説明

熱可塑性無端ベルトの製造装置、及び、熱可塑性無端ベルトの製造方法

【課題】ベルト用基材をほぼ均一な加熱温度で加熱加圧することのできる熱可塑性無端ベルトの製造装置及び熱可塑性無端ベルトの製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性無端ベルト製造装置1は、熱可塑性を有するベルト用基材のベルト長さ方向に関する両端部が突き合わされた無端ベルトを製造するための装置である。熱可塑性無端ベルト製造装置1は、相対向して配置され、ベルト用基材20Aの突き合わせ部23Aを加熱するための1対の熱盤2と、突き合わせ部23Aのベルト長さ方向に関する両側部分を冷却する冷却部4、5と、1対の熱盤2の対向面10、11にそれぞれ接するように配置され、突き合わせ部23Aを加熱しつつ挟持押圧する1対の金型3とを備えている。1対の金型3は、冷却部4、5には接していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性を有するベルト用基材から無端ベルトを製造するための熱可塑性無端ベルトの製造装置、及び、熱可塑性無端ベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無端ベルトの製造方法として、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性材料のベルト用基材の両端部を突き合わせて接合する方法がある。
【0003】
このような接合には、例えば、特許文献1に開示されている装置が用いられる。装置40は、歯付ベルトを製造するための装置である。図4に示すように、装置40は、対向配置された上下2つの熱盤42、41と、2つの熱盤41、42の両側に、隙間を介してそれぞれ配置された冷却部43〜46とを備えている。熱盤41及び冷却部43、45の下面は、プレスフレーム49に固定されており、熱盤42及び冷却部44、46の上面は、プレスフレーム50に固定されている。また、熱盤41及び冷却部43、45の上面には、複数の歯溝51を有する金型47が設置され、熱盤42及び冷却部44、46の下面には平板状の金型48が設置されている。ベルト用基材60の両端部が突き合わされた突き合わせ部61は、金型47、48の中央部に位置するように設置される。そして、突き合わせ部61のベルト長さ方向(ベルト用基材60を無端ベルトにしたときの周方向)に関する両側部分を冷却部43〜46によって冷却しつつ、突き合わせ部61を金型47、48の間で加熱加圧して両端部を溶着により接合している。
【0004】
この装置40では、冷却部43〜46を設けることにより、突き合わせ部61以外の加熱する必要のない部分が加熱されて変形するのを防止している。また、金型41、42を冷却部43〜46まで延ばすことにより、たとえ加熱により溶融された材料が冷却部側へはみ出したとしても、ベルト用基材60の表面に境界線マークが発生するのを防止する、とされる。
【0005】
また、上述した図4に示す装置40を用いて、既に無端状に接合された歯付ベルトの歯部の形状の欠陥を修正することもできる。具体的な歯部の形状の欠陥としては、歯欠けや、歯高さの不足などである。例えば、溶融状態の一方の端部と、既に歯部が成形された他方の端部とを突き合わせて接合することで製造された無端ベルトの場合、一方の端部の溶融した材料が歯溝内に充分に行き渡らない等の要因によって、上述したような歯部の欠陥が発生しやすい。具体的な修正方法としては、突き合わせ部の歯部と反対側の面に、ベルト用基材と同一材料からなるシートを載せて、突き合わせ部をシートごと金型47、48の間で加熱加圧する。これにより、突き合わせ部とシートを溶融させて、金型47の歯溝51内に流し込み、欠陥部分を埋めて歯部の形状を修正する。
【0006】
【特許文献1】特開2004−291321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図4に示す装置40の場合、金型47、48は熱盤41、42と冷却部43〜46の両方に接しているため、金型47、48の熱盤41、42に接する部分の温度は、ベルト長さ方向に関する中央部から両端側に向けて低下している。そのため、この金型47、48により突き合わせ部61を完全に接合等しようとすると、余分に加熱される部分が生じるため、ベルトの変色や反り等が発生する。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
そこで、本発明は、ベルト用基材をほぼ均一な加熱温度で加熱することのできる熱可塑性無端ベルトの製造装置、及び、熱可塑性無端ベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
請求項1の熱可塑性無端ベルトの製造装置は、熱可塑性を有するベルト用基材のベルト長さ方向に関する両端部が突き合わされた、無端ベルトを製造する装置であって、相対向して配置され、前記ベルト用基材の突き合わせ部を加熱するための1対の熱盤と、前記突き合わせ部の前記ベルト長さ方向に関する両側部分を冷却する冷却部と、前記1対の熱盤の対向面にそれぞれ接するように配置され、前記突き合わせ部を加熱しつつ挟持押圧する1対の金型とを備え、前記金型は、前記熱盤には接しているが、前記冷却部には接していないことを特徴とする。
【0010】
この構成によると、冷却部によって、突き合わせ部のベルト長さ方向に関する両側部分を冷却することにより、無加圧部分が加熱されて変形するのを防止する。また、金型は冷却部に接していないため、金型温度は冷却部からほとんど影響を受けない。従って、金型の熱盤に接する部分における温度分布は、均一化される。その結果、金型温度のむらに起因する突き合わせ部の周辺の変色等を防止することができる。尚、ベルト長さ方向とは、ベルト用基材を無端ベルトにしたときの周方向(長手方向)のことである。
【0011】
請求項2の熱可塑性無端ベルトの製造装置は、請求項1において、前記ベルト長さ方向に関して、前記金型の長さは、前記熱盤よりも短いことを特徴とする。この構成によると、金型は、ベルト長さ方向に関して、熱盤の範囲内に配置することができる。そのため、金型温度をさらに均一化することができる。
【0012】
請求項3の熱可塑性無端ベルトの製造装置は、請求項2において、少なくとも一方の熱盤の前記対向面に、凹部が形成されており、この凹部に、前記一方の熱盤に対応する前記金型が嵌合していることを特徴とする。この構成によると、熱盤の凹部に嵌合された金型は、プレス面と反対側の表面だけでなく、側面からも熱盤によって加熱される。そのため、金型が対向面の平坦な熱盤に設置される場合に比べて、金型の温度をさらに均一化することができる。
【0013】
請求項4の熱可塑性無端ベルトの製造装置は、請求項3において、前記ベルト用基材は、その一方の面に、前記ベルト長さ方向に所定の間隔で配置された複数の歯部を有するものであり、前記凹部に嵌合された前記金型に、前記ベルト用基材の前記複数の歯部にそれぞれ対応する、複数の歯溝が形成されていることを特徴とする。この構成によると、突き合わせ部において、熱盤温度のむらに起因する変色等のない無端歯付ベルトを製造することができる。
【0014】
請求項5の熱可塑性無端ベルトの製造方法は、熱可塑性を有するベルト用基材のベルト長さ方向に関する両端部が突き合わされた、無端ベルトを製造する方法であって、前記ベルト用基材の突き合わせ部の前記ベルト長さ方向に関する両側部分を冷却しつつ、前記ベルト用基材の両面側に対向配置された1対の熱盤にそれぞれ接し、且つ、前記ベルト用基材の両側部分を冷却する冷却部には接していない、1対の金型により、前記突き合わせ部を加熱加圧することを特徴とする。
【0015】
この構成によると、冷却部によって、突き合わせ部のベルト長さ方向に関する両側部分を冷却することにより、無加圧部分が加熱されて変形するのを防止する。また、金型は冷却部に接していないため、金型温度は冷却部からあまり影響を受けない。従って、金型の熱盤に接する部分における温度分布は、均一化される。そのため、金型温度のむらに起因する突き合わせ部の周辺の変色等を防止することができる。
【0016】
請求項6の熱可塑性無端ベルトの製造方法は、請求項5において、前記1対の金型で前記突き合わせ部を加熱加圧することにより、前記ベルト用基材の前記両端部を接合することを特徴とする。この構成によると、金型温度のむらに起因する変色等の発生を防止しつつ、突き合わせ部の両端部を接合して無端ベルトを製造することができる。
【0017】
請求項7の熱可塑性無端ベルトの製造方法は、請求項5において、前記ベルト用基材として、その一方の面に、前記ベルト長さ方向に所定の間隔で配置された複数の歯部を有するとともに、前記突き合わせ部が予め接合されたものを用い、前記ベルト用基材の前記一方の面を押圧する一方の金型には、前記複数の歯部にそれぞれ対応する、複数の歯溝が形成されており、前記1対の金型で前記突き合わせ部を加熱加圧することにより、前記突き合わせ部における前記歯部の形状を、前記一方の金型の前記歯溝によって修正することを特徴とする。この構成によると、予め接合された突き合わせ部の歯部において、歯欠けや歯高さが足りないといった欠陥が生じている場合、突き合わせ部を1対の金型で加熱加圧することにより、金型温度のむらに起因する変色等の発生を防止しつつ、突き合わせ部の歯部の形状を修正し、無端ベルトを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
<第1実施形態>
本実施形態の熱可塑性無端ベルトの製造装置(以下、ベルト製造装置という)1は、熱可塑性を有するベルト用基材20Aから無端ベルトを製造するためのものである。図1に示すように、ベルト製造装置1は、相対向して配置された1対の熱盤2と、この1対の熱盤2の対向面10、11にそれぞれ接するように配置された1対の金型3と、冷却部4、5とを備える。
【0019】
先ず、ベルト製造装置1で用いられるベルト用基材20Aについて説明する。ベルト用基材20Aは、熱可塑性エラストマーで構成されている。ベルト用基材20Aは、無端歯付ベルトを製造するためのものである。尚、ベルト用基材20Aを無端ベルトにしたときの周方向(長手方向)をベルト長さ方向とする。図2に示すように、ベルト用基材20Aは、一方の面に、ベルト長さ方向に所定の間隔で配置された複数の歯部21が形成され、他方の面(以下、背面という)22は平坦に形成されている。ベルト用基材20Aのベルト長さ方向に関する両端部は、ベルト長さ方向に直交するように形成されている。ベルト用基材20Aの両端部を突き合わせた部分を、突き合わせ部23Aする。
【0020】
熱可塑性エラストマーとしては、主に熱可塑性ポリウレタンが用いられる。また、熱可塑性ポリエステル系エラストマー、熱可塑性ポリアミド系エラストマー、エチレン−α−オレフィンなどの熱可塑性オレフィン系エラストマー等を用いてもよい。熱可塑性ポリウレタンとしては、1分子あたり少なくとも2個以上の活性水素を有するポリエステルポリオール、ポリアミドポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオール等から選ばれたポリオールの1種または2種以上の混合物と、多官能イソシアネートとを等モルに近い割合で反応させて得られる直線状の熱可塑性ポリウレタンが用いられる。また、熱可塑性ポリエステル系エラストマーとしては、具体的には、株式会社デュポンの商標名「ハイトレル」や、株式会社東洋紡の商標名「ペルプレン」等が用いられる。また、熱可塑性ポリアミド系エラストマーとしては、具体的には、株式会社ダイセルの商標名「ダイアミドーPAE」等が用いられる。
【0021】
図2に示すように、ベルト用基材20Aは、ベルト長さ方向が図1及び図2中の左右方向となるように、ベルト製造装置1に設置される。尚、以下のベルト製造装置1の説明において、ベルト製造装置1の上下方向を上下方向、図1及び図2中の左右方向をベルト長さ方向と定義する。
【0022】
図1に示すように、1対の熱盤2は、ベルト用基材20Aの突き合わせ部23Aを加熱するためのものである。1対の熱盤2は、相対向して配置された第1熱盤2Aと第2熱盤2Bとから構成される。1対の熱盤2は、その対向面10、11と反対側の面がプレスフレーム6、7にそれぞれ固定されている。また、第1熱盤2Aと第2熱盤2Bは、ベルト長さ方向に関する長さがほぼ同じである。また、第1熱盤2Aの上面(対向面)10には、凹部12が形成されており、第2熱盤2Bの下面(対向面)11は、平坦に形成されている。第1熱盤2A及び第2熱盤2Bは、例えば、蒸気、電気または高周波などの熱源により加熱されるようにそれぞれ構成されている。
【0023】
1対の金型3は、ベルト用基材20Aの突き合わせ部23Aを加熱しつつ挟持押圧するためのものである。1対の金型3は、第1金型3Aと、第2金型3Bとから構成されている。第1金型3A及び第2金型3Bは、第1熱盤2Aの上面10及び第2熱盤2Bの下面11にそれぞれ接している。
【0024】
第1金型3Aには、ベルト用基材20Aの複数の歯部21にそれぞれ対応する、複数の歯溝13が形成されている。第1金型3Aは、ベルト長さ方向に関する長さが、第1熱盤2Aよりも短い。第1金型3Aは、ベルト長さ方向に関して、第1熱盤2Aの範囲内に配置されている。詳細には、第1金型3Aは、第1熱盤2Aの上面10に形成された凹部12に嵌合している。そのため、当然ながら、第1金型3Aは、第1熱盤2Aのベルト長さ方向に関する両側に設置された冷却部4、5に接していない。尚、図1及び図2では、第2金型3Bの歯溝13の数は3つとなっているが、これに限定されるものではない。
【0025】
また、第1金型3Aの歯溝13の底面は、第1熱盤2Aの上面10の上端よりも上方に位置している。そのため、図2に示すように、ベルト用基材20Aの歯部21が歯溝13に嵌合するように、ベルト用基材20Aが第1金型3Aに設置されたとき、第1熱盤2Aの上面10の上端は、ベルト用基材20Aの歯部21の底面に接しない。
【0026】
第2金型3Bは、平板状に形成されており、第1金型3Aよりも厚みが薄い。第2金型3Bのベルト長さ方向に関する長さは、第2熱盤2Bよりも短く、また、第1金型3Aよりも若干短い。第2金型3Bは、ベルト長さ方向に関して第2熱盤2Bの範囲内に配置されている。そのため、第2金型3Bは、第2熱盤2Bのベルト長さ方向に関する両側に設置された冷却部4、5に接していない。さらに、第2金型3Bは、第2熱盤2Bの範囲内においてベルト長さ方向に関して移動可能に構成されている。
【0027】
冷却部4、5は、突き合わせ部23Aのベルト長さ方向に関する両側部分を冷却するためのものである。冷却部4、5は、第1熱盤2Aのベルト長さ方向に関する両側に配置された2つの下部冷却部4A、5Aと、第2熱盤2Bのベルト長さ方向に関する両側に配置された2つの上部冷却部4B、5Bとから構成される。冷却部4、5と1対の熱盤2との間には、それぞれ隙間が存在している。下部冷却部4A、5Aは、プレスフレーム6に固定され、上部冷却部4B、5Bはプレスフレーム7に固定されている。冷却部4、5は、例えば、内部に設けられた冷却管を流れる冷却液によって冷却されている。
【0028】
下部冷却部4A、5Aの上面は、第1金型3Aの歯溝13の底面とほぼ同一平面上に位置する。そのため、図2に示すように、ベルト用基材20Aの突き合わせ部23Aが第1金型3Aに設置され、さらに、突き合わせ部23Aの両側部分が下部冷却部4A、5Aに設置されたとき、ベルト用基材20Aはほぼ水平となる。従って、ベルト用基材20Aをベルト製造装置1に安定して設置しやすい。
【0029】
図1に示すように、上部冷却部4B、5Bの下面は、第2金型3Bの下面(プレス面)よりも若干上方に位置している。そのため、図2に示すように、1対の金型3によりベルト用基材20Aを挟持押圧したとき、上部冷却部4B、5Bはベルト用基材20Aに多少接触することとなる。
【0030】
以上説明した製造装置1によると、第1金型3A及び第2金型3Bは、第1熱盤2A及び第2熱盤2Bにそれぞれ接しているが、冷却部4、5には接していない。そのため、第1金型3A及び第2金型3Bの温度は、冷却部4、5からあまり影響を受けないため、均一化される。従って、金型温度のむらに起因する突き合わせ部23Aの周辺の変色等を防止することができる。
【0031】
また、第1金型3A及び第2金型3Bは、ベルト長さ方向に関して、第1熱盤2A及び第2熱盤2Bの長さよりもそれぞれ短く、さらに、第1熱盤2A及び第2熱盤2Bの範囲内に設置されている。そのため、第1金型3A及び第2金型3Bの温度をさらに均一化することができる。
【0032】
さらに、第1金型3Aは、第1熱盤2Aの上面10に形成された凹部12に嵌合している。そのため、第1金型3Aは、プレス面と反対側の面だけでなく、側面からも第1熱盤2Aによって加熱されている。そのため、第1金型3Aの温度は、平坦状の熱盤に配置される場合に比べて、さらに均一化される。
【0033】
また、第2金型3Bは、ベルト長さ方向に関して、第1金型3Aよりも若干短く、第2熱盤2Bの範囲内において移動可能に構成されている。そのため、ベルト用基材20Aは、第2金型3Bが設置された部分のみ加圧される。従って、加熱加圧の必要な部分にのみ集中して加圧することができる。
【0034】
また、上述したように金型温度が均一化されることにより、加熱加圧時間を短縮化することができる。そのため、加熱により溶融した材料が金型からはみ出して流れ出すのを抑制することができる。
【0035】
また、冷却部4、5を用いて、突き合わせ部23Aのベルト長さ方向に関する両側部分を冷却することにより、無加圧部分に熱が伝わるのを防止している。さらに、上述したように加熱加圧時間が短い。そのため、ベルト用基材20Aの無加圧部分が加熱されて変形するのを防止することができる。
【0036】
次に、ベルト製造装置1を用いて、ベルト用基材20Aの突き合わせ部23Aを溶着によって接合し、無端ベルトを製造する工程を説明する。
【0037】
図2示すように、突き合わせ部23Aの歯部21を、第1金型3Aの歯溝13に嵌合させつつ、ベルト用基材20Aを第1金型3Aに設置する。このとき、突き合わせ部23Aのベルト長さ方向に関する両側部分を、下部冷却部4A、5Aの上面に設置する。そして、プレスフレーム6、7の間隔を調整し、冷却部4、5によって、突き合わせ部23Aのベルト長手方向の両側部分を冷却しつつ、1対の金型3で突き合わせ部23Aを加熱加圧する。これにより、突き合わせ部23Aの両端部を溶着により接合し、無端歯付ベルトを製造する。
【0038】
加熱加圧の条件は、例えば、熱盤温度を140〜160℃、加圧力を0.2MPaとし、1.5分程度行う。尚、この加熱加圧時間は、熱盤が140℃に上昇し、1対の金型3によってプレスを開始してからプレスが終了するまでの時間である。
【0039】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。但し、前記第1実施形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0040】
本実施形態のベルト製造装置1は、前記第1実施形態と同じ構成を有する。
【0041】
本実施形態のベルト製造装置1で用いられるベルト用基材20Bは、ベルト長さ方向に関する両端部が予め接合されたものである。両端部が突き合わされて接合された部分を、突き合わせ部23Bとする。ベルト用基材20Bは、熱可塑性エラストマーで構成され、内部にベルト長さ方向に沿って心線24が埋設されている。ベルト用基材20Bは、前記第1実施形態と同様に、一方の面には複数の歯部21が形成され、背面22は平坦に形成されている。ベルト用基材20Bは、例えば、特開2002−225150号公報(図2)、特開2001−150565号公報、特開2001−232692号公報に開示されている装置を用いて作製されたものが用いられる。この装置で作製されたベルト用基材20Bは、図3に示すように、突き合わせ部23Bの数歯の歯部21において、歯高さが足りないなどの欠陥が発生している場合がある。
【0042】
熱可塑性エラストマーとしては、前記第1実施形態と同様のものが用いられる。また、心線24としては、スチールコード、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維などが用いられる。
【0043】
次に、ベルト製造装置1を用いて、ベルト用基材20Bの突き合わせ部23Bの歯部21の形状を修正し、無端ベルトを製造する工程を説明する。
【0044】
突き合わせ部23Bの歯部21を第1金型3Aの歯溝13に嵌合させつつ、ベルト用基材20Bを第1金型3Aに設置する。このとき、突き合わせ部23Bのベルト長さ方向に関する両側部分を、下部冷却部4A、5Aの上面に設置する。そして、ベルト用基材20Bの背面22の上に、ベルト用基材20Bと同一の熱可塑性エラストマーからなる樹脂シートを設置する。さらにその上に、ポリテトラフルオロエチレン等の離型紙、ジェラルミン板、ゴム板、アルミニウム板を順に設置する。そして、プレスフレーム6、7の間隔を調整し、冷却部4、5によって、突き合わせ部23Bのベルト長手方向の両側部分を冷却しつつ、1対の金型3でベルト用基材20Bを加熱加圧する。これにより、突き合わせ部23Bと樹脂シートが溶融して、歯溝13内に流れ込み、歯部21の形状が修正される。即ち、第1金型3Aの歯溝13によって、突き合わせ部23Bの歯部21の形状が修正されることとなる。また、加熱加圧の条件は、前記第1実施形態と同様とした。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態として、第1実施形態及び第2実施形態を説明したが、第2熱盤2Bの下面11に凹部が形成されており、この凹部に第2金型3Bが嵌合していてもよい。しかしながら、第2金型3Bは、厚みが小さいため、ベルト用基材20A、20Bを1対の金型3で挟持したとき、第2熱盤2Bの下面11が背面22に近接し、無加圧部分が加熱される虞がある。そのため、第1実施形態及び第2実施形態のように、第2金型3Bは平坦状の第2熱盤2Bに設置されることが好ましい。
【0046】
また、第2金型3Bは、ベルト長さ方向に関する長さが、第1金型3Aと同じであってもよい。
【0047】
また、第1金型3Aは、上面10が平坦に形成された第1熱盤2Aの上面に設置されていてもよい。さらに、この場合、第1金型3A及び第2金型3Bは、冷却部4、5に接していなければ、ベルト長さ方向に関する長さが、第1熱盤2A及び第2熱盤2Bよりも長くてもよい。
【0048】
また、本発明の熱可塑性無端ベルト製造装置を用いて製造される無端ベルトは、歯付ベルトに限らず、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルトなど他の種類のベルトにも本発明を適用することができる。Vベルトは、ベルト長手方向を直交する断面がV字状のベルトであり、Vリブドベルトは、長手方向に延びる複数のリブ部を有するベルトである。
【実施例】
【0049】
以下、具体的な実施例を伴って本発明の効果を検証する。
【0050】
ベルト用基材は、熱可塑性ポリウレタンで主に構成され、一方の面にベルト長手方向に所定の間隔で配置された複数の歯部を有し、他方の面が平坦なものを用いた。また、ベルト用基材の内部には、ベルト長さ方向に沿ってスチールコードからなる心線が埋設されている。このベルト用基材の歯部の一部を切り取って歯欠けを形成した。
【0051】
実施例として、前記第1実施形態で述べた図1及び図2に示す熱可塑性無端ベルト製造装置を用いて、ベルト用基材の歯欠けのある歯部の形状を修正した。尚、第1金型3Aとしては、ベルト長さ方向に関する長さDが、60mmのものを用いた。
【0052】
先ず、歯欠けのある歯部を第1金型3Aの歯溝13に嵌合させつつ、ベルト用基材を第1金型3Aに設置した。そして、ベルト用基材の上に、熱可塑性ポリウレタンからなる樹脂シートを設置し、さらにその上に、離型紙、ジェラルミン板、ゴム板、アルミニウム板を順に設置した。そして、プレスフレーム6、7の間隔を調整し、1対の金型3の間でベルト用基材を軽く挟持した後、常温状態の1対の熱盤2を加熱した。1対の熱盤2が設定温度まで上昇した後、プレスフレーム6、7による加圧力を0.2MPaとし、1対の金型3によってベルト用基材を加熱加圧して歯部の形状を修正した。尚、この加熱加圧は、冷却部4、5によって、歯欠け部分のベルト長さ方向に関する両側部分を冷却しつつ行った。
【0053】
表1に示すように、歯部の形状を適切に修正できる加熱加圧の条件は、1対の熱盤2の設定温度(プレスを開始する際の熱盤温度)が140℃であり、プレス時の1対の熱盤2の温度が140〜160℃であった。また、プレス時間(熱盤温度が設定温度140℃まで上昇してからプレスを終了するまでの時間)は、90秒(1.5分)であり、1対の熱盤2の加熱を開始してからプレスが終了するまでの合計時間は10分であった。
【0054】
比較例として、図4に示す従来の装置40を用いた。装置40は、相対向して配置された上下2つの熱盤42、41と、2つの熱盤41、42のベルト長さ方向の両側部分に、隙間を介して、それぞれ配置された冷却部43〜46と備える。熱盤41と冷却部43、45の上面には、複数の歯溝51を有する金型47が設置され、熱盤42と冷却部44、46の下面には平板状の金型48が設置されている。熱盤41と冷却部43、45は、プレスフレーム49に固定され、熱盤42と冷却部44、46は、プレスフレーム50に固定されている。尚、金型47としては、ベルト長さ方向に関する長さが300mmのものを用いた。また、熱盤41としては、ベルト長さ方向に関する長さDが60mmのものを用いた。即ち、ベルト長さ方向に関して、金型47の熱盤41に接する部分の長さを実施例と同様に60mmとした。
【0055】
装置40を用いて、実施例と同様にベルト用基材の歯部の修正を行った。プレスフレーム6、7による加圧力は実施例と同じく0.2MPaとした。表1に示すように、歯部の形状を適切に修正できる加熱加圧の条件は、熱盤41、42の設定温度(プレスを開始する際の熱盤温度)が180℃であり、プレス時の熱盤41、42の温度は180〜200℃であった。また、プレス時間は、15分であり、熱盤の加熱を開始してからプレスが終了するまでの合計時間は30分であった。
【0056】
【表1】

【0057】
また、実施例の装置1について、第1熱盤2Aが設定温度140℃まで上昇したときの第1金型3Aの表面温度を測定した。測定点は、第1金型3Aの、ベルト長さ方向に関して等間隔に並んだ5点(両端部含む)とした。比較例の装置40についても、熱盤41が設定温度180℃まで上昇したときの金型47の表面温度を測定した。測定点は、金型47の熱盤41に接する部分における、ベルト長さ方向に関して等間隔に並んだ5点とした。
【0058】
その結果、図5に示すように、比較例の金型47の表面温度は、ベルト長さ方向に関して中央から両側に向かって温度が10℃低下しているのに対し、実施例の第1金型3Aの表面温度は、ベルト長さ方向に関して均一となった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る熱可塑性無端ベルトの製造装置の断面図である。
【図2】ベルト用基材を挟持している状態の熱可塑性無端ベルトの製造装置の断面図である。
【図3】ベルト用基材の歯部の形状の欠陥例を示す断面図である。
【図4】従来の装置の断面図である。
【図5】ベルト長さ方向に関する金型の表面温度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
1 ベルト製造装置(熱可塑性無端ベルトの製造装置)
2 1対の熱盤
2A 第1熱盤
2B 第2熱盤
3 1対の金型
3A 第1金型
3B 第2金型
4、5 冷却部
4A、5A 下部冷却部
4B、5B 上部冷却部
10 上面(対向面)
11 下面(対向面)
12 凹部
13 歯溝
20A、20B ベルト用基材
21 歯部
23A、23B 突き合わせ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性を有するベルト用基材のベルト長さ方向に関する両端部が突き合わされた、無端ベルトを製造する装置であって、
相対向して配置され、前記ベルト用基材の突き合わせ部を加熱するための1対の熱盤と、
前記突き合わせ部の前記ベルト長さ方向に関する両側部分を冷却する冷却部と、
前記1対の熱盤の対向面にそれぞれ接するように配置され、前記突き合わせ部を加熱しつつ挟持押圧する1対の金型とを備え、
前記金型は、前記熱盤には接しているが、前記冷却部には接していないことを特徴とする熱可塑性無端ベルトの製造装置。
【請求項2】
前記ベルト長さ方向に関して、前記金型の長さは、前記熱盤よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性無端ベルトの製造装置。
【請求項3】
少なくとも一方の熱盤の前記対向面に、凹部が形成されており、この凹部に、前記一方の熱盤に対応する前記金型が嵌合していることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性無端ベルトの製造装置。
【請求項4】
前記ベルト用基材は、その一方の面に、前記ベルト長さ方向に所定の間隔で配置された複数の歯部を有するものであり、
前記凹部に嵌合された前記金型に、前記ベルト用基材の前記複数の歯部にそれぞれ対応する、複数の歯溝が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の熱可塑性無端ベルトの製造装置。
【請求項5】
熱可塑性を有するベルト用基材のベルト長さ方向に関する両端部が突き合わされた、無端ベルトを製造する方法であって、
前記ベルト用基材の突き合わせ部の前記ベルト長さ方向に関する両側部分を冷却しつつ、
前記ベルト用基材の両面側に対向配置された1対の熱盤にそれぞれ接し、且つ、前記ベルト用基材の両側部分を冷却する冷却部には接していない、1対の金型により、前記突き合わせ部を加熱加圧することを特徴とする熱可塑性無端ベルトの製造方法。
【請求項6】
前記1対の金型で前記突き合わせ部を加熱加圧することにより、前記ベルト用基材の前記両端部を接合することを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性無端ベルトの製造方法。
【請求項7】
前記ベルト用基材として、その一方の面に、前記ベルト長さ方向に所定の間隔で配置された複数の歯部を有するとともに、前記突き合わせ部が予め接合されたものを用い、
前記ベルト用基材の前記一方の面を押圧する一方の金型には、前記複数の歯部にそれぞれ対応する、複数の歯溝が形成されており、
前記1対の金型で前記突き合わせ部を加熱加圧することにより、前記突き合わせ部における前記歯部の形状を、前記一方の金型の前記歯溝によって修正することを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性無端ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−107124(P2009−107124A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278680(P2007−278680)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】