説明

熱転写フィルム及びそれを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法

【課題】少ない費用で簡単に高精細の隔壁を形成できる熱転写フィルム及びそれを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法を提供する。
【解決手段】ベースフィルム(21)と、ベースフィルム(21)上に形成された光熱変換層(22)と、光熱変換層(22)上に形成された隔壁材料層(23)と、を含んで熱転写フィルム(20)を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写フィルム及びそれを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)は、放電現象を用いて画像を表示する発光型素子の一種として、各セルごとにアクティブ素子を装着する必要がないので製造工程が簡単であり、画面の大型化が容易であり、応答速度が速いことから、大型画面を有する画像表示装置の表示素子として脚光を浴びている。
【0003】
上記のようなプラズマディスプレイパネルは、図1に示すように、上部パネル10と下部パネル20とが対向して重ねられた構造となっている。上部パネル10において、透明基板11の内面には一対の維持電極が配列されるが、通常、この維持電極は、透明電極12及びバス電極13からなる。
【0004】
上記のような維持電極は、AC駆動のための誘電体層14で被覆され、この誘電体層14の表面には保護膜15が形成される。
【0005】
一方、下部パネル20においては、下板21上にアドレス電極22が配列され、このアドレス電極22上に誘電体層23が形成されるが、この誘電体層23上には、アドレス電極22を区画するためのストライプまたはウェルタイプの隔壁24が形成され、この隔壁24によって区画されるセルには、カラー表示のための赤色、青色及び緑色の蛍光体層26が塗布されることで、サブピクセルをなす。
【0006】
隔壁24によって放電セル25がサブピクセルごとに区画され、この放電セル25には放電ガスが封入され、一つのピクセルは3個のサブピクセルからなる。
【0007】
隔壁24の形成方法としては、主に、印刷法、サンドブラスト法、エッチング法、及び感光性材料を用いるフォトリソグラフィ法が適用されている。
【0008】
印刷法は、高いチクソ性を有するガラスペーストを複数回印刷した後、所望の状態に隔壁を形成する方法であり、サンドブラスト法は、焼成前の隔壁材上にドライフィルムレジスト(Dry Film Resist:DFR)を塗布し、これをフォトマスクを用いて露光及び現像した後、このようにパターニングされたDFRをマスクとして用いてサンドブラストで隔壁パターンを形成して焼成する方法である。
【0009】
また、エッチング法は、サンドブラスト法と類似しているが、サンドブラストの代りにエッチング液を用いて隔壁を形成する方法である。
【0010】
現在、エッチング法として二つの方法が適用されているが、隔壁材上に塗布されるDFRには、フィルム形態または液状フォトレジスト(photo Resist:PR)の二種類がある。したがって、この材料によって工法に差がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の隔壁形成方法においては、高精細の隔壁パターンを得ることができず、パターニング時に高価なフォトマスクを用いるので、工程回数及び費用が増加するという問題点があった。
【0012】
したがって、上記のような問題点を解決するための隔壁形成方法の開発が要求されており、このような要求は、プラズマディスプレイパネルの隔壁形成方法のみに限定されるものではない。
【0013】
本発明は、上記のような従来の問題点を解決するためのもので、その目的は、少ない費用で簡単に高精細の隔壁を形成できる熱転写フィルム及びそれを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的を達成するために、本発明に係る熱転写フィルムは、ベースフィルムと、ベースフィルム上に形成された光熱変換層と、光熱変換層上に形成された隔壁材料層と、を含んで構成される。
【0015】
ここで、光熱変換層は、レーザー光吸収物質が含まれている有機膜、金属、金属の酸化物、金属の硫黄化物、またはこれらの組み合わせからなる物質から少なくとも何れか一つが選択され、隔壁材料層は、軟化点が300〜600℃の範囲内にあるガラス粉末を含むことが好ましい。
【0016】
このとき、ガラス粉末は、酸化鉛(PbO)、酸化ホウ素(B)及び酸化ケイ素(SiO)の混合物、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ホウ素(B)及び酸化ケイ素(SiO)の混合物、酸化鉛(PbO)、酸化ホウ素(B)、酸化ケイ素(SiO)及び酸化アルミニウム(Al)の混合物、または酸化鉛(PbO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ホウ素(B)及び酸化ケイ素(SiO)の混合物から選択された何れか一つであり、隔壁材料層は、感光性ペースト、シート、またはスラリー形態で塗布されることが好ましい。
【0017】
そして、光熱変換層と前記隔壁材料層との間に透過層をさらに含むことが好ましい。
【0018】
また、上記のような本発明の目的を達成するために、本発明に係るプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法は、ベースフィルム、光熱変換層及び隔壁材料層を含む熱転写フィルムを基板上に形成する段階と、熱転写フィルムに光を照射する段階と、熱転写フィルムを前記基板から分離して基板上に隔壁パターンを形成する段階と、を含んで構成される。
【0019】
ここで、光は、300〜450nmの波長帯のレーザーであることが好ましい。
【0020】
そして、熱転写フィルムの隔壁材料層は、感光性ペースト及び/またはガラス粉末を含むことが好ましい。
【0021】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、図面を参照した実施例の詳細な説明を通して明らかになるだろう。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る熱転写フィルム及びこれを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法は、多くの工程費用が要されるという問題点を有する従来の隔壁製造方法とは異なり、レーザーなどの光を用いて簡素化された工程で隔壁を形成することができる。また、マスクが不要なことから、工程が簡単で、マスク費用を節減することができ、大型化及び大量生産に適している。また、現像工程がないので、不要に隔壁材料が浪費されるという問題を解決することができるので、費用節減効果がある。
【0023】
さらに、簡単な工程で高精細の隔壁を形成することができるので、隔壁の安全性を高める効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施例の構成及びその作用を説明するが、図面に示され、これによって説明される本発明の構成及び作用は、少なくとも一つの実施例として説明されるものであり、これによって本発明の技術的思想、その構成及び作用が制限されることはない。
【0025】
図2は、本発明の一実施例に係る熱転写フィルム20を示した構造図である。図2に示すように、熱転写フィルム20は、ベースフィルム21と、ベースフィルム21上に形成された光熱変換層22と、光熱変換層22上に形成された隔壁材料層23とを含んで構成される。さらに、図示していないが、光熱変換層22と隔壁材料層23との間には透過層が含まれる。図2は、隔壁材料層23、光熱変換層22及びベースフィルム21を含む熱転写フィルム20が基板10上に配置される前の整列された状態を示している。熱転写フィルム20の隔壁材料層23は、基板10と対向して基板10の表面に付着される。
【0026】
本発明の一実施例に係る熱転写フィルム20は、隔壁パターン形成部位にレーザーなどの光源を照射し、照射された光源は、光熱変換層22によって熱に変換され、隔壁材料層23を選択的に基板10上に転写する。本発明において、光熱変換層が吸収するエネルギー源としては、レーザー、キセノン(Xe)ランプ及びフラッシュランプなどを用いるが、このうち、レーザーは、最も優れた転写効果を得られるので好ましい。このとき、レーザーとしては、固体、ガス、半導体及び染料などの全ての汎用的なレーザーを用いる。
【0027】
ベースフィルム21の材料は特に制限されないが、透明性高分子が好ましい。また、このような高分子としては、ポリエチレン、ポリエステルテレフタレート、ポリアクリル、ポリエポキシ、ポリスチレンなどを用いるが、このうち、ポリエチレンテレフタレートフィルムを主に用いることが好ましい。
【0028】
ベースフィルムの厚さは、約10〜500μmであることが好ましく、このベースフィルムは、支持フィルムとしての役割を果たす。
【0029】
光熱変換層22は、光源を吸収する性質を有する光吸収性物質によって形成される。すなわち、光熱変換層22は、レーザー光吸収物質が含まれている有機膜、金属及びこれらの組み合わせから選択される。このような特性を有する膜としては、金属、その金属の酸化物及び硫黄化物、そして、カーボンブラック、黒鉛や赤外線染料が添加された高分子からなる有機膜を用いる。
【0030】
このとき、金属、その金属の酸化物及び硫黄化物は、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、クロム(Cr)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、金(Au)、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)及び鉛(Pb)などの金属、その酸化物及びこれらの混合物であるが、このうち、アルミニウム(Al)または銀(Ag)及びその酸化物であることが好ましい。
【0031】
そして、カーボンブラック、黒鉛や赤外線染料が添加された高分子からなる有機膜としては、高分子結合樹脂に顔料、染料などの着色剤、分散剤などが分散された有機物として、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーなどの(メタ)アクリレートオリゴマーを単独で用いてもよい。また、オリゴマーに(メタ)アクリレートモノマーを混合して用いたり、(メタ)アクリレートモノマーのみを単独で用いてもよい。そして、カーボンブラックまたは黒鉛は、粒径が0.5μm以下であるものを用いることが好ましく、このとき、光学濃度は、0.1〜4であることが好ましい。
【0032】
光熱変換層22には、隔壁材料層23を一層効果的に転写するために転写力を増加させる物質が含まれる。すなわち、光熱変換層22には、光に露出された領域の隔壁材料層23を転写するために必要な圧力を提供する物質がさらに含まれる。特に限定されないが、比較的低い分解温度(通常、約325℃未満、一般的には約280℃未満)を有する重合体を用いると良い。ただし、一つ以上の分解温度を有する重合体の場合、第1分解温度は350℃未満でなければならない。
【0033】
光熱変換層22は、単層または多層で形成される。
【0034】
透過層のための適切な重合体の例としては、(a)低い分解温度(Td)を有するポリカーボネート(例えば、ポリプロピレンカーボネート)、(b)低い分解温度を有する置換されたスチレン重合体(例えば、ポリ(アルファ−メチルスチレン)、(c)ポリアクリレート及びポリメタクリレートエステル(例えば、ポリメチルメタクリレート及びポリブチルメタクリレート)、(d)低い分解温度(Td)を有するセルロース物質(例えば、セルロースアセテートブチレート及びニトロセルロース)、及び(e)その他の重合体(例えば、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、ポリビニリデンクロライド、低いTdを有するポリウレタン、ポリエステル、ポリオルトエステル、アクリロニトリル及び置換されたアクリロニトリル重合体、マレイン酸樹脂、及びこれらの共重合体)を用いるが、重合体の混合物を用いてもよい。
【0035】
また、透過層には、光または熱を吸収すると、分解反応を起こして窒素ガスや水素ガスなどを放出する物質が含まれ、その例として、四硝酸ペンタエリトリット(PETN)、トリニトロトルエン(TNT)などが選択される。
【0036】
隔壁材料層23は、特に限定されないが、隔壁材料が含まれたペースト形態の材料であり、感光性ペースト、シート、またはスラリー形態で塗布される。そして、隔壁材料層23は、軟化点が300〜600℃の範囲内にあるガラス粉末を含み、ガラス粉末は、酸化鉛(PbO)、酸化ホウ素(B)及び酸化ケイ素(SiO)の混合物、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ホウ素(B)及び酸化ケイ素(SiO)の混合物、酸化鉛(PbO)、酸化ホウ素(B)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)の混合物、または酸化鉛(PbO)、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化ホウ素(B)及び酸化ケイ素(SiO)の混合物から選択された何れか一つを用いる。
【0037】
また、隔壁材料層23に結合剤が含まれるが、結合剤は、約250℃超過、特に約350℃超過の分解温度を有する重合体材料である。結合剤としては、フォトレジストを用いてもよい。結合剤は、溶液または分散液でコーティング可能なフィルムを形成することが好ましく、融点が約250℃未満である結合剤、または約70℃未満のガラス転移温度で可塑化される結合剤が一般的である。しかし、容易に液化または熱融解される結合剤、例えば、低溶融ワックスは、テクスチャー層の融点を低下させる共結合剤(cobinder)として有用であるが、このような結合剤が流動性または低い耐久性を有する場合、結合剤として単独で用いることを避けるべきである。
【0038】
結合剤を他のテクスチャー材料と一緒に転写する場合、結合剤の重合体は、レーザー露出時に到達する温度で自動酸化、分解または劣化されないことが一般的である。このような選択によって、テクスチャー材料及び結合剤を含むテクスチャー層の露出領域は、損傷されずに転写されるので、改善された耐久性を得られる。
【0039】
適切な結合剤の例としては、スチレン及び(メタ)クリレートエステルの共重合体(例えば、スチレン/メチル−メタクリレート)、スチレン及びオレフィン単量体の共重合体(例えば、スチレン/エチレン/ブチレン)、スチレン及びアクリロニトリルの共重合体、フルオロ重合体、(メタ)クリレートエステル、エチレン及び一酸化炭素の共重合体、適切な分解温度を有するポリカーボネート、(メタ)クリレート単独重合体及び共重合体、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエステルが挙げられる。重合体のための単量体は、置換体または非置換体である。置換体は、ハロゲン、酸素または置換体を含有する窒素を含むが、重合体の混合物を用いてもよい。
【0040】
光熱変換層22と隔壁材料層23との間には、透過層(図示せず)がさらに追加される。透過層には、隔壁材料層23を一層効果的に転写するために転写力を増加させる物質が含まれる。すなわち、光に露出された領域を放出するために必要な圧力を提供する物質がさらに含まれる。特に限定されないが、比較的低い分解温度(通常、約325℃未満、一般的には約280℃未満)を有する重合体を用いると良い。ただし、一つ以上の分解温度を有する重合体の場合、第1分解温度は約350℃未満でなければならない。透過層を通したレーザー照射の透過によって熱転写が起きる場合、透過層は、レーザー照射を透過しなければならず、このような照射によって損傷を受けてはならない。
【0041】
透過層のための適切な重合体の例としては、(a)低い分解温度(Td)を有するポリカーボネート(例えば、ポリプロピレンカーボネート)、(b)低い分解温度を有する置換されたスチレン重合体(例えば、ポリ(アルファ−メチルスチレン)、(c)ポリアクリレート及びポリメタクリレートエステル(例えば、ポリメチルメタクリレート及びポリブチルメタクリレート)、(d)低い分解温度(Td)を有するセルロース物質(例えば、セルロースアセテートブチレート及びニトロセルロース)、及び(e)その他の重合体(例えば、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、ポリビニリデンクロライド、低いTdを有するポリウレタン、ポリエステル、ポリオルトエステル、アクリロニトリル及び置換されたアクリロニトリル重合体、マレイン酸樹脂、及びこれらの共重合体)を用いるが、重合体の混合物を用いてもよい。
【0042】
また、光または熱を吸収すると分解反応を起こし、窒素ガスや水素ガスなどを放出する物質が含まれ、その例として、四硝酸ペンタエリトリット(PETN)、トリニトロトルエン(TNT)などが選択される。
【0043】
一方、本発明に係る熱転写フィルムを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法は、ベースフィルム、光熱変換層及び隔壁材料層を含む熱転写フィルム20を基板10上に形成する段階と、熱転写フィルム20に光を照射する段階と、熱転写フィルム20を基板10から分離した後、基板10上に隔壁11パターンを形成する段階とを含んで構成される。
【0044】
図3は、本発明の一実施例に係るプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法を示した概略ブロック図である。図3に示すように、下部基板上に誘電体層を形成した後(S510)、上述した熱転写フィルムを誘電体層上に塗布する(S520)。次に、熱転写フィルム上にレーザー光を照射して隔壁パターン通りにパターニングし(S530)、熱転写フィルムを分離した後、隔壁パターン通りに誘電体層上に隔壁を形成する(S540)。
【0045】
本発明に係る隔壁製造方法によると、フォトマスクを別途使用することなくレーザーを選択的に照射することができるので、既存の現像工程を実行する必要がない。ただし、本発明において、現像工程を追加してもよい。
【0046】
図4A〜図4Dは、本発明の他の実施例として、上述した熱転写フィルム20を用いて隔壁11を製造する方法を示した工程図である。
【0047】
まず、図4Aに示すように、基板10上に、上述した熱転写フィルム20を積層する。熱転写フィルムは、上述した通りであるので、ここでは説明を省略する。
【0048】
ここで、基板10は、ガラス基板またはプラスチック基板であるか、透明電極である。
【0049】
次に、図4Bに示すように、形成しようとする隔壁パターンに対応するように、熱転写フィルム20上に光を照射する。このとき、光は、熱転写フィルム方向または基板方向に照射する。
【0050】
本発明で用いるエネルギー源としては、レーザー、キセノン(Xe)ランプ及びフラッシュランプなどを用いるが、このうち、レーザーは、最も優れた転写効果を得られるので好ましい。このとき、レーザーとしては、固体、ガス、半導体、染料などの全ての汎用的なレーザーを用いてもよい。また、レーザービームとして、円形のビームまたはその他の可能な形態のビームを用いてもよい。
【0051】
光は、約300〜450nm波長帯のレーザーであることが好ましい。
【0052】
光は、転写装置を経て光熱変換層22を活性化し、熱分解反応によって熱を放出する。このように放出された熱によって、光熱変換層または透過層で分解反応が起きて膨脹することで、隔壁材料層23が熱転写フィルム20から分離し、隔壁が所望のパターンで転写される。
【0053】
次に、図4Cに示すように、熱転写フィルム20を基板10から分離する。光が照射されていない領域は、熱転写フィルム20に付着しているので、熱転写フィルム20の分離時に自動的に除去されることで、隔壁11は、選択的に光が照射されて転写された領域のみに存在するようになる。
【0054】
その後、図4Dに示すように、転写された隔壁を焼成して隔壁11を完成する。
【0055】
一方、上述した隔壁製造方法は、パターン化された隔壁であれば、隔壁の使用分野に制限されずに用いることができる。特に、プラズマディスプレイパネルの電極製造方法に応用される。
【0056】
図5は、本発明の他の実施例に係るプラズマディスプレイパネルの製造方法で製造されたプラズマディスプレイパネルを示した断面図である。図5に示すように、プラズマディスプレイパネルは、前面基板30下部の一部領域に所定のパターンで離隔形成された維持電極対31、維持電極対31を覆う前面誘電体層33、及び前面誘電体層33の下部に形成された保護膜層34を備えた前面板と、後面基板40の上部に維持電極対31と垂直に形成されたアドレス電極41を備えた後面板と、放電空間を区画するために後面板の上部に形成された隔壁50とを含んで構成される。図示されたバス電極対32は、省略可能である。隔壁と後面板の上部には、蛍光体51が塗布される。また、後面誘電体層42がさらに含まれる。本発明は、図面に示した形状に制限されるものでなく、本技術分野で周知の変形、付加及び省略も本発明に含まれる。
【0057】
プラズマディスプレイパネルの隔壁50のみならず、維持電極対31、バス電極対32またはアドレス電極41は、上述した熱転写フィルム20を用いて製造することができ、電極製造工程も画期的に改善される。
【0058】
まず、前面誘電体層33の上部に保護膜層34を形成してプラズマディスプレイパネルの前面板を完成する。保護膜層は、スパッタリングによる前面誘電体層の損傷を防止してPDPの寿命を増加させるとともに、2次電子の放出効率を高める。保護膜層の材料としては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化セシウム(CeO)、酸化トリウム(ThO)または酸化ランタニウム(La)などを用いるが、このうち、2次電子放出係数及び耐プラズマ侵食特性に優れた酸化マグネシウム(MgO)が最も好ましい。通常、酸化マグネシウム(MgO)は、電子ビーム蒸着法などの真空蒸着法を用いて形成される。
【0059】
上述した前面板とは別途に、後面板を製造する。
【0060】
まず、後面基板40の上面に、維持電極対31と垂直に形成されたアドレス電極41を形成する。
【0061】
次に、前記アドレス電極41をカバーする後面誘電体層42を形成する(省略可能である)。
【0062】
次に、後面誘電体層42の上部に隔壁50を形成する。隔壁50は、本発明の技術分野で周知の隔壁材料及び構造を特に限定せずに用いてもよく、その一例として、ストライプ型隔壁、閉鎖型隔壁またはデルタ型隔壁があり、本発明の一実施例に係る熱転写フィルム20を用いて形成することが好ましい。
【0063】
その後、後面誘電体層及び隔壁50に蛍光体51を塗布して前面板と合着する工程を経て、プラズマディスプレイパネルを完成する。
【0064】
ここで、隔壁50は、熱転写フィルムを用いたレーザーパターニングによる転写工程で、フォトマスクを使用することなく高精細に形成される。これにより、工程の短縮、材料費の低減及び工程費用の低減を実現することができる。
【0065】
また、上述した方法の転写工程で、横隔壁と縦隔壁の高さが互いに異なる段差隔壁は、フォトマスクを使用せずに、熱転写フィルムに対して横方向に照射する光波長と、縦方向に照射する光波長とが異なるように照射されるレーザー波長の長さを制御することによって形成することができる。例えば、光波長は、約360〜370nmまたは約400〜410nm波長範囲から選択される波長であり、約365nmまたは約405nm波長のレーザーを用いることが最も好ましい。これにより縦方向の隔壁の高さが横方向の隔壁の高さより高くすることができる。
【0066】
上述したように、本発明の技術的構成は、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せずに、他の具体的な形態で実施されることを理解できるだろう。
【0067】
したがって、以上説明した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないことを理解すべきである。本発明の範囲は、詳細な説明よりも特許請求の範囲によって示されており、特許請求の範囲の意味及び範囲、その等価概念から導出される全ての変更または変形形態は、本発明の範囲に含まれるものとして解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】一般的なプラズマディスプレイパネルの一例を示した斜視図である。
【図2】本発明の一実施例による熱転写フィルムを示した構造図である。
【図3】本発明の一実施例による隔壁製造方法を示した概略ブロック図である。
【図4A】本発明の一実施例による隔壁製造方法を示した工程図である。
【図4B】本発明の一実施例による隔壁製造方法を示した工程図である。
【図4C】本発明の一実施例による隔壁製造方法を示した工程図である。
【図4D】本発明の一実施例による隔壁製造方法を示した工程図である。
【図5】本発明の一実施例によるプラズマディスプレイパネルの製造方法で製造されたプラズマディスプレイパネルを示した断面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 基板
11 隔壁
20 熱転写フィルム
21 ベースフィルム
22 光熱変換層
23 隔壁材料層
30 前面基板
31 維持電極対
32 バス電極対
33 前面誘電体層
34 保護膜層
40 後面基板
41 アドレス電極
42 後面誘電体層
50 隔壁
51 蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、
前記ベースフィルム上に形成された光熱変換層と、
前記光熱変換層上に形成された隔壁材料層と、を含むことを特徴とする熱転写フィルム。
【請求項2】
前記光熱変換層は、
レーザー光吸収物質が含まれている有機膜、金属、金属の酸化物、金属の硫黄化物、またはこれらの組み合わせからなる物質のうち、少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の熱転写フィルム。
【請求項3】
前記光熱変換層は、
低い分解温度を有するポリカーボネート、スチレン重合体、ポリアクリレート、ポリメタクリレートエステル、セルロース物質、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、ポリビニリデンクロライド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオルトエステル、アクリロニトリル、置換されたアクリロニトリル重合体、マレイン酸樹脂、及びこれらの共重合体のうち、少なくとも何れか一つを含むこと特徴とする請求項1に記載の熱転写フィルム。
【請求項4】
前記光熱変換層は、
単層または多層であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写フィルム。
【請求項5】
前記隔壁材料層は、
軟化点が300〜600℃の範囲内にあるガラス粉末を含むこと特徴とする請求項1に記載の熱転写フィルム。
【請求項6】
前記ガラス粉末は、
酸化鉛(PbO)、酸化ホウ素(B)及び酸化ケイ素(SiO)の混合物、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ホウ素(B)及び酸化ケイ素(SiO)の混合物、酸化鉛(PbO)、酸化ホウ素(B)、酸化ケイ素(SiO)及び酸化アルミニウム(Al)の混合物、または酸化鉛(PbO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ホウ素(B)及び酸化ケイ素(SiO)の混合物の何れか一つであることを特徴とする請求項5に記載の熱転写フィルム。
【請求項7】
前記隔壁材料層は、
感光性ペースト、シート、またはスラリー形態で塗布されること特徴とする請求項1に記載の熱転写フィルム。
【請求項8】
前記光熱変換層と前記隔壁材料層との間には、透過層がさらに含まれることを特徴とする請求項1に記載の熱転写フィルム。
【請求項9】
前記透過層は、
低い分解温度を有するポリカーボネート、スチレン重合体、ポリアクリレート、ポリメタクリレートエステル、セルロース物質、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、ポリビニリデンクロライド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオルトエステル、アクリロニトリル、置換されたアクリロニトリル重合体、マレイン酸樹脂、及びこれらの共重合体のうち、少なくとも一つを含むこと特徴とする請求項8に記載の熱転写フィルム。
【請求項10】
ベースフィルム、光熱変換層及び隔壁材料層を含む熱転写フィルムを基板上に形成する段階と、
前記熱転写フィルムに光を照射する段階と、
前記熱転写フィルムを前記基板から分離した後、前記基板上に隔壁パターンを形成する段階と、を含んで構成されることを特徴とする熱転写フィルムを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法。
【請求項11】
前記光は、300〜450nmの波長帯のレーザーであることを特徴とする請求項10に記載の熱転写フィルムを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法。
【請求項12】
前記熱転写フィルムを基板上に形成する段階以前に、
前記基板上に誘電体層を形成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の熱転写フィルムを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法。
【請求項13】
前記熱転写フィルムの隔壁材料層は、感光性ペーストを含むことを特徴とする請求項10に記載の熱転写フィルムを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法。
【請求項14】
前記熱転写フィルムの隔壁材料層は、ガラス粉末を含むことを特徴とする請求項10に記載の熱転写フィルムを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法。
【請求項15】
前記熱転写フィルムに光を照射する段階では、
前記熱転写フィルムに対して横方向に照射する光波長と、縦方向に照射する光波長と、が異なるように調節され、横方向と縦方向の高さが異なる段差隔壁を形成することを特徴とする請求項10に記載の熱転写フィルムを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法。
【請求項16】
前記光波長は、360〜370nmまたは400〜410nmの波長範囲から選択される波長であることを特徴とする請求項15に記載の熱転写フィルムを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法。
【請求項17】
前記段差隔壁は、
縦方向の隔壁の高さが横方向の隔壁の高さより高いことを特徴とする請求項15に記載の熱転写フィルムを用いたプラズマディスプレイパネルの隔壁製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−16448(P2008−16448A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171775(P2007−171775)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(502032105)エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド (2,269)
【Fターム(参考)】