説明

燃料注入用チェックバルブ

【課題】従来より製造コストを下げることが可能な燃料レセプタバルブを提する。
【解決手段】本発明に係る燃料レセプタバルブ10では、バルブベース11を構成する第1と第2のバルブベース構成部品20,30のうち、第1バルブベース構成部品30は、バルブベース11のうち燃料タンク96の内圧を常時受ける常時燃料受圧面の全てを有する一方、第2バルブベース構成部品20は、常時燃料受圧面を有しないので、第1バルブベース構成部品30のみを高耐脆性金属で構成し、第2バルブベース構成部品20は通常金属で構成することができる。即ち、本発明によれば、従来のように、第2バルブベース構成部品20まで高耐脆性金属で構成する必要がなくなり、第2バルブベース構成部品20を通常金属で構成して、燃料注入用チェックバルブ10の製造コストを下げることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用の燃料タンクの燃料注入口に固定され、燃料タンク内に向けた高圧流体燃料の注入を許容し、その逆流を規制する燃料注入用チェックバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料注入用チェックバルブとして、ガソリン車の給油口に相当する燃料電池搭載車両の燃料注入口に固定されるものが知られている。その一例として図7に示した従来の燃料注入用チェックバルブは、バルブベース3が第1と第2のバルブベース構成部品1,2を結合してなる。その第2バルブベース構成部品2には、燃料供給スタンドの燃料供給プラグ9が接続されるレセプタクル突部2Aが備えられている。一方、第1のバルブベース構成部品1には、車両の燃料タンクにおける燃料注入口に固定されるタンク側接部1Aが備えられている。そして、第2バルブベース構成部品2の内部に、フィルタ部材4、弁座部材5が嵌合される一方、第1バルブベース構成部品2の内部に逆止弁機構6が内蔵された状態で、第1と第2のバルブベース構成部品1,2が結合されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−232361号公報(段落[0002]、図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水素に代表される高圧流体燃料に金属が常時晒されると、脆性が問題となる。また、高圧流体燃料に対する耐脆性が比較的高い高耐脆性金属は、通常の金属に比べて高価である。
【0005】
ところが、上記した従来の燃料注入用チェックバルブでは、燃料タンクの燃料注入口に固定される第1バルブベース構成部品1のみならず、燃料供給プラグ9に接続される第2バルブベース構成部品2も高圧流体燃料に常時晒される構成になっていた。具体的には、第1バルブベース構成部品1の中心貫通路1Kから側方の延びた分岐孔1Bや、第1バルブベース構成部品1と弁座部材5との金属接合面の隙間1Sを介して、第1バルブベース構成部品1の中心貫通路1K内の高圧流体燃料が第2バルブベース構成部品2の内面にも到達し、第1と第2のバルブベース構成部品1,2の両方が高圧流体燃料に常時晒される構成になっていた。このため、第1と第2のバルブベース構成部品1,2の両方を高耐脆性金属で構成する必要が生じ、燃料注入用チェックバルブの製造コストが高くなっていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より製造コストを下げることが可能な燃料注入用チェックバルブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る燃料注入用チェックバルブ(10)は、燃料電池用の燃料タンク(96)の燃料注入口(96A)に固定されるバルブベース(11)と、バルブベース(11)に貫通形成され、燃料タンク(96)内へと高圧流体燃料を注入するためのベース貫通流路(24)と、バルブベース(11)に直動可能に保持され、通常は、燃料タンク(96)の内圧を受けてベース貫通流路(24)を閉塞する閉位置に配置される一方、燃料タンク(96)内に向けて高圧流体燃料が注入されたときには、その注入圧を受けてベース貫通流路(24)を開通させる開位置に移動する弁体(51)とを備えた燃料注入用チェックバルブ(10)において、バルブベース(11)は、ベース貫通流路(24)が共に貫通形成された第1と第2のバルブベース構成部品(20,30)を結合してなり、第1バルブベース構成部品(30)は、バルブベース(11)のうち燃料タンク(96)の内圧を弁体(51)の位置に拘わらず常時受ける常時燃料受圧面の全てを有しかつ、高圧流体燃料に対する耐脆性が比較的高い高耐脆性金属で構成され、第2バルブベース構成部品(20)は、常時燃料受圧面を有さず、高耐脆性金属より耐脆性が比較的低い通常金属で構成されたところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の燃料注入用チェックバルブ(10)において、第2バルブベース構成部品(20)を筒形構造にして、その内側のベース貫通流路(24)内に異物を堰き止めるためのフィルタ(54A)を収容し、フィルタ(54A)を、通常金属で構成したところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の燃料注入用チェックバルブ(10W)において、第1バルブベース構成部品(30W)のベース貫通流路(24)を、中間部で燃料タンク(96)の燃料注入口(96A)側に向けて段付き状により拡径して形成した弁口用段差面(71D)と、第1バルブベース構成部品(30W)の一部として設けられ、ベース貫通流路(24)のうち弁口用段差面(71D)と対向する位置に挿入固定されると共に、ベース貫通流路(24)の一部としての貫通孔(70B)を有したバネ受用栓部材(70)と、弁口用段差面(71D)とバネ受用栓部材(70)との間に形成され、内部に弁体(51)を収容した弁体収容部屋(72)と、弁口用段差面(71D)に配置されたベース貫通流路(24)の開口である弁口(53A)と、弁体収容部屋(72)に収容されて、弁体(51)が弁口(53A)を閉塞するように付勢する弁体付勢バネ(50)と、第1バルブベース構成部品(30W)のうち燃料注入口(96A)から離れた側の端部に設けられ、第2バルブベース構成部品(20)が結合される部品間結合部(31N,63N)とを備え、弁体付勢バネ(50)を高耐脆性金属で構成したところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の燃料注入用チェックバルブ(10)において、第1バルブベース構成部品(30)のベース貫通流路(24)を、中間部で燃料タンク(96)の燃料注入口(96A)から離れる側に向けて段付き状により拡径して形成したバネ受用段差面(50D)と、第1バルブベース構成部品(30)の一部として設けられ、ベース貫通流路(24)のうちバネ受用段差面(50D)と対向する位置に挿入固定されると共に、ベース貫通流路(24)の一部としての貫通孔(53C)を有した弁口用栓部材(53)と、バネ受用段差面(50D)と弁口用栓部材(53)との間に形成され、内部に弁体(51)を収容した弁体収容部屋(50B)と、弁口用栓部材(53)の弁体収容部屋(50B)側の端面に配置された貫通孔(53C)の開口である弁口(53A)と、弁体収容部屋(50B)に収容されて、弁体(51)が弁口(53A)を閉塞するように付勢する弁体付勢バネ(50)と、第1バルブベース構成部品(30)のうち燃料注入口(96A)から離れた側の端部に設けられ、第2バルブベース構成部品(20)が結合される部品間結合部(26,35A)とを備え、弁体付勢バネ(50)を高耐脆性金属で構成したところに特徴を有する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の燃料注入用チェックバルブ(10)において、高耐脆性金属は、SUH660であるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1の燃料注入用チェックバルブ(10)では、バルブベース(11)を構成する第1と第2のバルブベース構成部品(20,30)のうち、第1バルブベース構成部品(30)は、バルブベース(11)のうち燃料タンク(96)の内圧を常時受ける常時燃料受圧面の全てを有する一方、第2バルブベース構成部品(20)は、常時燃料受圧面を有しないので、バルブベース(11)のうち第1バルブベース構成部品(30)のみを高耐脆性金属で構成し、第2バルブベース構成部品(20)は通常金属で構成することができる。即ち、本発明によれば、従来のように、第2バルブベース構成部品(20)まで高耐脆性金属で構成する必要がなくなり、第2バルブベース構成部品(20)を通常金属で構成して、燃料注入用チェックバルブ(10)の製造コストを下げることが可能になる。また、その通常金属を選定する場合に、耐水素脆性より高強度であることを選定条件することで、第2バルブベース構成部品(20)の薄肉化や小型化を図ることもできる。
【0013】
[請求項2の発明]
請求項2の燃料注入用チェックバルブ(10)によれば、高圧流体燃料に混入した異物を、第2バルブベース構成部品(20)内のフィルタ(54A)にて堰き止めることができる。
【0014】
[請求項3及び4の発明]
請求項3及び4の燃料注入用チェックバルブ(10,10W)によれば、弁体付勢バネ(50)にて、弁体(51)が弁口(53A)を閉塞するように付勢しているので、燃料タンク(96)の内圧の大小に拘わらず、確実に弁口(53A)を閉塞することができる。
【0015】
[請求項5の発明]
請求項5の構成のように高耐脆性金属をSUH660とすれば、高耐脆性金属が水素である場合に、高い耐脆性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料注入用チェックバルブが燃料供給プラグと接続した状態の側断面図
【図2】燃料注入用チェックバルブの側断面図
【図3】第2実施形態の燃料注入用チェックバルブの側断面図
【図4】第3実施形態の燃料注入用チェックバルブの側断面図
【図5】第4実施形態の燃料注入用チェックバルブの側断面図
【図6】変形例(1)の本発明に係る燃料注入用チェックバルブの側断面図
【図7】従来の燃料注入用チェックバルブの側断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。図1には、燃料電池を搭載した車両99の燃料注入部屋98が示されている。この燃料注入部屋98は、車両99の外面に陥没形成されて、その開口部が開閉蓋97にて開閉されるようになっている。燃料注入部屋98の奥壁90には、バルブ装着孔91が貫通形成され、そこに本実施形態の燃料注入用チェックバルブ10(以下、単に「チェックバルブ10」という)が挿通されている。また、車両99には、燃料注入部屋98内から離れた位置に燃料電池用の燃料タンク96が搭載され、その燃料タンク96からは延長パイプ95が燃料注入部屋98の裏側近傍まで延びている。そして、その延長パイプ95の先端部に、本発明に係る燃料タンク96の燃料注入口96Aになっていて、その燃料注入口96Aにチェックバルブ10のバルブベース11が固定されている。そして、ガソリンスタンドに相当する燃料供給スタンドに備えた燃料供給プラグ80がチェックバルブ10に連結され、燃料供給プラグ80から吐出された高圧流体燃料(例えば、液体水素)が、チェックバルブ10内を通して燃料タンク96に注入される。
【0018】
詳細には、チェックバルブ10は、バルブベース11の中心にベース貫通流路24を備え、そのベース貫通流路24の中間部にフィルタ部品54、弁体51、圧縮コイルバネ50等を収容した構造になっている。また、図2に示すように、バルブベース11は、第1バルブベース構成部品30と第2バルブベース構成部品20とを結合してなる。第2バルブベース構成部品20は、全体が円筒状になっており、その内側はベース貫通流路24になっている。第2バルブベース構成部品20の先端寄り位置には、外周面にプラグ係止溝21が形成されている。また、第2バルブベース構成部品20の基端寄り位置には雄側ベース螺合部26が形成され、その雄側ベース螺合部26より基端側には、雄側ベース螺合部26より外径が僅かに小さくなったフランジ押部27が備えられている。そして、第2バルブベース構成部品20のうち雄側ベース螺合部26よりプラグ係止溝21側が、燃料供給プラグ80に着脱可能に連結されるレセプタクル突部23になっている。
【0019】
第2バルブベース構成部品20のベース貫通流路24は、フランジ押部27側の端部からプラグ係止溝21寄り位置に亘る範囲が、比較的内径が大きいフィルタ収容部24Dになっており、そのフィルタ収容部24Dの端部より先端側が比較的内径が小さいノズル突入部24Cになっている。また、ノズル突入部24Cのうちフィルタ収容部24Dと反対側の端部には、ノズル突入部24Cより大径のノズル導入部24Aが備えられ、それらノズル導入部24Aとノズル突入部24Cとの境界部分にOリング溝24Bが形成されて、そこにOリング25が収容されている。
【0020】
レセプタクル突部23に結合される燃料供給プラグ80は以下の構成になっている。即ち、燃料供給プラグ80は、図1に示すように、プラグスリーブ82とその外側に嵌合されて直動する直動スリーブ81と、プラグスリーブ82の内側に固定されたノズル84とを備えている。直動スリーブ81には、レセプタクル突部23のプラグ係止溝21に対応した部分に複数のボール孔82Aが貫通成形され、各ボール孔82Aにそれぞれ係合ボール83が受容された状態で直動スリーブ81が係合ボール83を外側から覆っている。
【0021】
また、直動スリーブ81の先端内側には、ボール受容溝81Aが形成されると共に、直動スリーブ81は、ボール受容溝81Aが係合ボール83からプラグスリーブ82の先端側にずれた原点位置に配置されるように付勢されている。そして、ボール受容溝81Aとボール孔82Aとが対向する位置まで直動スリーブ81を引いた状態でプラグスリーブ82をレセプタクル突部23の外側に嵌合すると、ノズル84がレセプタクル突部23内に挿入されてOリング25がノズル84とレセプタクル突部23の内面との間を密閉する。
【0022】
また、ボール孔82Aがプラグ係止溝21に対向した状態で直動スリーブ81を原点位置に戻すと、係合ボール83がプラグ係止溝21に係合して抜け止め状態になる。この状態でノズル84の先端から高圧流体燃料が吐出され、チェックバルブ10のベース貫通流路24内を高圧流体燃料が流れる。
【0023】
第1バルブベース構成部品30は、全体が筒状になっており、その内側はベース貫通流路24になっている。第1バルブベース構成部品30の外側面は、第2バルブベース構成部品20側の端部から順番に円筒嵌合部31、固定フランジ32、工具係合部33及びタンク側接続部34になっている。
【0024】
工具係合部33は、例えば、平面形状正六角形になっていて、その端面中心部からタンク側接続部34が突出している。また、タンク側接続部34の外周面には雄螺子34Aが形成されている。これに対し、図1に示すように、燃料タンク96の燃料注入口96Aにおける内面には雌螺子95Mが形成されている。そして、例えば、タンク側接続部34の雄螺子34Aにシールテープ(図示せず)を巻き付けた状態で、そのタンク側接続部34の雄螺子34Aが延長パイプ95の雌螺子95Aに螺合されて、チェックバルブ10が燃料タンク96の燃料注入口96Aに固定されている。なお、工具係合部33にスパナ等の工具を係合させることで、タンク側接続部34と燃料注入口96Aとの螺合操作を容易に行うことができる。
【0025】
固定フランジ32は、円筒嵌合部31及び工具係合部33より側方に張り出し、固定フランジ32における複数位置には、複数の螺子孔32Aが貫通成形されている。そして、チェックバルブ10における円筒嵌合部31を、燃料注入部屋98の奥壁90における裏側からバルブ装着孔91に嵌合して固定フランジ32を奥壁90の裏面に押し付け、奥壁90に貫通形成された螺子挿通孔92を通したボルト93を固定フランジ32の各螺子孔32Aに締め付けることで、チェックバルブ10が奥壁90に固定されている。
【0026】
図2に示すように、第1バルブベース構成部品30のベース貫通流路24は、第2バルブベース構成部品20側に向かうに従って段付き状に徐々に拡径し、それら段差面を境界にしてベース貫通流路24内が、第2バルブベース構成部品20側から順番に雌側ベース螺合部35A、フランジ収容部35B、Oリング収容部35C、栓嵌合部35D、弁体バネ収容部35E及び排出部35Fになっている。また、排出部35Fと弁体バネ収容部35Eとの段差面が本発明に係るバネ受用段差面50Dになっている。
【0027】
ベース貫通流路24のうち排出部35Fを除いた部分には、雌側ベース螺合部35A側から、圧縮コイルバネ50(本発明の「弁体付勢バネ」に相当する)、弁体51、Oリング52、弁口用栓部材53及びフィルタベース盤54Bが順番に挿入組み付けされ、最後に、第2バルブベース構成部品20の雄側ベース螺合部26が雌側ベース螺合部35Aに螺合結合されている。なお、第2バルブベース構成部品20の雄側ベース螺合部26と第1バルブベース構成部品30の雌側ベース螺合部35Aとは、例えば、接着剤によって螺合状態で固定されている。
【0028】
弁口用栓部材53は、第1バルブベース構成部品30の一部として備えられ、栓嵌合部35Dに嵌合された円柱状をなし、中心には、貫通孔53Cがベース貫通流路24の一部として成形されている。そして、弁口用栓部材53の貫通孔53Cのうちバネ受用段差面50D側を向いた開口が、本発明に係る弁口53Aになっており、その弁口53Aの開口縁が弁座53Bになっている。
【0029】
弁口用栓部材53の外周面における上流側の端部には、バックアップリング53Fが嵌合されている。そして、Oリング収容部35Cの下流側端面とバックアップリング53Fとの間の環状スペースにOリング52が押し潰された状態で収容されている。そして、弁口用栓部材53とバネ受用段差面50Dとに挟まれた弁体バネ収容部35E内の空間が、本発明に係る弁体収容部屋50Bになって、そこに弁体51と圧縮コイルバネ50とが収容されている。
【0030】
弁体51は、円柱部51Aの一端面に円錐部51Bを備える一方、他端面の中央からエンボス部51Cを突出させた形状になっている。そして、弁体51は、エンボス部51Cをバネ受用段差面50D側に向けた状態にされて、その弁体51の円柱部51Aにおけるエンボス部51C周りの端面と、バネ受用段差面50Dとの間で圧縮コイルバネ50が突っ張り状態になって弁体51を弁口53Aに向けて付勢している。
【0031】
フィルタベース盤54Bは、中心に中央貫通孔54Eを有した円盤状になている。そして、第2バルブベース構成部品20の雄側ベース螺合部26を第1バルブベース構成部品30の雌側ベース螺合部35Aに締め付けることで、フィルタベース盤54Bと弁口用栓部材53とがバルブベース11内に固定されている。
【0032】
フィルタベース盤54Bのうち弁口用栓部材53と反対側の端面からはフィルタ筒部54A(本発明の「フィルタ」に相当する)が突出している。そして、これらフィルタベース盤54Bとフィルタ筒部54Aとからフィルタ部品54が構成されている。そのフィルタ筒部54Aは先端面を先端壁54Dにて閉塞され、全体に複数の流体通過孔54Cが穿孔された円筒構造になっている。そして、フィルタ筒部54Aは、第2バルブベース構成部品20のフィルタ収容部24D内に遊嵌されている。
【0033】
さて、本実施形態のチェックバルブ10では、高圧流体燃料に対する耐脆性を考慮して、上記したチェックバルブ10の各構成部品は以下の材料で構成されている。即ち、チェックバルブ10の構成部品のうち第1バルブベース構成部品30と、その一部としての弁口用栓部材53と、弁体51と、圧縮コイルバネ50とは、高圧流体燃料に対する耐脆性が比較的高い高耐脆性金属(例えば、SUH660)で構成され、それら以外の残りの構成部品である第2バルブベース構成部品20と、フィルタ部品54とは、高耐脆性金属より耐脆性が比較的低い通常金属(例えば、S45C,SUS303)で構成されている。
【0034】
本実施形態の構成に関する説明は以上である。次に、本実施形態の作用効果について説明する。図1に示すように、燃料供給プラグ80をチェックバルブ10に接続して燃料供給プラグ80から高圧流体燃料を注入すると、その注入圧によって図2に示した弁体51が弁座53Bから離れた開位置に移動して弁口53Aが開き、高圧流体燃料がチェックバルブ10における第1と第2のバルブベース構成部品20,30のベース貫通流路24を通過し、図1に示した燃料タンク96に充填される。このとき、高圧流体燃料と共に異物がベース貫通流路24に進入した場合には、フィルタ筒部54Aによって堰き止められる。
【0035】
燃料供給プラグ80からの高圧流体燃料の供給を止めると、燃料タンク96内の高圧流体燃料の内圧と圧縮コイルバネ50の弾発力とによって、図2に示すように、弁体51が弁座53Bに押し付けられた閉位置に移動して弁口53Aが閉じる。すると、第1と第2のバルブベース構成部品20,30のうち第1バルブベース構成部品30のみが燃料タンク96内の高圧流体燃料の圧力を受け、第2バルブベース構成部品20は高圧流体燃料の圧力を受けない状態になる。即ち、本実施形態のチェックバルブ10では、バルブベース11を構成する第1と第2のバルブベース構成部品20,30のうち、第1バルブベース構成部品30は、バルブベース11のうち燃料タンク96の内圧を弁体51の位置に拘わらず常時受ける常時燃料受圧面の全てを有する一方、第2バルブベース構成部品20は、常時燃料受圧面を有しない構成になている。これにより、バルブベース11のうち第1バルブベース構成部品30のみを高耐脆性金属で構成し、第2バルブベース構成部品20は通常金属で構成することができる。つまり、本実施形態のチェックバルブ10では、従来のように、第2バルブベース構成部品20まで高耐脆性金属で構成する必要がなくなり、第2バルブベース構成部品20を通常金属で構成して、燃料注入用チェックバルブ10の製造コストを下げることが可能になる。また、その通常金属を選定する場合に、耐水素脆性より高強度であることを選定条件することで、第2バルブベース構成部品20の薄肉化して、その分、フィルタ収容部24Dの内径を大きくすることができる。これにより、フィルタ筒部54Aを大型化して、フィルタ筒部54Aにおける流体通過面積を広くし、高圧流体燃料の注入可能な最大流量を上げることができる。さらに、本実施形態のチェックバルブ10では、燃料タンク96から高圧流体燃料を抜いた状態で第1バルブベース構成部品30から第2バルブベース構成部品20を取り外せば、第1バルブベース構成部品30を燃料注入部屋98の奥壁90及び延長パイプ95に固定した状態で、チェックバルブ10内のフィルタ部品54、弁口用栓部材53等の部品を交換することができる。
【0036】
なお、従来のチェックバルブ(図7参照)のように、第2バルブベース構成部品内にフィルタ部品を挿入した後に弁口用栓部材を挿入する構成にすると、弁口用栓部材53よりフィルタ部品54を小さくしなければならないが、本実施形態のチェックバルブ10では、弁口用栓部材53が第1バルブベース構成部品30内に嵌合される一方、フィルタ部品54は第2バルブベース構成部品20に嵌合される構造になっているので、弁口用栓部材53よりフィルタ部品54(特に、フィルタ筒部54A)の径を大きくすることができる。
【0037】
[第2実施形態]
本実施形態のチェックバルブ10Vは、図3に示されており、第1バルブベース構成部品30Vと第2バルブベース構成部品20Vとの結合部分が第1実施形態と異なる。本実施形態の第1バルブベース構成部品30Vは、工具係合部33より第2バルブベース構成部品20V側に結合軸部31Vを備え、その結合軸部31Vの外周面に雄側ベース螺合部31Nが形成されている。また、結合軸部31Vの端面には、前記第1実施形態で説明したOリング収容部35Cが開放している。
【0038】
一方、第2バルブベース構成部品20Vのベース貫通流路24には、前記したフィルタ収容部24Dより第1バルブベース構成部品30V側に、フランジ収容部63L、雌側ベース螺合部63Nが形成されている。そして、フランジ収容部63Lにフィルタベース盤54Bが嵌合された状態で、雌側ベース螺合部63Nに前記雄側ベース螺合部31Nが螺合し、第1と第2のバルブベース構成部品20V,30Vが結合されている。また、第2バルブベース構成部品20Vには、前記第1実施形態の円筒嵌合部31、固定フランジ32に相当する円筒嵌合部61、固定フランジ62が備えられ、固定フランジ62に複数の螺子孔62Aが貫通形成されている。さらに、円筒嵌合部61とレセプタクル突部23との間には、断面が正六角形の工具係合部60が備えられている。上記以外の構成は、第1実施形態と同様であるので重複した説明は省略する。本実施形態のチェックバルブ10Vによっても、第1実施形態のチェックバルブ10と同様の作用効果を奏する。
【0039】
[第3実施形態]
本実施形態のチェックバルブ10Wは、図4に示されており、第1バルブベース構成部品30Wの構造が主として第2実施形態と異なる。以下、第2実施形態と異なる構成に関してのみ説明する。本実施形態の第1バルブベース構成部品30Wのベース貫通流路24は、第2バルブベース構成部品20Vから離れるに従って内径が段付き状に徐々に拡径し、それら段差面を境界にしてベース貫通流路24内が、第2バルブベース構成部品20側から順番に小径部71A、中径部71B、大径部71Cになっている。そして、小径部71Aと中径部71Bとの段差面が本発明に係る弁口用段差面71Dになっていて、その弁口用段差面71Dにおけるベース貫通流路24の開口が、本発明に係る弁口53Aになっている。
【0040】
大径部71Cのうち中径部71B側の端部には、本発明に係るバネ受用栓部材70が圧入され、バネ受用栓部材70と弁口用段差面71Dとの間の領域が弁体収容部屋72になっている。このバネ受用栓部材70は、第1バルブベース構成部品30Wの一部として備えられ、中心には第1バルブベース構成部品30Wのベース貫通流路24の一部としての貫通孔70Bが形成されている。また、バネ受用栓部材70のうち弁口用段差面71Dとの対向面には、貫通孔70Bの開口縁からエンボス70Aが突出している。そして、弁体収容部屋72内で、圧縮コイルバネ50の一端部がエンボス70Aの外側に嵌合された状態で、圧縮コイルバネ50の他端部が弁体51を弁口53Aに向けて付勢している。その他の構成に関しては、第2実施形態と同様である。本実施形態のチェックバルブ10Wによっても、第1及び第2の実施形態のチェックバルブ10,10Vと同様の作用効果を奏する。
【0041】
[第4実施形態]
本実施形態のチェックバルブ10Xは、図5示されており、フィルタ部品54を備えていない点と、第1と第2のバルブベース構成部品20X,30Xの結合構造が主として第3実施形態と異なる。以下、第2実施形態と異なる構成に関してのみ説明する。本実施形態の第2バルブベース構成部品20Xのベース貫通流路24は、ノズル突入部24Cが第1バルブベース構成部品30X寄り位置まで延び、そこで段付き状に拡径して圧入部24Fになっている。第1バルブベース構成部品30Xは、円柱構造部31Fの一端面からタンク側接続部34を突出させた構造をなし、その円柱構造部31Fが上記圧入部24Fに圧入されている。その他の構成に関しては、第3実施形態と同様である。
【0042】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0043】
(1)前記第1〜第4の実施形態では、圧縮コイルバネ50が高圧流体燃料の圧力を常時受ける位置に配置されていたが、高圧流体燃料の圧力を常時受けない位置に圧縮コイルバネ50を配置してもよい。具体的には、例えば、図6に示すように、第4実施形態で説明したチェックバルブ10Xを変形し、そのチェックバルブ10Xにおけるベース貫通流路24の小径部71Aの下流側に弁体51Yを配置する一方、小径部71Aより上流側に係止部材51Zを配置する。そして、小径部71Aに遊嵌した連結シャフト51Jにてそれら弁体51Yと係止部材51Zとを連結し、圧縮コイルバネ50を小径部71Aの上流側の開口縁と、係止部材51Zとの間で突っ張り状態に設けた構成にしてもよい。この構成によれば、圧縮コイルバネ50を、高圧流体燃料の圧力を常時受けない位置に配置することができ、圧縮コイルバネ50を通常の金属で構成することができる。
【0044】
(2)前記第1〜第4の実施形態では、第1と第2のバルブベース構成部品が螺合結合又は圧入結合されていたが、ろう付け、溶接で第1と第2のバルブベース構成部品を結合してもよい。
【0045】
(3)前記第1実施形態では、車両に搭載されたチェックバルブ10を例示したが、例えば、工場や高圧流体燃料を供給するための燃料供給スタンド等に設置された燃料電池用の燃料タンクの燃料注入口に固定されるチェックバルブも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
(4)前記第1実施形態のチェックバルブ10は、第1バルブベース構成部品30が延長パイプ95を介して燃料タンク96に常時接続されていたが、燃料タンクに第2のバルブベース構成部品を直接接続した構成にしてもよい。
【0047】
(5)また、延長パイプ又は燃料タンクに螺合結合されていたが、第2のバルブベース構成部品を溶接又はろう着けしてもよい。
【0048】
(6)前記第1実施形態では、Oリング52が、弁口用栓部材53の外周面と第1バルブベース構成部品30の内周面との間に装着されていたが、弁座部材と第2のバルブベース構成部品とにおける軸方向の対向面間に環状シール部材を配置してもよい。
【0049】
(7)前記第1実施形態では、フィルタ部品54のフィルタベース盤54Bが第1と第2のバルブベース構成部品20,30の間に挟持されていたが、バルブベースに対するフィルタ部品の構造はどのようなものであってもよい。例えば、フィルタベース盤54Bを小型化してフィルタ収容部24Dに圧入してもよい。
【0050】
(8)前記第1実施形態では、高耐脆性金属として「SUH660」を使用していたが、高耐脆性金属として「SUS420」,「SUS431」を使用してもよい。また、高耐脆性金属として「SUH660」を使用し、その「SUH660」より耐脆性が比較的低い通常金属として「SUS420」,「SUS431」を使用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10,10V,10W,10X 燃料注入用チェックバルブ
11 バルブベース
20,20V,20X 第2バルブベース構成部品
23 レセプタクル突部
24 ベース貫通流路
30,30V,30W,30X 第1バルブベース構成部品
50 圧縮コイルバネ(弁体付勢バネ)
50B 弁体収容部屋
50D バネ受用段差面
51,51Y 弁体
53 弁口用栓部材
53A 弁口
53C 貫通孔
54A フィルタ筒部(フィルタ)
70 バネ受用栓部材
70B 貫通孔
71D 弁口用段差面
72 弁体収容部屋
80 燃料供給プラグ
96 燃料タンク
96A 燃料注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用の燃料タンク(96)の燃料注入口(96A)に固定されるバルブベース(11)と、
前記バルブベース(11)に貫通形成され、前記燃料タンク(96)内へと高圧流体燃料を注入するためのベース貫通流路(24)と、
前記バルブベース(11)に直動可能に保持され、通常は、前記燃料タンク(96)の内圧を受けて前記ベース貫通流路(24)を閉塞する閉位置に配置される一方、前記燃料タンク(96)内に向けて高圧流体燃料が注入されたときには、その注入圧を受けて前記ベース貫通流路(24)を開通させる開位置に移動する弁体(51)とを備えた燃料注入用チェックバルブ(10)において、
前記バルブベース(11)は、前記ベース貫通流路(24)が共に貫通形成された第1と第2のバルブベース構成部品(20,30)を結合してなり、
前記第1バルブベース構成部品(30)は、前記バルブベース(11)のうち前記燃料タンク(96)の内圧を前記弁体(51)の位置に拘わらず常時受ける常時燃料受圧面の全てを有しかつ、高圧流体燃料に対する耐脆性が比較的高い高耐脆性金属で構成され、
前記第2バルブベース構成部品(20)は、前記常時燃料受圧面を有さず、前記高耐脆性金属より前記耐脆性が比較的低い通常金属で構成されたことを特徴とする燃料注入用チェックバルブ(10)。
【請求項2】
前記第2バルブベース構成部品(20)を筒形構造にして、その内側の前記ベース貫通流路(24)内に異物を堰き止めるためのフィルタ(54A)を収容し、前記フィルタ(54A)を、前記通常金属で構成したことを特徴とする請求項1に記載の燃料注入用チェックバルブ(10)。
【請求項3】
前記第1バルブベース構成部品(30W)の前記ベース貫通流路(24)を、中間部で前記燃料タンク(96)の前記燃料注入口(96A)側に向けて段付き状により拡径して形成した弁口用段差面(71D)と、
前記第1バルブベース構成部品(30W)の一部として設けられ、前記ベース貫通流路(24)のうち前記弁口用段差面(71D)と対向する位置に挿入固定されると共に、前記ベース貫通流路(24)の一部としての貫通孔(70B)を有したバネ受用栓部材(70)と、
前記弁口用段差面(71D)と前記バネ受用栓部材(70)との間に形成され、内部に前記弁体(51)を収容した弁体収容部屋(72)と、
前記弁口用段差面(71D)に配置された前記ベース貫通流路(24)の開口である弁口(53A)と、
前記弁体収容部屋(72)に収容されて、前記弁体(51)が前記弁口(53A)を閉塞するように付勢する弁体付勢バネ(50)と、
前記第1バルブベース構成部品(30W)のうち前記燃料注入口(96A)から離れた側の端部に設けられ、前記第2バルブベース構成部品(20)が結合される部品間結合部(31N,63N)とを備え、
前記弁体付勢バネ(50)を前記高耐脆性金属で構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料注入用チェックバルブ(10W)。
【請求項4】
前記第1バルブベース構成部品(30)の前記ベース貫通流路(24)を、中間部で前記燃料タンク(96)の前記燃料注入口(96A)から離れる側に向けて段付き状により拡径して形成したバネ受用段差面(50D)と、
前記第1バルブベース構成部品(30)の一部として設けられ、前記ベース貫通流路(24)のうち前記バネ受用段差面(50D)と対向する位置に挿入固定されると共に、前記ベース貫通流路(24)の一部としての貫通孔(53C)を有した弁口用栓部材(53)と、
前記バネ受用段差面(50D)と前記弁口用栓部材(53)との間に形成され、内部に前記弁体(51)を収容した弁体収容部屋(50B)と、
前記弁口用栓部材(53)の前記弁体収容部屋(50B)側の端面に配置された前記貫通孔(53C)の開口である弁口(53A)と、
前記弁体収容部屋(50B)に収容されて、前記弁体(51)が前記弁口(53A)を閉塞するように付勢する弁体付勢バネ(50)と、
前記第1バルブベース構成部品(30)のうち前記燃料注入口(96A)から離れた側の端部に設けられ、前記第2バルブベース構成部品(20)が結合される部品間結合部(26,35A)とを備え、
前記弁体付勢バネ(50)を前記高耐脆性金属で構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料注入用チェックバルブ(10)。
【請求項5】
前記高耐脆性金属は、SUH660であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の燃料注入用チェックバルブ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−265998(P2010−265998A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118235(P2009−118235)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】