説明

熱収縮性ポリオレフィン系フィルム

【課題】層間剥離が無く、有機溶剤での溶剤接着性が良好な熱収縮性オレフィン系フィルムを提供することにある。
【解決手段】中間層と前記中間層の両側に設けた外層とからなる3つの層で構成されてなり、前記中間層[A]が、環状オレフィン系樹脂10〜40質量%、水素添加スチレン系エラストマー10〜40質量%およびポリプロピレン系共重合樹脂35〜70質量%からなる樹脂成分から構成され、前記外層[B]が、環状オレフィン系樹脂40〜80質量%、水素添加スチレン系エラストマー10〜40質量%およびポリプロピレン系共重合樹脂5〜30%からなる樹脂成分から構成される3つの層から構成される多層フィルムを少なくとも一軸方向に延伸してなることを特徴とする熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリオレフィン系フィルムに関し、特にPETボトルに用いるラベル用途に好適な熱収縮性ポリオレフィン系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、包装品の外観向上のためガラス瓶またはプラスチックボトルの保護と商品の表示を兼ねたラベル包装等を目的として、シュリンクラベルが広範に使用されている。これらの目的で使用されるプラスチック素材としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が知られている。
【0003】
しかしながら、ポリ塩化ビニル系樹脂製ラベルは、シュリンク特性には優れるものの、燃焼時に塩素ガスを発生する等の環境問題を抱えている。ポリスチレン系樹脂やポリエステル系樹脂を使用したラベルについては、熱収縮性は良好であるものの、PETボトルとの比重差が小さいため浮遊分離が困難であるという欠点がある。
【0004】
ポリオレフィンからなるシュリンクラベルは、PETボトルとの比重差が大きく、浮遊分離が可能となる。しかし、一方ポリエチレンやポリプロピレンは溶剤接着できないため、従来の筒状ラベル製造装置が使用できないという欠点があった。この欠点を解消するため、たとえば環状オレフィン系樹脂を用いることが提案されている(特許文献1)。環状オレフィン系樹脂を用いることにより、溶剤接着可能となるだけでなく、熱収縮率を高めてフィルム剛性を向上する効果も得られる。
【0005】
しかし、環状オレフィン系樹脂は、有機溶剤での溶剤接着性を発現する効果を有する反面、硬く脆い性質を有するので、印刷などの二次加工時にフィルムが断裂しやすいという問題がある。さらに、収縮特性等の向上のために複層化した場合、層間剥離しやすい等の問題が発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−165357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した問題点に着目してなされたものであって、その目的は、層間剥離が無く、有機溶剤での溶剤接着性が良好な熱収縮性オレフィン系フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、中間層と前記中間層の両側に設けた外層とからなる3つの層で構成されてなり、
前記中間層[A]が、環状オレフィン系樹脂10〜40質量%、水素添加スチレン系エラストマー10〜40質量%およびポリプロピレン系共重合樹脂35〜70質量%からなる樹脂成分よりなり、前記外層[B]が、環状オレフィン系樹脂40〜80質量%、水素添加スチレン系エラストマー10〜40質量%およびポリプロピレン系共重合樹脂5〜30%からなる樹脂成分よりなる3つの層から構成される多層フィルムを少なくとも一軸方向に延伸してなることを特徴としている。
【0009】
中間層[A]と該中間層[A]の両側に設けた外層[B]からなる3つの層は、環状オレフィン系樹脂、水素添加スチレン系エラストマーおよびポリプロピレン系共重合樹脂からなる樹脂成分よりなり、前記中間層[A]と該中間層[A]の両側に設けた前記外層[B]で異なる配合割合とすることによって、熱収縮性、印刷性、溶剤シール性、低比重によるリサイクル性、耐層間剥離性等に優れた熱収縮性ポリオレフィン系フィルムが得られる。
【0010】
請求項2記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、前記中間層[A]と前記2つの外層[B]からなる3つの層の樹脂成分の総量に対する各樹脂成分の3つの層の合計量が、それぞれ環状オレフィン系樹脂20〜50質量%、水素添加スチレン系エラストマー10〜40質量%およびポリプロピレン系共重合樹脂40〜65質量%であることを特徴とする。
【0011】
3つの層の各樹脂成分の合計量を特定の範囲とすることにより、低比重、熱収縮性、コスト等に優れた熱収縮性ポリオレフィン系フィルムが得られる。
【0012】
請求項3記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム全体の厚みに対する前記中間層[A]の厚みの比が50〜80%であることを特徴とする。
【0013】
ポリプロピレン系共重合樹脂の配合量の多い中間層[A]を厚くすることにより、熱収縮特性、比重、等が良好となる。
【0014】
請求項4記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、前記水素添加スチレン系エラストマーが、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体の水素添加誘導体からなり、スチレン系炭化水素の含有率が5質量%以上50質量%以下であることを特徴とする。
【0015】
水素添加スチレン系エラストマーのスチレン系炭化水素の含有率を特定の範囲とすることにより、環状オレフィン系樹脂とポリプロピレン系共重合樹脂との相容性が良好となり、フィッシュアイ発生の低減につながる。
【0016】
請求項5記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、前記収縮性ポリオレフィン系フィルムの試料を、100℃の熱水中に10秒間浸漬したときの最大収縮方向の熱収縮率が35%以上であることを特徴とする。
【0017】
熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの100℃の熱水中に10秒間浸漬したときの最大収縮方向の熱収縮率が35%以上であれば、熱収縮性ラベルとして使用したとき、被包材への追従性が良好である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、比重が小さいのでPETボトル用ラベルに使用した場合PETボトルとの比重差が大きく、浮遊分離が可能である。また、熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを構成する3つの層の樹脂組成を特定の範囲としたことによって、耐層間剥離性、熱収縮特性に優れ、印刷やセンターシール加工時に破断することがなく、また、シクロヘキサンやテトラヒドロフランなどの溶剤を接着溶剤として用いた際、溶剤接着性が良好であり通常の溶剤接着法で容易にセンターシールを行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、中間層と前記中間層の両側に設けた外層からなる3つの層からなり、各層は、環状オレフィン系樹脂、水素添加スチレン系エラストマーおよびポリプロピレン系共重合樹脂からなる樹脂組成物で構成されている。
【0020】
上記環状オレフィン系樹脂とは、一般的な総称であり、具体的には、(a)環状オレフィンの開環(共)重合体、(b)環状オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ水素添加した重合体、(c)環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとのランダム共重合体である。その他に(d)前記(a)〜(c)を不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体などが例示される。これらの環状オレフィン系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0021】
環状オレフィン系樹脂は、市販されているものを使用してもよく、たとえば環状オレフィンとエチレンとのコポリマーとして「TOPAS」(Topas Advanced Polymers GmbH製)、「アペル」(三井化学製)、環状オレフィンポリマーとしては「ゼオノア」(日本ゼオン製)などが挙げられる。なお、上記した環状オレフィン系樹脂は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記のような環状オレフィン系樹脂は、熱収縮性フィルムとして必要な熱収縮率を高めると共に、フィルムの剛性(腰)を高め、有機溶剤での接着性を高める効果がある。反面、環状オレフィン系樹脂は硬く脆い性質を有するので印刷などの加工時にフィルムが断裂しやすくなる。
【0023】
環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は50℃以上、140℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以上110℃以下である。ガラス転移温度が50℃以上であれば、自然収縮率を低減することができ、ロールにシワやタルミができ難く、巻き締まりによるブロッキングの発生が抑制され好ましい。また、ガラス転移温度が140℃以下であれば、製膜時の延伸性が良好で厚みムラが生じ難くなり、外観も良好である。
【0024】
次に、水素添加スチレン系エラストマーは、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体の水素添加誘導体からなり、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのランダム共重合体またはブロック共重合体の水素添加誘導体が挙げられる。スチレン系炭化水素としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどがあげられ、共役ジエン系炭化水素としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、フェニルブタジエン等が挙げられ、これらの共重合成分は1種または2種以上を使用できる。
【0025】
前記水素添加スチレン系エラストマーにおけるスチレンの含有量は、5〜65質量%がよく、10〜60質量%であるとより好ましい。スチレンの含有量が5質量%以上であれば、常温での剛性が高いために、得られるフィルムの腰が強いものとなりやすい。一方、65質量%を超えると、上記樹脂組成物との平均屈折率の差が大きくなってくるために、得られるフィルムの透明性が低下し、また、衝撃特性を向上させる効果も低下してしまう。
【0026】
具体例としては、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、水素添加スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンランダム共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンランダム共重合体などが挙げられる。具体的な製品としては、ダイナロン(JSR製)、クレイトンG(クレイトンポリマージャパン製)、タフテック(旭化成ケミカルズ製)、セプトン、ハイブラー(クラレ製)などが挙げられる。なお、上記した水素添加スチレン系エラストマーは、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記水素添加スチレン系エラストマーを添加することで、環状オレフィン系樹脂とポリプロピレン系共重合樹脂との相容性が向上し、透明性および熱収縮特性が良好となる。また、水素添加スチレン系エラストマーが弾性体としての役割を果たすために、得られるフィルムの耐衝撃性が向上する効果も得られる。
【0028】
次に、ポリプロピレン系共重合樹脂としては、例えば、プロピレンが主成分であるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体が挙げられる。ここで、α−オレフィンとしては、プロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられ、好ましくは、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が例示され、上記コモノマーを複数種使用することも可能である。これらを含む好ましい共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体などが挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、これらを複数組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記ポリプロピレン系共重合樹脂は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であると、結晶性が低下するため熱収縮性が向上するのでより好ましい。このランダム共重合体中のα−オレフィンの含有量は2.0〜30質量%が好ましい。特にα−オレフィンがエチレンである場合は、2.0〜10質量%であることが好ましく、2.0〜6.0質量%であるとより好ましい。このような含有量であると、適度な結晶性を有するので、収縮性と常温でのフィルムの腰が特に適したものとなる。
【0030】
また、上記ポリプロピレン系共重合樹脂のメルトフローレート(以下、「MFR」と略す。JIS K 7210に従い、230℃、21.18Nの荷重で測定した値をいう。)は、0.4〜20g/10分であるとよく、0.5〜5g/10分であるとより好ましい。MFRが0.4g/10分以上であれば、押出時の負荷が高くなりすぎず、生産性が安定する。またMFRが20g/10分以下であれば、安定した延伸が行える。ポリプロピレン系共重合樹脂は、市販のものを使用することができ、メタロセン系触媒を用いて重合されたポリプロピレン系共重合樹脂であるウィンテックWFX4TA、ウィンテックWFX6(日本ポリプロ製)が好ましい。
【0031】
この発明にかかるポリプロピレン系共重合樹脂は、示差走査熱量計にて測定される結晶融解ピーク温度が、100〜150℃であることが好ましい。ここで上記結晶融解ピーク温度が100℃未満であると、耐熱性が不十分となる場合があり、150℃を超えると、延伸が難しくなる場合があり、熱収縮性も低下する場合がある。
【0032】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの中間層[A]の樹脂成分は、環状オレフィン系樹脂を10〜40質量%、好ましくは15〜35質量%、水素添加スチレン系エラストマーを10〜40質量%、好ましくは15〜35質量%およびポリプロピレン系共重合樹脂を35〜70質量%、好ましくは40〜60質量%から構成されている。
【0033】
前記中間層[A]を構成する樹脂成分に対して、環状オレフィン系樹脂の配合量が10質量%未満であると、フィルムの腰が十分強い。また中間層[A]を構成する樹脂成分に対して、環状オレフィン系樹脂の配合量が40質量%以下であればフィルムの比重が十分小さくなるので好ましい。
【0034】
前記中間層[A]を構成する樹脂成分に対して、水素添加スチレン系エラストマーの配合量が、中間層[A]を構成する樹脂成分に対して、10質量%以上であれば、収縮性、耐衝撃性、層間剥離の改良効果が十分に発揮される。また中間層[A]を構成する樹脂成分に対して、水素添加スチレン系エラストマーの配合量が40質量%以下であれば、得られるフィルムの腰が強くなり、自然収縮が低減されるといった利点を有する。
【0035】
前記中間層[A]を構成する樹脂成分に対して、ポリプロピレン系共重合樹脂が35質量%以上であれば、フィルムの比重が十分小さくなる。また中間層[A]を構成する樹脂成分に対して、ポリプロピレン系共重合樹脂が70質量%以下であれば、熱収縮率に優れる。
【0036】
次に、本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの外層[B]の樹脂成分は、環状オレフィン系樹脂を40〜80質量%、好ましくは50〜75質量%、水素添加スチレン系エラストマーを10〜40質量%、好ましくは15〜35質量%およびポリプロピレン系共重合樹脂を5〜30%、好ましくは7〜25質量%から構成されている。
【0037】
前記外層[B]を構成する樹脂成分に対して、環状オレフィン系樹脂が40質量%以上であれば、フィルムの腰強さが十分であり、溶剤シール強度も十分である。また外層[B]を構成する樹脂成分に対して、環状オレフィン系樹脂が80質量%を超えるとフィルムの比重が大きくなる欠点がある。
【0038】
前記外層[B]を構成する樹脂成分に対して、水素添加スチレン系エラストマーの配合量が10質量%以上であれば、収縮性、耐衝撃性、層間剥離の改良効果が十分に発揮される。また前記外層[B]を構成する樹脂成分に対して、水素添加スチレン系エラストマーの配合量が40質量%以下であれば、得られるフィルムの腰が強くなり、自然収縮が低減されるといった利点を有する。
【0039】
前記外層[B]を構成する樹脂成分に対して、ポリプロピレン系共重合樹脂の配合量が5質量%以上であれば、層間密着性が良好である。前記外層[B]を構成する樹脂成分に対して、ポリプロピレン系共重合樹脂の配合量が30質量%以下であればシール強度が十分確保される。
【0040】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを構成する前記中間層[A]と前記2つの外層[B]からなる3つの層の樹脂成分の総量に対する各樹脂成分の3つの層の合計量は、環状オレフィン系樹脂20〜50質量%、水素添加スチレン系エラストマー10〜40質量%、ポリプロピレン系共重合樹脂40〜65質量%の範囲とするのが好ましい。
【0041】
熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを構成する3つの層の樹脂成分の総量に対する環状オレフィン系樹脂の合計量が20質量%以上であれば、フィルムの熱収縮率が十分大きくなり、50質量%以下であればフィルムの比重が十分小さい。
【0042】
熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを構成する3つの層の樹脂成分の総量に対する水素添加スチレン系エラストマーが10質量%以上であれば、フィッシュアイの発生が抑制され、層間密着性が良好であり、40質量%以下であればフィルムの腰強さが十分である。
【0043】
熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを構成する3つの層の樹脂成分の総量に対するポリプロピレン系共重合樹脂が40質量%以上であれば、フィルムの比重が十分に小さくなり、65質量%以下であればフィルムの熱収縮率が十分大きい。
【0044】
本発明に係る熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの厚みは特に限定されないが、ラベルとしての用途を考えると100μm以下が好ましく、より好ましくは30〜80μmである。また、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム全体の厚みに対する2つの外層の合計の厚みの比は、0.1〜0.6の範囲が好ましく、より好ましくは0.15〜0.5の範囲である。熱収縮性ポリオレフィン系フィルム全体の厚みに対する2つの外層の合計の厚みの比が0.1以上であれば外層を溶剤接着層として用いる際に十分な溶剤接着強度が得られる。また熱収縮性ポリオレフィン系フィルム全体の厚みに対する2つの外層の合計の厚みの比が0.6以下であれば比重の大きな外層部分が多くなり過ぎず好ましい。
【0045】
本発明に係る熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの比重は、PETボトル用ラベルとして用いた場合、比重の大きなポリエステル樹脂と比重の小さな熱収縮性ポリオレフィン系フィルムのラベルを粉砕後に、水を用いて比重差で分離できることが望ましい。ラベルとして使用する際、印刷が施されるので、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム自体の比重は0.96以下、好ましくは0.95以下が望まれる。
【0046】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、100℃の熱水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が35%以上である。熱収縮率の測定および計算については後記の方法による。該熱収縮率が35%未満では、該熱収縮性ポリオレフィン系フィルムから作られたラベルを容器に被覆収縮させる際にラベルの収縮不足が発生する。該熱収縮率は好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上である。前記熱収縮率は、前述のフィルムの樹脂配合、フィルムの層構成および後述の延伸条件の組み合わせにより達成することができる。
【0047】
また、本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、40℃に保持した恒温槽に1週間保管後の自然収縮率が2%以下、好ましくは1.5%以下である。自然収縮率の測定および計算については後記の方法による。自然収縮率が2%以下であれば、熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの製造から印刷等の二次加工までの際に長期間経ている場合でも、結果的に大きく均等な熱収縮性を示すため、ラベルとして容器に装着したときにフィルムや印刷模様の歪み、容器への追従不足が生じにくい。
【0048】
なお、本発明に係る熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの構成は前述したとおりであるが、前述した本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、上記以外の公知の樹脂、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、造核剤、紫外線吸収剤、着色剤などを適宜含有させることができる。なお、これらのうち特に帯電防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤などの添加は耐ブロッキング性の向上には有効であるが、過剰添加は溶剤接着性を阻害するため、添加量には十分に配慮する必要がある。
【0049】
次に本発明に係る熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの製膜方法について説明する。本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、たとえば前述したような樹脂原料をTダイ押出法によって220〜250℃で溶融押出ししたフィルムを、テンター延伸法、ロール延伸法などによって少なくとも一軸方向に2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは4.5倍以上延伸することによって製造する。1つの軸方向への延伸倍率は12倍以下とすることが好ましく、10倍以下がより好ましい。該延伸倍率で延伸することにより必要な熱収縮率を確保できる。延伸方法は、一軸延伸、二軸延伸のいずれでもよいが、フィルムの流れ方向に対して直交方向に一軸延伸することが好ましい。なお、二軸延伸の場合は、主延伸方向に対して直交する方向に1.1倍から2倍の範囲内で延伸することが好ましい。また、延伸に先立ってフィルムを予備加熱してもよく、予備加熱温度を80℃以上、120℃以下とすることが好ましい。延伸温度は、70℃以上110℃以下の温度行うのがよい。さらに、延伸後の熱固定は70℃〜85℃で行なうのがよく、また、熱固定を行なう際の弛緩処理は0〜10%の範囲が好ましい。
【実施例】
【0050】
次に、実施例を挙げて本発明の構成と作用効果をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の要旨を逸脱しない範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、本明細書中における各種特性値の測定法は下記のとおりである。
【0051】
[比重]
JIS K7112−1999に準拠し、密度勾配管法により測定したフィルムの密度と温度23℃における水の密度との比から、フィルムの比重を求めた。
【0052】
[フィッシュアイ]
フィルムの任意の箇所からA4大の大きさのサンプルを採取し、フィッシュアイのサイズを確認する。
○:フィッシュアイの最大の直径が0.3mm未満。
×:フィッシュアイの最大の直径が0.3mm以上。
【0053】
[溶剤シール強度]
製膜したフィルムから任意の位置で主収縮方向300mm×主収縮方向に対して直交する方向100mmの試料を採取し、主収縮方向の両端より10mmの位置で、シクロヘキサン10質量%、n−ヘキサン90質量%からなる混合溶剤を用いて溶剤シールして筒状ラベルを作成し、該筒状ラベルのシール部を5mm幅で切り取ったものを測定サンプルとした。シール部の両端を島津製作所製「オートグラフ型引張試験機」にセットして、180度ピール試験で引張速度200mm/分で評価した。
○:50g/5mm以上。
△:20g/5mm以上、50g/5mm未満。
×:20g/5mm未満。
【0054】
[層間剥離]
JIS D0202−1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行なった。セロハンテープ(ニチバン製「CT24」)を用い、指の腹でフィルムに密着させた後剥離した。判定は100マスのうち、剥離しないマス目の数で評価した。
○:外層部分が全く剥離しない。
△:外層部分の剥離が1〜49箇所以下。
×:外層部分の剥離が50箇所以上。
【0055】
[熱収縮率]
フィルムを、一辺がフィルムの流れ方向に対して平行となるように100mm×100mmの正方形に切り出し、これを98±2℃に保持した熱水水槽に10秒間浸漬する。10秒経過後直ちに、別途用意した25℃の水槽に10秒間浸漬した後、フィルムの主収縮方向の長さを測定し、下記式によって熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0056】
[自然収縮率]
フィルムを、一辺がフィルムの流れ方向に対して平行となるように500mm×500mmの正方形に切り出し、これを40℃に保持した恒温槽に1週間保管後、フィルムの主収縮方向の長さを測定し、下記式によって自然収縮率を求めた。
自然収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0057】
実施例および比較例で使用した樹脂等の原料は、以下のとおりである。
COR−1:環状オレフィン系樹脂「TOPAS 8007」(ポリプラスチックス製)、エチレン−環状オレフィン共重合樹脂、ガラス転移温度80℃、比重1.02、MFR32g/10分(260℃、2.16kg)
COR−2:環状オレフィン系樹脂「アペル APL6509T」(三井化学製)、エチレン−環状オレフィン共重合樹脂、ガラス転移温度80℃、比重1.02、MFR30g/10分(260℃、2.16kg)
HSE−1:水素添加スチレン系エラストマー「ハイブラーKL7350」(クラレ製)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合樹脂、比重0.95、MFR22.8g/10分(200℃、10kg)
HSE−2:水素添加スチレン系エラストマー「セプトンS2007」(クラレ製)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合樹脂、比重0.91、MFR4g/10分(200℃、10kg)
PPC:ポリプロピレン系共重合樹脂「ウィンテックWFX6」(日本ポリプロ製)、メタセロン触媒で製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合樹脂、比重0.9、MFR3g/10分(200℃、10kg)
PP:ポリプロピレン樹脂「F113G」(プライムポリマー製)、ポリプロピレンホモポリマー、比重0.9、MFR3g/10分(200℃、10kg)
HPR:水添石油樹脂「アルコンP140」(荒川化学工業製)、比重0.999、融点140℃
AOC:α−オレフィン共重合樹脂「タフマーBL2481」(三井化学製、柔軟性、接着性改良剤)、ブテン−プロピレン共重合樹脂、比重0.9、MFR4g/10分(190℃、2.16kg)
【0058】
[実施例1]
外層には、環状オレフィン系樹脂「TOPAS 8007」70質量部、水素添加スチレン系エラストマー「ハイブラーKL7350」20質量部およびプロピレン系共重合樹脂「ウィンテックWFX6」10質量部を混合した樹脂組成物を、中間層には、環状オレフィン系樹脂「TOPAS 8007」28質量部、水素添加スチレン系エラストマー「ハイブラーKL7350」19質量部およびプロピレン系共重合樹脂「ウィンテックWFX6」53質量部を混合した樹脂組成物を、それぞれ別の押出機に投入し、240℃でTダイより共押出し、30℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、90℃で予熱後、ロール延伸機を用いて縦方向に3.5倍延伸してフラット状の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを得た。この延伸されたフィルムの厚さは外層が各々7.5μm、中間層が35μmでトータルの厚さは50μmであった。試験結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
[実施例2〜5]
前記実施例1と同様に、表1に示す外層および中間層の樹脂組成物をTダイより共押し出しし、30℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、90℃で予熱後、ロール延伸機を用いて縦方向に3.5倍延伸してフラット状の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを得た。この延伸されたフィルムの厚さは外層が各々7.5μm、中間層が35μmでトータルの厚さは50μmであった。試験結果を表1に示す。
【0061】
表1から判るように、実施例1〜5の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、フィッシュアイや層間剥離もなく、収縮率などの諸物性も良好である。
【0062】
[比較例1〜6]
前記実施例1と同様に、表2に示す外層および中間層の樹脂組成物をTダイより共押出し、30℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、90℃で予熱後、ロール延伸機をて用いて縦方向に3.5倍延伸してフラット状の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを得た。この延伸されたフィルムの厚さは外層が各々7.5μm、中間層が35μmでトータルの厚さは50μmであった。試験結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
表2から判るように、比較例1,2はフィシュアイや層間剥離に欠点があり、比較例3は、シール強度に欠点がある。また、比較例4〜6は自然収縮率が2%を超えるという欠点がある。さらに比較例4は比重が0.96を超えているため、ラベルとして使用した場合PETボトルとの浮遊分離に支障をきたす。また比較例5は熱収縮率が32%であり、熱収縮性フィルムとして使用した場合、容器への追従性が劣る。
【0065】
[比較例7]
前記実施例1の外層に使用した、環状オレフィン系樹脂「TOPAS 8007」70質量部、水素添加スチレン系エラストマー「ハイブラーKL7350」20質量部およびプロピレン系共重合樹脂「ウィンテックWFX6」10質量部を混合した樹脂組成物を単層としてTダイより押出し、30℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、90℃で予熱後、ロール延伸機を用いて縦方向に3.5倍延伸してフラット状で厚さ50μmの熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを得た。試験結果を表3に示す。
このフィルムは、熱収縮率が60%、自然収縮率が0.78%で良好であったが、耐溶剤性に乏しく、高速印刷時の張力でフィルムの破断を生じてしまい、さらに、比重が0.98を超えているため、水を用いた印刷ラベルの分別が困難であった。
【0066】
【表3】

【0067】
[比較例8]
前記実施例1の中間層に使用した、環状オレフィン系樹脂「TOPAS 8007」28質量部、水素添加スチレン系エラストマー「ハイブラーKL7350」19質量部およびプロピレン系共重合樹脂「ウィンテックWFX6」53質量部を混合した樹脂組成物を単層としてTダイより押出し、30℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、90℃で予熱後、ロール延伸機を用いて縦方向に3.5倍延伸してフラット状で厚さ50μmの熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを得た。試験結果を表3に示す。
このフィルムは、熱収縮率は33%、自然収縮率は2.32%で収縮特性に劣り、溶剤によるシール強度不足等の欠点がある。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは比重が小さいので、PETボトル用ラベルに使用した場合、PETボトルとの比重差が大きく浮遊分離が可能であるため、大量に消費されているPETボトルをリサイクル利用する際に有用である。また、熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを構成する3つの層の樹脂組成を特定の範囲としたことによって、耐層間剥離性、熱収縮特性に優れ、印刷やセンターシール加工時に破断することがなく、また、シクロヘキサンやテトラヒドロフランなどの溶剤を接着溶剤として用いた際、溶剤接着性が良好であり通常の溶剤接着法で容易にセンターシールを行なうことができるため、二次加工装置を新たに増設する必要がない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層と前記中間層の両側に設けた外層とからなる3つの層で構成されてなり、
前記中間層[A]が、環状オレフィン系樹脂10〜40質量%、水素添加スチレン系エラストマー10〜40質量%およびポリプロピレン系共重合樹脂35〜70質量%からなる樹脂成分から構成され、
前記外層[B]が、環状オレフィン系樹脂40〜80質量%、水素添加スチレン系エラストマー10〜40質量%およびポリプロピレン系共重合樹脂5〜30%からなる樹脂成分から構成される3つの層から構成される多層フィルムを
少なくとも一軸方向に延伸してなることを特徴とする熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項2】
前記中間層[A]と前記2つの外層[B]からなる3つの層の樹脂成分の総量に対する各樹脂成分の3つの層の合計量が、それぞれ環状オレフィン系樹脂25〜50質量%、水素添加スチレン系エラストマー10〜40質量%およびポリプロピレン系共重合樹脂40〜65質量%で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項3】
前記熱収縮性ポリオレフィン系フィルム全体の厚みに対する前記中間層[A]の厚みの比が50〜80%であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項4】
前記水素添加スチレン系エラストマーが、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体の水素添加誘導体からなり、スチレン系炭化水素の含有率が5質量%以上50質量%以下である樹脂を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項5】
前記収縮性ポリオレフィン系フィルムの試料を、100℃の熱水中に10秒間浸漬したときの最大収縮方向の熱収縮率が35%以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。

【公開番号】特開2011−161880(P2011−161880A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29806(P2010−29806)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】