説明

燃料改質装置

【課題】簡単な構成により、燃料を触媒反応で効率良く改質し、水素を安定して製造することができる燃料改質装置を提供する。
【解決手段】燃料を触媒反応により改質して水素を生成する改質部11と、前記改質部11に燃料を供給する燃料供給手段12と、前記改質部11に空気を供給する空気供給手段13と、を備える燃料改質装置10であって、前記改質部11が、第1担体に燃焼触媒が担持されてなる第1触媒コンバータ11Aと、この第1触媒コンバータ11Aの下流側に設けられ、且つ第2担体に改質触媒が担持されてなる第2触媒コンバータ11Bと、を備え、大気圧よりも高圧力状態で運転することを特徴とする燃料改質装置10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料改質装置に関し、特に、簡単な構成により、燃料を触媒反応で効率良く改質し、水素を安定して製造することができる燃料改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素エネルギーはクリーンなエネルギーであり、燃料電池や内燃機関等のエネルギー源として、将来的な利用の拡大が期待されている。例えば、水素エンジンや水素添加エンジンへの利用の他、水素を還元剤とする脱NOx技術や、燃料電池を用いた補助電源への利用等について、種々の検討がなされている。
【0003】
ここで、炭化水素を部分酸化して、水素と一酸化炭素とを含む還元性気体を生成する部分酸化反応を式1に示す。この部分酸化反応は、燃料と酸素とを用いた発熱反応であり、自発的に反応が進行することから、一旦、反応が開始されると、外部から熱の供給を受けることなく水素を生成することができる。また、高温状態で燃料と酸素とを共存させた場合、式3に示す燃焼反応も触媒上で進行する。一方、式2に示す水蒸気改質反応は、燃料と水蒸気とを用いた吸熱反応であり、自発的に反応が進行しないことから、制御が容易な反応である。
[化1]
+n/2O→nCO+m/2H ・・・式1
+nHO→nCO+(n+m/2)H ・・・式2
+(n+m/4)O→nCO+m/2HO ・・・式3
【0004】
ところで、ガソリンや軽油等の自動車用燃料に対して、ロジウム等の貴金属を担持した改質触媒の存在下で部分酸化反応や水蒸気改質反応を行う場合、高い水素収率を得るためには、反応温度を800℃〜1000℃もの高温に設定する必要がある。これは、炭素価が大きくなるに従って分子サイズが大きくなり、分解するのに大きなエネルギーが必要になるためである。自動車上で燃料改質を行うことを想定すると、装置の小型軽量化、良好な起動性、及び、優れた負荷応答性が望まれる。このため、式1や式2で示される改質反応を起動性良く効率的に行うためには、水蒸気や空気等の酸化剤を理論値より過剰に導入する必要がある。
【0005】
しかしながら、式3に示す燃焼反応の反応速度が、式1や式2に示す改質反応の反応速度に比して速いため、触媒層の燃料ガス導入部分において、高温領域が発生してしまう。この現象は、部分酸化反応に限らず、オートサーマル改質反応においても同様に生じる。このため、必要以上に改質触媒が高温に晒されてしまう結果、改質触媒のシンタリング等によって、反応効率の低下や触媒の寿命の低下を招くうえ、反応制御が困難になるといった問題がある。
【0006】
そこで、改質触媒における燃焼反応を制御する方法として、改質触媒に導入する酸素濃度を調整して改質反応を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、酸素富化膜を利用し、空気中の酸素濃度よりも高濃度の酸素を含有する酸素富化空気を用いることにより、より低温から改質反応を開始することができ、ライトオフを向上させることができる。
【0007】
また、改質触媒の局所的な高温領域の発生を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法で用いられる改質触媒は、改質触媒表面に酸素吸蔵材料がコートされたものであり、酸素吸蔵材料の存在割合が、改質ガスを排出する下流側よりも燃料ガスを導入する上流側の方が高くなるように調整されている。このため、導入される酸素の一部が酸素吸蔵材料に吸蔵される結果、急激な部分酸化反応が抑制されて極端な高温領域が生じることを抑制することができる。また、酸素吸蔵材料の存在割合に勾配を設けることにより、触媒全体で改質反応を進行させることができ、安定した改質反応を行うことができる。
【特許文献1】特開2005−263519号公報
【特許文献2】特許第3747744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で提案されている方法であっても、水蒸気を過剰に供給した場合には、吸熱反応の水蒸気改質反応が進行するため、外部から相当量のエネルギーを供給する必要があり、熱効率が低下する。即ち、水素を得るために、より多くのエネルギーが必要となってしまう。また、水蒸気供給手段や熱量供給手段を設けなくてはならないため、装置が大型化、複雑化してしまう。
【0009】
また、酸素を過剰に供給した場合には、発熱反応の燃焼反応が進行するため、燃料と酸素を多量に投入すると反応が著しく進行し、反応温度の制御が困難となる。反応温度を制御するためには、燃料と酸素の量を絞らなければならず、これは水素製造能力の低下を意味する。過燃焼した場合には、水素収率が低下し、触媒が溶損して失活するおそれもある。酸素濃度を低下させて改質反応を行うことにより、改質触媒の温度上昇を抑制することはできるものの、酸素濃度を変更するためには、ガス分離膜やコンプレッサが必要となり、装置が大型化してしまう。さらには、酸素濃度を常に低く保つためには、コンプレッサを駆動し続ける必要があり、燃費の悪化やコストの上昇に繋がる。
【0010】
また、特許文献2で提案されている方法は、改質始動時に限って言えば、燃料ガス導入部で酸素の一部を酸素吸蔵材料で吸蔵することにより、燃料ガス導入部での急激な温度上昇を抑制できる。しかしながら、断続的な改質反応においては、酸素吸蔵材料の酸素吸蔵能には限界があり、吸蔵能を超えると酸素の吸蔵が行われなくなる結果、燃料ガス導入部の改質触媒は急激に温度が上昇してしまうため、根本的な課題の解決には至っていない。また、酸素吸蔵材料の再生処理を施すことも想定されるが、その場合には改質ガスの安定供給を行うことができなくなる。さらには、炭素の析出や未反応HCの排出といった問題も抱えている。
【0011】
以上の通り、簡単な構成により、燃料を触媒反応で効率良く改質し、水素を安定して製造することができる燃料改質装置については、これまでのところ見出されていないのが現状である。従って、簡単な構成により、燃料を触媒反応で効率良く改質し、水素を安定して製造することができる燃料改質装置を提供することは有益である。
【0012】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成により、燃料を触媒反応で効率良く改質し、水素を安定して製造することができる燃料改質装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、改質触媒の上流側に燃焼触媒を配置した構成を採用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0014】
請求項1記載の発明は、燃料を触媒反応により改質して水素を生成する改質部と、前記改質部に燃料を供給する燃料供給手段と、前記改質部に空気を供給する空気供給手段と、を備える燃料改質装置であって、前記改質部が、第1担体に燃焼触媒が担持されてなる第1触媒コンバータと、この第1触媒コンバータの下流側に設けられ、且つ第2担体に改質触媒が担持されてなる第2触媒コンバータと、を備え、大気圧よりも高圧力状態で運転することを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の燃料改質装置において、前記燃焼触媒が、前記改質触媒より高い耐熱性及び高い酸化性能を有し、且つ、白金、パラジウム、ロジウム、ニッケル、鉄、コバルト、レニウム、スズ、及びゲルマニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属触媒成分と、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、及びマグネシアよりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物又はこれらを基本組成とした複合酸化物と、を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の燃料改質装置において、前記第1担体が、前記第2担体よりも熱伝導率が高いことを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1から3いずれか記載の燃料改質装置において、前記第1担体が、メタルハニカム又はメタルフォームであることを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1から4いずれか記載の燃料改質装置において、前記改質触媒が、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、鉄、及びコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属触媒成分と、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、及びゼオライトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物又はこれらを基本組成とした複合酸化物と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、改質触媒の上流に配置された燃焼触媒上で酸素が利用されるため、改質触媒の上流側端部の酸素濃度を低下させることができ、上流側端部における局所的な高温領域の発生を回避できる。これにより、改質触媒におけるシンタリング等の熱劣化を抑制でき、改質触媒の長寿命化が図れる。部分酸化反応等の改質反応は、燃料ガス(燃料+空気)の混合状態(O/C比又はA/F比)に非常に敏感な反応であり、触媒最高温度は、触媒断面積あたりに通過する燃料ガス量と混合状態(O/C)により決定される。このため、改質触媒における熱劣化やコーキング等の問題により負荷応答特性を向上させることが困難であったところ、本発明によれば、改質触媒の上流に配置された燃焼触媒がバッファとなって、導入される燃料ガスの変動量を吸収できる結果、改質反応を容易に制御できる。また、改質触媒の反応温度が低下することにより、触媒の選択自由度が向上する。さらには、燃焼反応で生成した反応熱を用い、高炭素価の炭化水素を熱分解して低炭素価の炭化水素に転化することにより、改質効率が向上する。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、改質触媒よりも高い耐熱性、及び高い酸化性能を有する燃焼触媒を用いることにより、燃料ガスの投入量を増量できるため、装置のコンパクト化が可能である。燃焼触媒として、水素収率ではなく酸化性能の高い触媒を用いるため、低温から燃焼反応を開始でき、改質触媒に熱が伝わることで、改質触媒単独で起動するよりも起動時間を短縮できる。起動時間を短縮することにより、加熱に要するエネルギーを抑制できる。このため、このような燃焼触媒は、ガソリン、ディーゼル内燃機関において、特に耐熱性の点で高い実績を有する。改質反応に最も効果のある活性種としてロジウムが挙げられるが、このロジウムは白金やパラジウムと比較して稀少金属であり、値段も非常に高価である。単一改質触媒を用いる場合はロジウムを燃焼反応にも使用していたが、本発明では燃焼反応をロジウムよりもコストの低い金属、例えば白金やパラジウム等に置き換えることができる。このため、改質器全体としてロジウム量を削減することができ、コストの低減を図ることができる。
【0021】
請求項3及び4記載の発明によれば、第1担体が第2担体よりも熱伝導率が高く、具体的には、第1担体としてメタルハニカム又はメタルフォームが用いられることを特徴とする。これにより、触媒への伝熱速度が速まる結果、外部加熱による改質開始温度への到達時間を短縮することができる。ひいては、改質効率のさらなる向上が図れる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、一般的に改質活性が高く、耐熱性も有する改質触媒を用いることにより、改質効率をさらに高められる結果、装置のコンパクト化が達成でき、レイアウトの自由度が得られる。貴金属を活性種とした場合には、コーキング等の活性劣化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
本実施形態に係る燃料改質装置10の概略構成図を図1に示す。図1に示されるように、本実施形態に係る燃料改質装置10は、燃料を触媒反応により改質して水素を生成する改質部11と、前記改質部11に燃料を供給する燃料供給手段12と、前記改質部に空気を供給する空気供給手段13と、を備える。また、本実施形態に係る燃料改質装置10は、大気圧よりも高圧力状態で運転されるため、生成した改質ガスの導入が容易である。
【0025】
[燃料]
本実施形態で用いられる燃料は特に限定されず、ガソリン、軽油等、特に限定されない。好ましくは、高炭素価の炭化水素をより多く含有する燃料が用いられ、軽油が特に好ましく用いられる。
【0026】
[改質部11]
改質部11は、第1触媒コンバータ11Aと、この第1触媒コンバータ11Aの下流側に設けられた第2触媒コンバータ11Bと、を備える。第1触媒コンバータ11Aは、第1担体に燃焼触媒が担持されてなり、第2触媒コンバータ11Bは、第2担体に改質触媒が担持されてなることを特徴とする。
【0027】
なお、本実施形態では、第1触媒コンバータ11Aと第2触媒コンバータ11Bとの2段触媒コンバータが採用されているが、このような2段構成に限定されるものではなく、燃料供給路を流通する燃料ガスの流れ方向の上流側に燃焼触媒、下流側に改質触媒が配置された構成であれば特に限定されない。例えば、ゾーンコートにより上流側に燃焼触媒を担持させ、下流側に改質触媒を担持させることにより形成された触媒コンバータを用いることもできる。ただし、上層及び下層といった積層構造では本発明の目的を達成することはできない。
【0028】
燃焼触媒としては特に限定されず、従来公知の燃焼触媒が用いられる。好ましくは、後述する改質触媒より高い耐熱性及び高い酸化性能を有し、且つ、白金、パラジウム、ロジウム、ニッケル、鉄、コバルト、レニウム、スズ、及びゲルマニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属触媒成分と、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、及びマグネシアよりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物又はこれらを基本組成とした複合酸化物と、を含む燃焼触媒が用いられる。例えば、後述する改質触媒を構成する金属触媒成分としてロジウムを用いた場合には、燃焼触媒を構成する金属触媒成分として、白金が好ましく用いられる。
【0029】
改質触媒としては特に限定されず、従来公知の改質触媒が用いられる。好ましくは、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、鉄、及びコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属触媒成分と、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、及びゼオライトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物又はこれらを基本組成とした複合酸化物と、を含む改質触媒が用いられる。
【0030】
第1担体及び第2担体としては特に限定されず、従来公知の担体が用いられるが、第2担体よりも熱伝導率が高い第1担体を用いることが好ましい。特に、第1担体として、メタルハニカム担体又はメタルフォーム担体を用いることが好ましい。なお、改質部の形成にゾーンコートを採用した場合にあっては、第1担体と第2担体は同一の担体であってよい。
【0031】
第1触媒コンバータ11Aは、従来公知の作製方法により作製される。具体的には、燃焼触媒を構成する金属触媒成分と、酸化物又は複合酸化物と、を含むスラリーを調製した後、担体にコーティングして乾燥・焼成することにより作製される。コーティング方法も特に限定されず、浸漬法や塗布法が採用される。
【0032】
第2触媒コンバータ11Bも、従来公知の作製方法により作製される。具体的には、改質触媒を構成する金属触媒成分と、酸化物又は複合酸化物と、を含むスラリーを調製した後、担体にコーティングして乾燥・焼成することにより作製される。コーティング方法も特に限定されず、浸漬法や塗布法が採用される。
【0033】
[燃料供給手段12]
燃料供給手段12は、改質部11に燃料を供給できるものであればよく、特に限定されない。例えば、燃料が貯蔵されている燃料タンクと改質部11とを接続する燃料供給路と、この燃料供給路を通じて燃料を改質部に噴射する噴射器とが用いられる。
【0034】
[空気供給手段13]
空気供給手段13は、改質部11に空気を供給できるものであればよく、特に限定されない、例えば、エアフィルタを介して吸気した空気を改質部11に圧送するコンプレッサが用いられる。
【0035】
また、燃料供給手段12より供給された燃料と、空気供給手段13より供給された空気とを均一に混合し、燃料ガスとしてから改質部11に導入する混合器(図示せず)を備えていることが好ましい。
【0036】
本実施形態に係る燃料改質装置10の作用効果について説明する。先ず、燃料供給手段12より燃料が供給され、空気供給手段13より空気が供給される。供給された燃料及び空気は均一に混合され、燃料ガス化した状態で改質部11内に導入される。導入された燃料ガス中の酸素の少なくとも一部は、燃焼触媒上における燃焼反応に利用される。このため、改質触媒の上流側端部の酸素濃度を低下させることができ、上流側端部における局所的な高温領域の発生を回避できる。これにより、改質触媒におけるシンタリング等の熱劣化を抑制でき、改質触媒の長寿命化が図れる。改質反応は、燃料ガスの混合状態(O/C比又はA/F比)に非常に敏感な反応であるため、改質触媒における熱劣化やコーキング等の問題により負荷応答特性を向上させることが困難であったところ、本実施形態によれば、改質触媒の上流に配置された燃焼触媒がバッファとなって、導入される燃料ガスの変動量を吸収できる結果、改質反応を容易に制御できる。また、改質触媒の反応温度が低下することにより、触媒の選択自由度が向上する。さらには、燃焼反応で生成した反応熱を用い、高炭素価の炭化水素を熱分解して低炭素価の炭化水素に転化することにより、改質効率が向上する。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
[第1触媒コンバータの作製]
ナス型フラスコ内に、アルミナ(住友化学社製AKP−G015)と、このアルミナに対して白金が質量比で2%となるように秤量したジニトロジアミン白金前駆体とを入れた後、イオン交換水を加えた。次いで、ロータリーエバポレーターにより余分な水分を除去した後、乾燥炉にて200℃×2時間、マッフル炉にて600℃×2時間焼成し、粉末Aを得た。
【0039】
上記粉末A、セリア(ニッキ社製 酸化セリウム)、及びAlバインダー(日産化学工業株式会社製 Al濃度20%)がそれぞれ質量比で10:1:1となるように秤量した後、イオン交換水及びアルミナボールとともにポリエチレン製容器に入れ、14時間湿式粉砕してスラリーを得た。
【0040】
上記スラリーに、φ25.4mm×L2mm、600セル/in、30μmのメタル製ハニカム支持体を浸漬させた。次いで、そのハニカム支持体をスラリーから取り出し、過剰分をエア噴射により除去した後、ハニカム支持体を200℃×2時間加熱した。この操作を所定の担持量が得られるまで繰り返した。所定の担持量が得られた後、マッフル炉で500℃×2時間焼成し、第1触媒コンバータを得た。ウォッシュコート量は200g/Lであった。
【0041】
[第2触媒コンバータの作製]
ナス型フラスコ内に、セリア(ニッキ社製 酸化セリウム)と、このセリアに対してロジウムが質量比で1%となるように秤量した硝酸ロジウム溶液とを入れた後、イオン交換水を加えた。次いで、ロータリーエバポレーターにより余分な水分を除去した後、乾燥炉にて200℃×2時間、マッフル炉にて600℃×2時間焼成し、粉末Bを得た。
【0042】
上記粉末Bに対し、Alバインダー(日産化学工業株式会社製 Al濃度20%)が10質量%となるよう秤量した後、イオン交換水及びアルミナボールとともにポリエチレン製容器に入れ、14時間湿式粉砕してスラリーを得た。
【0043】
上記スラリーに、φ25.4mm×L18mm、600セル/in、4ミルのコージェライト製ハニカム支持体を浸漬させた。次いで、そのハニカム支持体をスラリーから取り出し、過剰分をエア噴射により除去した後、ハニカム支持体を200℃×2時間加熱した。この操作を所定の担持量が得られるまで繰り返した。所定の担持量が得られた後、マッフル炉で500℃×2時間焼成し、第2触媒コンバータを得た。ウォッシュコート量は100g/Lであった。
【0044】
[改質性能評価]
改質性能評価は、図3に示されるような改質性能評価装置を用いて行った。上記で得られた第1触媒コンバータ及び/又は第2触媒コンバータを反応器4に充填し、加熱器5により350℃まで加熱した後に、燃料と、酸化剤の空気とを各流量調整器にて所定量になるように調整して触媒に流通させ、改質反応を開始した。反応開始30分後の改質ガスをGC(VARIAN社製「CP4900」)により測定し、改質性能を評価した。このとき、燃料にはChevron Phillips製US認定軽油を使用し、O/Cは1.04であった。GCのカラムには、Molecular Sieve 5A、Unipack Tを用いた。なお、図3において、各流量調整器及び反応器4が、燃料改質装置に相当し、反応器4は、改質触媒の温度を検知可能な温度センサを備える(図示せず)。
【0045】
<実施例1>
本実施例では、上述の燃料改質装置10を用いて改質反応を行い、改質性能を評価した。より詳しくは、本実施例では、反応器(改質部)内の前段(上流側)に上記第1触媒コンバータを配置し、後段(下流側)に上記第2触媒コンバータを直列に配置し、ガスの流れ方向の長さは、第1触媒コンバータ11Aが2mm、第2触媒コンバータ11Bが18mmとした。なお、反応条件として、燃料ガス流量を1.15g/分、空気流量を5L/分としたときを実施例1−1とし、燃料ガス流量を1.60g/分、空気流量を7L/分としたときを実施例1−2とした。
【0046】
<比較例1>
本比較例では、従来の燃料改質装置20を用いて改質反応を行い、改質性能を評価した。本比較例で用いた燃料改質装置20の概略構成図を図2に示した。図2に示されるように、燃料改質装置20では、反応器内に上記第2触媒コンバータのみを単独で配置し、ガスの流れ方向における第2触媒コンバータ21の長さを20mmとした。なお、反応条件として、燃料ガス流量を1.15g/分、空気流量を5L/分としたときを比較例1−1とした。
【0047】
実施例1及び比較例1の改質性能評価結果について説明する。改質性能評価を行ったときの改質触媒の温度分布を、横軸を改質触媒入口からの距離とし、縦軸を改質触媒温度として図4に示した。また、改質触媒温度、水素収率等をまとめたものを表1に示した。
【0048】
【表1】

【0049】
改質触媒の温度を比較すると、比較例1−1が924℃であったのに対し、実施例1−1は873℃であり、燃料ガス投入量が同一であるにも関わらず、低温化していることが確認された。また、燃料ガス投入量を増加させた実施例1−2の改質触媒の温度は927℃で比較例1−1と同程度の温度であるにも関わらず、水素の生成量が比較例1−1の1.4L/分よりも多い2.0L/分であることが確認された。これにより、本発明の有効性が証明された。
【0050】
<試験例1>
比較例1で用いた燃料改質装置20を利用し、改質反応における酸素濃度依存性を調べた。反応条件として、燃料ガス流量を1.15g/分、O/Cを1.04に統一したうえで、空気5L/分(酸素濃度20%)としたときを試験例1−1、空気5L/分+窒素5L/分(酸素濃度10%)としたときを試験例1−2、空気5L/分+窒素15L/分(酸素濃度5%)としたときを試験例1−3とした。本試験例における触媒の温度分布を、横軸を触媒入口からの距離とし、縦軸を触媒温度として図5に示した。また、触媒温度、水素収率等をまとめたものを表2に示した。
【0051】
【表2】

【0052】
図5及び表2に示されるように、酸素濃度が低下するにつれて触媒温度が低下していることが確認された。また、触媒温度の低下により、改質性能の低下が見られるが、この点に関しては、燃料投入量を増加させたり、触媒のサイズを大きくすることにより反応温度を上昇させることができるため問題にはならない。酸素濃度を5%まで低下させると、発熱量と熱引けの関係から自己発熱反応を維持することが困難となり、改質性能が低下してしまうからである。従って、導入酸素濃度は、大気中の20%より少なく、また、5%程度までの範囲で使用するのが好ましいといえる。
【0053】
<試験例2>
試験例1の結果から、酸素濃度を制御して低下させることにより、触媒の温度を低温化できることが証明された。そこで、比較例1で用いた燃料改質装置20を利用し、燃料ガス(燃料+空気)の投入量を増加して反応温度を上昇させ、改質効率を向上させるとともに、改質ガス生成量を増加させることができることを証明した。反応条件としては、酸素濃度を10%で一定とし、燃料ガス(燃料+空気)投入量を変化させて改質性能評価を行った。具体的には、燃料を1.15g/分、空気を10L/分としたときを試験例2−1、燃料を1.73g/分、空気を15L/分としたときを試験例2−2、燃料を2.30g/分、空気を20L/分としたときを試験例2−3とした。本試験例における触媒の温度分布を、横軸を触媒入口からの距離とし、縦軸を触媒温度として図6に示した。また、触媒温度、水素収率等をまとめたものを表3に示した。
【0054】
【表3】

【0055】
図6及び表3に示されるように、触媒の耐熱温度である1000℃以下の範囲内を維持したまま、水素生成量を1.4L/分から2.7L/分まで向上できることが証明された。この結果から、触媒に導入する燃料ガス中の酸素濃度を低減することにより、急激な触媒温度の上昇により生ずる触媒劣化を回避でき、また、燃料ガス投入量を増加することにより、改質ガス生成能力の向上を図ることができることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施形態の燃料改質装置の概略構成図である。
【図2】従来の燃料改質装置の概略構成図である。
【図3】改質性能評価装置を示す図である。
【図4】実施例1と比較例1の評価結果を示す図である。
【図5】試験例1の評価結果を示す図である。
【図6】試験例2の評価結果を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
10、20 燃料改質装置
11、21 改質部
11A 第1触媒コンバータ
11B 第2触媒コンバータ
12、22 燃料供給手段
13、23 空気供給手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を触媒反応により改質して水素を生成する改質部と、前記改質部に燃料を供給する燃料供給手段と、前記改質部に空気を供給する空気供給手段と、を備える燃料改質装置であって、
前記改質部が、第1担体に燃焼触媒が担持されてなる第1触媒コンバータと、この第1触媒コンバータの下流側に設けられ、且つ第2担体に改質触媒が担持されてなる第2触媒コンバータと、を備え、大気圧よりも高圧力状態で運転することを特徴とする燃料改質装置。
【請求項2】
前記燃焼触媒が、前記改質触媒より高い耐熱性及び高い酸化性能を有し、且つ、白金、パラジウム、ニッケル、鉄、コバルト、レニウム、スズ、及びゲルマニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属触媒成分と、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、及びマグネシアよりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物又はこれらを基本組成とした複合酸化物と、を含むことを特徴とする請求項1記載の燃料改質装置。
【請求項3】
前記第1担体が、前記第2担体よりも熱伝導率が高いことを特徴とする請求項1又は2記載の燃料改質装置。
【請求項4】
前記第1担体が、メタルハニカム担体又はメタルフォーム担体であることを特徴とする請求項1から3いずれか記載の燃料改質装置。
【請求項5】
前記改質触媒が、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、鉄、及びコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属触媒成分と、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、及びゼオライトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物又はこれらを基本組成とした複合酸化物と、を含むことを特徴とする請求項1から4いずれか記載の燃料改質装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−179504(P2009−179504A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18888(P2008−18888)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】