説明

燃料ガス化複合発電システム

【課題】安定した脱硫反応と圧力損失の減少を図る燃料ガス化複合発電システムを提供すること。
【解決手段】この発明は、従来技術におけるガス化炉圧力調節弁を無用とし、ガスタービン入口の圧力調節弁の制御で用いる当該弁上下流の差圧で燃料等の供給量制御を行う点に特徴がある。ガスタービン31の燃焼器32上流に設けられる流量調節弁33は、燃焼器32に供給する燃料ガスの流量を調節する。ガスタービン31にかかる負荷が変動したときは、制御装置35が当該負荷に応じて流量調節弁33を開閉することにより、負荷追従制御を行う。圧力調節弁34は、流量調節弁33において適切な流量調節を行うために、当該流量調節弁33上流の燃料ガス圧力を調節する。この圧力調節弁34の制御に用いられる当該弁上下流の圧力差に応じてガス化炉7に供給する燃料1および酸化剤2の供給量を決定する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料ガス化複合発電システムに関し、更に詳しくは、負荷変動時の燃料ガス圧の変化を利用して燃料等の供給量を調節し、圧力損失を減少させる燃料ガス化複合発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の燃料ガス化複合発電システムを示す構成図である。この燃料ガス化複合発電システムは、大きく分けて、ガス化炉設備41、脱硫設備42、およびガスタービン設備43とで構成される。ガス化炉設備41は、燃料ガスを生成するためのもので、燃料44と酸化剤45とが窒素ガス46の圧力によって供給されるガス化炉47と、生成されたガス中の未燃焼燃料微粉を取り除くための脱塵装置48とで構成される。なお、酸化剤35は、ガスタービンの圧縮機49から抽気した空気や、さらにそれから分離装置によって分離された酸素を用いることができる。
【0003】
ガス化炉設備41で生成された燃料ガスは、ガス化炉圧力調節弁50を通り、脱硫設備42に入る。脱硫設備42では、燃料ガスから硫化物を取り除くために、COS変換器51が設けられ、燃料ガス中のCOSが触媒によってH2Sに変換される。その後、ポンプ52、53によって水が循環するガス冷却塔54、同じく水が循環するガス洗浄塔55、H2S吸収液が満たされたH2S吸収塔56を燃料ガスが通り抜ける。
【0004】
これらの反応塔を通過した燃料ガスは低温となっているので、ガス−ガスヒータ(GGH)57,58によって、反応塔に入る前の高温状態である燃料ガスで昇温される。なお、上記H2S吸収塔56でH2Sを吸収した吸収液は、吸収液再生塔59で、H2Sが取り除かれ、H2S吸収塔56に再び戻される。取り除かれたH2Sは、その後石膏化工程60に移される。
【0005】
脱硫設備42を通過した燃料ガスは、ガスタービン設備43に送られる。具体的には、ガスタービン61の燃焼器62の上流に設けられる圧力調節弁63、および流量調節弁64で燃料ガスの圧力と流量が調節される。そして、ガスタービン61は、そのように調節された燃料ガスを燃料として、タービンを回転させ、タービン軸に接続される発電機65を回転させる。なお、ここでは、図示しなかったが、発電設備としてガスタービン単体ではなく、蒸気タービンをも用いるコンバインドプラントとする場合も増えている。
【0006】
このように、ガス化炉47、脱硫設備42、ガスタービン61をこの順に設置した燃料ガス化複合発電システムでは、負荷に応じて、ガスタービン61の流量調節弁64を開閉することによって、負荷追従制御が行われる。また、ガス化炉47の圧力と圧力設定値との偏差によってガス化炉圧力制御弁50を開閉し、負荷追従制御に資する技術も知られている(たとえば、特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】特開平10−299507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の燃料ガス化複合発電システムにおいては、発電出力を変化させたり、系統の負荷が変化する場合に、当該システムの負荷も当然変動する。そのような場合、ガス化炉圧力調節弁50が、ガス化炉47の圧力を調節する様に開閉するため、脱硫設備42に流入するガス量は変動する。また、ガスタービン61周辺では、圧力調節弁63および流量調節弁64がガスタービン入口の圧力および流量を調整するため、脱硫設備42から流出する燃料ガスの量が変動する。
【0009】
このため、ガス化炉47とガスタービン61の中間に位置する脱硫設備42の圧力および流量は制御されず、変動が生じる。反応塔内では液体は下向きに,ガスは上向きに流れ気液接触による反応を行っているが、この変動により反応塔の液体が飛散または落下してしまうという現象も生じ、これが負荷変化速度の制限ともなっていた。また、ガス化炉47からガスタービン61までの配管上に2つの大きな圧力調節弁50、63があるので、当該システムの圧力損失も比較的大きくなってしまっていた。
【0010】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、負荷が変動しても圧力変動から燃料等の供給量を制御し、脱硫設備における脱硫反応を安定して行わせることが可能で、圧力損失の少ない燃料ガス化複合発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、この発明による燃料ガス化複合発電システムは、燃料と酸化剤とで燃料ガスを生成するガス化炉設備と、前記燃料ガスを燃料として駆動するガスタービンの燃焼器より上流に設けられる流量調節弁と、前記流量調節弁の上流に設けられる圧力調節弁と、前記ガス化炉と前記圧力調節弁との間を連通し、当該間に圧力を調節する弁を設けない配管と、を有し、前記圧力調節弁により、前記流量調節弁上流の圧力を一定に制御すると共に、負荷に応じて前記流量調節弁を開閉して当該負荷に追従するように制御する燃料ガス化複合発電システムにおいて、前記圧力調節弁の上流と下流の圧力差に応じて、前記ガス化炉へ供給する燃料と酸化剤の供給量を制御するようにしたものである。
【0012】
流量調節弁は前記ガスタービンに供給する燃料ガスの流量を調節する。ガスタービンにかかる負荷が変動したときは、当該負荷に応じて流量調節弁を開閉することにより、負荷追従制御が可能になる。圧力制御弁は、流量調節弁において適切な流量調節を行うために、当該流量調節弁上流の燃料ガス圧力を調節する。
【0013】
この発明にかかる燃料ガス化複合発電システムにおいては、ガスタービンの負荷が上がった場合、圧力調節弁の上流と下流とで圧力差が生じるので、圧力調節弁を調節して流量調節弁上流の圧力を一定に保つようにする。また、これと同時に、当該圧力調節弁圧力差に応じて、燃料と酸化剤の供給量を増加させる。これにより、負荷変動に追従させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、この発明に係る燃料ガス化複合発電システムによれば、ガスタービンの上流に設けられる圧力調節弁が、ガス化炉に供給する燃料と酸化剤の供給量を調節し、間接的にガス化炉圧力および脱硫設備を通過する燃料ガス圧力を調節できる。また、上記圧力調節弁以外に圧力を調節する弁が不要となるため、余計な圧力損失をなくし、全体としてプラント効率の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものを含む。
【実施例1】
【0016】
図1は、この発明の実施例1にかかる燃料ガス化複合発電システムを示す構成図である。なお、燃料ガス化複合発電システムの基本的な構成は、従来技術と同一なので、説明を省略する。この実施例1では、従来技術におけるガス化炉圧力調節弁を無用とし、ガスタービン入口の圧力調節弁の制御で用いる当該弁上下流の差圧で燃料等の供給量制御を行う点に特徴がある。
【0017】
ガスタービン31の燃焼器32上流に設けられる流量調節弁33は、燃焼器32に供給する燃料ガスの流量を調節する。ガスタービン31にかかる負荷が変動したときは、制御装置35が当該負荷に応じて流量調節弁33を開閉することにより、負荷追従制御を行う。圧力調節弁34は、流量調節弁33において適切な流量調節を行うために、当該流量調節弁33上流の燃料ガス圧力を調節する。
【0018】
厳密に言えば、圧力調節弁34は、その上流と下流の差圧を調整し、結果として、流量調節弁33の上流の燃料ガス圧力を調節する。この圧力調節弁34の制御装置35は、設定値と実際の圧力差との偏差に応じたリフト制御を行うのが一般的である。この実施例1では、この圧力調節弁34の制御に用いられる当該弁上下流の圧力差に応じてガス化炉7に供給する燃料1および酸化剤2の供給量を決定する制御を行う。なお、燃料1および酸化剤2の供給量の調節はそれぞれの供給路に設けられる弁の開閉により行う。
【0019】
たとえば、ガスタービン31の負荷が上がった場合、圧力調節弁34の上流と下流とで圧力差が生じるので、圧力調節弁34を調節して圧力差を一定に保つようにする。また、これと同時に、当該圧力差に応じて燃料1と酸化剤2の供給量を増加させる。これにより、ガス化炉の圧力が上がり、ガスタービンの出力を増大させ、負荷変動に追従させることができる。
【0020】
このように、この実施例1にかかる燃料ガス化複合発電システムでは、ガスタービンの上流に設けられる圧力調節弁34が、間接的にガス化炉圧力および脱硫設備を通過する燃料ガス圧力を調節する。このため、上記圧力調節弁34以外に圧力を調節する弁が不要となるため、余計な圧力損失がなくなり、全体としてプラント効率の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0021】
図2は、実施例2にかかる燃料ガス化複合発電システムを示す構成図である。なお、燃料ガス化複合発電システムの基本的な構成は、従来技術および実施例1と同一なので、説明を省略する。この実施例2では、制御装置12を利用して脱硫設備の冷却塔21、および洗浄塔22のそれぞれのポンプ23、24を制御した点に特徴がある。
【0022】
制御装置12は、配管4を流れる燃料ガスの流速を一定に保つようにガス化炉7への燃料1と酸化剤2の供給量を決定する。したがって、部分負荷時や燃料ガスの流速が乱れた際には、当該流速を一定に保つように制御するが、一定になるまでは、多少の遷移時間がある。
【0023】
上記冷却塔21、および洗浄塔22は、下部から流入する燃料ガスに対して上部からポンプによって液体を循環させ、燃料ガスを冷却・洗浄する構造を有する。そこで、燃料ガスの流速が一定に定まるまでの遷移時間内においては、制御装置12内の設定値と実際の流速の偏差に応じて冷却塔21や洗浄等22のポンプ23、24の循環量を制御することにより、ガス流量の変動に応じた冷却、洗浄を行うことができる。
【0024】
つまり、流速が一定値よりも大きい場合は、ポンプ23、24の循環量を増加させ、循環させる液が飛散しないようにする。反対に、流速が小さい場合は、ポンプ23、24の循環量を減少させ、液だれを防止する。こうすることによって、燃料ガス流速に応じた量の処理液体を循環させることができる。したがって、常に脱硫設備における脱硫反応を常に効率よく行うことができる。
【実施例3】
【0025】
図3は、実施例3にかかる燃料ガス化複合発電システムを示す構成図である。なお、燃料ガス化複合発電システムの基本的な構成は、従来技術と同一なので、説明を省略する。この燃料ガス化複合発電システムは、石炭、重質油、廃棄物と炭化物との混合物等の燃料1を空気等の酸化剤2と燃焼させ、燃焼ガスを生成し、それによってガスタービン14を駆動させるガス化複合発電システムである。
【0026】
ガス化炉設備5の脱塵装置3によって未燃焼燃料微粉を取り除いた燃料ガスは、配管4を通り、脱硫設備6へと向かう。ガス化炉7と脱硫設備6との間を連通する配管4には、流量計8と圧力計9と温度計10とから構成される計測手段が設けられる。これらの計測手段は、配管4を通る燃料ガスの流量、圧力、および温度をそれぞれ計測する。これらの物理量は、演算により燃料ガスの流速に変換される(符号11)。
【0027】
そして、上記のように求まった燃料ガスの流速は、制御装置12に取り込まれる。制御装置12は、上記のように求まる燃料ガスの流速に応じてガス化炉7に供給される燃料1および酸化剤2の供給量を制御する。なお、同図では、流速変換11と制御装置12が別個に表してあるが、一つの制御装置で演算処理が可能である。
【0028】
制御方法を具体的に説明すると、燃料ガスの流速が大きい場合は、燃料と一定の割合で混合される酸化剤との供給量を減少させ、反対に少ない場合は、当該供給量を増加させる。発電機13の負荷が変化すると、配管4を流れる燃料ガスの圧力も流速も変化するので、そのうちの流速を一定に制御することによって、圧力も間接的に制御することになる。このことを考慮すると、燃料ガスの流速を少なくとも設定値の±20%程度の範囲に収めるのが好ましい。
【0029】
従来のように、発電機13の負荷信号を用いて、先行制御的にガス化炉7の圧力を制御したい場合は、点線で示したように、発電機13からの負荷信号を制御装置12に入力してやる。そして、配管4を流れる燃料ガスの流速を一定にできる範囲で燃料1と酸化剤2の供給量を決定するような演算式や演算テーブルを制御装置内の演算部にもてばよい。
【0030】
以上のように燃料ガス化複合発電システムを構築すれば、発電機の負荷が変化した場合でも、脱硫設備を通過する燃料ガスの流速は一定となり、反応塔において、液の飛散や落下がなく、脱硫反応を安定して行わせることができる。なお、この燃料ガス化複合発電システムは、燃料ガス中に含まれる水素を利用した燃料電池(SOFC)が同図中のA点に組み込まれる、いわゆるSOFCコンバインドシステムとしたときも適用可能なシステムである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明にかかる燃料ガス化複合発電システムは、燃料ガス圧を調節し、システムの圧力損失を減少させる発電システムの生産、使用に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1にかかる燃料ガス化複合発電システムを示す構成図である。
【図2】実施例2にかかる燃料ガス化複合発電システムを示す構成図である。
【図3】実施例3にかかる燃料ガス化複合発電システムを示す構成図である。
【図4】従来の燃料ガス化複合発電システムを示す構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1、44 燃料
2、45 酸化剤
6、42 脱硫設備
7、47 ガス化炉
8 流量計
9 圧力計
10 温度計
12、35 制御装置
13、65 発電機
14、61 ガスタービン
23、24、52、53 ポンプ
34 圧力調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸化剤とで燃料ガスを生成するガス化炉設備と、
前記燃料ガスを燃料として駆動するガスタービンの燃焼器より上流に設けられる流量調節弁と、
前記流量調節弁の上流に設けられる圧力調節弁と、
前記ガス化炉と前記圧力調節弁との間を連通し、当該間に圧力を調節する弁を設けない配管と、
を有し、
前記圧力調節弁により、前記流量調節弁上流の圧力を一定に制御すると共に、負荷に応じて前記流量調節弁を開閉して当該負荷に追従するように制御する燃料ガス化複合発電システムにおいて、
前記圧力調節弁の上流と下流の圧力差に応じて、前記ガス化炉へ供給する燃料と酸化剤の供給量を制御することを特徴とする燃料ガス化複合発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−153020(P2006−153020A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379483(P2005−379483)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【分割の表示】特願2001−337010(P2001−337010)の分割
【原出願日】平成13年11月1日(2001.11.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】