説明

熱硬化性エポキシ樹脂の新規な製造方法

本願は、複数のエポキシ化フェノール化合物の混合物からエポキシ樹脂を製造する方法であって、前記複数のエポキシ化フェノール化合物は、単純なフェノール、酸−フェノール、クマリン、ナフトキノン、スチルベノイド、フラボノイド、イソフラボノイド、アントシアニン、縮合化タンニン及び加水分解性タンニンから成る群から選択される複数の天然フェノール化合物のエポキシ化により得られる、前記方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、エポキシプレポリマー、特にグリシジルエーテル型の合成、及びエポキシ樹脂を製造するためのそれらの使用である。より詳細には、本発明は、再生可能資源に由来し、かつ油、天然ガス、石炭又は他の化石資源に由来しない多官能性芳香族及び多環芳香族化合物の、グリシジルエーテル類の合成のための試薬としての使用、並びに樹脂、より詳細には熱硬化性エポキシ型の樹脂を製造するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の範囲内では、「エポキシプレポリマー」は、1つ以上のエポキシド官能基を含む、化合物又は複数の化合物の混合物を意味する。典型的には、これらのプレポリマーは、末端エポキシド官能基を有するグリシジルエーテルである。一般に、エポキシプレポリマーは、樹脂(いわゆる「エポキシ型樹脂」又は「エポキシ樹脂」)を形成するために硬化剤又はモノマーとの配合により反応させられる。特定のエポキシ型樹脂は、エポキシプレポリマーと硬化剤の混合物である「エポキシ型の熱硬化性樹脂」又は「エポキシ熱硬化性樹脂」である。別の種類のエポキシ型樹脂は、エポキシプレポリマーとアクリル又はメタクリル酸の混合物を反応させて、アクリレート又はメタクリレートマクロモノマーを得て、次に、このマクロモノマーとビニルモノマーを重合することにより得られる「ビニルエステル樹脂」である。
【0003】
本発明の範囲内では、「エポキシド」は、炭素−炭素結合上に架橋している酸素原子を含む官能基を意味する。また、エポキシド官能基を含む化合物の範囲までをエポキシド又は「オキシラン」さらには「エポキシ」という。「エポキシ化」は、例えば、オレフィンの酸化、又はハロゲン化オキシランの求核置換により、エポキシド官能基を化合物に導入するための反応を意味する。また、エピクロルヒドリンは、エポキシド官能基(より具体的には、グリシジルエーテル)をフェノール化合物に導入するために一般に使用される。
【0004】
本明細書の範囲内では、「配合」は、エポキシプレポリマーに硬化剤を混ぜる行為を意味する。エポキシ樹脂又は架橋された樹脂を形成するために、典型的には重合より、これらの成分の両方は共に反応する。また、これは「架橋」ともいう。
本明細書の範囲内では、「エポキシ型樹脂」又は「エポキシ樹脂」は、複数のエポキシプレポリマーの混合物と硬化剤との配合による生成物を意味する。
【発明の概要】
【0005】
本願の対象は、天然フェノール化合物からエポキシプレポリマー、エポキシ熱硬化性樹脂及びビニルエステル樹脂を製造する方法である。また、別の対象は、前記方法により得られるエポキシプレポリマー、エポキシ熱硬化性樹脂及びビニルエステル樹脂、並びに前記樹脂の使用である。
【0006】
多官能性芳香族及び多環芳香族化合物のエポキシ化は、エポキシ樹脂の配合時にそれらの反応性を改良し、それにより樹脂の硬化時間又は使用寿命を制御するという目的を有する。これらの芳香族及び多環芳香族化合物は、バイオマス、より詳細には植物、木材、ブドウ、果物又は藻類に由来する天然フェノール化合物である。
【0007】
それらの多様性、それらの使用の容易性及びそれらの様々な物理特性により、エポキシ型樹脂は、特に、変圧器、スイッチ、ブレーカーの絶縁などの電気用途の分野で、多くのプラスチック材料に使用される。また、エポキシ型樹脂は、良好な機械的及び電気的温度安定性、摩擦性及び化学製品に対する耐性を有し、かつ金属表面上の保護コーティングとしてよく知られている。
【0008】
硬化剤の第一の機能は、樹脂の架橋を促進するために、配合時にエポキシドと反応することである。また、エポキシ樹脂の配合物は、架橋反応に触媒作用を及ぼすための触媒(促進剤)、並びに添加剤、充填剤、可塑剤、希釈剤、試薬、安定剤及び他の含有物を含んでよい。
【0009】
エポキシ樹脂は、共に反応して注目すべき機械的及び熱的性質を有する架橋された樹脂を形成する2つの成分から成る。この反応は、エポキシ官能基(グリシジル)を有する化合物であるプレポリマーと硬化剤の間で起こる。硬化剤は、アミン(一級及び所望により二級アミン)官能基を有するか、又は酸若しくは酸無水物官能基を有する化合物である。この反応は、室温又は加熱条件下で起こり、かつ発熱性である(スキーム1)。また、硬化は、プレポリマーとアクリル又はメタクリル酸の添加後に、ビニルモノマーとのラジカル重合により行われることができる。次に、架橋は、ビニルモノマーとアクリレートマクロモノマーの共重合に基づく。
【化1】

【0010】
一般に、エポキシ官能基を有する化合物又はエポキシプレポリマーは、ビスフェノールA及びエピクロロヒドリンから重合されており、これらは、ジグリシジルエーテルビスフェノールA(DGEBA)(スキーム2)のオリゴマーである。ビスフェノールAは、カテゴリー3の生殖毒性CMRに分類された有害物質である。
【化2】

【0011】
一般に、エポキシ樹脂に使用されるアミン硬化剤は、一級及び二級アミン官能基を有する化合物から成る。アミン官能基は、架橋(スキーム1)中にエポキシ官能基と反応する。一級アミン官能基は、より反応性が高く、そしてエポキシ官能基との反応の発熱性に対する温度上昇が、二級アミン官能基の反応に必要なエネルギーを提供する可能性を与える。
【0012】
最も使用されるジアミンは、メチレンジアニリン(MDA)及びジアミノジフェニルスルホン(DDS)(スキーム3、スキーム4)である。しかし、DDSは有害化合物であり、そしてDMAは、CMR(カテゴリー2の発ガン性物質及びカテゴリー3の突然変異原)に分類されている。したがって、これらの使用は、非常に危険であり、制限されるべきであり、さらには回避されるべきである。
【化3】

【0013】
また、イソホロンジアミン及びN−アミノエチルピペラジンなどの他のアミン類もエポキシ樹脂の配合物中に使用されているが、これらのアミン類は、接触及び摂取により有害であり、感作的であり、環境毒性である(スキーム5、スキーム6)。
【化4】

【0014】
一般に、エポキシ樹脂に使用される酸硬化剤は、酸又は無水物官能基を有する化合物から成る。エポキシプレポリマーに含まれているヒドロキシル官能基は、架橋中にグリシジル基と反応できる酸基を出す無水物官能基と反応する(スキーム7)。無水物官能基は、アミン官能基より反応性が低いので、架橋を開始するために十分な熱エネルギー量が確保されなければならない。
【化5】

【0015】
最も使用される無水物硬化剤は、無水フタル酸及びその誘導体である(スキーム8、スキーム9)。
【化6】

【0016】
ビニルエステル樹脂の調製は、2段階で行われる。初めに、アクリル又はメタクリル酸と反応させて、アクリレート又はメタクリレートマクロモノマーを合成することにより、エポキシプレポリマーが形成される。次に、熱、光化学又は放射ルートを介して、ラジカル開始剤により開始されるラジカル重合により、このマクロモノマーは、ビニルモノマー(スチレン、ビニルトルエン又はそれらの誘導体)と共重合される(スキーム10)。
【化7】

【0017】
現時点では、化学工業の製造業者は、その活動について幾つかの制約を受けながら、反応させなければならない:
価格変動と関連した化石原料の不足;
化学プロセスの汚染(詳細には温室効果ガスの放出)を激減させる必要性;
規制(REACH、DCEなど)が設けられている原料及び合成中間体の毒性面に関する強い規制要求。
これらの制約を受けながら、化学工業では、詳細には再生可能資源から材料を製造することにより、ヒト及びその環境に更に配慮した製品及び代替プロセスによって、科学に対する期待を満たし続けなければならない。また、再生可能資源の使用に対する化学の適応は、それに2つの重要な課題(油の負担に関する制約を減らして、化石資源の酸化により形成された化石炭素の放出量を減らすために、化石資源を再生可能資源に置き換えること;人々の懸念材料である毒性物質の置換)を与える。これは、(予想される毒性が残っている)分子を別の分子に置換するだけでなく、再生可能資源から誘導された新規な材料によって、材料に由来する性質を理想的な(さらには改良された)性質に置換することの検討は、満足できるほど十分ではないからである。
【0018】
現在、バイオマス由来のシントンを得るという重大な試みは、工業樹脂及び複合体を置き換えることである。エポキシ熱硬化性樹脂を処理するために望ましく得られる技術説明書では、それらは、次の項目を特に必要とし、かつ顕著に含む:
1 最初の検討事項は、架橋段階の反応性を高めるために、熱硬化性樹脂が、エポキシプレポリマーを主成分とする樹脂であることであろう。
2 第二の検討事項は、熱硬化性樹脂及びビニルエステル樹脂は、再生可能資源に由来し、かつ油、天然ガス、石炭又は他の化石資源に由来しない芳香族又は多環芳香族化合物から形成されることであろう。
3 第三の検討事項は、官能基化及びエポキシ化反応は、再生可能資源から優先的に生じるが、油、天然ガス、石炭又は他の化石資源から生じていない試薬に適用されることであろう。
4 第四の検討事項は、エポキシ化芳香族及び多環芳香族化合物は、適切な処理可能条件(溶融温度、粘度、溶解性など)下で、エポキシ及びビニルエステル樹脂に適用されることができることであろう。
5 第五の検討事項は、エポキシ化芳香族及び多環芳香族化合物は、許容可能な条件(温度、期間など)下で架橋反応を行うために十分な反応性を有することであろう。
【0019】
以下に記述されている先行技術の提案が、これらの要求に応えるために試された。実例として、以下の先行技術が顕著に提案されているであろう:
(a)米国特許第3,984,363号明細書は、エポキシ化リグニン類のエステル化と、酸無水物又はアミン型の架橋剤も含むエポキシ熱硬化性樹脂の組成物中におけるこれらのエステル化リグニンの使用とに関する。この特許発明は、リグニン類、フェノール化合物複合体に独占的に関し、あまり可溶性ではない。したがって、それらをより可溶性にするために、これらの化合物は、1〜20個の炭素原子を有する脂肪族鎖を有するカルボン酸とのエステル化工程により、必然的に変換される。
(b)レゾルシノールからのレゾルシノールジグリシジルエーテル(スキーム11)の合成、及びエピクロロヒドリンの合成が米国特許第2,892,849号明細書に記述されている。
【化8】

(c)フロログルシノール及びエピクロロヒドリンからのフロログルシノールトリグリシジルエーテル(スキーム12)の合成、並びにその抗腫瘍活性が、特開昭59−210017号公報の要約に記述されている。
【化9】

【0020】
本発明の課題は、再生可能資源に由来するエポキシ熱硬化性樹脂の製造方法を提供することである。
【0021】
本発明の別の課題は、再生可能資源に由来するビニルエステル樹脂の新規な製造方法を提供することである。
【0022】
本発明の別の課題は、アミン硬化剤と混和でき、かつ配合及び架橋のための通常の条件下でアミン硬化剤と配合されることができ、さらに好ましくは、それらの配合から形成されたエポキシ樹脂の架橋を制御できる可能性を提供する、再生可能資源に由来する新規なエポキシ化芳香族及び多環芳香族化合物を得ることである。
【0023】
生成物に関する課題は、本発明により達成され、そして本発明は、特に植物バイオマスに由来する天然フェノール化合物、又は林業に由来する関連生成物、又は淡水性若しくは好塩性藻類からの抽出物、又はツル植物、ブドウ、果物の抽出物、又はワイン生産若しくはワイン醸造に由来する関連生成物からの多官能性芳香族又は多環芳香族化合物の合成経路を提供する。
【0024】
本発明の別の課題は、再生可能資源に由来するエポキシ熱硬化性樹脂の新規な製造方法を提供すること、より詳細には、化石源のフェノール化合物を天然源のフェノール化合物と置き換えることである。
【0025】
本発明の別の課題は、前述の方法に従って製造されたエポキシ樹脂の架橋を制御することである。
【0026】
より具体的には、本発明の対象は、エポキシ型の樹脂、特に天然フェノール化合物から得られたエポキシ又はビニルエステル熱硬化性樹脂の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】天然カテキン及び実施例1によるエポキシ化カテキンのIRスペクトルを示す図である。
【図2】天然カテキン及び実施例1によるエポキシ化カテキンのESI−TOFスペクトルを示す図である。
【図3】天然カテキンのH−NMRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例1によるエポキシ化カテキンのH−NMRスペクトルを示す図である。
【図5】天然カテキン及び実施例1によるエポキシ化カテキンのH Dosyスペクトルを示す図である。
【図6】実施例6により得られた樹脂の熱重量分析(TGA)による質量損失結果を示す図である。
【図7】実施例6により得られた樹脂の示差走査熱量分析(DSC)によるサーモグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第一の態様によれば、本発明の対象は、エポキシ化フェノール化合物の混合物からエポキシ型の樹脂を製造する方法であって、前記エポキシ化フェノール化合物は、単純なフェノール、酸−フェノール、クマリン、ナフトキノン、スチルベノイド、フラボノイド、イソフラボノイド、アントシアニン、縮合化タンニン及び加水分解性タンニン(タンニン類は、解重合された形態で一般に使用される)から成る群から選択される天然フェノール化合物のエポキシ化により得られる、方法である。これらの化合物は、混合物として使用されることができるが、これは、典型的には植物バイオマスに由来する天然化合物が使用される場合である。
【0029】
このエポキシ化工程は、樹脂を製造するために使用されるエポキシ化フェノール化合物を生成する。言い換えれば、本発明による方法は、天然フェノール化合物のエポキシ化から導かれるエポキシ化フェノール化合物に適用される。
【0030】
第一の代替的な態様によれば、製造された樹脂は、エポキシ熱硬化性樹脂であり、そして前記エポキシ化フェノール化合物の混合物に遊離アミン又は酸無水物官能基を有する少なくとも1つの硬化剤を配合することにより調製され、それにより、エポキシ熱硬化性樹脂が得られる。
【0031】
第二の代替的な態様によれば、製造された樹脂は、ビニルエステル樹脂であり、そして以下の逐次的な工程:
複数のエポキシ化フェノール化合物の混合物にアクリル又はメタクリル酸を反応させることにより、アクリレート又はメタクリレートマクロモノマーを得る工程;
好ましくはラジカル重合により、前記アクリレート又はメタクリレートマクロモノマーとビニルモノマーを共重合することにより、ビニルエステル樹脂を得る工程
も含む方法に従って製造される。
【0032】
アクリレート又はメタクリレートマクロモノマーを合成するために、エポキシプレポリマーをアクリル、メタクリル酸又はそれらの誘導体と反応させる。この反応は、エポキシ化された天然フェノール化合物にアクリル又はメタクリル酸(好ましくは、アクリル酸)を反応させることにより行われる。この反応は、溶媒中で行われ、アクリレート又はメタクリレートマクロモノマーの単離を可能にする。次に、このマクロモノマーは、反応性希釈剤(ビニル化合物、好ましくはスチレン又はビニルトルエン、から成る重合性溶媒)との反応に供される。
【0033】
本発明の方法において反応物質として使用されるエポキシ化フェノール化合物は、一般に、単純なフェノール、酸−フェノール(安息香酸又はケイ皮酸の誘導体)及びクマリン、ナフトキノン、スチルベノイド(2つの炭素(C)によって結合した2つのC環)、並びにフラボノイド(flavenoid)、イソフラボノイド及びアントシアニン(C−C−C構造)、並びに縮合形態:縮合化タンニン及び加水分解性タンニンに細分化される天然フェノール化合物から導かれる。これらの炭素骨格は、シキマート経路を介して形成された植物の二次代謝から導かれる。これらは、少なくとも1つのベンゼン環及びヒドロキシル基を含む分子である。
典型的には、これらのヒドロキシル基は、ベンゼン環上に位置し、それによってフェノール官能基を形成している。また、天然フェノール化合物は、「ポリフェノール」としても表される。本発明に従って使用される天然フェノール化合物は、(数及び位置における)様々な官能性を有するエポキシ化化合物を得る可能性を与える多様な位置に、ヒドロキシ官能基を含むという利点を有する。このエポキシ化度の変化は、官能性を制御し、それにより反応性を制御して、その結果、架橋時間も制御し、このようにして、硬化後の材料の最終的な力学的性質も制御する。
【0034】
本発明の方法に適用される化学物質は、既に述べた天然フェノール化合物以外の天然フェノール化合物を概ね含まない。特に、それらは、好ましくは、リグニン及びリグナンを含まない。
本発明に従って使用されることができる天然フェノール化合物の例が下記表に列挙されており、その表には、各分類の化合物の有力な供給源も示されている。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
この表は、Macheixらの「Sarni-Manchado and Cheynier (Les polyphenols en agroalimentaire, Lavoisier, Editions Tec & Doc, 2006, p. 398)」、並びにBrunetonの「Pharmacognosie-Phytochimie, Plantes medicinales, Editions Tec & Doc, Editions medicales internationales, 1999, p. 1120」を参考にしているが、網羅的なものではなく、使用できるフェノール類について限定するものでもない。
【0038】
好ましい実施形態によれば、天然フェノール化合物は、フラボノイド、縮合化タンニン又は加水分解性タンニンの種類であり、好ましくは、カテキン(スキーム13)及びカテキンの誘導体から選択される。有利には、天然フェノール化合物は、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン(epiogallocatechin)、カテキン没食子酸塩、エピカテキン没食子酸塩などから選択される。
【化10】

【0039】
好ましい実施形態によれば、前記天然フェノール化合物は:
木材、若しくは林業に由来する関連品;
淡水性若しくは好塩性藻類;あるいは
ツル植物、ブドウ、果物、又はワイン生産若しくはワイン醸造に由来する関連品
から抽出される。
【0040】
本明細書の範囲内では、「フラボノイド」は、C鎖によって結合した2つのC環によって形成された炭素原子数15の骨格を有する有機化合物の種類を意味する。特に、フラボノイドは、フラボン、フラボノール、フラバノール(カテキン類とも呼ばれる)を包含する。
本明細書の範囲内では、「縮合化タンニン」は、フラボノイドの重合により誘導された有機化合物の種類を意味する。また、縮合化タンニンは、「カテキンタンニン」又は「プロアントシアニジン」とも呼ばれる。
本明細書の範囲内では、「加水分解性タンニン」は、糖の重合及び酸−フェノールの重合から誘導された有機化合物の種類を意味する。
【0041】
天然フェノール化合物の縮合形態は、エポキシ化前に解重合される。具体的には、縮合化タンニン(又はプロアントシアニジン)は、酸及び求核性試薬の存在下で、アルコール媒体中で熱分解される(Kolodziej Phytochemistry ; 1990, 29, 1671-1674; Rigaud, J.; Perez-Ilzarbe, X.; Ricardo da Silva, J. M.; Cheynier, V. Journal of Chromatography; 1991, 540, 401-405; Guyot, S.; Marnet, N.; Laraba, D.; Sanoner, P.; Drilleau, J. F. Journal of Agricultural and Food Chemistry; 1998, 46, 1698-1705; Kennedy, J.; Jones, G. P. Journal of Agricultural and Food Chemistry; 2001, 49, 1740-1746; Torres, J.; Lozano, C. Chromatographia; 2001, 54, 523-526)。この求核性試薬は、フラバン間結合の酸触媒的分解によりカルボカチオンの形態で放出された更に高級なユニット及び延長ユニットと反応する(スキーム14)。求核性試薬は、チオール官能基を有する化合物、すなわち、単芳香族化合物である。したがって、解重合反応後のポリマー鎖の構成ユニットは、それらが最初に末端部位(下側端部)にあった場合には遊離モノマーとして、又はそれらが最初に中間部位若しくは上側末端部位にあった場合には置換モノマー(チオエーテル誘導体又はフェノール化合物誘導体)として、再び確認される。
【化11】

レゾルシノールなどのフェノール化合物とともに解重合が行われるとき、追加のヒドロキシ官能基が、エポキシ化度を大きく増加させる全ての置換された単量体ユニットに導入される。
【0042】
したがって、特に縮合化タンニン及び加水分解性タンニンに十分に適合した、特定の実施形態によれば、本発明による方法は、エポキシ化工程前に、後者が縮合形態で存在する場合には天然フェノール化合物の解重合工程を含む。典型的には、この解重合は、酸及び求核性試薬の存在下で行われる。
この実施形態によれば、フェノール化合物の縮合形態は、エポキシ化前に解重合される。一般に、求核性試薬は、チオール官能基を有する化合物(例えば、トルエンα-チオール、チオグリコール酸、シスチン又はシステアミンなど)さらには単芳香族フェノール化合物(典型的には、フロログルシノール又はレゾルシノール)である。
【0043】
有利には、本発明による方法のエポキシ化反応は、次の実施形態のいずれか1つに従って行われることができる。
【0044】
第一の実施形態によれば、天然フェノール化合物のエポキシ化は、少なくとも1つの塩素又は臭素原子で置換されたオキシラン(好ましくは、エピクロロヒドリン)によるエポキシ化により行われる。
一般に、エポキシ化は、エタノール、好ましくは無水エタノールなどの溶媒中で行われる。有利には、このエポキシ化は、強塩基(典型的には水酸化ナトリウム)の存在下で行われる。形成された塩は、一般にろ過により除去され、そして残留オキシランは、蒸発により除去されることができる。
エピクロロヒドリンが、バイオディーゼルを調製するための植物油のトランスエステル化から共形成されたグリセロールの塩素化により得られるので、この実施形態の利点は、ポリフェノール化合物のエポキシ化のための再生可能資源に由来するエピクロロヒドリンの使用である。
【0045】
第二の実施形態によれば、天然フェノール化合物のエポキシ化は、不飽和ハロゲン化物によって天然フェノール化合物をアルキル化して、次に、そのようにアルキル化された化合物を酸化することにより行われる。
典型的には、アルキル化工程は、水相、メタノール相、又は様々な比率の水/メタノール混合物における相間移動触媒作用により行われる。有利には、天然フェノール化合物のアルキル化は、天然フェノール化合物にハロゲン化アルケン、優先的にはハロゲン化アリル、より優先的には臭化アリルを反応させることにより行われる。使用される相間移動触媒は、好ましくは四級アンモニウム塩、優先的にはテトラアルキルアンモニウムスルフェート、より優先的にはテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩である。
一般に、アルキル化の次に、アルキル化後の天然フェノール化合物に含まれるエチレン性官能基の酸化が行われる。有利には、この酸化は、過酸化水素などの過酸化物、又はペルオキシカルボン酸、優先的にはペルオキシ酢酸、ペルオキシ安息香酸、ペルオキシトリフルオロ酢酸若しくはメタクロロ過安息香酸により行われる。また、この酸化は、酵素的に達成されることができる。
【0046】
本発明に従って使用されるエポキシ化経路は、抽出後の精製されていない天然フェノール化合物の官能基化を可能にして、さらに得られた化合物によって、他の後処理を行うことなく、エポキシ熱硬化性樹脂を調製することが可能である。
【0047】
本発明は、これらのエポキシ化された天然フェノール化合物に、遊離アミン又は酸無水物官能基を含む硬化剤を配合することに関する。エポキシ化された天然フェノール化合物とアミン硬化剤との配合は、エポキシ-アミン樹脂の製造につながる。エポキシ化天然フェノール化合物と酸無水物官能基を有する硬化剤との配合は、エポキシ-無水物樹脂の製造につながる。
【0048】
また、第二の態様によれば、本発明の対象は、前述の方法によって得られる種類のエポキシ樹脂である。
【0049】
具体的には、本発明は、複数のエポキシ化フェノール化合物(それら自体は、天然の、粗い及び/又は解重合されたフェノール化合物の混合物から得られている)の混合物から、前述の調製法によって得ることができるエポキシ樹脂にも関する。
【0050】
また、本発明は、前述の製造方法によって得ることができるエポキシ熱硬化性樹脂に関する。
【0051】
本発明の特定の実施形態によれば、前述の樹脂は、エポキシ-アミン型の樹脂である。
【0052】
本発明の特定の実施形態によれば、前述の樹脂は、エポキシ-酸無水物の樹脂である。
【0053】
一般に、アミン型及び酸型の硬化剤は、前述の種類のものである。
【0054】
また、本発明は、前述の製造方法に従って得ることができるビニルエステル樹脂にも関する。
【0055】
また、本発明は、複合材料を得るために、電子部品の分離のために、及び表面(特に、金属表面)のコーティングのために、本発明に係る方法により得ることができるエポキシ熱硬化性樹脂又はビニルエステル樹脂の使用にも関する。
【実施例】
【0056】
本発明は、以下に説明される実施例を参照することにより、より詳細に説明されるであろう。
【0057】
実施例
以下の実施例は、本発明の範囲を制限することなく、本発明を説明するために使用される。
【0058】
実施例1
エピクロロヒドリンによるカテキンのエポキシ化によるエポキシ化カテキンの合成(スキーム15)
【化12】

【0059】
カテキン(0.5g、1.72・10−3モル、シグマ(Sigma)社C1251−10G)を秤量し、エタノール(3mL)に溶解し、50mLの2口フラスコ中へ入れる。エピクロロヒドリン(2.7mL、3.44・10−2モル、アルドリッチ(Aldrich)社240699−100 mL)を、98℃で数分間に亘って、攪拌子を備えたフラスコに入れる。反応混合物を還流し、エタノール(6.5mL)中の水酸化ナトリウム(0.70g、1.75・10−2モル)のアルコール溶液を滴加する。次に、反応媒体を還流に供する。3時間の反応後、反応媒体をアセトン(100mL)中で希釈し、形成されたNaClを除去するために、ガラスマイクロファイバー(1μm)によってフィルターでろ過する。次に、ろ液を真空の回転型エバポレーター内において濃縮し、残留エピクロロヒドリンを除去する。生成物は、アセトン(15mL)に溶解し、再ろ過し、そして真空の回転型エバポレーター内において濃縮した油の形態である。次に、溶解−ろ過−蒸発操作を最後にもう一度だけ繰り返す。
【0060】
実施例2
アルキル化/酸化によるカテキンのエポキシ化によるエポキシ化カテキンの合成
カテキン(0.5g、1.72・10−3モル、シグマ社C1251−10G)を秤量し、THF(3mL)に溶解し、50mLの二口フラスコに入れる。臭化アリル(0.2g、1.72.10−3モル)を秤量し、攪拌子を備えたフラスコに入れる。テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩触媒(0.1質量%)を秤量し、フラスコに入れる。反応混合物を1時間に亘って還流する。次に、反応媒体を冷却する。抽出によりカテキンアリルエーテルを得る。次に、反応生成物を溶解して、濃縮器に搭載されており、かつ攪拌子を備える三口フラスコに入れる。0.1質量%のトリカプリルメチルアンモニウムクロリド、40mLの蒸留水、0.1質量%のNaWO・2HO及び0.1質量%のHPO及び10gのHを20体積%で加える。反応混合物を45分間に亘って70℃へ昇温し、次に冷却する。テトラエポキシ化カテキンを得る。
【0061】
実施例3
エピクロロヒドリンを用いたエポキシ化によるエポキシ化フェノール化合物の合成
実施例1で説明したものと同条件下で、次の合成を行った(様々な合成のために使用する試薬の量を表2に列挙する):
エピカテキンのエポキシ化によるエポキシ化エピカテキンの合成
ガロカテキンのエポキシ化によるエポキシ化ガロカテキンの合成(スキーム16)
エピガロカテキンのエポキシ化によるエポキシ化エピガロカテキンの合成
カテキン没食子酸塩のエポキシ化によるエポキシ化カテキン没食子酸塩の合成
エピカテキン没食子酸塩のエポキシ化によるエポキシ化エピカテキン没食子酸塩の合成
【化13】

【0062】
【表3】

【0063】
実施例4
エポキシ化分子の特性評価
赤外線:図1
天然カテキンの−OH官能基を特徴付ける3,200cm−1のバンドが、エポキシ化カテキンのスペクトルでは消えている。この領域では、グリシジルエーテル官能基に存在するCHに対応しているピークの存在は、カテキンのエポキシ化を示す。
さらに、エポキシ化カテキンのスペクトルでは、エポキシド官能基を特徴付ける900cm−1へ向かうピークの存在が確認される。
【0064】
ESI−TOF:図2
天然カテキンのスペクトルは、290g/モルでのカテキンに対応するピークを基本的に含む。
エポキシ化カテキンのスペクトルでは、多くのピークが再び確認されており、1個、3個、4個又は5個のグリシジルエーテル官能基を有するカテキン分子と対応している:
347g/モル:1個のグリシジルエーテル官能基を有するエポキシ化カテキン
459g/モル:3個のグリシジルエーテル官能基を有するエポキシ化カテキン
515g/モル:4個のグリシジルエーテル官能基を有するエポキシ化カテキン+537モル(514+23)でのナトリウム付加体
571g/モル:5個のグリシジルエーテル官能基を有するエポキシ化カテキン
【0065】
NMR:図3、4及び5
天然カテキンのH−NMRスペクトルを図3に示す。
HMBC及びHSQCスペクトル(本実施例では図示せず)を用いて、様々なシグナルの帰属を行なった。
カテキンの1H NMR(DMSO): δ = 2.35 ppm (1H, CH4βC), 2.65 ppm (1H, CH4αC), 3.81 ppm (1H, CH3C), 4.47 ppm (1H, CH2C), 4.85 (1H, OH3C), 5.68 ppm (1H, CH8A) , 5.88 ppm (1H, CH6A), 6.59 ppm (1H, CH6’B), 6.70 ppm (2H, CH2’B , CH5’B)
【0066】
エポキシ化カテキンのH−NMRスペクトルを図4に示す。
HMBC及びHSQCスペクトル(本実施例では図示せず)を用いて、様々なシグナルの帰属を行なった。エポキシド官能基のプロトンγ及びγ’並びにH4αCプロトンに対応する2.6〜2.99ppmのシグナルを積算して、H4βCプロトンに対応する2.45ppmのシグナルを積算することにより、エポキシ化カテキン分子に存在するエポキシド官能基の平均個数を決定した。計算値は、エポキシ化カテキン分子1個当たり平均3.5個のエポキシド官能基であった。
【0067】
天然カテキン及びエポキシ化カテキンのH Dosyスペクトルを図5に示す。
カテキンは2m/s付近の拡散係数を有する。エポキシ化カテキンは、モル質量差を有することによりカテキンのエポキシ化を示す、僅かに低い拡散係数(1.5〜2m/s)を有する。さらに、スペクトルBは、2個又は幾つかの集団の分子が余り確認されていないので、縮合したエポキシ化分子(二量体、三量体・・・)というよりも、複数(3、4又は5個)のエポキシド官能基を有する分子の分布を有することを示す明確な拡散係数を有するエポキシ化カテキンと対応する。
【0068】
実施例5
タンニンのエポキシ化によるエポキシ化タンニン抽出物の合成
630.84mg/gのタンニンを含むブドウ根茎抽出物を秤量(3.15gのタンニン、9.9・10−3モルのタンニン)し、エタノール(10mL)に溶解し、そして100mLの二口フラスコに入れる。エピクロロヒドリン(15.5mL、19.8・10−2モル、アルドリッチ社240699−100 mL)を、98℃で数分間に亘って、攪拌子を備えるフラスコに入れる。反応混合物を還流し、エタノール(18.8mL)中の水酸化ナトリウム(3.96g、9.8・10−2モル)のアルコール溶液を滴加する。次に、反応媒体を還流に供する。3時間の反応後、反応媒体をアセトン(300mL)中で希釈し、ガラスマイクロファイバー(1μm)によってフィルターでろ過し、形成されたNaClを除去する。次に、真空の回転型エバポレーター内において、ろ液を濃縮し、残留エピクロロヒドリンを除去する。生成物は、アセトン(100mL)に溶解し、再ろ過し、そして真空の回転型エバポレーター内で濃縮した油の形態である。次に、溶解−ろ過−蒸発操作を最後にもう一度だけ繰り返す。
【0069】
実施例6
エポキシ化カテキン及び硬化剤からのエポキシ樹脂の製造
室温で樹脂を配合する。カテキンのエポキシ化による生成物は結晶質であり、それらのDSCにより決定した溶融温度は、85℃付近である。したがって、溶媒(手順1)、又はより低い粘度を有する別のエポキシ化物(手順2a)、又は反応性希釈剤(手順2b)にそれらの生成物を希釈する必要がある:
1) 1gのエポキシ化カテキンを200μLのアセトンに溶解する。小型のモールドにおいて、0.6gの混合物に0.365gのEpamine PC19(PO.INT.ER s.r.l)を混ぜる。室温で数時間経つと樹脂が形成される。
2) a) 60℃で数分間に亘って、1.2gのレゾルシノールジグリシジルエーテル(アルドリッチ社470945−100ML)中で0.8gのエポキシ化カテキンを希釈する。混合物は、室温で僅かに粘性を示すべきである。小型のモールドにおいて、1gの混合物に0.565gのEpamine PC19(PO.INT.ER s.r.l)を混ぜる。室温で数時間経つと樹脂が形成される。
b) 60℃で数分間に亘って、1.5gのDGEBA(Epikote828 Resolution Performance Products)中で0.5gのエポキシ化カテキンを希釈する。混合物は、室温で僅かに粘性を示すべきである。小型のモールドにおいて、1gの混合物に0.598gのEpamine PC19(PO.INT.ER s.r.l)を混ぜる。室温で数時間経つと樹脂が形成される。
【0070】
生成した樹脂を熱重量分析(TGA)(図6)により特性評価して、DGEBAから入手した市販の樹脂(Epikote 828 Resolution Performance Products)(樹脂A)と比較した。
樹脂Bは、より低い粘度を有する別のエポキシ化物としてDGEBA(25質量%のエポキシ化カテキン/75質量%のDGEBA)を用いることにより、方法2)によってエポキシ化カテキンから形成された樹脂である。
樹脂Cは、より低い粘度を有する別のエポキシ化物としてレゾルシノールジグリシジルエーテル(40質量%のエポキシ化カテキン/60質量%のレゾルシノールジグリシジルエーテル)を用いることにより、方法2)によってエポキシ化カテキンから形成された樹脂である。
3つの樹脂のための架橋剤は、脂環式アミンEpamine PC19(PO.INT.ER s.r.l)である。
【0071】
樹脂A、B及びCのTGAにより得られた質量損失結果は類似する。
【0072】
また、樹脂を示差走査熱量分析(DSC)(図7)により特性評価する。樹脂A、B及びCの組成は上述したものと同様である。DSCサーモグラムは、ガラス転移点(30〜50℃のTg)、及び試料の焼成に対応する300〜400℃付近の発熱ピークとから成る。実際に、DSC分析を300℃で止めると、試料は黄色又は茶色であり、一方で、この分析を500℃で止めると、試料は焼成されている。また、この300〜400℃付近の焼成は、この領域(40〜50%)の質量損失によってTGAにより得られるサーモグラム上でも確認できる。
市販の樹脂(A)のTgと、25%のエポキシ化カテキン(B)を含む市販の樹脂のTgは、同じである(Tg(A)=47℃及びTg(B)=48℃)。樹脂CのTgは32℃である。
一方で、焼成は、樹脂Aよりも樹脂B及びCについて低温で起こる。
【0073】
実施例7
エポキシ化タンニン及び硬化剤からのエポキシ樹脂の製造
室温で樹脂を配合する。タンニンのエポキシ化による生成物は結晶質であり、それらのDSCにより決定した溶融温度は、130℃付近である。したがって、溶媒(手順1)、又はより低い粘度のエポキシ化物(手順2a)、又は反応性希釈剤(手順2b)中で生成物を希釈する必要がある:
1) 200μLのアセトンに1gのエポキシ化タンニンを溶解する。小型のモールドにおいて、0.6gの混合物に0.312gのEpamine PC19(PO.INT.ER s.r.l)を混ぜる。室温で数時間経つと樹脂が形成される。
2) a) 60℃で数分間に亘って、1.2gのレゾルシノールジグリシジルエーテル(アルドリッチ社470945−100 mL)中で0.8gのエポキシ化タンニンを希釈する。混合物は、室温で僅かに粘性を示すべきである。小型のモールドにおいて、1gの混合物に0.651gのEpamine PC19(PO.INT.ER s.r.l)を混ぜる。室温で数時間経つと樹脂が形成される。
b) 60℃で数分間に亘って、1.5gのDGEBA(Epikote 828 Resolution Performance Products)中で0.5gのエポキシ化タンニンを希釈する。混合物は、室温で僅かに粘性を示すべきである。小型のモールドにおいて、1gの混合物に0.546gのEpamine PC19(PO.INT.ER s.r.l)を混ぜる。室温で数時間経つと樹脂が形成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエポキシ化フェノール化合物の混合物からエポキシ樹脂を製造する方法であって、前記複数のエポキシ化フェノール化合物は、単純なフェノール、酸−フェノール、クマリン、ナフトキノン、スチルベノイド、フラボノイド、イソフラボノイド、アントシアニン、縮合化タンニン及び加水分解性タンニンから成る群から選択される複数の天然フェノール化合物のエポキシ化により得られる、前記方法。
【請求項2】
前記複数のエポキシ化フェノール化合物の混合物にアミン又は酸無水物官能基を有する少なくとも1つの硬化剤を配合することにより前記樹脂を形成して、エポキシ熱硬化性樹脂を得る、エポキシ熱硬化性樹脂を製造するための請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エポキシ化工程の後に:
前記複数のエポキシ化フェノール化合物の混合物にアクリル又はメタクリル酸を反応させて、アクリレート又はメタクリレートマクロモノマーを得る工程、そして
好ましくはラジカル重合により、前記アクリレート又はメタクリレートマクロモノマーとビニルモノマーを共重合して、ビニルエステル樹脂を得る工程、
を含む、ビニルエステル樹脂を製造するための請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの塩素又は臭素原子で置換されているオキシラン、好ましくはエピクロロヒドリンの存在下で、前記天然フェノール化合物のエポキシ化を行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
不飽和ハロゲン化物によって前記天然フェノール化合物をアルキル化して、それによりアルキル化された化合物を酸化することによりエポキシ化を行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
エポキシ化フェノール化合物の合成に使用される天然フェノール化合物は、フラボノイド、縮合化タンニン又は加水分解性タンニンの種類であり、そして好ましくはカテキン及びその誘導体から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記天然フェノール化合物は:
木材、若しくは林業に由来する関連品;
淡水性若しくは好塩性藻類;又は
ツル植物、ブドウ、果物、又はワイン生産若しくはワイン醸造に由来する関連品
から抽出される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記天然フェノール化合物は、縮合化タンニン又は加水分解性タンニンであり、そして前記方法は、エポキシ化工程の前に、酸及び求核性試薬の存在下で、前記天然フェノール化合物を解重合する工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により得られるエポキシ型樹脂。
【請求項10】
請求項2に記載の方法により得られるエポキシ熱硬化性樹脂。
【請求項11】
エポキシ−アミン型の樹脂であることを特徴とする、請求項10に記載のエポキシ熱硬化性樹脂。
【請求項12】
エポキシ−酸無水物型の樹脂であることを特徴とする、請求項10に記載のエポキシ熱硬化性樹脂。
【請求項13】
請求項3に記載の方法により得られるビニルエステル樹脂。
【請求項14】
複合材料を得るための、電子部品の分離のための、及び表面、特に金属表面のコーティングのための請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により得られる熱硬化性樹脂の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−528223(P2012−528223A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512436(P2012−512436)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051018
【国際公開番号】WO2010/136725
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】