説明

熱電変換素子及びその製造方法

【課題】優れた性能指数を有する熱電変換素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属もしくは合金からなる熱電変換材料と、該熱電変換材料中に分散し、前記金属もしくは合金に対して状態図の共役線で結ばれた安定相である金属もしくは合金からなる分散材料と、を含むことを特徴とする熱電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属もしくは合金粒子を含有する熱電変換素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換材料は、熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換することができる材料であり、熱電冷却素子や熱電発電素子として利用される熱電変換素子を構成する材料である。この熱電変換材料はゼーベック効果を利用して熱電変換を行うものであるが、その熱電変換性能は、性能指数ZTと呼ばれる下式(1)で表される。
ZT=α2σT/κ (1)
(上式中、αはゼーベック係数を、σは電気伝導率を、κは熱伝導率を、そしてTは測定温度を示す)
【0003】
上記式(1)から明らかなように、熱電変換材料の熱電変換性能を高めるためには、用いる材料のゼーベック係数α及び電気伝導率σを大きくし、熱伝導率κを小さくすればよいことがわかる。ここで材料の熱伝導率κを小さくするために、熱電変換材料の出発原料の粒子に熱電変換材料の母材と反応しない微粒子(不活性微粒子)を添加することがある(例えば、特許文献1参照)。これにより、不活性微粒子が熱電変換材料における熱伝導の主要因であるフォノンを散乱させて、熱伝導率κを低減することができる。
【0004】
しかしながら、従来の熱電変換材料では、不活性微粒子が偏在することによって、不活性微粒子によるフォノンの散乱効果よりも不活性微粒子の偏在による電気抵抗率等の他の物性値の悪化の影響が大きく、熱電変換材料の性能向上が妨げられている。この問題を解消するため、例えば、熱電変換材料粉末にサブミクロン〜数百ミクロンの粒径を有する金属又は合金粉末を分散させてなる熱電変換材料が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−242535号公報
【特許文献2】特開2000−261047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に開示の技術では、金属を分散材として複合化することにより電気伝導率が改善されており、また金属粉末と熱電変換材料のマトリックスとの境界に熱的な障壁が形成されるため、熱伝導率も低下させることができるとされている。
【0007】
しかしながら、分散材としての金属又は合金の大きさは粒径がサブミクロン〜数百ミクロンのオーダーであるため、熱電変換材料中に金属又は合金をナノオーダーで分散させることができない。さらに、焼結時において分散材としての金属又は合金は粒成長するおそれがあり、その結果、金属同士の間隔が熱電変換材料のフォノンの平均自由行程より大きくなってしまい、熱伝導率を十分に低減することができない。
【0008】
なお、熱電変換材料中に含まれるキャリア(電子または正孔(ホール))は熱及び電気を共に伝えることができるため、電気伝導率σと熱伝導率κとは比例関係にある。さらに、電気伝導率σとゼーベック係数αとは反比例関係にあることが知られている。そのため、一般的に、電気伝導率σを向上させたとしても、それに伴い熱伝導率κの上昇及びゼーベック係数αの低下が起きてしまう。また、有効質量と移動度とは反比例関係にあるため、移動度を向上させようとすると有効質量が減少してしまう。
【0009】
本願発明者は既に、上記従来の問題を解決し、優れた性能指数を有する熱電変換素子およびその製造方法を発明している(特願2007-150729号)。例えば、この発明の一つは、『熱電変換材料を構成する元素の塩とこの熱電変換材料に固溶して合金を形成する量よりも多くの量の金属もしくは合金の塩を含む溶液を、pH調整材と還元剤とを含む溶液に滴下し、熱電変換材料を構成する元素及び金属もしくは合金の粒子を析出させ、加熱処理することにより熱電変換材料の連続相中に金属もしくは合金の分散相を析出させ、次いで焼結する工程を含む』熱電変換素子の製造方法である。
【0010】
この発明によると、ナノオーダーの粒径を有する熱電変換材料を構成する元素の粒子と金属もしくは合金(分散材料)粒子を形成し、これらから複合粒子を調製し、加熱処理を施すことにより、熱電変換材料の相と金属もしくは合金(分散材料)の相が相分離を起こし、母相と分離相に分かれる。この母相と分離相は熱を加えた状態で分離してきたものであるため熱的に非常に安定である。従って、焼結によって金属もしくは合金の粒成長を起こすことなく安定な熱電変換素子を得ることができる。
【0011】
しかしながら本願発明者は、従来技術および本願発明者の先行発明では、作製(焼結)時に熱電変換材料の相と金属もしくは合金(分散材料)の相との間の拡散によって熱電変換材料の組成が崩壊し、本来得られるはずの熱電変換材料の性能指数を十分に発揮することができないことを発見した。
【0012】
そこで本発明では、上記の問題を解決し、優れた性能指数を有する熱電変換素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために1番目の発明によれば、金属もしくは合金からなる熱電変換材料と、該熱電変換材料中に分散し、前記金属もしくは合金に対して状態図の共役線で結ばれた安定相である金属もしくは合金からなる分散材料と、を含むことを特徴とする熱電変換材料が提供される。
【0014】
上記課題を解決するために2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記分散材料の少なくとも一部が、前記熱電変換材料のフォノンの平均自由行程以下の間隔で分散されてなる熱電変換素子が提供される。
【0015】
上記課題を解決するために3番目の発明によれば、1または2番目の発明において、前記分散材料の少なくとも一部が、前記熱電変換材料のキャリアの平均自由行程以上の間隔で分散されてなる熱電変換素子が提供される。
【0016】
上記課題を解決するために4番目の発明によれば、1〜3番目の発明のいずれかにおいて、前記熱電変換材料中で、前記分散材料が1〜100nmの平均粒子径で分散されてなることを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するために5番目の発明によれば、前記熱電変換材料を構成する元素の塩とこの熱電変換材料に固溶して合金を形成する量よりも多くの量の前記分散材料を構成する元素の塩を含む溶液を、pH調整材と還元剤とを含む溶液に滴下し、該熱電変換材料を構成する元素及び分散材料を構成する元素の粒子を析出させ、加熱処理することにより熱電変換材料の連続相中に該分散材料の分散相を析出させ、次いで焼結する工程を含む、熱電変換素子の製造方法が提供される。
【0018】
上記課題を解決するために6番目の発明によれば、前記熱電変換材料を構成する元素の塩を含むアルコール溶液を、該熱電変換材料よりも融点の高い平均粒子径が1〜100nmである前記分散材料の粒子と、pH調整材と還元剤とを含む溶液に滴下し、該分散材料の粒子上において該熱電変換材料を構成する元素の粒子を還元析出させ、加熱処理して、該分散材料の粒子に前記熱電変換材料を被覆してなる複合粒子を形成し、次いで該複合粒子を充填して焼成する行程を含む、熱電変換素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
1番目の発明によれば、分散材料が熱電変換材料を構成する金属もしくは合金に対して状態図の共役線(タイライン)で結ばれた安定相である金属もしくは合金から構成されており、焼結時に分散材料と熱電変換材料との間の拡散がないため、熱電変換材料の組成が安定し、性能指数の劣化が生じない。また、組織制御の面でもそのために特別な制約がないので、有利に作製可能である。さらに、状態図上で熱電変換材料と同じ共役線(タイライン)で結ばれた安定相である組成の合金を複合化しているため、結果として得られる熱電変換素子が高温環境で長時間使用されても、完全に拡散反応を抑制することができ、安定に存在する。
【0020】
2番目の発明によれば、少なくとも一部の分散材料同士の分散間隔を熱電変換材料のフォノンの平均自由行程以下にすることにより、分散材料の界面においてフォノン散乱が活発になるため、格子熱伝導率が大幅に低減し、熱電変換素子の性能が向上する。
【0021】
3番目の発明に関して、熱電変換材料中に含まれるキャリア(電子または正孔(ホール))は、熱及び電気を共に伝えるので、電気伝導率σと熱伝導率κとは比例関係にある。しかし、熱電変換材料に分散する分散材料同士の分散間隔が、熱電変換材料のキャリアの平均自由行程以上である場合、電気伝導性の減少率よりも、熱伝導率κの減少率が大きいため、結果として、性能指数ZTが向上する。また、一般に電気伝導率σとゼーベック係数αとは反比例関係にあるため、電気伝導性が減少すると、ゼーベック係数αは増加する。つまり、2番目の発明によれば、式(1)の右辺において、分母にある電気伝導率σの減少割合よりも分子の熱伝導率κの減少割合が大きくなり、且つ分子であるαを増加させるため、式(1)で表される性能指数ZTが高くなる。
【0022】
4番目の発明によれば、本発明の熱電変換素子は、熱電変換材料中に平均粒子径が1〜100nmである分散材料が分散されてなる熱電変換素子であることを特徴とする。この平均粒子径の範囲が、熱電変換材料のキャリアの平均自由行程以上熱電変換材料のフォノンの平均自由行程以下である好ましい範囲であって、上記1〜3番の発明の効果を好ましく発揮する。
【0023】
5番目の発明によれば、ナノオーダーの粒径を有する熱電変換材料を構成する元素の粒子と分散材料を構成する元素の粒子を形成し、これらから複合粒子を調製し、加熱処理を施すことにより、熱電変換材料の相と分散材料の相が相分離を起こし、母相と分離相に分かれる。この母相と分離相は熱を加えた状態で分離してきたものであるため熱的に非常に安定である。従って、焼結によって分散材料の粒成長を起こすことなく安定な上記1〜4番の発明の熱電変換素子を得ることができる。
【0024】
6番目の発明によれば、熱電変換材料中に金属粒子を分散させるのではなく、ナノオーダーの粒径を有する分散材料の粒子上で熱電変換材料を析出させて被覆し、コア部が分散材料の粒子でシェル部が熱電変換材料である複合粒子を形成する。この複合粒子を充填して焼結すると、隣接する複合粒子のシェル部(熱電変換材料で形成された被覆層)同士が結合する。したがってシェル部の厚さによって分散材料粒子同士の分散間隔を制御できるため、分散材料粒子同士が結合し難くなり、かつ分散材料粒子の偏在を確実に抑制することができる。このような組織のよく制御された、上記1〜4番の発明の熱電変換素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の熱電変換素子は、図1に示すように、熱電変換材料1中に分散材料2が分散されてなる熱電変換素子であって、分散材料2が熱電変換材料1を構成する金属もしくは合金に対して状態図の共役線で結ばれた安定相である金属もしくは合金から構成されていることを特徴とする。
【0026】
本発明において、熱電変換材料はP型であってもN型であってもよい。P型熱電変換材料の材質としては特に制限なく、例えば、Bi2Te3系、PbTe系、Zn4Sb3系、CoSb3系、ハーフホイスラー系、フルホイスラー系、SiGe系などを用いることができる。N型熱電変換材料の材質としても特に制限なく公知の材料を適用することができ、例えば、Bi2Te3系、PbTe系、Zn4Sb3系、CoSb3系、ハーフホイスラー系、フルホイスラー系、SiGe系、Mg2Si系、Mg2Sn系、CoSi系などを用いることができる。
【0027】
『熱電変換材料1を構成する金属もしくは合金に対して状態図の共役線で結ばれた安定相である金属もしくは合金からなる分散材料2』について説明する。状態図とは一つの系について、任意の温度、任意の濃度において平衡状態にある各相の種類等を図示したものである。熱電変換材料1を構成する金属もしくは合金についての状態図において、熱電変換材料として機能する母相の組成を特定できる。状態図には共役線が示されており、共役線とは状態図において平衡状態で共存する2相の組成を結ぶ線のことである。熱電変換材料として機能する母相の組成からも共役線が延びており、その共役線で結ばれた安定相である金属もしくは合金を分散材料として選択する。ここで安定とは、その組成が変化することなく存在することを意味し、安定でないとはその組成が変化を伴うことがあることを意味する。
【0028】
具体的に状態図を使って説明すると、まず図2a(Co−Ni−Sb三元系)において、熱電相はCoSb相(NiをドープしたCoNiSbも含む)であり、これに対して共役線で結ばれた安定相であるCoSb相およびSb相等が本発明の分散材となる。このとき、熱電相と分散相は共役線で結ばれているため平衡状態が保たれる。しかしこのCoSb熱電相に対して共役線で結ばれていない組成物を分散材として使用するとき、分散相の組成変化に応じて熱電相CoSbの組成が変化する可能性がある。したがってCoSb熱電相と共役線で結ばれていない組成は、分散材として適当ではない。
また図2b(Co−Sb−Te三元系)において、熱電相はCoSb相であり、これに対して共役線で結ばれた安定相であるSb相およびCoSb相等が本発明の分散材となる。このとき、熱電相と分散相は共役線で結ばれているため平衡状態が保たれる。しかしこのCoSb熱電相に対して共役線で結ばれていない組成物を分散材として使用するとき、分散相の組成変化に応じて熱電相CoSbの組成が変化する可能性がある。したがってCoSb熱電相と共役線で結ばれていない組成は、分散材として適当ではない。
図2c(Bi−Sn−Te三元系)において、熱電相はBiTe相であり、これに対して共役線で結ばれた安定相であるBiSnTeおよびBiSnTe相が本発明の分散材となる。
【0029】
熱電変換材料として機能する母相にこのように選択された分散材料を分散させた場合、熱処理(例えば熱電変化素子作製の際に受ける焼結や、その得られた熱電変換素子を高温環境での使用)を受けても、熱電変換材料と共役線で結ばれた安定相の関係にあるので、熱電変換材料と平衡を保ち拡散を生じない。したがって熱電変換素子の組成が安定に保たれ、性能指数の劣化が生じない。
【0030】
概して以下では、本発明の構成要素を、熱電変換材料としてCo1-xNiSbおよび分散材料としてCoSbの例を使用して説明するが、これらに限定されるものではない。
【0031】
ここで、性能指数ZTと熱電変換材料の組織構成との関係について、図3を参照しながら詳細に説明する。図3に示すように、熱電変換材料の組織寸法が、フォノンの平均自由行程の長さを起点にこれよりも小さくなるにつれて、熱電変換材料の熱伝導率κは徐々に減少する。したがって、組織寸法がフォノンの平均自由行程よりも小さくなるように設計すると、性能指数ZTが向上する。
【0032】
一方、熱電変換材料の組織寸法がフォノンの平均自由行程を起点にこれより小さくなっても、熱電変換材料の電気伝導率σは減少せず、概ねキャリアの平均自由行程以下の粒径となった場合に減少する。このように、熱伝導率κが減少し始める熱電変換材料の組織寸法と、電気伝導率σが減少し始める熱電変換材料の組織寸法とが異なることを利用し、電気伝導性の減少率よりも熱伝導率κの減少率が大きい熱電変換材料の組織寸法となるように、熱電変換材料の組織寸法をキャリアの平均自由行程以上フォノンの平均自由行程以下とすることで、上記式(1)で表される性能指数ZTをよりいっそう高めることができる。
【0033】
ここで、熱電変換材料の組織寸法を規定するのは、熱電変換材料中に分散される分散材料粒子の粒径、又分散材料粒子同士の分散間隔である。そこで、本発明では、分散材料粒子同士の分散間隔を、上記効果が得られるように制御している。
【0034】
すなわち、本発明において、熱電変換材料中に分散される少なくとも一部の分散材料粒子同士の間隔は、熱電変換材料のフォノンの平均自由行程以下であり、好ましくは熱電変換材料のキャリアの平均自由行程以上熱電変換材料のフォノンの平均自由行程以下である。具体的には、この間隔は、1nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。
【0035】
ここで、平均自由行程(MFP)は、以下の式を用いて計算される。
キャリアMFP=(移動度×有効質量×キャリア速度)/電荷素量
フォノンMFP=3×格子熱伝導率/比熱/音速
上式において、各々の値は文献値と温度特性の近似式から換算し、比熱のみ実測値を用いる。
【0036】
ここで、Co0.94Ni0.06Sb3、CoSb3及びCo0.9Ni0.1Sb3について計算したキャリアMFPとフォノンMFPの結果を以下に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
このように、キャリアMFP及びフォノンMFPは材料及び温度によってきまる。本発明において、少なくとも一部の分散材料粒子の分散の間隔は、母相の熱電変換材料のパワーファクター(α2σ)が最高出力時のフォノンの平均自由行程以下であればよい。CoSb3系は400℃(673K)においてパワーファクター(α2σ)が最大出力を示すため、400℃時の平均自由行程以下であればよい。
【0039】
分散の間隔が熱電変換材料のフォノンの平均自由行程以下、好ましくは100nm以下であると、フォノンが十分に散乱されて熱電変換材料の熱伝導率κが減少する。また、キャリアの散乱頻度低減の観点から、この間隔は1nm以上とすることが好ましい。さらに、熱電変換材料のキャリアの自由平均行程以上の間隔で分散し、電気伝導率σの減少率よりも熱伝導率κの減少率を大きくさせて、結果として性能指数ZTを高めるためには、この間隔は10nm以上であることがより好ましい。
【0040】
また、上述のように、熱電変換材料中に分散される分散材料粒子の粒径は、この分散材料のフォノンの平均自由行程以下であり、具体的には1〜100nmである。分散材料粒子の粒径がフォノンの平均自由行程以下の場合に、この分散材料粒子の存在によってフォノンの散乱が十分に起こり、熱伝導率κが減少し、結果として性能指数ZTが向上する。
【0041】
本発明において、上記粒径を有する分散材料粒子は、熱電変換素子中の全金属もしくは合金粒子に対して、体積換算で50%以上であり、好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。50%未満の場合には、フォノンが十分に散乱されず熱伝導率κが低下しない場合がある。
【0042】
分散材料を構成する金属もしくは合金材料としては、前述のような熱電変換材料を構成する金属もしくは合金に対して状態図の共役線(タイライン)で結ばれた安定相である金属もしくは合金から構成されている材料であればいずれの材料も用いることができる。本発明において、分散材料粒子を熱電変換材料中に分散させることにより電気伝導率を高くすることができ、さらに金属粒子と熱電変換材料との界面に熱的な障壁が形成されるため、熱伝導率を低下させることもできる。
【0043】
本発明において用いる熱電変換材料は、出力因子が1mW/K2よりも大きいことが好ましく、2mW/K2以上であることがより好ましく、3mW/K2以上であることがさらに好ましい。出力因子が1mW/K2以下の場合には、あまり大きな性能向上が期待できない。また、熱電変換材料の熱伝導率κは、5W/mKよりも大きいことが好ましく、7W/mK以上であることがより好ましく、10W/mK以上であることがさらに好ましい。熱伝導率κが5W/mKよりも大きい場合に、特に本発明の効果が著しく呈される。つまり、熱電変換材料の組織寸法について本発明に規定するナノオーダーで制御を行った場合の効果は、熱伝導率κが大きい熱電変換材料を用いるほど熱伝導率κの低下が著しくなる傾向にあり、特に熱伝導率κが5W/mKよりも大きい熱電変換材料を用いた場合に、熱伝導率κの減少効果が大きく現れる。
【0044】
次に、本発明の熱電変換素子の製造方法について、詳細に説明する。本発明の熱電変換素子の製造方法は、熱電変換材料を構成する元素の塩とこの熱電変換材料に固溶して合金を形成する量よりも多くの量の分散材料を構成する元素の塩を含む溶液を、pH調整材と還元剤とを含む溶液に滴下し、熱電変換材料を構成する元素及び分散材料を構成する元素の粒子を析出させ、熱処理することにより熱電変換材料の連続相中に分散材料の分散相を析出させ、次いで焼結する工程を含む。
【0045】
まず、熱電変換材料を構成する元素の塩と分散材料を構成する元素の塩を含む溶液を調製する。熱電変換材料を構成する元素の塩は例えば、熱電変換材料がCoSb3の場合には、塩化コバルトの水和物及び塩化アンチモンを、Co0.94Ni0.06Sb3の場合には、塩化コバルトの水和物、塩化ニッケル及び塩化アンチモンを意味する。この熱電変換材料を構成する元素の塩は、溶液中の含有量は特に制限されず、用いる溶媒や原料の種類に応じて、適宜調整することが好ましい。この溶媒としては、熱電変換材料を構成する元素の塩を溶解できるものであれば特に制限されないが、アルコール、水などを挙げることができ、エタノールを用いることが好適である。
【0046】
また、分散材料を構成する元素の塩は例えば、析出させようとする分散材料がNiの場合には塩化ニッケルを、アンチモンの場合には塩化アンチモンを意味する。この分散材料を構成する元素の量は、熱電変換材料に固溶して合金を形成する量よりも多くの量である。例えば、熱電変換材料としてCo0.9Ni0.1Sb3を用いる場合、Coに対するNiの固溶量の限界は約10%であり、従ってCoに対して10%より多くのNiを用いることにより、熱電変換材料のCo0.9Ni0.1Sb3中にNiが析出することになる。
【0047】
この熱電変換材料を構成する元素の塩等の溶液とは別に、pH調整材と還元剤を含む溶液を調製する。この溶媒としては、pH調整材と還元剤を溶解できるものであれば特に制限されないが、アルコール、水などを挙げることができ、エタノールを用いることが好適である。pH調整材は、溶液中で後に生成する金属粒子等が凝集するのを抑制するために用いられ、公知のものを適宜適用することができ、例えば、硝酸、アンモニア水、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)などを用いることができる。また還元剤としては、熱電変換材料を構成する元素のイオンを還元できるものであればよく、例えばNaBH4、ヒドラジン等を用いることができる。この溶液のpHとしては、3〜6又は8〜11に調製することが好ましく、4〜6又は8〜10であることがより好ましい。
【0048】
次に、上記pH調整材と還元剤を含む溶液に熱電変換材料を構成する元素の塩及び分散材料を構成する元素の塩の溶液を滴下する。熱電変換材料を構成する元素の塩を含む溶液中には熱電変換材料の原料イオン及び金属イオン、例えばCoイオンやSbイオンが存在する。従って、還元剤を含む溶液と混合されると、図4aに示すように、これらのイオンは還元され、熱電変換材料を構成する元素の粒子4及び4’、例えばCo粒子やSb粒子、並びに分散材料を構成する元素の粒子2が析出することになる。この還元において、Co粒子やSb粒子の他に、副生物、例えばNaClとNaBO3が生成する。この副生物を除去するために、濾過を行うことが好ましい。さらに、濾過後、アルコールや水を加えて、副生物を洗い流すことが好適である。
【0049】
こうして得られた熱電変換材料を構成する元素の粒子及び分散材料を構成する元素の粒子を、例えばオートクレーブ等で加熱処理する。この加熱処理により熱電変換材料を構成する元素の粒子から熱電変換材料が水熱合成され、またこの熱電変換材料に固溶して合金を形成する量よりも多くの量の分散材料を構成する元素が存在するため、この分散材料2は熱電変換材料1の連続相中に分散相として析出する(図4b)。この加熱処理の時間や温度は、用いる溶媒や熱電変換材料の種類及び含有率によって異なるため、適宜調整することが好ましい。
【0050】
次の焼結工程において上記連続相と分散相からなる複合体を充填して焼結する(図4c)。焼結工程に加えて、加圧して熱電変換材料を成形する成形工程を有していてもよい。本発明では、焼結工程と成形工程とを別個に設けて、加圧成形と焼結とを別々に行ってもよいが、加圧成形しながら焼結することが好ましい。加圧成形しながら焼結する方法としては、ホットプレス焼結法、熱間等方圧加圧焼結法、放電プラズマ焼結法等の何れの方法を用いることもできる。これらの中でも、短時間での昇温、焼結が可能で、粒成長を制御しやすい観点から放電プラズマ焼結法が好ましい。放電プラズマ焼結法における焼結温度は、CoSb3系の場合、400〜800℃が好ましく、450〜650℃がより好ましい。焼結時間は、90分以下が好ましく、60分以下がより好ましい。加圧時の圧力は20MPa以上が好ましく、40MPa以上がより好ましい。
【0051】
本発明の熱電変換素子の他の製造方法は、熱電変換材料を構成する元素の塩を含む溶液を、熱電変換材料よりも融点の高い平均粒子径が1〜100nmである分散材料粒子とpH調整材と還元剤とを含む溶液に滴下し、分散材料粒子上において熱電変換材料を構成する元素の粒子を還元析出させ、加熱処理して、前記分散材料粒子に前記熱電変換材料を被覆してなる複合粒子を形成し、次いでこの複合粒子を充填して焼成する工程を含む。
【0052】
ここで、熱電変換材料を構成する元素の塩、この溶液を構成する溶媒、pH調整材、及び還元剤は上記と同一のものを用いることができる。平均粒子径が1〜100nmである分散材料粒子(図5a)は、各種方法によって調製することができるが、分散材料を構成する元素の塩を還元することによって調製することが好ましい。
【0053】
熱電変換材料を構成する元素の塩を含む溶液を平均粒子径が1〜100nmである分散材料粒子とpH調整材と還元剤とを含む溶液に滴下すると、熱電変換材料を構成する元素の塩を含む溶液中には熱電変換材料を構成する元素のイオン、例えばCoイオンやSbイオンが存在する。従って、還元剤を含む溶液と混合されると、これらのイオンは還元され、図5bに示すように、分散材料粒子2の表面上で熱電変換材料を構成する元素の粒子4、例えばCo粒子やSb粒子が析出することになる。
【0054】
次いで加熱処理することにより熱電変換材料を構成する元素の粒子から熱電変換材料が水熱合成される。この加熱処理の時間や温度は、用いる溶媒や熱電変換材料の種類及び含有率によって異なるため、適宜調整することが好ましい。加熱処理によって水熱合成され、コア部が分散材料で、シェル部が熱電変換材料で構成される複合粒子が得られる

【0055】
得られた複合粒子における熱電変換材料による被覆層の厚さの平均は、熱電変換材料のフォノンの平均自由行程以下であることが好ましく、より好ましくは熱電変換材料のフォノンの平均自由行程の半分以下であり、さらに好ましくは熱電変換材料のキャリアの平均自由行程の半分以上熱電変換材料のフォノンの平均自由行程の半分以下であり、具体的には、0.5nm以上50nm以下であることが好ましく、特に好ましくは5nm以上50nm以下である。
【0056】
次の焼結工程においてこの複合粒子を充填して焼結する(図5c)が、充填した際に隣接する複合粒子の被覆層の厚さを足し合わせたものが、分散材料粒子同士の分散間隔と略同一となる。したがって、複合粒子の被覆層の厚さの平均を熱電変換材料のフォノンの平均自由行程の半分になるようにすると、熱電変換材料1中の分散材料粒子2同士の分散間隔は、略フォノンの平均自由行程となる。
【0057】
被覆層の厚さを制御するには、溶液に加える分散材料の粒子の個数と、溶液中の熱電変換材料の量との比率を調整すればよい。このように、本発明では、複合粒子における熱電変換材料で構成される被覆層の厚さを制御できるため、最終的に得られる熱電変換材料中の分散材料粒子同士の分散間隔を制御できる。
【0058】
その後の焼結工程では、得られた複合粒子を充填して焼結する。すると、隣接する複合ナノ粒子のシェル部(熱電変換材料で形成された被覆層)同士が結合しネットワークを形成する。ここで、充填時における複合粒子のコア部(分散材料粒子)の粒径は、焼結後の分散材料の粒径と略同じとなる。また、複合粒子の充填密度等により変動するが、充填時における隣接する複合粒子のシェル部の厚みを足し合わせた距離は、焼結後の分散材料粒子同士の分散距離に帰結する。
【0059】
本発明の製造方法では、分散材料粒子同士の間にシェル部としての熱電変換材料が存在するため、分散材料粒子同士が結合し難くなり、分散材料粒子の偏在を従来の方法よりも確実に抑制することができる。また、シェル部の厚さによって分散材料粒子同士の分散間隔を制御することができるため、フォノンの散乱を十分に起こすような熱電変換材料を設計でき、性能指数ZTを高めることができる。
【0060】
このように、本発明の熱電変換素子の製造方法は、ナノオーダーでの組織寸法(分散材料の粒径や分散材料粒子同士の分散間隔)の制御を可能とするものである。
【0061】
なお、本発明の熱電変換素子は、上記製造方法以外に、分散材料粒子と熱電変換材料粒子とを作製し、これらを混合して焼結する方法で得られたものであってもよく、いずれにしても、熱電変換材料の組織寸法(分散材料粒子の粒径や分散材料粒子同士の分散間隔)が、フォノンの平均自由行程以下、好ましくはキャリアの平均自由行程以上フォノンの平均自由行程以下であれば、熱電変換材料中のフォノンの散乱が十分に起こり、熱伝導率κを減少させることができる。この結果、式(1)で表される性能指数ZTが大きい熱電変換素子となる。
【0062】
さらに、本発明の熱電変換素子は、焼結時に分散材料と熱電変換材料との間の拡散がないため、熱電変換材料の組成が安定し、性能指数の劣化が生じず、高い性能指数ZTを示す優れた熱電変換素子であり、従来では作製困難であった性能指数ZTが2を上回るような熱電変換素子を得ることもできる。さらに、結果として得られる熱電変換素子が高温環境で長時間使用されても、完全に拡散反応を抑制することができ、安定に存在する。
【実施例】
【0063】
比較例1
還元剤としての水素化ホウ素ナトリウム2.0gをエタノール100mL中に混合した。
一方、塩化コバルト0.9g、塩化アンチモン3.6g及び塩化ニッケル0.18gをエタノール100mLに混合し、Coイオン、SbイオンとNiイオンの溶液とし、この溶液を上記水素化ホウ素ナトリウム溶液に滴下した。このとき、各々のイオンが還元剤により還元され、各々のナノ粒子を生成した。
その後、こうして形成したコバルト、アンチモン及びニッケルのナノ粒子をエタノールと水の混合溶液(混合比1:1)で洗浄し、不純物を除去した。
【0064】
得られたコバルト、アンチモン及びニッケルの粒子を含むスラリーを240℃において24時間水熱処理をした。このとき、過剰に添加されているニッケルとアンチモンが、目的とする熱電変換材料Co0.9Ni0.1Sb3の固溶限以上存在するため、熱電変換材料中にNiSbとして析出する。その後、500℃にてSPS焼結することにより、本発明の熱電変換素子が得られた。Co0.9Ni0.1Sb3の連続相中に20〜50nmの大きさのNiSb相が均一に分散していた。
【0065】
実施例1
還元剤としての水素化ホウ素ナトリウム2.0gをエタノール100mL中に混合した。
一方、塩化コバルト1.05g、塩化アンチモン3.3g及び塩化ニッケル0.11gをエタノール100mLに混合し、Coイオン、SbイオンとNiイオンの溶液とし、この溶液を上記水素化ホウ素ナトリウム溶液に滴下した。このとき、各々のイオンが還元剤により還元され、各々のナノ粒子を生成した。
その後、こうして形成したコバルト、アンチモン及びニッケルのナノ粒子をエタノールと水の混合溶液(混合比1:1)で洗浄し、不純物を除去した。
【0066】
得られたコバルト、アンチモン及びニッケルのナノ粒子を含むスラリーを240℃において24時間水熱処理をした。このとき、過剰に添加されているコバルトとアンチモンが、目的とする熱電変換材料Co0.9Ni0.1Sb3の固溶限以上存在するため、熱電変換材料中にCoSb2として析出する。その後、500℃にてSPS焼結することにより、本発明の熱電変換素子が得られた。熱電変換材料Co0.9Ni0.1Sb3に対して、CoSb2は共役線で結ばれた安定相であるので、焼結によって拡散を生じることはなく、Co0.9Ni0.1Sb3の連続相中に10〜60nmの大きさのCoSb2相が均一に分散していた。
【0067】
比較例1と実施例1の熱電変換素子を、500℃で10時間保持し、前後の特性を評価した。結果を以下の表に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
比較例2
<熱的に安定な分散金属相ナノ粒子の作製>
還元剤としての水素化ホウ素ナトリウム0.7gをエタノール100mL中に混合した。
一方、塩化ニッケル0.8g及び塩化アンチモン0.77gをエタノール100mLに混合し、この溶液を上記水素化ホウ素ナトリウム溶液に滴下した。こうして還元させることで、ニッケルおよびアンチモンのナノ粒子を生成した。
その後、こうして形成したアンチモン及びニッケルのナノ粒子をエタノールと水の混合溶液(混合比1:1)で洗浄し、不純物を除去した。
得られたアンチモン及びニッケルのナノ粒子を含むスラリーを240℃において24時間水熱処理をし、平均粒1次粒径約10〜20nmのNiSb合金のナノ粒子とした。
このNiSb合金粒子0.6gをエタノール100mLに加え、さらに水素化ホウ素ナトリウム1.7gを加えた。
【0070】
<所定の組成に制御された母相の作製>
塩化コバルト0.9g、塩化アンチモン2.7g及び塩化ニッケル0.057gをエタノール100mLに混合した。
この溶液を上記NiSb合金を含むエタノール溶液に滴下した。こうしてNiSb合金ナノ粒子の周囲にCo、Ni、及びSbの粒子を析出させ、複合化した。
次いで240℃において24時間水熱処理を施すことにより、NiSb合金ナノ粒子上にCo、Ni、及びSbからなる熱電変換材料(Co、Ni)Sb3が被覆した複合ナノ粒子を得た。
その後、500℃にてSPS焼結することにより、本発明の熱電変換素子が得られた。Co0.94Ni0.06Sb3の連続相中に10〜50nmの大きさのNiSb相が均一に分散していた。
【0071】
実施例2
<熱的に安定な分散金属相ナノ粒子の作製>
還元剤としての水素化ホウ素ナトリウム1.0gをエタノール100mL中に混合した。
一方、塩化コバルト0.4g及び塩化アンチモン0.77gをエタノール100mLに混合し、この溶液を上記水素化ホウ素ナトリウム溶液に滴下した。こうして還元させることで、コバルトおよびアンチモンのナノ粒子を生成した。
その後、こうして形成したコバルト及びアンチモンのナノ粒子をエタノールと水の混合溶液(混合比1:1)で洗浄し、不純物を除去した。
得られたコバルト及びアンチモンのナノ粒子を含むスラリーを240℃において24時間水熱処理をし、平均粒1次粒径約10〜20nmのCoSb2合金のナノ粒子とした。
このCoSb2合金粒子0.5gをエタノール100mLに加え、さらに水素化ホウ素ナトリウム2.0gを加えた。
【0072】
<所定の組成に制御された母相の作製>
塩化コバルト1.0g、塩化アンチモン3.06g及び塩化ニッケル0.064gをエタノール100mLに混合した。
この溶液を上記CoSb2合金を含むエタノール溶液に滴下した。こうしてCoSb2合金ナノ粒子の周囲にCo、Ni、及びSbの粒子を析出させ、複合化した。
次いで240℃において48時間水熱処理を施すことにより、CoSb2合金ナノ粒子上にCo、Ni、及びSbからなる熱電変換材料(Co、Ni)Sb3が被覆した複合ナノ粒子を得た。
その後、500℃にてSPS焼結することにより、本発明の熱電変換素子が得られた。熱電変換材料Co0.9Ni0.1Sb3に対して、CoSb2は共役線で結ばれた安定相であるので、焼結によって拡散を生じることはなく、Co0.94Ni0.06Sb3の連続相中に10〜60nmの大きさのCoSb2相が均一に分散していた。
【0073】
比較例2と実施例2の熱電変換素子を、500℃で10時間保持し、前後の特性を評価した。結果を以下の表に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
以上のように、熱耐久試験により、NiSb合金を複合した場合(比較例1、2)は、熱電変換材料の組成が変化し、ゼーベック係数が大きく低下した。本発明の熱電変換素子(実施例1、2)においてはゼーベック係数が熱耐久試験の前後でほとんど変化せず、良好な熱電特性を保った。これは、熱電変換材料Co0.9Ni0.1Sb3に対して、CoSb2は共役線で結ばれた安定相であるので、熱耐久試験によって拡散を生じることはなかったことが考えられる。
【0076】
なお、上記データでは、熱伝導率が変動しないものとして、耐久試験前のデータのみを測定した。通常ゼーベック係数が低下する場合、キャリア濃度が増加するため、熱伝導率は増加する方向に進むので、耐久試験後の熱伝導率が上記の耐久試験前の熱伝導率よりも低下することはないと考えられる。したがって前述の式(1)を使って、上記のように耐久試験前の熱伝導率を耐久試験後の熱伝導率として熱電特性の評価をすると、本発明による効果(熱電特性の値)を実際よりも低めに評価したことを意味する。別の言い方をすると、本発明による効果は、実際には、この評価よりも高くなることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の熱電変換素子の構成を示す略図である。
【図2a】Co、Ni、Sb三元系の状態を示す図である。
【図2b】Co、Sb、Te三元系の状態を示す図である。
【図2c】Bi、Sn、Te三元系の状態を示す図である。
【図3】熱電変換材料の組織寸法と、ゼーベック係数α、電気伝導率σ又は熱伝導率κとの関係を示すグラフである。
【図4】本発明の熱電変換素子の製造工程を示す図である。
【図5】本発明の熱電変換素子の製造工程を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属もしくは合金からなる熱電変換材料と、該熱電変換材料中に分散し、前記金属もしくは合金に対して状態図の共役線で結ばれた安定相である金属もしくは合金からなる分散材料と、を含むことを特徴とする熱電変換素子。
【請求項2】
前記分散材料の少なくとも一部が、前記熱電変換材料のフォノンの平均自由行程以下の間隔で分散されてなる、請求項1に記載の熱電変換素子。
【請求項3】
前記分散材料の少なくとも一部が、前記熱電変換材料のキャリアの平均自由行程以上の間隔で分散されてなる、請求項1または2に記載の熱電変換素子。
【請求項4】
前記熱電変換材料中で、前記分散材料が1〜100nmの平均粒子径で分散されてなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
【請求項5】
前記熱電変換材料を構成する元素の塩とこの熱電変換材料に固溶して合金を形成する量よりも多くの量の前記分散材料を構成する元素の塩を含む溶液を、pH調整材と還元剤とを含む溶液に滴下し、該熱電変換材料を構成する元素及び分散材料を構成する元素の粒子を析出させ、加熱処理することにより該熱電変換材料の連続相中に該分散材料の分散相を析出させ、次いで焼結する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記熱電変換材料を構成する元素の塩を含む溶液を、該熱電変換材料よりも融点の高い平均粒子径が1〜100nmである前記分散材料の粒子と、pH調整材と還元剤とを含む溶液に滴下し、該分散材料の粒子上において該熱電変換材料を構成する元素の粒子を還元析出させ、加熱処理して、該分散材料の粒子に前記熱電変換材料を被覆してなる複合粒子を形成し、次いで該複合粒子を充填して焼成する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−194085(P2009−194085A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32038(P2008−32038)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】