説明

熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子

【課題】 現像性感光材料のバインダーとして用いた場合に、塗工溶液の着色や画像特性
の劣化を防止することができ、熱現像性感光材料を製造する際の取扱性や生産性に優れる
熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】 残存アセチル基量が25モル%以下、残存水酸基量が17〜35モル%、
かつ、重合度が200〜3000であるポリビニルアセタール樹脂からなる熱現像性感光
材料用バインダー樹脂粒子であって、見かけ比重が0.3〜0.6である熱現像性感光材
料用バインダー樹脂粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱現像性感光材料の感光層のバインダーとして用いた場合に、塗工溶液の着色
や画像特性の劣化を防止することができるとともに、熱現像性感光材料を製造する際の取
扱性や生産性に優れる熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化銀感光材料は、その優れた写真特性から、従来より広範囲かつ高品質な素材と
して画像形成分野に利用されている。しかし、現像工程や定着工程が複雑であることに加
え、現像工程が湿式である場合には、処理が煩雑で、多量の化学廃液を排出することから
、作業性や環境面で問題となっていた。よって、近年では現像工程を乾式の熱処理で行う
ことができ、廃液が発生しない熱現像性感光材料の技術が開発され、実用化されている。
【0003】
熱現像性感光材料としては、通常、有機銀塩、銀イオン還元剤、感光性ハロゲン化銀等を
バインダー樹脂中に分散させた感光層を支持体上に形成したものが使用されており、例え
ば、特許文献1には、有機銀塩、銀還元剤及び光還元性ハロゲン銀等をポリビニルブチラ
ール、ポリメタクリル酸メチル、酢酸セルローズ、ポリ酢酸ビニル、酢酸プロピオン酸セ
ルローズ、酢酸酪酸セルローズ等からなる造膜性結合材中に分散させた熱現像性感光層が
支持体上に形成された熱現像性感光材料が開示されている。
【0004】
有機銀塩等を分散させるバインダー樹脂としては、接着性に優れ、かつ、熱可塑性、造膜
性、光的性質を併せ持つポリビニルアセタール樹脂が広く使用されているが、ポリビニル
アセタール樹脂を用いた場合、バインダー中での有機銀塩の分散性が悪化することに起因
して、熱現像感光材料の感度が低下し、従来の湿式ハロゲン化銀感光材料と比較して画像
特性、特に画像濃度、鮮明度の面で劣ったりすることがあった。
また、一般のポリビニルアセタール樹脂には種々の組成のものがあり、製法上、微量の不
純物を含有することから、不純物の影響により、調製した塗工溶液が感光性を生じて着色
したり、塗工した後の画像特性に、かぶり、階調不良、感度不足が生じたり、フィルムの
保存性不良等を生じたりすることがあった。
【0005】
このようなポリビニルアセタール樹脂に含まれる不純物に起因する塗工溶液の着色や、画
像特性の劣化を防止するため、ポリビニルアセタール樹脂を含有する熱現像性感光材料用
バインダー樹脂粒子の粒子径を小さくして、洗浄効率を向上させることにより、不純物の
残存量を低下させることが行われている。しかしながら、樹脂粒子を小さくしすぎると、
飛散しやすくなるため、取扱性の面で問題となることがあった。一方で、樹脂粒子が大き
いと、洗浄効率が低下するだけでなく、樹脂粒子を溶媒に溶解させる際の溶解時間が長く
なるため、熱現像性感光材料の生産性が低下するという問題もあった。
【0006】
【特許文献1】特公昭43−4924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑み、熱現像性感光材料の感光層のバインダーとして用いた場合に、塗
工溶液の着色や画像特性の劣化を防止することができ、熱現像性感光材料を製造する際の
取扱性や生産性に優れる熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子を提供することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は残存アセチル基量が25モル%以下、残存水酸基量が17〜35モル%、かつ、
重合度が200〜3000であるポリビニルアセタール樹脂からなる熱現像性感光材料用
バインダー樹脂粒子であって、見かけ比重が0.3〜0.6である熱現像性感光材料用バ
インダー樹脂粒子である。以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリビニルアセタール樹脂を特定の組成とし、かつ、こ
のようなポリビニルアセタール樹脂を含有する熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子の
見かけ比重を一定の範囲内とすることにより、熱現像性感光材料に用いた場合に、塗工溶
液の着色や画像特性の劣化を防止することができ、熱現像性感光材料を製造する際の取扱
性や生産性に優れる熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子とすることができることを見
出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子は、見かけ比重の下限が0.3、上限が
0.6である。0.3未満であると、樹脂が飛散しやすくなって取り扱いが困難となり、
0.6を超えると、溶剤が浸透しにくくなり、樹脂の溶解時間が長くなるため、熱現像性
感光材料の生産性が低下する。見かけ比重が上記範囲内であれば、洗浄効率を低下させる
ことなく、ポリビニルアセタール樹脂中に含まれる不純物を除去することができ、かつ、
熱現像性感光材料を製造する際の取扱性や生産性に優れるものとなる。
【0011】
上記範囲内の見かけ比重を有する熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子を実現する方法
としては、例えば、アセタール化して得られたポリビニルアセタール樹脂をプレス等する
ことにより、所定の見かけ比重を有する板状体とした後、適度な大きさとなるようにボー
ルミル等で粉砕する方法;非重合性有機溶剤の存在下でポリビニルアルコール樹脂をアセ
タール化して非重合性有機溶剤を有するポリビニルアセタール樹脂粒子を析出させた後、
非重合性有機溶剤を除去して所定の見かけ比重を有する中空樹脂粒子を製造する方法等が
挙げられる。
【0012】
上記方法において、ポリビニルアセタール樹脂をプレスする場合、プレス圧の好ましい下
限は30kg/cm、好ましい上限は90kg/cmである。30kg/cm未満
であると、粉砕後の見かけ比重が0.3未満となったり、微粉末が多くなることがあり、
90kg/cmを超えると、粉砕後の見かけ比重が0.6を超えることがある。
【0013】
本発明の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子の形状としては、特に限定されず、例え
ば、粒状、球状、塊状等が挙げられる。また、発泡体であってもよい。
本発明の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子の平均粒子径の好ましい下限は30μm
、好ましい上限は50mmである。30μm未満であると、飛散しやすくなって取り扱い
が困難となることがあり、50mmを超えると、溶剤が浸透しにくくなり、溶解時間が長
くなるため、熱現像性感光材料の生産性が低下することがある。
【0014】
本発明の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子は、20℃においてメチルエチルケトン
200gに300rpmの撹拌速度で撹拌しながら溶解して、20℃における粘度が90
0〜1000mPa・sである溶液を調製する際に、溶解開始から完全に溶解するまでの
溶解時間が30分以内であることが好ましい。溶解時間が30分を超えると、熱現像性感
光材料を作製する際に、溶媒への溶解に時間を要し、生産性が低下するからである。
なお、上記粘度は、BM型粘度計により、20℃で測定を行った場合の粘度のことをいう
。また、本発明の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子が完全に溶解するとは、目視で
は樹脂粒子の存在が確認できない状態のことをいう。
【0015】
本発明の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子は、残存アセチル基量が25モル%以下
、残存水酸基量が17〜35モル%、かつ、重合度が200〜3000であるポリビニル
アセタール樹脂を含有する。
【0016】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、残存アセチル基の上限が25モル%である。25モル
%を超えると、得られる熱現像性感光材料でブロッキングが生じるとともに、画像が不鮮
明となる。好ましい上限は、15モル%である。
【0017】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、残存水酸基量の下限が17モル%であり、上限が35
モル%である。17モル%未満であると、銀塩の分散性が低下し、感度の低下が生じる。
35モル%を超えると、水分を透過しやすいため、かぶりが発生して保存安定性が悪くな
ったり、画像濃度が低下する等により、熱現像性感光材料の感度が低下する。
【0018】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、重合度の下限が200であり、上限が3000である
。重合度を上記範囲内とすることにより、本発明の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒
子とともに用いられる銀塩の分散性、塗膜強度、塗工性に優れるものとすることができる
。更に、上記有機銀塩の分散性、塗膜の強度、塗工性等のバランスを考えると、より好ま
しい下限は300であり、上限は1000である。
【0019】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化度の好ましい下限が40モル%、好まし
い上限が78モル%である。40モル%未満であると、有機溶剤に不溶となり熱現像性感
光材料の感光層のバインダー樹脂として用いることができないことがあり、78モル%を
超えると、残存水酸基量が少なくなってポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれ塗
膜の強度が低下することがある。
なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹
脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセ
タール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する

【0020】
上記ポリビニルアセタール樹脂の残存ハロゲン化物量の好ましい上限は、100ppmで
ある。100ppmを超えると、感光性ハロゲン化銀の生成物質となり、塗工溶液の保存
性を低下させ、熱現像感光材料の保存性低下、カブリ等の原因になることがある。上記残
存ハロゲン化物量の上限を100ppmとする方法としては、例えば、アセタール化に使
用する触媒として非ハロゲン性のものを使用する方法や、ハロゲン性の触媒を使用した場
合には、水、水/アルコールの混合溶液等による洗浄操作にて精製し、規定量以下まで除
去する方法等が挙げられる。より好ましい上限は、50ppmである。
【0021】
上記ポリビニルアセタール樹脂の含有水分量の好ましい上限は、3.0重量%である。3
.0重量%を超えると、熱現像感光材料のポットライフが低下するとともに、熱現像性感
光材料の塗膜の強化を目的として添加されるイソシアネート基を有する架橋剤と反応する
ため、塗膜の強化が不充分となる。より好ましい上限は、2.5重量%である。
【0022】
上記ポリビニルアセタール樹脂の残存アルカリ性物質量の好ましい上限は、0.01重量
%である。残存アルカリ性物質量が0.01重量%を超えると、塗工溶液のポットライフ
の低下や、フィルムの保存性の低下等を引き起こすことがある。残存アルカリ性物質量の
上限を0.01重量%とする方法としては、例えば、アセタール化の際に、中和後の過剰
アルカリ分を水又は水/アルコールの混合溶液で洗浄する方法や、揮発性のアルカリを使
用し、乾燥によりアルカリを除去して、上限を0.01重量%とする方法等が挙げられる
。より好ましい上限は0.005重量%である。
【0023】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、側鎖に下記一般式(1)で表される官能基、下記一般
式(2)で表される官能基、下記一般式(3)で表される官能基、下記一般式(4)で表
される官能基、下記一般式(5)で表される官能基、下記一般式(6)で表される官能基
、第三級アミン基、及び、第四級アンモニウム塩基からなる群より選ばれる少なくとも1
種の官能基を0.1〜5モル%含有することが好ましい。
【0024】
【化1】

【0025】
式中、Mは、H、Li、Na又はKを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル
基を表す。
【0026】
上記官能基は親水性を有することから、得られる熱現像性感光材料における銀塩の分散性
が向上し、画像及び階調部の鮮明度に優れるものとなる。また、熱現像性感光材料に用い
た場合に、塗工溶液の着色や画像特性の劣化を防止することができる。
【0027】
上記一般式(1)で表される官能基としては、例えば、カルボキシル基が挙げられ。
上記アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル
基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
上記第三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノ
ールアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。
【0028】
上記官能基の含有量の好ましい下限は0.1モル%であり、好ましい上限は5モル%であ
る。0.1モル%未満であると、上記官能基を導入した効果、即ち、還元可能な非感光性
の銀塩の分散性向上の効果が得られないことがあり。5モル%を超えると、還元可能な非
感光性の銀塩の分散性向上の効果が飽和するだけでなく、アセタール化後の溶剤に対する
溶解性が低下することがある。
【0029】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、主鎖中にα−オレフィン単位を含有することが好まし
い。
これにより、通常のポリビニルアセタール樹脂に比較して疎水性が高くなり、得られる感
光層の透湿度を低減することができ、従来のポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂
とする感光層の問題点であった、水分の浸透によるかぶりや保存性の低下等を抑えること
ができる。
【0030】
上記α−オレフィン単位の主鎖中における含有量の好ましい下限は1モル%であり、好ま
しい上限は20モル%である。1モル%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂の耐水
性が低下したり、熱現像性感光材料を製造する際の塗工溶液の保存安定性や現像後の画像
特性が悪化することがある。20モル%を超えると、原料として用いるポリビニルアルコ
ール樹脂の溶剤溶解性が低下するためにアセタール化反応が充分に進行せずポリビニルア
セタール樹脂を得ることができなかったり、得られたポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶
解性が低かったり、有機銀塩の分散性が劣ったりして熱現像性感光材料の感光層のバイン
ダー樹脂として用いることができないことがある。より好ましい上限は10モル%である

【0031】
上記α−オレフィン単位としては特に限定されないが、例えば、炭素数1〜20の直鎖状
又は環状のアルキル基に由来するものが好適である。上記範囲内であれば分岐や直鎖状の
部位と環状の部位の両方を含んでいても良い。上記α−オレフィン単位の炭素数が20を
超えると、原料として用いる変性ポリビニルアルコール樹脂の溶剤溶解性が低下するため
にアセタール化反応が充分に進行せず変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることができな
かったり、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が低く熱現像性感光材料
の感光層のバインダー樹脂として用いることができなかったりすることがある。より好ま
しくは炭素数1〜10の直鎖状又は環状のアルキル基に由来するものであり、更に好まし
くは炭素数2〜6の直鎖状アルキル基に由来するものである。具体的には、例えば、メチ
レン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、
へキシレン、シクロヘキシレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘキシルプロピレン等
に由来する単位が好適である。
【0032】
本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂を
アセタール化することにより、製造することができる。
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、例えば、上記ポリビニルアルコール樹
脂の水溶液にアルデヒド及び酸触媒を添加し、公知の方法でアセタール化を行う方法等が
挙げられる。
【0033】
上記アルデヒドとしては特に限定されず、例えば、上記アルデヒドとしては特に限定され
ず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアル
デヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキ
シルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタル
アルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデ
ヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシ
ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が
挙げられる。これらの中では、アセトアルデヒド或いはブチルアルデヒドを単独で用いる
ことや、アセトアルデヒド及びブチルアルデヒドを併用して用いることが好ましい。
【0034】
上記アルデヒドとして、アセトアルデヒド及びブチルアルデヒドを併用した場合、得られ
る熱現像性感光材料は、銀塩の分散性が向上し、熱溶融性、冷却硬化性等がシャープとな
ることから、銀塩の核成長を精度よく制御することが可能であり、結果として画像及び階
調部の鮮明度が優れたものとなる。
【0035】
また、アセトアルデヒドによりアセタール化された部分の割合の好ましい下限は、全アセ
タール化部分に対して30%である。30%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂の
ガラス転移点が80℃以下となるため、得られる熱現像性感光材料は、感光性銀塩の核成
長が進み過ぎ、かつ、銀塩の分散性が充分に得られず、画像の解像度及び鮮明度が不充分
なものとなることがある。より好ましい下限は50%である。
【0036】
上記酸触媒としては特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例え
ば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。また、上記合成
反応を停止するために、通常アルカリ中和を行うが、その際使用されるアルカリとしては
、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナト
リウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
【0037】
上記アセタール化においては、通常、アルデヒドの酸化防止のため、又は、得られる樹脂
の酸化防止及び耐熱性向上のために、反応系又は樹脂系に酸化防止剤が添加されるが、上
記変性ポリビニルアセタール樹脂は、通常、酸化防止剤として用いられるヒンダードフェ
ノール系、ビスフェノール系、リン酸系等の酸化防止剤を含有しないことが好ましい。こ
のような酸化防止剤が上記ポリビニルアセタール樹脂中に残存すると、塗工溶液のポット
ライフの低下、フィルムの保存性の低下等を引き起こし、かぶりや鮮明性の低下を招くこ
とがある。
【0038】
なお、上記官能基を側鎖に有するポリビニルアセタール樹脂を得る方法としては、例えば
、ビニルエステルと上記官能基を有するモノマーとを共重合した共重合体をケン化して得
た変性ポリビニルアルコール樹脂を原料として、これをアセタール化する方法;ポリビニ
ルアルコール樹脂又はポリビニルアセタール樹脂の主鎖に結合する水酸基を利用して官能
基を導入する方法等が挙げられる。
上記官能基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等
が挙げられる。
【0039】
また、上記主鎖にα−オレフィン単位を有するポリビニルアセタール樹脂を得る方法とし
ては、例えば、ビニルエステルとα−オレフィンとを共重合した共重合体をケン化して得
た変性ポリビニルアルコール樹脂を原料として、これをアセタール化する方法等が挙げら
れる。
【0040】
本発明の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、銀イ
オン還元剤、架橋剤、添加剤及び溶剤を混合して塗工溶液を調製し、得られた塗工溶液を
支持体上に塗布、乾燥させることにより、支持体上に感光層が形成された熱現像感光材料
を製造することができる。
【0041】
上記感光層における本発明の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子の含有量の好ましい
下限は、上記有機銀塩に対する重量比(本発明の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子
:有機銀塩)で、1:10、好ましい上限は10:1である。1:10未満では、熱現像
感光材料を構成する各層間の接着性を向上させることができず、10:1を超えると、画
像が不鮮明となることがある。より好ましい下限は1:5、より好ましい上限は5:1で
ある。
【0042】
上記有機銀塩は、光に比較的安定な無色又は白色の銀塩であり、上記感光性ハロゲン化銀
の存在下で80℃以上で加熱された場合等において、上記銀イオン還元剤と反応して金属
銀となるものである。
【0043】
上記有機銀塩としては特に限定されず、例えば、メルカプト基、チオン基又はカルボキシ
ル基を有する有機化合物の銀塩、ベンゾトリアゾール銀等が挙げられる。具体的には、メ
ルカプト基又はチオン基を有する化合物の銀塩、3−メルカプト−4−フェニル1,2,
4−トリアゾールの銀塩、2−メルカプト−ベンツイミダゾールの銀塩、2−メルカプト
−5−アミノチアゾールの銀塩、1−フェニル−5−メルカプトテトラチアゾールの銀塩
、2−メルカプトベンゾチアゾールの銀塩、チオグリコール酸の銀塩、ジチオ酢酸の銀塩
のようなジチオカルボン酸の銀塩、チオアミド銀、チオピリジン銀塩ジチオヒドロキシベ
ンゾールの銀塩、メルカプトトリアジンの銀塩、メルカプトオキサジアゾールの銀塩、脂
肪族カルボン酸の銀塩:カプリン酸銀、ラウリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀
、ステアリン酸銀、ベヘン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、フロイン酸銀、
リノール酸銀、オレイン酸銀、ヒドロキシステアリン酸銀、アジピン酸銀、セバシン酸銀
、こはく酸銀、酢酸銀、酪酸銀、樟脳酸銀等、芳香族カルボン酸銀、チオンカルボン酸銀
、チオエーテル基を有する脂肪族カルボン酸銀、テトラザインデンの銀塩、S−2−アミ
ノフェニルチオ硫酸銀、含金属アミノアルコール、有機酸金属キレート等が挙げられる。
【0044】
上記有機銀塩の粒子径の好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は10μmである。
上記有機銀塩の粒子径を上記範囲内とすることにより、被覆力が大きく、画像濃度が高い
ものとすることができる。より好ましい下限は0.1μm、より好ましい上限は5μmで
ある。
【0045】
上記感光性ハロゲン化銀としては特に限定されず、例えば、臭化銀、沃化銀、塩化銀、塩
臭化銀、沃臭化銀、塩沃化銀等が挙げられる。
また、上記感光性ハロゲン化銀は増感剤により化学増感されていることが好ましい。上記
感光性ハロゲン化銀を化学増感させる方法としては特に限定されず、例えば、硫黄増感法
、セレン増感法、テルル増感法等が挙げられる。また、塩化金酸、カリウムクロロオーレ
ート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド等の金化合物;白金、パラ
ジウム、イリジウム化合物等の増感剤を用いる貴金属増感法や、アスコルビン酸、二酸化
チオ尿素等の増感剤を用いる還元増感法等により化学増感させることができる。
【0046】
上記感光性ハロゲン化銀は、増感色素を併用することにより分光増感されていることが好
ましい。上記増感色素を併用することにより、光源の波長域に応じて、上記感光性ハロゲ
ン化銀を所望の吸収波長域に分光増感させることが可能となる。
【0047】
上記感光性ハロゲン化銀の含有量の好ましい下限は上記有機銀塩100重量部に対して0
.0005重量部、好ましい上限は0.2重量部である。0.0005重量部未満である
と、現像後の画像が不鮮明となることがあり、0.2重量部を超えると、現像後の画像が
白濁することがある。より好ましい下限は0.01重量部である。
【0048】
上記還元剤としては、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質であれば特に限定されず、
例えば、置換フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、ポリ
ヒドロキシベンゼン類、ジ又はポリヒドロキシナフトール類、ジ又はポリヒドロキシナフ
タレン類、ハイドロキノン類、ハイドロキノンモノエーテル類、アスコルビン酸又はその
誘導体、還元性糖類、芳香族アミノ化合物、ヒドロキシアミン類、ヒドラジン類、フェニ
ドン類、ヒンダードフェノール類等が挙げられる。中でも、光分解性の還元剤が好ましく
用いられるが、熱分解性の還元剤も使用することができる。更には、光分解を促進する化
合物を併用したり、ハロゲン化銀と還元剤との反応を阻害するための被覆剤を併用したり
することもできる。
【0049】
上記還元剤の含有量の好ましい下限は上記有機銀塩100重量部に対して0.0001重
量部、好ましい上限は3.0重量部である。上記範囲内とすることにより、上記有機銀塩
の還元を適切に行うことができる。より好ましい下限は0.01重量部、より好ましい上
限は1.0重量部である。
【0050】
上記添加剤としては特に限定されず、例えば、色調剤等が挙げられる。
上記色調剤は、上記有機銀塩と還元剤との酸化還元反応に関与して、生ずる銀画像を黒色
にする機能を有する。
上記色調剤としては特に限定されず、例えば、イミド類、ナフトールイミド類、メルカプ
タン類、N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類、ブロックされたピラゾー
ル類、フタラジノン、フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩、フタラジン類、
フタル酸及び2、3−ナフタレンジカルボン酸又はo−フェニレン酸誘導体及びその無水
物、キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体、ベンズオキサジン
−2、4−ジオン類、ピリミジン類、テトラアザペンタレン誘導体等が挙げられる。これ
らのなかでは、フタラジン又はフタラジノンが好ましい。
【0051】
上記支持体としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレ
ンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン
類;ポリビニルアセタール、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート類のセ
ルロースエステル類;ニトロセルロース、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン等から
なるプラスチックフィルム、ガラス、紙、アルミニウム等からなる金属板等が挙げられる
。これらのなかでは、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0052】
上記支持体上に塗布される銀の量の好ましい下限は、支持体1mあたり0.1gであり
、上限は5gである。より好ましい下限は0.3gであり、上限は3gである。0.1g
未満であると、画像濃度が低くなることがあり、5gを超えた場合であっても、画像濃度
の向上はみられない。
【0053】
熱現像感光材料の製造方法としては特に限定されず、例えば、本発明の熱現像性感光材料
用バインダー樹脂粒子、有機銀塩、銀イオン還元剤、感光性ハロゲン化銀、添加剤及び溶
剤をボールミルで混合、分散し、分散液を調製した後、得られた分散液を、有機銀塩が所
定の量となるように支持体上に塗布し、溶剤を蒸発させることにより、熱現像感光材料を
製造する方法等が挙げられる。
なお、上記感光性ハロゲン化銀は、上記有機銀塩に感光性ハロゲン化銀形成成分を作用さ
せて、有機銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀にすることにより形成することとしてもよい

【0054】
上記有機銀塩と上記還元剤とは、一括して本発明の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒
子に配合し、支持体上に一層の感光層として形成することとしてもよく、上記有機銀塩と
上記還元剤とを別々に本発明の熱現像感光材料用バインダーに添加し、2層の感光層を形
成した後、両者を積層してもよい。また、上記感光層は、上記支持体の片面のみに形成さ
れてもよく、上記支持体の両面に形成されてもよい。
【0055】
上記溶剤としては特に限定されず、本発明の熱現像感光材料用バインダー樹脂粒子を溶解
することができ、かつ、含有水分量の少ないものが好適に用いられる。具体的には、例え
ば、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メ
チル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類等が挙げられる。溶剤として、エタノー
ル、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等を用いる場合には、脱水し
たものを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、熱現像性感光材料に用いた場合に、塗工溶液の着色や画像特性の劣化を
防止することができ、熱現像性感光材料を製造する際の取扱性や生産性に優れる熱現像性
感光材料用バインダー樹脂粒子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定
されるものではない。
【0058】
(実施例1)
重合度500、ケン化度98%のポリビニルアルコール樹脂100gを700gの蒸留水
に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸26gを加え、更にブチルアルデヒ
ド16gを添加した。次に、10℃まで冷却し、ブチルアルデヒド70gを加えた。樹脂
が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸93gを加え35℃に昇温して6時間保っ
た。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水洗後のポリビニルブチラール樹脂を
脱水した後、60メッシュの篩にかけて通過した粒子のみを蒸留水に分散し、水酸化ナト
リウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却し
た。
【0059】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水し、40℃で12時間乾燥した後
、ポリビニルブチラール樹脂の粒子を乳鉢で粉砕し、60メッシュの篩にかけ、通過した
粒子のみを蒸留水で10時間流水洗浄した。洗浄後、脱水、乾燥してポリビニルブチラー
ル樹脂を得た。得られたポリビニルブチラール樹脂の残存アセチル基量は1.7モル%、
残存水酸基量は20モル%であった。
得られたポリビニルブチラール樹脂を室温にて70kg/cmでプレスした後、粉砕器
にて粉砕し、熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子を得た。なお、得られた熱現像性感
光材料用バインダー樹脂粒子は見かけ比重が0.55であった。
【0060】
(実施例2)
重合度800のポリビニルアルコール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、残存ア
セチル基量11モル%、残存水酸基量28モル%のポリビニルブチラール樹脂を得た。更
に、得られたポリビニルアセタール樹脂を室温にて70kg/cmでプレスした後、粉
砕器にて粉砕し、熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子を得た。なお、得られた熱現像
性感光材料用バインダー樹脂粒子は見かけ比重が0.48であった。
【0061】
(実施例3)
重合度500、ケン化度98%のポリビニルアルコール樹脂132gを1600gの蒸留
水に加温溶解した後、20℃に保ち、70%硝酸90gを加え、更にアセトアルデヒド2
8gを添加した。次に、13℃まで冷却し、ブチルアルデヒド36gを加えた。樹脂が析
出した後、30分間保持し、その後55℃に昇温して5時間保持した。反応終了後、蒸留
水で10時間流水洗浄し、水洗後のポリビニルアセタール樹脂を脱水乾燥した後、60メ
ッシュの篩にかけて通過した粒子のみを蒸留水に分散させ、分散液に炭酸水素ナトリウム
を添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を70℃で6時間保持した後、冷却した。冷
却後のpHは8であった。
【0062】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水し、40℃で12時間乾燥した後
、ポリビニルアセタール樹脂の粒子を乳鉢で粉砕し、60メッシュの篩にかけ、通過した
粒子のみを蒸留水で10時間流水洗浄した。洗浄後、脱水、乾燥してポリビニルアセター
ル樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂の残存アセチル基量は1.8モル%、
残存水酸基量は26モル%、アセトアセタール化度は37.3モル%(全アセタール化部
分における割合は51.7%)、ブチラール化度は34.9モル%であった。
更に、得られたポリビニルアセタール樹脂を室温にて70kg/cmでプレスした後、
粉砕器にて粉砕し、熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子を得た。なお、得られた熱現
像性感光材料用バインダー樹脂粒子は見かけ比重が0.36であった。
【0063】
(実施例4)
重合度1700のポリビニルアルコール樹脂を用いた以外は、実施例3と同様にして、残
存水酸基量は30モル%、残存アセチル基量は1.9モル%、アセトアセタール化度は4
0.1モル%(全アセタール化部分における割合は58.9%)、ブチラール化度は28
.0モル%のポリビニルアセタールを得た。更に、得られたポリビニルアセタール樹脂を
室温にて70kg/cmでプレスした後、粉砕器にて粉砕し、熱現像性感光材料用バイ
ンダー樹脂粒子を得た。なお、得られた熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子は見かけ
比重が0.49であった。
【0064】
(実施例5)
重合度800のポリビニルアルコール樹脂を用いた以外は、実施例3と同様にして、残存
アセチル基量12モル%、残存水酸基量25モル%、アセトアセタール化度50モル%(
全アセタール化部分における割合は79.4%)、ブチラール化度13モル%のポリビニ
ルアセタール樹脂を得た。更に、得られたポリビニルアセタール樹脂を室温にて70kg
/cmでプレスした後、粉砕器にて粉砕し、熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子を
得た。なお、得られた熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子は見かけ比重が0.41で
あった。
【0065】
(比較例1)
プレス工程及び粉砕工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、熱現像性感光材
料用バインダー樹脂粒子を得た。なお、得られた熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子
の見かけ比重は0.21であった。
【0066】
(比較例2)
プレス工程及び粉砕工程を行わなかった以外は、実施例3と同様にして、熱現像性感光材
料用バインダー樹脂粒子を得た。なお、得られた熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子
は見かけ比重が0.71であった。
【0067】
(評価)
実施例1〜5及び比較例1、2で得られた熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子につい
て、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0068】
(1)溶解時間
得られたポリビニルアセタール樹脂を、20℃においてメチルエチルケトン200gに機
械式モーターにより撹拌速度300rpmで撹拌しながら溶解して、20℃における粘度
が900〜1000mPa・sである溶液を調製する際に、溶解開始から完全に溶解する
までの溶解時間を測定した。
【0069】
(2)着色の有無
得られた熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子5g、ベヘン酸銀5g及びメチルエチル
ケトン40gを24時間ボールミルで混合し、更に、N−ラウリル−1−ヒドロキシ−2
−ナフトアミド0.2gを加え、再びボールミルで粉砕して塗工溶液を作製し、この塗工
溶液を常温で3日間室内の蛍光灯下に置き溶液の着色を観察し、下記基準にて評価した。
○:白色のまま変化なし
×:着色が見られた
【0070】
(3)画像評価
(2)で作製した塗工溶液を、ポリエステル基材上に乾燥後の厚みが10μmとなるよう
に塗布して乾燥した。この塗工面上に、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン・硫
酸塩0.5g、ポリビニルピロリドン2g、メタノール30mLからなる溶液を乾燥後の
厚みが1μmとなるように塗布して乾燥し、感光性フィルムを得た。
得られた感光性フィルムに、階調パターンフイルムを通して250ワットの高圧水銀等で
20cmの距離で0.3秒間露光後、120℃の熱板を用いて5秒間加熱してシアン色の
パターン画像を得た。
得られたパターン画像を白色光に曝して、パターン画像のコントラストの変化を観察し、
下記の基準にて評価した。
○:ほとんど変化なし
×:変化が見られた
【0071】
【表1】

【0072】
表1に示すように、実施例1〜5で得られた熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子は、
いずれも溶解時間が30分以内と早く、塗工溶液の着色やパターン画像の変化も見られな
かった。これに対して、比較例1で得られた熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子は、
見かけ比重が小さすぎることから、樹脂の飛散が見られ、取扱性に問題があった。また、
比較例2で得られたポリビニルアセタール樹脂は、見かけ比重が大きすぎ、また、メチル
エチルケトンに溶解する際にかなりの時間がかかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、熱現像性感光材料の感光層のバインダーとして用いた場合に、塗工溶液
の着色や画像特性の劣化を防止することができ、熱現像性感光材料を製造する際の取扱性
や生産性に優れる熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残存アセチル基量が25モル%以下、残存水酸基量が17〜35モル%、かつ、重合度が
200〜3000であるポリビニルアセタール樹脂からなる熱現像性感光材料用バインダ
ー樹脂粒子であって、見かけ比重が0.3〜0.6であることを特徴とする熱現像性感光
材料用バインダー樹脂粒子。
【請求項2】
ポリビニルアセタール樹脂は、側鎖に下記一般式(1)で表される官能基、下記一般式(
2)で表される官能基、下記一般式(3)で表される官能基、下記一般式(4)で表され
る官能基、下記一般式(5)で表される官能基、下記一般式(6)で表される官能基、第
三級アミン基、及び、第四級アンモニウム塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種の
官能基を0.1〜5モル%含有することを特徴とする請求項1記載の熱現像性感光材料用
バインダー樹脂粒子。
【化1】

式中、Mは、H、Li、Na又はKを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル
基を表す。
【請求項3】
ポリビニルアセタール樹脂は、主鎖中にα−オレフィン単位を1〜20モル%含有するこ
とを特徴とする請求項1又は2記載の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子。
【請求項4】
20℃においてメチルエチルケトン200gに300rpmの撹拌速度で撹拌しながら溶
解して、20℃における粘度が900〜1000mPa・sである溶液を調製する際に、
溶解開始から完全に溶解するまでの溶解時間が30分以内であることを特徴とする請求項
1、2又は3記載の熱現像性感光材料用バインダー樹脂粒子。

【公開番号】特開2006−23665(P2006−23665A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203689(P2004−203689)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】