説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】耐熱老化性、特に薄肉耐熱老化性に優れ、押出加工性や押出成形品の外観に優れた、電気・電子部品等に好適な熱可塑性樹脂組成物の提供。
本発明は、耐熱老化性、特に薄肉耐熱老化性に優れ、押出加工性や押出成形品の外観に優れた熱可塑性樹脂組成物とそれを用いたフィルムおよび成形体に関する。
【解決手段】 ポリフェニレンエーテル、リン元素とフェノール性水酸基を有する化合物およびイオウ系安定剤を含む熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱老化性、特に薄肉耐熱老化性に優れ、押出加工性や押出成形品の外観に優れた熱可塑性樹脂組成物とそれを用いたフィルムおよび成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテルは機械的性質・電気的性質及び耐熱性が優れており、しかも寸法安定性に優れるため幅広い用途で使用されているが、単独では成形加工性に劣っており、これを改良するためにポリスチレン等を配合したポリマーアロイとして様々な検討がなされてきた。
これらポリフェニレンエーテル系アロイの耐熱老化性、加工安定性を改良する技術として、チオエーテル系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、ホスファイト系抗酸化剤を配合する技術(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)や、特定構造のイオウ化合物とフェノール化合物を配合する技術(例えば、特許文献3参照。)、特定構造を有する安定剤と特定構造を有する亜リン酸エステル類を配合する技術(例えば、特許文献4参照。)等が開示されている。しかしながら、これらの技術では、薄肉成形品の耐熱老化性については十分ではなく、また押出加工性や押出成形品の外観という観点でも十分ではなかった。
【特許文献1】特開平3−215552号公報
【特許文献2】特開平7−32454号公報
【特許文献3】特開平4−142365号公報
【特許文献4】特開2003−292764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、電気・電子部品等に好適であり、上述した技術では達成し得なかった、耐熱老化性、特に薄肉耐熱老化性に優れ、押出加工性や押出成形品の外観に優れた熱可塑性樹脂組成物とそれを用いたフィルムおよび成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ポリフェニレンエーテル、リン元素とフェノール性水酸基を有する化合物およびイオウ系安定剤を含む熱可塑性樹脂組成物が、これら特性に優れた熱可塑性樹脂組成物及びフィルム、成形体を得るために有効であることを見出し、本発明に到達した。
次に、本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
【0005】
(1)(A)ポリフェニレンエーテル、(B)リン元素とフェノール性水酸基を有する化合物および(C)イオウ系安定剤を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(2)さらに(D)ヒンダードフェノール系安定剤を含む上記(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(3)(B)成分が、フェノール性水酸基を有する亜リン酸エステル類である上記(1)、(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(4)(C)成分が、イオウ元素に少なくとも1種以上のアルキル基が結合しており、該アルキル基の少なくとも1つが、C4以上のアルキル基である上記(1)〜(3)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(5)(C)成分が、テトラキス〔メチレン−3−(ラウリルチオ)プロピオネート〕メタン、テトラキス〔メチレン−3−(ミリスチルチオ)プロピオネート〕メタン、テトラキス〔メチレン−3−(ステアリルチオ)プロピオネート〕メタン、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ステアリルチオメチル)−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−{4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ}フェノールから選ばれる1種以上である上記(1)〜(4)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(6)(A)成分100質量部に対し、(B)成分0.1〜3質量部、(C)成分0.1〜3質量部を含む上記(1)〜(5)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(7)さらに(E)エラストマーを含む上記(1)〜(6)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(8)(E)成分が、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体である上記(7)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(9)(E)成分が、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を、水素添加反応して得られる水添ブロック共重合体である上記(7)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(10)(F)(A)成分以外の熱可塑性樹脂を含み、(A)成分と(F)成分の合計100質量部に対し、(A)成分1〜99質量%、(F)成分1〜99質量%である上記(1)〜(9)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(11)(F)成分が、芳香族ビニル化合物重合体、芳香族ビニル化合物共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド66/6、芳香族環含有ポリアミド、脂肪族環含有ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン及びポリサルフォンよりなる群から選ばれる1種以上である上記(10)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(12)(F)成分が、芳香族ビニル化合物共重合体、芳香族環含有ポリアミド、脂肪族環含有ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン及びポリサルフォンよりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする上記(10)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(13)(F)成分が、芳香族環含有ポリアミド、脂肪族環含有ポリアミド及び液晶ポリマーよりなる群から選ばれる1種以上である上記(10)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(14)(F)成分が、芳香族ビニル化合物共重合体である芳香族ビニル−マレイミド系共重合体であることを特徴とする上記(10)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(15)さらに(G)難燃剤を含む上記(1)〜(14)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(16)(G)成分が、ホスフィン酸塩類である上記(15)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(17)(A)成分が、少なくとも(a−1)2,6−ジメチルフェノールと(a−2)2,3,6−トリメチルフェノールを含むフェノール類を重合した共重合体を含み、(A)成分中の(a−1)と(a−2)の合計100質量%に対し、(a−1)が60〜90質量%、(a−2)が10〜40質量%である上記(1)〜(16)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(18)(A)成分が、10,000以下の分子量が全分子量の総和に対して15質量%以下である上記(1)〜(17)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(19)(A)成分が、フェノール性水酸基をフェニレンエーテルユニットの100個に対して1.80個以下含有する上記(1)〜(18)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(20) 厚みが150μm以下のフィルムを成形するための成形用材料であることを特徴とする上記(1)〜(19)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(21)上記(1)〜(19)に記載の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム。
(22)上記(1)〜(19)に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐熱老化性、特に薄肉耐熱老化性に優れ、押出加工性や押出成形品の外観に優れた熱可塑性樹脂組成物とそれを用いたフィルムおよび成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明で使用することのできる各成分について詳しく述べる。
(A)成分のポリフェニレンエーテルとは、式(1)の構造単位からなる、ホモ重合体及び/または共重合体である。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、Oは酸素原子、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、又はハロ炭化水素オキシ(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表わす。〕
【0010】
本発明のポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載されてあるような2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
【0011】
ポリフェニレンエーテルとして2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体を使用する場合の各単量体ユニットの比率は、ポリフェニレンエーテル共重合体全量を100質量%としたときに、60〜90質量%の2,6−ジメチルフェノールと、10〜40質量%の2,3,6−トリメチルフェノールからなる共重合体が好ましい。2,3,6−トリメチルフェノールの割合が耐熱性の観点から10質量%以上であり、重合度の観点から40質量%以下である。より好ましくは、60〜85質量%の2,6−ジメチルフェノールと、15〜40質量%の2,3,6−トリメチルフェノールからなる共重合体がより好ましく、70〜85質量%の2,6−ジメチルフェノールと、15〜30質量%の2,3,6−トリメチルフェノールからなる共重合体がさらに好ましい。
これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、またはこれらの混合物である。
【0012】
本発明で使用することのできるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜0.70dl/gの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60dl/gの範囲、より好ましくは0.40〜0.55dl/gの範囲である。
【0013】
本発明においては、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドしたものであっても構わない。例えば、還元粘度0.45dl/g以下のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルの混合物、還元粘度0.40dl/g以下の低分子量ポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルの混合物等が挙げられるが、もちろん、これらに限定されることはない。
【0014】
熱可塑性樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルが、10,000以下の分子量の分子の質量が全分子の質量に対して、15質量%以下であることが薄肉耐熱老化性の観点から好ましい。12質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0015】
これらポリフェニレンエーテルの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。その例としては、昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21(カラム:昭和電工(株)製K−805Lを2本直列、カラム温度:40℃、溶媒:クロロホルム、溶媒流量:1.0ml/min、サンプル濃度:0.1質量%クロロホルム溶液)で標準ポリスチレン(標準ポリスチレンの分子量は、3,650,000、2,170,000、1,090,000、681,000、204,000、52,000、30,200、13,800、3,360、1,300、550)を用いて検量線を作成し、測定する。検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254mn、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmである。
【0016】
該組成物中のポリフェニレンエーテルの分子量を測定する方法として、押出時に得られたストランド、ペレット、あるいは成形品を、そのままクロロホルムに溶解しても良いし、特にポリアミドとポリフェニレンエーテルのアロイのように、海島構造をしており、ポリフェニレンエーテルが島相になっている場合は、ミクロトーム等を用いて約20μm程度の薄膜を切り出してからクロロホルムに溶解しても良いし、凍結粉砕等で細かく粉砕してからクロロホルムに溶解しても良い。
【0017】
熱可塑性樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルが、フェノール性水酸基をフェニレンエーテルユニットの100個に対して1.80個以下含有することが好ましい。この値は、小さければ小さいほど、薄肉耐熱老化性に優れる。この観点から、この値は、1.50個以下が好ましく、さらに1.20個以下が好ましく、とくにより好ましくは、1.10個以下が好ましい。
【0018】
このフェノール性水酸基は、EHUD SH CHORI等の方法(ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマーズ・サイエンス;アプライド・ポリマー・シンポジウム、34、103〜117頁、(1978)に記載)に従って定量される。すなわち、押出時に得られたストランドあるいはペレット、あるいは成形品をまず30℃のクロロホルムに溶解し、不溶分を取り除き、溶液を大量のメタノールに注入する(再沈殿)ことにより、粉末を得、乾燥させる。ついで、塩化メチレンに加温しながら溶解させ、冷凍庫内(−5℃)に一晩静置することにより、析出物を得、これをろ過し、析出物を冷塩化メチレンにて洗浄した後、メタノールで洗浄し、140℃にて1時間真空乾燥することによりポリフェニレンエーテルを得る。このポリフェニレンエーテルを正確に秤量し(W(mg))、25mlの塩化メチレンに溶解し、10重量%濃度のテトラエチルアンモニウムヒドロキサイドのエタノール溶液を20μlを加え、UV分光光度計(日立(株)社製、U−3210)を用いて、318nmの吸光度(Abs)を測定し、次の式に基づいて算出できる。
n(OH)=63.9×(Abs)/(W)
(ただし、n(OH):フェニレンエーテルユニットの100個に対してのフェノール性水酸基の個数)
【0019】
ポリフェニレンエーテルは公知の方法で得られるものを用いることができ、その製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、フェノール性化合物を直接酸化重合する方法、フェノール性化合物を超臨界での炭酸ガスを溶媒として用い酸化重合する方法、フェノール性化合物を良溶媒、及び/または貧溶媒からなる混合溶媒中で酸化重合する方法等によって得ることができる。混合溶媒中で酸化重合する方法においては、良溶媒と貧溶媒の比率を選ぶことによって、重合終結時も反応溶媒中にポリフェニレンエーテルが溶解した状態の溶液重合にもなるし、貧溶媒の比率を大きくすることで反応の進行とともに重合体が反応溶媒中に溶解しきれなくなり粒子として析出する沈殿析出重合にもなる。ここでいう良溶媒とは、従来既知の方法で得られるポリ(2,6−ジメチルフェニレン)エーテルを溶解できる溶媒であり、貧溶媒とは従来既知の方法で得られるポリ(2,6−ジメチルフェニレン)エーテルを全く溶解しないか、ほとんど溶解しない溶媒である。中でも、生産性の観点から混合溶媒中で酸化重合する方法が好ましく、さらに、分子量分布が狭いポリマーにすることが容易であるため、沈殿析出重合が好ましい。
【0020】
また、本発明で使用できるポリフェニレンエーテルは、全部又は一部が変性されたポリフェニレンエーテルであっても構わない。
ここでいう変性されたポリフェニレンエーテルとは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物、又はエポキシ樹脂で変性されたポリフェニレンエーテルを指す。
【0021】
該変性されたポリフェニレンエーテルの製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下、非存在下で100℃以上、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の範囲の温度でポリフェニレンエーテルを溶融させることなく変性化合物と反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度以上360℃以下の範囲の温度で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の温度で、ポリフェニレンエーテルと変性化合物を溶液中で反応させる方法等が挙げられ、これらいずれの方法でも構わない。
【0022】
次に分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物について具体的に説明する。
分子内に炭素−炭素二重結合とカルボン酸基、酸無水物基を同時に有する変性化合物としては、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸及びこれらの酸無水物などが挙げられる。特にフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が良好で、フマル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
また、これら不飽和ジカルボン酸のカルボキシル基の、1個または2個のカルボキシル基がエステルになっているものも使用可能である。
【0023】
分子内に炭素−炭素二重結合とグリシジル基を同時に有する変性化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、エポキシ化天然油脂等が挙げられる。
これらの中でグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレートが特に好ましい。
分子内に炭素−炭素二重結合と水酸基を同時に有する変性化合物としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ペンタジエン−3−オールなどの一般式C2n−3OH(nは正の整数)の不飽和アルコール、一般式C2n−5OH、C2n−7OH(nは正の整数)等の不飽和アルコール等が挙げられる。
【0024】
エポキシ樹脂としては、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジグリシジルヒダントレイン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン等が挙げられ、中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
上述した変性化合物は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0025】
変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の変性化合物の添加量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.1〜80質量部が好ましい。
ラジカル開始剤を用いて変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の好ましいラジカル開始剤の量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.001〜1質量部である。
また、変性されたポリフェニレンエーテル中の変性化合物の付加率は、0.01〜30質量%が好ましい。より好ましくは0.1〜20質量%である。
該変性されたポリフェニレンエーテル中には、未反応の変性化合物及び/または、変性化合物の重合体が残存していても構わない。
更に、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な公知の添加剤等もポリフェニレンエーテル100質量部に対して10質量部未満の量で添加しても構わない。
【0026】
(B)成分のリン元素とフェノール性水酸基を有する化合物とは、同一分子内にリン元素とフェノール性水酸基を有する化合物である。中でもリン元素が亜リン酸エステル類として分子内にあることが好ましい。亜リン酸エステル構造をしていることで、耐熱老化性に対する効果が絶大になる。また、フェノール性水酸基に関しては、ヒンダードフェノール性の水酸基であることが好ましい。具体的な例としては、特開平10−273494号公報に例示される化合物等が挙げられ、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェビンが特に好ましい。
【0027】
これらリン元素とフェノール性水酸基を有する化合物は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対し、0.1〜3質量部であることが好ましい。耐熱老化性の観点から0.1質量部以上であり、押出加工性の観点から3質量部以下である。より好ましくは0.2〜2質量部であり、さらに好ましくは0.3〜1質量部である。
【0028】
また、本発明においては、フェノール性水酸基を持たないリン系安定剤を併用することも可能である。具体的な例としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0029】
(C)成分のイオウ系安定剤とは、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ビス〔2−メチル−4−{3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ}−5−t−ブチルフェニル〕スルフィド、テトラキス〔メチレン−3−(ラウリルチオ)プロピオネート〕メタン、テトラキス〔メチレン−3−(ミリスチルチオ)プロピオネート〕メタン、テトラキス〔メチレン−3−(ステアリルチオ)プロピオネート〕メタン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ステアリルチオメチル)−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−{4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ}フェノール、4,4−チオビス(3−メチル−5−t−ブチルフェノール)、フェノチアジン、ジブチルジチオカルバミン酸金属塩等が挙げられる。これらの中でも、イオウ元素に少なくとも1種以上のアルキル基が結合しており、該アルキル基の少なくとも1つが、C4以上のアルキル基である化合物が薄肉耐熱老化性の観点から好ましく、C6以上のアルキル基がより好ましく、C10以上のアルキル基がさらに好ましい。好ましいイオウ系安定剤としては、テトラキス〔メチレン−3−(ラウリルチオ)プロピオネート〕メタン、テトラキス〔メチレン−3−(ミリスチルチオ)プロピオネート〕メタン、テトラキス〔メチレン−3−(ステアリルチオ)プロピオネート〕メタン、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ステアリルチオメチル)−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−{4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ}フェノールが挙げられる。
【0030】
これらイオウ系安定剤は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対し、0.1〜3質量部であることが好ましい。耐熱老化性の観点から0.1質量部以上であり、押出加工性の観点から3質量部以下である。より好ましくは0.2〜2質量部であり、さらに好ましくは0.3〜1質量部である。
【0031】
さらに、(D)成分として、ヒンダードフェノール系安定剤を含むことが好ましい。具体的には、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンジブチルヒドロキシトルエン、4,4′−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2′−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等を用いることができる。
【0032】
これらヒンダードフェノール系安定剤は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対し、0.05〜3質量部であることが好ましい。耐熱老化性の観点から0.05質量部以上であり、押出加工性の観点から3質量部以下である。より好ましくは0.1〜2質量部であり、さらに好ましくは0.2〜1質量部である。
【0033】
本発明においては、(E)エラストマーをさらに添加することができる。好ましいエラストマーとしては、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体が挙げられる。
【0034】
本発明の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上が芳香族ビニル化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0035】
この場合、例えば芳香族ビニル化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物もしくは他の化合物が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50質量%が芳香族ビニル化合物より形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
【0036】
芳香族ビニル化合物の具体例としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
【0037】
ブロック共重合体の共役ジエン化合物ブロック部分のミクロ構造は1,2−ビニル含量もしくは1,2−ビニル含量と3,4−ビニル含量の合計量5〜80%が好ましく、さらには10〜50%が好ましく、15〜40%が最も好ましい。
【0038】
本発明におけるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック[A]と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック[B]が、A−B型、A−B−A型、A−B−A−B型、A−B−A−B−A型、(A−B−)−Si型から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体である事が好ましく、これらの混合物であっても構わない。これらの中でもA−B型、A−B−A型、又はこれらの混合物がより好ましく、A−B−A型がもっとも好ましい。
【0039】
また、本発明で使用することのできる芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体は、水素添加されたブロック共重合体であることがより好ましい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合を0を越えて100%の範囲で制御したものをいう。該水素添加されたブロック共重合体の好ましい水素添加率は80%以上であり、最も好ましくは98%以上である。
これらブロック共重合体は水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体の混合物としても問題なく使用可能である。
【0040】
また、これら芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体は、本発明の趣旨に反しない限り、結合形式の異なるもの、芳香族ビニル化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2−結合ビニル含有量もしくは1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量の異なるもの、芳香族ビニル化合物成分含有量の異なるもの等を混合して用いても構わない。
【0041】
また、本発明で使用するブロック共重合体は、全部又は一部が変性されたブロック共重合体であっても構わない。
ここでいう変性されたブロック共重合体とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたブロック共重合体を指す。
【0042】
該変性されたブロック共重合体の製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でブロック共重合体の軟化点温度以上250℃以下の範囲の温度で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶液中で反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶融させることなく反応させる方法等が挙げられ、これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法が好ましく、更には(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行う方法が最も好ましい。
ここでいう分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物とは、変性されたポリフェニレンエーテルで述べた変性化合物と同じものが使用できる。
本発明におけるエラストマーの配合量としては、ポリフェニレンエーテル100質量部に対し、50質量部未満であることが好ましい。
【0043】
(F)(A)成分以外の熱可塑性樹脂とは、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂である。これは、芳香族ビニル化合物重合体、芳香族ビニル化合物共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド66/6、芳香環含有ポリアミド、脂肪族環含有ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォンから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。より好ましくは、芳香族ビニル化合物共重合体、芳香環含有ポリアミド、脂肪族環含有ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォンから選ばれる少なくとも1種以上である。さらに好ましくは、芳香族ビニル化合物共重合体、芳香環含有ポリアミド、脂肪族環含有ポリアミド、液晶ポリマーから選ばれる少なくとも1種以上である。
【0044】
ここで、芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等のうちから1種又は2種以上を選択でき、中でもスチレンが好ましい。また、芳香族ビニル化合物重合体の具体例としては、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ハイインパクトポリスチレンなどが挙げられる。
【0045】
芳香族ビニル化合物共重合体としては、例えば、上述したような芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物を共重合して得られる共重合体である。共重合可能な化合物としては、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体、不飽和ジカルボン酸無水物、その他ビニル化合物等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸イミド誘導体の具体例としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−アルキルマレイミド、及びN−アリールマレイミド(アリール基としては、例えばフェニル、クロルフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリブロモフェニル等が挙げられる)等のマレイミド誘導体が挙げられ、これらの中で特にN−フェニルマレイミドが好ましい。また、これらの誘導体は2種以上混合して用いることもできる。
不飽和ジカルボン酸無水物の具体例としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の無水物が挙げられ、これらの中では特に無水マレイン酸が好ましい。
【0046】
その他ビニル化合物の具体例としては、ブタジエン、アクリロニトリル、メタクリロニリル等のシアン化ビニル化合物、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル化合物、メチルメタクリル酸、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル化合物、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸化合物、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド等の化合物が挙げられ、これらの中では特にアクリロニトリルが好ましい。
【0047】
芳香族ビニル化合物共重合体の好ましい例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、芳香族ビニル−マレイミド系共重合体等が挙げられ、耐熱性の観点から芳香族ビニル−マレイミド系共重合体であり、(1)芳香族ビニル化合物、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体および必要に応じてその他共重合可能なビニル化合物からなる混合物を共重合させる方法、(2)芳香族ビニル化合物、不飽和ジカルボン酸無水物及び必要に応じてその他共重合可能なビニル化合物からなる混合物を共重合させた後、アンモニア及び/又は第一級アミンを反応させて酸無水物基をイミド基に変換させる方法によって得ることができる。尚、(1)の製法においては、その他共重合可能なビニル化合物の例として不飽和ジカルボン酸無水物も含まれ、(2)の製法においては、イミド基へ変換されずに酸無水物基が残ることも問題はなく、結果、酸無水物基を共重合体中へ導入することも可能である。
【0048】
(2)の製法で用いるアンモニアや第一級アミンは無水または水溶液のいずれの状態であってもよく、第一級アミンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアルキルアミン、アニリン、トルイジン、クロルアニリン、メトキシアニリン、トリブロモアニリン等の芳香族アミンが挙げられ、これらの中で特にアニリンが好ましい。
【0049】
これら芳香族ビニル化合物共重合体の重合方法としては、公知の重合方法を用いることができ、(1)の製法の場合は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合が好ましく、(2)の製法の場合は、塊状−懸濁重合、溶液重合、塊状重合が好ましい。
【0050】
これら芳香族ビニル−マレイミド系共重合体としては、スチレン/N−フェニルマレイミド共重合体、スチレン/N−フェニルマレイミド/無水マレイン酸共重合体、スチレン/N−フェニルマレイミド/アクリロニトリル共重合体が好適に使用できる。
芳香族ビニル−マレイミド系共重合体は、芳香族ビニル化合物30〜70質量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体30〜70質量%及びその他共重合可能なビニル化合物0〜20質量%からなる共重合体であることが好ましく、より好ましくは芳香族ビニル化合物40〜69.99質量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体30〜59.99質量%及びその他共重合可能なビニル化合物0.01〜15質量%であり、更に好ましくは、芳香族ビニル化合物40〜69.9質量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体30〜59.9質量%及びその他共重合可能なビニル化合物0.1〜15質量%である。芳香族ビニル化合物の割合が30質量%未満であると、ポリフェニレンエーテルとの相溶性が悪くなり、引張伸度の低下を招き、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体の割合が30質量%未満であると、耐熱性が低下する。また、その他共重合可能なビニル化合物の割合が20質量%を超えると、耐熱性が低下したり、熱安定性が悪くなる。
【0051】
芳香族ビニル化合物共重合体は、重量平均分子量70,000〜250,000であることが好ましい。ここでいう重量平均分子量は、ポリスチレンを標準試料として換算した分子量であり、テトラヒドロフランを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により算出できる。重量平均分子量は、引張伸度の観点から70,000以上であり、流動性の観点から250,000以下である。より好ましくは、100,000〜250,000、さらに好ましくは100,000〜200,000である。また、これら共重合体は、1種の芳香族ビニル化合物共重合体でもよく、重量平均分子量が異なる2種以上の芳香族ビニル化合物共重合体を組み合わせた混合物で、その混合物の重量平均分子量が70,000〜250,000にあるものであってもよい。
【0052】
ポリフェニレンエーテルとポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂の好ましい配合比は、ポリフェニレンエーテルとポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して、ポリフェニレンエーテル1〜99質量%、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂1〜99質量%であり、より好ましくは、該熱可塑性樹脂組成物成形品の低熱収縮の観点から、ポリフェニレンエーテル20〜99質量%、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂1〜80質量%であり、さらに好ましくは、ポリフェニレンエーテル25〜97質量%、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂3〜75質量%である。
【0053】
本発明においては、さらに(G)難燃剤を添加することができる。好ましい難燃剤としては、環状窒素化合物、リン系難燃剤、シリコーン、籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体、シリカが挙げられる。
環状窒素化合物とは、窒素元素を含有する環状の有機化合物である。具体的にはメラミン誘導体である、メラミン、メレム、メロンが好ましく用いられる。中でも揮発性の観点から、メレム、メロンが好ましい。
【0054】
リン系難燃剤としては、赤燐、リン酸エステル化合物、フォスファゼン化合物、ホスフィン酸塩類等が挙げられる。中でもリン酸エステル化合物、ホスフィン酸塩類がより好ましい。
リン酸エステル化合物としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのモノ有機リン化合物や有機リン化合物オリゴマーが挙げられるが、有機リン化合物オリゴマーが特に好ましい。
有機リン化合物オリゴマーの特に好ましい例としては、下記式(2)で表される化合物群より選ばれるものを挙げることができる。
【0055】
【化2】

【0056】
(式中、Q、Q、Q、Qは、炭素数1から6の アルキル基または水素を表し、nは1以上の整数、m、m、m、mは0から3の整数を示し、Xは以下の式(3)のいずれかから選択される。)
【化3】

(式中、S、S、Sはメチル基または水素を表す。n、n、nは0から2の整数を示す。)
具体的には、大八化学社製のCR−741、CR−747、CR−733Sなどが好適である。
【0057】
ホスフィン酸塩としては、下記式(4)で表されるホスフィン酸塩及び/又は下記式(5)で表されるジホスフィン酸塩、またはこれらの縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のホスフィン酸塩類が好ましい。
【0058】
【化4】

【0059】
【化5】

【0060】
(式中、R及びRは、同一か又は異なり、直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルキル及び/又はアリールもしくはフェニルであり、Rは、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキレン、C〜C10−アリーレン、C〜C10−アルキルアリーレン又はC〜C10−アリールアルキレンであり、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、mは2又は3であり、nは1〜3であり、xは1又は2である。)
【0061】
ホスフィン酸塩は、本発明の効果を損ねない範囲であれば、如何なる組成で混合されていても構わないが、難燃性、モールドデポジットの抑制の観点から、上記式(4)で表されるホスフィン酸塩を90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、最も好ましくは98質量%以上含んでいる事が好ましい。
【0062】
本発明において、好ましく使用可能なホスフィン酸の具体例としては、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0063】
また好ましく使用可能な金属成分としてはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び/又はプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオンから選ばれる1種以上である。
【0064】
ホスフィン酸塩類の好ましく使用可能な具体例としては、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
【0065】
特に難燃性や、モールドデポジットの抑制の観点からジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましい。中でもジエチルホスフィン酸アルミニウムが特に好ましい。
【0066】
シリコーンは、オルガノシロキサンポリマーのことで、直鎖構造のもの、架橋構造のもの、あるいはそれらがある割合で構成された構造のもの、あるいはそれらの混合物でもよい。難燃性及びめやにの抑制の観点から、直鎖構造のものがより好ましい。また難燃性と樹脂組成物の靭性の観点から、分子内の末端あるいは側鎖に官能基を有するものが好ましい。官能基は特にエポキシ基、アミノ基が好ましい。具体的には例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のシリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンパウダー、信越化学工業株式会社製のストレートシリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、非反応性シリコーンオイル、シリコーンパウダーKMPシリーズなどを用いることができる。液体状、固体状いずれのものも用いることができる。液体状のものは、25℃における粘度が、10〜10,000(mm/s)が好ましく、100〜8,000(mm/s)がより好ましく、500〜3,000(mm/s)が特により好ましい。固体のものは、平均粒径が0.1〜100μmが好ましく、0.5〜30μmがより好ましく、0.5〜5μmが特により好ましい。
本発明に使用される籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体については、WO02/059208号公報に開示された構造のものが好適に用いられる。
【0067】
シリカについては、基本構造式は、SiOで表されるものであり、難燃性の観点から、ヒュームドシリカが好ましい。ヒュームドシリカは、ポーラスシリカとも呼ばれ、一次粒子系が5〜50nmであり、比表面積が非常に大きく、50〜500m/g程度の微細粒子である。標準的な親水性タイプのものと、化学的に表面をメチルグループなどの疎水グループで覆った疎水性タイプのものを用いることができる。具体的には日本アエロジル(株)のAEROSIL(アエロジル)(登録商標)が好適で、さらにはグレードとして200、R972などが好適に用いることができる。これらは、難燃性、衝撃性を向上させることができる。
【0068】
これら難燃剤は、難燃性及びめやにの抑制の観点から、ポリフェニレンエーテルとポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して、1〜30質量部の割合で含有されていることが好ましく、2〜20質量部がさらに好ましく、3〜15質量部が特により好ましい。
【0069】
また、無機強化充填材を添加しても構わない。無機強化充填材の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、カオリン、クレイ、酸化チタン、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、ガラスフレーク等が挙げられる。これらの中から選ばれる1種以上が好ましく、1種類を用いても構わないし、2種類以上を混合して使用しても構わない。2種類以上を混合して使用する場合、射出成形品のそりが小さくなる等の観点から、繊維状の充填材と、非繊維状の充填材を混合することが好ましい。より好ましい充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、クレイ、酸化チタンであり、さらに好ましくはガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、酸化チタンである。
本発明では、上記した成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。
【0070】
付加的成分の例を以下に挙げる。
導電性付与材(導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ等)、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)及び、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化亜鉛、硫化亜鉛、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等である。
本発明の組成物を得るための具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられるが、中でも二軸押出機が好ましい。
【0071】
このようにして得られる本発明の組成物は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形、押出成形、中空成形により各種部品の成形体として成形できる。
射出成形により得られる各種部品としては、例えば、パソコン、ハードディスクDVDドライブレコーダー、デジタルビデオカメラ、携帯型デジタル音楽プレーヤー、携帯電話などのデジタル家電製品に使用されるハードディスクの内部部品や各種コンピューターおよびその周辺機器等の内部部品、ICトレー材料、各種ディスクプレーヤー等のシャーシー、キャビネット等の電気・電子部品、リレーブロック材料等に代表されるオートバイ・自動車の電装部品、自動車用耐熱部品あるいは事務機器用耐熱部品に好適である。中でも精密成形が必要とされるハードディスクの内部部品として好適に使用される。
ハードディスクの内部部品としては例えばブラケット、ラッチ、コウム、スポイラー、ブッシュ、マウントプレート、フックなどが挙げられる。
【0072】
自動車用耐熱部品は例えば、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウウォッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、点火装置ケースなどの部品、ホイールキャップ、ランプソケット、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプリフレクターなどが好適である。
【0073】
また、事務機器用耐熱部品は、例えば、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品などに好適である。
【0074】
また、このようにして得られる本発明の組成物は、薄肉耐熱老化性に優れることから、フィルムにすることも特に好適である。ここでのフィルムとは、厚みが0.001〜2.0mmのものである。好ましくは0.005〜0.50mmであり、より好ましくは0.005〜0.20mm、さらに好ましくは、0.005〜0.15mmである。場合によってはシートと呼ばれることもある。
フィルムは、上記で得られた熱可塑性樹脂組成物を原料とし、押出成形により得ることもできるし、本発明の成分を押出成形機に直接投入し、ブレンドとフィルム成形を同時に実施して得ることもできる。
【0075】
フィルムの製造方法としては、押出しチューブラー法、場合によってはインフレーション法とも呼ばれる方法にて製造することができる。円筒から出てきたパリソンがすぐに冷却してしまわないように、50〜290℃の温度範囲の中から適宜選択して、パリソンの温度制御することがフィルム厚みを均一にし、層剥離のないフィルムを作成する上で極めて重要である。
また、Tダイ押出成形によっても製造することができる。この場合、無延伸のまま用いてもよいし、1軸延伸してもよいし、2軸延伸することによっても得られる。フィルムの強度を高めたい場合は、延伸することにより達成することができる。
【0076】
こうして得られたフィルムは、耐熱性に優れ、外観に優れるため、これらの特性が要求される用途に好適に用いることができる。例えば、プリント基板材料、プリント基板周辺部品、プリント基板製造用剥離フィルム、半導体パッケージ、データ系磁気テープ、APS写真フィルム、フィルムコンデンサー、モーターやトランスなどの絶縁材料、スピーカー振動板、自動車用シートセンサー、ワイヤーケーブルの絶縁テープ、TABテープ、発電機スロットライナ層間絶縁材料、トナーアジテーター、リチウムイオン電池などの絶縁ワッシャーなどが挙げられる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に示されたものに限定されるものではない。
【0078】
(使用した原料)
(A)ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略記)
(PPE−1):(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
還元粘度:0.54dl/g、(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)
Mn=24,200、Mw=53,100
ガラス転移温度:215℃(DSC法、昇温速度20℃/分)
(PPE−2):(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
還元粘度:0.52dl/g、(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)
Mn=19,100、Mw=51,000
(PPE−3):(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
還元粘度:0.42dl/g、(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)
Mn=15,300、Mw=36,200
(PPE−4):(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
還元粘度:0.51dl/g、(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)
Mn=18,700、Mw=52,600
(PPE−5):(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
還元粘度:0.56dl/g、(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)
Mn=25,100、Mw=58,200
(PPE−6):2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体
共重合比:2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール=75/25(質量比)
還元粘度:0.51dl/g、(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)
Mn=25,700、Mw=52,200
ガラス転移温度:231℃(DSC法、昇温速度20℃/分)
【0079】
[製造例1](PPE−6の合成)
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた10リットルのジャケット付き重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.099gの塩化第二銅2水和物、4.705gの35%塩酸、41.971gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、31.658gのジ−n−ブチルアミン、1264gのn−ブタノール、544gのメタノール、3792gのキシレン、120gの2,6−ジメチルフェノール、40gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。
また、貯蔵槽に窒素ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、貯蔵槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた5リットルの貯蔵槽に、200ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、720gのメタノール、1080gの2,6−ジメチルフェノール、360gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となるまで撹拌し、混合溶液を調合した。
【0080】
次いで、激しく撹拌した重合槽へ、1000Nml/分の速度で酸素ガスをスパージャーより導入を始めると同時に、貯蔵槽から送液ポンプを用い、上記貯蔵槽内の混合溶液を21.6g/分の速度で逐次添加した。330分通気し、反応器の内温が40℃になるようコントロールした。なお、酸素ガスを供給開始140分後ポリフェニレンエーテルが析出しスラリー状の形態を示し、スラリー形態を示しはじめる前に混合溶液の添加は終了した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。
酸素含有ガスの通気をやめ、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の50%水溶液を11.5g添加し60分間重合混合物を撹拌し、次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。
反応器の内温は40℃になるようコントロールした。
その後、濾過して濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール6400gともに10L洗浄槽に入れ分散させ、30分間撹拌した後再度ろ過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。洗浄槽の内温は40℃になるようコントロールした。これを3回繰り返し、次いで140℃で150分真空乾燥し乾燥ポリフェニレンエーテル(PPE−6)を得た。
上記PPE−6は2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール=75/25(質量比)であるが、この製造例と同様の方法にて、モノマーとして2,6−ジメチルフェノールを用い、反応時間を調整しながら重合することにより、ホモポリマーであるPPE−1〜PPE−5を得た。
【0081】
(B)リン元素とフェノール性水酸基を有する化合物(以下、POH−1と略記)
商品名:スミライザーGP(登録商標)(住友化学社製)
(C)イオウ系安定剤
(S−1)商品名:アデカスタブAO−412S(登録商標)(ADEKA社製)
(S−2)商品名:アデカスタブAO−503(登録商標)(ADEKA社製)
(S−3)商品名:Irganox1520L(登録商標)(チバスペシャルティーケミカルズ社製)
(S−4)商品名:Irganox1726(登録商標)(チバスペシャルティーケミカルズ社製)
(S−5)商品名:Irganox565(登録商標)(チバスペシャルティーケミカルズ社製)
【0082】
(D)ヒンダードフェノール系安定剤
(Ph−1)アデカズタブAO−50F(登録商標)(ADEKA社製)
(E)エラストマー
(SE−1)クレイトンG1651E(登録商標)(クレイトンポリマー社製)
(SE−2)セプトンS2006(登録商標)(クラレ社製)
(SE−3)スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエンブロック共重合体水素添加物(A−B−A−B型)
結合スチレン量33質量%
数平均分子量240,000
1,2ビニル量:33質量%
水素添加率93%
【0083】
(F)(A)以外の熱可塑性樹脂
(HIPS):ハイインパクトポリスチレン
商品名:PSJポリスチレンH9405(PSジャパン社製)
(S−PMI):スチレン/N−フェニルマレイミド/無水マレイン酸共重合体
商品名:ポリイミレックスPSX0371(登録商標)(日本触媒社製)
(PAR):ポリアリレート
商品名:U−ポリマー U−100(登録商標)(ユニチカ社製)
(LCP):液晶ポリエステル
窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステルを得た。なお、組成の成分比はモル比を表す。
【0084】
【化6】

【0085】
(G)難燃剤
(FR−1):環状フェノキシホスファゼン
6員環および8員環のクロロホスファゼン混合物とナトリウムフェノラートを反応して得られたフェノキシホスファゼン合成物を洗浄、精製を繰り返すことにより得られた酸価が約0.1の環状フェノキシホスファゼン
(FR−2):ホスフィン酸アルミニウム
商品名:Exolit OP935(登録商標)(クラリアント社製)
(FR−3):リン酸エステル
商品名:CR733S(大八化学社製)
(H)酸化亜鉛(以下、ZnOと略記)
商品名:銀嶺A(登録商標)(東邦亜鉛社製)
【0086】
(評価方法)
以下に、評価方法について述べる。
<耐熱エージング>
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットを、100℃の乾燥機を用いて3時間乾燥し、射出成形機[IS−80EPN:東芝機械社製]を用いて、射出速度200mm/秒、保圧70MPa、射出+保圧時間20秒、冷却時間20秒、金型温度120℃、溶融樹脂温度330℃に設定し、ISO 3167、多目的試験片A型の成形片を成形した。得られた成形片を使用し、23℃、50RH%にて、ISO 527に準拠し、引張り速度5mm/minで引張強度を測定した。5本の成形片にて測定し、その平均値をエージング前の引張強度TS1とした。また、上記のようにして得られた成形片を170℃のオーブンに180時間暴露した後、23℃、50RH%にて、ISO 527に準拠し、引張り速度5mm/minで引張強度を測定した。5本の成形片にて測定し、その平均値をエージング後の引張強度TS2とした。以下の式により強度保持率を算出した。
強度保持率(%)=TS2/TS1×100
【0087】
<薄肉耐熱エージング>
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットを、100℃の乾燥機を用いて3時間乾燥し、15mmの2軸同方向回転押出機付きTダイ製膜機[KZW15TW:テクノベル社製]を用い、ペレット全量を第一供給口から、供給し、窒素を吹き込みながら、第一供給口側からTダイへ向けてのシリンダー設定温度を300/300/300℃に設定し、Tダイの設定温度を310℃、キャストロール温度を150℃に設定し、真空ベントをひきながら、約100μmの厚みのフィルムになるように、製膜を実施した。得られたフィルムを、ISO 527−3、試験片タイプ5に打ち抜いた。尚、引張試験をする方向が、フィルムの流動方向になるように打ち抜いた。170℃のオーブンに所定時間暴露した後、23℃、50RH%にて、ISO 527に準拠し、引張り速度5mm/minで引張試験を実施した。5本の試験片にて試験を行い、3本以上以上が脆化したものを以下の基準に従い評価した。尚、ここでの脆化とは、破断時に、2ヶ所以上で同時に破断し、チャック以外の部分が飛び散ったものをいう。
5点:160hr経過しても脆化しなかったもの。
4点:140hr経過しても脆化せず、160hr経過で脆化したもの。
3点:100hr経過しても脆化せず、140hr経過で脆化したもの。
2点:50hr経過しても脆化せず、100hr経過で脆化したもの。
1点:10hr経過しても脆化せず、50hr経過で脆化したもの。
0点:10hr経過で脆化したもの。
【0088】
<押出加工性>
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットを、100℃の乾燥機を用いて3時間乾燥し、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=28、25mmの単軸押出機[GT−25:プラスチック工学研究所社製]を用い、ペレット全量を第一供給口から供給し、供給口からダイまでのシリンダー設定温度を300℃に設定し、40rpmで押出しを行った。ダイからでる樹脂を36秒間サンプリングし、重量を測定し、吐出量を算出した。この操作を5分毎に10回行い、吐出量の変動を以下の式に基づき評価した。変動率が小さい程、安定していることを示す。
吐出量変動率(%)=(最大吐出量−最小吐出量)/平均吐出量×100
吐出量変動率が小さい程、安定していることを示す。
【0089】
<フィルム外観>
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットを、100℃の乾燥機を用いて3時間乾燥し、15mmの2軸同方向回転押出機付きTダイ製膜機[KZW15TW:テクノベル社製]を用い、ペレット全量を第一供給口から、供給し、窒素を吹き込みながら、第一供給口側からTダイへ向けてのシリンダー設定温度を300/300/300℃に設定し、Tダイの設定温度を310℃、キャストロール温度を150℃に設定し、真空ベントをひきながら、約100μmの厚みのフィルムになるように、製膜を実施した。得られたフィルムの外観を以下の判断基準に従って評価した。
○:色調むら、厚薄むらがなく、たてすじのないもの。
△:色調むら、厚薄むら、たてすじのいずれか1つが発生しているもの。
×:色調むら、厚薄むら、たてすじの2つ以上が発生しているもの。
【0090】
<組成物中のポリフェニレンエーテルの分子量測定>
昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21(カラム:昭和電工(株)製K−805Lを2本直列、カラム温度:40℃、溶媒:クロロホルム、溶媒流量:1.0ml/min、サンプル濃度:0.1質量%クロロホルム溶液)で標準ポリスチレン(標準ポリスチレンの分子量は、3,650,000、2,170,000、1,090,000、681,000、204,000、52,000、30,200、13,800、3,360、1,300、550)を用いて検量線を作成し、測定した。検出部のUVの波長は標準ポリスチレンが254nm、ポリフェニレンエーテルが283nmで測定した。
組成物中の(A)ポリフェニレンエ−テルにおいて、分子量をMi、その分子量の分子の個数をNiとしたとき、10,000以下の分子量を有する分子についてのMi×Niの総和の全分子についてのMi×Niの総和に対する割合(質量%)をαとおく。ここでは、αは、以下のようにして求めた。
すなわち、下記実施例で得られた100μmt厚みのフィルムを切り出し、30℃のクロロホルムに溶解し、不溶分を取り除き、溶液を大量のメタノールに注入する(再沈殿)ことにより、粉末を得、乾燥させる。ついで、塩化メチレンを加え、40〜50℃で溶解させ、冷凍庫内(−5℃)に一晩静置することにより、析出物を得、これをろ過し、析出物を冷塩化メチレンにて洗浄した後、メタノールで洗浄し、140℃にて1時間真空乾燥することによりポリフェニレンエーテルを得る。このサンプルを上記と同様の条件でGPC測定を行い、以下の式に従いαを求めた。
α(質量%)=(10,000以下の分子量の分子の質量/全分子の質量)×100
上記のαの値は実験的にはGPC溶出曲線から、(10000以下の分子の溶出面積/全溶出面積)×100によって求めることが出来る。
【0091】
<組成物中のポリフェニレンエーテルのフェノール性水酸基数測定>
前記分子量測定に用いたと同様のサンプル(溶解、不溶物除去、再沈、冷却、ろ過、乾燥)のポリフェニレンエーテルを得て、これを正確に秤量し(W(mg))、25mlの塩化メチレンに溶解し、10重量%濃度のテトラエチルアンモニウムヒドロキサイドのエタノール溶液を20μlを加え、UV分光光度計(日立(株)社製、U−3210)を用いて、318nmの吸光度(Abs)を測定し、次の式に基づいて算出した。
(OH)=63.9×(Abs)/(W)
(ただし、n(OH):フェニレンエーテルユニットの100個に対してのフェノール性水酸基の個数)
【0092】
[実施例1〜7、比較例1〜5]
押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製]を用いて、上流側供給口からダイまでを290℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/hで、表1記載の割合となるように上流側供給口より原料を供給し、溶融混練して熱可塑性樹脂組成物ペレットを作製した。尚、このとき10番目のバレルに設置した真空ベントより、揮発分を除去した。得られた熱可塑性樹脂組成物について、耐熱エージング、薄肉耐熱エージング、吐出量変動率およびフィルム外観を評価した。物性値を組成と共に表1に併記した。
【0093】
【表1】

【0094】
[実施例8〜17、比較例6]
実施例1と同様にして、表2記載の割合となるように上流側供給口より原料を供給し、溶融混練して熱可塑性樹脂組成物ペレットを作製した。得られた熱可塑性樹脂組成物を、耐熱エージング、薄肉耐熱エージング、吐出量変動率およびフィルム外観を評価した。物性値を組成と共に表2に併記した。
【0095】
【表2】

【0096】
[実施例18〜22、比較例7]
実施例1と同様にして、表3記載の割合となるように上流側供給口より原料を供給し、溶融混練して熱可塑性樹脂組成物ペレットを作製した。得られた熱可塑性樹脂組成物を、耐熱エージング、薄肉耐熱エージング、吐出量変動率およびフィルム外観を評価した。物性値を組成と共に表3に併記した。
【0097】
【表3】

【0098】
[実施例23]
実施例18の組成において、PPE−1のかわりに、PPE−6を用いたこと以外は、実施例18と同様に実施した。
150μm厚みのシートを成形したが、めやには全く発生せず、良外観のシートが得られた。得られたフィルムを約220℃のはんだ浴に1分間浮かべたが、フィルムの変形や膨れなどの変化は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の熱可塑性樹脂組成物、および該熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム、成形体は、電気・電子部品、OA部品、車両部品、機械部品などの幅広い分野に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフェニレンエーテル、(B)リン元素とフェノール性水酸基を有する化合物および(C)イオウ系安定剤を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに(D)ヒンダードフェノール系安定剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分が、フェノール性水酸基を有する亜リン酸エステル類であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分が、イオウ元素に少なくとも1種以上のアルキル基が結合しており、該アルキル基の少なくとも1つが、C4以上のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
(C)成分が、テトラキス〔メチレン−3−(ラウリルチオ)プロピオネート〕メタン、テトラキス〔メチレン−3−(ミリスチルチオ)プロピオネート〕メタン、テトラキス〔メチレン−3−(ステアリルチオ)プロピオネート〕メタン、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ステアリルチオメチル)−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−{4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ}フェノールから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分100質量部に対し、(B)成分0.1〜3質量部、(C)成分0.1〜3質量部を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに(E)エラストマーを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
(E)成分が、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
(E)成分が、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を、水素添加反応して得られる水添ブロック共重合体であることを特徴とする請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
(F)(A)成分以外の熱可塑性樹脂を含み、(A)成分と(F)成分の合計100質量部に対し、(A)成分1〜99質量%、(F)成分1〜99質量%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
(F)成分が、芳香族ビニル化合物重合体、芳香族ビニル化合物共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド66/6、芳香族環含有ポリアミド、脂肪族環含有ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン及びポリサルフォンよりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
(F)成分が、芳香族ビニル化合物共重合体、芳香族環含有ポリアミド、脂肪族環含有ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン及びポリサルフォンよりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
(F)成分が、芳香族環含有ポリアミド、脂肪族環含有ポリアミド及び液晶ポリマーよりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
(F)成分が、芳香族ビニル化合物共重合体である芳香族ビニル−マレイミド系共重合体であることを特徴とする請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項15】
さらに(G)難燃剤を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項16】
(G)成分が、ホスフィン酸塩類であることを特徴とする請求項15に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項17】
(A)成分が、少なくとも(a−1)2,6−ジメチルフェノールと(a−2)2,3,6−トリメチルフェノールを含むフェノール類を重合した共重合体を含み、(A)成分中の(a−1)と(a−2)の合計100質量%に対し、(a−1)が60〜90質量%、(a−2)が10〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項18】
(A)成分が、10,000以下の分子量を有する分子の質量が全分子の質量に対して15質量%以下であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項19】
(A)成分が、フェノール性水酸基をフェニレンエーテルユニットの100個に対して1.80個以下含有することを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項20】
厚みが150μm以下のフィルムを成形するための成形用材料であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とするフィルム。
【請求項22】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする射出成形体。

【公開番号】特開2009−227886(P2009−227886A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77246(P2008−77246)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】