説明

熱処理装置

【課題】熱処理した被処理物を処理容器から取り出して冷却可能であり、処理容器から冷却部への被処理物の流通によってバルブの流体シールが受ける熱の影響を少なくすることができる熱処理装置を提供する。
【解決手段】熱処理装置1は、水平方向の一側部に被処理物の排出口27を有する処理容器11を備え、この処理容器11内に収容された被処理物を熱処理する熱処理部2と、処理容器11における排出口27よりも低位に配置され、熱処理済みの被処理物を冷却する冷却部3と、起立姿勢に配置され、処理容器11の排出口27と冷却部3との間で被処理物を流通させる流通管49と、流体シールを有するとともに、流通管49に設けられたバルブ50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理容器内で被処理物を熱処理する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、核燃料ペレットのスクラップ(被処理物)をリサイクル処理するための熱処理炉が開示されている。この熱処理炉は、被処理物を収容可能であり水平軸心回りに回転可能に設けられた筒状の回転胴と、この回転胴を回転させる駆動装置と、回転胴の周囲に配置されたヒータと、被処理物を投入する投入部と、熱処理後の被処理物を取り出す取り出し部と、投入部と取り出し部とを回転胴に連結する連結部とを備えている。
【0003】
連結部は、回転胴の軸方向一端部に設けられ、投入部は、連結部の上部に連結された漏斗状の供給容器を備えている。一方、取り出し部は、連結部の下部に連結された漏斗状の取り出し容器を備えている。そして、回転胴は、水平な姿勢と、軸方向他端部側(反連結部側)の端部を斜め下方に下げた第1の傾斜姿勢と、斜め上方に上げた第2の傾斜姿勢とに姿勢変更可能であり、第1の傾斜姿勢で供給容器から被処理物を回転胴へ自然流下させ、その後、回転胴を水平な姿勢にして熱処理を行い、さらに第2の傾斜姿勢で、回転胴から熱処理後の被処理物を取り出し容器へ自然流下させるように構成されている。
【0004】
また、連結部には、供給容器から回転胴への被処理物の流通を許容する態様と、回転胴から取り出し部への被処理物の流通を許容する態様とに切り替え可能なバルブが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−211164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている熱処理装置は、回転胴内で被処理物を熱処理した後、回転胴に冷気を導入することによって被処理物を冷却し、その後、回転胴を傾斜させて被処理物を取り出し容器に排出するように構成されている。
このように回転胴内で被処理物を冷却すると、次の熱処理を開始する段階で回転胴が低温となり、低温状態から再度所定の熱処理温度まで回転胴を昇温させなければならないので、処理時間(サイクルタイム)が長くなるという問題があった。
【0007】
熱処理終了後の回転胴の温度を下げないようにするには、被処理物を回転胴から排出した後に冷却することが考えられるが、この場合、高温の被処理物を回転胴からバルブを経て取り出し部に排出する必要がある。しかし、高温の被処理物がバルブを通過すると、バルブのガスシールが熱影響を受け、耐久性が低下するという問題が生じる。
特に、特許文献1の熱処理装置は、回転胴を緩やかに傾斜させることで被処理物を取り出し部へ自然流下させているので、被処理物がバルブを通過し始めてから全て通過し終わるまでに時間がかかり、その分ガスシールに対する熱影響が大きくなるとともに、回転胴の温度低下も大きくなる。
また、回転胴を傾斜姿勢に姿勢変更するための構造によって装置が大型化、複雑化し、コストも増大するという問題もある。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、処理容器内で熱処理した被処理物を処理容器から取り出して冷却可能であり、さらに処理容器から冷却部への被処理物の流通によってバルブの流体シールが受ける熱の影響を少なくすることができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る熱処理装置は、水平方向の一側部に被処理物の排出口を有する処理容器を備え、この処理容器内に収容された被処理物を熱処理する熱処理部と、前記処理容器における被処理物の排出口よりも低位に配置され、熱処理済みの被処理物を冷却する冷却部と、起立姿勢に配置されるとともに、前記処理容器の排出口と前記冷却部との間で被処理物を流通させる流通管と、流体シールを有するとともに、前記流通管に設けられたバルブと、を備えていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、熱処理部の処理容器内で熱処理した後の被処理物を、流通管を介して冷却部に送り、この冷却部において被処理物を冷却することができる。したがって、処理容器の温度低下を抑制することができ、次の熱処理に要する時間を短縮することができるとともに、熱処理部におけるエネルギー消費を少なくすることができる。また、流通管が起立姿勢に配置されているので、処理容器から冷却部への被処理物の移動を短時間で行わせることができ、流通管に設けられたバルブの流体シールに対する熱影響を少なくし、バルブの耐久性低下を防止することができる。
【0011】
前記冷却部は、被処理物を収容するとともに、前記流通管から被処理物を受け入れる受入口と、内部の被処理物を取り出すための取出口とを有する冷却容器を備え、前記冷却容器は、前記受入口側が高位とされ、かつ前記取出口側が低位とされた傾斜状の底壁を有していることが好ましい。
このような構成によって、流通管から受入口を介して冷却容器内に収容された被処理物を、底壁の傾斜に沿って取出口へ向けて流動させ、取出口から取り出しやすくすることができる。
【0012】
前記冷却容器の壁部には、冷却液を流通させる冷却液ジャケットが設けられていることが好ましい。
このような構成によって、冷却容器内における被処理物の冷却効率を高めることができる。
【0013】
前記冷却部は、前記冷却容器内の被処理物を攪拌する攪拌機構をさらに備えていることが好ましい。
このような構成によって、冷却容器内の被処理物の冷却をより促進させることができるとともに、被処理物に動きを与えることで、底壁の傾斜に沿って被処理物を流動させ易くすることができる。
【0014】
前記処理容器は、筒形状に形成されるとともに、その軸方向の一端部に前記排出口を備えており、
前記熱処理部は、前記処理容器をその軸心回りに正逆両方向に回転駆動可能であり、かつ前記被処理物の熱処理時に前記処理容器を一方向に回転させる回転駆動機構を備え、
前記処理容器内には、当該処理容器の他方向の回転によって被処理物を前記排出口へ移送する移送羽根が設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、回転駆動機構によって処理容器を一方向へ回転させながら被処理物を熱処理し、その後、回転駆動機構によって処理容器を他方向へ回転させることによって移送羽根により被処理物を排出口へ移送し、排出口から排出することができる。したがって、処理容器を傾斜した姿勢に変更して被処理物を自然流下させる従来技術に比べ、迅速に被処理物を排出することができる。そのため、被処理物を排出している間の処理容器の温度低下を少なくすることができ、次の熱処理に要する時間を短縮することができる。また、移送羽根は、回転駆動機構による処理容器の回転によって被処理物を排出するため、移送羽根を駆動するための装置を別途設ける必要もなく、安価に構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱処理後の被処理物を処理容器から取り出して冷却部により冷却することが可能であるので、処理容器の温度低下を抑制して熱処理のサイクルタイムを短縮することができ、また、起立姿勢の流通管を介して処理容器から冷却部へ迅速に被処理物を流通させることができるので、バルブの流体シールが受ける熱の影響を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る熱処理装置としての回転レトルト炉を示す正面説明図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】螺旋羽根の斜視図である。
【図4】ロータリジョイントを拡大して示す断面図である。
【図5】冷却容器を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る熱処理装置としての回転レトルト炉を示す正面説明図である。本実施の形態の回転レトルト炉1は、バッチ式により粉体や粒体、塊状物、小物等の各種物品等の被処理物を熱処理するものとされている。なお、以下においては、粉体を被処理物とした例について説明する。
回転レトルト炉1は、被処理物を熱処理する熱処理部2と、熱処理済みの被処理物を冷却する冷却部3とを有し、熱処理部2と冷却部3とは、熱処理部2から冷却部3へ被処理物を流動させる流通管49によって接続されている。
【0019】
熱処理部2は、レトルト11(処理容器)と、このレトルト11内の被処理物を加熱する加熱機構12と、レトルト11及び加熱機構12を支持する支持フレーム13と、この支持フレーム13を支持する架台14と、レトルト11を回転駆動させる回転駆動機構15と、レトルト11内を真空引きする真空ポンプ16と、レトルト11に熱処理前の被処理物を供給する供給機構17と、を備えている。
【0020】
レトルト11は、筒形状に形成され、その軸心Oが横向きとなるように支持フレーム13に支持されている。レトルト11は、円筒形状の胴部20と、この胴部20の軸方向両端部に設けられ、軸方向外側ほど先細りとなるように形成された第1円錐部21及び第2円錐部22とを備えている。また、レトルト11は、軸受等を備えた一対の支持部23,23によって軸心O回りに回転自在に支持されている。第1円錐部21及び胴部20の内周面には、被処理物を攪拌するための攪拌羽根24が設けられている。
【0021】
レトルト11は、第1円錐部21及び第2円錐部22の軸方向外端部(小径部)から同方向外側に延びる第1延長部25及び第2延長部26をさらに備えている。一方(左側)の第1延長部25には供給機構17が接続され、他方(右側)の第2延長部26の先端部には、第2延長部26から被処理物を排出するための排出口27が形成されている。すなわち、レトルト11は、その水平方向の一側部に側方(軸心O方向)に向いた排出口27を備えている。
【0022】
レトルト11の第2延長部26には、被処理物を受け入れる接続部46が接続され、さらに、この接続部46の下部には解砕部47が接続されている。
接続部46は、箱型乃至筒型に形成され、第2延長部26の排出口27から排出された熱処理済みの被処理物を内部に受け入れ可能に構成されている。具体的に、接続部46には、第2延長部26の先端部が挿入される開口筒46aが突設されており、この開口筒46aは、フレキシブル管65及びロータリジョイント64を介して第2延長部26に相対回転可能に連結されている。
解砕部47は、熱処理過程で固まった被処理物が流通管49で詰まらないように、被処理物を細かく砕く機能を有している。
【0023】
加熱機構12は、支持フレーム13に支持された炉体28と、この炉体28の内部に設けられたヒータ29とを備えている。炉体28の内部には、レトルト11の胴部20、第1円錐部21、及び第2円錐部22が配置され、これらをヒータ29によって外側から加熱することで、レトルト11内の被処理物が熱処理される。
【0024】
レトルト11や加熱機構12を支持する支持フレーム13は、支持部31によって架台14に対して所定の角度αを持って傾斜した姿勢で支持されている。したがって、レトルト11は、その軸心Oが水平に対して角度αで傾斜しており、排出口27が低位に配置されている。傾斜角度αは、後述する被処理物の排出のしやすさを考慮し、被処理物の流動性に応じて0.1〜20°程度に設定される。レトルト11の第2円錐部22は、その下面が排出口27側へ向けて上り傾斜となるように配置されている。
【0025】
回転駆動機構15は、支持フレーム13に取り付けられた駆動体33と、この駆動体33の動力をレトルト11に伝達する動力伝達部34とを備えている。本実施の形態では、駆動体33としての電動モータが、動力伝達部34としてのチェーンやスプロケットを介してレトルト11に動力伝達可能に連結されている。また、回転駆動機構15は、正逆回転可能な電動モータを用いるか、又は動力伝達部34が正逆切換可能な変速装置を含むことによって、レトルト11を正逆両方向に回転駆動可能に構成されている。
【0026】
供給機構17は、被処理物を貯留するホッパ36と、上端がホッパ36に接続された供給管37と、この供給管37に設けられた真空バルブ38と、供給管37の下端に接続されたコンベア装置39とを備えている。
ホッパ36は、下方先細り形状に形成され、その下端部に吐出口及び計量部(計量バルブ:図示略)を有している。真空バルブ38は、その開閉によって供給管37内における被処理物の流通を許容又は阻止するとともに、内部に備わったガスシール(流体シール)によって閉鎖時にレトルト11内の気密を保持することが可能である。なお、真空バルブ38は、電磁式あるいはその他の形式によって自動で開閉する構成であってもよいし、手動で開閉する構成であってもよい。供給管37は、レトルト11の軸心Oに対して略垂直な姿勢に配置されている。
【0027】
コンベア装置39は、供給管37の下端部に接続された筒体41と、この筒体41の内部に配置されたコンベア部42とから構成され、筒体41は、フレキシブル管61及びロータリジョイント60を介して、レトルト11の第1延長部25に相対回転可能に連結されている。コンベア部42は、回転軸の周囲に螺旋状の羽根を設けたスクリューコンベアとされ、フレキシブル管61及びロータリジョイント60の内部を通って第1延長部25内に挿入されている。コンベア部42の回転軸には、チェーンやスプロケットからなる動力伝達機構43を介して電動モータ等の駆動体44が動力伝達可能に連結されている。なお、コンベア部42と動力伝達機構43との接続部など、コンベア装置39の内部においてもレトルト11内の気密を保持するためのシール部材等の密封構造が適宜設けられる。また、コンベア部42は、スクリューコンベアに限らず他の形式のコンベアを使用することができる。
【0028】
冷却部3は、レトルト11の排出口27よりも低位に配置された冷却容器48と、冷却容器48内において被処理物を攪拌する攪拌機構82(図5参照)と、を備えている。
冷却容器48には、レトルト11の排出口27に接続された接続部46及び解砕部47から下方に延びて起立姿勢(略垂直姿勢)とされた流通管49の下端部が接続されている。この流通管49には、粉体バルブ56及び真空バルブ50とが設けられている。
【0029】
粉体バルブ56は、その開閉によって流通管49における被処理物の流通を許容又は阻止する。また、真空バルブ50は、その開閉によって流通管49における被処理物の流通を許容又は阻止するとともに、内部に備わったガスシール(流体シール)によって閉鎖時にレトルト11内や冷却容器48内の気密を保持することが可能となっている。
【0030】
図5は、冷却容器を概略的に示す断面図である。冷却容器48は、解砕部47において細かく砕かれた被処理物を流通管49を介して受け入れて冷却し、冷却後の被処理物を取り出すことが可能となっている。冷却容器48は、平坦な円板状の底壁48aと、この底壁48aの外周から立ち上がる筒形状の周壁48bと、この周壁48bの上端を閉鎖する円板状の蓋体48cと、を備えている。
【0031】
冷却容器48は、その後部側(図5の右側)が高位とされ、前部側(図5の左側)が低位とされるように傾斜して配置されている。そして、蓋体48cの後部側には、流通管49の下端に接続される受入口48dが形成され、底壁48aの前部側には、被処理物を取り出すための取出口48eが形成されている。
【0032】
冷却容器48の底壁48a及び周壁48bは、それぞれ内面壁と外面壁とによる内外2重構造とされており、内面壁と外面壁との間に形成された空間は、水等の冷却水(冷却液)が流通する冷却水ジャケット(冷却液ジャケット)48hとされている。冷却水ジャケット48h内には、循環ポンプ83の作動によって周壁48bの外面壁等に設けられた供給ポート48gから冷却水が供給され、供給された冷却水は、冷却水ジャケット48h内を循環した後に排出ポート48iから排出される。
【0033】
冷却容器48の周壁48bには、アルゴンガス等の不活性ガスを冷却容器48内に投入するための導入口48fが設けられている。
冷却容器48の底壁48aには、取出口48eを開閉するためのシャッター装置80が設けられている。このシャッター装置80は、エアシリンダ等からなる駆動体81によって作動し、冷却容器48からの被処理物の取り出しを許容又は阻止する。
【0034】
また、図1に示されるように、シャッター装置80には、取出管51の上端が接続され、この取出管51には、真空バルブ51Aが設けられている。真空バルブ51Aは、取出管51における被処理物の流通を許容又は阻止するとともに、内部に備わったガスシール(流体シール)によって閉鎖時に真空バルブ50とともに冷却容器48内の気密を保持することが可能となっている。そして、シャッター装置80及び真空バルブ51Aを開くことによって、冷却容器48から被処理物を取り出し、別途用意された回収容器52に回収することができる。なお、冷却容器48の蓋体48cと周壁48bの上端縁との間には適宜シール部材が設けられ、両者間のガスの漏れが防止されている。
【0035】
攪拌機構82は、冷却容器48の底部近傍において回転する攪拌羽根82aを備えている。この攪拌羽根82aは、冷却容器48の底壁48a上面の略全体に亘る範囲で被処理物を攪拌するように設けられている。この攪拌羽根82aの回転軸82cは、冷却容器48の略中心に配置され、蓋体48cに設けられたモータ等の駆動体82bによって回転駆動される。そして、攪拌機構82は、冷却容器48内に収容された被処理物を攪拌羽根82aによって攪拌することで冷却を促進し、さらに被処理物全体が均一に冷却水ジャケット48hが形成された底壁48a及び周壁48bに触れやすくすることによって、より冷却を促進する。また、攪拌装置82は、被処理物に動きを与えることで、底壁48aの傾斜に沿って被処理物を取出口48e側へ向けて流動させやすくする機能も有する。
【0036】
図1に示されるように、真空ポンプ16は、架台14に設置されており、接続部46に対して吸引配管53を介して接続されている。そして、真空バルブ38,50を閉じた状態で真空ポンプ16を駆動することによってレトルト11内を真空状態にすることができる。あるいは、真空バルブ50を開き、真空バルブ38,51Aを閉じた状態で真空ポンプ16を駆動することによってレトルト11及び冷却容器48内を真空状態にすることができる。
【0037】
図4は、ロータリジョイント64を拡大して示す断面図である。ロータリジョイント64は、フレキシブル管65に固定される固定側部材67と、第2延長部26に固定される回転側部材66とを備えている。回転側部材66は、第2延長部26の外周を囲繞する筒状の軸部66aと、この軸部66aの一端部(左端部)から径方向外方に延び、第2延長部26に設けられたフランジ部26aにボルト固定されるフランジ部66bとを備えている。両フランジ部26a,66bの間には気密を保つためのOリングからなるシール部材74が設けられている。
【0038】
一方、固定側部材67は、環状の第1ボス部67aと、この第1ボス部67aの軸方向端部(右端部)にボルト固定される第2ボス部67bとを備え、この第2ボス部67bが、中継リング68を介してフレキシブル管65の端部に設けられたフランジ部65aにボルト固定されている。第2ボス部67bと中継リング68との間、及び中継リング68とフランジ部65aとの間には、それぞれ気密を保つためのOリングからなるシール部材75,76が設けられている。また、第1ボス部67aには、冷却水が流入するウォータージャケット67cが設けられている。
【0039】
固定側部材67の第1,第2ボス部67a,67bの内周面と、回転側部材66の軸部66aの外周面との間には、2つの転がり軸受69が設けられており、この転がり軸受69によって回転側部材66と固定側部材67とが相対回転可能に連結されている。
また、第1ボス部67aの内周面と軸部66aの外周面との間で、2つの転がり軸受69の間には、複数のシール部材70が設けられ、複数のシール部材70の配置スペースにグリースが充填されるようになっている。
【0040】
また、第1ボス部67aの軸方向一端部(左端部)には押さえ板73が固定され、この押さえ板73と一方(左側)の転がり軸受69との間にシール部材71が設けられ、このシール部材71の配置スペースにもグリースが充填される。同様に、第2ボス部67bと、他方(右側)の転がり軸受69との間にもシール部材72が設けられ、このシール部材72の配置スペースにグリースが充填される。そして、回転側部材66と固定側部材67との間に設けられたシール部材70,71,72やこれらの配置スペースに充填されたグリースによって、回転側部材66と固定側部材67との間のガスの流通が阻止され、レトルト11内の真空を維持することが可能となっている。
なお、図示は省略するが、第1延長部25側に配置されたロータリジョイント60(図1参照)についても、上記と略同様の構成とされている。
【0041】
図2は、図1のA−A矢視断面図、図3は、移送羽根の斜視図である。図1〜図3に示されるように、本実施の形態のレトルト11の内部には、被処理物を排出口27へ移送するための移送羽根54が設けられている。この移送羽根54は、レトルト11の内周面に沿って周回する螺旋形状に形成されている。また、この移送羽根54は、排出口27により近い、第2円錐部22と第2延長部26の内部に設けられている。移送羽根54の中心には、軸方向に貫通する貫通孔55が形成されている。
【0042】
図1に示されるように、第2円錐部22に設けられた移送羽根54は、レトルト11の軸方向外側に向かうほど外径が小さくなっており、第2延長部26に設けられた移送羽根54は、第2延長部26の全長に渡って一定の外径に形成されている。また、移送羽根54の内径(貫通孔55の直径)は、移送羽根54の全体に渡って一定に形成されている。
そして、移送羽根54は、回転駆動機構15によってレトルト11を軸心O回りに正回転(一方向回転)させたときに内部の被処理物を排出口27とは反対側へ押し戻すように作用し、逆回転(他方向回転)させたときに被処理物を排出口27側へ移送するように作用する。
【0043】
次に、本実施の形態の回転レトルト炉1の動作を説明する。
図1に示されるように、熱処理開始前、熱処理の対象となる被処理物はホッパ36中に貯留されている。ホッパ36の吐出口及び真空バルブ38を開くことによって、所定量の被処理物がコンベア装置39に送られ、さらにコンベア装置39を作動することによってレトルト11の胴部20内に被処理物が供給される。また、レトルト11内部(あるいは、レトルト11内部及び冷却容器48内部)は、真空ポンプ16により真空引きされる。
【0044】
レトルト11内に被処理物が供給されると、回転駆動機構15によってレトルト11を正回転させるとともに、加熱機構12を作動する。これにより、レトルト11内の被処理物が熱処理される。レトルト11は排出口27側が低位となるように傾斜しているため、被処理物は、排出口27側へ向けて自然に流れようとするが、移送羽根54によって押し戻され、さらに攪拌羽根24によって適切に攪拌される。
【0045】
所定時間経過後、熱処理が終了すると、回転駆動機構15及び加熱機構12が停止する。次いで、回転駆動機構15によってレトルト11が逆回転させられるとともに、解砕部47を作動し、粉体バルブ56及び真空バルブ50を開く。被処理物はレトルト11の傾斜によって第2円錐部22の付近まで自然流下し、さらにレトルト11の逆回転により移送羽根54によって排出口27へ移送される。排出口27へ移送された被処理物は接続部46に受け入れられるとともに解砕部47において細かく砕かれ、起立姿勢に配置された流通管49から即座に冷却容器48へ流下する。そして、攪拌機構82を駆動することによって冷却容器48内の被処理物を攪拌しながら冷却する。なお、冷却容器48にはアルゴンガス等の不活性ガスが導入され、冷却中の被処理物の酸化が防止される。ただし、冷却容器48による冷却は、真空の状態で行ってもよい。
【0046】
以上の動作で1サイクルの処理が終了する。そして、続けて処理を行う場合には、上述の動作が繰り返し行われる。また、冷却容器48から被処理物を取り出すには、取り出し部51の下端に回収容器52をセットし、シャッター装置80及び真空バルブ51Aを開いて回収容器52に被処理物を充填すればよい。
【0047】
以上説明した本実施の形態の回転レトルト炉1では、レトルト11内に移送羽根54が設けられているので、レトルト11の逆回転によって被処理物を排出口27から排出することができる。そのため、従来技術のように被処理物を排出するためにレトルト11を傾斜姿勢に変更する動作が不要であり、また、被処理物を傾斜によって自然流下させる場合に比べて迅速に被処理物を排出することができる。そのため、1サイクルの処理が終了した後、次のサイクルの処理に移行するまでの時間を短縮し、その間のレトルト11の温度低下を最小限に抑制することができる。したがって、サイクルタイムを短縮することができるとともにエネルギーの消費を少なくすることが可能となる。
【0048】
また、移送羽根54は、レトルト11の逆回転によって作用するため、移送羽根54を回転させるための駆動部を別途備える必要がない。したがって、移送羽根54を設けることに伴うコスト増を最小限に抑えることができる。
【0049】
また、移送羽根54の軸心には貫通孔55が形成されているので、レトルト11内を真空引きする際に移送羽根54が空気の流動の抵抗になることが少なく、真空ポンプ16を低負荷で駆動し、迅速にレトルト11内を真空状態にすることができる。
【0050】
レトルト11は、排出口27側が低位となるように傾斜して配置されているので、被処理物を移送羽根54の近傍まで自然に流動させることができ、熱処理後、即座に移送羽根54による被処理物の移送を行うことができる。
【0051】
また、熱処理後の被処理物は、レトルト11から排出された後、冷却容器48内で冷却されるので、レトルト11内において被処理物の冷却を行う必要がない。そのため、レトルト11の温度を高温に維持したまま次のサイクルの熱処理に短時間で移行することができる。
また、流通管49が起立姿勢とされているので、レトルト11から冷却容器48へ被処理物を迅速に流通させることができ、流通管49に設けられた真空バルブ50のガスシールに対する熱影響を少なくすることができ、当該真空バルブ50の耐久性低下を防止することができる。
【0052】
冷却容器48には、攪拌機構82が設けられているので、冷却容器48内の被処理物の冷却を促進することができ、また、被処理物に動きを与えて取出口48eへ流動し易くすることができる。
また、冷却容器48には、冷却水ジャケットが設けられているので、被処理物の冷却をより促進することができる。
【0053】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において適宜変更できるものである。例えば、上記実施の形態では、冷却水ジャケット48hが冷却容器48の底壁48aと周壁48bとに設けられているが、被処理物がより接触しやすい底壁48aのみに設けられていてもよい。
また、上記実施の形態では、レトルト11や加熱機構12を支持する支持フレーム13は、第2支持部31により架台14に対して一定の傾斜角度αで配置されているが、第2支持部31としてボールジャッキ等のジャッキ装置を用いることによって、この傾斜角度αを調整可能に構成してもよい。この場合、被処理物の流動性に応じて被処理物が移送羽根54の近傍まで流動しやすくなるように傾斜角度αを調整することが可能となる。
【0054】
また、本発明の熱処理装置は、真空以外の雰囲気用の熱処理装置にも適用することができ、その場合は、上記の実施の形態における真空ポンプや真空バルブ(真空シール)は不要となる。
【符号の説明】
【0055】
1: 回転レトルト炉(熱処理炉)
2: 熱処理部
3: 冷却部
11: レトルト(処理容器)
15: 回転駆動機構
27: 排出口
48: 冷却容器
48a: 底壁
48d: 受入口
48e: 取出口
48h: 冷却水ジャケット
49: 流通管
50: 真空バルブ
54: 移送羽根
82: 攪拌機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向の一側部に被処理物の排出口を有する処理容器を備え、この処理容器内に収容された被処理物を熱処理する熱処理部と、
前記処理容器における被処理物の排出口よりも低位に配置され、熱処理済みの被処理物を冷却する冷却部と、
起立姿勢に配置されるとともに、前記処理容器の排出口と前記冷却部との間で被処理物を流通させる流通管と、
流体シールを有するとともに、前記流通管に設けられたバルブと、を備えていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記冷却部は、被処理物を収容するとともに、前記流通管から被処理物を受け入れる受入口と、内部の被処理物を取り出すための取出口とを有する冷却容器を備え、
前記冷却容器は、前記受入口側が高位とされ、かつ前記取出口側が低位とされた傾斜状の底壁を有している請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記冷却容器の壁部に、冷却液を流通させる冷却液ジャケットが設けられている請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記冷却部が、前記冷却容器内の被処理物を攪拌する攪拌機構をさらに備えている請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記処理容器は、筒形状に形成されるとともに、その軸方向の一端部に前記排出口を備えており、
前記熱処理部は、前記処理容器をその軸心回りに正逆両方向に回転駆動可能であり、かつ前記被処理物の熱処理時に前記処理容器を一方向に回転させる回転駆動機構を備え、
前記処理容器内には、当該処理容器の他方向の回転によって被処理物を前記排出口へ移送する移送羽根が設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7783(P2012−7783A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142761(P2010−142761)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】