説明

熱供給システム

【課題】補助熱源が作動して省エネルギー化を図り難くなってしまうのを抑制することができる熱供給システムを提供する。
【解決手段】排熱を発生する発熱装置1と補助熱源2とから熱媒が回収した熱を暖房用端末7に供給する熱供給システムである。省エネ運転時には、暖房用端末7で要求される熱量が、発熱装置1から熱媒により回収される熱量以下の場合でも、補助熱源2を作動させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば発電装置等の排熱を発生する発熱装置から熱を回収して暖房用端末に供給する熱供給システムが採用されている。(例えば特許文献1参照)
この熱供給システムは、熱媒が循環する熱媒循環回路に、排熱を発生する発熱装置と、熱を発生する補助熱源と、熱媒循環回路における熱媒の加熱に伴う膨張、収縮による体積変化を吸収する開放型の暖房タンクと、複数の暖房用端末と、が接続される。熱媒は、発熱装置で発生する排熱を回収して暖房用端末に供給するもので、暖房用端末で熱が要求されない場合には、熱媒循環回路に熱交換器を介して接続される給湯用タンクに高温の熱媒によって発生する熱が貯留され、排熱を捨てずに有効に利用することができる。
【0003】
そして、暖房用端末で要求される熱量が、熱媒が発熱装置から回収する熱量よりも大きい場合には、補助熱源を作動させて不足分を補充するものである。
【0004】
ところで、従来の熱供給システムにあっては、発熱装置の作動/停止及び補助熱源の作動/停止/発熱量を制御して可及的に無駄を抑えるように運転するものが開発されているが、暖房用端末で要求される熱量が発熱装置から回収する熱量よりも大きい場合には、補助熱源が作動してしまい、省エネルギー化を図り難いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−343132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、補助熱源が作動して省エネルギー化が図り難くなるのを防止することができる熱供給システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、排熱を発生する発熱装置1と、熱を発生する補助熱源2と、前記発熱装置1の作動/停止及び補助熱源2の作動/停止/発熱量を制御する熱源制御部3と、主熱媒が循環する主熱媒回路4と、前記主熱媒回路4に設けられ前記発熱装置1及び補助熱源2で発生した熱をそれぞれ前記主熱媒が回収するための排熱回収用熱交換器10及び補助熱源用熱交換器20と、前記主熱媒回路4に設けられ内部の熱交換器を介して前記主熱媒から回収した熱を湯として貯留する給湯タンク5と、前記主熱媒回路4に前記給湯タンク5と並列に設けられる流路41と、前記流路41に設けられ前記流路41を流れる主熱媒から暖房用熱媒が熱を回収するための熱交換器60と、途中に前記熱交換器60が設けられ前記暖房用熱媒が循環する暖房用熱媒回路61と、途中に暖房用の排熱回収用熱交換器90が設けられ内部に前記発熱装置1で発生した熱を回収する熱媒が循環する暖房用排熱回路91と、前記暖房用熱媒回路61の途中に設けられる暖房タンク6と、前記暖房用熱媒回路61の途中に互いに並列に設けられ前記暖房用熱媒から熱を得て暖房を行う複数の暖房用端末7と、前記暖房用端末7毎に設けられ内部を流れる前記暖房用熱媒の単位時間当たりの流量を調節する制御弁71と、前記各暖房用端末7毎の暖房の実行/停止/暖房量の設定入力を行う暖房操作部80と、前記暖房操作部80で設定入力された前記各暖房用端末7の設定情報を基に前記各暖房用端末7の制御弁71の制御を行う暖房制御部8と、前記熱源制御部3と前記暖房制御部8との間で通信を行うための通信手段と、を備え、
前記暖房操作部80で設定された前記各暖房用端末7の設定情報に基づき、前記暖房用熱媒が所定の温度となり且つ単位時間当たりの流量が所定値となるように、前記熱源制御部3が前記発熱装置1の作動/停止及び前記補助熱源2の作動/停止/発熱量を制御すると共に前記暖房制御部8が前記制御弁71を制御する熱供給システムであって、前記暖房用排熱回路91を流れる熱媒が前記発熱装置1から回収する熱量が小さくて、前記暖房用熱媒の温度が前記各暖房用端末7の要求温度に達しない場合は、前記熱媒制御部3が前記発熱装置1及び前記補助熱源2を作動させるようにする通常運転が実行可能に構成されており、
通常運転の代わりに省エネ運転を選択的に実行可能であり、前記省エネ運転は、前記暖房操作部80で設定入力可能であると共に、前記暖房操作部80で省エネ運転が選択された場合、前記熱源制御部3は補助熱源2の作動を禁止することを特徴とする。
【0008】
省エネ運転を行うことで、補助熱源2の作動が禁止されるため、従来の運転(通常運転)では全暖房用端末7で要求される暖房用熱媒の温度が発熱装置1からの熱回収により得られる熱媒温度より大きい場合に補助熱源2が作動してしまうところ、全暖房用端末7で要求される暖房用熱媒の温度が発熱装置1からの熱回収により得られる熱媒温度より大きい場合でも補助熱源2が作動しないため、省エネルギー化を図ることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、通常運転時に前記暖房制御部8が行う前記制御弁71に対する制御に対し、省エネ運転時には、前記暖房制御部8が前記暖房用熱媒の温度に基づいて前記制御弁71に対する制御を補正することを特徴とする。
【0010】
これにより、熱量の不足分を低く抑えることができる。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、前記暖房用端末7が、換気機能、送風機能、暖房用熱媒から得た熱により加熱した温風の噴出機能を備えた浴室換気乾燥暖房機であり、省エネ運転時には、前記補助熱源2の作動が禁止されて前記発熱装置1が作動した状態での温風の噴出と、換気と送風とにより乾燥運転を行うことを特徴とする。
【0012】
省エネ運転により前記補助熱源2の作動が禁止され、前記発熱装置1のみ作動するため、省エネルギー化が図れるもので、例えば夕刻や夜就寝する前に衣類を干しておき、翌日に乾燥した衣類を取り込もうとする場合に有効である。
【発明の効果】
【0013】
従来の熱供給システムにおいては、暖房用端末で要求された熱量に対し発熱装置及び補助熱源からの回収熱量が不足しないように運転を行うのに対し、本発明の省エネ運転においては、確実に補助熱源の作動を行わないため、省エネルギー化を確実に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の熱供給システムの一実施形態の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明の熱供給システムは、発熱装置1及び補助熱源2と、前記発熱装置1及び補助熱源2で発生した熱を回収する熱媒(以下「主熱媒」とする)が循環する主熱媒回路4と、暖房用端末7と、で主体が構成される。
【0017】
発熱装置1は、本実施形態では発電運転により電気及び排熱を発生する原動機駆動式の発電装置であるが、燃料電池からなる発電装置であってもよく、また、発電装置でなくても排熱を発生する装置であれば特に限定されないものである。発熱装置1に発電装置を用いることで、所謂コージェネレーションシステムとなる。ここで、排熱とは、副次的に発生する熱のことであり、本来捨てられて利用されない熱を有効に利用することで省エネルギー化を図るものである。また、排熱ではないものの、本来利用されない太陽熱等を利用することで省エネルギー化を図るものであってもよく、この場合、発熱装置1として例えばソーラー温水器等が好適に用いられる。
【0018】
補助熱源2は、本実施形態では都市ガスやプロパンガス等を燃料とするガスバーナであるが、他の燃焼機器や電気ヒーター等、熱を発生するものであれば特に限定されない。
【0019】
発熱装置1及び補助熱源2は、熱源制御部3により制御される。熱源制御部3は、マイクロコンピュータからなり、制御プログラムにより制御を行うもので、前記発熱装置1の作動/停止、補助熱源2の作動/停止、更に発熱量の制御を行って熱利用運転を行うものである。熱源制御部3は、熱源操作部30での熱利用運転の開始操作により熱利用運転を開始し、熱利用運転の停止操作により熱利用運転を停止する。
【0020】
発熱装置1及び補助熱源2で発生した熱は、主熱媒により回収される。主熱媒は温水であり、発熱装置1及び補助熱源2は主熱媒回路4の途中に接続される排熱回収用熱交換器10及び補助熱源用熱交換器20にて、発熱装置1及び補助熱源2で発生した熱が直接的又は間接的に主熱媒に回収される。すなわち、発熱装置1で発生した熱を主熱媒が回収するにあたり、別の熱媒を介してもよく、本実施形態では、発熱装置1の内部に前記別の熱媒(以下「回収用熱媒」とする)が発熱装置1で発生した熱を回収するための熱交換器11を設け、回収用熱媒が循環する回収用回路12を排熱回収用熱交換器10の一次側に接続すると共に主熱媒回路4を二次側に接続し、発熱装置1で発生した熱を回収用熱媒を介して主熱媒が回収している。また、補助熱源2は、内部に設けられる補助熱源用熱交換器20にて高温の燃焼排気と主熱媒とが直接熱交換している。そして発熱装置1にあっても、内部に設けられる熱交換器11にて主熱媒が直接熱を得るようにしてもよい。
【0021】
また主熱媒回路4には、熱交換器(図示せず)を介して給湯タンク5が設けられる。給湯タンク5は、主熱媒の熱量を給湯用として貯留する密閉型のタンクであり、高温となった主熱媒と貯留している給水とが前記熱交換器を介して熱交換することにより、発熱装置1及び補助熱源2で発生した熱を蓄えるものである。発熱装置1が発生した熱全てを必要としない時でも、回収した熱量を給湯タンク5に貯留して発熱装置1が作動していない時に利用することが可能で、給湯タンク5はバッファとして機能する。また、給湯タンク5には出湯管51が接続されており、この出湯管51の途中から給湯利用の給湯管51aと風呂の湯張り用の湯張管51bとに分岐している。また、出湯管51の前記分岐箇所よりも上流側の部分に混合弁52が設けられ、この混合弁52に水道等の水源に接続される給水管53が接続される。これにより、給湯タンク5からの湯と水を混合弁52で混合して、適宜温度が調節された温水が給湯管51aや湯張管51bを介して吐出可能となっている。
【0022】
また主熱媒回路4には、給湯タンク5と並列に、熱交換器54及び熱交換器60を直列に接続した流路41が設けられる。熱交換器54の一次側には流路41が接続され、二次側に追い焚き用循環回路55が接続され、浴槽から吸入された浴水が熱交換器54にて加熱された後、再び浴槽に吐出可能となっている。
【0023】
給湯タンク5には、水道等の水源に接続される給水管56が接続され、給湯タンク5から出湯された分の水が補給される。また給湯タンク5には、途中に開閉弁58を備えたオーバーフロー管57が接続される。
【0024】
熱交換器60は、一次側に流路41が接続され、二次側に暖房用熱媒回路61が接続される。暖房用熱媒回路61は、暖房タンク6と、複数の暖房用端末7が接続され、内部を熱媒(以下「暖房用熱媒」とする)が流れるものである。暖房用端末7は、暖房用熱媒から熱を得て暖房を行うものであり、例えば暖房用熱媒としての温水を流して暖房を行う温水床暖房装置や、暖房用熱媒により加熱した温風を吹き出す浴室換気乾燥暖房機が好適に用いられるが、他の暖房装置であってもよく特に限定されない。暖房用端末7は内部に放熱流路70を備えており、暖房用熱媒が前記放熱流路70を流れる際に放熱して暖房が行われる。各暖房用端末7には、前記放熱流路70の内部を流れる前記暖房用熱媒の単位時間当たりの流量を調節する制御弁71がそれぞれ設けられる。本実施形態では暖房用端末7として、高温(例えば80℃程度)の暖房用熱媒を要する浴室換気乾燥暖房機からなる高温端末7aと、低温(例えば60℃程度)の暖房用熱媒を要する温水床暖房装置からなる複数の低温端末7bと、が接続されている。また制御弁71としては、開閉制御を行う熱動弁が設けられるが、比例弁であってもよく、単位時間当たりの流量が調節できれば特に限定されない。
【0025】
暖房タンク6は、暖房用熱媒を貯留する大気開放型のタンクで、暖房タンク6の暖房用熱媒の出口に往路61aが接続されると共に入口に復路61bが接続され、往路61a、放熱流路70、復路61bで暖房用熱媒回路61が構成される。また暖房タンク6には、水道等の水源に接続される給水管67が接続される。
【0026】
往路61aは、途中に暖房用熱媒の搬送手段となるポンプ64が接続され、ポンプ64よりも下流側の部分で高温端末7aと低温端末7bとにそれぞれ至る高温路62と低温路63とに分岐し、更に、低温路63はそれぞれ各暖房用端末7に至る分岐路63aが分岐している。なお、高温路62が複数の高温端末7aに向けて複数の分岐路に分岐しても勿論よい。復路61bは、各暖房用端末7からの流路が合流して暖房タンク6に接続されるもので、流路が合流した箇所の下流側の部分に排熱回収用熱交換器90が設けられる。また、高温路62と、復路61bの排熱回収用熱交換器90の下流側の部分とがバイパス弁66を備えたバイパス流路65で接続されている。排熱回収用熱交換器90は、一次側に復路61bが接続され、二次側に暖房用排熱回収回路91が接続される。暖房用排熱回収回路91は、排熱回収用熱交換器90から発熱装置1の熱交換機11へ向かう往路の下流端が、排熱回収用熱交換器10から発熱装置1の熱交換機11へ向かう往路の途中に接続され、発熱装置1の熱交換機11から排熱回収用熱交換器90へ向かう復路の上流端が、発熱装置1の熱交換機11から排熱回収用熱交換器10へ向かう復路の途中に三方弁13を介して接続される。本実施形態では、暖房用排熱回収回路91内を上記回収用熱媒が循環する。
【0027】
前記暖房用端末7に設けられた制御弁71は、暖房制御部8により制御される。暖房制御部8は、マイクロコンピュータからなり、制御プログラムにより制御を行うもので、暖房操作部80で設定入力された各暖房用端末7の設定情報を基に、各暖房用端末7に設けられた制御弁71の制御を行う。暖房操作部80は、各暖房用端末7における暖房の実行/停止/暖房量の設定入力を行うもので、設定情報を暖房制御部8へ無線又は有線で送信する。ここで、暖房量の設定は、暖房の温度(℃)を設定するものや、暖房レベル(例えば数℃の範囲)を強/中/弱や1段階〜5段階等のように段階的に設定するもの、等様々な設定の仕方があり、特に限定されない。また、暖房操作部80は、各暖房用端末7毎に別々に設けられてもよいし、一つにまとめて設けられてもよい。
【0028】
熱源制御部3と暖房制御部8とは、該熱源制御部3と暖房制御部8との間で無線又は有線で通信を行うための通信手段(図示せず)より通信を行う。
【0029】
以下、熱利用運転について説明する。熱利用運転には通常運転と省エネ運転とがあり、いずれかを選択する。通常運転と省エネ運転の選択は、暖房操作部80での設定入力により行われる。
【0030】
通常運転は、暖房操作部80において設定入力された各暖房用端末7毎の暖房の実行/停止/暖房量の設定情報に基づき、全暖房用端末7で要求された暖房用熱媒の温度に対し発熱装置1及び補助熱源2により加熱される暖房用熱媒の温度が不足することのないように運転するものである。暖房操作部80にて通常運転が設定入力されると、通信手段を介して熱源制御部3に送信され、熱源制御部3が発熱装置1の作動/停止及び補助熱源2の作動/停止/発熱量の制御を行う。
【0031】
そして、前記暖房操作部80で設定入力された各暖房用端末7の設定情報から算出される、全暖房用端末7で要求される暖房用熱媒の温度が、前記発熱装置1における加熱により維持できる場合は、前記熱源制御部3が発熱装置1を作動させると共に補助熱源2を作動させず、前記暖房量が前記発熱装置1における加熱により維持できない場合は、前記熱源制御部3が発熱装置1及び補助熱源2を作動させるように運転するものである。なお、前記発熱装置1の加熱による得られる暖房用熱媒の温度は、発熱装置1の最大出力での運転時の回収熱量と運転中の全暖房用端末7における出力により決定される。全暖房用端末7における出力合計が発熱装置1の最大出力を越えない場合は、暖房用熱媒の温度は、暖房用端末7が要求する設定温度通りに制御され、発熱装置1の最大出力を越える場合は、暖房用熱媒の温度(往き温度)が低下するが、その場合は、補助熱源2を作動させることにより、暖房用端末7が要求する設定温度通りに制御される。
【0032】
上記通常運転は、例えば発熱装置1からの回収熱量が3kWである場合、全暖房用端末7で要求される熱量の合計が3kW以下の場合、補助熱源2は作動させず発熱装置1のみの運転を行い、特に、全暖房用端末7で要求される熱量の合計が3kWに満たない場合には、発熱装置1で発熱した3kWのうち利用されなかった余剰分は、暖房タンク6に蓄熱される。暖房制御部8は、暖房操作部80にて暖房の実行が入力されていない暖房用端末7の制御弁71を閉とし、暖房の実行が入力された暖房用端末7の制御弁71を、該暖房用端末7の設定されている暖房量に基づいて制御する。本実施形態では、制御弁71が熱動弁であって開閉制御を行う。開閉制御は、開時間と閉時間の比率を変化させることで単位時間当たりの放熱量を制御する。
【0033】
また、全暖房用端末7で要求される熱量の合計が3kWより大きい場合、補助熱源2を作動して不足分を補充する。なお、発熱装置1からの回収熱量が3kWに限定されないのは勿論である。
【0034】
省エネ運転は、前記暖房操作部80で設定入力された各暖房用端末7毎の暖房の実行/停止/暖房量の設定にかかわらず、補助熱源2の作動を禁止して運転するものである。暖房操作部80にて省エネ運転が設定されると、通信手段8を介して熱源制御部3に送信され、熱源制御部3が発熱装置1の作動/停止を行うと共に補助熱源2は作動させないような制御を行う。
【0035】
上記省エネ運転は、例えば発熱装置1からの回収熱量が3kWである場合、全暖房用端末7で要求される熱量の合計が3kW以下の場合、補助熱源2は作動させず発熱装置1のみの運転を行い、通常運転と同じとなる。
【0036】
次に、全暖房用端末7で要求される熱量の合計が3kWより大きい場合、補助熱源2は作動させず発熱装置1のみの運転を行う。この場合、暖房用端末7で要求される熱量を発生させることはできず成り行き運転となる。
【0037】
上記本発明の熱供給システムにおいては、省エネ運転の場合には補助熱源2の作動が禁止されるため、全暖房用端末7で要求される熱量の合計が発熱装置1からの回収熱量より大きい場合には、補助熱源2が作動する従来の運転(通常運転)と比較して消費エネルギーが少なくて済み、省エネルギー化を図ることができる。
【0038】
従来のコージェネレーションシステムを用いた熱供給システムにおいても、省エネルギー化を図るための様々な運転方法が開発されているが、いずれも全暖房用端末7で要求された熱量の合計に対し発熱装置1及び補助熱源2からの回収熱量が不足しないように、発熱装置1の作動/停止及び補助熱源2の作動/停止/発熱量を制御して可及的に無駄を抑えるように最適化したりして運転するものである。言い換えれば、熱源側(発熱装置1及び補助熱源2)のみで最適な運転を行おうとするものである。従って、全暖房用端末7で要求された熱量の合計に対し発熱装置1からの回収熱量が不足する場合には、補助熱源2を作動させざるを得ず、できるだけ無駄を抑えるといえども消費エネルギーは大きくなる。
【0039】
これに対し本発明においては、熱源側のみならず暖房側(暖房用端末7)も併せて可及的に無駄を抑える運転を行うものであり、確実に補助熱源2の作動を行わず省エネルギー化を図ることができる。特に、暖房運転中、短時間だけ全暖房用端末7で要求される熱量の合計に対し発熱装置1からの回収熱量が不足する場合、従来の運転においては要求される熱量の合計に対し発熱装置1からの回収熱量が不足した時点で補助熱源2を作動すると共に、要求される熱量の合計に対し発熱装置1からの回収熱量で充足するようになった時点で補助熱源2を停止することとなり、短時間で補助熱源2の作動・停止が行われて非常に効率が悪い。このような場合には、省エネ運転においては、補助熱源2の作動・停止が行われず効率が悪くならず省エネルギー化を図ることができ、全暖房用端末7で要求される熱量の合計に対し供給される熱量が不足するのが短時間であるため、使用者が意に反して寒さを感じることも殆どなく実用上支障ないものである。
【0040】
また、省エネ運転において、全暖房用端末7で要求される熱量の合計に対し発熱装置1からの回収熱量が不足するのが長時間に亘る場合、使用者が意に反して寒さを感じる惧れがある。これを回避しようとする場合には、不足分を補充する制御を行うのが好ましく、例えば、省エネ運転で所定時間運転した後、自動的に通常運転に移行する、等の制御が挙げられる。
【0041】
以下、熱利用運転の具体例について説明する。
<具体例1>
まず、通常運転について説明する。暖房制御部8は、低温端末7b(温水床暖房装置)の制御について、表1に示すように、複数段階の目標放熱量が設定されており、暖房操作部80にて各暖房用端末7毎に任意の段階の目標放熱量を設定することができる。本例では15〜95(W/m)の12段階の目標放熱量が設定可能である。
【0042】
【表1】

【0043】
一つの低温端末7bのみで暖房運転を行う場合、低い方から2段階目までは、熱媒としての温水の温度を40℃とし、1サイクルを20分として、1サイクル中の開時間をそれぞれ3分〜10分の間で段階的に変化させることで、目標放熱量の放熱を行うものである。また、低い方から3段階目以降は、熱媒としての温水の温度を60℃とし、1サイクル中の開時間をそれぞれ5分〜20分の間で段階的に変化させることで、目標放熱量の放熱を行うものである。
【0044】
複数の低温端末7bを併用して暖房運転を行う場合、熱媒としての温水の温度を60℃とし、1サイクルを20分として、1サイクル中の開時間をそれぞれ2.5分〜20分の間で段階的に変化させることで、1〜6の全段階における目標放熱量の放熱を行うものである。
【0045】
また、一つ又は複数の低温端末7bと高温端末7a(浴室換気乾燥暖房機)とを併用して運転する場合、熱媒としての温水の温度を72℃とし、1サイクルを20分として、1サイクル中の開時間をそれぞれ2分〜11分の間で段階的に変化させることで、1〜6の全段階における目標放熱量の放熱を行うものである。なお、実際の放熱量は環境により変化するため、設計値である目標放熱量と一致しないことが多いが、誤差があっても実用上問題はないように設計されている。
【0046】
次に、省エネ運転について説明する。省エネ運転は、原則的に補助熱源2の作動を禁止するものであるが、ある条件で例外的に補助熱源2を作動させてもよい。本例では、省エネ運転は、完全省エネ運転と、部分省エネ運転の二つの運転のいずれかを選択して運転するものである。
【0047】
完全省エネ運転は、いかなる場合でも補助熱源2を作動させない運転である。
【0048】
部分省エネ運転は、所定の開始条件が満たされると補助熱源2を作動する。そして、所定の停止条件が満たされると補助熱源2を停止し、以降は、再び所定の開始条件が満たされない限り、全暖房用端末7で要求される熱量の合計に対し発熱装置1からの回収熱量が不足する場合でも補助熱源2を作動させないように運転するものである。
【0049】
所定の開始条件は、起動時や、暖房用端末7における放熱量を上げる場合等、要求される熱量の合計の変化量の下限値として設定されたり、あるいは、室温検知手段により室温を検知して、該室温の下限値として設定されたりするが、他の条件であってもよい。所定の停止条件は、経過時間や、室温の上限値として設定されたりするが、他の条件であってもよい。
【0050】
部分省エネ運転においては、大きな熱量が要求される場合に補助熱源2を作動させることで、長時間に亘って熱量が大きく不足する状態を回避して快適さを保ちながら、自動的に省エネ運転(全暖房用端末7で要求される熱量の合計に対し発熱装置1からの回収熱量が不足する場合でも補助熱源2を作動させない運転)に移行する。このため、起動時等に通常運転で運転し、その後、暖房操作部80を操作して省エネ運転に切り替えたりすることなくこれと同様の運転が可能である。
【0051】
また、完全省エネ運転及び部分省エネ運転のいずれの場合でも、全暖房用端末7で要求される熱量の合計に対し発熱装置1からの回収熱量が不足するのに補助熱源2を作動させない時、暖房制御部8が、通常運転時の暖房用端末7の制御弁71の制御に補正を加えた補正制御を行ってもよい。
【0052】
すなわち、全暖房用端末7で要求される熱量の合計に対し発熱装置1からの回収熱量が不足しているのに補助熱源2を作動させない場合、熱媒の温度が通常運転時の温度よりも下がってしまう。そこで、制御弁71の開時間を、通常運転時の開時間に対してある値又はある割合で増加させる補正を行うものである。開時間の補正量は、熱媒の温度や低下温度から所定の算出式により求めたり、予め各段階において熱媒の温度や低下温度から補正量を決めておいてもよく、適宜設定される。これにより、熱量の不足分を低く抑えることができる。
<具体例2>
本例では、高温端末7aとしての浴室換気乾燥暖房機の運転例である。
【0053】
浴室換気乾燥暖房機は、換気機能、送風機能、暖房用熱媒から得た熱により加熱した温風を噴出することによる暖房機能を備え、浴室に衣類等を干して乾燥させるための浴室乾燥運転を行うことができる。
【0054】
浴室乾燥運転は、省エネ運転が選択的に実行可能であり、暖房操作部80での設定入力により通常運転と省エネ運転のいずれかを選択する。
【0055】
通常運転は、高温路62に高温(80℃程度)の熱媒を流して浴室換気乾燥暖房機に供給し、浴室換気乾燥暖房機にて温風を生成して浴室に噴出し、衣類等を乾燥させるものであるが、放熱量が3〜5kWと大きいため必然的に補助熱源2が作動するものである。この時、温風の噴出に加え、換気を行うことで乾燥が促進される。衣類等は2〜3時間等で乾燥するため、通常運転は2〜3時間で終了するように設定される。なお、通常運転の運転時間は2〜3時間に限定されない。
【0056】
省エネ運転は、補助熱源2の作動が禁止され、発熱装置1のみの作動で運転がなされる。この時も、温風の噴出に加え、換気を行うことで乾燥が促進される。放熱量は最大で3kW程度であり乾燥能力が低いが、運転時間を長くして乾燥能力を補充するものである。この場合でも衣類等は8時間程度で乾燥するため、省エネ運転は8時間程度で終了するように設定される。なお、省エネ運転の運転時間は8時間程度に限定されない。
【0057】
本例では、衣類を2〜3時間等の短時間で乾燥させる必要がなく、例えば夕刻や夜就寝する前に衣類を干しておき、翌日に乾燥した衣類を取り込もうとする場合に、省エネルギー化が図れるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 発熱装置
10 排熱回収用熱交換器
11 熱交換器
12 回収用回路
2 補助熱源
20 補助熱源用熱交換器
3 熱源制御部
30 熱源操作部
4 主熱媒回路
41 流路
5 給湯タンク
51 出湯管
6 暖房タンク
60 熱交換器
61 暖房用熱媒回路
61a 往路
61b 復路
62 高温路
63 低温路
63a 分岐路
7 暖房用端末
7a 高温端末
7b 低温端末
70 放熱流路
71 制御弁
8 暖房制御部
80 暖房操作部
90 暖房用の排熱回収用熱交換器
91 暖房用排熱回収回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排熱を発生する発熱装置と、
熱を発生する補助熱源と、
前記発熱装置の作動/停止及び補助熱源の作動/停止/発熱量を制御する熱源制御部と、
主熱媒が循環する主熱媒回路と、
前記主熱媒回路に設けられ前記発熱装置及び補助熱源で発生した熱をそれぞれ前記主熱媒が回収するための排熱回収用熱交換器及び補助熱源用熱交換器と、
前記主熱媒回路に設けられ内部の熱交換器を介して前記主熱媒から回収した熱を湯として貯留する給湯タンクと、
前記主熱媒回路に前記給湯タンクと並列に設けられる流路と、
前記流路に設けられ前記流路を流れる主熱媒から暖房用熱媒が熱を回収するための熱交換器と、
途中に前記熱交換器が設けられ前記暖房用熱媒が循環する暖房用熱媒回路と、
途中に暖房用の排熱回収用熱交換器が設けられ内部に前記発熱装置で発生した熱を回収する熱媒が循環する暖房用排熱回路と、
前記暖房用熱媒回路の途中に設けられる暖房タンクと、
前記暖房用熱媒回路の途中に互いに並列に設けられ前記暖房用熱媒から熱を得て暖房を行う複数の暖房用端末と、
前記暖房用端末毎に設けられ内部を流れる前記暖房用熱媒の単位時間当たりの流量を調節する制御弁と、
前記各暖房用端末毎の暖房の実行/停止/暖房量の設定入力を行う暖房操作部と、
前記暖房操作部で設定入力された前記各暖房用端末の設定情報を基に前記各暖房用端末の制御弁の制御を行う暖房制御部と、
前記熱源制御部と前記暖房制御部との間で通信を行うための通信手段と、を備え、
前記暖房操作部で設定された前記各暖房用端末の設定情報に基づき、前記暖房用熱媒が所定の温度となり且つ単位時間当たりの流量が所定値となるように、前記熱源制御部が前記発熱装置の作動/停止及び前記補助熱源の作動/停止/発熱量を制御すると共に前記暖房制御部が前記制御弁を制御する熱供給システムであって、
前記暖房用排熱回路を流れる熱媒が前記発熱装置から回収する熱量が小さくて、前記暖房用熱媒の温度が前記各暖房用端末の要求温度に達しない場合は、前記熱媒制御部が前記発熱装置及び前記補助熱源を作動させるようにする通常運転が実行可能に構成されており、
通常運転の代わりに省エネ運転を選択的に実行可能であり、前記省エネ運転は、前記暖房操作部で設定入力可能であると共に、前記暖房操作部で省エネ運転が選択された場合、前記熱源制御部は補助熱源の作動を禁止することを特徴とする熱供給システム。
【請求項2】
通常運転時に前記暖房制御部が行う前記制御弁に対する制御に対し、省エネ運転時には、前記暖房制御部が前記暖房用熱媒の温度に基づいて前記制御弁に対する制御を補正することを特徴とする請求項1記載の熱供給システム。
【請求項3】
前記暖房用端末が、換気機能、送風機能、暖房用熱媒から得た熱により加熱した温風の噴出機能を備えた浴室換気乾燥暖房機であり、省エネ運転時には、前記補助熱源の作動が禁止されて前記発熱装置が作動した状態での温風の噴出と、換気と送風とにより乾燥運転を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の熱供給システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−13293(P2012−13293A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149327(P2010−149327)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】