説明

熱可塑性ポリウレタンとヒドロキシル官能性重合体とのブレンド物におけるゲル抑制

ガスバリア層および複合材料は、熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)と、ヒドロキシル官能性共重合体と、ゲル抑制添加剤とを含有する組成物から生成された低ゲルシートを含む。ゲル抑制添加剤は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有し、重合体およびヒドロキシル官能性重合体を含有するウレタン混合物の加工中、ゲルの形成を減少させる。低ゲルシートを含む多層複合材料は、膨張する気体を収容するために膨張可能な膜に形成可能である。特に好適な実施形態において、靴底、特に運動靴の靴底のクッション装置のブラダとして使用される。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の分野
本発明は、ガスバリア層として使用される複合材料に関する。特に、本発明は、熱可塑性ポリウレタンとヒドロキシル基ガスバリア共重合体とのブレンド物、およびこれらの調製中、ゲルを抑制する方法に関する。
【0002】
本発明の背景
特定のヒドロキシル官能性共重合体から成る高分子フィルムは、そのガスバリア性がよく知られている。たとえば、エチレンとビニルアルコールとの共重合体は、押出しされて、酸素などの気体の流れに耐性があるフィルムにされることが可能である。このようなフィルムは、腐敗し易い商品の損傷を防止するために、食品包装業界で使用されている。
【0003】
ガスバリア材は、履物などに使用される加圧ブラダまたはクッション装置を形成するために使用されてもよい。この用途において、ガスバリア層は、エラストマ材料から成る第2層と交互に配置されてなる膜であってもよい。Bonkらによる米国特許第6127026号明細書は、少なくとも約10層のミクロレイヤーを有するミクロレイヤー高分子複合材料を含む膜を記載している。このミクロレイヤーは、少なくとも1つのガスバリア材料と、熱可塑性ポリウレタン(TPU)に代表される、少なくとも1つのエラストマ材料とが交互に配置されてなる。
【0004】
天然資源の保存のために、このようなバリア層およびエラストマ材料を含有する複合材料は、リサイクルして再利用することが望ましい。たとえば、Bonkらによる米国特許第6127026号明細書の複合材料をリサイクルするために、この複合材料を粉砕して、ガスバリア層材料および熱可塑性ポリウレタンを両方含有する混合物を得ることが可能である。
【0005】
また、ガスバリアに関連した様々な使用のための共押出しフィルムを生成するために、TPUとエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)とのブレンド物を使用することが知られている。たとえば、米国特許第6203868号明細書において、Bonkらは、1種以上の熱可塑性ポリウレタンのブレンド物および1種以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体から成るバリア層を含む膜を記載している。
【0006】
TPUとEVOHとのブレンド物の作製は、上述のような複合材料を再度粉砕すること、または熱可塑性ポリウレタンとバリア重合体とのブレンド物を共押出しすることを含んでもよい。このような複合材料が粉砕されて共押出しされると、押出成形された層の流動性、取扱性、および外観に悪影響を及ぼすゲルが、混合物の中に形成されることが観察される。特に、ゲルの形成によって、共押出しされた層がくすんだ外観になる。装飾のためにも、また、熱可塑性ポリウレタンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのヒドロキシル官能性重合体との押出しされたブレンド物の取扱性を向上させるためにも、TPUとヒドロキシル官能性重合体とのブレンド物から調製される共押出しシートのゲル含有量を減少させることが望ましい。
【0007】
本発明の要約
改良されたガスバリア層および複合材料は、本発明に従って、3種の成分を含有する組成物から低ゲルシートを形成することによって生成される。第1成分は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)である。第2成分は、ヒドロキシル官能性共重合体であり、第3成分は、ゲル抑制添加剤である。もう1つの特徴として、ウレタン結合を含む重合体とブレンドすると、ゲル形成傾向が低下した重合体組成物が得られる。この組成物は、上述のようなヒドロキシル官能性重合体およびゲル抑制添加剤を含有する。熱可塑性ポリウレタンなどのウレタン重合体を重合体組成物に添加すると、所望の特性を有するシートに形成される、または押出しされることが可能な組成物が得られる。
【0008】
別の実施形態において、この組成物から形成されたシートを提供する。このシートは、第1成分、第2成分、および第3成分を結合させてブレンド物を形成し、熱エネルギ、機械エネルギ、またはその両方をブレンド物に与えて、このブレンド物からシートを生成する。
【0009】
別の実施形態において、複数の軟質層で構成されている多層複合材料が提供される。軟質層の少なくとも1層は、上述したような熱可塑性ポリウレタンと、ヒドロキシル官能性共重合体と、ゲル抑制添加剤とのブレンド物からシートを形成してなる生成物である。好適な実施形態において、多層複合材料は、熱可塑性ポリウレタンの層と、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのヒドロキシル官能性重合体の層とを交互に含む。また、軟質層の少なくとも1層は、たとえば、ゲル抑制添加剤の存在時に共押出しによって形成される、熱可塑性ポリウレタンとヒドロキシル官能性共重合体とのブレンド物から生成される。
【0010】
好適な実施形態において、多層複合材料は、膨張する気体を収容するための膨張可能な膜に形成されてもよい。膜は、多層複合材料から成り、複合材料は、上述したような熱可塑性ポリウレタンと、ヒドロキシル官能性共重合体と、ゲル抑制添加剤とのブレンド物から成る軟質層を少なくとも1層含む。特に好適な実施形態において、膜は、靴、特に競技用靴の靴底のクッション装置のブラダとして使用される。
【0011】
本発明は、詳細な説明および添付の図面からさらによく理解されるであろう。
好適な実施形態の詳細な説明
ウレタン結合を含む重合体とブレンドされるとゲル形成傾向が低下する重合体組成物は、ヒドロキシル基バリア共重合体およびゲル抑制添加剤を含有する。本発明の低ゲル組成物を提供するために、この重合体組成物が熱可塑性ポリウレタンなどのウレタン含有重合体に添加されてよい。低ゲル組成物は、押出しされる、またはシート状に形成されることが可能である。このシートを使用して、多層複合材料、ガスバリア材、および本発明の他の装置を提供することが可能である。
【0012】
組成物のゲル抑制添加剤は、好ましくは、その分子量が、以下で規定するヒドロキシル官能性共重合体の分子量よりも少ない。ゲル抑制添加剤は、組成物の熱可塑性ポリウレタンのウレタン結合と反応可能な1以上の官能基をさらに含有する。好適な実施形態において、ゲル抑制添加剤は、少なくとも1種のヒドロキシル基を有する化合物と、少なくとも1種の第1級アミノ基を有する化合物と、少なくとも1種の第2級アミノ基を有する化合物と、少なくとも1種のカルボキシル基を有する化合物と、少なくとも1種のカルボン酸無水物基を有する化合物とから成る群から選択される。ゲル抑制添加剤は、熱可塑性ポリウレタンのウレタン結合との反応に関して、ヒドロキシル官能性重合体と競合することによって、熱可塑性ポリウレタンとヒドロキシル官能性重合体とのブレンド物におけるゲルを低減化するように機能すると考えられる。一実施形態において、少なくとも第1級ヒドロキシル基を有するゲル抑制添加剤を使用することが好ましい。
【0013】
ゲルは、TPUとヒドロキシル官能性共重合体との一連の化学反応によって形成されると考えられる。その第1工程は、TPUにおいてウレタン結合が解離されることであり、この結果、イソシアネートおよびヒドロキシル基が形成される。新しく生成されたイソシアネート基は、次に、EVOHのヒドロキシル基または他のヒドロキシル官能性共重合体と反応して、新たなウレタン結合を形成する。EVOH鎖は複数のヒドロキシル基を含有するので、複数のポリウレタン分子が同一のEVOH鎖に付加されることが可能であり、かつ2以上のEVOH鎖同士がポリウレタン・セグメントを介して結合可能であり、網目構造またはゲルを形成する。ゲル抑制添加剤は、解離過程の間に形成される再生イソシアネート基と優先的に反応することによってゲルを低減化すると考えられる。再生イソシアネート基がゲル抑制添加剤によって優先的に消費されることを確実にするために、ゲル抑制添加剤は、好ましくは、ヒドロキシル官能性共重合体のヒドロキシル基よりもイソシアネートとよく反応する官能基を含有するはずである。ヒドロキシル官能性共重合体が第2級ヒドロキシル基を含有する場合(EVOHについても同様)、ゲル抑制添加剤は、第2級ヒドロキシル基よりも速くイソシアネートと反応する傾向がある第1級アルコールまたはアミノ基を含有してよい。ヒドロキシル官能性共重合体が第1級ヒドロキシル基または第2級ヒドロキシル基と第1級ヒドロキシル基との混合物を含有する場合、ゲル抑制添加剤は、相対的により反応し易い共重合体の第1級ヒドロキシル基と効果的に「競合(compete)」するために、やや高い濃度が必要とされるであろうと予想される。好適な実施形態において、ゲル抑制添加剤は、共重合体よりも分子量が少ないので、TPUとのいかなる反応物もゲル形成の原因とはならないようになる。このゲル抑制添加剤は、カルボキシル官能基または無水官能基を有してもよい。好適な実施形態において、ゲル抑制添加剤は、反応速度を上昇させるために、熱可塑性ポリウレタンにおける溶解性および流動性も有していなければならない。一側面において、低分子量添加剤が好ましい理由は、その熱可塑性物質に対する溶解性が高いこと、および拡散が速いことだけでなく、ヒドロキシル基質量比が高くなるからである。
【0014】
好適な実施形態において、ゲル抑制添加剤は、ポリエステルポリオール、好ましくはポリエステルジオールを含む。このポリエステルポリオールは、一般に、多塩基酸化合物およびポリオール化合物の縮合重合によって調製される。好ましくは、多塩基酸化合物およびポリオール化合物は二官能性である。二塩基酸化合物およびジオールを使用して、実質的に線状のポリエステルジオールの調製が可能である。ただし、三官能性物質、およびさらに高次の官能性物質を少量(たとえば約5モル%以下)含めることができる。適した酸化合物として、グルタル酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、およびマレイン酸、ならびにこれらのエステルが挙げられるが、以上に限定されない。二塩基酸成分の混合物を使用してもよい。適したポリオールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、エステルジオール(Esterdiol)204(イーストマン・ケミカル社販売)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、ブチレングリコール、およびネオペンチルグリコールが挙げられるが、これらに限定されない。ポリオールの組合せを使用することも可能である。トリオールまたはさらに高次官能性のポリオール、たとえばトリメチロールプロパンまたはペンタエリトルトールを少量含めることも時にはある。好適な実施形態において、カルボン酸はアジピン酸を含み、またジオールは1,4−ブタンジオールを含む。このエステル化重合の典型的な触媒は、プロトン酸、ルイス酸、チタンアルコキシドおよびジアルキルスズ酸化物である。
【0015】
別の実施形態において、ゲル抑制添加剤は、ポリエーテルポリオール、好ましくはポリエーテルジオールを含む。ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルジオールは、ヒドロキシル官能性開始剤を環状エーテル化合物と反応させることによって、合成可能である。環状エーテルは、好ましくは、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、およびこれらの組合せから成る群から選択される。この重合は、たとえばヒドロキシル官能性開始剤、および触媒量の、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、またはカリウムtert−ブトキシドなどの苛性アルカリを仕込み、そして単量体を反応に利用できる状態に保つために充分な速度でアルキレンオキシドを加えることによって行うことが可能である。2種以上のアルキレンオキシド単量体を同時添加によってランダム共重合させることが可能であり、また逐次添加によってブロックに重合させることが可能である。このような共重合によって生成されるアルキレンオキシド重合体セグメントとして、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロへキセンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、1−へキセンオキシド、tert−ブチルエチレンオキシド、フェニルグリシジルテーテル、1−デセンオキシド、イソブチレンオキシド、シクロペンテンオキシド、1−ペンテンオキシドおよびこれらの組合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
好適な実施形態において、ゲル抑制添加剤として使用されるポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールは、約300〜約4000、より好ましくは約400〜3000、さらに好ましくは約500〜約2000の数平均分子量を有する。別の実施形態において、数平均分子量が約2000よりも少ない、好ましくは約1000よりも少ないポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールが使用される。
【0017】
ゲル抑制添加剤は、上述のようなポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールの重合体だけでなく、単量体であってもよい。好適な実施形態において、ゲル抑制添加剤の分子量は、約400以下であり、好ましくは約200以下である。2以上のヒドロキシル基を有するゲル抑制添加剤、または2以上のアミノ基を有するゲル抑制添加剤を使用することが好ましい。ゲル抑制添加剤の例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、分子量が400以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびジプロピレングリコールなどのヒドロキシル官能性添加剤、ならびにエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン、ベンジルアミン、アニシジン、トルイジン、アミノフェノール、アミノアセトアニリド、および1−(2−アミノエチル)ピペラジンなどのアミン官能性添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明のヒドロキシル官能性共重合体成分は、好ましくは、ガスバリア性を有することで知られている共重合体から選択される。これらには、一般に、下記式
【0019】
【化6】

【0020】
(式中、nは0または1であり、R1およびR2は、独立して、水素、メチル、またはエチルであり、R3は、水素またはC1-3のアルキルである。)の繰返し単位を10モル%以上有する重合体が含まれる。好ましくは、ヒドロキシル官能性重合体は、上記構造の繰返し単位を30モル%以上含む。他の好適な実施形態において、ヒドロキシル官能性重合体は、上記の構造の繰返し単位を少なくとも45モル%、少なくとも55モル%、および少なくとも65モル%含む。
【0021】
重合体は、同一または異なるR1、R2、R3およびnを有する上述の構造の繰返し単位を1種以上含んでもよい。重合体が繰返し単位を1種以上含む場合、構造単位のモル%含有量がその合計量とされる。
【0022】
重合体は、上述の構造の繰返し単位に加え、ガスバリア材の性能が許容範囲に維持されるような量の共単量体を含有してもよい。共単量体の例として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテンなどのオレフィン単量体、ブタジエンおよびイソプレンなどのジエン単量体、スチレンおよびα−メチルスチレンなどの芳香族置換ビニル単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、およびメタクリル酸メチルなどのアクリレート単量体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、およびブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル単量体、塩化ビニルおよびフッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル単量体、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン単量体、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどのアクリロニトリル単量体、ならびにマレイミド、N−メチルマレイミド、およびジメチルマレイミドなどのマレイン酸誘導体が挙げられる。
【0023】
重合体が共単量体を含有する場合、単量体は、順不同で交互に、またはブロック状に配置されてもよい。
【0024】
上記構造の繰返し単位は、多数の公知方法によって、重合体または共重合体に組込まれる。第1の例として、アクリレート単量体またはメタクリレート単量体は、重合させられて、その後ヒドロキシル基含有化合物に還元される。第2の方法において、ヒドロキシル基含有繰返し単位は、アリルアルコールまたはメタリルアルコールなどの不飽和アルコールの重合によって、組込まれてもよい。第3の方法において、ヒドロキシル基含有繰返し単位は、ハロゲン化アリル誘導体を重合することによって組込まれてもよく、その後ハロゲンはヒドロキシル基に置換される。このような合成の方法は、この技術分野において公知であり、たとえば、Ikedaらによる米国特許第6096393号明細書および本明細書に引用した参照文献に記載されている。共重合体は、酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体を重合することによって調製されてもよく、その後は鹸化工程が続いてエステル基を除去し、水酸化ビニル官能基を提供する。
【0025】
好適なヒドロキシル基官能性共重合体は、エチレンとビニルアルコールとの共重合体(EVOH)である。このような共重合体は、好都合にも、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化生成物を調製することによって得ることが可能である。好適な実施形態において、エチレンの含有量は、20モル%またはそれよりも多く、好ましくは20〜60モル%、より好ましくは20〜55モル%である。別の実施形態において、EVOHのエチレン単位の含有量は、好ましくは10〜99モル%、より好ましくは20〜75モル%、さらに好ましくは25〜60モル%、特に25〜50モル%である。ビニルエステル単位の鹸化度は、好ましくは、少なくとも50モル%、より好ましくは、少なくとも90モル%である。好適な実施形態において、鹸化度は、少なくとも95モル%であり、より好ましくは、少なくとも98モル%である。
【0026】
市販のEVOHとして、日本合成化学(アメリカ、ニューヨーク)のSOARNOLTMおよびEval社(ヒューストン、テキサス)のEVAL(登録商標)が挙げられる。たとえば、EVAL(登録商標)LCF101Aの平均エチレン含有量は、約25モル%〜約48モル%である。一般に、エチレン含有量が低いと、熱可塑性ウレタンとエチレン−ビニルアルコール共重合体の各層どうしが強力に結合する。
【0027】
本発明の熱可塑性ポリウレタンとして、熱可塑性ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレタン、およびポリカーボネート−ポリウレタンが特に適しており、これらには、ジオール反応体として、ポリテトラヒドロフラン、ポリエステル、ポリカプロラクトンポリエステル、ならびにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのポリエーテル、ならびにエチレンオキシドとプロピレンオキシドとを含む共重合体を使用して重合されたポリウレタンがあるが、以上に限定されない。これらの高分子ジオール系ポリウレタンは、高分子ジオール(ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリテトラヒドロフランジオール、またはポリカーボネートジオール)、1種以上のポリイソシアネート、および場合によっては、1種以上の連鎖反応化合物との反応によって調製される。本明細書で用語として用いられる連鎖延長化合物は、イソシアネート基とよく反応する2個以上の官能基を有する化合物のことである。好ましくは、高分子ジオール系ポリウレタンは実質的に線状である(すなわち、実質的に全ての反応体が二官能性である)。
【0028】
本発明の好適な熱可塑性ポリウレタンを形成する際に使用されるポリエステルジオールは、一般に、多塩基酸化合物とポリオール化合物との縮合重合によって調製される。好ましくは、多塩基酸化合物およびポリオール化合物は二官能性である、すなわち二塩基酸化合物およびジオールを使用して、実質的に線状のポリエステルジオールを調製する。ただし、一官能性物質、三官能性物質、およびさらに高次の官能性物質を少量(多分約5モル%以下)含めることができる。適したジカルボン酸として、グルタル酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、マレイン酸およびこれらの混合物が挙げられるが、以上に限定されない。適したポリオールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、エステルジオール(Esterdiol)204(イーストマン・ケミカル社販売)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、およびそれらの組合わせが挙げられるが、以上に限定されることはなく、延長剤は上記のポリオールから成る群から選択される。トリオールまたはさらに高次官能性のポリオール、たとえばトリメチロールプロパンまたはペンタエリトルトールを少量含めることも時にはある。好適な実施形態において、カルボン酸はアジピン酸を含み、またジオールは1,4−ブタンジオールを含む。このエステル化重合の典型的な触媒は、プロトン酸、ルイス酸、チタンアルコキシドおよびジアルキルスズ酸化物である。
【0029】
好適な熱可塑性ポリウレタンを調製する際に使用される高分子ポリエーテルまたはポリカプロラクトンジオール反応体は、ジオール系開始剤、たとえばエチレングリコールまたはプロピレングリコールとラクトンまたはアルキレンオキシド系連鎖延長試薬とを反応させることによって調製される。好適な連鎖延長試薬はイプシロンカプロラクトン、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドである。活性水素で開環可能なラクトンは、この技術分野でよく知られている。適したラクトンの例として、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−デカノラクトン、δ−デカノラクトン、γ−ノナノイックラクトン、γ−オクタノイックラクトン、およびこれらの組合わせが挙げられるが、以上に限定されない。好適な一実施形態において、ラクトンはε−カプロラクトンである。また、本発明の実施において有用なラクトンは、下記式
【0030】
【化7】

【0031】
(式中、nは1〜7の正の整数であり、Rは1個以上のH原子、または1〜7個の炭素原子を持つ置換もしくは非置換アルキル基である。)によって特徴付けることもできる。有用な触媒として、ポリエステルの合成について上述したものが挙げられる。また、この反応はラクトン環と反応する分子上にヒドロキシル基のナトリウム塩を形成することによって開始させることができる。
【0032】
本発明の別の実施形態において、ジオール開始剤は、オキシラン含有化合物と反応させられて、ポリウレタンの重合で用いられるべきポリエーテルジオールを生成させる。オキシラン含有化合物は、好ましくは、アルキレンオキシドまたは環状エーテルであり、特に好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランおよびこれらの組合わせから選択される化合物である。アルキレンオキシドの重合体セグメントとして、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−シクロヘキセンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、1−ヘキセンオキシド、tert−ブチルエチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、1−デセンオキシド、イソブチレンオキシド、シクロペンテンオキシド、1−ペンテンオキシドおよびこれらの組合わせが挙げられるが、以上に限定されない。アルキレンオキシドの重合は、典型的には、塩基で触媒される。この重合は、たとえばヒドロキシル官能性開始剤、および触媒量の、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドまたはカリウムtert−ブトキシドなどの苛性アルカリを仕込み、そして単量体を反応に利用できる状態に保つために充分な速度でアルキレンオキシドを加えることによって行うことが可能である。2種以上の異なるアルキレンオキシド単量体を同時添加によってランダム共重合させることが可能であり、また逐次添加によってブロックに重合させることが可能である。エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの単独重合体または共重合体が好ましい。
【0033】
テトラヒドロフランは既知の条件下で重合して繰返し単位−[CH2CH2CH2CH2O]−を形成する。テトラヒドロフランは、SbF6−、AsF6−、PF6−、SbCl6−、BF4−、CF3SO3−、FSO3−、およびClO4−などの対イオンを用いるカチオン系開環反応によって重合させられる。開始は第3オキソニウムイオンの形成による。ポリテトラヒドロフランセグメントは、「リビングポリマー」として調製され、上述のいずれかのようなジオールのヒドロキシル基との反応によって停止させられることが可能である。
【0034】
脂肪族ポリカーボネートジオールは、ジオールと、ジアルキルカーボネート(ジエチルカーボネートなど)、ジフェニルカーボネート、またはジオキソラノン(五員環および六員環を有する環状カーボネートなど)との、アルカリ金属のような触媒、スズ触媒またはチタン化合物の存在下における反応によって調製される。有用なジオールとして、既に述べたあらゆるものが挙げられるが、それらに限定されない。芳香族ポリカーボネートは、通常、ビスフェノール、たとえばビスフェノールAと、ホスゲンまたはジフェニルカーボネートとの反応から調製される。
【0035】
上述した高分子ポリエステルジオールなどの、ポリウレタンの合成において使用される高分子ジオールは、数平均分子量(たとえば、ASTMD−4274法により測定される)が、好ましくは、約300〜約4,000、より好ましくは約400〜約3,000、さらに好ましくは約500〜約2,000である。この高分子ジオールは、一般に、エラストマポリウレタンの「ソフトセグメント」を形成する。
【0036】
エラストマポリウレタンの合成は、1種以上の上記高分子ジオールと、少なくとも2個のイソシアネート基を有する1種以上の化合物と、場合によっては、1種以上の連鎖延長剤とを反応させることによって行うことが可能である。エラストマポリウレタンは好ましくは線状であって、それ故、好ましくは、ポリイソシアネート成分は実質的に二官能性である。本発明の熱可塑性ポリウレタンを調製するために用いられる有用なジイソシアネート化合物として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート(H12MDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート(m−TMXDI)、p−テトラメチルキシレンジイソシアネート(p−TMXDI)、エチレンジイソシアネート、1,2−ジイソシアナトプロパン、1,3−ジイソシアナトプロパン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアネートまたはHDI)、1,4−ブチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、1,4−メチレンビス−(シクロヘキシルイソシアネート)、トルエンジイソシアネートの各種異性体、メタ−キシリレンジイソシアネートとパラ−キシリレンジイソシアネート、4−クロロ−1,3−フェニレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロ−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、およびこれらの組合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が特に有用である。
【0037】
有用な活性水素含有連鎖延長剤は、一般に、少なくとも2個の活性水素基を含有するものであり、中でも、たとえば、ジオール、ジチオール、ジアミン、またはアルカノールアミン、アミノアルキルメルカプタンおよびヒドロキシアルキルメルカプタンなどのヒドロキシル基、チオール基およびアミン基の混合基を有する化合物が挙げられる。連鎖延長剤は、好ましくは、その分子量が約60〜約400の範囲にある。アルコールおよびアミンが好ましい。ポリウレタン用連鎖延長剤として用いられる有用なジオールの典型的な例として、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール(イーストマン・ケミカル社販売のCHDM)、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、エステルジオール(Esterdiol)204(イーストマン・ケミカル社販売)、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ならびにジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールなどのエチレングリコールの低級オリゴマー;プロピレングリコール、ならびにジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびテトラプロピレングリコールなどのプロピレングリコールの低級オリゴマー;1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ならびにヒドロキノンおよびレゾルシノールのビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルなどのジヒドロキシアルキル化芳香族化合物;p−キシレン−α,α’−ジオール;p−キシレン−α,α’−ジオールのビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル;m−キシレン−α,α’−ジオールおよびそのビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、以上に限定されない。適したジアミン系延長剤として、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ベンジジン、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、エチレンジアミンおよびこれらの組合わせが挙げられるが、以上に限定されない。他の典型的な連鎖延長剤として、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミンおよびこれらの組合わせなどのアミノアルコールが挙げられる。好適な延長剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、およびこれらの組合わせが挙げられる。
【0038】
上述の二官能性延長剤に加えて、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオールおよびグリセロールなどの三官能性延長剤および/またはブタノールまたはジメチルアミンなどの一官能性活性水素化合物も少量存在してもよい。使用される三官能性延長剤および/または一官能性化合物の量は、反応生成物および使用される活性水素含有基の総重量に基づいて、5.0当量%以下であるのが好ましいと思われる。
【0039】
ポリイソシアネートと高分子ジオールと連鎖延長剤との反応は、典型的には、それらの成分を加熱することによって、たとえば二軸スクリュ押出機における溶融反応によって行われる。この反応の典型的な触媒として、オクタン酸第一スズなどの有機スズ触媒が挙げられる。一般に、ポリエステルジオールなどの高分子ジオールの延長剤に対する比は、最終的なポリウレタンエラストマの所望の硬度に大きく依存するが、相対的に広い範囲内で変化可能である。たとえば、ポリエステルジオールの延長剤に対する当量比は1:0〜1:12の範囲内、より好ましくは1:1〜1:8の範囲内にあればよい。好ましくは、使用されるジイソシアネート(1種または複数種)は、活性水素含有物質の当量数に対するイソシアネートの当量数の総比が0.95:1〜1.10:1の範囲内、より好ましくは0.98:1〜1.04:1の範囲内となるように配分される。高分子ジオールのセグメントは、典型的には、ポリウレタン重合体の約35〜約65重量%、好ましくはポリウレタン重合体の約35〜約50重量%である。
【0040】
加水分解感受性が特に懸念されるときのような一定の用途では、ポリウレタン類のブレンド物を含めて、本発明の高分子複合材料の構造層を形成するのが望ましいことがある。たとえば、カルボン酸とジオールとの反応混合物から形成される、反応生成物の繰返し単位が8個よりも多い炭素原子を有するポリエーテルジオールまたはポリエステルジオールのソフトセグメントを含むポリウレタンを、炭素原子8個以下の繰返し単位を有するポリエステルジオール、または分枝ジオールの生成物を含むポリウレタンとブレンドすることが可能である。好ましくは、8個以下の炭素原子を有するか、または第3炭素原子に結合されている酸素原子を伴うポリエステルジオール繰返し単位を含んでいるもの以外のポリウレタンは、上記ブレンド物中に約30重量%(たとえば、アジピン酸ポリエチレングリコール系ポリウレタン70重量%、イソフタレートポリエステルジオール系ポリウレタン30重量%)までの量で存在する。反応生成物が8個よりも多い炭素原子を有するポリエステルジオールの特定の例として、ポリ(エチレングリコールイソフタレート)、ポリ(1,4−ブタンジオールイソフタレート)およびポリ(1,6−ヘキサンジオールイソフタレート)が挙げられる。
【0041】
各種熱可塑性ポリウレタンのブレンド物に代わるものとして、様々なソフトセグメントを有する単一のポリウレタンを使用することが可能である。この場合もまた、そのソフトセグメントとして、合計で8個以下の炭素原子を有するソフトセグメントに加えて、合計9個以上の炭素原子を有するポリエーテルジオール、ポリエステルジオールまたはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定しようとするものではない。総炭素原子数が8よりも大きい、カルボン酸とジオールとの反応生成物を含むソフトセグメント構成要素は、総量として、ポリウレタン中に含まれるソフトセグメントの総量に対して約30重量%の量で存在すると考えられる。したがって、ソフトセグメント繰返し単位の少なくとも70重量%は、反応生成物の総炭素原子数が8個以下である、カルボン酸とジオールとの反応生成物である。
【0042】
本発明のポリウレタンに、8個よりも多い炭素原子を含む繰返し単位を有するポリエステルを30重量%まで含んでいるポリウレタンを加える方法は、多数存在することにも留意されるべきである。8個よりも多い炭素原子を有する繰返し単位を含んでいるポリエステルジオールから誘導されたポリウレタン30%以下を、仕上げ重合体として、8個以下の炭素原子を有する繰返し単位を含んでいるポリエステルジオールから誘導された、ポリウレタン70重量%以上とブレンドすることが可能であるか、または8個以下の炭素原子を有する繰返し単位を70重量%以上含み、残りは前述の8個よりも多い炭素原子を有する繰返し単位を含む単一のポリウレタンをポリエステルジオールの混合物から調整することが可能であると思われる。ジカルボン酸およびジオールからの反応によって、ポリエステルジオール中の繰返し単位の70重量%が8個以下の炭素原子を含むように調製された単一のジオールから、ポリウレタンを調製することも可能であると思われる。また、これら方法を組合わせることも可能である。6個よりも多い炭素原子を含み、使用可能と思われる酸として、イソフタル酸およびフタル酸がある。
【0043】
熱可塑性ウレタンと、ヒドロキシル官能性共重合体と、ゲル抑制添加剤とを含有する組成物は、熱可塑性ポリウレタンと少なくとも1種のヒドロキシル官能性共重合体とのブレンド物を含むシートを調製する処理過程において使用されてもよい。まず、この3成分を結合させて、その後、熱エネルギ、機械エネルギ、またはその両方をこの結合体に与えて、ブレンド物を生成する。そして、このブレンド物からシートが生成されるが、そのシートは、ゲル抑制添加剤を含まずに熱可塑性ポリウレタンおよびヒドロキシル官能性共重合体のみを含む組成物から生成されるシートと比較して、一般にゲル含有量が少ない。
【0044】
3成分は、いかなる順序で結合されてもよい。一実施形態において、3成分は、順に混合チャンバに添加される。別の実施形態においては、ヒドロキシル官能性共重合体およびゲル抑制添加剤の2成分を結合させて、これらを含有する組成物がまず調製される。上述したように、この組成物は、ウレタン結合を含む重合体とブレンドされると、ゲル形成傾向が低下する。このブレンド物を形成するために、2成分組成物は熱可塑性ポリウレタンに添加される。
【0045】
ゲル抑制添加剤は、一般に、典型的には20重量%以下、好ましくは約5重量%以下の少量で組成物中に存在するが、組成物におけるゲル含有量の所望の低減度、添加剤の分子量、ヒドロキシル官能性重合体のヒドロキシル基の級数による。TPUとヒドロキシル官能性重合体との比率は、広範囲で変化してもよい。一般に、組成物は、ヒドロキシル官能性バリア共重合体を1重量%〜約99重量%含有することが可能である。割合が高い(たとえば60〜98%)場合、後述する飲料用多層ボトルなどの高いガスバリア性を必要とする用途に使用可能である。一方、より耐久性のある構造特性を有する低ゲルブレンド物が望まれる場合は、ヒドロキシル官能性重合体の割合が相対的に低く、かつTPUの割合よりも高いものが使用される。
【0046】
ブレンド物を生成するために、熱エネルギ、機械エネルギ、またはその両方が3成分の結合体に与えられる。一般に、熱エネルギは、成分を軟化させる、または融解させるために使用される。機械エネルギは、たとえば、攪拌、混合、製粉、または粉砕の形で付与される。結合体に付与される機械エネルギは、3成分を均質なブレンド物になるように完全に混合する働きをする。
【0047】
シートは、押出し、鋳造、および成形など、限定しないが、多数の公知方法によってブレンド物から生成可能である。好適な実施形態において、低ゲルシートは、ブレンド物を押出しすることによってブレンド物から生成される。また、低ゲルシートは、後述する他の熱可塑性物質およびガスバリア層と共押出しされてもよい。
【0048】
熱可塑性ポリウレタンと、ヒドロキシル官能性バリア重合体と、ゲル抑制添加剤との結合体から生成される低ゲルシートは、シートの改良された物理的性質およびガスバリア性が活用される様々な用途に使用可能である。一般に、これらの用途は、複数の軟質層を含む多層複合材料の使用に関連し、軟質層の少なくとも一層は、上述の熱可塑性ポリウレタンと、ヒドロキシル官能性バリア重合体と、ゲル抑制添加剤とのブレンド物からシートを形成してなる生成物である。複数の軟質層は、熱可塑性ポリウレタン、ヒドロキシル官能性ガスバリア共重合層、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、およびポリアミドなど、限定されないが、様々な材料から成っていてもよい。低ゲルシートの厚みは、用途によって異なってもよい。
【0049】
一実施形態において、外層としてゴムを有し、内層として熱可塑性ポリウレタンと、ヒドロキシル官能性共重合体と、ゲル抑制添加剤とのブレンド物から成る層を有するホースが提供される。このホースは、フレオン22および他の気体に対して有利な透過性を示し、長期使用において良好に圧力を維持する。たとえば、内層は、(エチレン単位を20〜60モル%有する)エチレン−ビニルアルコール共重合体を1〜95重量%、好ましくは30〜95重量%、熱可塑性ポリウレタンを99%重量パーセントまで、好ましくは5〜75%重量パーセント、グリセリンなどのゲル抑制添加剤を0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%含んでもよい。外層は、天然ゴムまたはEPDMなどの合成ゴムから成る。フレオン22および他の気体に対する透過性が小さいこのようなホースは、たとえば日本の株式会社クラレ名義の特開平03−255288号公報に記載されている。これらは、TPUブレンド物層およびゴム層の共押出しによって調製される。
【0050】
別の実施形態において、層のうちの一層が、熱可塑性ポリウレタとヒドロキシル官能性ガスバリア共重合体とゲル抑制添加剤とを含有するブレンド物から生成されるガスバリア耐衝撃性多層コンテナが提供される。低ゲルTPUブレンド物層は、TPUブレンド物層の1面以上に位置付けられる熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、および/またはポリカーボネートの層を1層以上伴って、飲料、食品、または化粧水の包装として有用な風味維持特性を有するボトルを提供するために使用される。限定はしないが、一例として、20〜60対40〜80(モル%)のエチレン−ビニルアルコール共重合体と熱可塑性ポリウレタンとを60〜98対2〜40で含むブレンド物は、1〜20重量%の、グリセリンなどのゲル抑制添加剤によって処理される。TPU/EVOH/グリセリンは、(内層および外層が)イソフタル酸修飾PETとブレンドされてブロー成形され、内側から外側までの層厚が190ミクロン:20ミクロン:90ミクロンのボトルとなる。TPU/EVOH層のゲルが減少すると、透明度が向上すると同時に、TPU/EVOHブレンド物によってガス透過性が有利になる。このようなボトルは、日本の株式会社クラレ名義の特開平3−175032号公報に記載された方法に従って形成され、この開示内容は参照によって組込まれる。
【0051】
好適な実施形態において、TPUおよびヒドロキシル官能性ガスバリア層共重合体を含有する低ゲルシートは、競技用の履物などに用いられる膨張可能なブラダなどに形成可能な高分子複合膜の一部として使用される。たとえば、図1〜図5を参照して、本発明の教示に従ったバリア膜28は、クッション装置の形で提供される。図示されているように、膜28は、本発明のTPUと、ヒドロキシル官能性共重合体と、ゲル抑制添加剤とのブレンド物から形成される内層30を含む複合構造を有する。内層は、制御された拡散ポンピングまたは自己加圧を可能にする。外層32は、ガス圧に晒される場合、好ましくは、所定の最大容積を超えた膜の拡張に対して耐性がある柔軟な弾性エラストマ材料から形成される。
【0052】
外層32は、好ましくは、ヒートシール性、曲げ疲労強度、適切な弾性計数、引っ張り・引裂強度、および耐摩耗性に優れた材料、またはそれら材料の組合せから形成される。これらの特性を示す利用可能な材料のうち、ウレタン類の熱可塑性エラストマ、ここでは熱可塑性ウレタンまたは単にTPUとも呼ばれるものが処理性に優れているので非常に好ましい。
【0053】
外層32を形成する際に有用な熱可塑性ウレタンの例として、限定するものではないが、PELLETHANETM2355−85ATPおよび2355−95AE(Dow Chemical Company、ミシガン州ミッドランド)、ELASTOLLAN(登録商標)(BASF Corporation)、およびESTANE(登録商標)(B.F. Goodrich Co.)が挙げられ、これらはすべて、エステルまたはエーテルのいずれかをベースとしている。ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、およびポリカーボネートマクログリコールをベースとしたさらに他の熱可塑性ウレタンが使用されてもよい。一実施形態において、外層32を形成するために用いられる熱可塑性ウレタン(1種または複数種)の性質は、芳香族である。
【0054】
なお図1〜図5を参照して、本発明の教示に従ったバリア膜を用いる製品の1例として、靴底構造およびクッション装置を含む競技用靴が示されている。靴10は、靴底14が取付けられている靴アッパー12を含む。靴アッパー12は皮革、ビニール、ナイロン、および他の一般に織られている繊維性材料など、これらに限定されないが、各種の慣用材料から形成可能である。典型的に、靴アッパー12は、つま先16の周りに位置する補強物、レイシングアイレット18、靴の頂部20および踵部分22を含む。ほとんどの競技用靴と同様、底14は、一般に、つま先部分20からアーチ状部分24を経て踵部分22まで戻り、靴10の全長に延びる。
【0055】
靴底構造物14は、本発明に従った選択性透過バリア膜28を1膜以上含み、この選択性透過バリア膜28は、好ましくは、靴底構造物のミッドソールHに配置される。例を挙げれば、本発明の膜28は、図1〜図5に示すように、複数の管状部材のような様々な形に形成され、ミッドソール26の踵部分22内で相互に間隔を空けて並行に位置付けられることが可能である。管状部材は注入されたキャプティブガスを収容するように密封される。より具体的には、各バリア膜28は、バリア層を含むように形成され、該バリア層は、流動ガスの拡散を可能にする一方、キャプティブガスの拡散を抑制または防止する。膜28のこれらの所定の拡散特性は、熱可塑性外層32の内表面に沿って配置されるバリア内層30によって与えられる。これら2層の膜層は、図4および図5で最もよく見られる。前述したように、本発明のバリア膜28は、様々な構成または形状で形成されることが可能である。本発明のバリア膜の構成は(管状、細長いパッド、または他のこのような構成のいずれであっても)、履物商品のミッドソールまたはアウトソールの内側に完全に、または部分的に封入されることが可能である。内層30は、上述したTPUとヒドロキシル官能性共重合体とゲル抑制添加剤とのブレンド物から形成される。
【0056】
図6および図7を参照して、細長い管状の多層構成材の形をした別のバリア膜の実施形態28Aが示されている。変形型バリア膜28Aは、図1〜図5に示されている複合材料の構造と本質的に同じであるが、バリア層30の内表面に沿って接するように第3層34が設けられているので、層30が外層32と最内層34との間に挟まる。最内層34もまた、好ましくは、熱可塑性ウレタン材料から形成されて、バリア層30がさらに保護される。層30が劣化しないように保護が強化されるという利点があるだけでなく、層34がクッション装置の三次元形状を可能にする質の高い溶着を行う際の助けとなる傾向もある。
【0057】
図1〜図7に示されるクッション装置は、押出しされた多層チューブから作製されてもよい。巻取り長さが1フィートから5フィートの範囲である、共押出しされた管は、好ましくは窒素であるキャプティブガスによって、0psi(周囲圧力)〜100psiの範囲、好ましくは5〜50psiの範囲における所望の初期膨張圧になるまで膨張させることが可能である。チューブの断面は、所望の長さになるまでRF溶着されるか、ヒートシールされる。そして、生成される個々のクッション装置は、隣合ったクッション装置間の溶着された領域を通って切断されて分離される。これに代えて、押出しされたチューブは、膨張前に溶着されるかヒートシールされてもよい。注目すべきは、本技術分野において知られているような、いわゆる平坦押出しされたチューブを用いて、クッション装置を作製することが可能であり、これによって内部の幾何学的形状物がチューブへと溶着されることである。
【0058】
1以上のポリエステルポリオール系ウレタンおよび1以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むブレンドされた第1層ならびに熱可塑性ウレタンを含む第2層は、個々のフローチャネルを通って押出し機の出口端部まで進むので、一度これらがダイリップ出口近くに来ると、溶融流は合流し、金型本体に入るときには、典型的には層流の状態で移動しながら、層状になって一緒に流れるように構成される。一実施形態において、これらの材料は、約300°F〜約450°Fの温度で、少なくとも約200psiの圧力で組合わされて、層30、層32、および層34それぞれの連続する部分間の接着力が最大になるような最適な濡れを得る。また、多層積層体について、脂肪族ウレタンが従来のシート押出し技術を利用して容易に処理可能であることが判明しているので、バリア層を形成する際に利用されるポリエステルポリオールおよびイソシアネート部分は、その性質が脂肪族であることが好ましい。
【0059】
ブレンドされたバリア層30は、一般に、ポリエステルポリオール系TPUを約1〜97重量%含む。いくつかの実施形態において、TPUは、50重量%以下、好ましくは1〜30重量%または5〜25重量%存在する。
【0060】
一定の実施形態について、ブレンドされたバリア層30に、粘度調整剤として、少なくとも1種の芳香族または脂肪族熱可塑性ポリウレタンが相対的に少量含まれると有用な場合がある。少なくとも1種の芳香族熱可塑性ウレタンを使用するこれらの実施形態において、その総量は、一般に、バリア層100重量%につき、3重量%以下である。したがって、ブレンドされたバリア層の組成をまとめると、(1)エチレン−ビニルアルコール共重合体などの少なくとも1種のヒドロキシル官能性バリア重合体を約95重量%以下、好ましくは2重量%〜95重量%、(2)脂肪族熱可塑性ウレタンまたは芳香族熱可塑性ウレタンまたはこれら2種の熱可塑性ウレタンの組合せを1重量%〜約99重量%、および(3)ゲル抑制添加剤を約0.05〜約5重量%含み、バリア層の成分全体で100重量%となる。芳香族熱可塑性ウレタンも、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、ポリオキシプロピレン、およびポリカーボネートマクログリコール系材料ならびにこれらの混合物から成る群から選択される。
【0061】
前述したように、本明細書に開示されるバリア膜は、押出し成形、ブロー成形、射出成形、真空成形、ならびにチューブおよびシートの押出しされたフィルム材料のヒートシールまたはRF溶着など、限定はしないが、様々な処理技術によって形成可能である。好ましくは、本発明の膜は、熱可塑性ウレタン材料の外層、およびポリエステルポリオール系熱可塑性ウレタンとエチレン−ビニルアルコール共重合体とがブレンドされた内層を共押出しすることによって形成されたフィルムから成り、多層フィルム材料を効果的に生成した結果、この材料からバリア膜が生成される。続いて多層フィルム材料の形成後、このフィルム材料は、ヒートシールされるか、RF溶着によって溶着されて、柔軟性および拡散ポンピング力が大きいという特性を有する膨張可能なバリア膜を形成する。
【0062】
上述の実施形態において、TPUとヒドロキシル官能性バリア共重合体とのブレンド物を含有する低ゲルシートが複合材料に使用されると、ガスバリア性が与えられる。他の実施形態において、低ゲルシートは、他層のバリア共重合体シートおよびエラストマシートと一緒に使用される。これらのような多層複合材料は、様々な構成を取ることができる。図8a、図8b、および図8cには、概略的に例を示すが、これらに限定されない。図8aに示される多層複合材料80は、2層の低ゲルTPUブレンド物シート81を有し、その間に、エラストマシート83を2層、およびヒドロキシル官能性共重合体バリアシート85を1層含む3層が挟まれている。図8bには、多層複合材料がガスバリア共重合体シート85を2枚およびエラストマ層83を3枚含むこと以外は類似の挟持装置が示されている。同様に、図8cには、ガスバリア重合体シート85を3枚およびエラストマシート83を4枚含む多層複合材料が示されている。好適な実施形態において、ガスバリアシートは、上述したような1以上のヒドロキシル官能性共重合体を含む。また、好ましくは、エラストマ材料が熱可塑性ポリウレタンシートであると有利である。
【0063】
図8a、図8b、および図8cにおいて、1層、2層、または3層のヒドロキシル官能性共重合体シート全体の厚さは、所望のガス透過性が得られるように選択される。典型的には、図8a、図8b、および図8cに示されるような多層複合材料におけるガスバリアシートの総厚は、約0.1ミル〜約10ミルの範囲であって、約1ミル(約25マイクロメータ)である。
【0064】
図8に示される多層複合材料は、典型的には低ゲル層81および低ゲル層82の外側に設置される、図示しない他の構造層を含んでもよい。典型的な構造外層は、熱可塑性ポリウレタン、天然ゴム、および合成ゴムなどのエラストマ材料を含む。挟持された1枚以上のガスバリア共重合体シートは、TPUとヒドロキシル官能性共重合体との低ゲルブレンド物から成ってもよい。図8a、図8b、および図8cに示された層の相対的な厚みおよびシートの長さは、明瞭にするために与えられており、必ずしも実際に好ましい値を表しているわけではない。
【0065】
低ゲルTPUブレンド物シートは、ミクロレイヤー高分子複合材料を生成するために使用されてもよい。ミクロレイヤー複合材料は、図8に示される挟持構造を3層、5層、または7層よりもかなり多く含む。好適な実施形態において、本発明のミクロレイヤー高分子複合材料は、流体バリア材料の薄い交互配置層と、低ゲルTPUブレンド物層間に挟まれる構造エラストマ材料とを有する。一実施形態において、ミクロレイヤー高分子複合材料は、少なくとも約10層を有する。好ましくは、ミクロレイヤー高分子複合材料は、少なくとも約20層、より好ましくは、少なくとも約30層、さらに好ましくは、少なくとも約50層を有する。ミクロレイヤー高分子複合材料は、数千の層を有してもよく、その層数は、選択される特定の材料、各層の厚み、そのミクロレイヤー高分子複合材料の厚み、その多層を調製するための加工条件、およびその複合材料の最終用途などの因子に依存することは、当業者であれば理解されるだろう。ミクロレイヤーエラストマ膜は、好ましくは約10〜約1000層、より好ましくは約30〜約1000層、さらに好ましくは約50〜500層を有する。
【0066】
また、異なる流体バリア材料層および/または異なるエラストマ材料層を含み、それら異なる層がすべて規則的な繰返し順序で配置されているミクロレイヤー高分子複合材料も考えられる。場合によっては、エラストマ層および流体バリア層に加えて、これらと共に規則的な繰返し順序で交互に配置される他の層も含まれていてよい。
【0067】
ミクロレイヤー組成物における流体バリア材料の各層それぞれの平均厚は、数ナノメータ程度の薄さから数ミル(約100ミクロン)程度の厚みであることが可能である。好ましくは、個々の層は、約0.1ミル(約2.5ミクロン)以下の平均厚を有する。約0.0004ミル(約0.01ミクロン)〜約0.1ミル(約2.5ミクロン)の平均厚が特に好ましい。たとえば、個々のバリア材料層は、平均で約0.05ミル(約1.2ミクロン)であってよい。流体バリア層材料の層は、薄い方がブラダ膜の延性を改善する。
【0068】
多層高分子複合材料は、様々な方法によって形成可能である。好適な方法では、まず、TPUとバリア層とが交互に配置されて成るミクロレイヤーコアが形成され、このコアの両面に、TPUが大部分を占めてEVOHを少量含有する構造層が加えられる。ミクロレイヤーコアの形成時、TPUは、結合層および保護層として、その両方の機能を果たす。
【0069】
1つの方法において、本発明の多層高分子複合材料は、層状の流れを静的ミキサまたは層多層化機(layer multiplier)へと導入する2層供給ブロック、3層供給ブロック、または5層供給ブロックを使用して、調製されることが可能である。静的ミキサは、層数を幾何級数的に増加させる複数の混合要素、好ましくは少なくとも約5個の混合要素を有する。
【0070】
別の方法において、本発明の多層高分子複合材料は、ポリマ材料の個別の層を含む第1の流れを供与することによって、調製されることが可能である。この方法の好適な実施形態は、参照によって全体が本明細書に組込まれている、1992年3月10日付けで発行された、Schrenkらの米国特許第5094793号明細書に詳述されている。略述すれば、個別の層を含む第1の流れは、エラストマ材料と流体バリア材料とを別々に含む押出し機からの融解した押出し物を、2層供給ブロック、3層供給ブロック、または5層の供給ブロックに導入することによって、やはり形成されることが可能である。第1の流れは、次に、複数の分岐流に分割され、分岐流は、次に再導入または再配位され、そして個々に対称的に膨張または収縮され、最終的には、互いに重なる関係になって再度組合わされ、個別の層の数が増加した第2の流れが形成される。また、参照によって全体が本明細書に組込まれている、1993年12月14日付けで発行された、Ramanathanらの米国特許第5269995号明細書の方法に従って保護境界層が含められてよい。この保護層は、共押出し装置の壁において保護境界層を形成するように複合材料の流れの外表面に供給される融解した熱可塑性材料の流れによって供与される。保護層は、保護境界層にメタリック顔料または他のフレーク顔料を含めることによって得られる金属のような発色などの特別な発色のような、特殊な光学的または物理的特性をミクロレイヤー高分子複合材料に付与することが可能である。この保護層は、層の形成中および多層化中、構造層および流体バリア層が不安定になって破断しないように保護する。
【0071】
層のすべてが完全な層であること、つまり、その層の平面内で層がそのすべての端縁まで延びていることは必要ではないが、ほとんどの層が実質的に完全な層である、つまり、膜の端縁まで延びていることが望ましい。
【0072】
本発明のエラストマ膜は、唯一の層または積層構造体中の1層のいずれかとして、ミクロレイヤー高分子複合材料を含む。膜は、所望の履物のブラダ、または液圧アキュムレータの形成に都合の良い任意の長さおよび幅を有していてよい。膜のミクロレイヤー高分子複合材料の平均厚は広範に変化可能であるが、この厚さは、たとえば約3ミル(約75ミクロン)〜約20ミル(約0.5ミクロン)であってよい。好ましくは、ミクロレイヤー高分子複合材料の平均厚は、少なくとも約50ミクロン、好ましくは約75ミクロン〜約0.5cm、より好ましくは約125ミクロン〜約0.5cm、そして特に好ましくは約125ミクロン〜約0.15cmである。履物用のブラダを調製するためにミクロレイヤー高分子複合材料を使用することになる場合、ミクロレイヤー材料は約3ミル(約75ミクロン)〜約40ミル(約0.1cm)の平均厚を有するが、液気圧アキュムレータに使用される膜は通常、一層厚い。好適な一実施形態において、ミクロレイヤー高分子複合材料は少なくとも約125ミクロンの平均厚を有する。
【0073】
本発明の膜は、1層以上の積層体層としてミクロレイヤー高分子材料を含む積層体であってよい。交互配置層は、ミクロレイヤー材料の構造材料として適しているとして上記に列挙した重合体から選択され、より好ましくは、交互配置層はポリウレタン材料である。ミクロレイヤーの任意の層数は、好ましくは1〜約5、より好ましくは1〜3であり、積層体の交互配置層として使用される。積層体の他の層は、好ましくはエラストマであり、ミクロレイヤー高分子複合材料の構造層として適しているとすでに称されているものから選択される熱可塑性エラストマを含む。本発明の好適な膜は、エラストマポリウレタンの少なくとも1層Aとミクロレイヤー高分子複合材料の少なくとも1層Bとを含む積層体である。好適な他の実施形態において、膜は、層A−B−Aまたは層A−B−A−B−Aを有する積層体である。
【0074】
積層体を調製するためにミクロレイヤー高分子フィルムが使用することになる場合、積層体は約3ミル(約75ミクロン)〜約200ミル(約0.5cm)の平均厚を有してよく、好ましくは、約3ミル(約75ミクロン)〜約50ミル(約0.13cm)の平均厚を有する。積層体のミクロレイヤー高分子フィルム層は、好ましくは、約0.25ミル(約6.35ミクロン)〜約102ミル(2600ミクロン)である。
【0075】
1層がポリウレタンなどの極性物質であるときは特に、ブラダはミクロレイヤー材料、またはミクロレイヤー含有積層体の2枚のシートをRF(無線周波数)溶着することによって生成されてよい。ポリオレフィンなどの非極性物質は、超音波シールまたはヒートシール技術を使用して溶着されることが可能である。他の周知の溶着技術もまた使用可能である。
【0076】
靴などの履物においてクッション装置として使用される場合、ブラダは、好ましくは窒素で、少なくとも約3psiで約50psi以下の内部圧力になるまで膨張されてよい。好ましくは、ブラダは、約5〜約35psi、より好ましくは約5〜約30psi、さらに好ましくは約10〜約30psi、そしてさらになお好ましくは約15〜約25psiの内部圧力になるまで膨張される。履物以外の用途において、所望の好適な圧力範囲は劇的に変化してよく、またこの特定の応用分野における当業者によって決定されることが可能であることは、当業者によって理解されるであろう。
【0077】
好ましくは、本明細書に記載される膜は、履物用クッション部材の形成に有用な場合がある。このような用途において、膜は、好ましくは、相対的に長期間に渡って、キャプティブガスを収容することが可能である。非常に好適な実施形態において、たとえば、膜は、約2年の期間に渡って、膨張されたガスの初期圧力を約20%よりも多く失ってはならない。換言すると、最初に20.0〜22.0psiの定常状態の圧力まで膨張された製品は、少なくとも約2年間、約16.0〜18.0psiの範囲の圧力を保持すべきである。
【0078】
膨張気体は、好ましくは窒素ガスであるが、この膨張気体用の材料の膨張気体透過速度は、1日当たり、1気圧当たり、1m2当たり、10cm3(cc/m2・atm・日)未満であり、好ましくは約3cc/m2・atm・日未満であり、特に好ましくは約2cc/m2・atm・日未満である。
【0079】
ミクロレイヤー高分子複合材料によって、積層剥離および割れに対して増大した抵抗力が得られる。バリア層を多数の層に分けると、個々の層の割れに対する抵抗力が増加する。理論によって縛られるのは望まないが、同一の外寸法が与えられ、欠陥の密度が一定であると、より薄い層を有する積層体の方が各層に含まれる欠陥がより少ないであろうと考えられる。したがって、全体として従来の積層体と同量のバリア材料を含有するが、従来の積層体の1層または数層よりも多い数の多数の層間に分けられたバリア材料を有するミクロレイヤー高分子複合材料は、材料に負荷がかかるにつれ各欠陥から割れが発達するならば、割れていない層には、従来の積層体よりも多いバリア材料を含むことになる。また、ミクロレイヤー複合材料中のバリア層が割れを発達させるならば、境界面に沿って消散的な処理が、割れを1つの層に局限させることに役立つ。バリア層の数層の内部で割れが発達するならば、流体の透過速度に顕著な影響は及ばないはずであり、これは、拡散する化学種が、膜を透過するために迂回的な経路をとるように、隣接するバリア層によっていまだに強制されるからである。
【0080】
実施例
以下の実施例において、
TPU−1は、メルト・インデックスが約12で、ショアA硬度が80Aである、アジピン酸ブタンジオールMDI系TPUである。
【0081】
TPU−2は、ショアA硬度が90Aであるクラレ製クラミロン(登録商標)U3190番である。
【0082】
TPU−3は、メルト・インデックスが約10で、ショアA硬度が80Aである、アジピン酸ブタンジオールMDI系TPUである。
【0083】
EVOH−1は、エチレンを44モル%含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体である。
【0084】
試料のゲル含有量は、以下の方法に従って測定される。バイアルに試料約0.3gおよびTHF10mlを充填する。試料は、濁った溶液になり、この溶液は、超遠心分離管に移される。新しいTHFをさらに5ml使用して、バイアルを洗浄し、溶液/溶媒を遠心分離管に添加する。洗浄は、1回以上繰返される。超遠心分離条件は、18〜20krpmで60分間、10℃に設定した。遠心分離後、ゲルは管の底に堆積することが観察される。澄明な溶液は外部に移し、THFは蒸発させて除去する。ゲルおよび回収されたTPUは、両方とも一定の質量まで乾燥させられ、ゲル含有量は、ゲル重量をゲルとTPUとの総重量で除算し、これに100を乗算して計算する。
【0085】
Mnは数平均分子量であり、PDIは多分散指数であり、これら両方ともがゲル透過クロマトグラフィーによる従来方法によって測定される。
【0086】
実施例1
乾燥TPU−1(58.91g)、EVOH−1(3.10g)、および様々な量のグリセリン(GLY)を、ブラベンダー・ミキシング・ヘッドにおいて、195℃、速度40PRMで40分間混合した。ゲルは百分率で測定された。
【0087】
【表1】

ゲル含有量は、グリセリン濃度が高い程減少する。
【0088】
実施例2
EVOH−1を90重量%、グリセリンを10重量%含む試料を、PrismTSE16mm押出し機を使用して、押出し成形によって生成した。グリセリンの液状射出が使用された。5%の試料および95%のTPU−2を、ブラベンダー(Brabender)製のミキシング・ヘッドにおいて、比較のために同一条件下で生成した。ゲルは百分率で測定された。
【0089】
【表2】

【0090】
実施例3
EVOH−1とTPU−3とが5対95で混合された混合物、および様々な量のアルコールは、ブラベンダー製の2軸押出し機を使用して、押出しされた。設定温度はゾーン1、ゾーン2、および金型のそれぞれについて、190℃、210℃、および210℃であった。軸速度は、40rpmであった。押出し後、このブレンド物は乾燥させて、ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3および金型のそれぞれについて、190℃、200℃、200℃、および200℃の温度で、ブラベンダー製の1軸押出し機上において、約2.5〜3.5インチ幅、30〜40ミル厚のテープになるように、再度押出しされた。軸速度は、40rpmであった。このテープのゲル含有量が測定された。
【0091】
【表3】

【0092】
アルコールが添加されて、ゲル含有量が減少した。ほとんどの場合、TPUの溶性部分の分子量がアルコールの存在に大きく影響されることはなかった。
【0093】
実施例4
低分子量アルコールを、ウイトコ(Witco)製の1000分子量のアジピン酸エチレングリコール(EGA)またはアジピン酸ブタンジオール(BDA)に置換えた以外は、実施例3と同様である。
【0094】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】断面図を露出させるためにミッドソールの一部分を切欠いた、本発明に係る競技用靴の側面立面図である。
【図2】もう1つの断面図を露出させるために一部分を切欠いた図1の競技用靴の底面立面図である。
【図3】図1の線3−3についての断面図である。
【図4】本発明に係る管状2層クッション装置の一形態の断片的な側面透視図である。
【図5】図4の線4−4についての断面図である。
【図6】本発明に係る管状3層クッション装置の第2形態の断片的な側面透視図である。
【図7】図6の線6−6についての断面図である。
【図8】本発明の多層複合材料の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタンを含む第1成分と、
ヒドロキシル官能性共重合体を含む第2成分と、
分子量がヒドロキシル官能性共重合体の分子量よりも少ないゲル抑制添加剤を含む第3成分とを含む組成物において、
ヒドロキシル官能性共重合体は、下記式
【化1】

(式中、nは0または1であり、R1およびR2は独立して水素、メチル、またはエチルであり、R3は水素またはC1-3アルキルである)
の繰返し単位を10モル%以上有する重合体を含み、
ゲル抑制添加剤は、少なくとも1種のヒドロキシル基を有する化合物と、少なくとも1種の第1級アミノ基を有する化合物と、少なくとも1種の第2級アミノ基を有する化合物と、少なくとも1種のカルボキシル基を有する化合物と、少なくとも1種のカルボン酸無水物基を有する化合物とから成る群から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項2】
ヒドロキシル官能性共重合体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ゲル抑制添加剤は、ポリエステルポリオールを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ゲル抑制添加剤は、ポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ゲル抑制添加剤の分子量は、2000以下であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ゲル抑制添加剤の分子量は、200以下であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ゲル抑制添加剤は、2種以上のヒドロキシル基を有する化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ゲル抑制添加剤は、2種以上のアミノ基を有する化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1に係る組成物を押出しすることによって生成されることを特徴とする、熱可塑性シート。
【請求項10】
請求項2に係る組成物を押出しすることによって生成されることを特徴とする、熱可塑性シート。
【請求項11】
熱可塑性ポリウレタンと少なくとも1種のヒドロキシル官能性共重合体との混合物を含むシートを調製する方法であって、
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンを含む第1成分と、ヒドロキシル官能性共重合体を含む第2成分と、ゲル抑制添加剤を含む第3成分とを結合させる工程、
熱可塑性ポリウレタンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ゲル抑制添加剤との結合体に熱エネルギ、機械エネルギ、またはその両方を与えてブレンド物を生成する工程、および
ブレンド物からシートを生成する工程を含む方法において、
ヒドロキシル官能性共重合体は、下記式
【化2】

(式中、nは0または1であり、R1およびR2は独立して水素、メチル、またはエチルであり、R3は水素またはC1-3アルキルである)
の繰返し単位を10モル%以上有する重合体を含み、
ゲル抑制添加剤は、その分子量がヒドロキシル官能性共重合体の分子量よりも少なく、少なくとも1種のヒドロキシル基を有する化合物と、少なくとも1種の第1級アミノ基を有する化合物と、少なくとも1種の第2級アミノ基を有する化合物と、少なくとも1種のカルボキシル基を有する化合物と、少なくとも1種のカルボン酸無水物基を有する化合物とから成る群から選択されることを特徴とする、熱可塑性ポリウレタンと少なくとも1種のヒドロキシル官能性共重合体との混合物を含むシートを調製する方法。
【請求項12】
ヒドロキシル官能性共重合体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ゲル抑制添加剤は、ポリエステルポリオールを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ゲル抑制添加剤は、ポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ゲル抑制添加剤の分子量は、2000以下であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ゲル抑制添加剤の分子量は、200以下であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
ゲル抑制添加剤は、2種以上のヒドロキシル基を有する化合物を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
ゲル抑制添加剤は、2種以上のアミノ基を有する化合物を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
ゲル抑制添加剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、分子量が400以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびジプロピレングリコールから成る群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
ゲル抑制添加剤は、グリセロールを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
生成工程は、ブレンド物を押出しすることを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
熱可塑性ポリウレタンは、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタンを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
ヒドロキシル官能性共重合体は、エチレン単量体を20〜75モル%含むエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
熱可塑性ポリウレタンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ゲル抑制添加剤との結合体は、ゲル抑制添加剤を0.05重量%〜5.0重量%含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
複数の軟質層を含む多層複合材料において、
軟質層の少なくとも1層は、熱可塑性ポリウレタンと、ヒドロキシル官能性共重合体と、ゲル抑制添加剤とを含むブレンド物からシートを形成してなる生成物であり、
ヒドロキシル官能性共重合体は、下記式
【化3】

(式中、nは0または1であり、R1およびR2は独立して水素、メチル、またはエチルであり、R3は水素またはC1-3アルキルである)
の繰返し単位を10モル%以上有する重合体を含み、
ゲル抑制添加剤は、その分子量がヒドロキシル官能性共重合体の分子量よりも少なく、イソシアネートとよく反応する、少なくとも1種の官能基を含むことを特徴とする、複数の軟質層を含む多層複合材料。
【請求項26】
ヒドロキシル官能性共重合体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする、請求項25に記載の多層複合材料。
【請求項27】
ゲル抑制添加剤の分子量は、2000以下であることを特徴とする、請求項25に記載の多層複合材料。
【請求項28】
ゲル抑制添加剤の分子量は、300以下であることを特徴とする、請求項25に記載の多層複合材料。
【請求項29】
ゲル抑制添加剤の分子量は、200以下であることを特徴とする、請求項25に記載の多層複合材料。
【請求項30】
ゲル抑制添加剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、分子量が400以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびジプロピレングリコールから成る群から選択されることを特徴とする、請求項25に記載の多層複合材料。
【請求項31】
ゲル抑制添加剤は、グリセロールを含むことを特徴とする、請求項25に記載の多層複合材料。
【請求項32】
エラストマ材料を含む層を含むことを特徴とする、請求項25に記載の多層複合材料。
【請求項33】
エラストマ材料は、熱可塑性ポリウレタンと、天然ゴムと、合成ゴムとから成る群から選択されることを特徴とする、請求項32に記載の多層複合材料。
【請求項34】
合成ゴムは、ブタジエンとイソプレンとから成る群から選択される単量体の共重合体および単独重合体から成る群から選択されることを特徴とする、請求項32に記載の多層複合材料。
【請求項35】
少なくとも1層は、熱可塑性ポリウレタンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ゲル抑制添加剤とを含み、他の少なくとも1層は、熱可塑性ポリウレタンを含むことを特徴とする、請求項25に記載の多層複合材料。
【請求項36】
少なくとも1層は、熱可塑性ポリウレタンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ゲル抑制添加剤とを含み、他の少なくとも1層は、ポリエステルを含むことを特徴とする、請求項25に記載の多層複合材料。
【請求項37】
少なくとも1層は、熱可塑性ポリウレタンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ゲル抑制添加剤とを含み、他の少なくとも1層は、ポリアミドを含むことを特徴とする、請求項25に記載の多層複合材料。
【請求項38】
最上層、最下層、および最上層と最下層との間に配置される1層以上の内層を含む請求項25に記載の多層複合材料において、最上層および最下層の少なくとも1層は、熱可塑性ポリウレタンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ゲル抑制添加剤とを含み、内層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むガスバリア層を少なくとも1層含むことを特徴とする、請求項25に記載の多層複合材料。
【請求項39】
内層は、1層以上の熱可塑性ポリウレタンの層をさらに含むことを特徴とする、請求項38に記載の多層複合材料。
【請求項40】
内層は、熱可塑性ポリウレタンの層と交互に配置されるエチレン−ビニルアルコール共重合体の層を含むことを特徴とする、請求項38に記載の多層複合材料。
【請求項41】
10層以上の内層を含むことを特徴とする、請求項40に記載の多層複合材料。
【請求項42】
多層複合材料を含む、膨張気体を保持するための膜において、複合材料は、熱可塑性ポリウレタンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ゲル抑制添加剤とのブレンド物を含む軟質層を少なくとも1層含み、ゲル抑制添加剤は、少なくとも1種のヒドロキシル基を有する化合物と、少なくとも1種の第1級アミノ基を有する化合物と、少なくとも1種の第2級アミノ基を有する化合物と、少なくとも1種のカルボキシル基を有する化合物と、少なくとも1種のカルボン酸無水物基を有する化合物とから成る群から選択されることを特徴とする、膨張気体を保持するための膜。
【請求項43】
複合材料は、少なくとも1層のエチレン−ビニルアルコール共重合体の層と、少なくとも1層の熱可塑性ポリウレタンの層とをさらに含むことを特徴とする、請求項42に記載の膜。
【請求項44】
複合材料は、熱可塑性ポリウレタンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ゲル抑制添加剤とから成る外層を含み、内層は、エチレン−ビニルアルコールと熱可塑性ポリウレタンとの交互配置層を含むことを特徴とする、請求項43に記載の膜。
【請求項45】
10層以上の内層を含むことを特徴とする、請求項42に記載の膜。
【請求項46】
30層以上の内層を含むことを特徴とする、請求項42に記載の膜。
【請求項47】
ゲル抑制添加剤の分子量は、2000以下であることを特徴とする、請求項42に記載の膜。
【請求項48】
ゲル抑制添加剤の分子量は、200以下であることを特徴とする、請求項42に記載の膜。
【請求項49】
ゲル抑制添加剤は、2種以上のヒドロキシル基を有する化合物を含むことを特徴とする、請求項42に記載の膜。
【請求項50】
ゲル抑制添加剤は、2種以上のアミノ基を有する化合物を含むことを特徴とする、請求項42に記載の膜。
【請求項51】
ゲル抑制添加剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、分子量が400以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびジプロピレングリコールから成る群から選択されることを特徴とする、請求項44に記載の膜。
【請求項52】
ゲル抑制添加剤は、グリセロールを含むことを特徴とする、請求項44に記載の膜。
【請求項53】
請求項46に記載の膜を含むことを特徴とするブラダ。
【請求項54】
アッパーおよび靴底を含む靴において、靴底は、膨張気体を収容するための膨張可能な膜を1つ以上含み、少なくとも1つの膜は、多層複合材料を含み、複合材料は、熱可塑性ポリウレタンと、ヒドロキシル官能性共重合体と、ゲル抑制添加剤とのブレンド物を含む軟質層を少なくとも1層含み、ヒドロキシル官能性共重合体は、下記式
【化4】

(式中、nは0または1であり、R1およびR2は独立して水素、メチル、またはエチルであり、R3は水素またはC1-3アルキルである)
の繰返し単位を10モル%以上有する重合体を含み、
ゲル抑制添加剤は、少なくとも1種のヒドロキシル基を有する化合物と、少なくとも1種の第1級アミノ基を有する化合物と、少なくとも1種の第2級アミノ基を有する化合物と、少なくとも1種のカルボキシル基を有する化合物と、少なくとも1種のカルボン酸無水物基を有する化合物とから成る群から選択されることを特徴とする靴。
【請求項55】
ヒドロキシル官能性共重合体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする、請求項54に記載の靴。
【請求項56】
少なくとも1層のエチレン−ビニルアルコール共重合体の層、および少なくとも1層の熱可塑性ポリウレタンの層をさらに含むことを特徴とする、請求項54に記載の靴。
【請求項57】
複合材料は、熱可塑性ポリウレタンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ゲル抑制添加剤とのブレンド物から成る外層を含み、内層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体と熱可塑性ポリウレタンとの交互配置層を含むことを特徴とする、請求項54に記載の靴。
【請求項58】
10層以上の内層を含むことを特徴とする、請求項54に記載の靴。
【請求項59】
30層以上の内層を含むことを特徴とする、請求項54に記載の靴。
【請求項60】
ゲル抑制添加剤の分子量は、2000以下であることを特徴とする、請求項55に記載の靴。
【請求項61】
ゲル抑制添加剤の分子量は、200以下であることを特徴とする、請求項55に記載の靴。
【請求項62】
ゲル抑制添加剤は、2種以上のヒドロキシル基を有する化合物を含むことを特徴とする、請求項55に記載の靴。
【請求項63】
ゲル抑制添加剤は、2種以上のアミノ基を有する化合物を含むことを特徴とする、請求項55に記載の靴。
【請求項64】
ゲル抑制添加剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、分子量が400以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびジプロピレングリコールから成る群から選択されることを特徴とする、請求項55に記載の靴。
【請求項65】
ウレタン結合を含む重合体とブレンドされるとゲル形成傾向が低下する重合体組成物であって、
ゲル抑制添加剤と、
下記式
【化5】

(式中、R1およびR2は独立して水素、メチル、またはエチルであり、R3は水素またはC1-3アルキルである)
の繰返し単位を10モル%以上有する重合体とを含み、
ゲル抑制添加剤は、その分子量がヒドロキシル官能性共重合体の分子量よりも少なく、イソシアネートとよく反応する、少なくとも1種の官能基を含有することを特徴とする重合体組成物。
【請求項66】
ゲル抑制添加剤は、少なくとも1種のヒドロキシル基を有する化合物と、少なくとも1種の第1級アミノ基を有する化合物と、少なくとも1種の第2級アミノ基を有する化合物と、少なくとも1種のカルボキシル基を有する化合物と、少なくとも1種のカルボン酸無水物基を有する化合物とから成る群から選択されることを特徴とする、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
ゲル抑制添加剤は、ポリエステルポリオールを含むことを特徴とする、請求項66に記載の組成物。
【請求項68】
ゲル抑制添加剤は、ポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする、請求項66に記載の組成物。
【請求項69】
ゲル抑制添加剤の分子量は、2000以下であることを特徴とする、請求項66に記載の組成物。
【請求項70】
ゲル抑制添加剤の分子量は、200以下であることを特徴とする、請求項66に記載の組成物。
【請求項71】
重合体は、繰返し単位を30モル%以上有することを特徴とする、請求項66に記載の組成物。
【請求項72】
重合体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする、請求項66に記載の組成物。
【請求項73】
ゲル含有量が減少した重合体ブレンド物を調製する方法であって、ウレタン含有重合体と、請求項65に係る組成物とを結合することを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【公表番号】特表2007−504295(P2007−504295A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524636(P2006−524636)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/021552
【国際公開番号】WO2005/023036
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(595118113)ナイキ,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】