説明

燃料用ホース

【課題】軽量で、燃料低透過性に優れるとともに、低コストで、層間接着性、柔軟性、低温衝撃性、耐熱性にも優れた燃料用ホースを提供する。
【解決手段】下記の(A)からなる管状の内層1と、その外周面に接して設けられた下記の(B)からなる外層2とを備えた燃料用ホースであって、下記の(α)または(β)の要件を満たし、両層が層間接着されている。
(A)芳香族ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂組成物。
(B)ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂の少なくとも一方を主成分とする樹脂組成物。
(α)上記樹脂組成物(B)がアミン変性SEBSを含有する。
(β)上記樹脂組成物(A)がアミン変性SEBSを含有し、上記樹脂組成物(B)が酸変性SEBSを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料(ガソリン、アルコール混合ガソリン、ディーゼル燃料等)の輸送等に用いられる燃料用ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車を取り巻く燃料ガスの蒸散規制は厳しくなってきており、これに対応する低透過な燃料用ホースが各種検討されている。このような燃料用ホースとしては、従来はフッ素樹脂製のホースであったが、より厳しい燃料低透過性能が要求される場合には、フッ素樹脂層の厚みを厚くせざるを得ず、そのためホースが高価になるという難点がある。そこで、フッ素樹脂よりも安価であり、燃料低透過性に優れる樹脂として、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリアミド9T(PA9T)等の芳香族ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の芳香族ポリエステル樹脂が注目されている。これらの樹脂からなる燃料低透過層を備えたホースは、近年、各種提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−138372号公報
【特許文献2】特開2003−287165公報
【特許文献3】特開2003−110736公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PPSやPBTは、比重が重く、そのままではホース重量の増加に繋がり、その結果、例えば自動車の燃費向上に貢献することが困難となる。また、PPS、PBT、PA9T等の燃料低透過性樹脂は、剛性が高く、これのみを用いて単層構造のホースとした場合、柔軟性に劣り、特に低温での衝撃に弱く、ホース割れを生じやすい。このような問題を解決するため、従来、上記列記した樹脂からなる燃料低透過層の厚みを薄くし、その外周に、ポリアミド樹脂,ポリエチレン樹脂等の、柔軟性に優れた熱可塑性樹脂からなる層が構成された積層ホースが提案されているが、それでも、低温衝撃性においては充分な性能が得られてないのが現状である。
【0005】
また、上記列記した燃料低透過性樹脂は、他の材料との接着性が悪いことから、上記燃料低透過層と上記熱可塑性樹脂層との積層化には、通常、その両層の界面に接着剤層を設ける必要がある。そのため、上記接着剤層の分だけ製造工程が複雑化し、さらにホース重量の増加にもつながるといった問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、軽量で、燃料低透過性に優れるとともに、低コストで、層間接着性、柔軟性、低温衝撃性、耐熱性にも優れた燃料用ホースの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の燃料用ホースは、下記の(A)からなる管状の内層と、その外周面に接して設けられた下記の(B)からなる外層とを備えた燃料用ホースであって、下記の(α)または(β)の要件を満たし、両層が層間接着されているという構成をとる。
(A)芳香族ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂組成物。
(B)ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂の少なくとも一方を主成分とする樹脂組成物。
(α)上記樹脂組成物(B)が、アミン変性ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン〔アミン変性SEBS〕を含有する。
(β)上記樹脂組成物(A)が、アミン変性ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン〔アミン変性SEBS〕を含有し、上記樹脂組成物(B)が、酸変性ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン〔酸変性SEBS〕を含有する。
【0008】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため、燃料低透過性能や価格面の点で有利なPBT等の芳香族ポリエステル樹脂製内層の外周に、軽量で、柔軟性等に優れた高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリオレフィン系樹脂やポリアミド樹脂からなる外層を配置することにより、柔軟性に優れるとともに、ホース総重量を軽量化し、燃費向上に貢献し得るホースの研究開発に着手した。しかしながら、このような層構成をとる場合、先に述べたように、内層/外層間の層間接着力が課題となる。そこで、本発明者らは、この課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、外層材料中に、PBT等の芳香族ポリエステル樹脂のカウンターイオン変性となる変性エラストマーをブレンドすることにより、外層に柔軟性を付与するとともに、接着剤レスで内層との層間接着性を得ることを検討し、各種実験を繰り返し行った。その結果、外層材料と相溶性の高いアミン変性SEBSを外層材料中に配合すると、そのSEBS両末端のアミノ基(NH2 基)が、内層材料の芳香族ポリエステル樹脂分子末端のカルボキシル基(COOH基)と反応(アミド結合)し、所望の層間接着力が得られることを突き止めた。また、このとき、さらに内層材料中に、PBTと相溶性の高いエラストマーとして、無水マレイン酸等により変性された酸変性SEBSを配合すると、そのSEBS両末端の変性基(COOH基)と上記アミン変性SEBS両末端のアミノ基との反応により、より高い層間接着力が得られるようになる。また、この原理を利用し、PBT等の芳香族ポリエステル樹脂製内層材料中にアミン変性SEBSを配合し、かつ外層材料中に酸変性SEBSを配合した場合も、上記と同様に、高い層間接着力が得られるようになることを突き止めた。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の燃料用ホースは、PBT等の芳香族ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる管状の内層と、ポリオレフィン系樹脂やポリアミド系樹脂を主成分する樹脂組成物からなる外層とを備え、上記外層形成用樹脂組成物にアミン変性SEBSを含有する〔要件(α)〕か、または、上記内層形成用樹脂組成物にアミン変性SEBSを含有し、かつ上記外層形成用樹脂組成物に酸変性SEBSを含有する〔要件(β)〕ものである。そのため、本発明の燃料用ホースは、層間接着性が高く、また、軽量で、燃料低透過性に優れるとともに、柔軟性、低温衝撃性、耐熱性にも優れている。また、本発明の燃料用ホースは、その層間の接着を接着剤レスで行うことが可能であり、しかも、材料コストが安価であるため、上記のように高性能であるにもかかわらず、低コスト化を達成することができる。
【0010】
特に、上記要件(α)を満たすとともに、内層形成用樹脂組成物に酸変性SEBSを含有すると、より高い層間接着力が得られるようになる。
【0011】
また、上記要件(α)または(β)に記載の変性SEBSを含有する層が、その変性SEBSを島相(ドメイン)とするアロイ材からなると、より高い層間接着力が得られるようになる。
【0012】
また、上記内層の内周面上に、さらに、フッ素系樹脂からなる最内層を備えると、より燃料低透過性に優れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の燃料用ホースの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明の燃料用ホースは、例えば、図1に示すように、燃料を流通させる管状の内層1の外周面に、外層2が積層形成されて、構成されている。そして、上記内層1が下記の(A)からなり、上記外層2が下記の(B)からなり、下記の(α)または(β)の要件を満たし、両層が層間接着されているという構成をとる。なお、下記(A)および(B)の樹脂組成物の「主成分」とは、その樹脂組成物全体の特性に大きな影響を与えるもののことであり、本発明においては、全体の50重量%以上を意味する。
(A)芳香族ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂組成物。
(B)ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂の少なくとも一方を主成分とする樹脂組成物。
(α)上記樹脂組成物(B)が、アミン変性ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン〔アミン変性SEBS〕を含有する。
(β)上記樹脂組成物(A)が、アミン変性ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン〔アミン変性SEBS〕を含有し、上記樹脂組成物(B)が、酸変性ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン〔酸変性SEBS〕を含有する。
【0016】
上記要件(α)を満たす場合において、外層2用材料である樹脂組成物(B)におけるアミン変性SEBSの含有割合は、1.5〜50重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、5〜20重量%の範囲である。すなわち、上記範囲未満である場合、所望の層間接着効果が得られないからであり、逆に、上記範囲を超えると、外層材料が燃料油〔例えば、Fuel C/M15(Fuel C:メタノール=85容量%:15容量%の混合燃料液)〕において、溶解するからである。
【0017】
また、上記要件(α)を満たす場合において、内層1用材料である樹脂組成物(A)が、酸変性SEBSを含有するものであると、より高い層間接着力が得られるようになり、好ましい。しかしながら、内層1は燃料低透過性能をもたらすため、その性能を阻害しないよう、酸変性SEBSの配合量は、樹脂組成物(A)の50重量%未満とすることが好ましい。
【0018】
一方、上記要件(β)を満たす場合において、樹脂組成物(A)におけるアミン変性SEBSの含有割合は2.0〜30重量%の範囲とし、樹脂組成物(B)における酸変性SEBSの含有割合は1.5〜50重量%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物(A)におけるアミン変性SEBSの含有割合が5〜20重量%の範囲であり、樹脂組成物(B)における酸変性SEBSの含有割合が5〜20重量%の範囲である。このように設定することにより、燃料低透過性能を阻害することなく、所望の層間接着効果が得られるようになる。
【0019】
また、上記要件(α)または(β)に記載の変性SEBSを含有する層が、その変性SEBSを島相(ドメイン)とするアロイ材からなると、より高い層間接着力が得られるようになる。なお、上記層がアロイ材からなるものであるか否かは、走査電子顕微鏡(SEM)での観察により確認することができる。
【0020】
上記内層1の形成材料として用いられる芳香族ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、チューブ柔軟性の観点から、PBTが好ましく用いられる。
【0021】
上記外層2の形成材料として用いられるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、α−ポリオレフィン、変性ポリオレフィン(無水マレイン酸、エポキシ変性等により変性されたポリエチレン)等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、高温シール性の観点から、HDPEが好ましく用いられる。
【0022】
また、上記外層2の形成材料として用いられるポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド99(PA99)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド912(PA912)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド6とポリアミド66との共重合体(PA6/66)、ポリアミド6とポリアミド12との共重合体(PA6/12)、メタキシレンジアミンとアジピン酸との共重合体(PA−MXD6)、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との共同重合体(PA6T)、ノナンジアミンとテレフタル酸との共重合体(PA9T)、デカンジアミンとテレフタル酸との共重合体(PA10T)、ウンデカンジアミンとテレフタル酸との共同重合体(PA11T)、ドデカメチレンジアミンとテレフタル酸との共同重合体(PA12T)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0023】
上記内層1用材料や外層2用材料に配合されるアミン変性SEBSは、例えば、SEBSを、共重合終了時にアミノ基を有する変性剤を反応させ、その後、水素化処理することにより得ることができる。
【0024】
また、上記内層1用材料や外層2用材料に配合される酸変性SEBSは、例えば、SEBSを、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、無水マレイン酸基、アクリル酸基,メタクリル酸基、カルボン酸エステル基等で変性したものが用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記酸変性SEBSのなかでも、層形成材料の主成分である樹脂との反応性に優れる点から、無水マレイン酸変性SEBSが好ましく用いられる。
【0025】
なお、上記内層1用材料や外層2用材料には、その主成分である樹脂および変性SEBS以外にも、必要に応じ、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料、炭酸カルシウム等の充填剤、脂肪酸エステル、ミネラルオイル等の可塑剤、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の滑剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカー等の補強剤、難燃剤等を含有しても差し支えない。
【0026】
前記図1に示した本発明の燃料用ホースは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、先に述べたような、内層1用材料および外層2用材料をそれぞれ準備する。このとき、その層形成材料の主成分である樹脂とともに変性SEBSを配合する場合、二軸混練押出機(日本製鋼所製TEX30α)等を用いて230〜270℃で均一に混練し、層形成材料を調製する必要がある。つぎに、内層1用押出機および外層2用押出機を用いて、各材料を押し出して1つのダイに合流させ、この共押出した溶融チューブをサイジングダイスに通すことにより、内層1の外周面に外層2が形成されてなる、2層構造の燃料用ホースを作製することができる。
【0027】
なお、ホースを蛇腹状に形成する場合には、上記共押出した溶融チューブをコルゲート成形機に通すことにより、所定寸法の蛇腹状ホースを作製することが可能である。
【0028】
このようにして得られる本発明の燃料用ホースにおいて、ホース内径は1〜40mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは2〜36mmの範囲内であり、ホース外径は2〜44mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは3〜40mmの範囲内である。また、内層1の厚みは0.02〜1.0mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.6mmの範囲内である。外層2の厚みは、0.03〜1.5mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.05〜1.0mmの範囲内である。
【0029】
なお、本発明の燃料用ホースは、前記図1に示したような2層構造に限定されるものではなく、例えば、内層1の内周面に最内層を形成した3層構造に形成することも可能である。
【0030】
そして、上記最内層は、フッ素系樹脂からなるものであると、本発明の燃料用ホースが、より燃料低透過性に優れるようになり、好ましい。上記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロ共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、エチレンとポリクロロトリフルオロエチレンの共重合体(ECTFE)等の共重合体や、それらの変性共重合体、各種グラフト重合体及びブレンド体、さらに、これらにカーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、導電性高分子等を添加し、導電性が付与された導電フッ素系樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0031】
上記内層1の内周面に最内層を形成してなる、本発明の燃料用ホースは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、最内層用材料を準備し、最内層用押出機を用いて、各層の形成材料とともに押し出して1つのダイに合流させ、この共押出した溶融チューブをサイジングダイスに通すことにより、内層1の内周面に最内層が形成されてなる燃料用ホースを作製することができる。
【0032】
上記最内層の厚みは、0.03〜0.5mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.3mmの範囲内である。
【0033】
また、本発明の燃料用ホースは、必要に応じて、例えば、外層2の外周に最外層を形成した構造であっても差し支えない。
【0034】
本発明の燃料用ホースは、ガソリン、アルコール混合ガソリン、ディーゼル燃料、CNG(圧縮天然ガス)、LPG(液化石油ガス)等の自動車用燃料の輸送用ホースとして好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、メタノールや水素、ジメチルエーテル(DME)等の燃料電池自動車用の燃料輸送用ホースとしても使用可能である。
【実施例】
【0035】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0037】
〔PBT〕
ジュラネックス700FP、ポリプラスチックス社製
【0038】
〔PBN〕
TQB−OT、帝人化成社製
【0039】
〔PEN〕
テオネックス8065S、帝人化成社製
【0040】
〔PET〕
ノバペックスGG900、三菱化学社製
【0041】
〔HDPE〕
ノバテックHB111R、日本ポリエチレン社製
【0042】
〔アミン変性SEBS〕
タフテックM10、旭化成ケミカルズ社製
【0043】
〔酸変性SEBS〕
タフテックM1913、旭化成ケミカルズ社製
【0044】
〔PA12〕
リルサン AESN P20TL、アルケマ社製
【0045】
〔フッ素樹脂〕
ネオフロン RP5000、ダイキン工業社製
【0046】
〔導電フッ素樹脂〕
ネオフロン RP5000AS、ダイキン工業社製
【0047】
つぎに、上記材料を用いて、以下に示すようにホースを作製した。
【0048】
〔実施例1〜14、比較例1〜7〕
下記の表1〜表4に示す、最内層用材料(実施例13,14のみ),内層用材料,外層用材料を準備し、これらを充填した各押出機から、上記各材料を熱溶融押し出し(共押し出し)して1つのダイに合流させ、これをサイジングダイスに通すことにより、内径6mmの平滑ホースを作製した。なお、表1〜表4に層形成材料の記載がないものは、その層の形成は行っていない。また、下記の表1〜表4において、PBT,HDPE,PA12といったポリマーとともに変性SEBSを含有する層形成材料は、同表に示す重量比(wt%)で、二軸混練押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用いて250℃で均一に混練されたものであり、さらに、この層形成材料の硬化物は、上記ポリマーを海相(マトリクス)とし、変性SEBSを島相(ドメイン)とするアロイ材であることが、走査電子顕微鏡(SEM)での観察により確認されている。また、上記作製した平滑ホースが1層構造の場合、その層の厚みは1mmとし、2層構造の場合、内層の厚み0. 3mm/外層の厚み0. 7mmとし、3層構造の場合、最内層の厚み0.05mm/内層の厚み0.25mm/外層の厚み0.7mmとした。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
このようにして得られた実施例および比較例のホースを用い、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表5〜表8に併せて示した。
【0054】
〔耐燃料油性〕
各ホースを、10mm幅で短冊状に切断して、サンプルを作製した。そして、上記サンプルを、Fuel C/M15(Fuel C:メタノール=85容量%:15容量%の混合燃料液)に、60℃×168時間浸漬した。そして、上記浸漬後のサンプルの各層の溶解状態を目視評価し、各層とも溶解しなかったものを○、いずれかの層に溶解がみられたものを×と評価した。
【0055】
〔燃料透過量〕
各ホースに対し、等圧式ホース透過率測定装置(GTRテック社製、GTR−TUBE3−TG)を用いて、トルエン/イソオクタン/エタノールを45:45:10(体積比)の割合で混合した模擬アルコール添加ガソリンの透過係数を、40℃で一カ月間測定した(単位:mg/m/day)。なお、表に記載した値は、平衡に達したときの値である。そして、この値が、50(mg/m/day)未満のものを○、50(mg/m/day)以上のものを×と評価した。
【0056】
〔層間接着力〕
各ホースを、10mm幅で短冊状に切断して、サンプルを作製した。そして、各サンプルの層間(実施例1〜12,比較例3〜6においては、内層/外層間。実施例13,14においては、最内層/内層、および内層/外層間。)を剥離させ、各々引張試験機のチャックに挟み、引張速度50mm/分の条件で、180度剥離強度(N/cm)を測定した。なお、剥離強度が20N/cm以上であれば、層間接着性が良好という目標値を設定し、その評価において○と表記し、15N/cm以上20N/cm未満のものは△、15N/cm未満のものは×と評価した。なお、本発明においては、△以上の評価(○および△)が要求される。
【0057】
〔低温柔軟性〕
各ホースを、低温(−40℃)環境下に24時間放置した後、上記ホースを90°に折り曲げた。これにより、ホースに亀裂や折れといった異常がみられたものを×、上記異常がみられなかったものを○と評価した。
【0058】
【表5】

【0059】
【表6】

【0060】
【表7】

【0061】
【表8】

【0062】
上記結果から、実施例品は、いずれも燃料透過量が小さく、耐燃料油性、層間接着性、低温柔軟性に優れていることがわかる。
【0063】
これに対して、PBT単層構造である比較例1品は、低温柔軟性に劣る。HDPE単層構造である比較例2品は、低温柔軟性には優れるものの、燃料透過性が高く、燃料用ホース用途に適さない。比較例3品は、PBT内層とHDPE外層との積層構造をとるが、両層とも変性SEBSを含有しておらず、層間接着性、低温柔軟性に劣る。比較例4品は、PBT内層とアミン変性SEBS外層との積層構造をとるが、耐燃料油性試験において外層材の溶解が生じた。比較例5品は、PBT内層と酸変性SEBS外層との積層構造をとるが、上記と同様、耐燃料油性試験において外層材の溶解が生じ、また、層間接着性、低温柔軟性にも劣る。比較例6品は、PBT内層とPA12外層との積層構造をとるが、両層とも変性SEBSを含有しておらず、層間接着性、低温柔軟性に劣る。比較例7品は、PA12単層構造であり、燃料透過性が高く、燃料用ホース用途に適さない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の燃料用ホースは、ガソリン、アルコール混合ガソリン、ディーゼル燃料、CNG(圧縮天然ガス)、LPG(液化石油ガス)等の自動車用燃料の輸送用ホースして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 内層
2 外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)からなる管状の内層と、その外周面に接して設けられた下記の(B)からなる外層とを備えた燃料用ホースであって、下記の(α)または(β)の要件を満たし、両層が層間接着されていることを特徴とする燃料用ホース。
(A)芳香族ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂組成物。
(B)ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂の少なくとも一方を主成分とする樹脂組成物。
(α)上記樹脂組成物(B)が、アミン変性ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン〔アミン変性SEBS〕を含有する。
(β)上記樹脂組成物(A)が、アミン変性ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン〔アミン変性SEBS〕を含有し、上記樹脂組成物(B)が、酸変性ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン〔酸変性SEBS〕を含有する。
【請求項2】
上記要件(α)を満たし、樹脂組成物(B)におけるアミン変性SEBSの含有割合が、1.5〜50重量%の範囲である請求項1記載の燃料用ホース。
【請求項3】
上記要件(α)を満たすとともに、樹脂組成物(A)が、酸変性SEBSを含有する請求項1または2記載の燃料用ホース。
【請求項4】
上記要件(β)を満たし、樹脂組成物(A)におけるアミン変性SEBSの含有割合が2.0〜30重量%の範囲であり、樹脂組成物(B)における酸変性SEBSの含有割合が1.5〜50重量%の範囲である請求項1記載の燃料用ホース。
【請求項5】
上記要件(α)または(β)に記載の変性SEBSを含有する層が、その変性SEBSを島相(ドメイン)とするアロイ材からなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料用ホース。
【請求項6】
上記内層の内周面上に、さらに、フッ素系樹脂からなる最内層を備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料用ホース。

【図1】
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【公開番号】特開2011−245773(P2011−245773A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122190(P2010−122190)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】