説明

熱可塑性高分子用帯電防止剤及び熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法並びに帯電防止性熱可塑性高分子成形体

【課題】熱可塑性高分子成形体に充分な耐久性のある帯電防止性を付与でき、同時に熱可塑性高分子成形体等の再利用性、熱可塑性高分子成形体への塗布性、熱可塑性高分子成形体からの非転写性、熱可塑性高分子成形体同士の耐ブロッキング性及び熱可塑性高分子成形体の非タック性等、望まれる優れた特性を有する熱可塑性高分子用帯電防止剤、これを用いる熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法、これを用いた帯電防止性熱可塑性高分子成形体を提供する。
【解決手段】熱可塑性高分子用帯電防止剤として、分子中に、第四級アンモニウム塩基を有する特定の単量体から形成された構成単位と特定の架橋性単量体から形成された構成単位とこれらと共重合可能な他の単量体から形成された構成単位とを所定割合で有する、所定の数平均分子量のビニル共重合体を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性高分子用帯電防止剤及び熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法並びに帯電防止性熱可塑性高分子成形体に関する。各種の熱可塑性高分子が、フィルム、シート、容器、筐体等の熱可塑性高分子成形体として広く使用されている。しかし、かかる熱可塑性高分子成形体には、その製造乃至加工工程で、またその使用時に、様々な静電気障害の生じることが知られている。熱可塑性高分子成形体の製造乃至加工では、かかる静電気障害を充分に防止できる帯電防止剤を使用することが要求されるのである。一方、近年では、環境汚染を回避し、同時に製造乃至加工コストを低減する観点から、熱可塑性高分子成形体の製造乃至加工工程で生じる屑類や使用済み熱可塑性高分子成形体を再利用することが望まれているが、そのためには、前記のように熱可塑性高分子成形体の製造乃至加工で使用する帯電防止剤が、かかる再利用に問題を生じないものであることが要求される。本発明は、以上の要求に応える熱可塑性高分子用帯電防止剤及びこれを用いる熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法並びにこれを用いた帯電防止性熱可塑性高分子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性高分子用帯電防止剤として一般に、多種多様なイオン性高分子化合物が使用されている。しかし、熱可塑性高分子用帯電防止剤として従来一般に使用されているイオン性高分子化合物には、1)概して耐熱性に劣るため、結果として熱可塑性高分子成形体に充分な耐久性のある帯電防止性を付与できない、2)それを熱可塑性高分子成形体の製造乃至加工で用いると、生じる屑類や使用済み熱可塑性高分子成形体を再溶融するときに着色するため、これらの再利用が制約される、3)熱可塑性高分子成形体への塗布性が劣るという問題がある。
【0003】
前記のような問題を改善する熱可塑性高分子用帯電防止剤として、分子中に複数の窒素原子を有するポリカチオンポリマーが提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。しかし、熱可塑性高分子用帯電防止剤として従来提案されているポリカチオンポリマーには、耐熱性が相応に改善され、したがって熱可塑性高分子成形体に相応の帯電防止性を付与できるものの、1)前記と同様に再利用が制約される、2)前記と同様に塗布性が劣る、3)それを用いた熱可塑性高分子成形体の塗布面から転写により移行し易い、4)それを用いた熱可塑性高分子成形体がフィルムやシート等である場合にはこれら同士がブロッキングを起こし易く、またそれを用いた熱可塑性高分子成形体が容器や筐体等である場合にはこれらにタック感(ベタツキ感)がある等、何らかの点で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−146931号公報
【特許文献2】特開平1−174538号公報
【特許文献3】特開平8−281891号公報
【特許文献4】特開平9−31224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、熱可塑性高分子成形体に充分な耐久性のある帯電防止性を付与でき、同時に熱可塑性高分子成形体等の再利用性、熱可塑性高分子成形体への塗布性、熱可塑性高分子成形体からの非転写性、熱可塑性高分子成形体同士の耐ブロッキング性及び熱可塑性高分子成形体の非タック性等、望まれる優れた特性を有する熱可塑性高分子用帯電防止剤、これを用いる熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法、これを用いた帯電防止性熱可塑性高分子成形体を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかして本発明者は、前記の課題を解決するべく研究した結果、熱可塑性高分子用帯電防止剤として、分子中に、第四級アンモニウム塩基を有する特定の単量体から形成された構成単位と特定の架橋性単量体から形成された構成単位とを所定割合で有する、所定の数平均分子量のビニル共重合体を用いるのが好適であることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、下記のビニル共重合体Nから選ばれる一つ又は二つ以上から成ることを特徴とする熱可塑性高分子用帯電防止剤に係る。また本発明は、下記のビニル共重合体Nから選ばれる一つ又は二つ以上と下記のビニル共重合体Mから選ばれる一つ又は二つ以上とから成ることを特徴とする熱可塑性高分子用帯電防止剤に係る。
【0008】
ビニル共重合体N:分子中に下記の化1で示される単量体から形成された構成単位Aを60〜99.8モル%、下記の架橋性単量体から形成された構成単位Bを0.1〜39.9モル%及び下記の化1で示される単量体又は下記の架橋性単量体と共重合可能な単量体から形成された構成単位Cを0.1〜39.9モル%(合計100モル%)有する数平均分子量5000〜1000000のビニル共重合体
【0009】
ビニル共重合体M:分子中に下記の化1で示される単量体から形成された構成単位Aを60〜99.9モル%及び下記の架橋性単量体から形成された構成単位Bを0.1〜40モル%(合計100モル%)有する数平均分子量5000〜1000000のビニル共重合体
【0010】
架橋性単量体:下記の化2で示される架橋性単量体、下記の化3で示される架橋性単量体及び下記の化4で示される架橋性単量体から選ばれる一つ又は二つ以上
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】




【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
化1〜化4において、
,R,R,R,R:水素原子又はメチル基
,R,R:水素原子、メチル基又はアルキル基の炭素数が2若しくは3のヒドロキシアルキル基(但し、R〜Rのうちで少なくとも二つはメチル基又はアルキル基の炭素数が2若しくは3のヒドロキシアルキル基)
:水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基
B:炭素数2〜6のアルキレン基
:硝酸イオン基又はアルキル基の炭素数が1〜4のアルキルスルホン酸イオン基
:水素原子、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、エポキシ基を有する炭素数3〜10の有機基又は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから一つの水酸基を除いた残基
:水素原子、エポキシ基を有する炭素数3〜10の有機基又は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから一つの水酸基を除いた残基
【0016】
更に本発明は、前記した本発明に係る熱可塑性高分子用帯電防止剤を、下記の熱可塑性高分子材料から製造される熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり0.01〜3gの割合となるよう付着させることを特徴とする熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法に係る。更にまた本発明は、前記した本発明に係る熱可塑性高分子用帯電防止剤が、下記の熱可塑性高分子材料から製造された熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり0.01〜3gの割合で付着されて成ることを特徴とする帯電防止性熱可塑性高分子成形体に係る。
【0017】
熱可塑性高分子材料:ポリカーボネート系高分子材料、ポリスチレン系高分子材料、ポリアクリル系高分子材料、ポリビニル系高分子材料及びポリオレフィン系高分子材料から選ばれる一つ又は二つ以上
【0018】
先ず、本発明に係る熱可塑性高分子用帯電防止剤(以下単に本発明の帯電防止剤という)について説明する。本発明の帯電防止剤として供するビニル共重合体には、化1で示される単量体から形成された構成単位Aと架橋性単量体から形成された構成単位Bと化1で示される単量体又は架橋性単量体と共重合可能な単量体(以下単に他の単量体という)から形成された構成単位Cとから構成されたビニル共重合体Nから選ばれる一つ又は二つ以上が含まれ、またビニル共重合体Mをも用いる場合には化1で示される単量体から形成された構成単位Aと架橋性単量体から形成された構成単位Bとから構成されたビニル共重合体Mから選ばれる一つ又は二つ以上も含まれる。
【0019】
ビニル共重合体Nにおいて、構成単位Aは化1で示される単量体から形成されるものである。化1で示される単量体において、化1中のBとしては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数2〜6のアルキレン基が挙げられるが、エチレン基又はトリメチレン基が好ましい。
【0020】
また化1で示される単量体において、化1中のRは水素原子又はメチル基であり、化1中のR,R,Rは、水素原子、メチル基又はアルキル基の炭素数が2若しくは3のヒドロキシアルキル基であって、R〜Rのうちで少なくとも二つはメチル基又はアルキル基の炭素数が2若しくは3のヒドロキシアルキル基となるものである。すなわち、Rが水素原子の場合、RとRはメチル基又はアルキル基の炭素数が2若しくは3のヒドロキシアルキル基であり、同様にRが水素原子の場合、RとRはメチル基又はアルキル基の炭素数が2若しくは3のヒドロキシアルキル基であって、同様にRが水素原子の場合、RとRはメチル基又はアルキル基の炭素数が2若しくは3のヒドロキシアルキル基である。
【0021】
更に化1で示される単量体において、化1中のXは、1)硝酸イオン基、2)メチルスルホン酸イオン基、エチルスルホン酸イオン基、プロピルスルホン酸イオン基、イソプロピルスルホン酸イオン基、ブチルスルホン酸イオン基、イソブチルスルホン酸イオン基等の炭素数が1〜4のアルキルスルホン酸イオン基であるが、Xとしては硝酸イオン基又はメチルスルホン酸イオン基が好ましく、メチルスルホン酸イオン基がより好ましい。
【0022】
以上説明した化1で示される単量体の具体例としては、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムメチルスルホン酸塩、アクリロイルアミノプロピルジメチルアンモニウムエチルスルホン酸塩、アクリロイルアミノプロピル2−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウム硝酸塩、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム硝酸塩、メタクリロイルアミノブチルトリメチルアンモニウムメチルスルホン酸塩、メタクリロイルアミノヘキシルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム硝酸塩等が挙げられる。
【0023】
ビニル共重合体Nにおいて、構成単位Bは架橋性単量体から形成されるものである。かかる架橋性単量体は、化2で示される架橋性単量体、化3で示される架橋性単量体及び化4で示される架橋性単量体から選ばれる一つ又は二つ以上であるが、架橋性単量体としては、化2で示されるものが好ましい。
【0024】
化2で示される架橋性単量体において、化2中のRは水素原子又はメチル基であり、化2中のRは、1)水素原子、2)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基であるが、Rとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0025】
以上説明した化2で示される架橋性単量体の具体例としては、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ターシャリーブチルオキシメチルアクリルアミド、N−ヘキシルオキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−ターシャリーブチルオキシメチルメタクリルアミド、N−ヘキシルオキシメチルメタクリルアミド等が挙げられるが、なかでもN−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドが好ましい。
【0026】
化3で示される架橋性単量体において、化3のR,Rは水素原子又はメチル基であり、化3中のYは、1)水素原子、2)ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基等の炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、3)グリシジル基、2,3−エポキシブチル基、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシ基を有する炭素数3〜10の有機基、4)分子中に2〜20個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリオキシエチレンジオールから一つの水酸基を除いた残基、分子中に2〜20個のオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシプロピレン基を有するポリオキシプロピレンジオールから一つの水酸基を除いた残基、分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位で構成された(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン基を有する(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレンジオールから一つの水酸基を除いた残基のような、ポリオキシアルキレンジオールから一つの水酸基を除いた残基である。なかでもYとしては、1)水素原子、2)ヒドロキシエチル基、3)グリシジル基、2,3−エポキシブチル基、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル基等のエポキシ基を有する炭素数3又は4の有機基が好ましく、グリシジル基がより好ましい。
【0027】
以上説明した化3で示される架橋性単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、ヒドロキシメチルクロトナート、2−ヒドロキシエチルクロトナート、3−ヒドロキシプロピルクロトナート、4−ヒドロキシブチルクロトナート、5−ヒドロキシペンチルクロトナート、6−ヒドロキシヘキシルクロトナート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2,3−エポキシブチルアクリレート、2,3−エポキシブチルメタクリレート、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルアクリレート、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルメタクリレート、グリシジルクロトナート、アクリル酸ポリオキシエチレン、アクリル酸ポリオキシプロピレン、アクリル酸オキシエチレンオキシプロピレン、アクリル酸ポリオキシエチレンオキシプロピレン、アクリル酸オキシエチレンポリオキシプロピレン、アクリル酸ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、メタクリル酸ポリオキシエチレン、メタクリル酸ポリオキシプロピレン、メタクリル酸オキシエチレンオキシプロピレン、メタクリル酸ポリオキシエチレンオキシプロピレン、メタクリル酸オキシエチレンポリオキシプロピレン、メタクリル酸ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、クロトン酸ポリオキシプロピレン、クロトン酸オキシエチレンオキシプロピレン、クロトン酸ポリオキシエチレンオキシプロピレン、クロトン酸オキシエチレンポリオキシプロピレン、クロトン酸ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン等が挙げられるが、なかでもアクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0028】
化4で示される架橋性単量体において、化4中のRは水素原子又はメチル基であり、化4中のYは、1)水素原子、2)グリシジル基、2,3−エポキシブチル基、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシ基を有する炭素数3〜10の有機基、3)分子中に2〜20個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリオキシエチレンジオールから一つの水酸基を除いた残基、分子中に2〜20個のオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシプロピレン基を有するポリオキシプロピレンジオールから一つの水酸基を除いた残基、分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位で構成された(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン基を有する(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレンジオールから一つの水酸基を除いた残基のような、ポリオキシアルキレンジオールから一つの水酸基を除いた残基である。なかでもYとしては、エポキシ基を有する炭素数3又は4の有機基が好ましく、グリシジル基がより好ましい。
【0029】
以上説明した化4で示される架橋性単量体の具体例としては、アリルアルコール、アリルグリシジルエーテル、アリル=2,3−エポキシブチルエーテル、アリル=2,3−エポキシブチルエーテル、アリル=2,3−エポキシ−2−メチルプロピルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、メタリル=2,3−エポキシブチルエーテル、メタリル=2,3−エポキシブチルエーテル、メタリル=2,3−エポキシ−2−メチルプロピルエーテル、α−アリル−ω−ヒドロキ(ポリオキシエチレン)、α−アリル−ω−ヒドロキ(ポリオキシプロピレン)、α−アリル−ω−ヒドロキ(オキシエチレンオキシプロピレン)、α−アリル−ω−ヒドロキ(ポリオキシエチレンオキシプロピレン)、α−アリル−ω−ヒドロキ(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキ(ポリオキシエチレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキ(ポリオキシプロピレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキ(オキシエチレンオキシプロピレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキ(ポリオキシエチレンオキシプロピレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキ(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)等が挙げられるが、なかでもアリルアルコール、アリルグリシジルエーテルが好ましい。
【0030】
ビニル共重合体Nにおいて、構成単位Cは他の単量体から形成されるものである。かかる他の単量体としては、1)オクテン酸、ドデセン酸、オレイン酸等の炭素数が6〜18の不飽和一塩基酸、2)炭素数が1〜20の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、3)マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数が4若しくは5の不飽和二塩基酸及びその塩、4)マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数が4若しくは5の不飽和二塩基酸と炭素数が1〜20の脂肪族アルコールとの(ジ)エステル、5)マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数が4若しくは5の不飽和二塩基酸と炭素数が2〜8のグリコールとの(ジ)エステル、6)マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数が4若しくは5の不飽和二塩基酸とオキシアルキレン基の繰り返し数が2〜100のポリアルキレングリコールとの(ジ)エステル、7)(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されたN−アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されたN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等の架橋性を有しない不飽和アミド、8)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、9)α−メチルスチレン、スチレン等の芳香族ビニル単量体、10)酸性ビニルスルホン酸、酸性(メタ)アリルスルホン酸、酸性スルホアルキル(メタ)アクリレート、酸性スチレンスルホン酸等の分子中に酸性スルホン酸基を有するビニル単量体、11)ビニルスルホン酸アルカリ金属塩、(メタ)アリルスルホン酸アルカリ金属塩、スルホアルキル(メタ)アクリレートアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸アルカリ金属塩等の分子中にスルホン酸アルカリ金属塩基を有するビニル単量体等が挙げられるが、なかでも、炭素数が1〜4の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されたN−アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されたN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド及び炭素数が4若しくは5の不飽和二塩基酸と炭素数が2〜8のグリコールとの(ジ)エステルから選ばれる一つ又は二つ以上が好ましい。
【0031】
本発明の帯電防止剤として供するビニル共重合体Nは、以上説明した化1で示される単量体と架橋性単量体と他の単量体とをラジカル共重合して得られる。ラジカル共重合それ自体は、公知の方法、通常は水又は水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いた水性溶液中にて行なうことができる。例えば、化1で示されるビニル単量体と架橋性単量体と他の単量体とを水に溶解し、これらの単量体を合計量として10〜45重量%含む水溶液を調製した後、窒素ガス雰囲気下において、これにラジカル開始剤を加え、50〜80℃で4〜8時間ラジカル重合反応させる。用いるラジカル開始剤としては、重合反応温度下において分解し、ラジカル発生するものであれば、その種類は特に制限されないが、水溶性のラジカル開始剤を用いるのが好ましい。かかる水溶性のラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等が挙げられる。これらは、亜硫酸塩やL−アスコルビン酸の如き還元性物質更にはアミン等と組み合わせ、レドックス開始剤として用いることもできる。
【0032】
ビニル共重合体Nは、分子中に化1で示される単量体から形成された構成単位Aを60〜99.8モル%、好ましくは80〜98モル%、より好ましく86〜96モル%、架橋性単量体から形成された構成単位Bを0.1〜39.9モル%、好ましくは1〜19モル%、より好ましく2〜12モル%、他の単量体から形成された構成単位Cを0.1〜39.9モル%、好ましくは1〜19モル%、より好ましく2〜12モル%(合計100モル%)有するものとする。またビニル共重合体Nの数平均分子量は、5000〜1000000のものとするが、7000〜100000のものとするのが好ましい。数平均分子量が5000未満であると、熱可塑性高分子成形体に付与する帯電防止性が不充分になり、逆に数平均分子量が1000000を超えると、熱可塑性高分子成形体に均一塗布するのが難しくなる。
【0033】
一方、ビニル共重合体Mにおいて、構成単位A及び構成単位Bは、ビニル共重合体Nについて前記したことと同じである。ビニル共重合体Mは、化1で示される単量体と架橋性単量体とをラジカル共重合して得られる。かかるラジカル共重合は、ビニル共重合体Nについて前記したことと同じである。ビニル共重合体Mは、分子中に化1で示される単量体から形成された構成単位Aを60〜99.9モル%、好ましくは80〜99モル%、より好ましく88〜98モル%、架橋性単量体から形成された構成単位Bを0.1〜40モル%、好ましくは1〜20モル%、より好ましく2〜12モル%(合計100モル%)有するものとする。またビニル共重合体Mの数平均分子量は、5000〜1000000のものとするが、7000〜100000のものとするのが好ましい。数平均分子量が5000未満であると、熱可塑性高分子成形体に付与する帯電防止性が不充分になり、逆に数平均分子量が1000000を超えると、熱可塑性高分子成形体に均一塗布するのが難しくなる。
【0034】
次に、本発明に係る熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法(以下単に本発明の帯電防止方法という)について説明する。本発明の帯電防止方法は、前記した本発明の帯電防止剤を、熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり0.01〜3g、好ましくは0.02〜1gの割合となるよう付着させる方法である。ここで表面1m当たりというのは、片表面又は外表面1m当たりという意味である。通常、熱可塑性高分子成形体がフィルムやシートのような平面的なものである場合には片表面1m当たりとなり、熱可塑性高分子成形体が容器や筐体のような立体的なものである場合には外表面1m当たりとなる。
【0035】
本発明の帯電防止方法において、用いる本発明の帯電防止剤の形態は特に制限されないが、本発明の帯電防止剤を、水を主溶媒とし、必要に応じてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル類等を含有する溶媒を用いて、水性液としたものが好ましい。かかる水性液を用いる場合も、熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり本発明の帯電防止剤として0.01〜3g、好ましくは0.02〜1gの割合となるように付着させる。付着には、熱可塑性高分子成形体の主に形状との関係で、ロールコート法、グラビアコート法、エアナイフコート法、バーコート法、キスコート法、更にはスプレーコート法、デップコート法等、公知の方法を適用できる。
【0036】
本発明の帯電防止方法において、本発明の帯電防止剤は、熱可塑性高分子成形体に適用されるが、結果として熱可塑性高分子成形体に適用されればよい。例えば、その後に延伸工程に供されて製品化される熱可塑性高分子材料製の未延伸フィルムや一軸延伸フィルム等に適用してもよいし、また製品化された熱可塑性高分子材料製の容器や筐体等に適用してもよいのである。その後に延伸工程に供されて製品化される熱可塑性高分子材料製の未延伸フィルムや一軸延伸フィルム等に適用する場合も、本発明の帯電防止剤の塗布量は、延伸工程後に製品となる熱可塑性高分子フィルムすなわち熱可塑性高分子成形体1m当たり0.01〜3g、好ましくは0.02〜1.0gの割合となるようにする。塗布に際しては、本発明の効果を損なわない範囲内で、バインダー樹脂、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、架橋剤等を併用することもできる。
【0037】
本発明の帯電防止方法は各種の熱可塑性高分子材料から製造される様々な形状の熱可塑性高分子成形体に適用できる。かかる熱可塑性高分子材料としては、1)ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系高分子材料、2)ポリカーボネート系高分子材料、3)ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(以下単にABSという)等のポリスチレン系高分子材料、4)ポリメチルメタクリレート(以下単にPMMAという)等のポリアクリル系高分子材料、5)ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル系高分子材料、6)ポリエチレン、ポリプロピレン(以下単にPPという)等のポリオレフィン系高分子材料、7)ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,10、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと脂肪族ジカルボン酸とのポリアミド、脂肪族ジアミンと1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とのポリアミド、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−m−フェニレンイソフタラミド等のポリアミド系高分子材料、8)前記1)〜7)から選ばれる二つ以上の熱可塑性高分子材料のポリマーブレンド、ポリマーアロイ等の熱可塑性高分子材料等が挙げられる。なかでも、本発明の帯電防止剤は、ポリカーボネート系高分子材料、ポリスチレン系高分子材料、ポリアクリル系高分子材料、ポリビニル系高分子材料及びポリオレフィン系高分子材料から選ばれる一つ又は二つ以上の熱可塑性高分子材料から製造される熱可塑性高分子成形体に適用する場合に効果の発現が高い。本発明の帯電防止剤を適用するに際して、以上のような熱可塑性高分子材料は、酸化チタン、タルク、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、シリコーン等の無機フィラー、架橋ポリスチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の有機フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、易滑剤、難燃剤等を含有していても、支障はない。
【0038】
最後に、本発明に係る帯電防止性熱可塑性高分子成形体(以下単に本発明の帯電防止性成形体という)について説明する。本発明の帯電防止性成形体は、前記した本発明の帯電防止剤が熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり0.01〜3g、好ましくは0.02〜1gの割合で付着されて成るものである。本発明の帯電防止性成形体において、熱可塑性高分子成形体、その表面1m当たりの意味、熱可塑性高分子成形体を製造するために用いる熱可塑性高分子材料、なかでも好ましい熱可塑性高分子材料等については、本発明の帯電防止方法について前記したことと同様である。
【発明の効果】
【0039】
本発明の帯電防止剤によると、熱可塑性高分子成形体に充分な耐久性のある帯電防止性を付与でき、同時に熱可塑性高分子成形体等の再利用性、熱可塑性高分子成形体への塗布性、熱可塑性高分子成形体からの非転写性、熱可塑性高分子成形体同士の耐ブロッキング性及び熱可塑性高分子成形体の非タック性に優れるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の帯電防止剤の実施形態としては、下記のビニル共重合体N−Pから選ばれる一つ又は二つ以上から成るものが挙げられる。
ビニル共重合体N−P:分子中に、化1中のXが硝酸イオン基又はメチルスルホン酸イオン基であり、Bがエチレン基又はトリメチレン基である場合の化1で示される単量体から形成された構成単位を80〜98モル%、化2で示される架橋性単量体から形成された構成単位を1〜19モル%及び下記の他の単量体から形成された構成単位を1〜19モル%(合計100モル%)有する数平均分子量7000〜100000のビニル共重合体
他の単量体:炭素数が1〜4の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されたN−アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されたN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド及び炭素数が4若しくは5の不飽和二塩基酸と炭素数が2〜8のグリコールとの(ジ)エステルから選ばれる一つ又は二つ以上
【0041】
また本発明の帯電防止方法及び帯電防止性成形体の実施形態としては、前記の実施形態に相当する本発明の帯電防止剤を、下記の熱可塑性高分子材料から製造される熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり0.01〜3gの割合となるよう付着させる方法及びこの方法によって得られるものが挙げられる。
熱可塑性高分子材料:ポリカーボネート系高分子材料、ポリスチレン系高分子材料、ポリアクリル系高分子材料、ポリビニル系高分子材料及びポリオレフィン系高分子材料から選ばれる一つ又は二つ以上
【0042】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は重量部を、また%は重量%を意味する。
【実施例】
【0043】
試験区分1(帯電防止剤としてのビニル共重合体の合成)
・参考例1{ビニル共重合体(M−1)の合成}
反応容器に水340gを仕込み、撹拌下に該反応容器内を窒素置換して80℃とした後、アクリロイルアミノエチルジメチルアンモニウムメチルスルホン酸塩287.3g(1.14モル)、N−メチロールアクリルアミド12.7g(0.13モル)及び水300gからなるビニル単量体水溶液と、5%過硫酸アンモニウム水溶液30gとを、2時間かけて同時に滴下し、ラジカル重合反応を行なった。次いで5%過硫酸アンモニウム水溶液30gを1時間かけて追加した後、反応温度を80℃に保持して6時間ラジカル重合反応を続け、反応物を得た。反応物の一部を精製して分析した結果、化1中のRが水素原子、Rがメチル、Rがメチル基、Rがメチル基、Bがエチレン基、Xがメチルスルホン酸イオン基である場合の化1で示される単量体(E−1)から形成された構成単位を90モル%、化2中のRが水素原子、Rが水素原子である場合の化2で示される単量体(F−1)から形成された構成単位を10モル%(合計100モル%)有する数平均分子量40000のビニル共重合体(M−1)であった。
【0044】
・実施例12〜23及び比較例1〜6{ビニル共重合体(N−1)〜(N−12)及び(R−1)〜(R−6)の合成}
参考例1のビニル共重合体(M−1)と同様にして、実施例12〜23のビニル共重合体(N−1)〜(N−12)及び比較例1〜6のビニル共重合体(R−1)〜(R−6)を合成した。これらをそれぞれ、本発明の帯電防止剤(N−1)〜(N−12)及び比較の帯電防止剤(R−1)〜(R−6)とした。これらの内容を表1にまとめて示した。
【0045】
【表1】

【0046】
表1において、
割合:単位はモル%
単量体(E−1),(E−2),(E−5)〜(E−10):下記の表2に内容をまとめて示した化1で示される単量体
単量体(F−1)〜(F−4):下記の表3に内容をまとめて示した化2で示される単量体
単量体(G−1),(G−3)〜(G−5):下記の表4に内容をまとめて示した化3で示される単量体
単量体(H−2)〜(H−5):下記の表5に内容をまとめて示した化4で示される単量体
K−1:アクリル酸ブチル
K−2:N−エチルアクリルアミド
K−3:N,N−ジメチルアクリルアミド
K−4:マレイン酸ジエチル
K−5:アクリルアミド
K−6:酢酸ビニル
K−7:スチレンスルホン酸ナトリウム
K−8:マレイン酸ジポリエチレングリコール(ポリエチレングリコール部分の平均分子量200)


【0047】
【表2】

【0048】
表2において、
L−1:2−ヒドロキシエチル基
B−1:エチレン基
B−2:トリメチレン基
B−3:テトラメチレン基
B−4:ヘキサメチレン基
X−1:メチルスルホン酸イオン基
X−2:エチルスルホン酸イオン基
X−3:硝酸イオン基
【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
表4において、
Y−1:分子中に3個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリオキシエチレンジオールから一つの水酸基を除いた残基




【0052】
【表5】

【0053】
表5において、
Y−3:分子中に2個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリオキシエチレンジオールから一つの水酸基を除いた残基
Y−4:分子中に5個のオキシエチレン単位及び5個のオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジオールから一つの水酸基を除いた残基
【0054】
試験区分2(ポリエチレンテレフタレートフィルムへの帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ポリエチレンテレフタレートフィルムへの帯電防止剤の塗布
極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを280〜300℃で溶融押し出しし、15℃の冷却ロールで冷却して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを周速の異なる85℃の一対のロール間で縦方向に3.5倍に一軸延伸して一軸延伸フィルムとした。次に、試験区分1で合成したビニル共重合体等(帯電防止剤)を水希釈して5%水性液となし、この5%水性液を、一軸延伸フィルムに、更に延伸されて製品となる二軸延伸フィルムの表面1m当たり表6に記載の塗布量となるようキスコート法で塗布し、70℃の熱風で乾燥して、一軸延伸コーティングポリエステルフィルムとした。最後に、一軸延伸コーティングポリエステルフィルムをテンターにより98℃で横方向に3.5倍延伸し、200〜210℃で熱固定して、製品としての厚さ100μmの二軸延伸コーティングポリエステルフィルムを得た。得られた一軸延伸又は二軸延伸コーティングポリエステルフィルムについて以下の評価を行なった。結果を表6にまとめて示した。
【0055】
・帯電防止性の評価
条件1
前記の一軸延伸コーティングポリエステルフィルムを、20℃で相対湿度50%の条件下に24時間調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:表面比抵抗が1×1010Ω未満
○:表面比抵抗が1×1010Ω以上1×1011Ω未満
△:表面比抵抗が1×1011Ω以上1×1012Ω未満
×:表面比抵抗が1×1012Ω以上
【0056】
条件2
前記の二軸延伸コーティングポリエステルフィルムについて、条件1の場合と同様に評価した。
【0057】
条件3
前記の二軸延伸コーティングポリエステルフィルムを、20℃で相対湿度30%の条件下に24時間調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:表面比抵抗が1×1011Ω未満
○:表面比抵抗が1×1011Ω以上1×1012Ω未満
△:表面比抵抗が1×1012Ω以上1×1013Ω未満
×:表面比抵抗が1×1013Ω以上
【0058】
・再利用性の評価
前記の二軸延伸コーティングポリエステルフィルムを粉砕し、押し出し機にて約300℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生フィルムを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布した二軸延伸コーティングポリエステルフィルムを用いて再生フィルムを作製した。双方の再生フィルムの着色度合いから再利用性を下記の基準で評価した。
評価基準
◎:ブランクと同等であって、ほとんど着色していない
○:ブランクと比較して僅に着色しているが、再利用に問題がない
△:ブランクと比較して明らかに着色しており、再利用に制約がある
×:ブランクと比較して著しく着色しており、再利用できない
【0059】
・塗布性の評価
前記の二軸延伸コーティングポリエステルフィルムの表面を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:塗布抜けがなく、均一な塗布膜である
○:塗布抜けが極めて僅にあるが、ほぼ均一な塗布膜である
△:塗布抜けが幾分あるが、全体としてはほぼ均一な塗布膜である
×:塗布抜けが多く、不均一な塗布膜である
【0060】
・非転写性の評価
前記の一軸延伸コーティングポリエステルフィルムから20cm×20cmの正方形に切り出した試料片とコーティング処理していない一軸延伸ポリエステルフィルムとをコーティング面で重ね、荷重1kg/mを均等にかけて、20℃で相対湿度50%の条件下に60時間調湿した後、同条件で試料片のコーティング面の表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:表面比抵抗が1×1010Ω未満
○:表面比抵抗が1×1010Ω以上1×1011Ω未満
△:表面比抵抗が1×1011Ω以上1×1012Ω未満
×:表面比抵抗が1×1012Ω以上
【0061】
・耐ブロッキング性の評価
前記の一軸延伸コーティングポリエステルフィルムから20cm×20cmの正方形に切り出した試料片とコーティング処理していない一軸延伸ポリエステルフィルムとをコーティング面で重ね、荷重1kg/mを均等にかけて、50℃にて24時間保持した後、フィルムを10mm幅に切断し、試料片とコーティング処理していないフィルムとの剥離力を測定し、耐ブロッキング性を下記の基準で評価した。
評価基準
◎:剥離力5gf/10mm未満
○:剥離力5gf/10mm以上、8gf/10mm未満
△:剥離力8gf/10mm以上、15gf/10mm未満
×:剥離力15gf/10mm以上
【0062】
【表6】

【0063】
表6において、
割合:帯電防止剤中の重量%(以下同じ)
塗布量:製品としての二軸延伸フィルム1m当たりの帯電防止剤としての付着量(g)(以下同じ)
R−7:分子中にm個の下記の化5で示されるピロリジウム環を有する数平均分子量32000のポリカチオンポリマー(以下同じ)
R−8:分子中にn個の下記の化6で示されるピロリジウム環を有する数平均分子量23000のポリカチオンポリマー(以下同じ)
【0064】
【化5】




【0065】
【化6】

【0066】
試験区分3(ポリカーボネートシートへの帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ポリカーボネートシートへの帯電防止剤の塗布
ポリカーボネートを、二軸押出機に投入し、280℃で溶融混練し、Tダイ法により30℃の冷却ロール上にキャストして、厚さ1mmのポリカーボネートシートを作製した。次に、試験区分1で合成したビニル共重合体等(帯電防止剤)を水希釈して5%水性液となし、この5%水性液を、ポリカーボネート製シートの表面1m当たり表7に記載の塗布量となるようキスコート法で塗布し、150℃の熱風で1分間乾燥して、帯電防止処理されたポリカーボネートシートを得た。この帯電防止処理されたポリカーボネートシートについて以下の評価を行なった。結果を表7にまとめて示した。
【0067】
・帯電防止性の評価
条件1
前記の帯電防止処理されたポリカーボネートシートを、20℃で相対湿度50%の条件下に24時間調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:表面比抵抗が1×109Ω未満
○:表面比抵抗が1×109Ω以上1×1010Ω未満
△:表面比抵抗が1×1010Ω以上1×1011Ω未満
×:表面比抵抗が1×1011Ω以上
【0068】
条件2
前記の帯電防止処理されたポリカーボネートシートを、20℃で相対湿度40%の条件下に24時間調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:表面比抵抗が2×109Ω未満
○:表面比抵抗が2×109Ω以上2×1010Ω未満
△:表面比抵抗が2×1010Ω以上2×1011Ω未満
×:表面比抵抗が2×1011Ω以上
【0069】
条件3
前記の帯電防止処理されたポリカーボネートシートを、20℃で相対湿度30%の条件下に24時間調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:表面比抵抗が1×1010Ω未満
○:表面比抵抗が1×1010Ω以上1×1011Ω未満
△:表面比抵抗が1×1011Ω以上1×1012Ω未満
×:表面比抵抗が1×1012Ω以上
【0070】
・再利用性の評価
前記の帯電防止処理されたポリカーボネートシートを粉砕し、押し出し機にて約280℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生シートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布したポリカーボネートシートを用いて再生シートを作製した。双方の再生シートの着色度合いから再利用性を試験区分2の再利用性と同様に評価した。
【0071】
・塗布性の評価
前記の帯電防止処理されたポリカーボネートシートの表面を肉眼で観察し、試験区分2の塗布性と同様に評価した。
【0072】
・非転写性の評価
前記の帯電防止処理されたポリカーボネートシートから20cm×20cmの正方形に切り出した試料片と帯電防止処理されていない未処理のポリカーボネートシートとを帯電防止剤の塗布面で重ね、荷重1kg/mを均等にかけて、20℃で相対湿度50%の条件下に60時間調湿した後、同条件で試料片の帯電防止剤の塗布面の表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:表面比抵抗が1×109Ω未満
○:表面比抵抗が1×109Ω以上1×1010Ω未満
△:表面比抵抗が1×1010Ω以上1×1011Ω未満
×:表面比抵抗が1×1011Ω以上
【0073】
・耐ブロッキング性の評価
前記の帯電防止処理されたポリカーボネートシートから20cm×20cmの正方形に切り出した試料片と帯電防止処理されていない未処理のポリカーボネートシートとをコーティング面で重ね、荷重1kg/mを均等にかけて、50℃にて24時間保持した後、シートを10mm幅に切断し、試料片と帯電防止処理されていない未処理のポリカーボネートシートとの剥離力を測定し、耐ブロッキング性を試験区分2の耐ブロッキング性と同様に評価した。














【0074】
【表7】

【0075】
試験区分4(ABSシートへの帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ABSシートへの帯電防止剤の塗布
ABSを、二軸押出機に投入し、220℃で溶融混練し、Tダイ法により30℃の冷却ロール上にキャストして、厚さ1mmのABSシートを作製した。次に、試験区分1で合成したビニル共重合体等(帯電防止剤)を水希釈して5%水性液となし、この5%水性液を、ABS製シートの表面1m当たり表8に記載の塗布量となるようキスコート法で塗布し、150℃の熱風で1分間乾燥して、帯電防止処理されたABSシートを得た。この帯電防止処理されたABSシートについて以下の評価を行なった。結果を表8にまとめて示した。
【0076】
・帯電防止性の評価
前記の帯電防止処理されたABSシートの帯電防止性を、試験区分3の帯電防止性と同様に評価した。
【0077】
・再利用性の評価
前記の帯電防止処理されたABSシートを粉砕し、押し出し機にて約220℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生ABSシートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布したABS樹脂シートを用いて再生ABSシートを作製した。双方の再生ABSシートの着色度合いから再利用性を試験区分2の再利用性と同様に評価した。
【0078】
・塗布性の評価
前記の帯電防止処理されたABSシートの表面を肉眼で観察し、試験区分2の塗布性と同様に評価した。
【0079】
・非転写性の評価
前記の帯電防止処理されたABSシートの非転写性を、試験区分3の非転写性と同様に評価した。
【0080】
・耐ブロッキング性の評価
前記の帯電防止処理されたABSシートの耐ブロッキング性を、試験区分3の耐ブロッキング性と同様に評価した。
【0081】
【表8】

【0082】
試験区分5(PMMAシートへの帯電防止剤の塗布及びその評価)
・PMMAシートへの帯電防止剤の塗布
PMMAを、二軸押出機に投入し、230℃で溶融混練し、Tダイ法により30℃の冷却ロール上にキャストして、厚さ1mmのPMMAシートを作製した。次に、試験区分1で合成したビニル共重合体等(帯電防止剤)を水希釈して5%水性液となし、この5%水性液を、PMMAシートの表面1m当たり表9に記載の塗布量となるようキスコート法で塗布し、150℃の熱風で1分間乾燥して、帯電防止処理されたPMMAシートを得た。この帯電防止処理されたPMMAシートについて以下の評価を行なった。結果を表9にまとめて示した。
【0083】
・帯電防止性の評価
前記の帯電防止処理されたPMMAシートの帯電防止性を、試験区分3の帯電防止性と同様に評価した。
【0084】
・再利用性の評価
前記の帯電防止処理されたPMMAシートを粉砕し、押し出し機にて約230℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生PMMAシートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布したPMMAシートを用いて再生PMMAシートを作製した。双方の再生PMMAシートの着色度合いから再利用性を試験区分2の再利用性と同様に評価した。
【0085】
・塗布性の評価
前記の帯電防止処理されたPMMAシートの表面を肉眼で観察し、試験区分2の塗布性と同様に評価した。
【0086】
・非転写性の評価
前記の帯電防止処理されたPMMAシートの非転写性を、試験区分3の非転写性と同様に評価した。
【0087】
・耐ブロッキング性の評価
前記の帯電防止処理されたPMMAシートの耐ブロッキング性を、試験区分3の耐ブロッキング性と同様に評価した。
【0088】
【表9】

【0089】
試験区分6(ポリ塩化ビニルシートへの帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ポリ塩化ビニルシートへの帯電防止剤の塗布
ポリ塩化ビニル100部当たり、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル40部をミキサーに投入した後、更に安定剤としてステアリン酸バリウム2部、ステアリン酸亜鉛1部を加えて混合した。その混合物を二軸押出し機により溶融混練し、Tダイ法により厚さ2mmのポリ塩化ビニルシートを作製した。次に、試験区分1で合成したビニル共重合体等(帯電防止剤)を水希釈して5%水性液となし、この5%水性液を、ポリ塩化ビニルシート1m当たり表10に記載の塗布量となるようキスコート法で塗布し、100℃の熱風で1分間乾燥して、帯電防止処理されたポリ塩化ビニルシートを得た。この帯電防止処理されたポリ塩化ビニルシートについて以下の評価を行なった。結果を表10にまとめて示した。
【0090】
・帯電防止性の評価
前記の帯電防止処理されたポリ塩化ビニルシートの帯電防止性を、試験区分3の帯電防止性と同様に評価した。
【0091】
・再利用性の評価
前記の帯電防止処理されたポリ塩化ビニルシートを粉砕し、押し出し機にて約180℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生ポリ塩化ビニルシートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布したポリ塩化ビニルシートを用いて再生ポリ塩化ビニルシートを作製した。双方の再生ポリ塩化ビニルシートの着色度合いから再利用性を試験区分2と同様に評価した。
【0092】
・塗布性の評価
前記の帯電防止処理されたポリ塩化ビニルシートの表面を肉眼で観察し、試験区分2の塗布性と同様に評価した。
【0093】
・非転写性の評価
前記の帯電防止処理されたポリ塩化ビニルシートの非転写性を、試験区分3の非転写性と同様に評価した。
【0094】
・耐ブロッキング性の評価
前記の帯電防止処理されたポリ塩化ビニルシートの耐ブロッキング性を、試験区分3の耐ブロッキング性と同様に評価した。
【0095】
【表10】

【0096】
試験区分7(PPシートへの帯電防止剤の塗布及びその評価)
・PPシートへの帯電防止剤の塗布
ポリプロピレンを、二軸押出機に投入し、250℃で溶融混練し、Tダイ法により30℃の冷却ロール上にキャストして、厚さ1mmのPPシートを作製した。次に、試験区分1で合成したビニル共重合体等(帯電防止剤)を水希釈して5%水性液となし、この5%水性液を、PPシートの表面1m当たり表11に記載の塗布量となるようキスコート法で塗布し、100℃の熱風で1分間乾燥して、帯電防止処理されたPPシートを得た。この帯電防止処理されたPPシートについて以下の評価を行なった。結果を表11にまとめて示した。
【0097】
・帯電防止性の評価
前記の帯電防止処理されたPPシートの帯電防止性を、試験区分3の帯電防止性と同様に評価した。
【0098】
・再利用性の評価
前記の帯電防止処理されたPPシートを粉砕し、押し出し機にて約230℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生PPシートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布したPPシートを用いて再生PPシートを作製した。双方の再生PPシートの着色度合いから再利用性を試験区分2の再利用性と同様に評価した。
【0099】
・塗布性の評価
前記の帯電防止処理されたPPシートの表面を肉眼で観察し、試験区分2の塗布性と同様に評価した。
【0100】
・非転写性の評価
前記の帯電防止処理されたPPシートの非転写性を、試験区分3の非転写性と同様に評価した。
【0101】
・耐ブロッキング性の評価
前記の帯電防止処理されたPPシートの耐ブロッキング性を、試験区分3の耐ブロッキング性と同様に評価した。























【0102】
【表11】

【0103】
試験区分8(ポリエチレンテレフタレート成形体への帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ポリエチレンテレフタレート成形体への帯電防止剤の塗布
ポリエチレンテレフタレートを、290〜300℃で射出成形し、縦15cm×横2cm×厚さ4mmのポリエチレンテレフタレート成形体を作製した。次に、試験区分1で合成したビニル共重合体等(帯電防止剤)を水希釈して5%水性液となし、この5%水性液を、ポリエチレンテレフタレート成形体の表面1m当たり表12に記載の塗布量となるようスプレー法で塗布し、150℃の熱風で1分間乾燥して、帯電防止処理されたポリエチレンテレフタレート成形体を得た。この帯電防止処理されたポリエチレンテレフタレート成形体について以下の評価を行なった。結果を表12にまとめて示した。
【0104】
・帯電防止性の評価
条件1
前記の帯電防止処理されたポリエチレンテレフタレート成形体を、20℃で相対湿度50%の条件下に24時間調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、試験区分2の帯電防止性の条件1と同じ基準で評価した。
【0105】
条件2
前記の帯電防止処理されたポリエチレンテレフタレート成形体を、20℃で相対湿度40%の条件下に24時間調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、試験区分2の帯電防止性の条件1と同じ基準で評価した。
【0106】
条件3
前記の帯電防止処理されたポリエチレンテレフタレート成形体を、20℃で相対湿度30%の条件下に24時間調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、試験区分2の帯電防止性の条件3と同じ基準で評価した。
【0107】
・再利用性の評価
前記の帯電防止処理されたポリエチレンテレフタレート成形体を粉砕し、押し出し機にて約300℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生ポリエチレンテレフタレートシートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布したポリエチレンテレフタレート成形体を用いて再生ポリエチレンテレフタレートシートを作製した。双方の再生ポリエチレンテレフタレートシートの着色度合いから再利用性を試験区分2の再利用性と同様に評価した。
【0108】
・塗布性の評価
前記の帯電防止処理されたポリエチレンテレフタレート成形体の表面を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:ハジキがなく、均一な塗布膜である
○:ハジキが極めて僅にあるが、ほぼ均一な塗布膜である
△:ハジキが幾分あるが、全体としてはほぼ均一な塗布膜である
×:ハジキが多く、不均一な塗布膜である
【0109】
・非転写性の評価
前記の帯電防止処理されたポリエチレンテレフタレート成形体と帯電防止処理されていない未処理のポリエチレンテレフタレート成形体とを帯電防止剤の塗布面で重ね、荷重1kg/mを均等にかけて、20℃で相対湿度50%の条件下に60時間調湿した後、同条件で帯電防止処理されたポリエチレンテレフタレート成形体の帯電防止剤の塗布面の表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、試験区分2の非転写性と同様に評価した。
【0110】
・非タック性の評価
前記の帯電防止処理されたポリエチレンテレフタレート成形体の非タック性を下記の基準で評価した。
評価基準
◎:ベタツキがなく、良好な表面を有している
○:僅かにベタツキがあるものの、使用可能レベル
△:若干のベタツキがあり、使用には制約がある
×:明らかなベタツキがあり、使用できない













【0111】
【表12】

【0112】
試験区分9(ポリカーボネート成形体への帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ポリカーボネート成形体への帯電防止剤の塗布
ポリカーボネートを、290〜300℃で射出成形し、縦15cm×横2cm×厚さ4mmのポリカーボネート成形体を作製した。次に、試験区分1で合成したビニル共重合体等(帯電防止剤)を水希釈して5%水性液となし、この5%水性液を、ポリカーボネート成形体の表面1m当たり表13に記載の塗布量となるようスプレー法で塗布し、150℃の熱風で1分間乾燥して、帯電防止処理されたポリカーボネート成形体を得た。この帯電防止処理されたポリカーボネート成形体について以下の評価を行なった。結果を表13にまとめて示した。
【0113】
・帯電防止性の評価
前記の帯電防止処理されたポリカーボネート成形体の帯電防止性を、試験区分8の帯電防止性と同様に評価した。
【0114】
・再利用性の評価
前記の帯電防止処理されたポリカーボネート成形体を粉砕し、押し出し機にて約280℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生ポリカーボネートシートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布したポリカーボネート成形体を用いて再生ポリカーボネートシートを作製した。双方の再生ポリカーボネートシートの着色度合いから再利用性を試験区分2の再利用性と同様に評価した。
【0115】
・塗布性の評価
前記の帯電防止処理されたポリカーボネート成形体の表面を肉眼で観察し、試験区分8と同様に評価した。
【0116】
・非転写性の評価
前記の帯電防止処理されたポリカーボネート成形体の非転写性を、試験区分8の非転写性と同様に評価した。
【0117】
・非タック性の評価
前記の帯電防止処理されたポリカーボネート成形体の非タック性を、試験区分8の非タック性と同様に評価した。
【0118】
【表13】

【0119】
試験区分10(ABS成形体への帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ABS成形体への帯電防止剤の塗布
ABSを、約220℃で射出成形し、縦15cm×横2cm×厚さ4mmのABS成形体を作製した。次に、試験区分1で合成したビニル共重合体等(帯電防止剤)を水希釈して5%水性液となし、この5%水性液をABS成形体の表面1m当たり表14に記載の塗布量となるようスプレー法で塗布し、100℃の熱風で1分間乾燥して、帯電防止処理されたABS成形体を得た。この帯電防止処理されたABS成形体について以下の評価を行なった。結果を表14にまとめて示した。
【0120】
・帯電防止性の評価
前記の帯電防止処理されたABS成形体の帯電防止性を、試験区分8の帯電防止性と同様に評価した。
【0121】
・再利用性の評価
前記の帯電防止処理されたABS成形体を粉砕し、押し出し機にて約230℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生ABSシートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布したABS成形体を用いて再生ABSシートを作製した。双方の再生ABSシートの着色度合いから再利用性を試験区分2の再利用性と同様に評価した。
【0122】
・塗布性の評価
前記の帯電防止処理されたABS成形体の表面を肉眼で観察し、試験区分8と同様に評価した。
【0123】
・非転写性の評価
前記の帯電防止処理されたABS成形体の非転写性を、試験区分8の非転写性と同様に評価した。
【0124】
・非タック性の評価
前記の帯電防止処理されたABS成形体の非タック性を、試験区分8の非タック性と同様に評価した。
【0125】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のビニル共重合体Nから選ばれる一つ又は二つ以上から成ることを特徴とする熱可塑性高分子用帯電防止剤。
ビニル共重合体N:分子中に下記の化1で示される単量体から形成された構成単位Aを60〜99.8モル%、下記の架橋性単量体から形成された構成単位Bを0.1〜39.9モル%及び下記の化1で示される単量体又は下記の架橋性単量体と共重合可能な単量体から形成された構成単位Cを0.1〜39.9モル%(合計100モル%)有する数平均分子量5000〜1000000のビニル共重合体
架橋性単量体:下記の化2で示される架橋性単量体、下記の化3で示される架橋性単量体及び下記の化4で示される架橋性単量体から選ばれる一つ又は二つ以上
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

{化1〜化4において、
,R,R,R,R:水素原子又はメチル基
,R,R:水素原子、メチル基又はアルキル基の炭素数が2若しくは3のヒドロキシアルキル基(但し、R〜Rのうちで少なくとも二つはメチル基又はアルキル基の炭素数が2若しくは3のヒドロキシアルキル基)
:水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基
B:炭素数2〜6のアルキレン基
:硝酸イオン基又はアルキル基の炭素数が1〜4のアルキルスルホン酸イオン基
:水素原子、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、エポキシ基を有する炭素数3〜10の有機基又は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから一つの水酸基を除いた残基
:水素原子、エポキシ基を有する炭素数3〜10の有機基又は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから一つの水酸基を除いた残基}
【請求項2】
請求項1記載のビニル共重合体Nから選ばれる一つ又は二つ以上と下記のビニル共重合体Mから選ばれる一つ又は二つ以上とから成ることを特徴とする熱可塑性高分子用帯電防止剤。
ビニル共重合体M:分子中に請求項1記載の化1で示される単量体から形成された構成単位Aを60〜99.9モル%及び請求項1記載の架橋性単量体から形成された構成単位Bを0.1〜40モル%(合計100モル%)有する数平均分子量5000〜1000000のビニル共重合体
【請求項3】
化1で示される単量体が、化1中のXが硝酸イオン基又はメチルスルホン酸イオン基である場合のものである請求項1又は2記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項4】
化1で示される単量体が、化1中のBがエチレン基又はトリメチレン基である場合のものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項5】
架橋性単量体が、化2で示される架橋性単量体である請求項1〜4のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項6】
化1で示される単量体又は架橋性単量体と共重合可能な単量体が、炭素数が1〜4の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されたN−アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されたN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド及び炭素数が4若しくは5の不飽和二塩基酸と炭素数が2〜8のグリコールとの(ジ)エステルから選ばれる一つ又は二つ以上である請求項1〜5のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項7】
ビニル共重合体Nが、分子中に化1で示される単量体から形成された構成単位Aを80〜98モル%、架橋性単量体から形成された構成単位Bを1〜19モル%及び化1で示される単量体又は架橋性単量体と共重合可能な単量体から形成された構成単位Cを1〜19モル%(合計100モル%)有する数平均分子量7000〜100000のビニル共重合体である請求項1〜6のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項8】
ビニル共重合体Mが、分子中に化1で示される単量体から形成された構成単位Aを80〜99モル%及び架橋性単量体から形成された構成単位Bを1〜20モル%(合計100モル%)有する数平均分子量7000〜100000のビニル共重合体である請求項2〜7のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤を、下記の熱可塑性高分子材料から製造される熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり0.01〜3gの割合となるよう付着させることを特徴とする熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法。
熱可塑性高分子材料:ポリカーボネート系高分子材料、ポリスチレン系高分子材料、ポリアクリル系高分子材料、ポリビニル系高分子材料及びポリオレフィン系高分子材料から選ばれる一つ又は二つ以上
【請求項10】
熱可塑性高分子成形体が熱可塑性高分子フィルム又はシートである請求項9記載の熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤が、下記の熱可塑性高分子材料から製造された熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり0.01〜3gの割合で付着されて成ることを特徴とする帯電防止性熱可塑性高分子成形体。
熱可塑性高分子材料:ポリカーボネート系高分子材料、ポリスチレン系高分子材料、ポリアクリル系高分子材料、ポリビニル系高分子材料及びポリオレフィン系高分子材料から選ばれる一つ又は二つ以上
【請求項12】
熱可塑性高分子成形体が熱可塑性高分子フィルム又はシートである請求項11記載の帯電防止性熱可塑性高分子成形体。

【公開番号】特開2010−116568(P2010−116568A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22416(P2010−22416)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【分割の表示】特願2004−181091(P2004−181091)の分割
【原出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】