説明

燃料ホース

【課題】耐燃料透過性に優れるとともに、層間接着性にも優れた燃料ホースを提供する。
【解決手段】管状の樹脂層と,これに隣接するゴム層とからなる層構造を備えた燃料ホースであって、上記ゴム層が、下記の(A)〜(E)を必須成分とし、任意成分として下記の(F)を(A)100重量部に対して0.1重量部未満の割合で含有するゴム組成物を用いて形成されている。(A)ジエン系ゴム。(B)硫黄系加硫剤。(C)1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5からなる群から選ばれた少なくとも一つ。(D)カルバミン酸金属塩およびチアゾール系金属塩の少なくとも一方。(E)酸化マグネシウム。(F)酸化亜鉛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料〔ガソリン、アルコール混合ガソリン、ディーゼル燃料、RME(脂肪酸メチルエステル)混合ディーゼル燃料、GTL(Gas to Liquid) 混合ディーゼル燃料、CNG、LPG〕の輸送等に用いられる、燃料ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界的な環境意識の高まりから、自動車等に用いられる燃料ホースからの燃料透過量の規制が強化されてきており、なかでも北米では、かなり厳しい規制が法制化されつつある。このような状況のなか、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)製の内層と,テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド三元共重合体(THV)製の中間層と,NBR−PVC製の外層とを備えた3層構造,もしくはNBR製の外層とさらにクロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)製の最外層を備えた四層構造の燃料ホースが提案されている。
【0003】
そして、上記NBR製層とTHV製層とは接着性が悪いため、NBR製層中に1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩(DBU塩)を添加することにより、NBR製層とTHV製層との層間接着性の向上を目的とした燃料ホースが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−169085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、三元THVでは接着可能なものの、クレーズ性や耐燃料透過性に優れる四元THVを用いた場合、NBR層中にDBU塩を添加したとしても、NBR層とTHV製層との層間接着性の点で不充分であった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐燃料透過性に優れるとともに、層間接着性にも優れた燃料ホースの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の燃料ホースは、管状の樹脂層と,これに隣接するゴム層とからなる層構造を備えた燃料ホースであって、上記ゴム層が、下記の(A)〜(E)を必須成分とし、任意成分として下記の(F)を(A)100重量部に対して0.1重量部未満の割合で含有するゴム組成物を用いて形成されているとともに、上記樹脂層がテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド−パーフルオロアルキルビニルエーテル四元共重合体を主成分とする材料を用いて形成されているという構成をとる。
(A)ジエン系ゴム。
(B)硫黄系加硫剤。
(C)1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5からなる群から選ばれた少なくとも一つ。
(D)カルバミン酸金属塩およびチアゾール系金属塩の少なくとも一方。
(E)酸化マグネシウム。
(F)酸化亜鉛。
【0007】
本発明者らは、耐燃料透過性に優れるとともに、層間接着性にも優れた燃料ホースを得るため、鋭意研究を重ねた。そして、通常、NBR等のジエン系ゴム材料には、酸化亜鉛が受酸剤として用いられているが、このものは加硫速度が速過ぎるため、THVとの接着反応バランスが悪く、接着性が低下することを突き止めた。そこで、加硫速度と接着反応バランスを両立できるジエン系ゴム材料について実験を重ねた結果、硫黄加硫可能なジエン系ゴムと、硫黄系加硫剤と、DBU塩またはDBU,1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5塩(DBN塩)またはDBNとともに、カルバミン酸金属塩およびチアゾール系金属塩の少なくとも一方を併用し、さらに酸化亜鉛に代えて、酸化マグネシウムを用いてゴム層を形成すると、加硫バランスが良好となり、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド−パーフルオロアルキルビニルエーテル四元共重合体(THV)を主成分とする材料からなる樹脂層との層間接着性が優れることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の燃料ホースは、NBR等のジエン系ゴムに、DBU塩等とともに、硫黄系加硫剤,カルバミン酸金属塩およびチアゾール系金属塩の少なくとも一方,酸化マグネシウムを添加してなるジエ系ゴム層と、THV層とが隣接した層構造を備えているため、前述の理由により、両者の層間接着性が向上するという効果が得られる。
【0009】
また、上記ゴム組成物が過酸化物加硫剤を含有すると、ジエン系ゴム層と、THV層との層間接着性がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
本発明の燃料ホースは、管状の樹脂層と,これに隣接するゴム層とからなる層構造を備えている。
【0012】
本発明においては、上記ゴム層が、下記の(A)〜(E)を必須成分とし、任意成分として下記の(F)を(A)100重量部(以下「部」と略す)に対して0.1部未満の割合で含有するゴム組成物を用いて形成されているとともに、上記樹脂層がテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド−パーフルオロアルキルビニルエーテル四元共重合体を主成分とする材料を用いて形成されているのであって、これらが最大の特徴である。
(A)ジエン系ゴム。
(B)硫黄系加硫剤。
(C)1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5からなる群から選ばれた少なくとも一つ。
(D)カルバミン酸金属塩およびチアゾール系金属塩の少なくとも一方。
(E)酸化マグネシウム。
(F)酸化亜鉛。
【0013】
本発明の燃料ホースとしては、例えば、図1に示すように、管状の内層1の外周面に中間層2が形成され、さらにその中間層2の外周面に外層3が形成され、かつ、上記内層1および外層3が上記ゴム組成物を用いて形成されているとともに、上記中間層2がテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド−パーフルオロアルキルビニルエーテル四元共重合体を主成分とする材料を用いて形成されたものがあげられる。
【0014】
なお、本発明において主成分とは、通常、全体の過半を占める成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含む意味である。
【0015】
本発明の燃料ホースの内層1の形成材料(内層用材料)および外層3の形成材料(外層用材料)としては、上記(A)〜(E)を必須成分とし、任意成分として上記(F)を(A)100部に対して0.1部未満の割合で含有するゴム組成物が用いられる。
【0016】
上記ジエン系ゴム(A成分)としては、硫黄加硫可能なものであれば特に限定はなく、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド物(NBR−PVC),エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM),ヒドリンゴム(GECO)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、接着性の点で、NBR,NBR−PVCが好適に用いられる。
【0017】
また、上記硫黄系加硫剤(B成分)としては、例えば、硫黄(粉末硫黄,沈降硫黄,不溶性硫黄)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0018】
上記硫黄系加硫剤(B成分)の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、0.5〜5部が好ましく、特に好ましくは1〜3部ある。すなわち、上記硫黄(B成分)の配合量が0.5部未満であると、接着反応性が悪くなる傾向がみられ、逆に5部を超えると、ゴム物性が硬くなりすぎる傾向がみられるからである。
【0019】
上記ジエン系ゴム(A成分)および硫黄系加硫剤(B成分)とともに用いられるC成分としては、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩(DBU塩)、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5塩(DBN塩)、DBU、DBNが、それぞれ単独でもしくは併用して用いられる。
【0020】
上記1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩(DBU塩)(C成分)としては、例えば、DBUのナフトエ酸塩,ソルビン酸塩,ギ酸塩,オクチル酸塩、オレイン酸塩,o−フタル酸塩,p−トルエンスルホン酸塩や、DBUのフェノール樹脂塩,フェノール塩等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0021】
また、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5塩(DBN塩)(C成分)としては、例えば、DBNのナフトエ酸塩,ソルビン酸塩,ギ酸塩,オクチル酸塩、オレイン酸塩,o−フタル酸塩,p−トルエンスルホン酸塩や、DBNのフェノール樹脂塩,フェノール塩等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0022】
上記DBU塩等(C成分)の配合量は、層間接着性,ゴム物性の観点から、ジエン系ゴム(A成分)100部に対して0.5〜3部が好ましく、特に好ましくは1〜2部である。
【0023】
つぎに、上記特定の金属塩(D成分)としては、カルバミン酸金属塩およびチアゾール系金属塩の少なくとも一方が用いられる。
【0024】
上記カルバミン酸金属塩としては、例えば、ジメチルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnEDC)、ジブチルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnBDC)、ジメチルジチオカルバメートの鉄塩(FeMDC)、エチルフェニルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnEPDC)、N−ペンタメチレンジチオカルバメートの亜鉛塩、ジベンジルジチオカルバメートの亜鉛塩、ジメチルジチオカルバメートのナトリウム塩(NaMDC)、ジエチルジチオカルバメートのナトリウム塩(NaEDC)、ジブチルジチオカルバメートのナトリウム塩(NaBDC)、ジメチルジチオカルバメートの銅塩(CuMDC)、ジエチルジチオカルバメートのテルリウム塩(TeEDC)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、接着性、ゴム物性の点で、ZnMDC、ZnEDC、ZnBDCが好適に用いられる。
【0025】
上記特定の金属塩(D成分)の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して0.01〜0.5部が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.3部である。すなわち、特定の金属塩(D成分)の配合量が0.01部未満であると、加硫ゴム物性が悪くなる傾向がみられ、逆に0.5部を超えると、未加硫物性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0026】
上記A〜D成分とともに用いられる酸化マグネシウム(MgO)(E成分)の配合量は、接着性、ゴム物性の点から、ジエン系ゴム(A成分)100部に対して3〜20部が好ましく、特に好ましくは5〜15部である。
【0027】
上記ゴム組成物は、任意成分として酸化亜鉛(F成分)を上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して0.1部未満の割合で含有してもよい。すなわち、酸化亜鉛(F成分)の含有量が0.1部以上であると、層間接着性が悪くなるからである。
【0028】
なお、上記内層用材料および外層用材料には、前記A〜F成分の他に、過酸化物加硫剤、カーボンブラック,滑剤(ステアリン酸等),難燃剤,可塑剤,加硫剤(硫黄等),加硫促進剤,加硫助剤,老化防止剤、炭酸カルシウム等を、必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。
【0029】
上記過酸化物加硫剤としては、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルペルオキシヘキサン、n−ブチル−4,4′−ジ−t−ブチルペルオキシバレレート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキシン−3等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、臭気が問題ない点で、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0030】
上記過酸化物加硫剤の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、1.5〜20部が好ましい。すなわち、過酸化物加硫剤が1.5部未満であると、架橋が不充分で、ホースの強度に劣り、逆にB成分が20部を超えると、硬くなりすぎ、ホースの柔軟性に劣る傾向がみられるからである。
【0031】
つぎに、本発明の燃料ホースの中間層2の形成材料(中間層用材料)としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド−パーフルオロアルキルビニルエーテル四元共重合体(THV)を主成分とする材料が用いられる。このテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド−パーフルオロアルキルビニルエーテル四元共重合体(THV)は、パーフルオロアルキルビニルエーテルを共重合していない、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド三元共重合体(THV)に比べて、クレーズ性や耐燃料透過性に優れている。
【0032】
なお、上記中間層用材料には、THVの他に、カーボンブラック,滑剤(ワックス等),着色剤等を、必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。
【0033】
本発明の燃料ホースは、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、前記内層用材料,中間層用材料および外層用材料をそれぞれ準備し、これら各材料を押出成形機を用いて連続的に押出成形することにより、内層1の外周面に中間層2が形成され、さらにその外周面に外層3が形成されてなる燃料ホースを得ることができる(図1参照)。なお、本発明の燃料ホースにおいては、ホース加硫時に、各層の界面が接着剤レスで強固に接着し、積層一体化される。
【0034】
なお、本発明の燃料ホースは、上記製法に限定されるものではなく、例えば、内層用材料を押出成形機で押し出して単層構造のホースにした後、この外周面に中間層用材料および外層用材料を順次、押出成形することにより、三層構造の燃料ホースを作製してもよい。なお、上記各層の界面も、通常、接着剤レスで接着するが、場合によって接着剤を補助的に用いてもよい。また、必要に応じ、その層間に補強糸(ポリエステル、ビニロン、アラミド、ナイロン等)を入れてもよい。
【0035】
本発明の燃料ホース各層の厚みは、内層1の厚みが、通常、0.2〜4mm、好ましくは0.5〜2mmであり、中間層2の厚みが、通常、0.02〜1mm、好ましくは0.05〜0.5mmであり、外層3の厚みが、通常、0.2〜4mm、好ましくは0.5〜2mmである。また、本発明の燃料ホースの内径は、通常、2〜50mm、好ましくは5〜35mmである。
【0036】
なお、本発明の燃料ホースは、図1に示したような三層構造に限定されるものではなく、例えば、内層1の内周面にゴム層(最内層)を設けたり、外層3の外周面にゴム層(最外層)を設けたりしても差し支えない。
【実施例】
【0037】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例および比較例に先立ち、下記のジエン系ゴム材料およびNBR−PVC材料を調製した。
【0039】
(ジエン系ゴム材料の調製)
下記の表1に示す各成分を同表に示す割合で配合し、これらをバンバリー、ロールを用いて混練することにより、ジエン系ゴム材料を調製した。
【0040】
【表1】

【0041】
なお、上記表1に示す材料は、下記の通りである。
〔NBR*1〕
日本ゼオン社製、ニポールDN101(AN量:42.5)
〔ステアリン酸*2〕
花王社製、ルナックS30
〔MgO*3〕
協和化学社製、協和マグ♯150
〔ZnO*4〕
三井金属鉱業社製、酸化亜鉛二種
〔DBU塩*5〕
DBUナフトエ酸塩
〔カーボンブラック*6〕
SRF級カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストS)
〔タルク*7〕
日本ミストロン社製、ミストロンベーパータルク
〔塩基性シリカ*8〕
DSLジャパン社製、カープレックス1120
〔エーテルエステル系可塑剤*9〕
旭電化社製、アデカサイザーRS107
〔硫黄*10〕
鶴見化学工業社製、金華印粉砕硫黄
〔チアゾール系加硫促進剤(OBS)*11〕
N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)(大内新興化学工業社製、ノクセラーMSA−G)
〔過酸化物加硫剤*12〕
ジクミルパーオキサイド(日本油脂社製、パークミルD)
〔チアゾール系金属塩*13〕
メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(ZnMBT)(大内新興化学工業社製、ノクセラーMZ)
〔カルバミン酸金属塩*14〕
ジメチルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnMDC)(大内新興化学工業社製、ノクセラーPZ)
〔カルバミン酸金属塩*15〕
ジエチルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnEDC)(大内新興化学工業社製、ノクセラーEZ)
〔カルバミン酸金属塩*16〕
ジブチルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnBDC)(大内新興化学工業社製、ノクセラーBZ)
【0042】
(NBR−PVC材料の調製)
NBR−PVCとして日本ゼオン社製、ニポール1203JNS〔NBR/PVC=70/30(重量比)、AN量:33.5〕100部と、ステアリン酸(花王社製、ルナックS30)1部と、MgO(協和化学社製、協和マグ♯150)10部と、DBUナフトエ酸塩(ダイソー社製、DA−500)2部と、SRF級カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストS)30部と、ゼオライト(水澤化学工業社製、ミズカライザーDS)10部と、タルク(日本ミストロン社製、ミストロンベーパータルク)20部と、塩基性シリカ(DSLジャパン社製、カープレックス1120)15部と、エーテルエステル系可塑剤(旭電化社製、アデカサイザーRS107)25部と、硫黄(鶴見化学工業社製、金華印粉砕硫黄)1部と、チアゾール系加硫促進剤(OBS)としてN−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)(大内新興化学工業社製、ノクセラーMSA−G)1部とを配合し、これらをバンバリー、ロールを用いて混練することにより、NBR−PVC材料を調製した。
【0043】
〔実施例1〜6、比較例1〕
上記のようにして調製した各層の形成材料を準備し、これらを下記の表2に示す組み合わせで押出成形機を用いて連続的に押出成形することにより、内層(厚み2mm)の外周面に中間層(厚み0.1mm)が形成され、さらにその外周面に外層(厚み2mm)が形成されてなる三層構造の燃料ホース(内径24mm)を作製した。
【0044】
【表2】

【0045】
このようにして得られた実施例および比較例の燃料ホースを用いて、下記の基準に従い、接着力の測定を行った。これらの結果を、上記表2に併せて示した。
【0046】
〔接着力の測定〕
各ホースの接着力を、JIS K 6330−6に準じて測定した。すなわち、各ホースから長さ1インチの試料を採取し、この内層部分を剥離してチャックで挟み、引っ張り試験機にて25.4mm/インチの速さで引っ張る。そして、試料(ホース)が1回転して剥離するまでの最小荷重を接着力(N/インチ)とした。
【0047】
上記表2の結果から、実施例品はいずれも、接着力が良好であった。なお、本発明者らは、ジエン系ゴム材料中のDBU塩に代えて、DBU、DBN塩、DBNを単独でもしくは併用した場合でも、実施例品と同様に優れた接着力が得られることを実験により確認した。
【0048】
これに対して、比較例1品は、MgOに代えてZnOを多量に配合したジエン系ゴム材料aを用いているため、接着力が著しく劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の燃料ホースは、主に、自動車用の燃料ホースに好適に用いられるが、トラクター、耕運機、船舶等にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の燃料ホースの一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0051】
1 内層
2 中間層
3 外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の樹脂層と,これに隣接するゴム層とからなる層構造を備えた燃料ホースであって、上記ゴム層が、下記の(A)〜(E)を必須成分とし、任意成分として下記の(F)を(A)100重量部に対して0.1重量部未満の割合で含有するゴム組成物を用いて形成されているとともに、上記樹脂層がテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド−パーフルオロアルキルビニルエーテル四元共重合体を主成分とする材料を用いて形成されていることを特徴とする燃料ホース。
(A)ジエン系ゴム。
(B)硫黄系加硫剤。
(C)1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5からなる群から選ばれた少なくとも一つ。
(D)カルバミン酸金属塩およびチアゾール系金属塩の少なくとも一方。
(E)酸化マグネシウム。
(F)酸化亜鉛。
【請求項2】
上記(A)のジエン系ゴムが、アクリロニトリル−ブタジエンゴム,アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド物,エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体およびヒドリンゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1記載の燃料ホース。
【請求項3】
上記(E)成分の配合量が、(A)成分100重量部に対して3〜20重量部である請求項1または2記載の燃料ホース。
【請求項4】
上記(D)中のカルバミン酸金属塩が、ジメチルジチオカルバメートの亜鉛塩,ジエチルジチオカルバメートの亜鉛塩およびジブチルジチオカルバメートの亜鉛塩からなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料ホース。
【請求項5】
上記(D)中のチアゾール系金属塩が、メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩である請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料ホース。
【請求項6】
管状の内層の外周面に中間層が形成れ、さらにその外周面に外層が形成され、かつ、上記内層および外層が、上記(A)〜(E)を必須成分とし、任意成分として(F)を(A)100重量部に対して0.1重量部未満の割合で含有するゴム組成物を用いて形成されているとともに、上記中間層が上記テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド−パーフルオロアルキルビニルエーテル四元共重合体を主成分とする材料を用いて形成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料ホース。

【図1】
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【公開番号】特開2007−261079(P2007−261079A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89073(P2006−89073)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】