説明

熱処理装置

【課題】
熱処理装置に於いて、処理される基板を保持する基板保持具の断熱部の全長、断熱部に用いられる断熱板の枚数を増やすことなく断熱性を向上し、基板処理の歩留りの向上、品質の向上を図る。
【解決手段】
基板を収納し処理する処理室22と、該処理室を加熱するヒータと、前記処理室内で所要数の基板を保持する基板保持具21とを具備し、該基板保持具は基板を保持する基板保持部と、該基板保持部の下側に位置し所要数の断熱板が設けられた断熱部とを有し、該断熱部の上部の断熱板のピッチを下部の断熱板のピッチより小さくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハ等の基板に酸化膜等の薄膜の生成、酸化、不純物の拡散、アニール処理を行う熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体処理工程の1つにシリコンウェーハ等の基板に、薄膜の生成、酸化、或は不純物の拡散、アニール処理を行う工程があり、斯かる処理工程を実施する為に熱処理装置が用いられる。
【0003】
又、熱処理装置には所要枚数のウェーハの処理を一度に実施するバッチ式の熱処理装置があり、又バッチ式の熱処理装置の1つとして縦型熱処理炉を具備する縦型熱処理装置がある。
【0004】
該縦型熱処理装置では、所定枚数のウェーハを基板保持具(ボート)により水平姿勢で多段に保持し、基板を保持したボートを熱処理炉内に下端の炉口部から装入して収納し、基板を所定温度に加熱し、処理ガスを供給して熱処理を行う。
【0005】
処理炉内の温度分布は、熱の放出がある炉口部の温度が低くなっており、例えばシリコンウェーハを熱酸化した場合、ボートの上方から下方に向って膜厚分布が薄くなり、ウェーハ面内の膜厚均一性もボートの上方から下方に向って悪くなるという傾向があった。
【0006】
従来、ボートの下部には断熱部が形成され、該断熱部によって炉口部からの放熱を抑制している。
【0007】
図7に於いて、従来の断熱部について説明する。
【0008】
図7中、1は炉口部を気密に閉塞する炉口蓋としてのシールキャップ、2は基板保持具を示している。図示の基板保持具2は、被処理基板であるウェーハ3が装填される基板保持部(ボート)4と断熱板5,6が装填される断熱部(断熱板ホルダ)7を有している。尚、図中基板保持部4と断熱部7が明確になる様隙間を設けているが、実際は隙間はなく、基板保持部4と断熱部7は接触している。
【0009】
該断熱部7には、前記断熱板5,6が均等なピッチで装填されている。即ち、前記断熱部7の前記断熱板5,6の装填部分の高さ(長さ)をLとし、前記断熱板5,6の装填枚数をnとすると、前記断熱板5,6は装填ピッチp=L/(n+1)で装填されている。
【0010】
又、前記断熱部7の上部は高温となることから、下部の一部を除いて耐熱性に優れた炭化珪素の断熱板5が用いられ、下部の一部には熱遮断性を考慮して熱伝導率の小さい石英の断熱板6が用いられている。
【0011】
従来の断熱部7での温度変化を図7(B)に示している。
【0012】
図7(B)に示される様に、前記断熱部7での温度変化は直線的に変化しており、該断熱部7での伝熱に於ける抵抗(以下熱伝達抵抗と称す)は、前記断熱部7全長で略一定であることを示している。尚、図7(B)中、温度変化の傾斜(温度/位置)が熱伝達抵抗を表している。
【0013】
従来の断熱部7を用いた熱処理炉で、ボート下部に位置するウェーハの膜質の均一性を向上させる方法としては、前記断熱部7の全長を大きくして、炉口部の放熱の影響を少なくする、又前記断熱板5,6の枚数を増やして断熱性(熱伝達抵抗)を大きくする等が考えられるが、前記断熱部7の全長を大きくすることはウェーハ処理領域を小さくして、生産性が低下する。更に、前記断熱板5,6を増やすことはコスト高となる等の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は斯かる実情に鑑み、断熱部の全長、断熱部に用いられる断熱板の枚数を増やすことなく断熱性を向上し、基板処理の歩留りの向上、品質の向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、基板を収納し処理する処理室と、該処理室を加熱するヒータと、前記処理室内で所要数の基板を保持する基板保持具とを具備し、該基板保持具は基板を保持する基板保持部と、該基板保持部の下側に位置し所要数の断熱板が設けられた断熱部とを有し、該断熱部の上部の断熱板のピッチを下部の断熱板のピッチより小さくした熱処理装置に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板を収納し処理する処理室と、該処理室を加熱するヒータと、前記処理室内で所要数の基板を保持する基板保持具とを具備し、該基板保持具は基板を保持する基板保持部と、該基板保持部の下側に位置し所要数の断熱板が設けられた断熱部とを有し、該断熱部の上部の断熱板のピッチを下部の断熱板のピッチより小さくしたので、前記断熱部の全長を大きくすることなく、該断熱部上部の熱伝達抵抗が大きくなり、該断熱部の断熱性が向上し、前記基板保持部下部の温度低下を防止でき、該基板保持部下部に位置する基板に成膜される膜厚の減少を防止でき、膜質の向上が図れるいう優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0018】
先ず、図1により熱処理装置の概略について説明する。
【0019】
基板処理装置を構成する主要な装置は筐体11内に収納される。
【0020】
該筐体11の前面には基板収納容器の授受部であるI/Oポート12が外部に露出して設けられ、該I/Oポート12には外部搬送装置(図示せず)により搬送された搬送用の基板収納容器13が載置される。図示では、該基板収納容器13は防塵用の密閉式の基板収納容器であるFOUPが用いられ、該FOUPには25枚のウェーハが収納可能である。前記I/Oポート12は前記基板収納容器13を2個受載可能であると共に水平移動機構を具備しており、該基板収納容器13を前記筐体11内に取込み可能となっている。
【0021】
該筐体11の内部には前面側から容器搬送装置14、該容器搬送装置14を挾んで前記基板収納容器13の蓋を開閉する開閉装置15が設けられている。
【0022】
該開閉装置15の上方には複数の基板収納容器13を収納可能な棚16を複数有し、該棚16を回転可能な容器収納装置17が配設されている。前記開閉装置15に対向して基板移載装置18が設けられ、該基板移載装置18の後方には基板保持具の装脱手段であるボートエレベータ19が設けられ、前記基板移載装置18に対向する位置に、基板姿勢整合装置20が設けられている。
【0023】
前記ボートエレベータ19は水平方向に延出するボートアームを有し、該ボートアームにシールキャップ1が支持され、該シールキャップ1に基板保持具である基板保持具21が載置される。該基板保持具21は被処理基板(ウェーハ3)を水平姿勢で多段に保持するものであり、ウェーハ3を保持する基板保持部(ボート)4(図2参照)と該基板保持部4の下側に位置する断熱部(断熱板ホルダ)7(図2参照)とを有している。尚、図中基板保持部4と断熱部7が明確になる様隙間を設けているが、実際は隙間はなく、基板保持部4と断熱部7は接触している。
【0024】
前記ボートエレベータ19の上方には熱処理炉22が設けられ、前記ボートエレベータ19の昇降により前記基板保持具21が前記熱処理炉22に装入引出(装脱)される。
【0025】
前記基板移載装置18は、所要数、例えば5枚の基板載置プレート(ツイーザ)を有し、1枚ずつ或は5枚一度にウェーハ3を移載可能であり、前記開閉装置15上の基板収納容器13、前記基板保持具21、前記基板姿勢整合装置20間でウェーハ3の移載を行う様になっている。又、前記基板姿勢整合装置20は、ウェーハ3に形成されたノッチ、或はオリエンテーションフラットを利用してウェーハの姿勢を所定の状態に合せるものである。
【0026】
次に、図2により前記熱処理炉22の一例を説明する。
【0027】
該熱処理炉22は、炭化珪素(SiC)製の反応管25、及び該反応管25が収納される筒状のヒータ26を有する。前記反応管25は、上端が閉塞され下端が開放された円筒形状をしており、該反応管25は下端に石英製のアダプタ27が配置される。該アダプタ27は上端、下端が開放された円筒形状であり、該アダプタ27の上端に前記反応管25が気密に立設されている。
【0028】
前記反応管25と前記アダプタ27によって処理室28が画成され、前記ヒータ26は前記アダプタ27より上方に配置されている。
【0029】
該アダプタ27の下端開放部は炉口部29を形成し、該炉口部29は前記シールキャップ1によって気密に閉塞可能である。又、該シールキャップ1は、前記ボートエレベータ19によって昇降可能に支持され、該シールキャップ1に前記基板保持具21が載置される。従って、前記ボートエレベータ19の昇降で前記基板保持具21は前記炉口部29を通って前記処理室28に装脱可能となっている。
【0030】
前記基板保持具21は基板保持部(ボート)4と該基板保持部4の下側に位置する断熱部(断熱板ホルダ)7を有し、該断熱部7の上端は前記反応管25の下端と略同じ位置か、若干前記反応管25の下端部に入込んでいる。尚、前記断熱部7については後述する。
【0031】
前記アダプタ27には、該アダプタ27と一体にガス供給口31とガス排気口32とが設けられ、前記ガス供給口31にはガス導入管33が、前記ガス排気口32には排気管34がそれぞれ接続されている。
【0032】
前記アダプタ27の内壁は前記反応管25の内壁よりも内側にあり(突出しており)、前記アダプタ27の側壁内部には、前記ガス供給口31と連通し、垂直方向に向うガス導入経路35が設けられ、該ガス導入経路35の上端は前記アダプタ27の上端面に開口している。前記ガス導入経路35の上端部にノズル36の下端が挿入固定され、該ノズル36は前記反応管25の内壁面に沿って前記基板保持具21の上端よりも上方に延出し、前記処理室28の上部に開口している。
【0033】
処理ガスは、前記ガス導入管33から前記ガス供給口31、前記ガス導入経路35、前記ノズル36を介して前記処理室28の上部に供給される。
【0034】
次に上述した様に構成された熱処理装置10の作用について説明する。
【0035】
尚、以下の説明に於いて、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ39により制御される。
【0036】
前記I/Oポート12に所定枚数のウェーハ3を収容した基板収納容器13が搬入されると、前記容器搬送装置14により前記基板収納容器13を前記I/Oポート12から前記棚16へ搬送し、該棚16にストックする。次に、前記容器搬送装置14により、前記棚16の基板収納容器13を前記開閉装置15に搬送してセットし、該開閉装置15により基板収納容器13の蓋を開き、基板枚数検知器(図示せず)により基板収納容器13に収容されているウェーハ3の枚数を検知する。
【0037】
次に、前記基板移載装置18により、前記開閉装置15の位置にある基板収納容器13からウェーハ3を取出し、前記基板姿勢整合装置20に移載する。該基板姿勢整合装置20に於いて、ウェーハ3を回転させながら、ノッチを検出し、検出した情報に基づいて複数枚のウェーハ3のノッチを同じ姿勢に整列させる。前記基板移載装置18により、前記基板姿勢整合装置20からウェーハ3を取出し、前記基板保持具21に移載する。
【0038】
1バッチ分のウェーハ3を前記基板保持具21に移載すると、例えば600℃程度の温度に設定された前記処理室28内に複数枚のウェーハ3を装填した前記基板保持具21を装入し、前記シールキャップ1により前記熱処理炉22内を密閉する。次に、炉内温度を熱処理温度迄昇温させて、前記ガス導入管33から前記ガス供給口31、前記ガス導入経路35、及び前記ノズル36を介して前記反応管25内に処理ガスを導入する。処理ガスには、窒素(N2 )、アルゴン(Ar)、水素(H2 )、酸素(O2 )等が含まれる。ウェーハ3を熱処理する際、ウェーハ3は例えば1200℃程度以上の温度に加熱される。
【0039】
ウェーハ3の熱処理が終了すると、例えば炉内温度を600℃程度の温度に降温した後、熱処理済のウェーハ3を保持した前記基板保持具21を前記熱処理炉22からアンロードし、前記基板保持具21に支持された全てのウェーハ3が冷却される迄、前記基板保持具21を所定位置で待機させる。次に、待機させた基板保持具21のウェーハ3が所定温度迄冷却されると、前記基板移載装置18により、前記基板保持具21からウェーハ3を取出し、前記開閉装置15にセットされている空の基板収納容器13に搬送して収容する。次に、前記容器搬送装置14により、ウェーハ3が収容された基板収納容器13を前記棚16、又は前記I/Oポート12に搬送して一連の処理が完了する。
【0040】
次に、本発明に係る断熱部7について図3(A)により説明する。
【0041】
図3中、図7中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0042】
前記断熱部7の上部には第1断熱領域41が形成され、該第1断熱領域41にはSiC断熱板5を装填し、下部には第2断熱領域42が形成され、該第2断熱領域42には石英断熱板6を装填する。
【0043】
上部に装填する前記SiC断熱板5のピッチp1は、前記石英断熱板6の装填ピッチp2より小さくする。例えば、断熱板5,6の総数nとし、前記断熱部7の長さをLとすると、p1<L/(n+1)であり、p2≧L/(n+1)である。従って、前記第1断熱領域41と前記第2断熱領域42との間には、断熱板が装填されていない第3断熱領域43が形成される。又、前記第1断熱領域41、第3断熱領域43は前記ヒータ26と対向した領域にあり、前記第2断熱領域42は前記ヒータ26と対向していない領域に位置している。
【0044】
次に、前記断熱部7での伝熱について、考察する。
【0045】
図3(A)に示される様に同面積の円板が一部で支持され、平行に配設された場合、相対する平板間の伝熱は、熱伝導による伝熱は少なく、両平板間に存在する気体による対流伝熱、及び対向面間での輻射伝熱が支配的になると考えられる。
【0046】
対流伝熱を考慮した場合、前記断熱板5のピッチp1が小さくなればなる程、前記断熱板5,5間に存在する気体の対流運動が抑制され、対流伝熱に於ける熱伝達抵抗は大きくなり、前記断熱板5,5間の間隙により温度降下が生じる。従って、狭小なピッチとしてSiC断熱板5,5間の間隙の数を増やすことで(SiC断熱板5の装填枚数を増やすことで)、大きな熱伝達抵抗、大きな温度降下を得ることができる。
【0047】
次に、輻射伝熱を考慮した場合、相対向している平板の物体1、物体2、…、物体n−1、物体n、物体n+1、…の、各物体間の差引き輻射伝熱量Enは、
E=εσS(Tn −Tn+1 ) 式1
【0048】
ここで、εは物体nから物体n+1への有効放射率(0<ε<1)
σはステファンボルツマン定数
Sは対向する面積であり、本発明では一定である。
【0049】
式1より、輻射伝熱では、物体nと物体n+1間の距離には影響されず、相対向する表面温度によってのみ決定される。
【0050】
例えば図4で示される様に、物体1と物体2との間、物体2と物体3との間で温度降下があると、物体1と物体2間の輻射伝熱量E1、物体2と物体3間の輻射伝熱量E2は、ε<1であり、又(T1 −T2 )>(T2 ′−T3 )であるので、E1>E2となり、輻射伝熱量は減少していく。又、物体2内での熱伝導により温度降下があり、T2 >T2 ′であるので、更に輻射伝熱量E2は減少する。即ち、熱伝達抵抗は増大する。
【0051】
従って、輻射伝熱が行われる対向面が増える程、輻射伝熱量が減少していき、熱伝達抵抗が大きくなる。
【0052】
即ち、前記断熱部7での伝熱について、SiC断熱板5のピッチを小さくすることで、又該SiC断熱板5の枚数を増やすことで、熱伝達抵抗は増大する。
【0053】
図3(B)は、本発明に於ける前記断熱部7での温度変化の状態を示している。
【0054】
図示される様に、ピッチp1を小さくしてSiC断熱板5を装填することで、前記第1断熱領域41での熱伝達抵抗が増大する。前記断熱部7下部(前記炉口部29)での温度を従来の熱処理装置と同一にした場合、熱伝達抵抗が増大した分、前記断熱部7上端部の温度が上昇する。而して、Δθ分だけ保温効果が増大する。
【0055】
熱伝達抵抗の大小による温度変化を、更に図5により説明する。
【0056】
本発明に於ける断熱部7での温度変化を直線Aにより示し、従来に於ける断熱部7の温度変化を直線Bで示し、基板処理領域での温度T1、炉口部での温度をT2で示している。
【0057】
従来の断熱部7の如く、SiC断熱板5を均等に配設した場合、前記断熱部7での熱伝達抵抗は略一定となり、該断熱部7の長さをLとした場合、該断熱部7で充分な温度効果が得られなく、前記基板保持部4の下部の温度が低下している。即ち、炉口部での放熱が前記基板保持部4迄影響を及ぼしている。一方、本発明では熱伝達抵抗を増大させているので、前記第1断熱領域41で充分な温度降下量が得られ、前記基板保持部4下部での温度をT1に維持できる。
【0058】
而して、従来の断熱部7では、炉口部の放熱の影響が前記基板保持部4に及ばない様にするには前記断熱部7の長さLを大きくしなければならず、その分前記基板保持部4が狭くなり、1バッチでの処理枚数が減少する。
【0059】
尚、上記実施の形態に於いて、前記第1断熱領域41で充分な温度降下量が得られれば、前記第2断熱領域42の前記石英断熱板6は省略してもよい。
【0060】
又、前記第1断熱領域41は前記断熱部7の全長に亘ってもよい。要は、前記断熱部7で所定の温度降下量が得られる様に、前記ピッチp1、前記SiC断熱板5の枚数を設定すればよい。又、前記ピッチp1は必ずしも一定でなくともよく、上部で小さく、下部でそれよりも大きくする様に設定してもよく、又上部で小さく、下方に向って漸次増加する様に設定してもよい。即ち、少なくともウェーハと隣接する部分である上部に於けるSiC断熱板5のピッチが他の部分に於けるSiC断熱板5のピッチよりも小さくなる様に設定してもよい。
【0061】
上記した様に、SiC断熱板5,5間の熱伝達抵抗を増加させるには、前記ピッチp1は小さければ小さい程よい。然し、現実的には前記SiC断熱板5の支持部の強度、加工の困難性、或は該SiC断熱板5が加熱により生じる歪み等を考慮すると、SiC断熱板5,5間のピッチp1は前記基板保持部4のウェーハ3,3間のピッチPの0.5倍程度が好ましい最小限度とされる。これは、断熱板領域が狭く、その領域での温度変化が大きくなり断熱板に対する熱ストレスが大きくなり、変形、破損の可能性があるからである。又、経験的にピッチPの1.5倍程度が好ましい最大限度とされる。これは、断熱板領域を長くする必要がある為、これ以上ピッチをあけても無駄であるという理由による。
【0062】
図6は本発明に係る熱処理装置で処理した場合と、従来の熱処理装置で処理した場合との面内均一性を示しており、従来例を実線、本発明を波線で示している。図示される様に、本発明の熱処理装置で処理した場合、基板保持部4の底部で従来例よりも矢印分だけ面内均一性が向上している(面内均一性の低下を抑えることができる)。又膜厚について、図6中、○が本発明、×が従来例を示している。図示される如く、本発明の熱処理装置で処理した場合、基板保持部4の底部で従来例よりも矢印の分だけ膜厚が増大している(膜厚の減少を抑えることができる)ことが分る。
【0063】
尚、図6で示された本発明の処理条件は、第1断熱領域41のピッチp1=0.5P(ピッチp1はウェーハ3,3間のピッチPの0.5倍)、第2断熱領域42のピッチp2=1.5P(ピッチp2はウェーハ3,3間のピッチPの1.5倍)、使用されるガスは、酸素、窒素、アルゴンであり、処理室28の圧力は常圧であり、処理温度は1350℃である。
【0064】
尚、前記SiC断熱板5、前記石英断熱板6等の断熱板を配列する態様としては種々選択が可能である。本発明の実施の形態では断熱板が設けられない前記第3断熱領域43が形成されたが、該第3断熱領域43にも断熱板を装填してもよい。この場合、前記第1断熱領域41で得られなかった断熱性を補うことになり、前記SiC断熱板5の枚数は前記第1断熱領域41より少なくてよく、又ピッチも該第1断熱領域41に比べて大きくしてもよい。
【0065】
即ち、態様の1としては、前記第1断熱領域41で要求される全ての断熱性を満たす様に、ピッチp1、SiC断熱板5の枚数を設定する。態様の2としては、前記第1断熱領域41で要求される大部分の断熱性を満たす様に、ピッチp1、SiC断熱板5の枚数を設定し、残りの断熱性を前記第2断熱領域42、前記第3断熱領域43に負担させる様に、適宜前記第2断熱領域42、前記第3断熱領域43に前記断熱板5,6を所要ピッチで、所要枚数装填する。
【0066】
尚、製作コストを考慮すれば、断熱板の枚数は少ない方がよく、前記第1断熱領域41で所定の断熱効果が得られれば、前記第2断熱領域42、前記第3断熱領域43に装填する断熱板は少ない方がよく、省略するか、図3(A)の様に非装填部を設けるか、或は少枚数を粗いピッチで装填する。
【0067】
尚、上記実施の形態の説明に於いては、一度に複数枚の基板を熱処理するバッチ式の熱処理装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、枚葉式のものであってもよい。
【0068】
本発明の熱処理装置は、基板の製造工程にも適用することができる。
【0069】
SOI(Silicon On Insulator)ウェーハの一種であるSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)ウェーハの製造工程の1工程に本発明の熱処理装置を適用する例について説明する。
【0070】
イオン注入装置等により単結晶シリコンウェーハ内へ酸素イオンをイオン注入する。その後、酸素イオンが注入されたウェーハを上記実施の形態の熱処理装置を用いて、例えばAr、O2 雰囲気のもと、1300℃〜1400℃、例えば1350℃以上の高温でアニールする。これらの処理により、ウェーハ内部にSiO2 層が形成された(SiO2 層が埋め込まれた)SIMOXウェーハが製作される。
【0071】
又、SIMOXウェーハの他、水素アニールウェーハやArアニールウェーハの製造工程の1工程に本発明の熱処理装置を適用することも可能である。この場合、ウェーハを本発明の熱処理装置を用いて、水素雰囲気中若しくはAr雰囲気中で1200℃程度以上の高温でアニールすることとなる。これによりIC(集積回路)が作られるウェーハ表面層の結晶欠陥を低減することができ、結晶の完全性を高めることができる。又この他、エピタキシャルウェーハの製造工程の1工程に本発明の熱処理装置を適用することも可能である。
【0072】
以上の様な基板の製造工程の1工程として行う高温アニール処理を行う場合であっても、本発明の熱処理装置を適用することができる。
【0073】
本発明の熱処理装置は、半導体装置(デバイス)の製造工程に適用することも可能である。
【0074】
特に、比較的高い温度で行う熱処理工程、例えば、ウェット酸化、ドライ酸化、水素燃焼酸化(パイロジェニック酸化)、HCl酸化等の熱酸化工程や、硼素(B)、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)等の不純物(ドーパント)を半導体薄膜に拡散する熱拡散工程等に適用するのが好ましい。
【0075】
この様な半導体デバイスの製造工程の1工程としての熱処理工程を行う場合に於いても、本発明の熱処理装置を適用することができる。
【0076】
(付記)
又、本発明は以下の実施の態様を含む。
【0077】
(付記1)基板を収納し処理する処理室と、該処理室を加熱するヒータと、前記処理室内で所要数の基板を保持する基板保持具とを具備し、該基板保持具は基板を保持する基板保持部と、該基板保持部の下側に位置し所要数の断熱板が設けられた断熱部とを有し、該断熱部の上部の断熱板のピッチを下部の断熱板のピッチより小さくしたことを特徴とする熱処理装置。
【0078】
(付記2)付記1の熱処理装置を用いて基板を処理することを特徴とする基板処理方法、熱処理方法、半導体装置の製造方法、基板の製造方法。
【0079】
(付記3)基板を処理する処理室と、該処理室内を加熱するヒータと、前記処理室内で複数枚の基板を保持する保持具と、該保持具の下方に設けられた複数枚の断熱板と、該断熱板の下方に設けられた前記処理室を閉塞するシールキャップとを有し、前記断熱板の配列領域は、少なくとも基板と隣接する第1の領域と、該第1の領域と隣接する第2の領域とを有し、前記第1の領域に於ける断熱板のピッチが、前記第2の領域に於ける断熱板のピッチよりも小さいことを特徴とする熱処理装置。
【0080】
(付記4)付記3の熱処理装置を用いて基板を処理することを特徴とする基板処理方法、熱処理方法、半導体装置の製造方法、基板の製造方法。
【0081】
(付記5)付記3、付記4に於いて、前記第1の領域に於ける断熱板のピッチが基板のピッチの0.5倍以上1.5倍未満であり、前記第2の領域に於ける断熱板のピッチが基板のピッチの1.5倍程度以上であること。
【0082】
(付記6)付記3、付記4に於いて、前記第1の領域に於ける断熱板のピッチが基板のピッチよりも小さいこと。
【0083】
(付記7)付記3、付記4に於いて、前記第2の領域に於ける断熱板のピッチが基板のピッチよりも大きいこと。
【0084】
(付記8)付記3、付記4に於いて、少なくとも前記第1の領域はヒータと対向する領域に配置されること。
【0085】
(付記9)付記3、付記4に於いて、前記第1の領域はヒータと対向する領域に配置され、前記第2の領域はヒータと対向しない領域に配置されること。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る熱処理装置の概略斜視図である。
【図2】該熱処理装置に使用される熱処理炉の概略断面図である。
【図3】(A)は該熱処理装置に使用されるボートの一部を示す説明図、(B)は該ボートの断熱部での温度降下を示す線図である。
【図4】輻射伝熱を示す説明図である。
【図5】本発明の断熱部に於ける温度降下と従来例の断熱部に於ける温度降下の比較を示す線図である。
【図6】本発明で処理した場合の膜厚、面内均一性を示す線図である。
【図7】(A)は従来例の熱処理装置に使用されるボートの一部を示す説明図、(B)は該ボートの断熱部での温度降下を示す線図である。
【符号の説明】
【0087】
1 シールキャップ
3 ウェーハ
4 基板保持部
5 SiC断熱板
6 石英断熱板
7 断熱部
21 ボート
25 反応管
28 処理室
29 炉口部
41 第1断熱領域
42 第2断熱領域
43 第3断熱領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納し処理する処理室と、該処理室を加熱するヒータと、前記処理室内で所要数の基板を保持する基板保持具とを具備し、該基板保持具は基板を保持する基板保持部と、該基板保持部の下側に位置し所要数の断熱板が設けられた断熱部とを有し、該断熱部の上部の断熱板のピッチを下部の断熱板のピッチより小さくしたことを特徴とする熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−134518(P2007−134518A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326524(P2005−326524)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】