説明

熱板

【課題】下方に開放する断面略円弧状の細長い金属板からなり、且つ、長手方向に沿って多数の炎孔が上方に開放している横長筒状のパイプバーナの上方に、所定の間隔を開けて、前記パイプバーナと平行に架設される熱板(1)において、パイプバーナによる加熱によって熱変形が生じても、全体に均一な赤熱状態を維持できるようにすること。
【解決手段】長手方向の中央部分(10)を含む所定範囲(11)の頂部を、同一肉厚を維持したままで、それ以外の範囲(13)(13)よりも上方に隆起させたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱板、特に、魚や肉等を焼く焼物器に使用される横長筒状のパイプバーナの上方に設置され、前記パイプバーナの燃焼によって赤熱状態に加熱させる熱板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すような焼物器では、上方に開放するケーシング(2)内に、横方向に並列するように複数本の筒状のパイプバーナ(21)が設置されており、各パイプバーナ(21)の上方には所定の間隔を開けて、断面略円弧状の熱板(22)が、パイプバーナ(21)と平行に配設されている(特許文献1参照)。
【0003】
ケーシング(2)の前面には前箱(25)が突設されており、この前箱(25)には、操作部(23)や、パイプバーナ(21)に一次空気を供給するファン等の給気装置(24)、さらには、パイロットバーナ等の点火装置が収容されている。
【0004】
パイプバーナ(21)は、前方に開放し且つ後端部は扁平化されて閉塞されている金属製の筒体であり、その長手方向に沿った頂部に、多数の炎孔(20)が形成されている。又、前記後端部は、ケーシング(2)の後壁内にネジ止めされており、前方開放端は、前箱(25)内で、ガス回路に続くノズル(図示せず)に外嵌接続されている。
【0005】
熱板(22)は、耐熱性のある帯状金属板を長手方向に沿った中心線で屈曲させて断面半円弧状に形成されているものであり、前記円弧状断面が下方に開放する姿勢で、パイプバーナ(21)の上方に、パイプバーナ(21)との距離が均一となるように、ケーシング(2)内に水平に架設されている。
【0006】
この従来のものでは、前記点火装置が点火され、燃焼状態になると同時に、各炎孔(20)から空気とガスの混合気が吐出され、この混合気に点火装置のパイロットバーナからの炎が火移りした状態で、熱板(22)の内面に衝突するため、前記内面に燃焼炎が薄膜状に形成される。パイプバーナ(21)と熱板(22)の内面とは均一な距離を有して配設されていることから、熱板(22)の内面全域に均一に燃焼炎が形成されると同時に均一に加熱され、熱板(22)は赤熱状態になる。これにより、パイプバーナ(21)の燃焼による燃焼排気と、赤熱状態に加熱された熱板(22)からの輻射熱とによって、ケーシング(2)の上方開放部に設置される焼き網等に載置させた魚や肉等が焼き上げられる。
このものでは、燃焼炎は断面半円弧状の熱板(22)の内面に沿って形成され、熱板(22)の外部へ溢れ出ることがないから、効率的に熱板(22)から輻射熱を放射させることができ、又、魚や肉等から滴下する油分が燃焼炎と直接接触しにくい構成であるから、煙や煤の発生が大幅に少なくなる。
【特許文献1】特開平6−229519号公報
【特許文献2】特開2000−146124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したような従来の熱板(22)は、その両端のみをケーシング(2)の前後の所定位置に支持させているため、燃焼炎によって加熱され赤熱状態が続いて熱変形すると、自重により中央部分が下方に垂れ下がって来る。熱板(22)の中央部分が下方へ垂れ下がって来ると、全体に水平状態を保持できなくなり、パイプバーナ(21)と熱板(22)との間の距離が不均一となる。これにより、赤熱状態が熱板(22)の長手方向で不均一となり、焼性能が損なわれるといった不都合が生じる。
【0008】
熱変形による熱板の歪みを防止できるようにしたものとして、特開2000−146124号公報に開示されているもののように、断面逆V字状に構成された熱板の両斜面を階段状に構成したものがある(特許文献2参照)。しかしながら、このものでは、製造に手間がかかる上に、断面円弧状の熱板には採用しにくく、階段部分に肉や魚等からの油が溜まり易いという問題がある。
【0009】
本発明は、『下方に開放する断面略円弧状の細長い薄肉金属板からなり、且つ、長手方向に沿って多数の炎孔が上方に開放している横長筒状のパイプバーナの上方に、所定の間隔を開けて、前記パイプバーナと平行に架設される熱板』において、パイプバーナによる加熱によって熱変形が生じても、全体に均一な赤熱状態を維持できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)請求項1に係る発明の熱板は、『長手方向の中央部分を含む所定範囲の頂部を、同一肉厚を維持したままで、それ以外の範囲よりも上方に隆起させた』を特徴とするものである。
上記技術的手段は次のように作用する。
熱板は、帯状の細長い金属板を、長手方向の中心線に沿って断面略円弧状に屈曲されていると共に、全体に同一肉厚を維持したままで、前記長手方向の中央部分を含む所定範囲の頂部を、他の部分に比べて上方に隆起させた構成とする。上記形状の熱板を、円弧状断面が下方に開放する姿勢、すなわち、長手方向の中央部分を含む所定範囲が上方に隆起する姿勢で、その長手方向の両端を所定箇所に支持させて、パイプバーナの上方に平行に架設させる。パイプバーナの燃焼によって熱板が赤熱状態に加熱されると、前記中央部分が熱変形により下方に垂れ下がって来るが、熱板の前記中央部分を含む所定範囲の頂部は予め上方に隆起させてあるから、この隆起している部分が下方に垂れることとなり、結果的に、熱板の前記中心線に沿った部分は全域において略水平状態を保つこととなる。これにより、熱板とパイプバーナとの距離は全域的に均一に維持され、均一な赤熱状態を維持することができる。
尚、熱板は、使用後、自然冷却されると、中央部分を含む所定範囲が隆起する変形前の形状に復帰する。
【0011】
(2)請求項2に係る発明の熱板は、請求項1に係る発明の『前記中央部分を含む所定範囲は、前記中央部分を両側から押圧することによって隆起させている』もので、均等な円弧状断面を有する細長い板状体の長手方向の中央部分を、両側から中心線に向かって押圧することにより、前記中央部分は、幅方向に縮小されると同時に必然的に上方に隆起することとなる。すなわち、前記中央部分は、幅が狭くなった分だけ上方に隆起することから、パイプバーナと熱板との間の、燃焼に必要な空間部の体積は均一に保持される。又、中央部分の幅を狭くすることにより熱変形に対する抵抗力が大きくなる。
【0012】
尚、請求項3に係る発明の熱板のように、『前記中央部分は、前記それ以外の範囲よりも約2mm隆起している』程度が好ましく、又、請求項4に係る発明の熱板のように、『前記中央部分を含む所定範囲は、全体長さの約2分の1の長さに設定されている』ものでは、長手方向の両端からそれぞれ全体長さの約4分の1程度の範囲のみが、通常の断面円弧状体を有する、請求項1に記述されているそれ以外の範囲であり、この部分を除く、全体の約2分の1の長さの前記所定範囲がなだらかに隆起する形状となっている。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、熱板がパイプバーナの燃焼により赤熱状態に加熱されて中央部分が下方へ垂れ下がる方向に熱変形しても、予め隆起させた部分が下方に垂れ下がることとなるから、熱板は、熱変形した状態においても略水平状態を維持することができる。よって、加熱時において、赤熱時の熱板とパイプバーナとの距離は均一に保持することができ、熱板を均一に赤熱させることができる。又、自然冷却により元の形状に復帰するから、長期の使用によっても、焼性能が損なわれることがない。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、熱板の中央部分を含む所定範囲を容易に隆起させることができる。又、この場合、パイプバーナと熱板との間の、燃焼に必要な空間部の体積を均一に保持することができるから、焼性能を一層向上させることができる上に、下方への変形に対する抵抗力が大きくなるから長時間の赤熱状態での加熱に対しての熱板の強度が増し、耐久年数が長くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態の熱板は、図4に示したような、従来から公知の焼物器に使用されるものとし、ケーシング(2)内に横方向に並列する複数の筒状のパイプバーナ(21)の各々の上方に所定距離をおいて両端が架設されているものとする。
【0016】
図1は熱板(1)の平面図、図2はその側面図、又、図3は、図1のX−X断面図である。
本発明の実施の形態の熱板(1)は、特殊耐熱ステンレス製の薄肉板状体を長手方向の中心線に沿って半径17mmの円の一部が形成されるように湾曲させることにより、全長282mm、幅約30mmの断面円弧状体に構成したものであり、長手方向に沿った両辺は、内側に折り畳まれて二重構造に形成されている。
【0017】
上記したような断面円弧状の金属板に形成した後、その中央部分(10) を半径方向の両側方から前記中心線に向かって押圧し、中央部分(10)に、半径12.5mmの半円を形成する。尚、中央部分(10)は、熱板(1)の長手方向の中心から左右に40mm、合計80mmの範囲とし、この部分を前記両側方から押圧することにより、図1に示すように、中央部分(10)を中心に左右の所定範囲(11)の幅が縮小され、それに応じて、熱板(1)の頂部が、図2に示すように、なだらかに隆起する。このように、長さにして150mmの所定範囲(11)が隆起部(12)として機能することとなる。
【0018】
隆起部(12)は、中央部分(10)の範囲において最も上方に突出しており、所定範囲(11)の両側の非隆起部分(13)に対する中央部分(10)の突出高さ(h)は、約2mmに設定されている。すなわち、上述した構成の熱板(1)を、従来のものと同様に、水平に支持させた棒状パイプバーナの上方に所定距離開けて下方開放姿勢で焼物器のケーシング内に水平に架設させると、中央部分(10)において、熱板(1)の裏面とパイプバーナとの距離が、非隆起部分(13)の裏面とパイプバーナとの距離よりも2mm離れて位置する関係となる。
【0019】
パイプバーナは、従来例で示したような、長手方向に沿った頂部に多数の炎孔が上方に開放している細長い筒状のものを採用しており、ケーシング内に多数並列するように収容されている。各パイプバーナの下方には、それぞれ点火装置が配設されている。
【0020】
点火装置は、図示しないが、ガスを噴出させるパイロットバーナと、パイロットバーナに点火させる電極とを具備し、点火装置が点火されて、パイロットバーナから炎が噴出されると、その炎は、筒状のパイプバーナの外周を介して、パイプバーナと熱板(1)との間の空間に達する。この状態に達する前に、パイプバーナの炎孔から空気とガスの混合気を吐出させておけば、前記混合気にパイロットバーナからの炎が火移りして、パイプバーナが燃焼状態となる。
【0021】
前記炎孔から吐出する混合気は、熱板(1)の裏面に衝突し、前記裏面に沿って薄膜状の燃焼炎が形成される。この燃焼炎によって熱板(1)は赤熱状態に加熱される。赤熱状態による加熱が続くと、熱板(1)は熱変形し、特に、何ら下方から支持されていない中央部分において垂れ下がる方向に歪み易い。
【0022】
しかしながら、上述した実施の形態の熱板(1)では、長手方向に沿った両辺を二つ折りにして補強していると共に、最も熱変形し易い中央部分(10)を両側方から押圧して幅を狭く構成しているから、中央部分(10)における熱変形に対する強度は大きく設定されている。さらに、中央部分(10)の幅を狭くすると同時に中央部分(10)を含む所定範囲(11)は上方に突出して隆起部(12)を形成しているから、パイプバーナと熱板(1)との間に、燃焼に必要な体積を均一に維持したまま、下方に変形することに対する強度を向上させている。これにより、たとえ、熱板(1)が熱変形させられても、予め上方に隆起させられている隆起部(12)が下方へ垂れ下がって水平状態となることから、熱変形した状態においても、熱板(2)の長手方向に沿った中心線は水平状態を維持することとなる。よって、均一な赤熱状態を維持することができる上に、繰り返しの使用にも耐えることから、耐久年数も延長することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態の熱板の平面図。
【図2】本発明の実施の形態の熱板の側面図。
【図3】図1のX−X断面図。
【図4】従来の熱板の説明図。
【符号の説明】
【0024】
(1)・・・・・・ 熱板
(10)・・・・・・中央部分
(12)・・・・・・隆起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に開放する断面略円弧状の細長い金属板からなり、且つ、長手方向に沿って多数の炎孔が上方に開放している横長筒状のパイプバーナの上方に、所定の間隔を開けて、前記パイプバーナと平行に架設される熱板において、
長手方向の中央部分を含む所定範囲の頂部を、同一肉厚を維持したままで、それ以外の範囲よりも上方に隆起させたことを特徴とする熱板。
【請求項2】
請求項1に記載の熱板において、前記中央部分を含む所定範囲は、前記中央部分を両側から押圧することによって隆起させていることを特徴とする熱板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の熱板において、前記中央部分は、前記それ以外の範囲よりも約2mm隆起していることを特徴とする熱板。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱板において、前記中央部分を含む所定範囲は、全体長さの約2分の1の長さに設定されていることを特徴とする熱板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−315684(P2007−315684A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146094(P2006−146094)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】