙げられる。
【0043】
熱伝導性材料としては、好ましくは、窒化物、水酸化物、酸化物が挙げられ、さらに好ましくは、より優れた熱伝導性を得る観点、さらには、電気絶縁性を得る観点から、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムが挙げられる。
【0044】
これら熱伝導性材料は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0045】
熱伝導性粒子の形状は、特に限定されず、例えば、バルク形状、針形状、板形状、層状、チューブ形状などが挙げられる。
【0046】
熱伝導性粒子の形状として、好ましくは、バルク形状、針形状、板形状などが挙げられる。
【0047】
バルク形状としては、具体的には、球形状、直方体形状、粉砕状が挙げられる。
【0048】
熱伝導性粒子のサイズは、特に限定されず、バルク形状(球形状)である場合には、1次粒子の平均粒子が、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは、1〜100μm、さらに好ましくは、2〜50μmである。
【0049】
熱伝導性粒子の平均粒子径は、レーザー散乱法による粒度分布測定により求められる体積基準の平均粒子径である。具体的には、熱伝導性粒子の平均粒子径は、レーザー散乱式粒度分布計によって、D50値(メジアン径)を測定することにより求められる。
【0050】
熱伝導性粒子の平均粒子径が1000μm以下であれば、補強層の厚みを1000μm未満で形成する際にも、バルクを形成する熱伝導性粒子が、補強層の厚みを超え、補強層の厚みにバラツキが生じる原因となることを防止することができる。
【0051】
一方、熱伝導性粒子の平均粒子径が上記範囲を超える場合には、熱伝導性粒子の平均粒子径が樹脂層の所望の厚み(後述)を超えることとなり、そのため、粘着剤組成物中に不均一に(ばらついて)分散される場合がある。
【0052】
また、熱伝導性粒子が針形状または板形状である場合には、1次粒子の最大長さが、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは、1〜100μm、さらに好ましくは、2〜50μmである。
【0053】
熱伝導性粒子の最大長さの平均は、レーザー散乱法による粒度分布測定により求められる体積基準の平均粒子径である。具体的には、レーザー散乱式粒度分布計によって、D50値(メジアン径)を測定することにより求められる。
【0054】
熱伝導性粒子の最大長さが1000μm以下であれば、補強層の厚みを1000μm未満で形成する際にも、熱伝導性粒子が、補強層の厚みを超え、補強層の厚みにバラツキが生じる原因となることを防止することができる。
【0055】
一方、熱伝導性粒子のサイズが上記範囲を超える場合には、熱伝導性粒子が凝集し易くなり、取り扱いが困難となる場合がある。
【0056】
また、かかる熱伝導性粒子のアスペクト比、具体的には、熱伝導性粒子が針形状である場合には、長軸長さ/短軸長さであり、あるいは、熱伝導性粒子が板形状である場合には、対角長さ/厚みが、例えば、10000以下、好ましくは、10〜1000である。
【0057】
また、熱伝導性粒子の熱伝導率は、例えば、1W/m・K以上、好ましくは、2W/m・K以上、さらに好ましくは、3W/m・K以上であり、通常、1000W/m・K以下である。熱伝導性粒子の熱伝導率は、例えば、熱線法(プローブ法)によって測定される。
【0058】
熱伝導性粒子は、市販品を用いることができ、そのような市販品として、例えば、窒化ホウ素粒子では、HP−40(水島合金鉄社製)、PT620(モメンティブ社製)などが挙げられ、例えば、水酸化アルミニウム粒子では、ハイジライトH−10、ハイジライトH−32、ハイジライトH−42、ハイジライトH−100−MEなどのハイジライトシリーズ(昭和電工社製)などが挙げられ、例えば、酸化アルミニウム粒子では、AS−50(昭和電工社製)などが挙げられる。また、熱伝導性粒子の市販品として、例えば、水酸化マグネシウム粒子では、KISUMA 5A(協和化学工業社製)などが挙げられ、例えば、アンチモンドープ酸化錫粒子では、SN−100S、SN−100P、SN−100D(水分散品)などのSNシリーズ(石原産業社製)などが挙げられ、酸化チタン粒子では、TTO−50、TTO−51などのTTOシリーズ(石原産業社製)や、ZnO−310、ZnO−350、ZnO−410などのZnOシリーズ(住友大阪セメント社製)などが挙げられる。
【0059】
熱伝導性粒子は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0060】
熱伝導性粒子の配合割合は、ポリマー成分100質量部に対して、例えば、10〜1000質量部、好ましくは、50〜800質量部、さらに好ましくは、100〜350質量部である。熱伝導性粒子の配合割合が上記範囲を超える場合には、樹脂層の可撓性が低下して、粘着力(後述する加熱後粘着力)が低下する場合がある。一方、熱伝導性粒子の配合割合が上記範囲に満たない場合には、熱伝導性を十分に向上させることができない場合がある。
【0061】
また、粘着剤組成物には、好ましくは、さらに、粘着付与剤を含有させる。
【0062】
粘着付与剤は、補強層と成形品との密着性を向上させたり、あるいは、成形品の補強時の補強性を向上させるために、粘着剤組成物に含有される。
【0063】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、石油系樹脂(例えば、脂環族石油系樹脂(シクロアルキル石油系樹脂)、脂肪族−芳香族共重合体石油系樹脂、芳香族石油系樹脂などの炭化水素石油系樹脂など)、フェノール系樹脂(例えば、テルペン変性フェノール樹脂など)などが挙げられる。
【0064】
粘着付与剤の軟化点は、例えば、50〜150℃、好ましくは、50〜130℃である。
【0065】
なお、粘着付与剤の軟化点は、環球法によって測定される。
【0066】
粘着付与剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0067】
これら粘着付与剤のうち、好ましくは、石油系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられ、さらに好ましくは、石油系樹脂が挙げられる。
【0068】
粘着付与剤の配合割合は、ポリマー成分100質量部に対して、例えば、40〜200質量部、好ましくは、50〜170質量部である。
【0069】
粘着付与剤の配合割合が上記した範囲に満たないと、補強層と成形品との密着性を十分に向上させたり、あるいは、成形品の補強時の補強性を十分に向上させることができない場合がある。また、粘着付与剤の配合割合が上記した範囲を超えると、補強層が脆くなる場合がある。
【0070】
また、粘着剤組成物には、上記した成分の他に、充填剤、シランカップリング剤、老化防止剤、軟化剤(例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイルなど)、揺変剤(例えば、モンモリロナイトなど)、滑剤(例えば、ステアリン酸など)、顔料、スコーチ防止剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、防カビ剤、難燃剤などの添加剤を添加することもできる。
【0071】
充填剤は、上記した熱伝導性粒子を除く粒子で、具体的には、熱絶縁性粒子である。
【0072】
熱絶縁性粒子としては、例えば、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、白艶華など)、ケイ酸マグネシウム(例えば、タルクなど)、ベントナイト(例えば、有機ベントナイトなど)、クレー、アルミニウムシリケート、カーボンブラックなどが挙げられる。充填剤は、単独使用または併用することができる。好ましくは、炭酸カルシウム、カーボンブラックが挙げられる。
【0073】
充填剤の熱伝導率は、通常、1.0W/m・K未満である。
【0074】
シランカップリング剤は、接着性、耐久性、親和性(ポリマー成分および熱伝導粒子間の親和性)を向上させるために、必要により、配合される。
【0075】
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤、例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、例えば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。シランカップリング剤は、単独使用または併用することができる。
【0076】
老化防止剤としては、例えば、アミン−ケトン系、芳香族第二級アミン系、フェノール系、ベンズイミダゾール系(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾールなど)、チオウレア系、亜リン酸系などが挙げられる。老化防止剤は、単独使用または併用することができる。好ましくはベンズイミダゾール系が挙げられる。
【0077】
添加剤の添加割合は、ポリマー成分100質量部に対して、とりわけ、充填剤で、例えば、1〜200質量部であり、シランカップリング剤で、例えば、0.01〜10質量部、好ましくは、0.02〜5質量部であり、老化防止剤で、例えば、0.1〜5質量部である。
【0078】
そして、粘着剤組成物は、上記した各成分を上記した配合割合において配合して、攪拌混合することにより調製することができる。
【0079】
また、補強層を拘束層の表面(片面)に形成して、補強層を拘束層によって支持することができる。
【0080】
拘束層は、貼着および加熱後の補強層に靱性を付与するために必要により設けられ、シート状をなし、また、軽量および薄膜で、補強層と密着一体化できる材料から形成され、具体的には、ガラスクロス、樹脂含浸ガラスクロス、不織布、金属箔、カーボンファイバー、ポリエステルフィルムなどが挙げられる。
【0081】
ガラスクロスは、ガラス繊維を布にしたものであって、公知のガラスクロスが挙げられる。
【0082】
樹脂含浸ガラスクロスは、上記したガラスクロスに、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの合成樹脂が含浸処理されているものであって、公知のものが挙げられる。なお、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂、EVA−塩化ビニル樹脂共重合体などが挙げられる。また、上記した熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂は、それぞれ、単独使用または併用することができる。
【0083】
不織布は、例えば、木材繊維(木材パルプなど)、セルロース系繊維(例えば、レーヨンなどの再生セルロース系繊維、例えば、アセテートなどの半合成セルロース系繊維、例えば、麻、綿などの天然セルロース系繊維、例えば、それらの混紡糸など)、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、セルロース系繊維(麻、あるいは麻および他のセルロース系繊維)などの繊維から形成される不織布が挙げられる。
【0084】
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔やスチール箔などの公知の金属箔が挙げられる。
【0085】
カーボンファイバーは、炭素を主成分とする繊維を布にしたものであって、公知のものが挙げられる。
【0086】
ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0087】
これら拘束層のうち、密着性、強度およびコストを考慮すると、好ましくは、樹脂含浸ガラスクロスが挙げられる。
【0088】
また、拘束層の厚みは、例えば、0.05〜2.0mm、好ましくは、0.1〜1.0mmである。
【0089】
補強層を拘束層の表面に形成する方法としては、例えば、上記した各成分を、上記した配合割合において、公知の溶媒(例えば、トルエンなど)または水中に、溶解または分散させて、溶液または分散液を調製した後、得られた溶液または分散液を、拘束層の表面に塗布した後、乾燥する方法(直接形成法)が挙げられる。
【0090】
あるいは、補強層を拘束層の表面に形成する方法として、例えば、上記により得られた溶液または分散液を、後述する離型フィルムの表面に塗布した後、乾燥することにより、補強層を形成し、その後、補強層を拘束層の表面に転写する方法(転写法)が挙げられる。
【0091】
さらには、上記した各成分(上記した溶媒および水を除く。)を、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機などによって直接混練して混練物を調製した後、例えば、カレンダー成形、押出成形あるいはプレス成形などによって、混練物をシート状に成形して補強層を形成し、これを拘束層の表面に積層する方法(直接形成法)も挙げられる。具体的には、混練物を、拘束層と離型フィルム(後述)との間に配置して挟み、その後、それらを、例えば、プレス成形によって、シート状に圧延する。あるいは、形成された補強層を離型フィルムの表面に積層し、その後、補強層を拘束層の表面に転写する方法(転写法)が挙げられる。
【0092】
このようにして形成される補強層の厚みは、例えば、0.02〜3.0mm、好ましくは、0.03〜1.3mmである。また、補強層の厚みを、例えば、0.2〜2.0mm、好ましくは、0.5〜1.5mmに設定することもできる。
【0093】
このようにして得られる熱伝導性補強シートの厚みは、例えば、0.25〜5.0mm、好ましくは、0.4〜2.3mmである。また、熱伝導性補強シートの厚みを、例えば、0.3〜3mm、好ましくは、0.3〜1.8mmに設定することもできる。
【0094】
熱伝導性補強シートの厚みが上記した範囲を超える場合には、熱伝導性補強シートの軽量化を図ることが困難となる場合があり、また、製造コストが増大する場合がある。熱伝導性補強シートの厚みが上記した範囲に満たない場合には、補強性を十分に向上させることができない場合がある。
【0095】
なお、得られた熱伝導性補強シートには、必要により、補強層の表面(拘束層が貼着されている裏面に対して反対側の表面)に、実際に使用するまでの間、離型フィルム(セパレータ)を貼着しておくこともできる。
【0096】
離型フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの合成樹脂フィルムなど、公知の離型フィルムや、ポリエチレンなどをラミネートした紙フィルムが挙げられる。
【0097】
このようにして形成される熱伝導性補強シート(の補強層)を厚み1.0mmのアルミニウム板に貼着し、80℃で10分間加熱後の1mm変位の曲げ強度が、10N以上、好ましくは、12N以上であり、通常、30N以下、好ましくは、20N以下である。
【0098】
なお、上記した1mm変位の曲げ強度は、熱伝導性補強シートにより補強された厚み1.0mmのアルミニウム板を、長さ150mm×幅25mmの大きさに外形加工して試験片を得た後、その試験片を、万能試験機により、支点間距離を100mmとし、試験片の中央(長さ方向および幅方向中央)を、直径10mmの圧子で50mm/分の速度でアルミニウム板側から押圧する三点曲げ試験により、測定される。
【0099】
また、熱伝導性補強シートのアルミニウム板に対する貼着では、補強層とアルミニウム板とを接触させる。
【0100】
なお、厚み1.0mmのアルミニウム板のみの1mm変位の曲げ強度は、通常、7.0N程度である。
【0101】
1mm変位の曲げ強度は、押圧開始から圧子が1mm変位した時における曲げ強度(強さ)である。
【0102】
1mm変位時の曲げ強度が上記した範囲内であれば、成形品を確実に補強することができる。
【0103】
また、熱伝導性補強シートは、補強層をアルミニウム板に常温で貼着し、80℃で10分間加熱後に、剥離速度300mm/分で90度ピール試験により測定されるアルミニウム板に対する粘着力が、例えば、4N/25mm以上、好ましくは、10N/25mm以上、さらに好ましくは、50N/25mm以上であり、通常、200N/25mm以下、好ましくは、160N/25mm以下、さらに好ましくは、100N/25mm以下である。
【0104】
なお、上記した粘着力は、加熱後粘着力と定義される。
【0105】
加熱後粘着力は、JIS Z0237(2000年)に準拠して測定される。
【0106】
加熱後粘着力が、上記した範囲内であるので、比較的低い温度(80℃)の加熱により、補強層によって、拘束層と成形品とを強固に密着させることができる。
【0107】
なお、上記した熱伝導性補強シートの粘着力は、対応する補強層の粘着力と実質的に同一である。
【0108】
また、補強層の熱伝導率は、0.25W/m・K以上、好ましくは、0.30W/m・K以上、さらに好ましくは、0.45W/m・K以上であり、通常、10W/m・K以下である。
【0109】
補強層の熱伝導率は、下記式により算出される。
【0110】
熱伝導率=(熱拡散率)×(補強層の単位体積当たりの熱容量)
なお、熱拡散率は、熱拡散測定装置により測定され、また、補強層の単位体積当たりの熱容量は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される。
【0111】
補強層の熱伝導率が上記範囲にあるので、成形品の熱伝導性を向上させることができる。
【0112】
そして、本発明の熱伝導性補強シートは、成形品の補強に用いられる。
【0113】
成形品としては、補強が必要な成形品であれば、特に限定されず、例えば、各種産業製品に用いられる成形品が挙げられ、具体的には、冷蔵庫、洗濯機、空調屋外機などの家庭電化製品の筐体、例えば、モータなどの電気機器の筐体、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの画像表示装置や、ノートブック型パーソナル・コンピューターなどのモバイル機器などの電子機器の筐体などが挙げられる。
【0114】
そのような筐体を形成する材料としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄、銅、金、銀、クロム、ニッケル、および、それらの合金などの金属材料、例えば、上記した合成樹脂などの樹脂材料などが挙げられる。なお、合成樹脂として例示する熱可塑性樹脂として、上記した例示の他に、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂なども挙げられる。
【0115】
図1は、本発明の熱伝導性補強シートを成形品に貼着して密着させる、本発明の成形品の補強方法の一実施形態を示す説明図を示す。
【0116】
次に、図1を参照して、本発明の熱伝導性補強シートを成形品に貼着して密着させる、本発明の成形品の補強方法の一実施形態について説明する。
【0117】
熱伝導性補強シート1は、図1(a)に示すように、拘束層3に補強層2が積層され、補強層2の表面(拘束層3が積層されている裏面に対して反対側の表面)に必要により離型フィルム6が貼着されている。
【0118】
また、成形品4は、図1(b)に示すように、上記した各種産業製品に用いられる筐体であって、例えば、板状部分を備えており、より具体的には、板状部分において、外観に現れる外面7と、内部に向き、外観に現れない内面8とを備えるように形成されている。
【0119】
そして、熱伝導性補強シート1を成形品4に貼着するには、図1(a)の仮想線で示すように、まず、補強層2の表面から離型フィルム6を剥がして、次いで、図1(b)に示すように、その補強層2の表面を、成形品4の内面8に接触させ、必要により、圧着する。熱伝導性補強シート1の圧着では、例えば、0.15〜10MPa程度の圧力で、加圧する。
【0120】
さらに、必要により、加圧とともに加熱(熱圧着)することもできる。つまり、熱伝導性補強シート1を予め加熱し、次いで、加熱した熱伝導性補強シート1を成形品4に貼着する。
【0121】
熱圧着の条件は、温度が、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上、さらに好ましくは、100℃以上、通常、成形品4の耐熱温度以下であり、具体的には、例えば、130℃以下、好ましくは、30〜120℃、さらに好ましくは、80〜110℃である。
【0122】
これにより、熱伝導性補強シート1を成形品4に貼着する。
【0123】
その後、熱伝導性補強シート1が貼着された成形品4を加熱する。
【0124】
加熱温度は、80℃以上、好ましくは、90℃以上、さらに好ましくは、100℃以上、通常、成形品4の耐熱温度以下であり、具体的には、例えば、130℃以下、好ましくは、30〜120℃、さらに好ましくは、80〜110℃である。また、加熱時間は、例えば、0.5〜20分間、好ましくは、1〜10分間である。
【0125】
加熱温度および加熱時間が上記した範囲に満たないと、成形品4と拘束層3とを十分に密着させることができず、あるいは、成形品4の補強時の補強性を十分に向上させることができない場合がある。加熱温度および加熱時間が上記した範囲を超えると、成形品4が劣化したり、溶融してしまう場合がある。
【0126】
上記した成形品4の加熱は、熱伝導性補強シート1が貼着された成形品4を、成形品4の製造の乾燥工程における乾燥炉に投入することにより、実施する。
【0127】
あるいは、成形品4の製造において、乾燥工程がない場合には、上記した乾燥炉への投入に代えて、ヒートガンなどの部分的な加熱装置を用いて、熱伝導性補強シート1のみを加熱する。
【0128】
あるいは、上記した加熱装置を用いて、成形品4のみ、さらには、熱伝導性補強シート1と成形品4との両方を加熱することもできる。なお、成形品4のみを加熱する場合には、加熱装置の熱が熱伝導性補強シート1に熱伝導する。
【0129】
そして、熱伝導性補強シート1を成形品4に貼着して、熱伝導性補強シート1および/または成形品4を加熱することにより、熱伝導性補強シート1を成形品4に密着させる。
【0130】
その後、必要により、熱伝導性補強シート1の表面(内面、つまり、拘束層3の表面)に、例えば、図示しない成形品4の内部に収容され、発熱する部品(図2(b)参照)を配置する。図示しない部品は、拘束層3の表面と直接接触している。
【0131】
そして、上記した熱伝導性補強シート1は、特定温度における曲げ強度が特定範囲であり、かつ、熱伝導率が特定範囲にあるので、熱伝導性補強シート1を成形品4に貼着し、次いで、特定温度で加熱することにより、熱伝導性補強シート1を成形品4に密着させることにより、成形品4の機械強度を向上させて、成形品4を確実に補強することができるとともに、成形品4の熱伝導性を向上させることができる。
【0132】
その結果、成形品4の機械強度および熱伝導性の両方を向上させることができる。
【0133】
また、上記した図1に示す熱伝導性補強シート1は、拘束層3を備えているので、成形品4の機械強度をより一層向上させることができる。
【0134】
一方、上記した図1の説明では、熱伝導性補強シート1に拘束層3を設けているが、例えば、図2(a)に示すように、拘束層3を設けることなく、補強層2のみから熱伝導性補強シート1を形成することもできる。
【0135】
補強層2のみから熱伝導性補強シート1を形成すれば、図2(b)に示すように、成形品4の内部に収容され、発熱する部品9と補強層2とを直接接触させることができる。そのため、部品9が発熱するときに、かかる熱を補強層2を介して成形品4に迅速に熱伝導(放熱)させることができる。
【0136】
なお、上記した説明では、補強層2を粘着剤組成物からなる1枚のシートのみから形成しているが、例えば、図1および図2の破線で示すように、補強層2の厚み方向途中に、不織布5を介在させることもできる。
【0137】
不織布5は、上記した不織布と同様のものが挙げられる。不織布5の厚みは、例えば、0.01〜0.3mmである。
【0138】
このような熱伝導性補強シート1を製造するには、例えば、直接形成法では、拘束層3の表面に、第1補強層を積層し、また、第1補強層の表面(拘束層3が積層されている裏面に対して反対側の表面)に不織布5を積層し、その後、不織布5の表面(第1補強層が積層されている裏面に対して反対側の表面)に第2補強層を積層する。
【0139】
転写法では、不織布5を、第1補強層および第2補強層によって、不織布5の表面側および裏面側の両側から挟み込む。詳しくは、まず、2枚の離型フィルム6の表面に、第1補強層および第2補強層をそれぞれ形成し、次いで、第1補強層を不織布5の裏面に転写し、また、第2補強層を不織布5の表面に転写する。
【0140】
不織布5を介在させることにより、補強層2を、補強したい成形品4の強度に応じて、厚い厚みで容易に形成することができる。
【実施例】
【0141】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。
【0142】
実施例1〜9および比較例1
表1に示す配合処方において、各成分を質量部基準で配合して、120℃に予め加熱したミキシングロールで混練することにより、粘着剤組成物の混練物を調製した。
【0143】
次いで、調製した粘着剤組成物の混練物を、エポキシ樹脂が含浸された厚み0.18mmの樹脂含浸ガラスクロス(拘束層)と、離型フィルムとの間に配置して挟み、その後、120℃のプレス成形により、混練物をシート状に圧延して、厚み1.3mmの熱伝導性補強シートを作製した。(図1(a)参照)。なお、補強層の厚みは、1.12mmであった。
【0144】
比較例2および3
補強層として、シリコーン樹脂系熱伝導材(シート)1および2をそのまま用いた以外は、実施例1〜9および比較例1と同様に処理して、比較例2および3の熱伝導性補強シートをそれぞれ作製した。
【0145】
(評価)
得られた実施例1〜9および比較例1〜3について、曲げ強度、粘着力および熱伝導率を次のように評価した。その結果を表1に示す。
1)熱伝導性補強シートの曲げ強度
実施例1〜9および比較例1〜3の熱伝導性補強シートを、厚み1.0mmのアルミニウム板に貼着し、これらを80℃で10分間加熱した後、三点曲げ試験により、1mm変位時の曲げ強度を測定した。
【0146】
なお、三点曲げ試験では、熱伝導性補強シートを厚み1.0mmのアルミニウム板に貼着し、150mm×25mmの大きさに外形加工して試験片を得た後、試験片を、万能試験機(ミネベア社製)により、支点間距離を100mmとし、試験片の中央(長さ方向および幅方向中央)を、直径10mmの圧子で50mm/分の速度でアルミニウム板側から押圧した。
【0147】
また、熱伝導性補強シートのアルミニウム板に対する貼着では、補強層とアルミニウム板とを接触させた。
【0148】
その結果を表1に示す。
【0149】
なお、熱伝導性シートを設けない厚み1.0mmのアルミニウム板のみについても、上記と同様に測定したところ、アルミニウム板の1mm変位時の強度が、7.0(N)であった。
2)補強層の粘着力(加熱後粘着力)
実施例1〜9および比較例1〜3において形成した補強層のみを、剥離速度300mm/分でJIS Z0237(2000年)の90度ピール試験によって、アルミニウム板に対する次に述べる粘着力を測定した。
<加熱後粘着力>
まず、実施例1〜9および比較例1〜3の補強層のみを、常温(25℃)でアルミニウム板に貼着し、次いで、それらを80℃で10分間加熱した後に、アルミニウム板に対する加熱後粘着力を測定した。その結果を表1に示す。
3)補強層の熱伝導率
実施例1〜9および比較例1〜3の補強層について、熱拡散率および単位体積当たりの熱容量をそれぞれ測定し、それらを乗じることにより、熱伝導率を算出した。
【0150】
なお、熱拡散率は、熱拡散率・熱伝導率測定装置(商品名「アイフェイズ・モバイル」、アイフェイズ社製)によって測定し、熱容量は、示差走査熱量計(DSC)によって測定した。
【0151】
その結果を表1に示す。
【0152】
【表1】

【0153】
なお、表1の補強層(粘着剤組成物)の各成分の数値は、配合質量部数を示す。
【0154】
また、表1に示す各成分の詳細を以下に示す。
【0155】
T432:商品名「アサプレンT432」、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン比:30/70(質量基準)、25質量%トルエン溶液粘度(25℃)3100mPa・s、MFR(190℃、2.16kg):0g/10分、MFR(200℃、5kg):1g/10分未満、旭化成ケミカルズ社製
A:商品名「タフプレンA」、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン比:40/60(質量基準)、25質量%トルエン溶液粘度(25℃)650mPa・s、MFR(190℃、2.16kg):2.6g/10分、MFR(200℃、5kg):13g/10分、旭化成ケミカルズ社製
H1041:商品名「タフテックH1041」、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン/(エチレンおよびブタジエン)比:30/70(質量基準)、MFR(190℃、2.16kg):0.3g/10分、MFR(200℃、5kg):3g/10分、旭化成ケミカルズ社製
H1052:商品名「タフテックH1052」、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン/(エチレンおよびブタジエン)比:20/80(質量基準)、MFR(190℃、2.16kg):3g/10分、MFR(200℃、5kg):10g/10分、旭化成ケミカルズ社製
ハイジライトH−32:商品名、水酸化アルミニウム、平均粒子径:8μm、バルク形状、熱伝導率4.5W/m・K、昭和電工社製
ハイジライトH−10:商品名、水酸化アルミニウム、平均粒子径:55μm、バルク形状、熱伝導率4.5W/m・K、昭和電工社製
ハイジライトH−100−ME:商品名、水酸化アルミニウム、平均粒子径:75μm、バルク形状、熱伝導率4.5W/m・K、昭和電工社製
ペトロタック90HM:商品名、脂肪族−芳香族共重合体石油系樹脂、軟化点(環球法)88℃、東ソー社製
ペトロタック100:商品名、脂肪族−芳香族共重合体石油系樹脂、軟化点(環球法)96℃、東ソー社製
アルコンM100:商品名、脂環族石油系樹脂、軟化点(環球法)100℃、荒川化学工業社製
アルコンP100:商品名、脂環族石油系樹脂、軟化点(環球法)100℃、荒川化学工業社製
旭♯50:商品名、カーボンブラック、熱絶縁性粒子(充填剤)、70nm、バルク形状、旭カーボン社製
重質炭酸カルシウム:熱伝導率0.6W/m・K、丸尾カルシウム社製
シリコーン樹脂系熱伝導材1:商品名「TC−100SP−1.7」、シート状、厚み1.0mm、信越化学工業社製
シリコーン樹脂系熱伝導材2:商品名「TC−100THS」、シート状、厚み1.0mm、信越化学工業社製
【符号の説明】
【0156】
1 熱伝導性補強シート
2 補強層
3 拘束層
4 成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強層を備える熱伝導性補強シートであって、
前記熱伝導性補強シートを厚み1.0mmのアルミニウム板に貼着し、80℃で10分間加熱後の1mm変位の曲げ強度が10N以上、かつ、前記補強層の熱伝導率が0.25W/m・K以上であることを特徴とする、熱伝導性補強シート。
【請求項2】
前記補強層をアルミニウム板に貼着し、80℃で10分間加熱後に、剥離速度300mm/分でJIS Z0237(2000年)の90度ピール試験により測定されるアルミニウム板に対する粘着力が、4N/25mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝導性補強シート。
【請求項3】
前記補強層が、熱接着型の粘着剤組成物から形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱伝導性補強シート。
【請求項4】
前記粘着剤組成物が、
共役ジエン類を含む単量体の重合体および/または前記重合体の水素添加物と、
熱伝導性粒子と
を含有していることを特徴とする、請求項3に記載の熱伝導性補強シート。
【請求項5】
前記粘着剤組成物が、さらに、粘着付与剤を含有していることを特徴とする、請求項4に記載の熱伝導性補強シート。
【請求項6】
前記補強層の片面に積層される拘束層を備えていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱伝導性補強シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱伝導性補強シートを成形品に貼着し、次いで、80℃以上に加熱して、前記熱伝導性補強シートを前記成形品に密着させることを特徴とする、成形品の補強方法。
【請求項8】
前記熱伝導性補強シートを、予め、80℃以上に加熱し、次いで、前記熱伝導性補強シートを前記成形品に貼着することを特徴とする、成形品の補強方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱伝導性補強シートが貼着されて密着していることを特徴とする、成形品。
【請求項10】
前記成形品が、家庭電化製品の筐体、電気機器の筐体および電子機器の筐体からなる群から選択される少なくとも1つの筐体であることを特徴する、請求項9に記載の成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−11714(P2012−11714A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151699(P2010−151699)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】