説明

燃料集合体放射能測定装置および燃料集合体の放射能測定方法

【課題】放射能の測定時間をさらに短縮することができる燃料集合体放射能測定装置を提供する。
【解決手段】燃料集合体放射能測定装置は、LaBr(Ce)シンチレータ4を含む放射線信号発生装置3、AD変換器12、デジタル信号処理器13およびデータ解析装置18を有する。デジタル信号処理器13はFPGA14およびCPU17を有する。燃料プールの水中に配置された燃料集合体から放出されたγ線を入射したLaBr(Ce)シンチレータ4はシンチレータ光を発し、光電子増倍管5がこの光を電気信号である放射線検出信号に変換する。FPGA14の波高解析装置15が、AD変換器12で生成されたデジタル波形を有する放射線検出信号を入力し、このデジタル波形を台形波形に変換して最大波高値を求める。データ解析装置18が、入力した複数の最大波高値を用いてターゲット核種を定量し、燃焼度を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料集合体放射能測定装置および燃料集合体の放射能測定方法に係り、特に、原子炉の炉心から取り出された使用済燃料集合体から放出される放射線(例えば、γ線)を測定するのに好適な燃料集合体放射能測定装置および燃料集合体の放射能測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から原子力発電プラントでは1サイクルの運転終了後、使用済の燃料集合体を原子炉から取り出し、この使用済燃料集合体の放射能測定を行なっている。この放射能測定は、γスキャン測定作業とも呼ばれている。さらに、この放射能測定値に基づいて使用済燃料集合体の燃焼度および出力分布を求める。使用済燃料集合体の放射能測定は、原子炉炉心核設計計算結果との比較評価を行なうために不可欠であると共に、原子炉の安全性および燃料集合体の燃焼保証および原子炉の運転管理を検証するために、重要な作業である。さらに、この使用済燃料集合体の放射能測定は、使用済燃料集合体の再処理施設への搬出、移送および再処理施設での受け入れの際に行なう臨界安全性確保の燃焼度確認作業としても重要な技術である。
【0003】
従来の燃料集合体放射能測定装置は、燃料集合体から放出されるγ線を測定するNaI(Tl)検出器を用いているものが多い。従来の燃料集合体放射能測定装置の一例が、特開平10−239439号公報に記載されている。原子炉から取り出された使用済燃料集合体は、冷却水が充填された燃料貯蔵プール内に設置された燃料貯蔵ランク内に収納されて保管される。燃料貯蔵ラックに収納されている使用済燃料集合体を取り出し、この使用済燃料集合体を燃料集合体移動装置にセットする。燃料集合体移動装置にセットされた使用済燃料集合体から放出される放射線を、昇降装置に吊り下げた放射線検出装置で測定する。放射線検出装置は、容器内に、シンチレータであるNaI(Tl)検出器およびコリメータを設置している。コリメータは、NaI(Tl)検出器の前面に配置され、測定対象である燃料集合体の軸方向の一部の領域(燃料集合体の注目領域(ノード))から放出される放射線を選択的にNaI(Tl)検出器に入射させる。コリメータの前面には、NaI(Tl)検出器に入射する放射線の量を調節するアブソーバーが配置され、NaI(Tl)検出器は放射線遮蔽体で取り囲まれている。
【0004】
燃料集合体から放出されるγ線を測定する際、エネルギー分解能(γ線のエネルギー弁別性能(放射性核種の分析性能))の向上を目的として、CdTe半導体検出器およびGe(Li)半導体検出器等の半導体放射線検出器を用いた燃料集合体放射能測定装置が、特開平6−160585号公報、特開平10−39085号公報、特開平10−239439号公報および特開2000−221293号公報に記載されている。
【0005】
また、燃料集合体の放射能測定作業の効率向上を目指した、複数の放射線検出器を有する燃料集合体放射能測定装置の例が、特開平7−306291号公報、特開平9−251092号公報、特開平10−39085号公報および特開平10−90472号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−160585号公報
【特許文献2】特開平7−306291号公報
【特許文献3】特開平9−251092号公報
【特許文献4】特開平10−39085号公報
【特許文献5】特開平10−90472号公報
【特許文献6】特開平10−239439号公報
【特許文献7】特開2000−221293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から、一般的に使用されているNaI(Tl)検出器を用いた燃料集合体放射能測定装置(特開平10−239439号公報)は、アナログ計測回路を用いる構成であり、最大計数率が10kcps以下と低く、放射能の測定時間のさらなる短縮が困難である。
【0008】
原子炉運転停止直後の燃料集合体は放射能強度が極めて強く、通常の放射線検出器は、検出性能(最大計数率)が飽和して正常動作が困難になる。正常動作の困難性は、一個の放射線が入射して、次の放射線を検出するまでに必要な処理時間(不感時間)で決まる。なお、処理時間(不感時間)は、放射線のエネルギー分析を行なうために必要な放射線計測のパルス幅(波形幅)によって決定される。処理時間(不感時間)は、シンチレーション検出器の場合にはシンチレーション光の減衰時間に相当し、半導体放射線検出器の場合には電荷(電子、ホール)の収集時間に相当する。このため、従来の放射線検出器を用いた場合には、放射線の入射量を低減するために、その放射線検出器と測定対象の燃料集合体の間の距離を長くするか、コリメータで入射量を極端に制限するかの測定幾何体系が不可欠であった。これは、燃料集合体の必要測定時間と密接に関係し、従来の放射線検出器を用いた燃料集合体放射能測定装置では、燃焼度及び出力分布を算出するために必要な放射線計数値を得るために長い測定時間を必要としていた。
【0009】
また、特開平6−160585号公報、特開平10−39085号公報、特開平10−239439号公報および特開2000−221293号公報に記載された燃料集合体放射能測定装置は、CdTe放射線検出器およびGe(Li)放射線検出器等の半導体放射線検出器を用いている。CdTe放射線検出器は、長時間使用する間に分極現象が発生して放射線検出性能に安定性がなくなり、また、有感体積の大きな放射線検出器(感度が高い放射線検出器)が製作できないという問題がある。さらに、Ge(Li)放射線検出器は、液体窒素温度近辺(−196℃)に冷却する必要があり、また、コストが極めて高いという問題がある。これらの半導体放射線検出器も、最大計数率の限界から放射能の測定時間のさらなる短縮が困難である。
【0010】
燃料集合体の放射能の測定作業時間(γスキャン測定作業時間)の短縮は、原子力プラントの定期検査期間の短縮につながり、原子力プラントの稼働率を高めることになる。
【0011】
さらに、特開平7−306291号公報、特開平9−251092号公報、特開平10−39085号公報および特開平10−90472号公報にそれぞれ記載された燃料集合体放射能測定装置は、複数の放射線検出器を搭載し、放射能測定作業効率の向上を狙っている。しかしながら、コストパフォーマンスの配慮が一切なく、燃料集合体放射能測定装置全体のコストが大幅に高くなり、実用的な装置構成という点で問題があった。
【0012】
本発明の目的は、放射線の測定作業時間をさらに短縮することができる燃料集合体放射能測定装置および燃料集合体の放射能測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
燃料集合体から放出される放射線の入射を制限するコリメータ、コリメータを通過した放射線を検出する、発光減衰時間が40ns以下であるシンチレータ、および放射線の入射によってこのシンチレータで発生する光に基づいて電気信号である放射線検出信号を生成する信号生成装置をケーシング内に配置して構成される放射線測定装置と、
信号生成装置から出力される放射線検出信号をデジタル波形を有する放射線検出信号に変換する信号変換装置と、
信号変換装置から出力される、デジタル波形を有する放射線検出信号ごとに、最大波高値を求めるデジタル波形処理装置と、
デジタル波形処理装置で得られる複数の最大波高値からターゲット核種を定量するデータ解析装置とを備えたことにある。
【0014】
発光減衰時間が40ns以下であるシンチレータで発生する光に基づいて生成される放射線検出信号を、デジタル波形を有するパルス幅の短い放射線検出信号に変換し、デジタル波形処理装置において、このデジタル波形を有する放射線検出信号ごとに最大波高値を求めるので、スループットを向上させることができ、測定対象である燃料集合体の放射線測定作業時間を著しく短縮することができる。さらに、発光減衰時間が40ns以下であるシンチレータを用いているので、燃料集合体から放出される放射線の測定に要する時間を短縮することができる。
【0015】
好ましくは、デジタル波形処理装置として、波形処理時定数が0.5μs〜8μsの範囲にあるデジタル信号処理装置を用いることが望ましい。
【0016】
さらに好ましくは、デジタル波形処理装置として、波形処理時定数が0.5μs〜2μsの範囲にあるデジタル信号処理装置を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃料集合体の放射線の測定作業時間をさらに短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の燃料集合体放射能測定装置の構成図である。
【図2】図1に示すLaBr(Ce)シンチレーション検出器の構成図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図1に示す信号処理装置の詳細構成図である。
【図5】図4に示す信号処理装置で実行される処理手順の説明図である。
【図6】各種シンチレータの物性値を示す説明図である。
【図7】デジタル信号処理器で行われる波形処理を模式的に示す説明図である。
【図8】波形処理時定数とスループットの関係を示す特性図である。
【図9】燃料集合体放射能測定装置を用いた一体の燃料集合体の放射線測定に要する作業時間の分析結果を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例2の燃料集合体放射能測定装置に用いられる信号処理装置の詳細構成図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例3の燃料集合体放射能測定装置の構成図である。
【図12】放射線検出器をチャンネル数と放射線測定作業時間の短縮比および装置コスト比との関係を示す説明図である。
【図13】放射線検出器をチャンネル数と放射線測定作業時間の関係を示す説明図である。
【図14】本発明の他の実施例である実施例4の燃料集合体放射能測定装置の構成図である。
【図15】LaBr(Ce)シンチレーション検出器の測定スペクトルの一例を示す説明図である。
【図16】Ge(Li)放射線検出器の測定スペクトルの一例を示す図である。
【図17】LaBr(Ce)シンチレーション検出器の測定スペクトルの他の例を示す説明図である。
【図18】本発明の他の実施例である実施例5の燃料集合体放射能測定装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
燃料集合体放射能測定装置として、燃料集合体燃焼度測定装置及び燃料集合体出力分布測定装置がある。
【0020】
本発明の実施例を、図面を用いて以下説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の好適な一実施例である実施例1の燃料集合体放射能測定装置を、図1、図2、図3および図4を用いて説明する。
【0022】
本実施例の燃料集合体放射能測定装置1は、放射線測定装置2、信号処理装置10、昇降装置21および燃料集合体移送装置23を備えている。放射線測定装置2は、放射線信号発生装置3、ポストコリメータ7、プリコリメータ8およびアブソーバ9を有する。放射線信号発生装置3、ポストコリメータ7、プリコリメータ8およびアブソーバ9は、放射線測定装置2のケーシング32内に設置されている。ケーシング32の前面には、γ線等の放射線を入射する放射線入射口(図示せず)が設けられる。アブソーバ9、プリコリメータ8およびポストコリメータ7が、ケーシング32の放射線入射口から遠ざかる方向で、この順にケーシング32内に配置される。アブソーバ9がケーシング32内で放射線入射口に最も近い位置に配置される。ケーシング32は水封構造になっている。プリコリメータ8には、放射線を通すスリットがプリコリメータ8を貫通して形成される。放射線信号発生装置3がポストコリメータ7内に配置され、放射線信号発生装置3の前方でポストコリメータ7に放射線を通すスリットが形成される。ポストコリメータ7およびプリコリメータ8は放射線遮へい体である。
【0023】
放射線信号発生装置3は、図2に示すように、放射線検出器であるLaBr(Ce)シンチレータ(セレン添加臭化ランタンシンチレータ)4、光電子増倍管(またはアバランシェホトダイオード)5及び前置増幅器6を有する。光電子増倍管5がLaBr(Ce)シンチレータ4に接続され、前置増幅器6が光電子増倍管5に接続される。
【0024】
信号処理装置10は、図4に示すように、線形増幅器11、アナログ/デジタル変換器(AD変換器)12、デジタル信号処理器(DSP回路)13およびデータ解析装置18を有する。デジタル信号処理器13は、デジタル波形処理装置である書き換え可能なゲートアレー(FPGA)14および中央演算装置(CPU)17を有する。FPGA14は波高解析装置15およびメモリー16を有する。
【0025】
燃料プール33は、原子炉建屋(図示せず)内に設けられており、原子炉建屋内に形成された、燃料交換機(図示せず)が移動する運転床34によって取り囲まれている。
【0026】
線形増幅器11は信号線20によって前置増幅器6に接続される。信号線20は、ケーシング32に取り付けられた水封ホース27内に収納されている。水封ホース27は運転床34の上まで伸びている。AD変換器12が線形増幅器11および波高解析装置15に接続される。メモリー16が波高解析装置15およびCPU17に接続される。データ解析装置18が、ケーブルによってCPU17に接続され、さらに表示装置19に接続される。
【0027】
信号処理装置10、昇降装置21および燃料集合体移送装置23は、運転床34上に設置される。放射線測定装置2は、ロープ22A,22Bにより昇降装置21から吊り下げられている。
【0028】
燃料集合体放射能測定装置1を用いた燃料集合体25の放射能測定について説明する。 測定対象である燃料集合体(例えば、使用済燃料集合体)25は、燃料プール33内に設置された燃料貯蔵ラック(図示せず)内に保管されている。この燃料集合体25は、原子炉圧力容器の炉心内から使用済燃料集合体として取り出され、燃料プール33内の燃料貯蔵ラック内に収納され、所定期間、保管され、燃料プール33内の冷却水により冷却される。
【0029】
燃料集合体(例えば、使用済燃料集合体)25の放射能を測定するとき、ロープ22A,22Bにより昇降装置21から吊り下げられた放射線測定装置2は、放射線測定領域において、燃料プール33内の冷却水中に配置される。放射線測定装置2は、昇降装置21によるロープ22A,22Bの巻き取り及び巻き戻しにより、燃料プール33内で上下動される。
【0030】
測定対象である燃料集合体25は、運転床34上を移動する燃料交換機(図示せず)によって把持されて燃料貯蔵ラックから取り出され、燃料集合体移送装置23により、放射線測定装置2が配置された、燃料プール33内の放射線測定領域まで移送される。放射線測定領域に到達した測定対象の燃料集合体25は、燃料交換機から、放射線測定領域内に配置された燃料集合体移送装置23に移される。この燃料集合体25は、燃料集合体移送装置23の掴み装置24に把持される。燃料集合体移送装置23は、燃料集合体25を回転および上下移動させることができる。燃料集合体移送装置23に把持された燃料集合体25は、放射線測定領域において図3に示すように放射線測定装置2と対向している。この状態で、ケーシング32に設けられた放射線入射口が、燃料集合体25と向かい合っている。燃料集合体25の、核燃料物質が充填されている燃料有効長は、軸方向に24分割され、分割された各領域をノードと称する。
【0031】
放射線測定装置2が、放射線測定領域で、燃料集合体移送装置23に保持されている燃料集合体25から所定距離だけ離れて設定されたとき、ポストコリメータ6およびプリコリメータ8にそれぞれ形成された各スリットの高さは、LaBr(Ce)シンチレータ4が、燃料集合体25の1つのノード26の高さを見込むように設定されている。また、ポストコリメータ6およびプリコリメータ8にそれぞれ形成された各スリットの水平方向の幅は、LaBr(Ce)シンチレータ4が、燃料集合体25の水平方向における幅全体を見込むように設定されている。燃料集合体25の各ノード26に対する放射線測定は、燃料集合体25を、燃料集合体移送装置23により上下方向に最も下方に位置するノード26から最も上方に位置するノード26に向って1ノード26ずつ移動させ、さらに回転させながら行う。
【0032】
燃料集合体25の1つのノードから放出された放射線(例えば、γ線)が、アブソーバ9を通過してプリコリメータ8のスリット内に入射される。アブソーバ9は、複数の放射線減衰板(例えば、厚みが1〜2cmの鉛板等)を含んでおり、プリコリメータ8のスリットの前方に配置する放射線減衰板の枚数を調節することによりプリコリメータ8のスリットに入射する放射線量の微調整を行なう。このアブソーバー9はプリコリメータ8とポストコリメータ7の間に配置しても良い。
【0033】
プリコリメータ8のスリットに入射された放射線は、このスリットを通過してポストコリメータ7のスリット内を通りLaBr(Ce)シンチレータ4に入射される。プリコリメータ8のスリットおよびポストコリメータ7のスリットを通過した放射線のみがLaBr(Ce)シンチレータ4に入射され、この放射線以外の放射線は、プリコリメータ8またはポストコリメータ7によって遮蔽される。放射線を入射したLaBr(Ce)シンチレータ4は、シンチレーション光を発する。このシンチレーション光は、光電子増倍管5に入力されて電気信号に変換される。この電気信号である放射線検出信号(アナログ信号)は、前置増幅器6で増幅され、信号線20を通って信号処理装置10の線形増幅器11に入力される。
【0034】
信号処理装置10で実行される処理を、図5を用いて具体的に説明する。前置増幅器の出力波形を高速のA/D変換器でデジタル波形に変換する(ステップS1)。線形増幅器11は、入力した放射線検出信号を増幅してA/D変換器12に出力する。A/D変換器12は、線形増幅器11から入力した放射線検出信号(出力波形)をデジタル信号(デジタル波形)に変換する。
【0035】
A/D変換器から出力されたデジタル波形をライズタイム及びフラットタイムを有する台形波形に変換する(ステップS2)。A/D変換器12でデジタル信号に変換されてデジタル波形を有する放射線検出信号が、FPGA14の波高解析装置15に入力される。波高解析装置15は、入力した放射線検出信号のデジタル波形を、演算により、図7に示すようなライズタイム(r)およびフラットトップタイム(f)を有する台形波形に変換し、この台形波形の各点のデジタル値を求める。波高解析装置15において、点線で示された前置増幅器6の出力(放射線検出信号のアナログ信号)が、実線で示す台形波形の各点のデジタル値に変換される。得られた、台形波形の各点のデジタル値がメモリー16に記憶される。
【0036】
ここで、各種シンチレータの物性値を図6に示す。LaBr(Ce)シンチレータの発光減衰時間が、従来のNaT(Tl)シンチレータに比べて約1/14と短いので、LaBr(Ce)シンチレータは高い計数率の測定に向いていることが分かる。LaBr(Ce)シンチレータの密度および発光量は、NaT(Tl)シンチレータのそれらに比べて約1.5倍と大きい。このため、LaBr(Ce)シンチレータは高感度で高分解能の放射線計測が可能になる。実際のエネルギー分解能の性能比較では、NaT(Tl)シンチレータが7〜8%(Cs−137)であるのに対して、LaBr(Ce)シンチレータが3%となる。LaBr(Ce)シンチレータのエネルギー分解能は、NaT(Tl)シンチレータよりも著しく向上する。
【0037】
この発光減衰時間が短いというLaBr3(Ce)シンチレータの性能を高計数率の条件下で発揮させるためには、高速デジタル波形整形処理回路(DSP回路)である、FPGA14を有するデジタル信号処理器(DSP回路)13を適用する必要がある。
【0038】
LaBr(Ce)シンチレータの発光減衰時間に合わせた波形処理時定数(1波形処理の時間幅)を20〜30nsに設定したとき、デジタル波形処理では、原理的に、放射線の、数10Mcpsの高計数率測定が可能になる。しかし、このような状態では、LaBr(Ce)シンチレータへの放射線の入射パルスが連続的になり、エネルギー分解能の性能を維持することができなくなる。
【0039】
このため、前述したように、A/D変換器12から出力されたデジタル信号である放射線検出信号のデジタル波形が、デジタル信号処理器(DSP回路)13の波高解析装置15で、図7に示す台形波形に演算により変換される。点線で示された前置増幅器6の出力信号は、立ち上がりが早くmsオーダーの長い立下り時間を持つ波形となっている。波高解析装置15は、前置増幅器6の出力信号の早い立ち上がり波形および急峻な立ち下がり波形を、演算により、台形のデジタル波形に高速で変換する。この台形波形を波高分析するときのデットタイムTdは、台形波形のライズタイムrにフラットトップタイムfを加えた時間を1.25倍した時間となる。すなわち、デットタイムTdは、式(1)で表される。台形波形のライズタイムrにフラットトップタイムfを加えた時間が、デジタル処理における波形処理時定数τである。デットタイムTdの逆数がスループット(最大計数率)となる。
【0040】
Td=(r+f)×1.25 (1)
このデジタル処理では、波形処理時定数τが0.1μs程度までの波形処理を実現することができる。しかし、エネルギー分解能の検出性能を十分に維持するためには、0.5μs〜8μsの範囲が実用的な波形処理時定数となる。この場合のスループットは、波形処理時定数0.5μsの時で1.6Mcps程度、波形処理時定数8μsの時で100kcps程度になる。
【0041】
本実施例におけるこのデジタル波形処理に対し、従来のアナログ回路の波形処理では波形処理時定数が10〜50μs程度と長く、そのデットタイムTdは波形処理時定数の6.5倍程度の時間になる。従って、アナログ回路では、波形処理時定数が10μsのとき、スループットは15kcps程度となる。図8が、従来のアナログ回路、および本実施例でのデジタル信号処理器(DSP回路)13の波高解析装置15のそれぞれにおける波形処理時定数とスループットの関係を示している。図8から明らかなように、デジタル信号処理器(DSP回路)13での波形処理は、従来のアナログ処理回路によるスループットを大幅に向上させることができる。
【0042】
ステップS2の処理を実行した後、台形波形のライズ波形とフラットトップ波形の偏極点波高値を選択する(ステップS3)。波高解析装置15は、ステップS2で求めた台形波形の各点のデジタル値から、ライズ波形とフラットトップ波形の偏極点波高値となるデジタル値を選択する。偏極点波高値は、図7において、ライズタイムrがフラットトップタイムfに変わる時点の波高値であり、フラットトップタイムfの波高値に等しく台形波形の最大波高値である。波高解析装置15は、選択した偏極点波高値のデジタル値を台形波形の最大波高値としてメモリー16に記憶する。ステップS3で求められた最大波高値は、LaBr(Ce)シンチレータ4に入射された放射線のエネルギーに対応している。
【0043】
波高解析装置15は、A/D変換器12から入力したデジタル波形を有する放射線検出信号のそれぞれに対してステップS2およびS3の処理を実行し、各放射線検出信号の、台形波形の最大波高値をメモリー16に記憶する。
【0044】
最大波高値をデータ解析装置18に送信する(ステップS4)。CPU17は、メモリー16に記憶された各最大波高値を、周期的にメモリー16から読み出してデータ解析装置18に出力する。波高解析装置15は、上記したように、デジタル波形を有する放射線検出信号を入力するたびに台形波形の最大波高値を求める。CPU17がメモリー16から最大波高値を読み出してデータ解析装置18に出力する周期は、波高解析装置15が最大波高値を求める周期よりも長い。このため、CPU17は、1つの最大波高値ではなく、前回の最大波高値の出力時点から今回の最大波高値の出力時点までにメモリー16に記憶された全ての最大波高値を出力する。CPU17から出力されたこれらの最大波高値は、ケーブルによりデータ解析装置18に伝えられる。
【0045】
各最大波高値の累積ヒストグラムを作成し、ターゲット核種を定量する(ステップS5)。データ解析装置18は、CPU17から入力した各最大波高値を用いて累積ヒストグラムを作成する。データ解析装置18は、入力した多数の最大波高値を用いてエネルギー分析を行い、エネルギーごとのカウント数を求めて測定γ線スペクトル(例えば、図15参照)を求める(累積ヒストグラムの作成)。測定γ線スペクトル(累積ヒストグラム)を基に、燃焼度を求める場合のターゲット核種である、例えば、Cs−137を定量し、ターゲット核種(例えば、Cs−137)の放射線強度を求める。
【0046】
ターゲット核種が定量された後、データ解析装置18は、定量により求められたターゲット核種(例えば、Cs−137)の放射線強度の換算により燃焼度を算出する。データ解析装置18は、算出した燃焼度を表示装置19に出力する。この結果、算出された燃焼度が表示装置19に表示される。このように燃焼度を求める本実施例の燃料集合体放射能測定装置は、燃料集合体燃焼度測定装置である。
【0047】
燃焼度の算出に用いられるターゲット核種は、Cs−137(662keV)、およびCs−134(796keV)とCs−137の比[Cs−134/Cs−137]等である。
【0048】
放射線強度の燃焼度への換算はオフラインで行なってもよく、燃焼度への換算を行うターゲット核種の放射線強度のみを表示してもよい。
【0049】
本実施例では、LaBr(Ce)シンチレータ4を用い、高速デジタル波形整形処理回路であるデジタル信号処理器(DSP回路)13、特に、FPGA14の波高解析装置15におけるステップS2の処理として、例えば、波形処理時定数が0.5μsの高速デジタル波形処理を行うことによって、スループットが1.6Mcpsに向上する。ちなみに、放射線検出器として従来のNaI(Tl)シンチレータを用いた従来の燃料集合体放射能測定装置は、信号処理装置としてアナログ回路を用いており、波形処理時定数が10μsのときでもスループットは15kcpsである。本実施例のスループットは、この従来の燃料集合体放射能測定装置よりもスループットが著しく向上する(本実施例のスループトは従来例のスループットの約100倍)。本実施例におけるこのようなスループットの向上は、燃料集合体25の放射線測定作業時間を大幅に短縮することができる。
【0050】
本実施例は、波形処理時定数が0.5μs〜8μsの範囲にあるデジタル信号処理器(DSP回路)13、すなわち、FPGA(デジタル波形処理装置)14の波高解析装置15を用いているので、スループットを100kcps〜1.6Mcpsに向上させることができる。このため、燃料集合体の放射線測定作業時間を著しく短縮することができる。
【0051】
さらに、本実施例は、LaBr(Ce)シンチレータ4を用いているので、燃料集合体25の放射線測定に要する時間を短縮することができる。この時間短縮を、図9を用いて説明する。
【0052】
燃焼度を求める従来の燃料集合体放射能測定装置を用いた一体の燃料集合体の放射線測定に要する作業時間を分析した結果を、図9に示す。従来の燃料集合体放射能測定装置は、1つのNaI(Tl)シンチレータを備えている。従来の燃料集合体放射能測定装置を用いた燃料集合体の放射線測定作業は、放射線測定前における、燃料プール内の燃料貯蔵ラックから燃料集合体移送装置(FPM)に燃料集合体を移動する第1工程、放射線検出器を用いた燃料集合体から放出される放射線を測定する第2工程、および放射線測定後における、燃料集合体移送装置(FPM)から燃料貯蔵ラックに燃料集合体を移動する第3工程を含んでいる。第1工程に要する時間は11分、第2工程に要する時間は48分、および第3工程に要する時間は11分である。この結果、燃料集合体一体あたりの放射線測定作業に要する総作業時間は、平均約70分となる。
【0053】
第2工程では、燃料集合体25から放出される放射線(γ線)が、NaI(Tl)シンチレータで測定される。この放射線の測定は、燃料集合体25の1ノードあたり、1分の時間が掛かる1つのノードに対する放射線側定が終了したとき、隣のノードでの放射線測定を実行するため、燃料集合体25は燃料集合体移送装置により上下方向(燃料集合体の軸方向)により1ノード分移動される。この1ノードの移動に要する時間は、1分である。この結果、燃料集合体の軸方向24ノードに対する放射線測定、すなわち、第2工程に要する時間は、放射線測定時間が24分および上下方向の移動時間が24分で、合計48分になる。
【0054】
本実施例では、LaBr(Ce)シンチレータ4を用いている関係上、燃料集合体25の1ノードあたりの放射線測定に要する時間が0.5分に短縮される。この結果、本実施例における燃料集合体25の24ノードに対する放射線測定に要する時間が、12分になり、従来の燃料集合体放射能測定装置を用いた燃料集合体の24ノードに対する放射線測定よりも12分短縮される。
【0055】
本実施例は、以上説明したように、燃料集合体の放射線測定作業に要する時間を短縮することができる。
【0056】
また、本実施例は、前述したようにスループットを向上させることができる。これは、LaBr(Ce)シンチレータ4から出力された放射線検出信号の数え落としを抑制することにつながり、燃料集合体放射能測定装置における感度を向上させる。
【0057】
LaBr(Ce)シンチレータ4の光減衰時間は、従来のNaI(Tl)シンチレータに比べて一桁以上短く、LaBr(Ce)シンチレータ4を利用した燃料集合体放射能測定装置は高計数率の測定性能を実現できる。さらに、LaBr(Ce)シンチレータ4ののエネルギー分解能の性能は、NaI(Tl)シンチレータに比べて2倍以上になる。これらの性能は、従来のアナログ計測回路の処理では不可能であり、上記シンチレータのシンチレーション光減衰時間に適合した超高速のデジタル波形処理回路との組み合わせがあって、初めて実現できる。すなわち、本構成が従来の課題を解決するための基本手段である。
【0058】
この手段で、超高計数率に対応することが可能になれば、測定装置を測定対象の燃料集合体に近づけることが容易となることや、遮蔽体の減量も可能となり、装置の大幅な小型化も可能となる。
【0059】
本実施例の燃料集合体放射能測定装置は、LaBr(Ce)シンチレータ4の替りに、LaClシンチレータ(発光減衰時間:28ns)、LuAl12シンチレータ(発光減衰時間:25ns)、またはLFSシンチレータ(発光減衰時間:36ns)等のように、発光減衰時間が40ns以下であるシンチレータを用いてもよい。
【0060】
LaBr(Ce)シンチレータ4、LaClシンチレータ、LuAl12シンチレータ、およびLFSシンチレータ等のように、発光減衰時間が40ns以下であるシンチレータを用いた場合には、デジタル波形処理装置として、波形処理時定数が0.5μs〜2μsの範囲にあるデジタル信号処理装置を用いることが最も望ましく、燃料集合体の放射線測定作業に要する時間が最も短縮される。
【0061】
燃料集合体放射能測定装置である燃料集合体出力分布測定装置は、燃料集合体放射能測定装置1と同じ構成を有する。燃料集合体出力分布測定装置で行われる放射線計測および信号処理等の処理内容は、燃料集合体放射能測定装置1で行われる放射線計測および信号処理等の処理内容と、以下に述べる処理を除いて実質的に同じである。燃料集合体出力分布測定装置で行われるステップS5において、求めた測定γ線スペクトルに基づいて、測定γ線スペクトル(累積ヒストグラム)を基に、出力分布を求める場合のターゲット核種である、例えば、La−140(1596keV)を定量し、ターゲット核種(例えば、La−140)の放射線強度を求める。ターゲット核種が定量された後、データ解析装置18は、定量により求められたターゲット核種(例えば、La−140)の放射線強度の換算により出力分布を算出する。データ解析装置18は、算出した出力分布を表示装置19に出力する。この結果、算出された出力分布が表示装置19に表示される。
【0062】
このような燃料集合体出力分布測定装置も、前述した本実施例の燃料集合体燃焼度測定装置(燃料集合体放射能測定装置1)で生じる各効果を得ることができる。
【0063】
放射線強度の出力分布への換算はオフラインで行なってもよく、出力分布への換算を行うターゲット核種の放射線強度のみを表示してもよい。
【実施例2】
【0064】
本発明の他の実施例である実施例2の燃料集合体放射能測定装置を、図10を用いて説明する。
【0065】
本実施例の燃料集合体放射能測定装置1Aは、実施例1の燃料集合体出力分布測定装置1において放射線測定装置2を複数チャンネル設けた構成を有する。すなわち、燃料集合体放射能測定装置1Aは、放射線信号発生装置3a,3b,……,3eを別々に有する複数の放射線測定装置2を有する。さらに、信号処理装置10は、n個の線形増幅器11a,11b,……,11e、およびn個のAD変換器12a,12b,……,12eを有する。
【0066】
LaBr(Ce)シンチレータ4aを有する放射線信号発生装置3aの前置増幅器6が、線形増幅器11aおよびAD変換器12aを介して波高解析装置15に接続される。LaBr(Ce)シンチレータ4bを有する放射線信号発生装置3bの前置増幅器6が、線形増幅器11bおよびAD変換器12bを介して波高解析装置15に接続される。LaBr(Ce)シンチレータ4eを有する放射線信号発生装置3eの前置増幅器6が、線形増幅器11eおよびAD変換器12eを介して波高解析装置15に接続される。放射線信号発生装置3bと放射線信号発生装置3eの間に配置された複数の他の放射線信号発生装置3の各前置増幅器6も、それぞれ、該当する線形増幅器11およびAD変換器12を介して波高解析装置15に接続される。燃料集合体放射能測定装置1Aの他の構成は燃料集合体放射能測定装置1と同じである。複数の放射線測定装置2は、上下方向において並列に配置され、図11に示す燃料集合体放射能測定装置1Bのように、互いに結合されて一体化される。
【0067】
燃料集合体放射能測定装置1Aを用いて燃料集合体25の放射能を測定するとき、実施例1と同様に、燃料プール33内の放射線測定領域において、測定対象の燃料集合体25を燃料集合体移送装置23によって把持し、この燃料集合体25に対向するように、複数の放射線測定装置2を配置する。燃料集合体25の複数のノードからそれぞれ放出された放射線(γ線)が、上下方向に配置されたLaBr(Ce)シンチレータ4a,4b,……,4eによって別々に測定される。LaBr(Ce)シンチレータ4a,4b,……,4eから別々に出力された各放射線検出信号は、該当する光電子増倍管5、前置増幅器6、線形増幅器11およびAD変換器12を介して波高解析装置15に入力される。
【0068】
波高解析装置15は、各AD変換器12から入力したデジタル波形を有する各放射線検出信号に対して実施例1と同様な処理を順次行い、演算により求めた各最大波高値(台形波形の最大波高値)をメモリー16に記憶させる。このように、波高解析装置15は同時計測処理を行なう。データ解析装置18は、実施例1と同様に、CPU17により入力した多数の最大波高値を用いてエネルギー分析を行い、測定γ線スペクトルを求め、燃焼度を求める場合のターゲット核種(例えば、Cs−137)を定量して燃焼度を求める。
【0069】
デジタル信号処理器(DSP回路)13、具体的には、波高解析装置15は多チャンネル化が容易であり、実施例1で述べた高計数率特性の優れた放射線計測処理を、放射線信号発生装置3a,3b,……,3eから出力されたそれぞれの放射線検出信号に対して行うことができる。
【0070】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、複数の放射線測定装置2を同時に測定対象の燃料集合体25の軸方向に移動させることができ、複数のノードに対して一度に放射線計測できるので、実施例1よりもさらに燃料集合体の放射線測定作業時間を短縮することができる。
【実施例3】
【0071】
本発明の他の実施例である実施例3の燃料集合体放射能測定装置を、図11を用いて説明する。
【0072】
本実施例の燃料集合体放射能測定装置1Bは、実施例2と同様に、多チャンネルの放射線測定装置2を備えている。燃料集合体放射能測定装置1Bが、実施例2の燃料集合体放射能測定装置1Aと異なる構成は、放射線測定装置2a,2bおよび2cの3個の放射線測定装置2を有していることである。これに伴い、信号処理装置10は、線形増幅器11a,11bおよび11c、およびAD変換器12a,12bおよび12cを有する。燃料集合体放射能測定装置1Bの他の構成は燃料集合体放射能測定装置1Aと同じである。放射線測定装置2a,2bおよび2cは、上下方向に配置され、一体化されている。この一体化された放射線測定装置2a,2bおよび2cを、多チャンネル放射線測定装置2Aと称する。放射線測定装置2a,2bおよび2cのそれぞれの高さは、燃料集合体25の1つのノード(例えば、ノード26a)の高さと同じ154mmである。
【0073】
放射線測定装置2a,2bおよび2cのそれぞれの構成は、実施例1に用いられている放射線測定装置2と同じ構成を有する。具体的には、放射線測定装置2aは、LaBr(Ce)シンチレータ4aを有する放射線信号発生装置3a、ポストコリメータ7a、プリコリメータ8aおよびアブソーバ9aを有する。放射線測定装置2bは、LaBr(Ce)シンチレータ4bを有する放射線信号発生装置3b、ポストコリメータ7b、プリコリメータ8bおよびアブソーバ9bを有する。放射線測定装置2cは、LaBr(Ce)シンチレータ4cを有する放射線信号発生装置3c、ポストコリメータ7c、プリコリメータ8cおよびアブソーバ9cを有する。
【0074】
図11には図示されていないが、放射線信号発生装置3aの前置増幅器6が、信号線20により線形増幅器11aに接続され、AD変換器12aを介して波高解析装置15に接続される。放射線信号発生装置3bの前置増幅器6が、別の信号線20により線形増幅器11bに接続され、D変換器12bを介して波高解析装置15に接続される。放射線信号発生装置3cの前置増幅器6が、別の信号線20により線形増幅器11cに接続され、AD変換器12cを介して波高解析装置15に接続される。
【0075】
燃料集合体放射能測定装置1Bを用いて燃料集合体25の放射能を測定するとき、実施例1と同様に、燃料集合体移送装置23に把持された燃料集合体25を燃料プール33内の放射線測定領域に配置する。さらに、昇降装置21に吊り下げられた多チャンネル放射線測定装置2Aが、放射線測定領域内で、燃料集合体25と対向している。放射線測定装置2aの放射線入射口(図示せず)が燃料集合体25のノード26aと向かい合っている。放射線測定装置2bの放射線入射口(図示せず)が燃料集合体25のノード26bと向かい合っている。放射線測定装置2cの放射線入射口(図示せず)が燃料集合体25のノード26cと向かい合っている。ノード26a〜26cは、燃料集合体25の軸方向に連続して存在する3つのノードである。放射線測定装置2a,2bおよび2cのピッチ、および燃料集合体25のノードのピッチは、共に、154mmである。
【0076】
ノード26aから放出された放射線(γ線)が、放射線測定装置2aの放射線入射口に入射され、LaBr(Ce)シンチレータ4aによって検出される。放射線測定装置2aの放射線信号発生装置3aから出力された放射線検出信号は、線形増幅器11aおよびAD変換器12aを介して波高解析装置15に入力される。ノード26bから放出された放射線(γ線)が、放射線測定装置2bの放射線入射口に入射され、LaBr(Ce)シンチレータ4bによって検出される。放射線測定装置2bの放射線信号発生装置3bから出力された放射線検出信号は、線形増幅器11bおよびAD変換器12bを介して波高解析装置15に入力される。ノード26cから放出された放射線(γ線)が、放射線測定装置2cの放射線入射口に入射され、LaBr(Ce)シンチレータ4cによって検出される。放射線測定装置2cの放射線信号発生装置3cから出力された放射線検出信号は、線形増幅器11cおよびAD変換器12cを介して波高解析装置15に入力される。
【0077】
AD変換器12a,12b、12cは、ステップS1の処理によりアナログの放射線検出信号を、デジタル波形を有する放射線検出信号にそれぞれ変換する。これらのデジタル波形を有する放射線検出信号が、波高解析装置15に入力される。波高解析装置15は、ステップS2,S3の各処理を実行し、入力した各デジタル波形を有する放射線検出信号に対する最大波高値をそれぞれ求め、メモリー16に記憶させる。データ解析装置18はそれらの最大波高値を入力してステップS5の処理を行い、燃料集合体25の燃焼度を求める。
【0078】
多チャンネル放射線測定装置2Aが、燃料集合体25の最も下方に位置するノードから3ノードずつ、上方に向って放射線を測定する。
【0079】
本実施例は、実施例2で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、放射線測定装置2a,2bおよび2cを有する多チャンネル放射線測定装置2Aを設けているので、3つのノードの放射線計測を一度に測定することができる。このため、実施例2と同様に、燃料集合体の放射線測定作業時間を短縮することができる。
【0080】
発明者らは、多チャンネル放射線測定装置2Aにおける放射線測定装置2のチャンネル数について検討した。従来の燃料集合体放射能測定装置を用いた一体の燃料集合体の放射線測定作業は、図9に示すように、11分の第1工程、48分の第2工程、および11分の第3工程を含んでいる。第1工程および第2工程は、燃料交換機による燃料集合体25の移動時間であるので、この時間を短縮することができない。一体の燃料集合体を24チャンネルの放射線測定装置2を有する多チャンネル放射線測定装置を用いて24のノードから放出される放射線を一度に測定しても、第1および第3工程における燃料集合体の移動時間が、作業時間として残ることになる。
【0081】
発明者らは、多チャンネル放射線測定装置に含まれる放射線測定装置2のチャンネル数(測定チャンネル数)と、放射線の測定作業時間および装置コストとの関係について調べた。この結果を図12に示す。図12および後述の図13において、「ch数」はチャンネル数を意味している。図12では、燃料集合体放射能測定装置のコスト割合を、多チャンネル放射線測定装置における1チャンネルの放射線測定装置2あたりのコストを1とし、多チャンネル放射線測定装置以外の部分のコストを5としている。放射線測定装置2の個数(チャンネル数)の増加に対して第2工程の時間は短縮されるが、第1工程および第2工程のそれぞれの時間が残り、測定作業時間の短縮比は飽和する。一方、装置コスト比は、放射線測定装置2の個数の増加により、1チャンネルの放射線測定装置2あたりのコスト割合で単調に増加する。
【0082】
測定作業時間の短縮効果と多チャンネル放射線測定装置におけるチャンネル数(放射線測定装置の個数)の関係を、図13に示す。図13に示された測定作業時間の短縮効果は、図12の測定作業時間短縮比γとコスト比βを乗算して測定作業時間の短縮効果を求め、求められた結果を、チャンネル数が1のケースで規格化したものである。図13には、燃料集合体放射能測定装置のコスト割合を、多チャンネル放射線測定装置における放射線測定装置2の1チャンネルあたりのコストを1とし、多チャンネル放射線測定装置以外の部分のコストを10としたケース(コスト:測定1、他10)も併せて示した。
【0083】
図13に示す結果から明らかなように、放射線測定装置2を6チャンネルよりも多く設けた多チャンネル放射線測定装置では、装置コストを考慮した測定作業時間の短縮効果が小さくなる。
【0084】
燃料集合体放射能測定装置における放射線測定装置2の多チャンネル化では、燃料集合体25のノード数である24を割り切れるチャンネル数(素因数)が効率の良い適切なチャンネル数となる。これらのチャンネル数は、2,3,4,6,12および24であり、効果的なチャンネル数の範囲は6チャンネル以下である。つまり、燃料集合体放射能測定装置における放射線測定装置2の多チャンネル化では、チャンネル数を2,3,4および6チャンネルのいずれかにするとよい。これにより、燃料集合体放射能測定装置において燃料集合体放射能測定装置の簡素化を考慮した場合には、2および3チャンネルの構成が最も効果的となる。
【実施例4】
【0085】
本発明の他の実施例である実施例4の燃料集合体放射能測定装置を、図14を用いて説明する。
【0086】
本実施例の燃料集合体放射能測定装置1Cは、実施例3の燃料集合体放射能測定装置1Bにおいて多チャンネル放射線測定装置2Aを多チャンネル放射線測定装置2Bに替えた構成を有する。燃料集合体放射能測定装置1Cの他の構成は燃料集合体放射能測定装置1Bと同じである。
【0087】
多チャンネル放射線測定装置2Bは、2チャンネルの放射線測定装置2、すなわち、放射線測定装置2aおよび2b、および1チャンネルの放射線測定装置2dを有し、放射線測定装置2a,2bおよび2dを一体化した構成を有する。放射線測定装置2aは、LaBr(Ce)シンチレータ4aを含む放射線信号発生装置3aを有する。放射線測定装置2bは、LaBr(Ce)シンチレータ4bを含む放射線信号発生装置3bを有する。放射線測定装置2dは、Ge(Li)放射線検出器30を含む放射線信号発生装置29を有する。Ge(Li)放射線検出器30は、半導体放射線検出器であり、LaBr(Ce)シンチレータ4等のシンチレータに比べγ線測定のエネルギー分解能が一桁以上優れる。放射線信号発生装置29は、Ge(Li)放射線検出器30およびGe(Li)放射線検出器30に接続された前置増幅器6(図示せず)を有する。放射線測定装置2a,2bおよび2dのそれぞれの高さは154mmであり、放射線測定装置2a,2bおよび2dは154mmのピッチで上下方向に配置されている。
【0088】
燃料集合体放射能測定装置1Cの信号処理装置10は、図示されていないが、線形増幅器11a,11bおよび11d、およびAD変換器12aおよび12bを有する。放射線信号発生装置3aの前置増幅器6は、実施例3と同様に、線形増幅器11aおよびAD変換器12aを介して波高解析装置15に接続される。放射線信号発生装置3bの前置増幅器6は、実施例3と同様に、線形増幅器11bおよびAD変換器12bを介して波高解析装置15に接続される。放射線信号発生装置29の前置増幅器6は、1本の信号線20により、線形増幅器11dを介して波高解析装置15に接続される。
【0089】
燃料集合体放射能測定装置1Cを用いて燃料集合体25の放射能を測定するとき、実施例3と同様に、燃料プール33内の放射線測定領域に、燃料集合体25が燃料集合体移送装置23により配置される。さらに、昇降装置21に吊り下げられた多チャンネル放射線測定装置2Bの放射線測定装置2d,2aおよび2bのそれぞれが、放射線測定領域内で、燃料集合体25の別々のノード26と対向している。これらの3つのノード26は、燃料集合体25の軸方向に連続して存在する3つのノードである。放射線測定装置2d,2aおよび2bのピッチ、および燃料集合体25のノードのピッチは、共に、154mmである。
【0090】
波高解析装置15は、AD変換器12aおよび12bからそれぞれ入力されたデジタル波形を有する各放射線検出信号(LaBr(Ce)シンチレータ4a,タ4bで検出された放射線)の最大波高値を、ステップS2,S3の処理により求める。これらの最大波高値はメモリー16に記憶される。Ge(Li)放射線検出器30から出力された放射線検出信号(デジタル信号)は、前置増幅器6および線形増幅器11dで増幅され、波高解析装置15に入力される。Ge(Li)放射線検出器30から出力された各放射線検出信号の波高値(最大波高値)は、公知の手法により波高解析装置15で求められる。Ge(Li)放射線検出器30から出力された各放射線検出信号の最大波高値も、メモリー16に記憶される。
【0091】
データ解析装置18は、ステップS5の処理を実行する。この処理において、データ解析装置18は、LaBr(Ce)シンチレータ4a,4bによる放射線の検出により発生した各放射線検出信号から求められた多数の最大波高値を用いてエネルギー分析を行い、図15に示す第1測定γ線スペクトルを求める(第1累積ヒストグラムの作成)。また、データ解析装置18は、Ge(Li)放射線検出器30による放射線の検出により発生した放射線検出信号から求められた多数の最大波高値を用いて周波数分析を行い、図16に示す第2測定γ線スペクトルを求める(第2累積ヒストグラムの作成)。
【0092】
第1測定γ線スペクトルは、燃焼度を求める場合のターゲット核種(例えば、Cs−137)A、および妨害核種Dが、それぞれのピーク領域の一部が重なるように接近している。このように、妨害核種Dのγ線エネルギーがターゲット核種Aのγ線エネルギーに接近している接近して存在するとき、第1測定γ線スペクトル(図15)では、ターゲット核種Aを正確に定量することができない。しかしながら、第2測定γ線スペクトルでは、ターゲット核種(例えば、Cs−137)Aのピーク領域と妨害核種Dのピーク領域が離れているので、データ解析装置18は、第2測定γ線スペクトルを基に、ターゲット核種Aのγ線エネルギーを基にターゲット核種Aを正確に定量することができ、妨害核種Dのγ線エネルギーを基に妨害核種Dを正確に定量することができる。第2測定γ線スペクトル(図16)において、ターゲット核種Aおよび妨害核種Dをそれぞれ正確に定量できるのは、Ge(Li)放射線検出器30のエネルギー分解能がLaBr(Ce)シンチレータ4に比べて一桁以上優れているからである。
【0093】
次に、妨害核種の影響を補正する手段を述べる。まず、データ解析装置18が、Ge(Li)検出器30で測定した第2測定γ線スペクトル(図16)を基に、ターゲット核種Aのネット計数値S(ターゲット核種Aのγ線エネルギーのカウント数からバックグラウンドのカウント数を引いた値)を求める。次に、同一条件で測定したLaBr検出器4の第1測定γ線スペクトル(図15)を基に、ターゲット核種Aのピーク高さP(ターゲット核種Aのピーク高さからバックグラウンド高さを引いた値)値を求める。この両者の測定値から、第1測定γ線スペクトルのターゲット核種Aのピーク高さPのネット計数値Sは、第2測定γ線スペクトルのターゲット核種Aのネット計数値Sとして求めることができる。ただし、SはLaBr検出器の値であり、Ge(Li)検出器との検出効率(f)等の補正は必要である(S(P)=f×S)。
【0094】
この校正データが得られれば、別途個別に測定するLaBr検出器の測定γ線スペクトルのターゲット核種Aのピーク高さ(P)’と校正時のピーク高さ(P)の比(P)’/(P)から比例計算で、別途個別に測定するLaBr検出器の測定γ線スペクトルの妨害核種を補正したターゲット核種Aのネット計数値Sを求めることができる。
【0095】
情報データ解析装置18は、上述の妨害核種の補正を行なってターゲット核種Aのネット計数値を定量し、例えば、Cs−137の放射線強度の換算により燃焼度を算出する。
【0096】
データ解析装置18で実行されるステップS5の処理で、図17に示す第1測定γ線スペクトルが求められたとする。この第1測定γ線スペクトルでは、ターゲット核種Aおよび妨害核種Dのそれぞれのピーク領域が分離されており、第1測定γ線スペクトルを基に、ターゲット核種Aを正確に定量することができる。この場合には、図15に示された第1測定γ線スペクトルのように、ターゲット核種Aの定量を、第2測定γ線スペクトルを基に得られた情報を用いて補正する必要がない。
【0097】
データ解析装置18は、第1測定γ線スペクトルにおいて妨害核種がターゲット核種に、図15のように接近しているか、図17のように離れているかを以下のようにして判定する。データ解析装置18が、ターゲット核種のピーク幅を算出し、所定のエネルギー分解能幅であれば正規の単一ピークと判定し、そのピーク幅が所定のエネルギー分解能幅を超えていれば複数の核種が複合されたピークと判定する。
【0098】
本実施例でも、多チャンネル放射線測定装置2Bが、燃料集合体25の最も下方に位置するノードから3ノードずつ、上方に向って放射線を測定する。
【0099】
本実施例は、実施例3で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、さらに、半導体放射線検出器であるGe(Li)放射線検出器30で検出された放射線検出信号に基づいて得られた第2測定γ線スペクトルにおけるターゲット核種Aの定量値を用いて、LaBr(Ce)シンチレータによる放射線の検出により発生した放射線検出信号に基づいて得られた第1測定γ線スペクトルにおけるターゲット核種Aの定量値を補正する。これにより、ターゲット核種Aのγ線エネルギーに接近したγ線エネルギーを有する妨害核種Dが存在して、LaBr(Ce)シンチレータによる放射線の検出により発生した放射線検出信号により分析できない妨害核種が存在しても(γ線エネルギーが接近して複合スペクトルになるケース)、本実施例はターゲット核種Aを精度良く定量することができる。このため、複合スペクトルになるケースになる場合であっても、燃料集合体25の燃焼度を精度良く求めることができる。
【0100】
Ge(Li)放射線検出器30による、ターゲット核種Aの定量値の補正データが蓄積されたときには、多チャンネル放射線測定装置2BからGe(Li)放射線検出器30を含む放射線測定装置2dを取り外し、LaBr(Ce)シンチレータ4を含む放射線測定装置2aおよび2bを有する多チャンネル放射線測定装置2Bを用いて、燃料集合体25の各ノードの放射線計測を行う。この場合には、Ge(Li)放射線検出器30が多チャンネル放射線測定装置2Bに取り外し可能に取り付けられる。
【0101】
実施例1において、Ge(Li)放射線検出器30を含む放射線測定装置2dを、放射線測定装置2に取り付けることによって、本実施例と同様に、第2測定γ線スペクトルを求めることができ、第1測定γ線スペクトルにおいて複合スペクトルになるケースが生じても、第1測定γ線スペクトルによりターゲット核種Aを精度良く定量することができる。 Ge(Li)放射線検出器の替りに、CdTe放射線検出器等の半導体放射線検出器を用いてもよい。
【実施例5】
【0102】
本発明の他の実施例である実施例5の燃料集合体放射能測定装置を、図18を用いて説明する。
【0103】
本実施例の燃料集合体放射能測定装置1Dは、実施例4の燃料集合体放射能測定装置1Cにおいて多チャンネル放射線測定装置2Bを多チャンネル放射線測定装置2Cに替えた構成を有する。燃料集合体放射能測定装置1Dの他の構成は燃料集合体放射能測定装置1Cと同じである。
【0104】
多チャンネル放射線測定装置2Cは、多チャンネル放射線測定装置2Bと同じ構成を有している。ただし、多チャンネル放射線測定装置2Cでは、放射線測定装置2a,2bおよび2dのそれぞれの高さが308mmになっている。多チャンネル放射線測定装置2と多チャンネル放射線測定装置2Bは、放射線測定装置2a,2bおよび2dの高さが異なるだけである。多チャンネル放射線測定装置2Cでは、放射線測定装置2a,2bおよび2dが308mmのピッチで配置されており、このピッチは燃料集合体25のノード26のピッチ(154mm)よりも2倍大きくなっている。
【0105】
燃料集合体放射能測定装置1Dを用いて燃料集合体25の放射能を測定するとき、実施例3と同様に、燃料プール33内の放射線測定領域に、燃料集合体25が燃料集合体移送装置23により配置される。さらに、昇降装置21に吊り下げられた多チャンネル放射線測定装置2Cの放射線測定装置2d,2aおよび2bのそれぞれが、放射線測定領域内で、燃料集合体25の3つのノード26に別々に対向している。これらの3つのノード26は、燃料集合体25の軸方向において1つ置きに存在する3つのノードである。
【0106】
本実施例においても、信号処理装置10において、実施例4と同様な処理が行われる。
【0107】
本実施例は、実施例4で生じる各効果を得ることができる。
【0108】
本実施例のように、放射線測定装置のピッチをノードのピッチと変える(例えば、前者のピッチを後者のピッチの2倍にする)ことは、実施例3における放射線測定装置2a,2bおよび2cのピッチに適用しても良い。
【0109】
実施例2〜5も、実施例1と同様に、燃料集合体燃焼度測定装置である燃料集合体出力分布測定装置に適用することができる。
【0110】
実施例1〜5は、沸騰水型原子炉および加圧水型原子炉に用いられる燃料集合体の放射能濃度を測定する際に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、沸騰水型原子炉および加圧水型原子炉等の原子炉で用いられる燃料集合体の放射能濃度の測定に用いることができる。
【符号の説明】
【0112】
1,1A,1B,1C,1D…燃料集合体放射能測定装置、2,2a,2b,2c,2d.2e,28…放射線測定装置、2A,2B,2C…多チャンネル放射線測定装置、3,3a,3b,3c,29…放射線信号発生装置、4,4a,4b,4c,4e…LaBr(Ce)シンチレータ、5…光電子増倍管、6…前置増幅器、7…ポストコリメータ、8…プリコリメータ、9…アブソーバー、12,12a,12b,12c,12e…アナログ/デジタル変換器、13…デジタル信号処理器、14…書き換え可能なゲートアレー(FPGA)、15…波高解析装置、17…中央演算装置、18…データ解析装置、21…昇降装置、23…燃料集合体移送装置、25…燃料集合体、26,26a,26b,26c…ノード、30…Ge(Li)放射線検出器、32…ケーシング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料集合体から放出される放射線を制限するコリメータ、前記コリメータを通過した前記放射線を検出する、発光減衰時間が40ns以下であるシンチレータ、および前記放射線の入射によって前記シンチレータで発生する光に基づいて電気信号である第1放射線検出信号を生成する信号生成装置をケーシング内に配置して構成される第1放射線測定装置と、
前記信号生成装置から出力される前記第1放射線検出信号をデジタル波形を有する放射線検出信号に変換する信号変換装置と、
前記信号変換装置から出力される、前記デジタル波形を有する放射線検出信号ごとに、第1最大波高値を求めるデジタル波形処理装置と、
前記デジタル波形処理装置で得られる複数の前記第1最大波高値を用いてターゲット核種を定量するデータ解析装置とを備えたことを特徴とする燃料集合体放射能測定装置。
【請求項2】
波形処理時定数が0.5μs〜8μsの範囲にある前記デジタル波形処理装置を備えた請求項1に記載の燃料集合体放射能測定装置。
【請求項3】
波形処理時定数が0.5μs〜2μsの範囲にある前記デジタル波形処理装置を備えた請求項2に記載の燃料集合体放射能測定装置。
【請求項4】
燃料集合体から放出される放射線を制限するコリメータ、前記コリメータを通過した前記放射線を検出する半導体放射線検出器をケーシング内に配置して構成される第2放射線測定装置と、
前記半導体放射線検出器から出力された第2放射線検出信号ごとに第2最大波高値を求めるデジタル波形処理装置とを備える請求項1または2に記載の燃料集合体放射能測定装置。
【請求項5】
妨害核種の影響により前記複数の第1最大波高値を用いて前記ターゲット核種を定量することができないとき、複数の前記第2最大波高値を用いて得られる前記ターゲット核種と前記妨害核種の関係を示す情報を用いて、前記複数の第1最大波高値を用いて得られた前記ターゲット核種の定量値を補正する前記データ解析装置を備えた請求項4に記載の燃料集合体放射能測定装置。
【請求項6】
第1放射線測定装置の個数が、2,3,4および6のいずれかである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の燃料集合体放射能測定装置。
【請求項7】
前記燃料集合体の軸方向における前記第1放射線測定装置の配置ピッチが、前記燃料集合体のノードのピッチと同一および前記ノードのピッチの倍数のいずれかである請求項6に記載の燃料集合体放射能測定装置。
【請求項8】
前記シンチレータが、LaBr(Ce)シンチレータ、LaClシンチレータ、LuAl12シンチレータおよびLFSシンチレータのいずれかである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の燃料集合体放射能測定装置。
【請求項9】
前記第2放射線測定装置が前記第1放射線測定装置に取り外し可能に取り付けられている請求項4に記載の燃料集合体放射能測定装置。
【請求項10】
前記第1放射線測定装置および前記第2放射線測定装置を含む複数の放射線測定装置の配置ピッチが、前記燃料集合体のノードのピッチと同一および前記ノードのピッチの倍数のいずれかである請求項4に記載の燃料集合体放射能測定装置。
【請求項11】
測定対象である燃料集合体から放出される放射線を、発光減衰時間が40ns以下であるシンチレータに入射させ、
前記放射線の入射によって前記シンチレータで発生する光に基づいて電気信号である第1放射線検出信号を生成し、
前記第1放射線検出信号をデジタル波形を有する放射線検出信号に変換し、
デジタル波形処理装置によって、前記デジタル波形を有する放射線検出信号ごとに、第1最大波高値を求め、
前記デジタル波形処理装置で得られた複数の前記第1最大波高値を用いてターゲット核種を定量することを特徴とする燃料集合体の放射能測定方法。
【請求項12】
前記燃料集合体から放出される放射線を半導体放射線検出器によって測定し、、
前記デジタル波形処理装置によって、前記半導体放射線検出器から出力された第2放射線検出信号ごとに第2最大波高値を求め、
妨害核種の影響により前記複数の第1最大波高値を用いて前記ターゲット核種を定量することができないとき、複数の前記第2最大波高値を用いて得られる前記ターゲット核種と前記妨害核種の関係を示す情報を用いて、前記複数の第1最大波高値を用いて得られた前記ターゲット核種の定量値を補正する請求項11に記載の燃料集合体の放射能測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−98046(P2012−98046A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243351(P2010−243351)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】