説明

燃料取替機

【課題】
本発明の課題は、外部に新たな構造物、即ち、他の機器と干渉する位置に新たな構造物を設置することなく、主要部材を重量化させないで地震時の荷重を低減できる燃料取替機を提供することにある。
【解決手段】
本発明の燃料取替機は、上記課題を解決するために、燃料貯蔵プールに沿って設置された第1レールを走行するサドル、該サドルと結合され、走行方向と直交する方向に前記燃料貯蔵プールを跨ぐように配置されたガーダから成るブリッジと、該ブリッジの前記ガーダ上に設置された第2のレールを、前記ブリッジの走行方向と直交して走行するトロリと、該トロリに設けられた前記燃料貯蔵プール内の燃料集合体を把持する吊下機器とを備えた燃料取替機において、前記ガーダとサドルの取り合い部に、前記ガーダとサドルをバネで接合して撓ませるバネ構造を用いた免震装置が配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料取替機に係り、特に、原子力発電所の原子炉建屋内に設置され、使用済の燃料交換、或いは定期検査時の燃料交換等に使用するものに好適な燃料取替機に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、原子炉内における使用済燃料、或いは定期検査時等の燃料の交換作業は、燃料取替機を用いて行われる。この燃料取替機を、図10を用いて説明する。
【0003】
図10に示す如く、燃料取替機16は、使用済燃料、或いは定期検査時等の燃料の交換作業のために、燃料貯蔵プール21上を走行する必要がある。このため、燃料取替機16は、燃料貯蔵プール21の脇に設置された第1のレール20Aの上を走行するサドル2、このサドル2と機械的に結合され、走行方向と直交する方向に燃料貯蔵プール21を跨ぐように配置されたガーダ1から成るブリッジ17(走行台車)と、このブリッジ17のガーダ1上に設置された第2のレール20B上を、ブリッジ17の走行方向と直交して走行するトロリ18(横行台車)とで概略構成されている。また、上記トロリ18には、燃料貯蔵プール21内の燃料集合体(図示せず)を把持するための吊下機器19を備えており、かつ、燃料取替機16は、燃料貯蔵プール21を跨ぐ構造となっている。
【0004】
このような燃料貯蔵プール21を跨ぐ構造の燃料取替機16は、通常、原子炉建屋の上層に設置されることが多く、燃料貯蔵プール21を跨ぐので、水平方向に長く両端を支持点として撓む構造となっているため、固有振動数を高く設定、つまり、剛性を強くすることが困難である。これは、鉛直地震動の影響を受けやすく、上述したサドル2とガーダ1を機械的に結合して主要部材の剛性を十分確保する方法では、燃料取替機16が、通常より硬い(強い)鋼材を使うと質量が大となる重量構造物となることを意味する。
【0005】
その他、耐震性確保の方法として、制震装置により燃料取替機と地震動の共振状態を回避させて燃料取替機への地震入力を低減させるものがあり、これは特許文献1に記載されている。また、構造物自体に免震装置を適応することで、水平方向変位の周期を長周期化して固有振動数を低減させるものがあり、これは特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-153683号公報
【特許文献2】特開2004-360742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、耐震設計審査指針の改定に伴い、燃料取替機の地震入力条件である地震の強さ、加速度の値等が今までの数倍になっているため、本体の主要部材であるガーダは、この地震入力条件、特に、鉛直地震動に対応する力に耐える必要がある。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みなされたもの、その目的とするところは、外部に新たな構造物、即ち、他の機器と干渉する位置に新たな構造物を設置することなく、主要部材を重量化させないで地震時の荷重を低減できる燃料取替機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の燃料取替機は、上記目的を達成するために、燃料貯蔵プールに沿って設置された第1レール上を走行するサドル、該サドルと結合され、走行方向と直交する方向に前記燃料貯蔵プールを跨ぐように配置されたガーダから成るブリッジと、該ブリッジの前記ガーダ上に設置された第2のレール上を、前記ブリッジの走行方向と直交して走行するトロリと、該トロリに設けられた前記燃料貯蔵プール内の燃料集合体を把持する吊下機器とを備えた燃料取替機において、前記ガーダとサドルの取り合い部には、前記ガーダとサドルをバネで接合して撓ませるバネ構造を用いた免震装置が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外部に新たな構造物を設置することなく、主要部材を重量化させないで地震時の荷重を低減できる燃料取替機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の燃料取替機に採用される第1の実施例であるバネ構造を用いた免震装置を有する支持構造を示す概念図である。
【図2】本発明の燃料取替機に採用される第2の実施例であるバネ構造とピン構造を用いた免震装置を有する支持構造を示す概念図である。
【図3】本発明の燃料取替機に採用される第3の実施例である皿バネを用いた免震装置を示す断面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】図3及び図4における第3の実施例の皿バネ形状を示す図である。
【図6】図3及び図4における第3の実施例の皿バネの拘束状態を示す図である。
【図7】本発明の燃料取替機に採用される第4の実施例であるコイルバネを用いた免震装置を示す断面図である。
【図8】図7におけるコイルバネの固定の状態を示す側面図である。
【図9】図7におけるコイルバネの固定具の一例を示す図である。
【図10】本発明の対象となる燃料取替機を原子炉建屋内に配置した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の燃料取替機を説明する。尚、燃料取替機の構成は、図10に示した構成と略同一であり、ここでは、ガーダ1とサドル2の間に配置され、ガーダ1をサドル2で支持する免震装置についての例を説明する。
【0013】
図1は、本発明の燃料取替機に採用される免震装置の第1の実施例であり、免震装置の基本構成を示すものである。
【0014】
該図に示す如く、本実施例では、ガーダ1はサドル2により支持された構造となっている。その両者の取合い部には、ガーダ1とサドル2をバネで接合して撓ませるバネ構造3を用いた免震装置が設置され、ガーダ1の鉛直ストローク(ガーダ1の撓み分+バネの撓み分)を確保する構造となっている。
【0015】
このような第1の実施例の構成では、バネ構造3の免震装置が、地震が来たときに撓んで固有振動数を下げることができる。その結果、外部に新たな構造、即ち、他の機器と干渉しない位置である燃料取替機のスペース以外に別の構造物を設けることなく、主要部材を重量化させないで地震時の荷重を低減できる効果が得られる。
【0016】
図2は、本発明の燃料取替機に採用される免震装置の第2の実施例を示すものである。
【0017】
該図に示す如く、本実施例では、ガーダ1はサドル2により支持された構造となっている。その両者の取合い部には、ガーダ1とサドル2をバネで接合して撓ませるバネ構造3と、ピン接合しガーダ1を回転させるピン構造4とを組み合わせて用いた免震装置が設置され、ガーダ1の鉛直ストローク(ガーダ1の撓み分+バネの撓み分)を確保しながらも、回転自由な構造となっている。
【0018】
このような第2の実施例の構成では、上述した第1の実施例の効果に加え、回転自由な構造であるため、結合を柔軟にする効果が得られる。
【0019】
図3及び図4は、本発明の燃料取替機に採用される免震装置の第3の実施例を示すものである。
【0020】
該図に示す如く、本実施例では、ガーダ1はサドル2により支持され、支持構造についてはピン5を設置した免震装置となっている。具体的には、ガーダ1とピン5の間に、ハブ6を挟んで上下に皿バネ7が設置された構造となっており、これがガーダ1の内部に設置されている。このとき、ハブ6は、ガイド8により上下方向を除いて拘束されている。
【0021】
図5及び図6は、図3及び図4の皿バネ7の形状を示すもので、図5は、図3及び図4に設置された皿バネ7を、図6は、図3及び図4の上方に設置された皿バネ7の拘束状態をそれぞれ示すものある。
【0022】
図5に示す如く、単一皿バネ9は、圧縮荷重のみ負担するので、ストロークを確保しつつ引張/圧縮の双方向に荷重を伝達させるため、直列に配置された皿バネ7がハブ6を挟んで上下二段に設置されている。このとき、図6に示す如く、皿バネ7には、横ずれ防止のために軸10が通され、また、ストローク上、軸10の不足部分には、外側に軸補助11が設置されている。
【0023】
このような第3の実施例の構成では、上述した第1及び第2の実施例の効果に加え、皿バネなので小スペース化が図れると共に、免震装置が燃料取替機内(ガーダ1内)なので、周囲機器との干渉、接触がなくなる効果がある。
【0024】
図7及び図8は、本発明の燃料取替機に採用される免震装置の第4の実施例であり、バネ構造3としてコイルバネを用いた例を示すものである。
【0025】
該図に示す如く、本実施例では、図3及び図4と同様、ガーダ1はサドル2により支持されている。具体的には、ガーダ1はピン5により回転可能に支持され、ピン5の両端は、ガーダ1の両脇に設置された把持具12に支持されており、ガーダ1の両脇に設置されたそれぞれの把持具12とサドル2の間に、コイルバネ13が配置されている構造となっている。このとき、コイルバネ13は、ストッパー14により水平方向が拘束されている。
【0026】
図9は、図7及び図8におけるコイルバネ13の固定具の一例である。この固定具15には、らせん状の溝が形成され、該らせん状の溝にコイルバネ13が巻かれているものである。そして、この固定具15は、引張/圧縮の双方向に荷重を伝達させるため、サドル2と把持具12に各々取り付けられ、コイルバネ13の両端を固定している。
【0027】
このような第4の実施例の構成では、上述した第1、第2及び第3の実施例の効果に加え、コイルバネ13を使用しているため、作り易く、かつ、引張荷重、圧縮荷重に対して効果がある。また、ガーダ1内にコイルバネ13が設置されていないので、メンテナンスし易い効果もある。
【0028】
このように、本発明は、ガーダ/サドルの取合い部にバネ構造を用いた免震装置を設置することで、ガーダの支持剛性を低減させている。つまり、固有振動数を低振動数側(本発明のように、バネで撓む構成とすることで可能。機械的な固定では、高振動数側となる。)に設定して、地震応答のピークを避けることができ、主要部材の重量化をさせることなく、地震荷重の低減が図れる。
【0029】
また、燃料取替機の下に免震装置を設置する手段と同等の効果が期待でき、周囲構造物(クレーン等)の干渉を抑えることが可能である。
【0030】
以上、種々の実施例で説明した本発明の免震装置を支持構造に有する燃料取替機は、剛性を低減させる観点で、上記した実施形態に限定されるものではない。つまり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、例えば、板バネや空気バネなど、種々変更を加えて用いることにより得られる効果は、上述した実施例と同様の効果が得られることは明白である。
【符号の説明】
【0031】
1…ガーダ、2…サドル、3…バネ構造、4…ピン構造、5…ピン、6…ハブ、7…皿バネ、8…ガイド、9…単一皿バネ、10…軸、11…軸補助、12…把持具、13…コイルバネ、14…ストッパー、15…固定具、16…燃料取替機、17…ブリッジ、18…トロリ、19…吊下機器、20A、20B…レール、21…燃料貯蔵プール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料貯蔵プールに沿って設置された第1レール上を走行するサドル、該サドルと結合され、走行方向と直交する方向に前記燃料貯蔵プールを跨ぐように配置されたガーダから成るブリッジと、該ブリッジの前記ガーダ上に設置された第2のレール上を、前記ブリッジの走行方向と直交して走行するトロリと、該トロリに設けられた前記燃料貯蔵プール内の燃料集合体を把持する吊下機器とを備えた燃料取替機において、
前記ガーダとサドルの取り合い部には、前記ガーダとサドルをバネで接合して撓ませるバネ構造を用いた免震装置が配置されていることを特徴とする燃料取替機。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料取替機において、
前記免震装置は、前記ガーダとサドルをバネで接合して撓ませるバネ構造と、ピン接合して前記ガーダを回転させるピン構造との組み合わせから成ることを特徴とする燃料取替機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料取替機において、
前記免震装置は、燃料取替機に作用する鉛直地震動に対して、固有振動数を低振動数側にシフトするように作用することを特徴とする燃料取替機。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料取替機において、
前記バネ構造は、皿バネであることを特徴とする燃料取替機。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料取替機において、
前記バネ構造は、コイルバネであることを特徴とする燃料取替機。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料取替機において、
前記バネ構造は、板バネであることを特徴とする燃料取替機。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料取替機において、
前記バネ構造は、空気バネであることを特徴とする燃料取替機。
【請求項8】
請求項4に記載の燃料取替機において、
前記皿バネは、直列に並べた単一皿バネの集合体を上下二段に配置して、引張/圧縮の両方に効く荷重伝達構造を有することを特徴とする燃料取替機。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料取替機において、
前記直列に並べた単一皿バネは、その中央部に軸が通され、かつ、外側に軸補助を設置し、ストローク幅における皿バネの横ずれ防止構造を有することを特徴とする燃料取替機。
【請求項10】
請求項5に記載の燃料取替機において、
前記コイルバネの上下を固定具で固定して、引張/圧縮の両方に効く荷重伝達構造を有することを特徴とする燃料取替機。
【請求項11】
請求項10に記載の燃料取替機において、
前記固定具にはらせん状の溝が形成され、該らせん状の溝に前記コイルバネが巻かれていることを特徴とする燃料取替機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−154766(P2012−154766A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13678(P2011−13678)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】