説明

燃料用フィルタ

【課題】燃料タンクが燃料の流動性を大きく低下させる低温下に置かれることのみを条件として、フィルタを構成する主たる濾材を介すことなく流動性を低下させた燃料の燃料流路への送り込みがなされるようにする。
【解決手段】内部空間を燃料流路Pに連通させて用いられる袋状濾材1に、燃料の流動性の低下が生じる所定の低温下に置かれるまでは閉弁状態に保たれる弁部4を備えさせると共に、この弁部4を線膨張率を異ならせる少なくとも二つの部材により構成させて前記所定の低温時に閉弁状態を解除させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯蔵されている、温度変化により流動性を低下させる性質を持った燃料を、吸い出し供給するシステムにおいて、この燃料の濾過をなすために用いられるフィルタの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
フューエルポンプによって負圧を作用される袋状のフィルタの外側(一次側/上流側)に目の密な濾材を位置させ、これよりも内側(二次側/下流側)に目の粗い濾材を位置させると共に、目の密な濾材に弁装置により通常は閉鎖される連通部を形成させてなるフィルタ装置がある。(特許文献1参照)
【0003】
かかるフィルタ装置にあっては、温度変化により燃料の流動性が大きく低下して目の密な濾材に目詰まりを生じさせるようになったときに生じる、フィルタ内外の圧力差によって前記弁装置による連通部の閉鎖(閉弁状態)を解いて、こうした場合でも燃料を吸い出せるようにしている。
【0004】
しかるに、燃料タンクが燃料の流動性を大きく低下させる低温下に置かれることを条件として、前記弁装置の閉弁状態が解かれるようにすれば、前記目詰まりによるフィルタ内外の圧力差が大きくならなくとも、流動性を低下させた燃料の吸い出しが可能となる。
【特許文献1】米国特許明細書第6638423号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のフィルタにおいて、燃料タンクが燃料の流動性を大きく低下させる低温下に置かれることのみを条件として、フィルタを構成する主たる濾材を介すことなく流動性を低下させた燃料の燃料流路への送り込みがなされるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、燃料用フィルタを、内部空間を燃料流路に連通させて用いられる袋状濾材に、燃料の流動性の低下が生じる所定の低温下に置かれるまでは閉弁状態に保たれる弁部を備えさせると共に、
この弁部を線膨張率を異ならせる少なくとも二つの部材により構成させて前記所定の低温時に閉弁状態を解除させるようにしたものとした。具体的には、かかる弁部を構成する部材の少なくとも一つが、温度変化によりその余の部材よりも大きく収縮して、所定の低温時に弁部の閉弁状態が解除されるようになっている。
【0007】
このようにしておくことで、燃料タンクが燃料の流動性を大きく低下させる所定の低温下に置かれることのみを条件として、前記弁部の閉弁状態を解いて、この弁部を通じて流動性を低下させた燃料を袋状濾材内に取り込み燃料流路に送り込むことができる。また、弁部の閉弁状態及び開弁状態は、弁部を線膨張率を異ならせる少なくとも二つの部材により構成させることで作り出すことができ、かかる機能を有する弁部がフィルタの構造を徒に複雑化させることはない。したがってまた、かかるフィルタは、所定の低温下におかれるまでは、燃料に濡れることでエアを吸い込まずに燃料のみを取り込むように目の広さないしは流路径を設定させた袋状濾材をもって構成させることができ、幅広い温度帯においてこうした燃料に対するフィルタとして利用することができる。
【0008】
前記弁部を、袋状濾材の袋外への連通部を備えたボディと、
長さを備えると共にこの長さ方向にスライド移動可能にボディ内に支持され、かつ、一端部側において前記連通部を閉塞させる弁体とを備えたものとし、
この弁体を、温度変化により弁部を構成するその余の部材よりも大きく収縮して前記スライド移動によって所定の低温時に閉弁状態を解除する部材としておくこともある。
【0009】
このようにした場合、弁体の線膨張率を大きくさせておくことで、前記所定の低温に近づくに連れて連通部を塞ぐ弁体の一端部をその収縮によりスライド移動させ、この所定の低温においてこの連通部を開放させるようにすることができる。
【0010】
また、前記弁部を、袋状濾材の袋外への連通部を備えたボディと、
長さを備えると共に一端部をボディへ固定させ、かつ、ボディに対して自由にされた他端部によって前記連通部を閉塞させる弁体とを備えたものとし、
この弁体を、温度変化により弁部を構成するその余の部材よりも大きく収縮して前記一端部と他端部との間の寸法を縮めて所定の低温時に閉弁状態を解除する部材としておくこともある。
【0011】
このようにした場合、弁体の線膨張率を大きくさせておくことで、前記所定の低温に近づくに連れて連通部を塞ぐ弁体の他端部をその収縮により移動させ、この所定の低温においてこの連通部を開放させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかる燃料用フィルタによれば、燃料タンクが燃料の流動性を大きく低下させる低温下に置かれることのみを条件として弁部を開弁させて、袋状濾材を介すことなく流動性を低下させた燃料を燃料流路に送り込ませることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1〜図11に基づいて、この発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0014】
なお、ここで図1〜図5はこの発明を適用して構成された燃料の濾過をなす装置、すなわち、フィルタFの第一例を、図6〜図10はその第二例を、図11はその第三例をそれぞれ示している。
具体的には、図1及び図6はフィルタFを斜視の状態として、図2、図7及び図11はその使用状態を断面にして、図3及び図8はフィルタFに備えられる弁部4のみをその要部を破断して、図4及び図9はかかる弁部4が閉弁状態にある様子を、図5及び図10はかかる弁部4が開弁状態にある様子を、それぞれ示している。
【0015】
この実施の形態にかかるフィルタFは、貯蔵されている、温度変化により流動性を低下させる性質を持った燃料を、吸い出し供給するシステムにおいて、この燃料の濾過をなすために用いられるものである。
【0016】
典型的には、かかるフィルタFは、自動車などの内燃機関に供給される燃料の濾過をなすために用いられる。この場合には、燃料タンクT内にある燃料はフューエルポンプにより吸い出されて燃料流路Pを通じて内燃機関に送られ、フィルタFは典型的には、かかる燃料流路Pの燃料タンクT側の末端あるいは燃料流路Pの途中に備えられて通過する燃料の濾過をなすために用いられる。
【0017】
図示の例では、かかるフィルタFを、燃料タンクT内に位置される燃料流路Pを構成する燃料吸い込み口Paを覆うように取り付けられて、燃料タンクTの底側に位置してこの燃料吸い込み口Paに吸い込まれる燃料の濾過をなすインタンク式燃料フィルタF(サクションフィルタFなどとも称される。)としている。また、図示の例では、かかるフィルタFは、軽油の流動性が大きく低下しない状況下では軽油の適切な濾過をなすと共に、軽油の流動性を大きく低下させる状況下での燃料流路Pへの軽油の流入を妨げない機能を備えたものとなっている。軽油には低温時にワックス結晶が生じ、冬期においてはその流動性が大きく低下してゲル状化する。(ワックス化などと称される。)図示の構造を備えたフィルタFは、このように軽油の流動性が大きく低下させる低温下に燃料タンクが置かれたときに、かかる軽油の吸い込みを弁部4からも許容するようになっている。
【0018】
かかるフィルタFは、メインフィルタFとなる袋状濾材1を備えている。そして、この袋状濾材1の内部空間1a、つまり、袋内空間を、燃料流路Pに連通させるように構成されている。
【0019】
図示の例では、袋状濾材1は、燃料流路Pへの接続コネクタ2を介して、その内部空間1aを燃料流路Pに連通させるように構成されている。図示の例では、かかる接続コネクタ2は、筒一端に外鍔2aを備えた筒状をなすように構成されている。また、図示の例では、袋状濾材1内には内蔵パーツ3が納められている。この内蔵パーツ3は筒軸を上下方向に沿わせると共に筒上端と筒下端を共に開放させた短寸筒状部3aを有している。そして、図示の例では、接続コネクタ2の外鍔2aと内蔵パーツ3の短寸筒状部3aの筒上端3bとの間に、袋状濾材1を挟み込ませた状態からこの外鍔2aと筒上端3bとを溶着などにより固着させることで、袋状濾材1に接続コネクタ2を接続させている。
【0020】
より具体的には、図示の例では、袋状濾材1は、細長く構成させた上下二枚のシート状濾材1b、1bの四辺に熱シール1cを施すことで形成されている。(図1、図6)内蔵パーツ3はこの二枚のシート状濾材1b、1bの四辺に熱シール1cを施す過程でこの二枚のシート状濾材1b、1bの間に上側のシート状濾材1bの一端側に形成された第一貫通孔1dに短寸筒状部3aの筒内空間を連通させるようにして納められる。内蔵パーツ3の短寸筒状部3aの筒下端には、その筒軸を巡る向きにおいて隣り合う間隔形成突起3cとの間に間隔を開けて複数の間隔形成突起3cが形成されており、この筒下端の直下位置にある袋状濾材1の一部が負圧によりこの短寸筒状部3aの筒下端に張り付いて袋状濾材1の全体が濾過に寄与しなくなる事態の防止が図られている。
【0021】
袋状濾材1にはまた、前記燃料流路Pとの連通箇所と別の箇所に、燃料タンクTが燃料の流動性の低下が生じる所定の低温下に置かれるまでは閉弁状態に保たれる弁部4が備えられており、この弁部4の閉弁状態が解かれると、つまり開弁されると袋状濾材1の袋内外がこの弁部4を介して連通されるようになっている。
【0022】
図示の例では、弁部4は弁箱的に機能するボディ40と、このボディ40内に納められる弁体41とを備えてなる。ボディ40には、袋状濾材1の袋外、つまりフィルタF外への連通部40aと、この袋状濾材1の袋内空間への連通部40bとが形成されている。弁体41は、前記所定の低温下に置かれるまでは、かかる袋状濾材1の袋外の連通部40aを塞いで弁部4を閉弁状態に保ち、かつ、この所定の低温下に置かれた後は、この連通部40aを開放して弁部4を開弁状態に移行させるようになっている。
【0023】
図示の例では、袋状濾材1の上面に、前記第一貫通孔1dとの間に間隔を開けて第二貫通孔1eが形成されており、この第二貫通孔1eを利用して袋状濾材1にかかる弁部4を備えさせている。具体的には、かかる弁部4を構成するボディ40は、アウターパーツ401とインナーパーツ402とから構成されていると共に、アウターパーツ401の外周部とインナーパーツ402の外周部とにはそれぞれ外鍔401a、402aが形成されている。図示の例では、前記のように二枚のシート状濾材1b、1bに熱シール1cを施して袋状濾材1とする過程で、その内側にインナーパーツ402をかかる第二貫通孔1eに内部空間を連通させるように納めると共に、このように納められたインナーパーツ402の外鍔402aにアウターパーツ401の外鍔401aを両者の間に第二貫通孔1eの孔縁を挟み込ませて重ね合わせ、この状態で両外鍔401a、402aを溶着などにより固着させることで、袋状濾材1に弁部4を備え付けさせている。また、図示の例では、前記内蔵パーツ3には、かかる弁部4と短寸筒状部3aとの間の袋状濾材1の袋内空間を膨らんだ状態に保つフレーム部3dが備えられている。
【0024】
かかる弁部4は線膨張率を異ならせる少なくとも二つの部材により構成させて前記所定の低温時に閉弁状態を解除させるようにしてある。具体的には、かかる弁部4を構成する部材の少なくとも一つが、温度変化によりその余の部材よりも大きく収縮して、所定の低温時に弁部4の閉弁状態が解除されるようになっている。かかる燃料を軽油とする場合、軽油の種類にもよるが例えば摂氏−20度以下になったときに弁部4の閉弁状態が解除されるようにする。
【0025】
このようにしておくことで、燃料タンクTが燃料の流動性を大きく低下させる所定の低温下に置かれることのみを条件として、前記弁部4の閉弁状態を解いて、この弁部4を通じて流動性を低下させた燃料を袋状濾材1内に取り込み燃料流路Pに送り込むことができる。また、弁部4の閉弁状態及び開弁状態は、弁部4を線膨張率を異ならせる少なくとも二つの部材により構成させることで作り出すことができ、かかる機能を有する弁部4がフィルタFの構造を徒に複雑化させることはない。したがってまた、かかるフィルタFは、所定の低温下におかれるまでは、燃料に濡れることでエアを吸い込まずに燃料のみを取り込むように目の広さないしは流路径を設定させた袋状濾材1をもって構成させることができ、幅広い温度帯においてこうした燃料に対するフィルタFとして利用することができる。所定の低温以上の温度に戻れば前記その余の部材よりも大きく収縮する部材、つまり、線膨張率の大きい材料により構成される部材の膨張により弁部4は再び閉弁状態に復帰される。
【0026】
図1〜図5に示される例にあっては、弁部4を構成するボディ40のアウターパーツ401は、下面を開放させると共に、この開放縁を巡る外鍔401aをこの開放縁部に備えた箱状をなすように構成されている。また、弁部4を構成するボディ40のインナーパーツ402は、上面を開放させると共に、この開放縁を巡る外鍔402aをこの開放縁部に備えた箱状をなすように構成されている。かかるボディ40は、幅と長さとを備えるように構成されている。袋状濾材1の袋外(図示の例では燃料タンクT内)への連通部40aは、アウターパーツ401の上板部401bに貫通孔401cを形成させることでボディ40に設けられ、また、袋状濾材1の袋内への連通部40bは、インナーパーツ402の幅側の一側部に貫通孔402cを形成させることでボディ40に設けられている。袋状濾材1の袋外への連通部40aとなる貫通孔401cは、図示の例では、アウターパーツ401の上板部401bの幅方向に沿って長い溝状をなし、また、かかる貫通孔401cはこの上板部401bの中央部に、この上板部401bの長さ方向において隣り合う貫通孔401cとの間に間隔を開けて三つ設けられている。
【0027】
一方、図1〜図5に示される例にあっては、弁体41は、長さを備えると共にこの長さ方向にスライド移動可能にボディ40内に支持され、かつ、その一端部411a側によって前記連通部40aを閉塞させるように構成されている。そして、かかる弁体41が、温度変化により弁部4を構成するその余の部材、図示の例では、ボディ40及び後述の弁体41の支持体よりも大きく収縮して前記スライド移動によって所定の低温時に閉弁状態を解除するように構成させている。このようにすることは、典型的には、かかる弁体41を合成樹脂により構成すると共に、後述の弁体41の支持体を金属により構成することで実現させることができる。また、かかる弁体41を合成樹脂により構成すると共に、後述の弁体41の支持体42を繊維強化プラスチックとしてその線膨張率を小さくさせることで実現させることができる。
【0028】
この図1〜図5に示される例にあっては、弁体41の線膨張率を大きくさせておくことで、前記所定の低温に近づくに連れて連通部40aを塞ぐ弁体41の一端部411a側をその収縮によりスライド移動させ、この所定の低温においてこの連通部40aを開放させるようにすることができる。
【0029】
この図1〜図5に示される例にあっては、弁体41は、アウターパーツ401の上板部401bの内面に隙間なく添装される帯状上部411bと、インナーパーツ402の底板部402bの内面に添装される帯状下部411dと、この帯状上部411bの一端と帯状下部411dの一端との間に亘る側部411eと、帯状下部411dの他端から立ち上がる立ち上がり部411gとを一体に備えた帯状の長尺体として構成されている。弁体41は、帯状上部411b及び帯状下部411dの面を横向きに配し、側部411eの面と立ち上がり部411gの面をボディ40の幅側の内面に向き合わせるように配し、かつ、その長さ方向に沿った各位置において幅及び厚さを等しくさせている。帯状上部411bの他端と立ち上がり部411gとの間には隙間411hが形成され、また、側部411eとこの側部411eの外側面に向き合うボディ40の内面との間にも隙間411iが形成されるようにしてある。この弁体41の帯状上部411bの中央部にはその幅方向に亘る貫通孔411cが形成されている。かかる貫通孔411cはこの帯状上部411bの幅方向に沿って長い溝状をなし、かつ、この帯状上部411bの長さ方向において隣り合う貫通孔411cとの間に間隔を開けて三つ設けられている。そして、この例にあっては、前記所定の低温下に置かれるまでは、前記袋状濾材1の袋外への連通部40aとなるアウターパーツ401の貫通孔401cと、かかる弁体41の帯状上部411bの貫通孔411cとが連通せず、これにより、弁体41の帯状上部411bによってアウターパーツ401の貫通孔401cがボディ40の内側から塞がれて弁部4の閉弁状態が維持されるようになっている。(図4)それと共に、前記所定の低温下になると、前記袋状濾材1の袋外への連通部40aとなるアウターパーツ401の三つの貫通孔401cのそれぞれにこれに対応する弁体41の帯状上部411bの貫通孔411cとが連通して、弁部4が開弁状態に移行するようになっている。(図5)
【0030】
この図1〜図5に示される例にあっては、弁体41の帯状下部411dの上面に添装される基板部42aと、この基板部42aから上方に突き出して弁体41の帯状上部411bを下方から支えるサポート部42cとを備えてなる支持体42によって、弁体41の帯状上部411bがアウターパーツ401の上板部401bの内面に隙間無く添装されるようにしてある。また、かかる支持体42の基板部42aは弁体41の立ち上がり部411gと側部411eとの間に亘る長さを備えると共に、この基板部42aはアウターパーツ401に形成された押さえつけ部401dにより上方から押さえられて弁体41の帯状下部411dからの離間が阻止されている。
【0031】
この図1〜図5に示される例にあっては、弁体41の線膨張率は支持体42の線膨張率よりも大きくなっているが、弁体41の側部411eの下端部411fは支持体42の基板部42aの端部42bにより押さえつけられているため、弁体41の収縮が生じると弁体41の側部411eはその下端部411fを支点としてその外面をボディ40の内面に近づける向きに移動され、この移動により帯状上部411bは横向きにスライド移動し、これにより前記所定の低温下において前記袋状濾材1の袋外への連通部40aとなるアウターパーツ401の三つの貫通孔401cのそれぞれにこれに対応する弁体41の帯状上部411bの貫通孔411cとが連通して、弁部4が開弁状態に移行するようになっている。(図5)
【0032】
また、図6〜図10に示される例にあっては、弁部4を構成するボディ40のアウターパーツ401は、筒上端を閉塞させ且つ筒下端を開放させると共に、その筒軸方向略中程の位置に外鍔401aを備えた円筒状をなすように構成されている。また、弁部4を構成するボディ40のインナーパーツ402は、筒上端を閉塞させ且つ筒下端を開放させた内筒部402dと、この内筒部402dの外側を巡るように形成された外筒部402eとを備えてなる。外筒部402eはその筒下端を内筒部402dの筒下端に連接させて内筒部402dと一体化されている。また、外筒部402eは筒上端を内筒部402dの筒軸方向略中程の位置に位置させている。外筒部402eの筒上端に前記外鍔402aが形成されている。また、外筒部402eはその筒軸方向略中程の位置から筒上端までの内径をアウターパーツ401の外径と略等しくし、かつ、この中程の位置から下方の内径をこれより小さくしており、これにより内側に上方を向いた周回段差面402fを備えている。また、内筒部402dの外径はアウターパーツ401の内径よりも小さくなっている。アウターパーツ401は、前記第二貫通孔1eの孔縁をその外鍔401aとインナーパーツ402の外筒部402eに形成された外鍔402aとの間で挟み込み、かつ、その筒下端をインナーパーツ402の周回段差面402fに突き当てさせる位置まで、その筒下端側をインナーパーツ402の外筒部402e内に入れ込ませ、かつ、その内側にインナーパーツ402の内筒部402dを入れ込ませて、このインナーパーツ402と組み合わされる。そして、この組み合わせ状態においてインナーパーツ402の内筒部402dの外面とアウターパーツ401の内面との間にこれらの周方向に亘って弁体41の収納空間411jが形成されるようになっている。
【0033】
この図6〜図10に示される例にあっては、袋状濾材1の袋外への連通部40aは、インナーパーツ402の内筒部402dの筒上端側の側部に方形窓状の貫通孔402gを形成させることで設けられ、また、かかるインナーパーツ402の内筒部402dの開放された筒下端が袋状濾材1の袋内への連通部40bとして機能するようにしてある。この例では、アウターパーツ401の筒上端側の側部であって、インナーパーツ402の前記貫通孔402gの外側に方形窓状の貫通孔401eが形成されており、開弁状態においては、両貫通孔401e、402gを通じて袋状濾材1の袋内外が連通されるようになっている。
【0034】
一方、この図6〜図10に示される例にあっては、弁体41は、長さを備えると共に一端部411kをボディ40へ固定させ、かつ、ボディ40に対して自由にされた他端部411mによって前記連通部40aを閉塞させるように構成されている。そして、かかる弁体41が、温度変化により弁部4を構成するその余の部材よりも大きく収縮して、図示の例では、ボディ40よりも大きく収縮して、前記一端部411kと他端部411mとの間の寸法を縮めて所定の低温時に閉弁状態を解除するようになっている。このようにすることも、典型的には、かかる弁体41を合成樹脂により構成すると共に、ボディ40のインナーパーツ402を金属により構成することで実現させることができる。また、かかる弁体41を合成樹脂により構成すると共に、かかるインナーパーツ402を繊維強化プラスチックとしてその線膨張率を小さくさせることで実現させることができる。
【0035】
この図6〜図10に示される例にあっても、弁体41の線膨張率を大きくさせておくことで、前記所定の低温に近づくに連れて連通部40aを塞ぐ弁体41の他端部411mをその収縮により移動させ、この所定の低温においてこの連通部40aを開放させるようにすることができる。
【0036】
この図6〜図10に示される例にあっては、弁体41は、インナーパーツ402の内筒部402dの外側に、この内筒部402dの外面にその一面を向き合わせて、螺旋状に巻き付けられた帯状体として構成されている。この弁体41の一端部411kは、インナーパーツ402の内筒部402dと外筒部402eとの間に両者の筒下端側において固着されている。一方、この弁体41の他端部411mは、前記所定の低温になるまでは、インナーパーツ402の内筒部402dとアウターパーツ401との間にあって、インナーパーツ402の内筒部402dの貫通孔402gの外側に位置してこの貫通孔402gを液密に塞ぐようになっている。これによりこの例にあっては、前記所定の低温下に置かれるまでは、弁部4の閉弁状態が維持されるようになっている。それと共に、前記所定の低温下になると、弁体41は自由にされたその他端部411mを内筒部402dの貫通孔402gの側方に前記収縮により移動させ、これにより弁部4が開弁状態に移行するようになっている。(図10)
【0037】
図11は、図1〜図5に示されるフィルタFにおける弁部4の外側を追加濾材5により覆った例を示している。この例では追加濾材5も袋状をなすように構成されている。このようにすれば、弁部4の開弁時において流入される流動性の低下した燃料をある程度細かく切り刻むことができると共にこの燃料から一定の塵芥などを取り除くことができ、また、こうした塵埃などが弁部4の夾雑物などとならないようにすることができる。
【0038】
フィルタFを構成する袋状濾材1および追加濾材5は、押し出しメッシュ材、織物メッシュ材、不織布などにより構成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第一例の斜視構成図
【図2】同使用状態を示した断面構成図
【図3】第一例の弁部4の要部破断斜視構成図
【図4】同要部断面構成図
【図5】同要部断面構成図
【図6】第二例の斜視構成図
【図7】同使用状態を示した断面構成図
【図8】第二例の弁部4の要部破断斜視構成図
【図9】同要部断面構成図
【図10】同要部断面構成図
【図11】第三例の使用状態を示した断面構成図
【符号の説明】
【0040】
P 燃料流路
1 袋状濾材
4 弁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を燃料流路に連通させて用いられる袋状濾材に、燃料の流動性の低下が生じる所定の低温下に置かれるまでは閉弁状態に保たれる弁部を備えさせていると共に、
この弁部を線膨張率を異ならせる少なくとも二つの部材により構成させて前記所定の低温時に閉弁状態を解除させるようにしてあることを特徴とする燃料用フィルタ。
【請求項2】
弁部を構成する部材の少なくとも一つが、温度変化によりその余の部材よりも大きく収縮して、所定の低温時に弁部の閉弁状態が解除されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の燃料用フィルタ。
【請求項3】
弁部は、
袋状濾材の袋外への連通部を備えたボディと、
長さを備えると共にこの長さ方向にスライド移動可能にボディ内に支持され、かつ、一端部側において前記連通部を閉塞させる弁体とを備えており、
この弁体を、温度変化により弁部を構成するその余の部材よりも大きく収縮して前記スライド移動によって所定の低温時に閉弁状態を解除する部材としてなることを特徴とする請求項1に記載の燃料用フィルタ。
【請求項4】
弁部は、
袋状濾材の袋外への連通部を備えたボディと、
長さを備えると共に一端部をボディへ固定させ、かつ、ボディに対して自由にされた他端部によって前記連通部を閉塞させる弁体とを備えており、
この弁体を、温度変化により弁部を構成するその余の部材よりも大きく収縮して前記一端部と他端部との間の寸法を縮めて所定の低温時に閉弁状態を解除する部材としてなることを特徴とする請求項1に記載の燃料用フィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−138806(P2010−138806A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315935(P2008−315935)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】