説明

燃料分離装置

【課題】本発明は、燃料分離装置に関し、燃料分離膜の劣化を簡単な構成で精度良く判定することを目的とする。
【解決手段】本発明の燃料分離装置は、燃料分離膜を有し、原料燃料を、該原料燃料よりオクタン価の高い高オクタン価燃料と、該原料燃料よりオクタン価の低い低オクタン価燃料とに分離する燃料分離器と、原料燃料の密度を測定する原料燃料密度測定手段と、低オクタン価燃料の密度を測定する低オクタン価燃料密度測定手段と、原料燃料測定手段により測定された密度と、低オクタン価燃料密度測定手段により測定された密度とに基づいて、燃料分離膜の劣化を判定する劣化判定手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料分離膜を用いて、原料燃料を高オクタン価燃料と低オクタン価燃料とに分離する車載用燃料分離装置が知られている(例えば下記特許文献1参照)。このような燃料分離装置においては、燃料分離膜の一方側に原料燃料を供給し、燃料分離膜の他方側を負圧とする。そして、燃料分離膜を透過した燃料が高オクタン価燃料となり、燃料分離膜を透過しなかった燃料が低オクタン価燃料となる。
【0003】
上記のような燃料分離装置において、燃料分離膜は、経年変化により、その分離性能が劣化する。この劣化の原因は、燃料分離膜の細孔が、膜自体の構造破壊や固形物の流入等により、詰まりを生ずることにあると考えられる。燃料分離膜が劣化すると、高オクタン価燃料の収量(収率)が低下する。
【0004】
特許文献1記載の燃料分離装置では、高オクタン価燃料の生成量が所定の上限値よりも大きい場合には、燃料分離膜の破損による異常が発生したものと判断し、当該生成量が所定の下限値より小さい場合には、燃料分離膜の機能低下による異常が発生したものと判断することとしている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−140047号公報
【特許文献2】特開2007−231878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の燃料分離装置では、高オクタン価燃料の生成量を、高オクタン価燃料を貯留する燃料タンクの液面変化から測定するようにしている。しかしながら、そのためには、燃料タンクの液面高さを極めて高い精度で測定する必要がある。エンジン運転中の燃料タンクの液面には揺れが生ずるので、液面高さをそのような高い精度で測定することは極めて困難である。
【0007】
また、高オクタン価燃料は、燃料分離装置から負圧ラインを通って、燃料タンクに流入する。この負圧ラインの流量から高オクタン価燃料の生成量を測定することも考えられるが、この場合も精度良く測定することは困難である。
【0008】
このようなことから、上記従来の燃料分離装置では、高オクタン価燃料の収率が大きく低下するような状態になるまで、燃料分離膜の劣化を検知することができないという問題がある。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、燃料分離膜の劣化を簡単な構成で精度良く判定することのできる燃料分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料分離装置であって、
燃料分離膜を有し、原料燃料を、該原料燃料よりオクタン価の高い高オクタン価燃料と、該原料燃料よりオクタン価の低い低オクタン価燃料とに分離する燃料分離器と、
前記原料燃料の密度を測定する原料燃料密度測定手段と、
前記低オクタン価燃料の密度を測定する低オクタン価燃料密度測定手段と、
前記原料燃料測定手段により測定された密度と、前記低オクタン価燃料密度測定手段により測定された密度とに基づいて、前記燃料分離膜の劣化を判定する劣化判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、原料燃料の密度と、燃料分離膜により分離された低オクタン価燃料の密度とをそれぞれを測定し、それらの密度に基づいて、燃料分離膜の劣化を判定することができる。燃料分離膜が劣化し、高オクタン価燃料の収率が低下すると、低オクタン価燃料のオクタン価が上昇し、原料燃料のオクタン価との差が小さくなる。オクタン価は燃料の密度と相関する。原料燃料と低オクタン価燃料とのオクタン価の差が小さくなると、両者の密度の差も小さくなる。よって、両者の密度の差に基づいて、燃料分離膜の劣化を容易且つ高精度に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1の燃料分離装置を示す図である。本実施形態の燃料分離装置は、車両に搭載されたエンジン(内燃機関)10に燃料を供給する車載用燃料供給装置に適用されている。燃料タンク12には、外部から給油された通常のガソリンが貯留されている。この通常のガソリンのオクタン価は、例えば、90RON(Research Octane Number)である。以下、燃料タンク12に貯留されているガソリンのことを「原料燃料」と称する。
【0013】
燃料タンク12には、原料燃料配管14の一端が接続されている。原料燃料配管14の途中には、燃料ポンプ16が設けられている。原料燃料配管14の他端は、燃料分離器30に接続されている。燃料タンク12内の原料燃料は、燃料ポンプ16により、燃料分離器30へ移送される。
【0014】
燃料分離器30は、供給された原料燃料を、高オクタン価成分の含有率が原料燃料より多い高オクタン価燃料(例えば、103RON)と、高オクタン価成分の含有率が原料燃料より少ない低オクタン価燃料(例えば、88RON)とに分離する装置である。
【0015】
なお、原料燃料配管14の途中には、図示しない燃料加熱器が配置されており、原料燃料は、この燃料加熱器により過熱された上で燃料分離器30に供給される。
【0016】
燃料分離器30は、耐圧容器からなるハウジングと、このハウジング内に設置された燃料分離膜301とを有している。上記ハウジングの内部空間は、燃料分離膜301により、2つの区画302,303に隔てられている。原料燃料配管14からの原料燃料は、区画302に流入する。燃料分離膜301は、原料燃料中の芳香族成分を選択的に透過させる性質を有している。芳香族成分量が増大すると、オクタン価が高くなる。このため、区画303側に透過した燃料は、芳香族成分の含有量が多くなるので、高オクタン価燃料となる。これに対し、区画302側に残った燃料は、芳香族成分の含有量が少なくなるので、低オクタン価燃料となる。
【0017】
燃料分離器30における区画302側には、低オクタン価燃料配管32の一端が接続されている。低オクタン価燃料配管32の途中には、レギュレータ34が設置されている。燃料分離器30で分離された低オクタン価燃料は、低オクタン価燃料配管32を通り、レギュレータ34で調圧された上で、エンジン10に供給される。
【0018】
一方、燃料分離器30における区画303側には、高オクタン価燃料配管38の一端が接続されている。また、高オクタン価燃料配管38の途中には、区画303内に負圧を発生させるためのエジェクタ(図示せず)が設けられている。燃料分離器30で分離された高オクタン価燃料は、高オクタン価燃料配管38を通り、図示しない貯留部へと送られる。
【0019】
原料燃料配管14からは、配管42が分岐している。この配管42は、密度測定器44に接続されている。また、低オクタン価燃料配管32からは、配管46が分岐している。この配管46は、密度測定器44に接続されている。低オクタン価燃料配管32からは、更に、配管40が分岐している。この配管40は、燃温測定器48に接続されている。密度測定器44は、燃料の屈折率あるいは誘電率などを測定することにより、燃料の密度を測定することができる。
【0020】
燃料分離膜301は、経年変化により、その分離性能が劣化する。この劣化の原因は、燃料分離膜301の細孔が、膜自体の構造破壊や固形物の流入等により、詰まりを生ずることにあると考えられる。燃料分離膜301が劣化すると、高オクタン価燃料の収量(収率)が低下する。燃料分離膜301の劣化が生じた場合には、これを早期に、且つ正確に、検知することが重要である。
【0021】
本実施形態では、密度測定器44により、原料燃料の密度と、低オクタン価燃料の密度とをそれぞれ測定し、それらの密度の差に基づいて、燃料分離膜301の劣化を判定する。
【0022】
前述したように、原料燃料のオクタン価が90RONであり、且つ燃料分離膜301が正常である場合には、燃料分離器30から流出する低オクタン価燃料のオクタン価は、例えば88RON程度となる。燃料のオクタン価は、燃料の密度と相関する。このため、上記の場合には、原料燃料の密度と、低オクタン価燃料の密度との間には、所定の差が存在する。
【0023】
しかしながら、燃料分離膜301が劣化すると、その分離性能が低下するため、区画303側に透過する芳香族成分の量が少なくなり、区画302側に残存する芳香族成分の量が多くなる。その結果、低オクタン価燃料配管32から流出する低オクタン価燃料中の芳香族成分含有率が上昇し、低オクタン価燃料のオクタン価が上昇する。このため、原料燃料のオクタン価と、低オクタン価燃料のオクタン価との差が小さくなる。よって、原料燃料の密度と、低オクタン価燃料の密度との差も小さくなる。従って、原料燃料の密度と、低オクタン価燃料の密度との差が正常値より小さくなったことが検出された場合には、燃料分離膜301が劣化していると判定することができる。
【0024】
ECU50は、具体的には、次のようにして、燃料分離膜301の劣化を判定する。まず、密度測定器44において、配管42により送られる原料燃料の密度と、配管46により送られる低オクタン価燃料の密度とを順次測定する。次いで、それら二つの密度の差を、所定の判定値と比較する。その比較結果において、密度差が判定値より小さい場合には、燃料分離膜301が劣化していると判定され、そうでない場合には、燃料分離膜301は正常であると判定される。
【0025】
前述したように、高オクタン価燃料の収量や収率を精度良く測定することは困難である。これに対し、燃料の密度を精度良く測定することは容易である。このため、本実施形態によれば、燃料分離膜301の劣化を容易且つ高精度に判定することができる。よって、燃料分離膜301の劣化が生じた場合に、そのことを早期に検知することができる
【0026】
なお、本実施形態では、燃温測定器48によって検出される低オクタン価燃料の温度に基づいて、燃料分離器30が正常に暖機されていることを確認した上で、燃料分離膜301の劣化判定を行うようにしてもよい。これにより、誤判定を確実に防止することができる。
【0027】
また、上述した実施の形態1においては、また、密度測定器44が原料燃料の密度を測定することにより前記第1の発明における「原料燃料密度測定手段」が、密度測定器44が低オクタン価燃料の密度を測定することにより前記第1の発明における「低オクタン価燃料密度測定手段」が、ECU50が原料燃料の密度と低オクタン価燃料の密度との差を上記判定値と比較することにより前記第1の発明における「劣化判定手段」が、それぞれ実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1の燃料分離装置を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 エンジン
12 燃料タンク
14 原料燃料配管
30 燃料分離器
301 燃料分離膜
302,303 区画
32 低オクタン価燃料配管
38 高オクタン価燃料配管
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料分離膜を有し、原料燃料を、該原料燃料よりオクタン価の高い高オクタン価燃料と、該原料燃料よりオクタン価の低い低オクタン価燃料とに分離する燃料分離器と、
前記原料燃料の密度を測定する原料燃料密度測定手段と、
前記低オクタン価燃料の密度を測定する低オクタン価燃料密度測定手段と、
前記原料燃料測定手段により測定された密度と、前記低オクタン価燃料密度測定手段により測定された密度とに基づいて、前記燃料分離膜の劣化を判定する劣化判定手段と、
を備えることを特徴とする燃料分離装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−53769(P2010−53769A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219326(P2008−219326)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】