説明

熱処理方法、及び熱処理装置

【課題】パーティクルの数量を低減して生産性を向上した熱処理方法、及び熱処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】熱処理装置1は、基板Sを有する熱処理室3と、熱処理室3に反応ガスを供給することにより基板S上のシリコン酸化膜と反応ガスとを反応させて反応生成物を生成する反応ガス供給系6と、熱処理室3で基板Sを加熱することにより反応生成物を熱処理室3から排気可能にするランプヒータ7とを有する。そして、熱処理室3に予め加熱したパージガスを導入するための第二加熱装置8Aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理方法、及び熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、所望のデバイス特性を得るために、各種の表面処理工程が実施されている。例えば、シリコン基板の表面に形成される自然酸化膜は、不純物領域とコンタクトプラグとの間のコンタクト抵抗の低抵抗化を図るために、コンタクトプラグを形成する前にシリコン基板の表面から化学的に除去される。
【0003】
自然酸化膜の除去方法としては、フッ素系の反応ガスを自然酸化膜の表面に吸着させて自然酸化膜を化学的にエッチングする方法が知られている。特許文献1は、三フッ化窒素(NF3 )等の反応ガスと水素ラジカルとを用い、水素ラジカルで反応ガスを還元することにより、シリコン基板表面に中間生成物であるエッチャント(例えば、NHXFY :x、yは任意の整数)を生成する。中間生成物であるエッチャントは、シリコン酸化膜と反応することにより反応生成物(例えば、アンモニア錯体)を生成する。反応生成物は、ウェハの加熱によって熱分解されて、アンモニアガス(NH3 )、フッ化水素ガス(HF )、四フッ
化シリコン(SiF4 )等の揮発性の熱分解ガスとして排気される。
【0004】
エッチングを行うとエッチャントは処理室の内壁にも付着する。従って、エッチングを複数回繰り返すと、処理室の内壁に付着するエッチャントが厚くなり、それが処理室内壁から外れることでパーティクルを発生させてしまう。そこで、特許文献1は、基板を加熱して反応生成物を熱分解するときに、処理空間にパージガスを導入する。これによれば、生成される熱分解ガスがパージガスの流れに乗って排気されるため、熱分解ガスと処理被膜との反応が抑制されて、パーティクルの数量を低減させることができる。
【特許文献1】特開2005−203409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エッチングの反応過程において生成される反応生成物は、自身の蒸気圧が低い場合に、基板の上に吸着し続けることによって容易にパーティクルを発生させてしまう。本発明者の実験によれば、特許文献1の技術は、パージガスの導入により基板の温度を低下させて、反応生成物の吸着確率を増大させてしまう。また、パージガスの導入により反応生成物の熱分解反応が局所的に遅延し、反応生成物の排気効率を低下させてしまう。この結果、特許文献1の技術は、処理被膜と熱分解ガスの反応確率を抑えることができる一方、反応生成物に起因するパーティクルを増大させてしまう。
【0006】
本願発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、パーティクルの数量を低減して処理性能を向上した熱処理方法、及び熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の熱処理方法は、基板上の薄膜と反応ガスとを処理室で反応させて反応生成物を生成する工程と、前記基板を加熱することにより前記反応生成物を前記処理室から排気する工程とを有する熱処理方法であって、前記反応生成物を排気する工程は、予め加熱したパージガスを前記処理室に導入することを要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の熱処理方法によれば、パージガスが導入されるとき、処理室及び基板
は、パージガスの温度が高い分だけ、自身の低温化を抑えることができる。したがって、請求項1に記載の熱処理方法は、パージガスの導入により反応生成物の吸着確率を大幅に低くさせることができ、反応生成物を円滑に排気させることができる。この結果、請求項1に記載の熱処理方法は、基板上における反応生成物の液化や固化を抑制させることができ、ひいては、パーティクルの数量を低減して熱処理の処理性能を向上させることができる。
【0009】
請求項2に記載の熱処理方法は、請求項1に記載の熱処理方法であって、前記反応生成物を生成する工程は、前記基板の法線方向に沿って複数の前記基板を配列するとともに、隣接する前記基板の間に向けて前記反応ガスを導入することにより前記各基板上の薄膜と前記反応ガスとを反応させて前記反応生成物を生成し、前記反応生成物を排気する工程は、予め加熱した前記パージガスを隣接する前記基板の間に向けて導入することにより前記反応生成物を排気することを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の熱処理方法によれば、隣接する基板の間に反応生成物が停滞する場合であっても、効果的に反応性生物を排気させることができる。
請求項3に記載の熱処理方法は、請求項1又は2に記載の熱処理方法であって、前記処理室にある前記基板を収容室に搬送し、予め加熱したパージガスを前記収容室に導入することを要旨とする。
【0011】
請求億3に記載の熱処理方法によれば、反応生成物が収容室に混入する場合であっても、加熱したパージガスの導入により、反応生成物を排気させることができる。また、収容室がパージ処理を実行する分だけ、処理室は、パージ処理の時間を短縮させることができる。この結果、パージ処理に伴う処理室の占有時間を抑えることができ、ひいては、熱処理の処理性能を向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載の熱処理装置は、基板を有する処理室と、前記処理室に反応ガスを供給することにより前記基板上の薄膜と前記反応ガスとを反応させて反応生成物を生成する反応ガス供給部と、前記処理室で前記基板を加熱することにより前記反応生成物を前記処理室から排気可能にする加熱部とを有する熱処理装置であって、前記処理室に予め加熱したパージガスを導入するパージガス供給部を有することを要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の熱処理装置によれば、パージガスが導入されるとき、処理室及び基板は、パージガスの温度が高い分だけ自身の低温化を抑えることができる。したがって、請求項4に記載の熱処理装置は、パージガスの導入により反応生成物の吸着確率を大幅に低くさせることができ、反応生成物を円滑に排気させることができる。この結果、請求項5に記載の熱処理装置は、基板上における反応生成物の液化や固化を抑制させることができ、ひいては、パーティクルの数量を低減して熱処理の処理性能を向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載の熱処理装置は、請求項4に記載の熱処理装置であって、前記処理室から基板を収容する収容室を有し、前記収容室に予め加熱したパージガスを導入するパージガス供給部を有することを要旨とする。
【0015】
請求項5に記載の熱処理装置によれば、反応生成物が収容室に混入する場合であっても、加熱したパージガスの導入により、反応生成物を排気させることができる。また、収容室がパージ処理を実行する分だけ、処理室は、パージ処理の時間を短縮させることができる。この結果、パージ処理に伴う処理室の占有時間を抑えることができ、ひいては、熱処理の処理性能を向上させることができる。
【0016】
請求項6に記載の熱処理装置は、請求項5に記載の熱処理装置であって、前記処理室は、複数の前記基板を前記基板の法線方向に沿って配列するボートを有し、前記反応ガス供給部は、互いに対向する前記基板の間に向けて前記反応ガスを導入する反応ガスポートを有し、前記パージガス供給部は、互いに対向する前記基板の間に向けて前記パージガスを導入するパージポートを有することを要旨とする。
【0017】
請求項6に記載の熱処理装置によれば、隣接する基板の間に反応生成物が停滞する場合であっても、効果的に反応性生物を排気させることができる。
【発明の効果】
【0018】
上記したように、本発明によれば、パーティクルの数量を低減して生産性を向上した熱処理方法、及び熱処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。図1は、熱処理装置1を模式的に示す側面図である。
図1において、熱処理装置1は、収容室としてのロードロック室(以下単に、LL室2という。)と熱処理室3とを有している。LL室2は、外部からの基板Sを搬入して熱処理後の基板Sを搬出するための真空槽であって、支持部材Kによって作業室の床面Fから高い位置に固定されている。基板Sとしては、例えばシリコン基板、ガラス基板、セラミック基板を用いることができ、基板Sを昇温して該基板Sの表面に化学的な処理(以下単に、熱処理という。)を加えられる基板であれば良い。
【0020】
LL室2と熱処理室3はそれぞれ開口部2a、3aを有し、LL室2の開口部2aは下側に向けられている。熱処理室3の開口部3aは上側に向けられ、熱処理室3の開口部3aとLL室2の開口部2aとは、Oリングを挟んだ状態で密着し、位置だしピンPによって固定されている。熱処理室3の開口部3aとLL室2の開口部2aとは、LL室2の内部空間2Sと熱処理室3の内部空間3Sの気密を保つ。
【0021】
LL室2の開口部2aには仕切りバルブVが設けられ、仕切りバルブVを開けた状態において、LL室2の内部空間2Sと熱処理室3の内部空間3Sとが接続される。これにより、LL室2の内部空間2Sと熱処理室3の内部空間3Sとの間で、基板Sの搬出入が可能になる。
【0022】
LL室2と熱処理室3には、それぞれ図示しない真空排気系が接続され、真空排気系の排気動作によって、LL室2と熱処理室3の内部空間2S、3Sに所定圧力の真空雰囲気が形成される。LL室2の内部空間2Sには、予め複数枚の基板Sが収容されたボートBが昇降可能に設置されている。仕切りバルブVを開けた状態でボートBを下降し、ボートBがLL室2から熱処理室3に移動するとき、ボートBの上端部である蓋部Baが熱処理室3の開口部3aに嵌り、熱処理室3の内部空間3SがLL室2の内部空間2Sから遮断される。
【0023】
LL室2には、パージガス供給系4が連結されている。パージガス供給系4は、パージガスの充填されたパージガスボンベBPと、パージガスボンベBPとLL室2との間に配設された第一加熱装置4Aとを有する。第一加熱装置4Aは、パージガスボンベBPから供給されるパージガスを加熱し、所定温度に昇温したパージガスをLL室2の内部に供給する。パージガス供給系4は、LL室2においてパージ処理を実行するとき、第一加熱装置4Aを駆動して、加熱されたパージガスをLL室2に供給する。
【0024】
熱処理室3には、ラジカル供給系5が連結され、ラジカル供給系5が駆動するとき、ラ
ジカル供給系5で生成される水素ラジカルが熱処理室3の内部空間3Sに供給される。熱処理室3には反応ガス供給系6が接続され、反応ガス供給系6が駆動するとき、反応ガス供給系6からの反応ガスが熱処理室3の内部空間3Sに供給される。熱処理室3には内部空間3Sを加熱するためのランプヒータ7が備えられ、ランプヒータ7が駆動するとき、ランプヒータ7からの熱量により内部空間3Sにある基板Sが加熱される。
【0025】
熱処理として自然酸化膜(シリコン酸化膜)をエッチングする場合、反応ガスとしては、フッ化物ガスを用いることができる。フッ化物ガスとしては、炭素と酸素を有しないものを用いることが好ましく、例えば三フッ化窒素(NF3 )を用いることができる。また、反応ガスは、NとHが含まれていればよく、1種類を単独で用いても、2種類以上の反応ガスを混合して用いても良い。また、反応ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム等のキャリアガスと混合して熱処理室3に導入されても良い。
【0026】
熱処理室3には、パージガス供給系8が接続されている。パージガス供給系8は、パージガスの充填されたパージガスボンベBPと、パージガスボンベBPと熱処理室3との間に設けられた第二加熱装置8Aとを有する。第二加熱装置8Aは、パージガスボンベBPから供給されるパージガスを加熱して所定温度に昇温する。パージガス供給系8は、熱処理室3においてパージ処理を実行するとき、第二加熱装置8Aを駆動して、加熱されたパージガスを熱処理室3の内部空間3Sに供給する。
【0027】
図2(a)は、ボートBを搬入した状態のLL室2の斜視図である。図2(b)は、ボートBを搬入した状態の熱処理室3の斜視図である。
図2(a)において、各ボートBは、それぞれ鉛直方向に沿って延びる複数の支持棒9aを有する。複数の支持棒9aの各々は、水平方向に延びる複数のガイド溝9bを有する。複数のガイド溝9bの各々は、鉛直方向に沿って所定間隔を空けて配列されている。例えば、基板Sとして直径が200mmの8インチウェハを用いるとき、ガイド溝9bのピッチは、6.35mmである。また、基板Sとして直径が300mmの12インチウェハを用いるとき、ガイド溝9bのピッチは、10mmである。
【0028】
複数の支持棒9aの各々は、それぞれ各ガイド溝9bの高さ位置を同じにする。LL室2の内部にボートBが配置されるとき、LL室2に搬入される複数の基板Sは、それぞれ自身の周縁部を各支持棒9aのガイド溝9bに挿入させる。これによって、複数の基板Sの各々は、自身の面方向を水平方向に維持させることができ、また他の基板Sとの間の距離を鉛直方向に沿って所定間隔だけ離間させることができる。
【0029】
各ボートBは、図示しないボートモータの駆動軸に連結されている。各ボートBは、それぞれLL室2あるいは熱処理室3に搬入される状態でボートモータの駆動力を受け、これにより搭載する基板Sの中心を中心点にして回転する。
【0030】
LL室2の内部には、鉛直方向に沿って延びるパージポートPPが配設されている。パージポートPPは、鉛直方向に沿って延びる配管であり、ボートBが搬入される状態において、ボートB及び基板Sから離間する。パージポートPPは、パージガス供給系4に接続されて、パージガス供給系4からのパージガスをLL室2の内部に導入する。
【0031】
パージポートPPは、LL室2の内壁に沿って等配されて、基板SがLL室2に搬入されるとき、該基板Sの周方向に等配される。パージガス供給系4は、水平方向に延びる複数のシャワーノズルNを有する。複数のシャワーノズルNの各々は、LL室2の中心に向けて延びる円形孔であって、鉛直方向に沿って所定間隔を空けて配列される。
【0032】
複数のシャワーノズルNの各々は、ボートBがLL室2の内部に搬入されるとき、鉛直
方向に沿って積載される各基板Sの間の空間に向けて自身の開口を配置させる。LL室2に供給されるパージガスは、鉛直方向に沿って積載される各基板Sの間の空間に向けて、予め加熱された状態で噴射される。各基板Sの間の空間に向けて噴射されるパージガスは、基板Sの面方向に沿って広がり、各基板Sの表面及び裏面のガスを押し流しながら排気される。この際、基板Sと接触するパージガスは、予め加熱されている分だけ、基板Sとの間の熱交換を抑えて、基板Sの低温化を抑制させる。
【0033】
パージガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノンを用いることができ、これらの中から2種類以上を選択して混合しても良い。すなわち、パージガスは、熱処理の反応系において化学的に安定なガスであれば良い。
【0034】
図2(b)において、熱処理室3の内部には、鉛直方向に沿って延びるラジカルポートRPと反応ガスポートAPとが配設されている。ラジカルポートRP及び反応ガスポートAPは、ボートBが搬入される状態において、ボートB及び基板Sから離間する。ラジカルポートRPは、ラジカル供給系5に接続されて、ラジカル供給系5からのラジカル生成ガスを熱処理室3の内部に導入する。また、反応ガスポートAPは、反応ガス供給系6とパージガス供給系8に接続されて、反応ガス供給系6からの反応ガス、あるいはパージガス供給系8からのパージガスを熱処理室3の内部に導入する。
【0035】
ラジカルポートRP及び反応ガスポートAPは、それぞれ熱処理室3の内壁に沿って等配されて、基板Sが熱処理室3に搬入されるとき、該基板Sの周方向に沿って等配される。ラジカルポートRP及び反応ガスポートAPは、それぞれ水平方向に延びる複数のシャワーノズルNを有する。複数のシャワーノズルNの各々は、鉛直方向に沿って所定間隔を空けて配列される。複数のシャワーノズルNの各々は、ボートBが熱処理室3の内部に搬入されるとき、鉛直方向に沿って積載される各基板Sの間の空間に向けて自身の開口を配置する。熱処理室3に供給されるラジカル状態のガスと反応ガスは、それぞれ鉛直方向に沿って積載される各基板Sの間の空間に向けて噴射される。また、熱処理室3に供給されるパージガスは、それぞれシャワーノズルNから各基板Sの間の空間に向けて噴射される。各基板Sの間に向けて噴射されるパージガスは、基板Sの面方向に沿って広がり、各基板Sの表面及び裏面にあるガスを順に押し流しながら排気される。この際、基板Sと接触するパージガスは、予め所定温度に加熱されている分だけ、基板Sとの間の熱交換を抑えて、基板Sの低温化を抑制させる。
【0036】
次に、上記熱処理装置1を用いて自然酸化膜をエッチングする熱処理について以下に説明する。図3は、熱処理の各工程を示すフローチャートである。
図3において、熱処理装置1は、まず、外部にある複数の基板SをLL室2に搬入する(搬入工程:ステップS11)。すなわち、熱処理装置1は、ボートBをLL室2に移動して外部にある複数の基板SをボートBに積載する。熱処理装置1は、搬入工程を終了すると、LL室2を減圧して基板Sを搬送可能にする(減圧工程:ステップS12)。熱処理装置1は、減圧工程を終了すると、ボートBを下動してLL室2にある基板Sを熱処理室3に搬送する(搬送工程:ステップS13)。
【0037】
熱処理装置1は、搬送工程を終了すると、熱処理室3に反応ガス及びラジカルを供給し、基板S上の自然酸化膜(本実施形態では、酸化ケイ素膜)、反応ガス、及び水素ラジカルを反応させて反応生成物(本実施形態では、(NH4)2SiF6)を生成する(供給工程:ステップS14)。熱処理装置1は、供給工程ステップS14を終了すると、熱処理室3に搭載されるランプヒータ7で各基板Sを加熱し、反応生成物を分解する。分解された反応生成物(以下単に、熱分解ガスという。)の殆どは、気体となって各基板Sの表面から除去され、真空排気により熱処理室3の内部空間3Sから排出される、すなわち自然酸化膜のエッチング処理が施される(加熱工程:ステップS15)。一方、熱分解ガスの一部と、
分解されない反応生成物とは、各基板Sの間の空間が狭いために、十分に排気されることなく基板Sの表面に吸着したり、各基板Sの間の空間に停滞したりする。
【0038】
熱処理装置1は、加熱工程を終了すると、熱処理室3の内部空間3Sにパージガスを導入する(パージ工程:ステップS16)。すなわち、熱処理装置1は、第二加熱装置8Aを駆動し、所定温度に加熱されたパージガスを内部空間3Sに導入する。熱処理室3に残留する反応生成物と熱分解ガスは、導入されるパージガスによって押し流されてパージガスと共に排気される。この際、パージガスが予め所定温度に昇温されるため、パージガスと接触する基板Sの表面、基板Sの裏面、熱処理室3の内壁やボートB等の各部は、それぞれパージガスとの熱交換による急激な低温化を避けることができる。そのため、パージガスにより押し流される反応生成物や熱分解ガスは、基板Sの表面、基板Sの裏面、及び熱処理室3の各部に吸着し難くなる。
【0039】
熱処理装置1は、パージ工程を終了すると、ボートBを熱処理室3からLL室2に移動して各基板SをLL室2に搬送する(搬送工程:ステップS17)。熱処理装置1は、搬送工程を終了すると、LL室2を昇圧して基板Sを搬出可能にする(昇圧工程:ステップS18)。すなわち、熱処理装置1は、基板SがLL室2に配置される状態で仕切りバルブVを閉じ、LL室2をベントする。
【0040】
この際、熱処理装置1は、第一加熱装置4Aを駆動して、所定温度に温調されたパージガスをLL室2の内部空間2Sに導入し続ける。基板Sの近傍に残留する反応生成物と熱分解ガスは、パージガスによって押し流されてパージガスと共に排気される。この結果、反応生成物が収容室に混入する場合であっても、加熱したパージガスの導入により、反応生成物を排気させることができる。
【0041】
上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)上記実施形態において、熱処理装置1は、加熱したパージガスを供給するためのパージガス供給系8を熱処理室3に備え、基板Sを有する熱処理室3に向けて予め加熱したパージガスを導入する。したがって、複数の基板Sの各々と熱処理室3の各部は、反応生成物や熱分解ガスを排気する間、パージガスの温度が高い分だけ、その急激な低温化を抑えることができる。よって、熱処理装置1は、熱処理室3において反応生成物や熱分解ガスの吸着確率を大幅に低くさせることができ、反応生成物や熱分解ガスを円滑に排気させることができる。この結果、熱処理装置1は、基板Sの上における反応生成物の液化や固化、熱分解ガスに起因する反応等を抑制させることができ、ひいては、パーティクルの数量を低減して熱処理の処理性能を向上させることができる。
【0042】
(2)上記実施形態において、熱処理装置1は、加熱したパージガスを供給するためのパージガス供給系4をLL室2に備え、基板Sを有するLL室2に向けて予め加熱したパージガスを導入する。この結果、反応生成物が収容室に混入する場合であっても、加熱したパージガスの導入により、反応生成物を排気させることができる。
【0043】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態において、パージ工程(ステップS16)は、パージ時間の間、パージガスを加熱し続ける。これに限らず、パージ工程は、反応生成物と熱分解ガスを排気するために必要な時間(最短パージ時間)を試験等に基づいて予め計測し、最短パージ時間の間だけパージガスを加熱し、最短パージ時間を超えると、パージガスの加熱を停止する構成であっても良い。この構成によれば、加熱したパージガスの導入時間を短くすることができ、ひいては、加熱した基板Sの冷却時間を短縮させることができる。
【0044】
・上記実施形態において、熱処理室3は、反応ガスとパージガスとを、共通する反応ガ
スポートAPから導入する。これに限らず、熱処理装置1は、反応ガスとパージガスとを、それぞれ異なるガスポートから導入する構成でも良い。これによれば、パージガスは、反応ガスの混入を回避することができるため、より高い再現性の下でパーティクルの数量を低減させることができる。
【0045】
・上記実施形態において、加熱したパージガスが、LL室2と熱処理室3の双方に導入される。これに限らず、加熱したパージガスが、LL室2と熱処理室3のいずれか一方に導入される構成であっても良い。すなわち、本発明は、熱分解ガスと基板Sとが共存する空間に加熱したパージガスを導入する構成であれば良い。
【0046】
・上記実施形態において、加熱したパージガスは、パージ工程と昇圧工程で基板Sに供給される。これに限らず、加熱したパージガスが、搬送工程において供給される構成であっても良く、少なくとも加熱工程、パージ工程、搬送工程、昇圧工程のいずれか一つの工程で供給される構成であれば良い。すなわち、本発明は、加熱したパージガスの導入タイミングを限定するものではなく、熱分解ガスと基板Sとが共存する空間に加熱したパージガスを導入する構成であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】熱処理装置を示す側断面図。
【図2】(a)、(b)は、それぞれLL室及び熱処理室を示す斜視図。
【図3】熱処理の各工程を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0048】
AP…第一ガスポート及び第二ガスポートとしての反応ガスポート、B…ボート、PP…第二ガスポートとしてのパージポート、S…基板、1…熱処理装置、2…収容室を構成するロードロック室、3…熱処理室、4,8…パージガス供給部としてのパージガス供給系、B…ボート、4A…パージガス供給部を構成する第一加熱装置、6…反応ガス供給部としての反応ガス供給系、7…加熱部としてのランプヒータ、8A…パージガス供給部を構成する第二加熱装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の薄膜と反応ガスとを処理室で反応させて反応生成物を生成する工程と、
前記基板を加熱することにより前記反応生成物を前記処理室から排気する工程と、
を有する熱処理方法であって、
前記反応生成物を排気する工程は、
予め加熱したパージガスを前記処理室に導入することを特徴とする熱処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理方法であって、
前記反応生成物を生成する工程は、
前記基板の法線方向に沿って複数の前記基板を配列するとともに、隣接する前記基板の間に向けて前記反応ガスを導入することにより前記各基板上の薄膜と前記反応ガスとを反応させて前記反応生成物を生成し、
前記反応生成物を排気する工程は、
予め加熱した前記パージガスを隣接する前記基板の間に向けて導入することにより前記反応生成物を排気すること、
を特徴とする熱処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱処理方法であって、
前記処理室にある前記基板を収容室に搬送し、予め加熱したパージガスを前記収容室に導入することを特徴とする熱処理方法。
【請求項4】
基板を有する処理室と、
前記処理室に反応ガスを供給することにより前記基板上の薄膜と前記反応ガスとを反応させて反応生成物を生成する反応ガス供給部と、
前記処理室で前記基板を加熱することにより前記反応生成物を前記処理室から排気可能にする加熱部とを有する熱処理装置であって、
前記処理室に予め加熱したパージガスを導入するパージガス供給部を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の熱処理装置であって、
前記処理室から基板を収容する収容室を有し、
前記収容室に予め加熱したパージガスを導入するパージガス供給部を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の熱処理装置であって、
前記処理室は、
複数の前記基板を前記基板の法線方向に沿って配列するボートを有し、
前記反応ガス供給部は、
互いに対向する前記基板の間に向けて前記反応ガスを導入する第一ガスポートを有し、
前記パージガス供給部は、
互いに対向する前記基板の間に向けて前記パージガスを導入する第二ガスポートを有することを特徴とする熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−94165(P2009−94165A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261285(P2007−261285)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】