説明

燃料遮断弁

【課題】本発明は、燃料タンク内でのチューブT1,T2の配策を狭いスペースで行なうことができる燃料遮断弁を提供する。
【解決手段】燃料遮断弁20は、弁室22Sを有するケーシング本体23と、弁室22Sと外部とを接続する連通室25Sとを形成するケーシング22と、弁室22S内に収納され燃料タンクFT内の燃料液位に応じて昇降することで接続通路23bを開閉するフロート機構30とを備えている。ケーシング22は、その側部からそれぞれ突設され、連通室25Sに接続されるとともにチューブT1を介して外部に接続される第1管体部26と、他の弁にチューブT2を介して連通室25Sに接続される第2管体部27を有している。第1管体部26と第2管体部27は、ケーシング22の周方向で同じ位置であり、かつ上下方向に並列状態で配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内に配置され、燃料タンク内と外部とを接続する接続通路を開閉することで燃料タンクと外部とを連通遮断する燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料遮断弁を用いた燃料タンクのシステムとして、例えば、特許文献1の技術が知られている。このシステムは、燃料タンク内とキャニスタとを接続するための燃料遮断弁を燃料タンクの上壁に複数個設置することにより、車両の傾斜に伴って燃料タンクが傾いた場合にも、外部への通気を確保している。上記燃料遮断弁では、キャニスタへの配管経路を簡略化するために、1つの燃料遮断弁に他の燃料遮断弁を接続するための管体をキャニスタへの管体とは別に突設した構成を用いている。図6は従来の燃料遮断弁を上方から見た図である。燃料遮断弁100の上部の蓋体102には、管体部104,106がそれぞれ突設されている。管体部104,106は、蓋体102を中心に180゜に配置され、チューブT1,T2を介してキャニスタおよび他の燃料遮断弁にそれぞれ接続されている。
【0003】
しかし、燃料遮断弁の管体部104,106は、チューブT1,T2の配策を含めて、上部に大きなスペースを必要とし、特に燃料遮断弁を燃料タンク内に配置した場合には、燃料遮断弁の配置スペースの確保が難しいという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平1−301227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、燃料タンク内でのチューブの配策を狭いスペースで行なうことができる燃料遮断弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、燃料タンク内の上部に配置され、燃料タンク内と外部とを接続する接続通路を開閉することで燃料タンクと外部とを連通遮断する燃料遮断弁において、
上記接続通路に接続される弁室を有するケーシング本体と、上記弁室と外部とを接続する連通室とを形成するケーシングと、
上記弁室内に収納され、上記燃料タンク内の燃料液位に応じて昇降することで上記接続通路を開閉するフロート機構と、
を備え、
上記ケーシングは、該ケーシングの側部からそれぞれ突設され、上記連通室に接続されるとともにチューブを介して外部に接続される第1管体部と、上記燃料タンク内に設置される他の弁にチューブを介して上記連通室に接続される第2管体部を有し、
上記第1管体部と第2管体部は、上記ケーシングの周方向で同じ位置であり、かつ上下方向に並列状態で配置されていること、を特徴とする。
【0008】
適用例1に記載の燃料遮断弁を用いた燃料タンクは、燃料遮断弁の弁室、接続通路、第1管体部、さらにチューブを通じて外部に接続され、通気が確保されている。そして、車両の傾斜や揺動等により、燃料タンク内の燃料液位が所定の液位に達すると、燃料は、弁室に流入する。これにより、フロート機構に浮力が生じて上昇し、フロート機構が接続通路を閉塞するから燃料がキャニスタ側へ流出しない。また、燃料タンク内に配置された他の弁は、チューブを通じて第2管体部に接続され、連通室から第1管体部を通じて外部に連通している。このように、燃料遮断弁は、他の弁の外部への通気路としての作用も果たしている。
【0009】
適用例1にかかる第1および第2管体部は、ケーシングの周方向で同じ位置であり、かつ上下方向に配置され、つまりケーシングの一側方のスペースに集められているから、これらに接続されるチューブも集約され、よって、従来の技術で説明したように、燃料遮断弁の複数の方向のスペースに配管される場合と比べて、タンク内の省スペース化を図ることができる。また、第1および第2管体部は、ケーシングの側部の一方向に配置することにより、チューブを曲げることなく、燃料タンクからの外部通路を1箇所から導出することができ、配策が容易になる。
【0010】
また、本適用例1によると、第1および第2管体部がケーシングの周方向で同じ位置であり、かつ上下方向に配置されているから、射出成形の際に、第1および第2管体部を水平方向である一方向の型割でよく、つまり、複数の方向からのスライド型が必要である金型構造をとらなくてよいから、製造が簡単になる。
【0011】
[適用例2]
適用例2の連通室は、上記ケーシングの側部であって上記弁室に対してケーシング本体を隔てかつ通路形成壁で囲まれて形成されている構成である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(1) インタンク用弁ユニットの取付構造の概略構成
図1は本発明の一実施例にかかる燃料遮断弁をインタンク用弁ユニットに装着した自動車の燃料タンクFTを示す断面図である。燃料タンクFTは、複数の樹脂材料を積層して形成されており、周知の方法、つまり円筒状のパリソンを金型に押し出すことにより製造されている。燃料タンクFT内には、支持体10および燃料遮断弁20,20Aが配置されている。支持体10は、燃料遮断弁20,20Aをそれぞれ装着するとともに、燃料タンクの支持構造を高めたり、燃料の波を低減したりする部材である。燃料遮断弁20,20Aは、いわゆるインタンク式であり、車両の傾倒時や車両の急旋回時などに燃料タンクFT内の燃料が上昇したときに、外部への燃料の流出を規制する弁であり、燃料タンクFT内に複数個(図示では2個)配置されている。燃料遮断弁20の一方は、チューブT1を介してキャニスタCSに直接接続され、他方の燃料遮断弁20Aは、チューブT2、および燃料遮断弁20を介してキャニスタCSに接続されている。したがって、燃料遮断弁20は、キャニスタCSと他の燃料遮断弁20Aとに接続される2ポートをもっており、1ポートだけをもっている燃料遮断弁20Aの構成と僅かに異なっている。
【0013】
(2) 支持体10の構成
支持体10は、2本の支持構造11A,11Bと、支持構造11A,11Bを連結する連結部材12とで構成されている。支持構造11A,11Bは、燃料遮断弁20,20Aをそれぞれ装着したほぼ同じ構造である。図2はインタンク用弁ユニットのうち支持構造11Aを示す斜視図である。支持構造11Aは、燃料タンクの下壁に溶着されたダンパ部13と、ダンパ部13の上部に形成された支柱14と、支柱14の上部に形成され燃料遮断弁20を収納する収納部15とを備えている。ダンパ部13は、燃料タンクの膨張収縮を吸収するとともに燃料タンクの振動が燃料遮断弁20に伝達されるのを緩和している。
【0014】
図3は収納部15に収納された燃料遮断弁20を示す断面図である。収納部15は、燃料遮断弁20を固定するとともに燃料遮断弁20の周囲を覆うことで、燃料の波が燃料遮断弁20に及ぶことを防ぐための筒状の部材であり、取付板15aと、取付板15aの外周部から上方に円筒状に突設された側壁15bとを備えており、上開口15cで上方に開放され、側壁15bに形成された側開口15dで側方を開放している。
【0015】
(3) 燃料遮断弁20の構成
図4は燃料遮断弁20を示す側面図、図5は燃料遮断弁20を分解した断面図である。図5において、燃料遮断弁20は、ケーシング22と、フロート機構30と、スプリング34とを主要な構成として備えている。ケーシング22は、筒状のケーシング本体23と、ケーシング本体23の上部に取り付けられケーシング本体23の上方に上室24Sを形成する上蓋24と、ケーシング本体23の下部に装着された底蓋28とを備えており、ケーシング本体23と底蓋28とにより弁室22Sを形成している。ケーシング本体23の上壁23aの中央部には、接続通路23bが形成され、その側壁23cには、通気孔23dが形成されている。また、ケーシング22の側部には、連通室25Sが形成されている。連通室25Sは、ケーシング本体23の側部から形成された通路形成壁25により、弁室22Sの側方に配置されている。連通室25Sは、上方に開放し、上蓋24と通路形成壁25とにより区画されている。
【0016】
通路形成壁25の側部には、第1管体部26が斜め下方に向けて突設されている。第1管体部26内には、管通路26aが形成されており、管通路26aの一端側が、連通室25S、上室24S、接続通路23b、弁室22Sを介して、燃料タンクFT内に接続され、他端側がチューブT1(図1)を介してキャニスタ側に接続されている。また、第1管体部26の下方には、第1管体部26と平行に管通路27aを有する第1管体部26が突設されている。第2管体部27は、第1管体部26とケーシング22の周方向で同じ位置であり、かつ上下方向に並列状態で配置されており、燃料タンク内に設置される他の燃料遮断弁20AにチューブT2を介して接続されている。
【0017】
底蓋28は、円板状の底蓋本体28aと、底蓋本体28aに形成された連通孔28bと、底蓋本体28aの上面に形成されたスプリング支持部28cと、第1係合部28dと、第2係合部28eとを備えている。図4に示すように、第1係合部28dは、上方に向けて2箇所突設された爪であり、ケーシング本体23の側壁23cに形成された段部である弁側被係合部23eに係合することで底蓋28をケーシング本体23に組み付けるように形成されている。第2係合部28eは、収納部15の透孔である支持側被係合部15eに係合することで、燃料遮断弁20が収納部15に固定されるように構成されている。
【0018】
フロート機構30は、弁室22Sに収納されるフロート本体31を備え、その上部に、ほぼ円錐形状の弁部32が突設されている。弁部32は、フロート本体31の昇降により接続通路23bを開閉するように構成されている。スプリング34は、底蓋28のスプリング支持部28cで支持され、フロート機構30を上方に付勢している。
【0019】
燃料遮断弁20の構成により、図3に示すように、燃料タンク内の燃料液位の上昇につれて燃料タンク内の上部に溜まっていた燃料蒸気は、ケーシング22の通気孔23dおよび底蓋28の連通孔28b、弁室22S、接続通路23b、管通路26aを通じ、さらにチューブT1を通じてキャニスタ側へ逃がされる。そして、車両の傾斜や揺動等により、燃料タンクFT内の燃料液位が所定の液位に達すると、燃料は、底蓋28の連通孔28bを通じて弁室22Sに流入する。これにより、フロート機構30に浮力が生じて上昇し、フロート機構30の弁部32が接続通路23bを閉塞するから燃料がキャニスタ側へ流出しない。
【0020】
(4) 燃料遮断弁20と支持体10との取付構造
図5において、燃料遮断弁20は、その各部品を組み付けた後に支持体10に固定する。すなわち、ケーシング本体23の上部に上蓋24を溶着し、さらに、フロート機構30およびスプリング34を収納した後に、底蓋28の第1係合部28dを弁側被係合部23eに係合することで、底蓋28をケーシング本体23に組み付ける。そして、組み付けられた燃料遮断弁20は、底蓋28の第2係合部28eを、支持体10の取付板15aの支持側被係合部15eに係合することで収納部15に固定される。そして、支持体10に燃料遮断弁20Aも同様に設置した後に、燃料遮断弁20の第1および第2管体部26,27にチューブT1、チューブT2を接続し、これをブロー成形の際に、パリソン内に配置して、型締めすることによりパリソンと支持体10の上下端とが溶着される。
【0021】
(5) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、上述した効果のほか、以下の効果を奏する。
(5)−1 第1および第2管体部26,27は、ケーシング22の周方向で同じ位置であり、かつ上下方向に配置され、つまりケーシング22の一側方のスペースに集められているから、これらに接続されるチューブも集約され、よって、従来の技術で説明したように、燃料遮断弁20の複数の方向のスペースに配管される場合と比べて、タンク内の省スペース化を図ることができる。また、第1および第2管体部26,27は、ケーシング22の側部の一方向に配置することにより、チューブを曲げることなく、燃料タンクからの外部通路を1箇所から導出することができ、配策が容易になる。
【0022】
(5)−2 第1および第2管体部26,27がケーシング22の周方向で同じ位置であり、かつ上下方向に配列配置されているから、射出成形の際に、第1および第2管体部26,27を水平方向である一方向の型割でよく、つまり、複数の方向からのスライド型が必要である金型構造をとらなくてよいから、製造が簡単になる。
【0023】
(5)−3 連通室25Sは、チューブT2や接続通路23bから流出した燃料を一時的に止める液溜まりとして機能し、チューブT1を通じたキャニスタ側への燃料の流出を防止することができる。
【0024】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
上記実施例では、チューブT1をキャニスタCSに接続し、チューブT2を他の燃料遮断弁20Aに接続した構成について説明したが、これに限らず、逆のチューブの配置、つまり連通室の上部を他の燃料遮断弁のチューブに接続するとともに、連通室の下部をキャニスタに接続することにより、燃料タンク内の他の燃料遮断弁の種々の配置や燃料タンク内にキャニスタを配置した構成に対応させることができる。
上記実施例における燃料遮断弁として、車両の傾倒時などに燃料の流出を防止する、ロールオーバー弁について説明したが、これに限らず、給油時の燃料を所定レベルに規制する満タン規制弁などの各種の弁に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例にかかる燃料遮断弁をインタンク用弁ユニットに装着した自動車の燃料タンクを示す断面図である。
【図2】インタンク用弁ユニットのうち支持構造を示す斜視図である。
【図3】収納部に収納された燃料遮断弁を示す断面図である。
【図4】燃料遮断弁を示す側面図である。
【図5】燃料遮断弁を分解した断面図である。
【図6】従来の燃料遮断弁を上方から見た図である。
【符号の説明】
【0026】
10…支持体
11A,11B…支持構造
12…連結部材
13…ダンパ部
14…支柱
15…収納部
15a…取付板
15b…側壁
15c…上開口
15d…側開口
15e…支持側被係合部
20,20A…燃料遮断弁
22…ケーシング
22S…弁室
23…ケーシング本体
23a…上壁
23b…接続通路
23c…側壁
23d…通気孔
23e…弁側被係合部
24…上蓋
24S…上室
25…通路形成壁
25S…連通室
26,27…第1および第2管体部
26a…管通路
27a…管通路
28…底蓋
28a…底蓋本体
28b…連通孔
28c…スプリング支持部
28d…第1係合部
28e…第2係合部
30…フロート機構
31…フロート本体
32…弁部
34…スプリング
T1,T2…チューブ
CS…キャニスタ
FT…燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(FT)内の上部に配置され、燃料タンク(FT)内と外部とを接続する接続通路(23b)を開閉することで燃料タンク(FT)と外部とを連通遮断する燃料遮断弁において、
上記接続通路(23b)に接続される弁室(22S)を有するケーシング本体(23)と、上記弁室(22S)と外部とを接続する連通室(25S)とを形成するケーシング(22)と、
上記弁室(22S)内に収納され、上記燃料タンク(FT)内の燃料液位に応じて昇降することで上記接続通路(23b)を開閉するフロート機構(30)と、
を備え、
上記ケーシング(22)は、該ケーシング(22)の側部からそれぞれ突設され、上記連通室(25S)に接続されるとともにチューブ(T1)を介して外部に接続される第1管体部(26)と、上記燃料タンク(FT)内に設置される他の弁にチューブ(T2)を介して上記連通室(25S)に接続される第2管体部(27)を有し、
上記第1管体部(26)と第2管体部(27)は、上記ケーシング(22)の周方向で同じ位置であり、かつ上下方向に並列状態で配置されていること、
を特徴とする燃料遮断弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料遮断弁において、
上記連通室(25S)は、上記ケーシング(22)の側部であって上記弁室(22S)に対して上記ケーシング本体(23)を隔てかつ通路形成壁(25)で囲まれて形成されている燃料遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−71412(P2010−71412A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240806(P2008−240806)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】