説明

熱軟化性放熱シート

【課題】常温では固体シート状で、電子部品やヒートシンクヘの装着、脱着が容易で、電子部品の動作時に発生する熱により軟化して界面接触熱抵抗が無視出来るレベルとなり、さらにポンプアウトせずに長期間に渉って優れた放熱性能を発揮する放熱シートを提供する。
【解決手段】電子部品と熱放散部材の間に装着して使用する放熱シートであって、(A)厚さが1〜50μmであり、熱伝導率が10〜500W/mKである金属箔または金属メッシュからなる中間層、及び、その両面に形成された(B)軟化点が40℃以上であり、80℃における粘度が1×102〜1×105Pa・sの範囲であり、かつ熱伝導率が1.0W/mK以上である樹脂系熱伝導性組成物からなる層を含む積層構造体であり、シート全体の厚さが40〜500μmの範囲であることを特徴とする熱軟化性放熱シート。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、発熱性電子部品の冷却に使用される放熱シートに関し、特には電子部品の温度上昇にともない、可逆的にその性状が固体からぺースト状あるいは液体状に変化する積層構造体である熱軟化性放熱シートに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、パーソナルコンピューター、デジタルビデオディスク、携帯電話などの電子機器に使用されるCPUやドライバICやメモリーなどのLSIは集積度の向上と動作の高速化に伴い消費電力が増大すると共にその発熱量も増大し、電子機器の誤動作や電子部品の損傷の一因となっているため、その放熱対策が大きな問題となっている。
【0003】従来、電子機器等においては、その使用中に電子部品の温度上昇を抑えるために、黄銅等、熱伝導率の高い金属板を用いたヒートシンクが使用されている。このヒートシンクは、その電子部品が発生する熱を伝導し、その熱を外気との温度差によって表面から放出する。
【0004】電子部品から発生する熱をヒートシンクに効率良く伝えるために、ヒートシンクを電子部品に密着させる必要があるが、各電子部品の高さの違いや組み付け加工による公差があるため、柔軟性を有する熱伝導性シートや、熱伝導性グリースを電子部品とヒートシンクとの間に介装させ、この熱伝導性シートまたは熱伝導性グリースを介して電子部品からヒートシンクヘの熱伝導を実現している。上記熱伝導性シートとしては、熱伝導性シリコーンゴム等で形成された熱伝導用シート(熱伝導性シリコーンゴムシート)が用いられ、熱伝導性グリースとしては熱伝導性シリコーングリースが使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来から使用されている熱伝導性シリコーンゴムシートでは電子部品との界面に接触熱抵抗が存在するために、熱伝導性能には限界がある。このことは発熱量が大きな高周波駆動のCPUの冷却には大きな問題であり、界面接触熱抵抗の低減が望まれている。
【0006】一方、熱伝導性シリコーングリースはその性状が液体に近いために界面接触熱抵抗は殆ど無視できるレベルにあり、熱伝導性能は良いが、ディスペンサなどの専用の装置が必要になることと、回収する場合に作業性が悪いという問題がある。さらに熱伝導性グリースは室温から電子部品動作温度(60〜120℃)間でのヒートサイクルを長期間にわたって受けた場合に、ポンプアウトという不具合が発生する問題がある。ポンプアウトとは、グリースに含まれる液状オイル成分が分離し電子部品と熱放散部材の間からしみ出してしまい、グリースが固化してしまい、亀裂やボイドが発生する現象であり、結果的に熱抵抗の増加を招き電子部品の放熱ができなくなるというものである。
【0007】上記問題点の一部を改良するために、常温では固体シート状で、電子部品の動作時に発生する熱により軟化して界面接触熱抵抗が無視出来るレベルとなる相変化型放熱シート(フェイズチェンジシート)が提案されている。それらフェイズチェンジシートの先行技術としては以下のものが提案されている。米国特許第4466483号明細書では非金属シートの両面に相変化するワックス層を形成するものが開示されている。米国特許第5904796号明細書では金属箔の片面に相変化するパラフィンまたは石油ゼリーを形成し、その反対側の面に接着剤を形成するものが開示されている。特表2000-509209号公報ではアクリル粘着剤とワックスと熱伝導性フィラーからなり、網状組織、フィルム等の中間層を設けないことを特徴とするフェイズチェンジシートが開示されている。しかしこれら先行技術では、ポンプアウトに対しては何ら有効な解決方法の提案がなされていない。
【0008】そこで、本発明の課題は、上記問題を解決し、常温では固体シート状で、電子部品やヒートシンクヘの装着、脱着が容易で、電子部品の動作時に発生する熱により軟化して界面接触熱抵抗が無視出来るレベルとなり、さらにポンプアウトせずに長期間にわたって優れた放熱性能を発揮する放熱シートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、電子部品と熱放散部材の間に装着して使用する放熱シートであって、(A)厚さが1〜50μmであり、熱伝導率が10〜500W/mKである金属箔または金属メッシュである中間層、及び、その両面に形成された(B)40℃以上で熱軟化し、80℃における粘度が1×102〜1×105Pa・sの範囲であり、かつ熱伝導率が1.0W/mKである樹脂系熱伝導性組成物からなる層を含む積層構造体であり、シート全体の厚さが40〜500μmの範囲であることを特徴とする熱軟化性放熱シートに係るものである。
【0010】
【発明の実施の形態】[熱軟化性放熱シート]積層構造体である熱軟化性放熱シートの全体の厚みは、40〜500μm、特に40〜250μmの範囲とするのが好適である。厚みが40μm未満では剛性が不十分であることから、手作業で熱軟化性放熱シートを取り扱う際に変形してしまう問題があり、一方、500μmを越えると、熱抵抗的に不利となる。
【0011】[中間層(A)]上記熱軟化性放熱シートの中間層(A)の金属箔または金属メッシュは、支持体としてシートの強度を高める機能を果たすが、室温で電子部品またはヒートシンク等の熱放散部材への装着、脱着する際に、その取り扱い性を向上させる。
【0012】また、中間層(A)の厚さは1〜50μm、特に5〜25μmの範囲であることが好ましく、1μm未満では支持体として十分にシートの強度を高めることができなくなり、50μmを越えるとシートの柔軟性が低下し装着の際に電子部品またはヒートシンクと放熱シートの間にエアーを巻き込む原因となる。
【0013】また、中間層(A)を構成する金属としては、10〜500W/mKの高い熱伝導率を持つ金属であり、好ましくは、20〜500W/mKの金属がよい。具体的にはアルミニウム合金、マグネシウム合金、銅、鉄、ステンレス、銀、金などが挙げるられる。さらに、金属メッシュの場合は、上記金属箔を打ち抜き加工により複数の孔を開けたものや、上記金属のワイヤーを織物状にしたものなどが用いられる。
【0014】上記金属箔または金属メッシュは、樹脂系熱伝導性組成物のポンプアウトを抑制する機能も果たす。一般的に、放熱シートは電子部品と熱放散部材から圧縮応力を受ける様に組み込まれる。本発明の樹脂系熱伝導性組成物は40℃以上で熱軟化するが、その際、圧縮応力により樹脂系熱伝導性組成物は電子部品と熱放散部材の接触面よりはみ出すと同時に厚みが薄くなるが、この際中間層と樹脂系熱伝導性組成物間に摩擦力が働くことで、中間層がない場合に比較して上記はみ出しを抑制できる。また、同様の摩擦力により液状成分がしみ出すこと(ポンプアウト)を抑制できる。さらに中間層が金属メッシュの場合には、金属メッシュの開口部に樹脂系熱伝導性組成物が埋め込まれる形となっていることから、さらに効果的にポンプアウトを抑制できる。
【0015】[樹脂系熱伝導性組成物層(B)]本発明の樹脂系熱伝導性組成物の熱伝導率が1.0W/mK以上である必要があり、好ましくは20〜50W/mKである。熱伝導率が1.0W/mK未満では電子部品とヒートシンクの間の熱伝導性が低くなり充分な放熱性能が発揮されない。
【0016】また、本発明の樹脂系熱伝導性組成物は、室温では固体であるが電子部品の発熱により熱軟化するもので80℃における粘度が、1×102〜1×105Pa・sの範囲となるのが好適であるが、更に好ましくは2×10〜5×10Pa・sとするのがよい。粘度が1×102Pa・s未満では、電子部品とヒートシンクの間より液状成分が、ポンプアウトする問題があり、また、粘度が1×105Pa・sを越えると接触熱抵抗が大きくなり電子部品とヒートシンクの間の熱伝導性が低くなり充分な放熱性能が発揮されない。すなわち、ポンプアウトを抑制し、かつ、放熱性能を損なわない粘度範囲(1×102〜1×105Pa・s)に本発明の樹脂系熱伝導性組成物は調整される。
【0017】[樹脂系熱伝導性組成物の樹脂成分]上記樹脂系熱伝導性組成物は、熱軟化性の樹脂と熱伝導性充填剤の混合物からなるものである。熱軟化性樹脂は熱軟化性放熱シートの熱軟化成分であり、樹脂自体が電子部品の作動温度(例えば40〜100℃)でクリティカルな熱軟化(融解)するものであっても、クリティカルな熱軟化性を持たないが熱伝導性組成物として熱軟化するものでもよい。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリふっ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、パラフィン、ジオルガノポリシロキサンなどのシリコーン樹脂などが例示され、ポリオレフィンが好ましい。該ポリオレフィンは、α−オレフィン重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体及びエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体から選ばれることが好ましく、α−オレフィン重合体を含むものがより好ましく、特にα−オレフィン重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体及びエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体を含むものが好ましく、その際の配合比率はα−オレフィン重合体100重量部、エチレン・α−オレフィン共重合体10〜1000重量部、そしてエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体10〜1000重量部であることが好ましい。上記熱伝導性充填剤としては、金属、無機酸化物、無機窒化物から選ばれることが好ましい。
【0018】[ポリオレフィン]α−オレフィン重合体は、一般式(1):CH2=CH(CH2)nCH3 (1)で表されるものが好ましい。ここでnは熱伝導性組成物が室温では固体状またはワックス状で、通常電子部品の発熱温度である40℃〜100℃の範囲で熱軟化する範囲のものであり、n=16〜50が好ましい。nが小さすぎると、室温で液体状であるため放熱シートからブリードしてしまうことがあり、nが大きすぎると電子部品の動作温度(100℃)以下で溶融せず放熱シートの熱軟化性が悪くなることがある。さらに、α−オレフィン重合体として、2種以上のα−オレフィンに由来するものの混合物とした場合には、単一のα−オレフィンを使用した場合に比較して、溶融温度に幅を持たせることができるので(熱軟化温度に幅を持たせることができるので)、急激な温度変化に対しても緩やかに硬化、軟化するために安定した放熱性が得られると同時にポンプアウトし難いというメリットがある。上記α−オレフィン重合体は一例としてダイヤレン(三菱化学(株)製、商品名)が挙げられる。
【0019】また、上記のエチレン・α−オレフィン共重合体は、シートに柔軟性とタック性(電子部品またはヒートシンクに放熱シートを仮止めする必要性から必要とされる)を付与するものであり、下記の一般式(2):[(CH2-CH2)x−(CH2-CRH)Y]p (2)で表されるものが好ましい。ここで、RはCnH2n+1で表されるアルキル基、X,Y,P及びnは正の整数である。
【0020】エチレン・α−オレフィン共重合体は室温で液状のものが好ましく、25℃の粘度が200〜1000000cStの範囲のものが好ましい。200cSt未満では放熱シートのグリーン強度が不足するので取り扱い性が悪くなり、1000000cStを越えると放熱シートのシート加工性が悪くなることがある。より好ましくは、300〜300000cStとされる。また、単一の粘度のポリマーを使用してもよいが、粘度の異なる2種以上のポリマーを混合して使用した場合には、柔軟性とタック性のバランスに優れた放熱シートが得られるので有利である。
【0021】エチレン・α−オレフィン共重合体の一例としてルーカント(三井化学(株)製、商品名)が挙げられる。また、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体は、シートの強度を保持するのに効果的な成分である。非共役ポリエンが下記一般式(3)又は(4)で示される少なくとも1種の末端ビニル基含有ノルボルネン化合物よりなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴムであることが好ましい。
【0022】
【化1】


(式中、nは0〜10の整数であり、R1は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、R2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。)
【0023】
【化2】


(式中、R3は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
非共役ポリエンとしては、5−ビニル−ノルボルネン、5−メチレン−ノルボルネンが好ましい。
【0024】エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体は室温では固体であるが、100℃ではムーニー粘度(JIS K 6395)が5〜50の範囲となり流動性を持つものとされる。5未満では放熱シートのグリーン強度が不足し取り扱い性が悪くなり、50を越えてもグリーン強度は向上せず、シート加工性が悪くなると同時にシートの柔軟性が不足する。より好ましくは5〜25の範囲とされる。さらに、エチレン含有量はポリマー中の結晶化度を決定する主要素となり、ポリマーのグリーン強度に影響を与えるが、エチレン含有量が63%未満ではグリーン強度は弱く、63%を越えると急激にグリーン強度が強くなる。本発明ではエチレン含有量の単一なポリマーを使用してもよいが、より好ましくはエチレン含有量の異なる2種以上のポリマーを使用した場合、シートの加工性と柔軟性のバランスを取ることが可能となり有利である。
【0025】上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体としては一例として三井EPT(三井化学(株)製、商品名)が挙げられる。本発明のポリオレフィン系熱伝導性組成物は40℃以上で熱軟化するが、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒を添加した系、または有機過酸化物を添加した系では、電子部品から加わる熱で軟化溶融した後にエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体を架橋することができるのでより効果的にポンプアウトを防止することができる。
【0026】[熱伝導性充填剤]また、熱伝導性充填剤は鉄、アルミ、ニッケル、銀、金などの金属粉末または、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウムなどの無機酸化物粉末または窒化アルミニウム、窒化硼素などの無機窒化物粉末などが使用される。配合量は熱伝導性充填剤の種類によって異なるが、樹脂系熱伝導性組成物の熱伝導率が少なくとも1.0W/mKとなるような量とする必要がある。
【0027】[その他の任意成分]さらに、任意成分として合成ゴムに配合される添加剤または充填剤を用いることができる。具体的には、離型剤としてシリコーンオイル、フッ素変性シリコーン界面活性剤、着色剤としてカーボンブラック、二酸化チタン、難燃性付与剤としてハロゲン化合物、加工性向上剤としてカーボンファンクショナルシランなどを添加してもよい。
【0028】[熱軟化性シートの成形]樹脂系熱伝導性組成物は、上記した成分を2本ロール、バンバリーミキサー、ドウミキサー(ニーダー)、ゲートミキサー、プラネタリーミキサーなどのゴム練機を用いて均一に混合することにより得ることができる。
【0029】次に、熱軟化性シートは上記樹脂系熱伝導性組成物と金属箔または金属メッシュを共押し出し成形、プレス成形、コーティング成形により複合シート状に成形することにより得ることができる。コーティング成形の場合には、樹脂系熱伝導性組成物を加熱溶融するか、溶剤に溶解し塗工液とすることが好ましく、溶剤としてはトルエン、キシレン、シンナー、ゴム揮などを用いることができる。
【0030】
【実施例】[原料説明]以下の実施例では、次の材料を使用した。
[樹脂系熱伝導性組成物層(B)]
1)エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体は、三井化学(株)製商品名の以下のもの。
【0031】
【表1】


【0032】2)ルーカントHC40(350cSt)、HC3000X(25000cSt)、HC10(140cSt)はエチレン・α−オレフィン共重合体であり、三井化学(株)製商品名であり、括弧内数値は25℃の粘度。
3)ダイヤレン30(30〜40)、ダイヤレン208(17〜25)、ダイヤレン18(15)(括弧内数値は一般式〈1〉のnの値)はα−オレフィン重合体であり、三菱化学(株)製商品名4)Ag-E-100は銀粉であり、福田金属箔粉工業(株)製商品名5)AS30はアルミナ粉であり、昭和電工(株)製商品名6)クリスタライトVXSはシリカ粉であり、タツモリ製商品名7)KBN-(h)-10は窒化硼素粉であり、信越化学工業(株)製商品名8)KBM3103カーボンファンクショナルシランであり信越化学工業(株)製商品名
【0033】[中間層(A)]
アルミ箔:福田金属箔粉工業(株)製 厚み30μm、熱伝導率205W/mK。
アルミメッシュ:真空冶金株式会社製 厚み50μm、熱伝導率205W/mK。
銅箔:福田金属箔粉工業(株)製 厚み35μm、熱伝導率372W/mK。
銅メッシュ:真空冶金株式会社製 厚み50μm、熱伝導率372W/mK。
【0034】−実施例1〜12−[熱軟化性放熱シート作成手順]表1〜3に示す配合処方の原材料をプラネタリーミキサーに投入し、100℃で2時間攪拌混合した。次に室温で2本ロールにより脱気混合し、得られコンパウンドを固形分率75%の濃度でキシレンに溶解した。その後、幅500mmの金属フィルムまたは金属メッシュの両面にコーターを用いて複合シートの仕上がりの膜厚が200μmとなるように塗工し熱軟化性シートを加工した。得られた熱軟化性シートを所定の形状に打ち抜き成形した。
【0035】[評価手段]ポンプアウト性、柔軟性、タック性、取り扱い性は◎(優)、○(良)、△(やや良)、×(不良)で評価した。
1)ポンプアウト性:2枚の板ガラス(L×W×H=50×50×1mm)の中央に熱軟化性放熱シート(L×W×H=10×10×0.2mm)を挟み込み0.2Mpaの加重を加えた状態で125℃×10分と−50℃×10分を交互に繰り返すヒートショック試験を50サイクル行った後のオイル成分の浸みだし具合を観察した。
2)柔軟性:シートを90°に曲げた場合の亀裂の発生状態により評価した。
3)タック性:図1に示す形状のヒートシンク1の底部表面に放熱シート2を設置し、シートが下側になるように5分間空中に放置して、剥離脱落の有無により評価した。
4)取り扱い性:ヒートシンクヘの装着性を手作業により行い評価した。
【0036】[性能評価測定法]
1)可塑度測定方法:JIS-K-6249の可塑度試験により測定。
2)熱伝導率測定方法:熱伝導率測定器QTM-500(京都電機製商品名)で測定。
3)熱抵抗測定方法:トランジスタTO-3型形状に打ち抜いた厚み0.5mmのサンプルを、トランジスタ2SD923(富士電機製商品名)とヒートシンクFBA-150-PS(株式会社オーエス製商品名)の間に挟んで圧縮加重300gf/cm2で荷重する。ヒートシンクは恒温水槽の中に入れ60℃で保温する。次にトランジスタに10V、3Aの電力を供給し、5分後のトランジスタ(温度T1)とヒートシンク(温度T2)に埋め込んでいる熱電対の温度を測定し次式からサンプルの熱抵抗Rs(℃/W)を算出する。Rs=(T1-T2)/304)粘度測定方法: ARES粘弾性システム(レオメトリック サイエンティフィック社製)で測定。
5)熱軟化点測定方法:J1S-K7206のビカット軟化温度試験方法にて測定。
【0037】
【表2】 (配合量は重量部)


【0038】
【表3】 (配合量は重量部)


【0039】
【表4】 (配合量は重量部)


【0040】−比較例1〜4−また、比較のため市販されている単層フェイズチェンジシート(熱軟化性放熱シート:厚み0.2mm 比較例1〜3)およびグリース(比較例4)の熱抵抗の測定結果、80℃の粘度測定結果、ポンプアウト性試験結果および取り扱い性を表4に示す。なお、各比較例で使用したシートの製造社及び商品名は下記の通りである。
【0041】
比較例1:信越化学工業(株)製「X−65−705B」
比較例2:コメリックス社製「T−725」
比較例3:フューロン社製「1060」
比較例4:ジーイー東芝シリコーン(株)製「YG6260」
【0042】
【表5】


【0043】この結果より本発明の実施例の熱軟化性放熱シートは従来の放熱シート及びグリースと比較して、ポンプアウト性に優れることが証明され、かつ電子部品の放熱に効果があることがわかった。
【0044】
【発明の効果】本発明の熱軟化性放熱シートは、常温では固体であるので電子部品やヒートシンクヘの装着、脱着が容易であり、一方電子部品の動作時には発生する熱により軟化して界面接触熱抵抗が無視出来るレベルに低下し、さらにポンプアウトせずに長期間にわたって優れた放熱性能を発揮する。
【0045】
【図面の簡単な説明】
【図1】タック性を測定するために、ヒートシンク表面に本発明の熱軟化性放熱シートを貼り付けた状態を示す立面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】電子部品と熱放散部材の間に装着して使用する放熱シートであって、(A)厚さが1〜50μmであり、熱伝導率が10〜500W/mKである金属箔または金属メッシュからなる中間層、及び、その両面に形成された(B)軟化点が40℃以上であり、80℃における粘度が1×102〜1×105Pa・sの範囲であり、かつ熱伝導率が1.0W/mK以上である樹脂系熱伝導性組成物からなる層を含む積層構造体であり、シート全体の厚さが40〜500μmの範囲であることを特徴とする熱軟化性放熱シート。
【請求項2】前記(B)層を構成する樹脂系熱伝導性組成物が、ポリオレフィンと熱伝導性充填剤を含むポリオレフィン系熱伝導性組成物であることを特徴とする請求項1記載の熱軟化性放熱シート。
【請求項3】前記ポリオレフィンがα−オレフィン重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体及びエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の熱軟化性放熱シート。
【請求項4】前記(A)層を構成する金属箔または金属メッシュが、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅、鉄、ステンレス、銀、金及びタングステンから選ばれる材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の熱軟化性放熱シート。
【請求項5】前記(B)層を構成する樹脂系熱伝導性組成物に含まれる熱伝導性充填剤が金属、無機酸化物及び無機窒化物から選ばれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の熱軟化性放熱シート。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2002−329989(P2002−329989A)
【公開日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−135506(P2001−135506)
【出願日】平成13年5月2日(2001.5.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】