説明

熱可塑性エラストマー組成物

【課題】強度に優れた熱可塑性エラストマー組成物を提供すること。
【解決手段】 下記成分(A)10〜70重量部、下記成分(B)30〜90重量部(ただし、成分(A)及び成分(B)の合計を100重量部とする。)及び架橋剤を溶融混練装置に供給し、成分(A)及び成分(B)を架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、通常の熱可塑性樹脂の成形機により加工ができ、リサイクルが可能であること、更に柔軟なことから、コンソールボックスやインストルメントパネル表皮などの自動車内装部品、ウィンドモールなどの自動車外装部品をはじめ各種部品に用いられている。
例えば、自動車内装部品の表皮シート用のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物として、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴムとポリプロピレン樹脂とを動的熱処理したオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を2種配合した組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−136205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記組成物からなる熱可塑性エラストマーは、強度において十分満足のいくものではなかった。
【0005】
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、強度に優れた熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記成分(A)10〜70重量部、下記成分(B)30〜90重量部(ただし、成分(A)及び成分(B)の合計を100重量部とする。)及び架橋剤を溶融混練装置に供給し、成分(A)及び成分(B)を架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物にかかるものである。
成分(A):ポリプロピレン樹脂
成分(B):下記一般式[I]で表されるバナジウム化合物を用いて、下記成分(a)、(b)及び(c)を重合させて得られる共重合体であって、かつ下記の(1)、(2)及び(3)の条件を充足する共重合体と任意に鉱物油系軟化剤とを含有するゴム。
VO(OR)m(OR’)nX3-m-n [1]
(式中、Rは2級以上の炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R’は炭素数1〜8の直鎖状炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表し、m及びnは正の数を表し、かつm+n≦3、m≠0、n≠0である。)
(a):エチレン
(b):炭素数3〜20のα−オレフィン
(c):非共役ポリエン
(1)エチレン単位量とα−オレフィン単位量のモル比(エチレン単位量/α−オレフィン単位量)が90/10〜50/50であること
(2)よう素価が1〜30であること
(3)テトラリン中、135℃で測定した極限粘度[η]が0.5〜10dl/gであること
【発明の効果】
【0007】
本発明により、強度に優れた熱可塑性エラストマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、下記成分(A)10〜70重量部、下記成分(B)30〜90重量部(ただし、成分(A)及び成分(B)の合計を100重量部とする。)及び架橋剤を溶融混練装置に供給し、成分(A)及び成分(B)を架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるものである。
成分(A):ポリプロピレン樹脂
成分(B):下記一般式[I]で表されるバナジウム化合物を用いて、下記成分(a)、(b)及び(c)を重合させて得られる共重合体であって、かつ下記の(1)、(2)及び(3)の条件を充足する共重合体と任意に鉱物油系軟化剤とを含有するゴム。
VO(OR)m(OR’)nX3-m-n [1]
(式中、Rは2級以上の炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R’は炭素数1〜8の直鎖状炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表し、m及びnは正の数を表し、かつm+n≦3、m≠0、n≠0である。)
(a):エチレン
(b):炭素数3〜20のα−オレフィン
(c):非共役ポリエン
(1)エチレン単位量とα−オレフィン単位量のモル比(エチレン単位量/α−オレフィン単位量)が90/10〜50/50であること
(2)よう素価が1〜30であること
(3)テトラリン中、135℃で測定した極限粘度[η]が0.5〜10dl/gであること
【0009】
(成分(A))
成分(A)は、プロピレンの単独重合体、または、プロピレンとエチレン及び/又は炭素原子数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体もしくはブロック共重合体であって、プロピレン単位の含有量が50重量%を超え100重量%以下であり、JIS K7121に従い昇温速度および降温速度が5℃/minの条件で測定して、100℃以上に融点を有する重合体である。成分(A)は、該単独重合体、該ランダム共重合体および該ブロック共重合体の2以上の組合せであってもよい。
【0010】
上記のランダム共重合体としては、熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性を高めるために、(1)プロピレン単位の含有量が90〜99.5重量%であり、エチレン単位の含有量が0.5〜10重量%であるプロピレン−エチレンランダム共重合体(プロピレン単位とエチレン単位との合計を100重量%とする。);(2)プロピレン単位の含有量が90〜99重量%であり、エチレン単位の含有量が0.5〜9.5重量%であり、炭素数4〜10のα−オレフィン単位の含有量が0.5〜9.5重量%であるプロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(プロピレン単位とエチレン単位とα−オレフィン単位との合計を100重量%とする);または(3)プロピレン単位の含有量が90〜99.5重量%であり、炭素数4〜10のα−オレフィン単位の含有量が0.5〜10重量%であるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(プロピレン単位とα−オレフィン単位との合計を100重量%とする)が好ましい。
【0011】
上記のブロック共重合体とは、プロピレンの単独重合体またはプロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンとのランダム共重合体である第1重合体を製造する工程(1)と、第1重合体の存在下に、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンとのランダム共重合体である第2重合体を製造する工程(2)とからなる製造方法で製造された第1重合体と第2重合体とからなる混合物であって、第2重合体に含有されるプロピレン単位以外のモノマー単位の含有量(すなわち、エチレン単位の含有量、α−オレフィン単位の含有量、またはエチレン単位とα−オレフィン単位との含有量)が、第1重合体に含有されるプロピレン単位以外のモノマー単位の含有量より多い混合物である。
【0012】
該ブロック共重合体は、熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性を高めるために、好ましくは、第1重合体に含有されるプロピレン単位以外のモノマー単位の含有量が0〜10重量%(第1重合体に含有される全てのモノマー単位の合計を100重量%とする。)の重合体、より好ましくは、第2重合体に含有されるプロピレン単位以外のモノマー単位の含有量が5〜50重量%(第2重合体に含有される全てのモノマー単位の合計を100重量%とする。)の共重合体、さらに好ましくは、第2重合体の含有量が5〜70重量%(該ブロック共重合体の量を100重量%とする。)の共重合体である。
【0013】
上記の炭素原子数4〜10のα−オレフィンとして、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよび1−デセンのような直鎖状α−オレフィン;3−メチル−1−ブテンおよび3−メチル−1−ペンテンのような分岐状α−オレフィン;ならびにこれらの2以上の組合せを例示することができる。
【0014】
JIS K7210に従い21.18Nの荷重下230℃で測定される成分(A)のメルトフローレート(MFR)は、加工性を高めるために、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上であり、熱可塑性エラストマー組成物の低圧縮永久歪性を高めるために、また、強度を高めるために、好ましくは150g/10分以下、より好ましくは100g/10分以下である。
【0015】
成分(A)として、プロピレンの単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、およびエチレン−プロピレン−ブテンブロック共重合体を例示することができる。中でも、プロピレンの単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体が好ましい。
【0016】
本発明における成分(A)のポリプロピレン樹脂の製造方法として、公知のチーグラー・ナッタ系触媒、または、メタロセン系錯体および非メタロセン系錯体等の公知の錯体系触媒を用いて、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等の公知の重合法により、プロピレンを単独重合あるいはプロピレンと他のモノマーとを共重合する方法を例示することができる。成分(A)は市販品であってもよい。
【0017】
(成分(B))
一般式[1]で表されるバナジウム化合物を用いて、成分(a)、(b)及び(c)を重合させて得られるエチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン系共重合体ゴムである。
VO(OR)m(OR’)nX3-m-n [1]
(式中、Rは2級以上の炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R’は炭素数1〜8の直鎖状炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表し、m及びnは正の数を表し、かつm+n≦3、m≠0、n≠0である。)
【0018】
式[1]で表されるバナジウム化合物の製造方法としては、下記一般式[2]で表されるバナジウム化合物と、炭素数1〜8の1級アルコールとを反応させる方法を例示することができる。
VO(OR)pX3-p [2]
(式中、Rは炭素数1〜8の2級以上の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表し、pは0≦p≦3の整数を表す。)
【0019】
式[1]のmは、熱可塑性エラストマー組成物の強度をより高めるために、好ましくは0.5以上である。また、mは、熱可塑性エラストマー組成物の強度を高め、また、低圧縮永久歪性を高めるために、好ましくは2以下である。
【0020】
式[1]のnは、熱可塑性エラストマー組成物の強度を高め、また、低圧縮永久歪性を高めるために、好ましくは1以上である。また、mは、熱可塑性エラストマー組成物の強度をより高めるために、好ましくは2以下である。
【0021】
式[1]で表される化合物として、VO(O(iso−C37))(OEt)Cl、VO(O(iso−C37))(OEt)2、VO(O(iso−C37))0.5(OEt)1.5Cl、VO(O(iso−C37))1.5(OEt)0.5Cl、およびVO(O(iso−C37))0.8(OEt)1.1Cl1.1を例示することができる。中でも、入手容易性から、VO(O(iso−C37))0.8(OEt)1.1Cl1.1が特に好ましい。これらの化合物は、VOCl3とアルコールとの反応によって、または、VOCl3とVO(OR)3とVO(OR’)3との反応によって製造することができる。
【0022】
成分(b)におけるα−オレフィンは、炭素数3〜20のα−オレフィンである。該α−オレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、および1−デセンのような直鎖状オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、および4−メチル−1−ペンテンのような分岐オレフィン;ビニルシクロヘキサン;ならびに、これらの2以上の組合せを例示することができる。中でも、入手容易性から、好ましくはプロピレンまたは1−ブテンであり、特に好ましくはプロピレンである。
【0023】
成分(c)における非共役ポリエンは、好ましくは炭素数3〜20の非共役ポリエンである。該非共役ポリエンとして、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、および7−メチル−1,6−オクタジエンのような鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラインデン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、5,9,13−トリメチル−1,4,8,12−テトラデカジエン、4−エチリデン−12−メチル−1,11−ペンタデカジエンおよび6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネンのような環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、1,3,7−オクタトリエン、6,10−ジメチル−1,5,9−ウンデカトリエン、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、13−エチル−9−メチル−1,9,12−ペンタデカトリエン、5,9,8,14,16−トリメチル−1,7,14−ヘキサデカトリエン、および1,4,9−デカトリエンのようなトリエン;ならびに、これらの2以上の組合せを例示することができる。中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンまたはこれらの組合せが好ましい。
【0024】
成分(B)中の上記共重合体ゴムのエチレンに基づく単量体単位の含有量(エチレン単位量)は50モル%以上90モル%以下、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量(α−オレフィン単位量)は50モル%以下10モル%以上である。強度を高めるために、好ましくは、エチレン単位量は55モル%以上であり、α−オレフィン単位量は45モル%以下である。また、耐寒性を高めるために、好ましくは、エチレン単位量は88モル%以下であり、α−オレフィン単位量は12モル%以上である。
【0025】
成分(B)中の上記共重合体ゴムのよう素価(g/100gポリマー)は、1〜30である。該ヨウ素価は、強度を高めるために、また、低圧縮永久歪性を高めるために、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上である。該ヨウ素価は、加工性を高めるために、また、耐候性を高めるために、好ましくは28以下であり、より好ましくは25以下である。
【0026】
成分(B)中の上記共重合体ゴムのテトラリン中135℃で測定した極限粘度[η]は0.5〜10dl/gである。該極限粘度は、強度を高めるために、好ましくは0.8dl/g以上であり、より好ましくは1dl/g以上である。また、該極限粘度は、成形性を高めるために、好ましくは8dl/g以下であり、より好ましくは5dl/g以下である。
【0027】
成分(B)中の上記共重合体ゴムとして、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエン共重合体、エチレン−プロピレン−1,6−オクタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−2−メチル−1,5−ヘキサジエン共重合体、エチレン−プロピレン−6−メチル−1,5−ヘプタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−7−メチル−1,6−オクタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−シクロヘキサジエン共重合体、エチレン−プロピレン−メチルテトラインデン共重合体、エチレン−プロピレン−5−ビニルノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−5−(5−ヘプテニル)−2−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−5−メチレン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン共重合体、エチレン−プロピレン−5,9,13−トリメチル−1,4,8,12−テトラデカジエン共重合体、エチレン−プロピレン−4−エチリデン−12−メチル−1,11−ペンタデカジエン共重合体、エチレン−プロピレン−6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン共重合体、エチレン−プロピレン−1,3,7−オクタトリエン共重合体、エチレン−プロピレン−6,10−ジメチル−1,5,9−ウンデカトリエン共重合体、エチレン−プロピレン−5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン共重合体、エチレン−プロピレン−13−エチル−9−メチル−1,9,12−ペンタデカトリエン共重合体、エチレン−プロピレン−5,9,8,14,16−トリメチル−1,7,14−ヘキサデカトリエン共重合体、およびエチレン−プロピレン−1,4,9−デカトリエン共重合体;ならびにこれらの2以上の組合せを例示することができる。中でも、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、又はエチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体が好ましく、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体がより好ましい。
【0028】
成分(B)中の上記共重合体ゴムが2種以上である場合、上記のエチレン単位量、α−オレフィン単位量、ヨウ素価、および極限粘度は、当該2種以上の全体に対するものである。
【0029】
一般式[I]で表されるバナジウム化合物を用いて、成分(a)、(b)及び(c)を重合させる場合、助触媒として有機アルミニウム化合物が使用される。有機アルミニウム化合物としては、(C252AlCl、(n-C492AlCl、(iso-C492AlCl、(n-C6132AlCl、(n-C251.5AlCl1.5、(n-C491.5AlCl1.5、(iso-C491.5AlCl1.5、(n-C6131.5AlCl1.5、C25AlCl2、(n-C49)AlCl2、(iso-C49)AlCl2、(n-C613)AlCl2等が例示できる。
【0030】
有機アルミニウム化合物の使用量とバナジウム化合物の使用量のモル比(有機アルミニウム化合物のモル/バナジウム化合物のモル)は、好ましくは、2.5〜50である。
【0031】
成分(a)、(b)及び(c)は、溶液重合法で重合することが好ましい。溶液重合に用いられる溶媒としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素等の不活性溶媒があげられる。
【0032】
重合温度は、通常、−20〜200℃であり、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは20〜120℃である。また、重合圧力は、通常、0.1〜10MPaであり、好ましくは0.1〜5MPaであり、より好ましくは0.1〜3MPaである。
【0033】
成分(B)中の上記共重合体ゴムはたとえば、以下の工程からなる製造方法によって製造することができる:
(1)平均組成がVO(O(iso−C37))0.8Cl2.2のバナジウム化合物とエタノールとを連続的にラインミキサーで混合し、平均組成がVO(O(iso−C37))0.8(OEt)1.1Cl1.1の触媒を調製する工程;
(2)該触媒を、攪拌機を備えた重合槽の下部から連続的に供給する工程;
(3)それと同時に、別に、エチルアルミニウムセスキクロライド(助触媒)を該重合槽の下部から連続的に供給する工程;
(4)それと同時に、さらに別に、該重合槽の下部から、エチレンとα−オレフィンと非共役ポリエンとヘキサン(重合溶媒)と水素(分子量調節剤)とを連続的に供給し、一定の温度下で重合させる工程;
(5)該重合槽の上部から重合液を連続的に抜き出す工程;
(6)抜き出された重合液から、スチームトリッピングによってエチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン共重合体ゴムを連続的に析出させる工程;および
(7)該共重合体ゴムを乾燥させる工程。
【0034】
成分(B)は、鉱物油系軟化剤によって伸展された油展ゴムであってもよい。成分(B)が油展ゴムである場合、成分(B)中の鉱物油系軟化剤の含有量は、ゴム成分(1)とゴム成分(2)との合計を100重量部として、流動性を高め、また、低圧縮永久歪性を高めるために、好ましくは20重量部以上であり、より好ましくは22重量部以上であり、更に好ましくは24重量部以上である。また、鉱物油系軟化剤の含有量は、強度を高めるために、好ましくは200重量部以下であり、より好ましくは180重量部以下であり、更に好ましくは160重量部以下である。ここで鉱物油系軟化剤としては、後述の成分(C)で用いられるものがあげられる。
【0035】
動的熱処理に付する成分(A)と成分(B)の量は、成分(A)及び成分(B)の合計を100重量部として、成分(A)の量が10〜70重量部、成分(B)の量が30〜90重量部である。加工性を高めるために、好ましくは、成分(A)の量は12重量部以上(成分(B)の量は88重量部以下)であり、より好ましくは成分(A)の量は14重量部以上(成分(B)の量は86重量部以下)である。また、柔軟性を高め、また、低圧縮永久歪性を高めるために、好ましくは、成分(A)の量は60重量部以下(成分(B)の量は40重量部以上)であり、より好ましくは成分(A)の量は50重量部以下(成分(B)の量は50重量部以上)である。
【0036】
(成分(C))
成分(C)は鉱物油系軟化剤である。成分(C)としては、アロマ系鉱物油、ナフテン系鉱物油、パラフィン系鉱物油などの石油の高沸点留分(平均分子量が300〜1500、流動点が0℃以下)をあげることができる。これらのなかでもパラフィン系鉱物油が好ましい。
【0037】
溶融混練装置には、成分(A)及び成分(B)に加え、成分(C)を供給して、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を架橋剤の存在下で動的に熱処理してもよい。溶融混練装置に供給する成分(C)の量は、成分(A)及び成分(B)の合計量を100重量部として、流動性を高めるために、好ましくは2重量部以上であり、より好ましくは4重量部以上であり、更に好ましくは8重量部以上である。また、低圧縮永久歪性を高めるために、また、熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体の外観を高めるために、好ましくは60重量部以下であり、より好ましくは50重量部以下であり、更に好ましくは40重量部以下である。
【0038】
(架橋剤・架橋助剤)
架橋剤としては、有機過酸化物、硫黄化合物およびアルキルフェノール樹脂を例示することができる。中でも、有機過酸化物が好ましい。
【0039】
有機過酸化物として、公知のケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類、パーオキシジカーボネート類、およびパーオキシエステル類を例示することができる。具体的な有機過酸化物として、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,2,4−トリメチルペンチル−2−ハイドロパ−オキサイド、ジイソプロピルベンゾハイドロパーオキサイド、クメンパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、およびp−クロロベンゾイルパーオキサイド;ならびに、これらの2以上の組合せを例示することができる。
【0040】
架橋剤の量は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の総量を100重量部として、強度を高め、また、低圧縮永久歪性を高めるために、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.05重量部以上であり、更に好ましくは0.1重量部以上である。また、架橋剤の量は、流動性を高めるために、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは2重量部以下であり、更に好ましくは1重量部以下である。
【0041】
架橋剤は、製造される熱可塑性エラストマー組成物の架橋度を改良するために、架橋助剤と組合せてもよい。好ましい架橋助剤は、2以上の二重結合を有する化合物である。架橋助剤として、N,N−m−フェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド、p−キノンジオキシム、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびジビニルベンゼン;ならびに、これらの2以上の組合せを例示することができる。
【0042】
架橋助剤の量は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の総量を100重量部として、強度を高め、また、低圧縮永久歪性を高めるために、好ましくは0.01重量部以上であり、流動性を高めるために、好ましくは10重量部以下である。
【0043】
(熱可塑性エラストマー組成物)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)と成分(B)と架橋剤と必要に応じて成分(C)とを溶融混練装置に供給し、成分(A)と成分(B)と必要に応じて成分(C)とを架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られる組成物である。動的な熱処理とは、本発明の組成物の全部または一部の成分を溶融混合しながら、架橋反応に適した温度のもとで、架橋反応を行なうことを意味する。動的な熱処理に用いられる溶融混練装置として、二軸押出機やバンバリーミキサーのような公知の装置を例示することができる。同様の処理に対し、動的架橋という用語も用いられている。これらの方法に関し、詳しくは、Thermoplastic Elastomers 2nd. ed., 153-190 (Hanser Gardner Publications, 1996) 等の文献に記載されている。
【0044】
動的熱処理温度は、通常150〜250℃であり、動的熱処理時間は、通常1〜30分である。また、動的熱処理の溶融混練は、混練する全成分を一括して溶融混練してもよいし、一部の成分を混練した後に選択しなかった成分を加え溶融混練してもよく、溶融混練は1回または2回以上行ってもよい。好ましくは、混練する全成分を一括して溶融混練する方法がよい。
【0045】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、無機フィラー(例えば、タルク、炭酸カルシウムおよび焼成カオリン)、有機フィラー(例えば、繊維、木粉およびセルロースパウダー)、酸化防止剤(例えば、フェノール系、イオウ系、燐系、ラクトン系およびビタミン系)、耐候安定剤、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系、トリジアミン系、アニリド系およびベンゾフェノン系)、熱安定剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系およびベンゾエート系)、帯電防止剤、造核剤、顔料、吸着剤(例えば、酸化亜鉛や酸化マグネシウムのような金属酸化物)、金属塩化物(例えば、塩化鉄および塩化カルシウム)、ハイドロタルサイト、アルミン酸塩、滑剤(例えば、脂肪酸、高級アルコール、脂肪族アミド、脂肪族エステル)ならびにシリコーン化合物のような添加剤を含有していてもよい。当該添加剤は、成分(A)および成分(B)のいずれもあるいは一方に予め配合してから熱可塑性エラストマー組成物を調製してもよく、成分(A)と成分(B)と必要に応じて成分(C)とを動的熱処理した後、あるいは動的熱処理している際に配合してもよい。
【0046】
該添加剤の量は、上記の脱型性や耐磨耗性や耐傷付き性の観点から、成分(A)、成分(B)、および成分(C)の合計を100重量部として、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0047】
熱可塑性エラストマー組成物のメルトフローレート(MFR)は、通常0.1〜150g/10分であり、好ましくは0.5〜100g/10分である。
【0048】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、コンソールボックスやインストルメントパネル表皮などの自動車内装部品、ウィンドモールなどの自動車外装部品、家電製品、家具等に好適に用いられる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例によって、本発明をより詳細に説明する。
【0050】
[I]ゴム評価方法
(1)エチレン単位量/プロピレン単位量
赤外線吸収スペクトル法により測定した。
(2)ヨウ素価
赤外線吸収スペクトル法により測定した。
(3)重量平均分子量
ゲル・パ−ミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、下記の条件(A)〜(H)により測定し求めた。
(A)装置:Water製Waters150C
(B)分離カラム:TOSOH TSKgelGMH6−HT
(C)測定温度:140℃
(D)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(E)流量:1.0mL/分
(F)注入量:500μL
(G)検出器:示差屈折
(H)分子量標準物質:標準ポリスチレン
【0051】
[II]物性測定方法
(1)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に従って、荷重98.07N、温度230℃で測定した。
(2)硬度
JIS K6253に従って、A硬度を測定した。
(3)引張試験
JIS K6251に従って、JIS3号ダンベル、引張速度200mm/分の条件で、引張破断強度および引張破断伸びを求めた。
(4)圧縮永久歪
JIS K6262に従って、70℃、22時間、25%圧縮の条件で圧縮永久歪を測定した。
【0052】
実施例1
(油展ゴムの製造)
攪拌機を備えたステンレススチール製の温度を42℃に保った第1重合槽に、単位時間・第1重合槽の単位容積あたり、ヘキサンを0.776kg/(hr・L)、エチレンを51.3g/(hr・L)、プロピレンを63.2g/(hr・L)、エタノールを3.7mg/(hr・L)の速度で供給した。VO(O(iso−C37))0.8Cl2.2を8.7mg/(hr・L)の速度で第1重合槽に供給した。また、エチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)を75.3mg/(hr・L)、水素を0.050NL/(hr・L)の速度で第1重合槽に供給した。更に5−エチリデン−2−ノルボルネンを2.4g/(hr・L)の速度で第1重合槽に供給した。
第1重合槽からは、重合槽内の重合溶液の量が一定となるように、重合溶液を抜き出した。第1重合槽から抜き出された重合溶液を分析した結果、第1重合槽で、単位時間・第1重合槽の単位容積あたり、50g/(hr・L)の共重合体ゴムが生成していた。該共重合体ゴムのエチレン単位量/プロピレン単位量(モル比)は83/17であり、ヨウ素価は8(g/100gゴム)であった。
【0053】
第1重合槽と同容積の攪拌機を備えたステンレススチール製の温度を45℃に保った第2重合槽に、第1重合槽から抜き出した重合溶液をフィードした。単位時間・第2重合槽の単位容積あたり、ヘキサンを0.427kg/(hr・L)、エチレンを17.9g/(hr・L)、エタノールを2.5mg/(hr・L)の速度で第2重合槽に供給した。VO(O(iso−C37))0.8Cl2.2を5.8mg/(hr・L)の速度で第2重合槽に供給した。また、エチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)を51mg/(hr・L)、水素を0.200NL/(hr・L)の速度で第2重合槽に供給した。
第2重合槽からは、重合槽内の重合溶液の量が一定となるように、重合溶液を抜き出した。第2重合槽から抜き出された重合溶液を分析した結果、該重合溶液中の共重合体ゴムの含有量は、単位時間・第2重合槽の単位容積あたり、74g/(hr・L)であった。
第2重合槽から抜き出された重合溶液に、当該重合溶液中の共重合体ゴム100重量部あたり30重量部のパラフィン系鉱物油(出光興産社製 ダイアナPW380)を添加し、重合溶液から重合溶媒を除去して、油展ゴム(以下、EPDM−1と記す。)を調製した。
EPDM−1を分析したところ、EPDM−1中の共重合体ゴムのエチレン単位量/プロピレン単位量(モル比)は83/17であり、ヨウ素価は9(g/100gゴム)であり、極限粘度は3.1dl/g、分子量分布は3であった。
第2重合槽では、単位時間・第2重合槽の単位容積あたり、24g/(hr・L)の共重合体ゴムが生成し、該共重合体ゴムのエチレン単位量/プロピレン単位量(モル比)は83/17であり、ヨウ素価は9(g/100gゴム)であることがわかった。
【0054】
(熱可塑性エラストマー組成物の製造)
ポリプロピレン樹脂[住友化学(株)製 ノーブレンD101、MFR(230℃、21.18N)=0.4g/10分]:15重量部、EPDM−1:58.5重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート:0.2重量部、酸化防止剤として3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[βー(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル〕―2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン:0.1重量部、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール:0.2重量部、および1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル重縮合物:0.2重量部を内径47mmの二軸押出機に投入し、パラフィン系鉱物油:26.5重量部、有機過酸化物溶液[化薬アクゾ株式会社製 商品名「APO−10DL」(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンをパラフィン系鉱物油(出光興産社製 ダイアナPW100)で10%に希釈したもの]:3.2重量部を二軸押出機の途中の別投入口よりそれぞれ添加し、架橋剤供給部より下流側の押出機温度200±10℃、スクリュー回転数270rpmの条件下で動的熱処理を行い、熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた組成物を成形し、物性測定を行った。結果を表1に示す。
【0055】
比較例1
(油展ゴムの製造)
攪拌機を備えたステンレススチール製の温度を45℃に保った第1重合槽に、単位時間・第1重合槽の単位容積あたり、ヘキサンを0.332kg/(hr・L)、エチレンを22.5g/(hr・L)、プロピレンを59.8g/(hr・L)の速度で供給した。VOCl3を15.2mg/(hr・L)で、第1重合槽に供給した。また、エチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)を91.3mg/(hr・L)、水素を0.047NL/(hr・L)の速度で第1重合槽に供給した。更に5−エチリデン−2−ノルボルネンを0.82g/(hr・L)の速度で第1重合槽に供給した。
第1重合槽からは、重合槽内の重合溶液の量が一定となるように、重合溶液を抜き出した。第1重合槽から抜き出された重合溶液を分析した結果、第1重合槽で、単位時間・第1重合槽の単位容積あたり、24g/(hr・L)の共重合体ゴムが生成していた。該共重合体ゴムのエチレン単位量/プロピレン単位量(モル比)は79/21であり、ヨウ素価は12(g/100gゴム)であった。
【0056】
第1重合槽と同容積の攪拌機を備えたステンレススチール製の温度を45℃に保った第2重合槽に、第1重合槽から抜き出した重合溶液をフィードした。単位時間・第2重合槽の単位容積あたり、ヘキサンを0.151kg/(hr・L)、エチレンを14.1g/(hr・L)、プロピレンを53.0g/(hr・L)の速度で第2重合槽に供給した。VOCl3を7.4mg/(hr・L)の速度で第2重合槽に供給した。また、エチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)を44mg/(hr・L)の速度で第2重合槽に供給した。
第2重合槽からは、重合槽内の重合溶液の量が一定となるように、重合溶液を抜き出した。第2重合槽から抜き出された重合溶液を分析した結果、該重合溶液中の共重合体ゴムの含有量は、単位時間・第2重合槽の単位容積あたり、36g/(hr・L)であった。
第2重合槽から抜き出された重合溶液に、当該重合溶液中の共重合体ゴム100重量部あたり40重量部のパラフィン系鉱物油(出光興産社製 ダイアナPW380)を添加し、重合溶液から重合溶媒を除去して、油展ゴム(以下、EPDM−2と記す。)を調製した。
EPDM−2を分析したところ、EPDM−2中の共重合体ゴムのエチレン単位量/プロピレン単位量(モル比)は79/21であり、ヨウ素価は12(g/100gゴム)であり、極限粘度は2.5dl/g、分子量分布は2.1であった。
第2重合槽では、単位時間・第2重合槽の単位容積あたり、12g/(hr・L)の共重合体ゴムが生成し、該共重合体ゴムのエチレン単位量/プロピレン単位量(モル比)は79/21であり、ヨウ素価は12(g/100gゴム)であることがわかった。
【0057】
(熱可塑性エラストマー組成物の製造)
EPDM−1:58.5重量部にかえてEPDM−2:63重量部と、パラフィン系鉱物油:26.5重量部にかえて22重量部とする以外は、実施例1の熱可塑性エラストマー組成物の製造と同様に行った。結果を表1に示す。
【0058】
比較例2
(油展ゴムの製造)
攪拌機を備えたステンレススチール製の温度を50℃に保った第1重合槽に、単位時間・第1重合槽の単位容積あたり、ヘキサンを0.220kg/(hr・L)、エチレンを28.6g/(hr・L)、プロピレンを70.2g/(hr・L)の速度で供給した。VOCl3を33.3mg/(hr・L)で、第1重合槽に供給した。また、エチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)を200mg/(hr・L)、水素を0.087NL/(hr・L)の速度で第1重合槽に供給した。更に5−エチリデン−2−ノルボルネンを1.1g/(hr・L)の速度で第1重合槽に供給した。
第1重合槽からは、重合槽内の重合溶液の量が一定となるように、重合溶液を抜き出した。第1重合槽から抜き出された重合溶液を分析した結果、第1重合槽で、単位時間・第1重合槽の単位容積あたり、34g/(hr・L)の共重合体ゴムが生成していた。該共重合体ゴムのエチレン単位量/プロピレン単位量(モル比)は78/22であり、ヨウ素価は12(g/100gゴム)であった。
【0059】
第1重合槽と同容積の攪拌機を備えたステンレススチール製の温度を58℃に保った第2重合槽に、第1重合槽から抜き出した重合溶液をフィードした。単位時間・第2重合槽の単位容積あたり、ヘキサンを0.094kg/(hr・L)、エチレンを17.3g/(hr・L)、プロピレンを60.4g/(hr・L)の速度で第2重合槽に供給した。VOCl3を29.1mg/(hr・L)の速度で第2重合槽に供給した。また、エチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)を87mg/(hr・L)の速度で第2重合槽に供給した。
第2重合槽からは、重合槽内の重合溶液の量が一定となるように、重合溶液を抜き出した。第2重合槽から抜き出された重合溶液を分析した結果、該重合溶液中の共重合体ゴムの含有量は、単位時間・第2重合槽の単位容積あたり、51g/(hr・L)であった。
第2重合槽から抜き出された重合溶液に、当該重合溶液中の共重合体ゴム100重量部あたり50重量部のパラフィン系鉱物油(出光興産社製 ダイアナPW380)を添加し、重合溶液から重合溶媒を除去して、油展ゴム(以下、EPDM−3と記す。)を調製した。
EPDM−3を分析したところ、EPDM−3中の共重合体ゴムのエチレン単位量/プロピレン単位量(モル比)は78/22であり、ヨウ素価は12(g/100gゴム)であり、極限粘度は1.9dl/g、分子量分布は2.7であった。
第2重合槽では、単位時間・第2重合槽の単位容積あたり、17g/(hr・L)の共重合体ゴムが生成し、該共重合体ゴムのエチレン単位量/プロピレン単位量(モル比)は78/22であり、ヨウ素価は12(g/100gゴム)であることがわかった。
【0060】
(熱可塑性エラストマー組成物の製造)
EPDM−1:58.5重量部にかえてEPDM−3:60重量部と、ポリプロピレン樹脂:15重量部にかえて20重量部と、パラフィン系鉱物油:26.5重量部にかえて20重量部とする以外は、実施例1の熱可塑性エラストマー組成物の製造と同様に行った。結果を表1に示す。
【0061】
比較例3
(共重合体ゴムの製造)
重合溶液にパラフィン系鉱物油を添加しなかった以外は、比較例2の油展共重合体ゴムの製造と同様に行って、共重合体ゴム(以下、EPDM−4と記す。)を調製した。
【0062】
(熱可塑性エラストマー組成物の製造)
EPDM−1:58.5重量部にかえてEPDM−4:40重量部と、ポリプロピレン樹脂:15重量部にかえて20重量部と、パラフィン系オイル:26.5重量部にかえて40重量部とする以外は、実施例1の熱可塑性エラストマー組成物の製造と同様に行った。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)10〜70重量部、下記成分(B)30〜90重量部(ただし、成分(A)及び成分(B)の合計を100重量部とする。)及び架橋剤を溶融混練装置に供給し、成分(A)及び成分(B)を架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):ポリプロピレン樹脂
成分(B):下記一般式[I]で表されるバナジウム化合物を用いて、下記成分(a)、(b)及び(c)を重合させて得られる共重合体であって、かつ下記の(1)、(2)及び(3)の条件を充足する共重合体と任意に鉱物油系軟化剤とを含有するゴム。
VO(OR)m(OR’)nX3-m-n [1]
(式中、Rは2級以上の炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R’は炭素数1〜8の直鎖状炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表し、m及びnは正の数を表し、かつm+n≦3、m≠0、n≠0である。)
(a):エチレン
(b):炭素数3〜20のα−オレフィン
(c):非共役ポリエン
(1)エチレン単位量とα−オレフィン単位量のモル比(エチレン単位量/α−オレフィン単位量)が90/10〜50/50であること
(2)よう素価が1〜30であること
(3)テトラリン中、135℃で測定した極限粘度[η]が0.5〜10dl/gであること
【請求項2】
成分(B)が油展量20〜200重量部の油展ゴムである請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
成分(A)及び成分(B)の合計量を100重量部として、2〜60重量部の下記成分(C)を溶融混練装置に供給して、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られる請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
成分(C):鉱物油系軟化剤
【請求項4】
溶融混練装置が二軸押出機である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
架橋剤が有機過酸化物である請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。

【公開番号】特開2012−246330(P2012−246330A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116730(P2011−116730)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】