説明

熱可塑性樹脂組成物及びその成形品

【課題】熱可塑性樹脂に無機微粒子を均一に分散し、樹脂自体の透明性を損なうことなく紫外線遮断能、赤外線遮断能を付与した熱可塑性樹脂組成物及び、それを用いて得られる成形品を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、一次粒子系が0. 1μmである無機微粒子(B)0. 1〜30重量部、分散剤としてイミダゾリウム系、ピリジニウム系、アンモニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系から選ばれる1種又は2種以上である常温溶融塩(C)からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂に無機微粒子を均一に分散し、樹脂自体の透明性を損なうことなく紫外線遮断能、赤外線遮断能を付与した熱可塑性樹脂組成物及び、それを用いて得られる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチック成形品は、食品、飲料、トイレタリー用品、化粧品等の容器に代表される包装材料を初めとして、機械材料、電気・電子材料、光学材料、建装材料など、広い分野で使用されているが、紫外線照射により、樹脂の劣化、変色、機械強度の低下を伴うおそれがある。一方、樹脂成形品だけでなく、内容物、特に飲料、食品及び化粧品等は、紫外線を照射することにより変色、変質、薬剤の分解といった悪影響を受けるおそれがある。また、赤外線は、紫外線と比較すると光エネルギーは小さいが、熱的作用が大きく、物質に吸収されると熱を発生するため、飲料用・食品用容器及び包装等の内容物の温度上昇を招き、結果として品質劣化を引き起こすおそれがある。そのため、透明性を維持しながら紫外線、赤外線を遮断する方法として、透明な樹脂に紫外線吸収剤、赤外線吸収剤を練り込み、得られた樹脂組成物を成形する方法が行われてきた(特許文献1参照)。
【0003】
一般的に有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチレート系、置換アクリロニトリル系等の有機系紫外吸収剤が知られており、プラスチック成形品に練り込むことで、透明かつ紫外線遮断能を付与することが可能である。しかしながら、有機系紫外線吸収剤は、衛生上制約があり、熱可塑性樹脂等に添加する場合には、耐熱性に劣ることから成形時に分解、ブリードアウトが起こる。また、紫外線吸収機構が原因で成形品を着色してしまうという問題がある。こうした理由から、安全性に優れ耐熱性の高い酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤が有機系紫外線吸収剤の代替品として注目されている。
【0004】
しかしながら、酸化亜鉛粒子等の無機粒子は、熱可塑性樹脂との相溶性がないため、透明性が低下するという大きな問題がある。これを防ぐために、粒子径が可視光線の波長より短い、微細化した無機粒子が用いられている。しかし、無機微粒子は粒径が小さくなるほど粒子間力が大きくなることが知られており、サブミクロンの粒子では、粒子同士の凝集力は非常に強固となって、1次粒子が凝集した2次粒子の状態で分散されてしまう。プラスチック中に分散している無機化合物の粒径がμmオーダーになると、可視光が無機化合物により散乱し、その結果、プラスチック成形品の透明性を著しく低下させる問題が生じる。物質が光に対して透明であるためには、反射および吸収がないことに加え、散乱がないことが条件となる。粒子による散乱は、粒子サイズの大きい方から、幾何散乱、回折散乱、ミイー散乱、レイリー散乱に区分され、光の波長より十分小さい粒子による散乱は、レイリー散乱を考えればよい。この領域の散乱は、波長のおよそ1/2の時に最大となり、それ以下では粒径の6乗に比例して急激に小さくなる。従って、散乱を小さくするには光の波長の1/2すなわち、0.2μmよりはるかに小さい超微粒子が必要となる。屈折率が2前後の粒子の場合、およそ0.1μm以下に分散すればよいことが分かっており、0.1μm程度以下に微細化した無機粒子を用いた紫外線遮断が提案されている(特許文献2、3参照)。しかし、実情は凝集をおこさずに樹脂中に均一に分散させるには、単なる機械的混合だけでは困難なため、分散剤の使用が必要である。しかし、透明性、遮断能、機械物性を共に満足させる分散剤は示されていない。
【特許文献1】特開平07−196904
【特許文献2】特開平05−171130
【特許文献3】特開平09−208927
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、熱可塑性樹脂に無機微粒子を均一に分散でき、透明性を損なうことなく紫外線遮断能、赤外線遮断能を付与した熱可塑性樹脂組成物及び、それを用いて得られる成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、熱可塑性樹脂(A)、無機微粒子(B)、および、常温溶融塩(C)からなる熱可塑性樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、平均粒子径が0.1μm以下である無機微粒子(B)0. 1〜30重量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。
【0007】
第二の発明は、熱可塑性樹脂(A)が透明性の高いポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、または、生分解性樹脂である第一の発明の熱可塑性樹脂組成物である。
【0008】
第三の発明は、無機微粒子(B)が酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、インジウムドープ酸化錫、または、アンチモンドープ酸化錫から選ばれる1種又は2種以上からなることを特徴とする第一又は第二の発明の熱可塑性樹脂組成物である。
【0009】
第四の発明は、無機微粒子(B)と常温溶融塩(C)の重量比(R=無機微粒子/常温溶融塩)が0.1≦R≦10である第一ないし第三の発明のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物である。
【0010】
第五の発明は、常温溶融塩(C)がイミダゾリウム系、ピリジニウム系、アンモニウム系、ホスホニウム系、または、スルホニウム系から選ばれる1種又は2種以上からなることを特徴とする第一ないし第四の発明のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物である。
【0011】
第六の発明は、第一ないし第五の発明のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる成形品である。
【発明の効果】
【0012】

本発明は、熱可塑性樹脂に無機微粒子を均一に分散でき、樹脂自体の透明性を損なうことなく紫外線遮断能、赤外線遮断能を付与した熱可塑性樹脂組成物及び、それを用いて得られる成形品を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明詳細について説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)、無機微粒子(B)、常温溶融塩(C)を含有する。本発明の樹脂組成物は無機フィラーを比較的高濃度に含有し、成形時に被成形樹脂(ベース樹脂)で希釈されるマスターバッチであっても良いし、無機フィラーの濃度が比較的低く、被成形樹脂で希釈せずにそのままの組成で成形に供されるコンパウンドであっても良い。本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、マスターバッチが製造可能で透明性の高い樹脂であれば特に限定されることはなく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0014】
本発明で用いられる無機微粒子(B)は、一次粒子径が0.1μm以下の無機フィラーであれば特に限定はなく、金属、酸化物、複合酸化物等の粉末が対象となる。このうち金属のフィラーとしては鉄、銅、ニッケル、金、銀、アルミニウム等が挙げられる。酸化物のフィラーとしては、シリカ、アルミナ、チタニア、マグタイト、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化アンチモン、インジウムドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、ガリウムドープ酸化亜鉛等が挙げられる。水酸化物のフィラーとしては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0015】
無機微粒子の特性としては、一次粒子径が0. 1μm以下の無機フィラーであり、本発明の透明性を損なわずに紫外線遮断能、赤外線遮断能を求められている点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、インジウムドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫が好ましい。本発明で用いるnmサイズの微粒子は、低濃度でも粒子の全表面積が著しく増大し、粒子間距離は極度に小さくなるため界面エネルギーが増大し、相互作用が増大する。そのため、表面エネルギーを安定化させるために、粒子同士が互いに凝集する。さらに、粒子凝集のもう一つの大きな因子は粒子表面に存在する水分子である。粒子接触部に凝集した水分子はその表面張力と毛細管負圧により、静電気力より強い力で粒子同士を凝集させる。粒子径が小さくなるほど、粒子間に細かい間隙が増加し、水分の毛細管凝集が起こりやすくなる。フィラーの一次粒子がnmサイズであっても、ポリマーなどの分散媒体中での分散粒子サイズがμmサイズとなるのはこのような粒子同士の凝集によるものである。従って、粒子をより均一に分散させるために、粒子の表面処理により凝集しにくい表面に改質した無機微粒子が更に好ましい。
【0016】
本発明で用いられる常温溶融塩(C)は、室温付近で液体である塩類の総称であり、室温付近の広い範囲において液体で、また、室温付近の蒸気圧が極めて低いという特徴を有するカチオンとアニオンからなる塩である常温溶融塩(C)は、無機微粒子の分散剤として機能すると考えられる。常温溶融塩のカチオンとしては、イミダゾリウム、ピリジニウム、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムであり、例えば、ジアルキルイミダゾリウム、トリアルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキルピリジニウム、トリアルキルピリジニウム、1-フルオロアルキルピリジニウム、1-フルオロトリアルキルピリジニウム、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、トリアルキルスルホニウムなどが挙げられる。
【0017】
さらに詳細な具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム,1-プロピル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-テトラドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキサドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクタドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-オクチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム1,2-ジメチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-エチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-エチルイミダゾリウム、1-エチル3-オクチルイミダゾリウム、1-エチル-3-ブチルイミダゾリウム、1-エチル-3-ヘキシルイミダゾリウム、1-オクチル-3-エチルイミダゾリウム、1,2-ジエチル-3,4-ジメチルイミダゾリウム、1-フルオロピリジニウム、1-フルオロ-2,4,6-トリメチルピリジニウム、1-エチルピリジニウム、1-ブチルピリジニウム、1-ヘキシルピリジニウム、1-プロピル3-メチルピリジニウム、1-ブチル-4-メチルピリジニウム、1-ブチル-3-メチルピリジニウム、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウム、1-ヘキシル-3-メチルピリジウム、1-オクチル-4-メチルピリジニウム、1-オクチル-3-メチルピリジニウム、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウム、1-ブチル-3,5-ジメチルピリジニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、トリメチルヘプチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチル(2-メトキシエチル)アンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘプチルアンモニウム、ジメチルエチルプロピルアンモニウム、ジメチルブチルエチルアンモニウム、ジメチルエチルペンチルアンモニウム、ジメチルエチルヘキシルアンモニウム、ジメチルエチルヘプチルアンモニウム、ジメチルエチルノニルアンモニウム、ジメチルエチルヘプタデシルアンモニウム、ジメチルジプロピルアンモニウム、ジメチルブチルプロピルアンモニウム、ジメチルプロピルペンチルアンモニウム、ジメチルヘキシルプロピルアンモニウム、ジメチルヘプチルプロピルアンモニウム、ジメチルブチルペンチルアンモニウム、ジメチルブチルヘキシルアンモニウム、ジメチルブチルヘプチルアンモニウム、ジメチルヘキシルペンチルアンモニウム、ジエチルヘプチルメチルアンモニウム、ジヘキシルジメチルアンモニウム、ジプロピルブチルヘキシルアンモニウム、ジヘキシルジプロピルアンモニウム、ジエチルメチルプロピルアンモニウム、ジエチルメチル(2-メトキシエチル)アンモニウム、ジプロピルエチルメチルアンモニウム、ジエチルプロピルペンチルアンモニウム、ジエチルメチルペンチルアンモニウム、エチルメチルプロピルペンチルアンモニウム、ジプロピルメチルペンチルアンモニウム、ジブチルメチルペンチルアンモニウム、ジブチルヘキシルメチルアンモニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、トリイソブチルメチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリエチルスルホニウム等が挙げられる。
【0018】
常温溶融塩のアニオンとしては、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、メチルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミド、ビスシアノイミド、三酸化窒素、酢酸、トリフルオロメタンカルボン酸等が挙げられる。
【0019】
常温溶融塩の具体例としては、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホン酸、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホン酸、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート、1-メチルイミダゾリウムクロライド、1-メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3メチルイミダゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ドデシル-3イミダゾリウムアイオダイド、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアンアミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムナイトレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムオクチルサルフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトシレート、1-エチル-3メチルイミダゾリウムトシレート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、4-(3-ブチル-1-イミダゾリオ)-1-ブタンスルホン酸トリフレート、4-(3-ブチル-1-イミダゾリオ)-1-ブタンスルフォネート、1-アリール-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフォネート、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム2-(2-メトキシエトキシ)-エチルサルフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリムヘキサフルオロホスフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンするフォネート、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、3-メチル-1-プロピルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムクロライド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、トリブチルメチルアンモニウムメチルサルフェート、メチル-トリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルフォネート、テトラブチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムチオサリチレート、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、テトラブチルアンモニウムメタンスルフォネート、テトラブチルアンモニウムノナフルオロブタンスルフォネート、テトラブチルアンモニウムヘプタデカフルオロオクタンスルフォネート、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラオクチルアンモニウムクロライド、テトラペンチルアンモニウムチオシアネート、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィネート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムブロミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムクロライド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムデカノエート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムジシアンアミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリイソブチルメチルホスホニウムトシレート、3-(トリフェニルホスホニオ)プロパン-1-スルホン酸、3-(トリフェニルホスホニオ)プロパン-1-スルフォネート、テトラブチルホスホニウムp-トルエン」スルフォネート、トリエチルスルフォニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドが挙げられる。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、無機微粒子(B)0. 1〜30重量部、常温溶融塩(C)を含有する。常温溶融塩の添加割合は、無機微粒子の種類、常温溶融塩の種類により異なり、画一的に決められないが、好ましくは無機微粒子と常温溶融塩の重量比(R=無機微粒子/常温溶融塩)が0.1≦R≦10の範囲であり、更に好ましくは、0.1≦R≦5である。添加量の重量比が10より多いと無機微粒子の表面の濡れが乏しいため分散能が低くなる場合があり10以下が好ましく、0.1未満だと無機微粒子と常温溶融塩をプレミックスした際、スラリー混合物中の無機微粒子が長時間に亘る保管によって継時的に沈降する場合がるため0.1以上が好ましい。
【0021】
常温溶融塩は、上記の如く室温付近で液体であり、かつその蒸気圧が極めて低く、従来の分散剤として使用されている高級脂肪酸金属塩よりも耐熱性に優れている。また、樹脂に混合する場合、他の溶媒に溶解して添加する必要もなく、更に常温溶融塩のイオンまたは分子は、それが液体であることから、イオン間または分子間の相互作用が小さく、樹脂中において常温溶融塩のみで凝集する傾向が小さい。そのため、均一に分散、溶解され、無機微粒子の表面に常温溶融塩が吸着されることにより樹脂との界面張力を下げていると推察される。また、無機微粒子の表面に常温溶融塩が吸着されることにより、粒子表面が改質され、表面電荷が大きくなり、上記界面張力の低下に併せて、溶融樹脂中においてもDLVO理論に類似した作用が起こり、分散安定化に至っていると推察される。従って、成形加工温度の高いポリカーボネート樹脂等に常温溶融塩を配合した場合でも熱分解による着色や機能低下を生ずる事は少なく、また揮発成分による作業環境の悪化、人体への悪影響等の問題を起こさず、nmオーダーの微粒子においても優れた分散能を発揮することができる。
【0022】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造は特に限定されるものではなく、無機微粒子と常温溶融塩と熱可塑性樹脂とを、一般的な高速せん断型混合機であるヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて混合した後、二本ロール、三本ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸混練押出し機、二軸混練押出し機等を用いて溶融混練後、ペレット状に押出し成形されることによって製造される。また、無機微粒子と常温溶融塩をあらかじめアトライター、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ジェットミル、ホモジナイザー、Q型ミキサー、メカノフュージョン等で混合分散処理し粉体状、顆粒状、スラリー状、ペースト状等の任意の形状を得てから熱可塑性樹脂と混合、溶融混練して成形する方法や無機微粒子と常温溶融塩の混合物を液中ポンプにより押出機に注入する方法も可能である。
【0023】
このようにして得られた本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明性を損なわない範囲で、必要に応じて可塑剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、抗菌剤等の添加剤を配合することも可能である。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、機械物性試験(アイゾット衝撃強度)はASTM D-256の規格を用いて行い、透明性はJIS-K7105(1981年)に準じ、ヘーズにて評価し、結果を表1に示した。
[実施例1]
【0025】
熱可塑性樹脂(A)としてポリカーボネート樹脂(「ユーピロンS3000」三菱エンジニアリングプラスッチクス社製)77重量%、無機微粒子(B)として酸化亜鉛(「MZ505S」テイカ社製、一次粒子径0.02~0.03μm)20重量%、常温溶融塩(C)(「CIL-312」日本カーリット社製)3重量%を用い、無機微粒子と常温溶融塩をヘンシェルミキサーでプレミックスし、ミックス品と樹脂をタンブリングした後、二軸押出し機(日本プラコン社製)により熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[実施例2]
【0026】
(A)をポリエステル樹脂(「イースターPETG6763」イーストマンケミカル社製)に変更した以外は実施例1と同様に熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[実施例3]
【0027】
(A)をポリスチレン樹脂(「マイクロン679」)に変更した以外は実施例1と同様に熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[実施例4]
【0028】
熱可塑性樹脂(A)としてポリカーボネート樹脂(「ユーピロンS3000」三菱エンジニアリングプラスッチクス社製)85重量%、無機微粒子(B)として酸化亜鉛(「50W-LP2」堺化学社製、一次粒子径0.02μm)10重量%、常温溶融塩(C)(「CIL-312」日本カーリット社製)5重量%を用い、無機微粒子と常温溶融塩をヘンシェルミキサーでプレミックスし、ミックス品と樹脂をタンブリングした後、二軸押出し機(日本プラコン社製)により熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[実施例5]
【0029】
(B)をアンチモンドープ酸化錫(「SN-100P」石原産業社製、一次粒子径0.01~0.03μm)に変更した以外は実施例1と同様に熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[実施例6]
【0030】
(B)をインジウムドープ酸化錫(「ITO」ジェムコ社製、0.03μm)に変更した以外は実施例1と同様に熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[実施例7]
【0031】
(A)/(B)/(C)の添加重量比を91/1/8に変更した以外は実施例4と同様に熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[実施例8]
【0032】
(C)を(「1‐ブチル‐3‐メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート」アルドリッチ社製) に変更した以外は実施例4と同様に熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[実施例9]
【0033】
(C)を(「トリブチルメチルアンモニウムメチルフルフェート」アルドリッチ社製) に変更した以外は実施例4と同様に熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[実施例10]
【0034】
(C)を(「トリヘキシルテトラデシルホスホニウムテトラフルオロボレート」アルドリッチ社製) に変更した以外は実施例4と同様に熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[実施例11]
【0035】
(C)を(「トリエチルスルホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド」アルドリッチ社製) に変更した以外は実施例4と同様に熱可塑性樹脂組成物を作製した。
【比較例】
【0036】
[比較例1]
【0037】
実施例1において、常温溶融塩を添加せず、熱可塑性樹脂(A)としてポリカーボネート樹脂(「ユーピロンS3000」三菱エンジニアリングプラスチックス社製)80重量%、無機微粒子(B)として酸化亜鉛(「MZ505S」テイカ社製、一次粒子径0.02~0.03μm)20重量%に代え、無機微粒子と樹脂をタンブリングした後、二軸押出し機(日本プラコン社製)により熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[比較例2]
【0038】
実施例1において、常温溶融塩を添加せず、熱可塑性樹脂(A)としてポリカーボネート樹脂(「ユーピロンS3000」三菱エンジニアリングプラスチックス社製)90重量%、無機微粒子(B)として酸化亜鉛(「MZ505S」テイカ社製、一次粒子径0.02~0.03μm)10重量%に代え、無機微粒子と樹脂をタンブリングした後、二軸押出し機(日本プラコン社製)により熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[比較例3]
【0039】
実施例2において、常温溶融塩を添加せず、熱可塑性樹脂(A)としてポリエステル樹脂(「PETG6763」イーストマンケミカル社製)80重量%、無機微粒子(B)として酸化亜鉛(「MZ505S」テイカ社製、一次粒子径0.02~0.03μm)20重量%に代え、無機微粒子と樹脂をタンブリングした後、二軸押出し機(日本プラコン社製)により熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[比較例4]
【0040】
実施例3おいて、常温溶融塩を添加せず、熱可塑性樹脂(A)としてポリスチレン樹脂(「マイクロン679」)80重量%、無機微粒子(B)として酸化亜鉛(「MZ505S」テイカ社製、一次粒子径0.02~0.03μm)20重量%に代え、無機微粒子と樹脂をタンブリングした後、二軸押出し機(日本プラコン社製)により熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[比較例5]
【0041】
実施例5おいて、常温溶融塩を添加せず、熱可塑性樹脂(A)としてポリカーボネート樹脂(「ユーピロンS3000」)80重量%、無機微粒子(B)としてアンチモンドープ酸化錫(「SN-100P」石原産業社製、一次粒子径0.01~0.03μm)20重量%に代え、無機微粒子と樹脂をタンブリングした後、二軸押出し機(日本プラコン社製)により熱可塑性樹脂組成物を作製した。
[比較例6]
【0042】
実施例6おいて、常温溶融塩を添加せず、熱可塑性樹脂(A)としてポリカーボネート樹脂(「ユーピロンS3000」三菱エンジニアリングプラスチック社製)80重量%、無機微粒子(B)としてインジウムドープ酸化錫(「ITO」ジェムコ社製、一次粒子径0.03μm)20重量%に代え、無機微粒子と樹脂をタンブリングした後、二軸押出し機(日本プラコン社製)により熱可塑性樹脂組成物を作製した。
【0043】
実施例で得られた試験片を以下の基準で評価した。
【0044】
[機械物性評価]
(1)成形品の機械物性を以下の基準で評価した。
【0045】
実施例1〜11、比較例1〜4で得られた熱可塑性樹脂組成物とベース樹脂であるポリカーボネート樹脂(「ユーピロンS3000」三菱エンジニアリングプラスチック社製)、ポリエステル樹脂(「PETG6763」イーストマンケミカル社製)、ポリスチレン樹脂(「マイクロン679」)を用いて、無機微粒子濃度0.3%に配合し、名機M-50AII-SJ型射出成形機にてプレート、試験片を作成した。また、ベース樹脂たるポリカーボネート樹脂(「ユーピロンS3000」三菱エンジニアリングプラスチックス社製)、ポリエステ樹脂(「PETG6763」イーストマンケミカル社製)、ポリスチレン樹脂(「マイクロン679」)のみも射出成形し、得られた成形品のアイゾット衝撃強度を求めた。
【0046】
[透明性評価]
(2)成形品の透明性を以下の基準で評価した。
【0047】
BYK−Gardner製ヘーズメーターを用いて、厚さ1mmの成形プレートのヘーズと全光線透過率を測定した。ここでヘーズとは透過した光のうち拡散した光の割合を示すもので、その試料を通して物を見た場合のかすむ度合いを示し、ヘーズ値が高い程かすんで見える。また、全光線透過率は数値が高いほど透明性が高いことを示す。
【0048】
[紫外線/赤外線遮断能]
(3)成形品の紫外線/赤外線遮断能を以下の基準で評価した。
【0049】
島津製作所製分光光度計UV-3150を用いて、厚さ1mmの成形プレートの透過率を波長1200〜200nmの範囲で赤外線吸収層側から特定波長の光を照射し、室内の空気の透過率をベースとして測定する。紫外線領域での透過率は波長360nmでの5つの試験片での平均値とする。可視光領域での透過率は波長400〜750nm領域の5試験片の平均値とする。赤外域での透過率は、波長1100nmでの5試験片の平均値とする。赤外線遮断能は実施例5、6、比較例5、6のみ測定。
【0050】
【表1】

【0051】
成形品の機械物性、透明性、紫外/赤外線遮断能評価の結果、分散剤として常温溶融塩を使用した熱可塑性樹脂組成物の成形品は、分散剤を使用しない熱可塑性樹脂組成物による成形品同等、又はそれ以上の機械物性、遮断能を保持したまま、透明性の向上が確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)、無機微粒子(B)、および、常温溶融塩(C)からなる熱可塑性樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、平均粒子径が0.1μm未満である無機微粒子(B)0. 1〜30重量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂(A)がポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、または、生分解性樹脂である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
無機微粒子(B)が酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、インジウムドープ酸化錫、または、アンチモンドープ酸化錫から選ばれる1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
無機微粒子(B)と常温溶融塩(C)の重量比(R=無機微粒子/常温溶融塩)が0.1≦R≦10である請求項1ないし3いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
常温溶融塩(C)がイミダゾリウム系、ピリジニウム系、アンモニウム系、ホスホニウム系、または、スルホニウム系から選ばれる1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる成形品。

【公開番号】特開2009−96957(P2009−96957A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272411(P2007−272411)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】