説明

燃料電池を搭載した車両、および、車両に搭載される燃料電池システム

【課題】燃料電池を搭載した車両において、燃料電池による発電によって生成された生成水が、車両の外部の排気口の周辺に大量に溜まることを防止する。
【解決手段】車両1000は、カソードオフガス排出配管22と、気液分離器24と、カソードオフガス排出配管22から分岐して接続され、カソードオフガスを気液分離器24に流すための分岐配管23と、車両1000が停車した状態で燃料電池スタック10による発電を行うときに、分岐配管23を介して、カソードオフガスを気液分離器24に流し、車両1000が停車していない状態で燃料電池スタック10による発電を行うときに、分岐配管23を介して、カソードオフガスを気液分離器24に流さないように、カソードオフガスの流路を切り換える三方弁22v1,22v2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を搭載した車両、および、車両に搭載される燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池を搭載した車両が注目されている。この車両では、燃料電池による発電によって生成された水(生成水)は、燃料電池のアノードから排出されるアノードオフガスや、燃料電池のカソードから排出されるカソードオフガスとともに、排気口から車両の外部に排水される(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−108756号公報
【特許文献2】特開2010−267388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記車両が停車した状態で燃料電池による発電を継続すると、生成水は、車両の外部の排気口の周辺の同じ場所に排水され続けるため、排気口の周辺に大量の生成水が溜まるおそれがある。そして、排気口の周辺に大量の生成水が溜まると、地面がぬかるんだり、冬季には凍結したりして、周囲を歩きにくくするおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池を搭載した車両において、燃料電池による発電によって生成された生成水が、車両の外部の排気口の周辺に大量に溜まることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
燃料電池を搭載した車両であって、
排気口を有し、前記燃料電池のカソードから排出されたカソードオフガスを流すためのカソードオフガス排出配管と、
前記カソードオフガスに含まれる水を回収するための第1の水回収部と、
前記カソードオフガス排出配管から分岐して接続され、前記カソードオフガスを前記第1の水回収部に流すための分岐配管と、
前記車両が停車した状態で前記燃料電池による発電を行うときに、前記分岐配管を介して、前記カソードオフガスを前記第1の水回収部に流し、前記車両が停車していない状態で前記燃料電池による発電を行うときに、前記分岐配管を介して、前記カソードオフガスを前記第1の水回収部に流さないように、前記カソードオフガスの流路を切り換えるカソードオフガス流路切換部と、
を備える車両。
【0008】
適用例1の車両では、車両が停車した状態で燃料電池による発電を行うときに、第1の水回収部によって、カソードオフガスに含まれる、発電(カソード反応)によって生成された水(生成水)を回収することができる。したがって、車両が停車した状態で燃料電池による発電を行う場合であっても、生成水が、車両の外部の排気口の周辺に大量に溜まることを防止することができる。また、車両が停車していない状態で燃料電池による発電を行うときには、第1の水回収部による生成水の回収を行わずに、車両の外部に生成水を排水することができる。したがって、第1の水回収部によって回収された生成水が、短期間で回収可能な限度容量に到達してしまうことを抑制することができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載の車両であって、
前記燃料電池は、固体高分子からなる電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池であり、
前記車両は、さらに、前記第1の水回収部によって回収した水を酸化剤ガスと混合して、前記燃料電池のカソードに供給する水供給部を備える、
車両。
【0010】
固体高分子型燃料電池では、電解質膜が乾燥すると、電解質膜のプロトン伝導性が低下し、ドライアップが発生する。適用例2の車両では、上記水供給部を備えるので、第1の水回収部によって回収した生成水を用いて、電解質膜の加湿を行うことができる。したがって、電解質膜の乾燥を抑制し、ドライアップを抑制することができる。また、第1の水回収部によって回収した生成水を、電解質膜の加湿に利用するので、第1の水回収部によって回収された生成水が、短期間で回収可能な限度容量に到達してしまうことを抑制することもできる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または2記載の車両であって、さらに、
前記燃料電池のアノードから排出されたアノードオフガスを流すためのアノードオフガス排出配管と、
前記アノードオフガス排出配管に接続され、前記アノードオフガスに含まれる水を回収するための第2の水回収部と、
前記第2の水回収部によって回収された水を、前記カソードオフガス排出配管における前記分岐配管との接続部の前記カソードオフガスの流れ方向についての上流部に流すための排水配管と、
を備える車両。
【0012】
燃料電池において、生成水は、カソードで生成され、アノードにも透過する。このため、生成水は、アノードオフガスにも含まれる。適用例3の車両では、車両が停車した状態で燃料電池による発電を行うときに、第1の水回収部によって、アノードオフガスに含まれる生成水も回収することができる。したがって、第2の水回収部によって回収した生成水を車両の外部に排水するときに、同じ場所に排水され続けて、地面に水溜りができるのを防止することができる。
【0013】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれかに記載の車両であって、
前記第1の水回収部は、前記車両が走行しているときに、前記第1の水回収部によって回収した水を、前記車両の外部に排水する排水部を備える、
車両。
【0014】
適用例4の車両では、第1の水回収部によって回収された生成水が、短期間で回収可能な限度容量に到達してしまうことを抑制することができる。
【0015】
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれかに記載の車両であって、
前記第1の水回収部は、着脱可能に備えられている、
車両。
【0016】
適用例5の車両では、例えば、大量の生成水が同じ場所に排水されて水溜まりができる程度の比較的長時間、車両が停車した状態で発電を継続する場合に、第1の水回収部を装着し、生成水が排水されても水溜りができない程度の比較的短時間しか、車両が停車した状態で発電を継続しない場合には、予め、第1の水回収部を取り外しておくようにすることができる。前者の場合としては、例えば、車両を駐車した状態で燃料電池による発電を行い、他の装置に電力を供給する場合が挙げられる。また、後者の場合としては、例えば、移動のために車両を使用する場合が挙げられる。第1の水回収部を取り外すことによって、車両の軽量化を図り、走行中の燃費を向上させることができる。
【0017】
[適用例6]
車両に搭載される燃料電池システムであって、
燃料電池と、
排気口を有し、前記燃料電池のカソードから排出されたカソードオフガスを流すためのカソードオフガス排出配管と、
前記カソードオフガスに含まれる水を回収するための第1の水回収部と、
前記カソードオフガス排出配管から分岐して接続され、前記カソードオフガスを前記第1の水回収部に流すための分岐配管と、
前記車両が停車した状態で前記燃料電池による発電を行うときに、前記分岐配管を介して、前記カソードオフガスを前記第1の水回収部に流し、前記車両が停車していない状態で前記燃料電池による発電を行うときに、前記分岐配管を介して、前記カソードオフガスを前記第1の水回収部に流さないように、前記カソードオフガスの流路を切り換えるカソードオフガス流路切換部と、
を備える燃料電池システム。
【0018】
適用例6の燃料電池システムを車両に搭載することによって、車両が停車した状態で燃料電池による発電を行う場合であっても、発電によって生成された生成水が、排気口の周辺に大量に溜まることを防止することができる。
【0019】
本発明は、上述した種々の特徴を必ずしも全て備えている必要はなく、その一部を省略したり、適宜、組み合わせたりして構成することができる。また、本発明は、上述の車両、燃料電池システムとしての構成の他、車両の制御方法、燃料電池システムの制御方法の発明として構成することもできる。また、これらを実現するコンピュータプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体、そのプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号など種々の態様で実現することが可能である。なお、それぞれの態様において、先に示した種々の付加的要素を適用することが可能である。
【0020】
本発明をコンピュータプログラムまたはそのプログラムを記録した記録媒体等として構成する場合には、車両、燃料電池システムの動作を制御するプログラム全体として構成するものとしてもよいし、本発明の機能を果たす部分のみを構成するものとしてもよい。また、記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置などコンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施例としての車両1000の概略構成を示す説明図である。
【図2】燃料電池システム100の運転制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施例としての車両1000Aの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
A.第1実施例:
A1.車両の構成:
図1は、本発明の第1実施例としての車両1000の概略構成を示す説明図である。この車両1000は、いわゆる燃料電池自動車であり、動力源として、燃料電池システム100を搭載している。燃料電池システム100が備える燃料電池スタック10によって発電された電力は、図示しないバッテリに蓄電することもできる。なお、この車両1000は、駐車した状態で燃料電池システム100を動作させて、燃料電池スタック10によって発電された電力を、車両1000の外部の他の装置に供給することもできる。
【0023】
A2.燃料電池システムの構成:
燃料電池スタック10は、水素と酸素との電気化学反応によって発電するセルを複数積層させた積層体である。本実施例では、燃料電池スタック10は、電解質膜として、ナフィオン(登録商標)等の固体高分子からなる電解質膜を利用した固体高分子型燃料電池であるものとした。
【0024】
燃料電池スタック10のカソードには、空気供給配管20を介して、酸化剤ガスとしての空気が、エアコンプレッサ(図示省略)によって圧縮されて供給される。空気供給配管20上に、燃料電池スタック10に供給される空気を加湿するための加湿器を設けるようにしてもよい。
【0025】
燃料電池スタック10のカソードから排出されたカソードオフガスは、カソードオフガス排出配管22を介して、排気口22oから車両1000の外部に排気される。
【0026】
なお、カソードオフガス排出配管22には、図示するように、分岐配管23と、気液分離器24と、配管25と、が接続されている。気液分離器24には、排水弁28を有する貯水タンク27が接続されている。分岐配管23は、カソードオフガス排出配管22から分岐して接続され、カソードオフガスを気液分離器24に流すための配管である。気液分離器24は、カソードオフガスに含まれる生成水を分離する。気液分離器24によって分離された生成水は、貯水タンク27に貯水される。貯水タンク27に貯水された生成水は、排水弁28を開弁することによって、車両1000の外部に排水することができる。配管25は、気液分離器24を通過して生成水が分離除去されたカソードオフガスをカソードオフガス排出配管22に流すための配管である。気液分離器24、および、貯水タンク27は、[課題を解決するための手段]における第1の水回収部に相当する。排水弁28は、[課題を解決するための手段]における排水部に相当する。
【0027】
カソードオフガス排出配管22と分岐配管23との接続部には、三方弁22v1が設けられている。また、カソードオフガス排出配管22と配管25との接続部には、三方弁22v2が設けられている。三方弁22v1,22v2を切り換えることによって、カソードオフガスの流路、すなわち、分岐配管23を介して、カソードオフガスを気液分離器24に流すか否かを切り換えることができる。そして、カソードオフガスを気液分離器24に流した場合には、カソードオフガスに含まれる生成水は、気液分離器24によって分離除去され、生成水が除去されたカソードオフガスが、排気口22oから排気される。一方、カソードオフガスを気液分離器24に流さない場合には、カソードオフガスとともに、カソードオフガスに含まれる生成水も、排気口22oから排水される。なお、三方弁22v1,22v2は、初期状態では、カソードオフガスを気液分離器24に流さない状態に設定されている。三方弁22v1,22v2は、[課題を解決するための手段]におけるカソードオフガス流路切換部に相当する。
【0028】
また、気液分離器24によって分離された生成水の一部は、水供給配管26を介して、空気供給配管20に供給され、燃料電池スタック10のカソードに供給される空気の加湿に再利用される。水供給配管26は、[課題を解決するための手段]における水供給部に相当する。
【0029】
燃料電池スタック10のアノードには、高圧水素を貯蔵した水素タンク(図示省略)から、水素供給配管30を介して、燃料ガスとしての水素が供給される。水素タンクの代わりに、例えば、アルコール、炭化水素、アルデヒドなどを原料とする改質反応によって水素を生成する水素生成装置を用いるものとしてもよい。
【0030】
燃料電池スタック10のアノードから排出されたアノードオフガスは、アノードオフガス排出配管32を介して、気液分離器33に供給される。気液分離器33は、アノードオフガスに含まれる生成水を分離して回収する。気液分離器33を通過して生成水が分離除去されたアノードオフガスは、循環配管34を介して、水素供給配管30に供給される。こうすることによって、アノードオフガスに含まれる未反応水素を、発電に利用することができる。
【0031】
また、気液分離器33によって分離された生成水は、排水配管35を介して、カソードオフガス排出配管22に排水される。図示するように、排水配管35の下流端は、カソードオフガス排出配管22における分岐配管23との接続部のカソードオフガスの流れ方向についての上流部に接続されている。そして、この生成水は、そのまま排気口22oから排水されるか、気液分離器24によって回収される。気液分離器33は、[課題を解決するための手段]における第2の水回収部に相当する。
【0032】
なお、循環配管34には、図示しないパージ弁等が設けられており、このパージ弁を開弁することによって、アノードオフガスを燃料電池システム100の外部に排出することもできる。アノードオフガスを燃料電池システム100の外部に排出する場合には、アノードオフガスは、例えば、カソードオフガスと混合され、アノードオフガスに含まれる水素が希釈された後に排出される。アノードオフガスの再循環中、水素は発電で消費される一方、水素以外の不純物、例えば、カソード側からアノード側に電解質膜を介して透過した窒素などは、消費されずに残留する。このため、アノードオフガス中の不純物の濃度は、徐々に増大する。このとき、パージ弁を開弁し、不純物を含むアノードオフガスの排気を行うことによって、アノードオフガス中の不純物の濃度を低減することができる。
【0033】
また、燃料電池スタック10には、燃料電池スタック10の温度を発電に適した温度に維持するために、ラジエータや、ウォータポンプや、温度センサ等を含む冷却系も接続されている(図示省略)。
【0034】
燃料電池システム100の運転は、制御ユニット40によって制御される。制御ユニット40は、内部にCPU、RAM、ROM等を備えるマイクロコンピュータとして構成されており、ROMに記憶されたプログラムに従って、システムの運転を制御する。制御ユニット40は、例えば、車速センサ200の出力に応じて、以下に説明する運転制御処理を実行する。
【0035】
A3.運転制御処理:
図2は、燃料電池システム100の運転制御処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、燃料電池スタック10による発電中に、制御ユニット40のCPUが実行する処理である。
【0036】
CPUは、車速センサ200によって検出された車両1000の車速を取得し(ステップS100)、車速が0(ゼロ)であるか否かを判断する(ステップS110)。そして、車速が0(ゼロ)である場合には(ステップS110:YES)、CPUは、分岐配管23を介して、カソードオフガスを気液分離器24に流すように、三方弁22v1,22v2を制御する。そして、CPUは、気液分離器24によって、カソードオフガスに含まれる生成水を回収しつつ、発電を継続する。
【0037】
一方、ステップS110において、車速が0(ゼロ)でない場合、すなわち、車両1000が走行中である場合には(ステップS110:NO)、CPUは、分岐配管23を介して、カソードオフガスを気液分離器24に流さないように、三方弁22v1,22v2を制御する(ステップS130)。そして、CPUは、排水処理を行う(ステップS140)。この排水処理では、例えば、水位センサ(図示省略)によって、貯水タンク27に貯水されている水の水位を検出し、検出された水位が閾値以上である場合に、排水弁28を開弁して、排水を行う。車両1000が走行中である場合には、貯水タンク27からの排水を行っても、同じ場所に排水され続けることはなく、地面に水溜りができることもない。そして、CPUは、発電を継続する。
【0038】
以上説明した第1実施例の車両1000によれば、車両1000が停車した状態で燃料電池スタック10による発電を行うときに、気液分離器24によって、カソードオフガスに含まれる、発電(カソード反応)によって生成された生成水を回収することができる。したがって、車両1000が停車した状態で燃料電池による発電を行う場合であっても、生成水が、車両1000の外部の排気口22oの周辺に大量に溜まることを防止することができる。また、車両1000が停車していない状態で燃料電池スタック10による発電を行うときには、気液分離器24による生成水の回収を行わずに、車両1000の外部に生成水を排水することができる。したがって、気液分離器24によって回収された生成水が、短期間で回収可能な限度容量に到達してしまうことを抑制することができる。
【0039】
また、本実施例の車両1000では、燃料電池スタック10として、比較的低温で発電を行うことが可能な固体高分子型燃料電池を用いている。そして、固体高分子型燃料電池では、電解質膜が乾燥すると、電解質膜のプロトン伝導性が低下し、ドライアップが発生する。しかし、本実施例の車両1000では、水供給配管26を備えるので、気液分離器24によって回収した生成水を用いて、電解質膜の加湿を行うことができる。したがって、電解質膜の乾燥を抑制し、ドライアップを抑制することができる。また、気液分離器24によって回収した生成水を、電解質膜の加湿に利用するので、気液分離器24によって回収された生成水が、短期間で回収可能な限度容量に到達してしまうことを抑制することもできる。
【0040】
また、本実施例の車両1000では、気液分離器33によって回収された水を、カソードオフガス排出配管22における分岐配管23との接続部のカソードオフガスの流れ方向についての上流部に流すための排水配管35を備えている。したがって、車両1000が停車した状態で燃料電池スタック10による発電を行うときに、気液分離器24によって、アノードオフガスに含まれる生成水も回収することができる。したがって、気液分離器33によって回収した生成水を車両1000の外部に排水するときに、同じ場所に排水され続けて、地面に水溜りができるのを防止することができる。
【0041】
また、本実施例の車両1000では、車両1000が走行しているときに、気液分離器24によって回収した生成水を、車両1000の外部に排水するので、気液分離器24によって回収された生成水が、短期間で回収可能な限度容量に到達してしまうことを抑制することができる。
【0042】
B.第2実施例:
B1.車両の構成:
図3は、本発明の第2実施例としての車両1000Aの概略構成を示す説明図である。図示するように、第2実施例の車両1000Aは、2つの燃料電池システム100a,100bを搭載している。そして、車両1000Aは、駐車した状態で車両1000Aの外部の他の装置に電力を供給する場合には、燃料電池システム100aを動作させて、燃料電池システム100bは停止する。また、車両1000Aは、移動のために使用されており、車両1000Aの外部の他の装置に電力を供給していない場合には、燃料電池システム100a,100bの双方を動作させる。
【0043】
B2.燃料電池システムの構成:
燃料電池システム100aにおいて、燃料電池スタック10aは、燃料電池システム100における燃料電池スタック10と同様に、固体高分子型燃料電池である。そして、燃料電池システム100aにおいて、燃料電池スタック10aのカソードには、燃料電池システム100と同様に、空気供給配管20aと、カソードオフガス排出配管22aとが接続されている。カソードオフガス排出配管22aには、図示するように、三方弁22av1,22av2が設けられている。
【0044】
また、燃料電池システム100aにおいて、燃料電池スタック10aのアノードには、燃料電池システム100と同様に、水素供給配管30aと、アノードオフガス排出配管32aと、気液分離器33aと、循環配管34aとが接続されている。そして、気液分離器33aには、排水配管35aが接続されている。排水配管35aの下流端は、カソードオフガス排出配管22aに合流するように接続されている。
【0045】
また、燃料電池システム100bにおいて、燃料電池スタック10bは、燃料電池システム100における燃料電池スタック10と同様に、固体高分子型燃料電池である。そして、燃料電池システム100bにおいて、燃料電池スタック10bのカソードには、燃料電池システム100と同様に、空気供給配管20bと、カソードオフガス排出配管22bとが接続されている。カソードオフガス排出配管22bには、バルブ22bvが設けられている。
【0046】
また、燃料電池システム100bにおいて、燃料電池スタック10bのアノードには、燃料電池システム100と同様に、水素供給配管30bと、アノードオフガス排出配管32bと、気液分離器33bと、循環配管34bとが接続されている。そして、気液分離器33bには、排水配管35bが接続されている。排水配管35bの下流端は、カソードオフガス排出配管22bに合流するように接続されている。
【0047】
なお、排水配管35bには、三方弁33bvを介して、配管36、および、排水弁38を有する貯水タンク37が接続されている。三方弁33bvを切り換えることによって、気液分離器33bによって分離された水を、カソードオフガス排出配管22bに排水するか、貯水タンク37に貯水するかを切り換えることができる。
【0048】
また、アノードオフガス排出配管32bには、図示するように、三方弁32bv1,32bv2が設けられている。また、アノードオフガス排出配管32bには、三方弁32bv1を介して、窒素供給配管39iが接続されている。また、循環配管34bには、図示するように、三方弁34bv1,34bv2が設けられている。また、循環配管34bには、三方弁34bv1を介して、窒素排出配管39oが接続されている。三方弁32bv1,34bv2を切り換えることによって、気液分離器33b内を窒素パージすることができる。
【0049】
また、燃料電池システム100aにおけるカソードオフガス排出配管22a、および、燃料電池システム100bにおけるアノードオフガス排出配管32bには、三方弁22av1、および、三方弁32bv2を介して、分岐配管23aが接続されている。また、燃料電池システム100aにおけるカソードオフガス排出配管22a、および、燃料電池システム100bにおける循環配管34bには、三方弁22av2、および、三方弁34bv2を介して、配管25aが接続されている。三方弁22av1,22av2、三方弁32bv1,32bv2、三方弁34bv1,34bv2を切り換えることによって、燃料電池システム100aにおける燃料電池スタック10aのカソードから排出されたカソードオフガスを、燃料電池システム100bにおける気液分離器33bに流すことができる。そして、燃料電池システム100bにおける気液分離器33bによって、燃料電池システム100aにおける燃料電池スタック10aのカソードから排出されたカソードオフガスに含まれる生成水を分離することができる。気液分離器33b、および、貯水タンク37は、[課題を解決するための手段]における第1の水回収部に相当する。また、三方弁22av1,22av2、三方弁32bv1,32bv2、三方弁34bv1,34bv2は、[課題を解決するための手段]におけるカソードオフガス流路切換部に相当する。
【0050】
制御ユニット40Aは、燃料電池システム100における制御ユニット40と同様に、内部にCPU、RAM、ROM等を備えるマイクロコンピュータとして構成されており、ROMに記憶されたプログラムに従って、燃料電池システム100a、および、燃料電池システム100bの運転を制御する。
【0051】
上述した燃料電池システム100a、および、燃料電池システム100bは、以下のように動作する。
【0052】
すなわち、先に説明したように、車両1000Aが移動のために使用されており、車両1000Aの外部の他の装置に電力を供給していない場合には、燃料電池システム100a,100bの双方を動作させる。この場合、燃料電池システム100aのカソードから排出されたカソードオフガス、および、気液分離器33aによって分離された生成水は、燃料電池システム100bにおける気液分離器33bに流すことなく、排気口22aoから車両1000Aの外部に排出される。また、燃料電池システム100bのカソードから排出されたカソードオフガス、および、気液分離器33bによって分離された生成水は、排気口22boから車両1000Aの外部に排出される。
【0053】
一方、車両1000Aが駐車した状態で車両1000Aの外部の他の装置に電力を供給する場合には、燃料電池システム100aを動作させて、燃料電池システム100bは停止する。この場合、まず、燃料電池システム100bにおいて、燃料電池スタック10bによる発電を停止した状態で、三方弁32bv1,34bv2を切り換えて、気液分離器33b内を窒素パージする。その後、燃料電池システム100aにおける燃料電池スタック10aによる発電を開始し、三方弁22av1,22av2、三方弁32bv1,32bv2、三方弁34bv1,34bv2を切り換えて、燃料電池システム100aにおける燃料電池スタック10aのカソードから排出されたカソードオフガス、および、気液分離器33aによって分離された生成水を、燃料電池システム100bにおける気液分離器33bに流す。
【0054】
以上説明した第2実施例の車両1000Aによれば、車両1000Aが駐車した状態で車両1000Aの外部の他の装置に、燃料電池システム100aにおける燃料電池スタック10aによって発電された電力を供給するときに、燃料電池システム100bにおける気液分離器33bによって、燃料電池スタック10aのカソードから排出されたカソードオフガスに含まれる生成水を回収することができる。したがって、車両1000Aが駐車した状態で燃料電池による発電を行う場合であっても、生成水が、車両1000Aの外部の排気口22aoの周辺に大量に溜まることを防止することができる。
【0055】
C.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形が可能である。
【0056】
C1.変形例1:
上記第1実施例では、第1の水回収部として、気液分離器24を用い、第2の水回収部として、気液分離器33を用いるものとしたが、本発明は、これに限られない。気液分離器24,33の代わりに、例えば、凝縮器を用いるようにしてもよい。これは、上記第2実施例における気液分離器33a,33bについても同様である。
【0057】
C2.変形例2:
上記第1実施例では、運転制御処理において、車両1000の車速が0(ゼロ)である場合に、カソードオフガスを気液分離器24に流し、車両1000の車速が0(ゼロ)でない場合に、カソードオフガスを気液分離器24に流さないようにしたが、本発明は、これに限られない。例えば、車両1000が駐車中である場合に、カソードオフガスを気液分離器24に流し、車両1000が駐車中でない場合に、カソードオフガスを気液分離器24に流さないようにしてもよい。車両1000が駐車中でない場合、すなわち、移動のために車両1000が使用されている場合には、信号待ち等により、一時的に停車しても、すぐに走行を再開する可能性が高く、排気口22oから生成水を排水しても、排気口22oの周辺に大量の生成水が溜まるおそれは少ないからである。なお、車両1000が駐車中であるか否かは、例えば、車速が0(ゼロ)である時間に基づいて、判定するようにすることができる。また、燃料電池スタック10によって発電された電力を、車両1000の外部の他の装置に供給している場合に、カソードオフガスを気液分離器24に流すようにしてもよい。燃料電池スタック10によって発電された電力を、車両1000の外部の他の装置に供給している場合には、車両1000が長時間駐車した状態になると予想されるからである。
【0058】
C3.変形例3:
上記第1実施例では、気液分離器24によって回収した生成水を、燃料電池スタック10のカソードに供給される空気の加湿に利用するものとしたが、これを省略するようにしてもよい。これとは逆に、上記第2実施例において、気液分離器33bによって回収した生成水を、燃料電池スタック10aのカソードに供給される空気の加湿に利用するものとしてもよい。
【0059】
C4.変形例4:
上記第1実施例では、気液分離器33によって回収された生成水を、カソードオフガス排出配管22に流すものとしたが、本発明は、これに限られない。アノードオフガスに含まれる生成水は、比較的少ないので、気液分離器33によって回収された生成水を、カソードオフガス排出配管22に流すことなく、車両1000の外部に直接排水するものとしてもよい。また、排水配管35を、気液分離器24の下流側の配管25またはカソードオフガス排出配管22に合流させるようにしてもよい。
【0060】
また、気液分離器33によって回収した生成水を、燃料電池スタック10のカソードに供給される空気の加湿に利用するものとしてもよい。これらは、上記第2実施例についても同様である。
【0061】
C5.変形例5:
上記第1実施例では、貯水タンク27は、排水弁28を備えており、車両1000が走行中に、貯水タンク27が備える排水弁28を開弁して、貯水タンク27に貯水された水の排水を行うものとしたが、これを省略するようにしてもよい。
【0062】
また、排水弁28を、手動で開閉できるものとしてもよい。こうすることによって、例えば、災害時等の水不足が発生したときに、貯水タンク27に貯水された水を、生活用水として利用することができる。これは、上記第2実施例における排水弁38についても同様である。
【0063】
C6.変形例6:
上記第1実施例では、燃料電池システム100において、分岐配管23、気液分離器24、配管25、水供給配管26は、常時、備えられているものとしたが、本発明は、これに限られない。例えば、燃料電池システム100において、分岐配管23、気液分離器24、配管25、水供給配管26の少なくとも一部をユニット化し、これらを、車両1000の利用者が、適宜、着脱可能としてもよい。この態様では、例えば、大量の生成水が同じ場所に排水されて水溜まりができる程度の比較的長時間、車両1000が停車した状態で発電を継続する場合に、気液分離器24等を装着し、生成水が排水されても水溜りができない程度の比較的短時間しか、車両1000が停車した状態で発電を継続しない場合には、予め、気液分離器24等を取り外しておくようにすることができる。前者の場合としては、例えば、車両1000を駐車した状態で燃料電池スタック10による発電を行い、車両1000の外部の他の装置に電力を供給する場合が挙げられる。また、後者の場合としては、例えば、移動のために車両1000を使用する場合が挙げられる。気液分離器24等を取り外すことによって、車両1000の軽量化を図り、走行中の燃費を向上させることができる。
【0064】
C7.変形例7:
上記第1実施例では、カソードオフガス流路切換部としての三方弁22v1,22v2の切り換えを、制御ユニット40が行うものとしたが、本発明は、これに限られない。三方弁22v1,22v2の切り換えを、車両1000の利用者が手動で行えるようにしてもよい。これは、上記第2実施例における三方弁22av1,22av2、三方弁32bv1,32bv2、三方弁34bv1,34bv2についても同様である。
【0065】
C8.変形例8:
上記第2実施例では、車両1000Aは、2つの燃料電池システム100a,100bを搭載するものとしたが、本発明は、これに限られない。車両1000Aに、3つ以上の燃料電池システムを搭載するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10,10a,10b…燃料電池スタック
20,20a,20b…空気供給配管
22,22a,22b…カソードオフガス排出配管
22bv…バルブ
22o,22a,22bo…排気口
22v1,22v2,22av1,22av2…三方弁
23,23a…分岐配管
24…気液分離器
25,25a…配管
26…水供給配管
27…貯水タンク
28…排水弁
30,30a,30b…水素供給配管
32,32a,32b…アノードオフガス排出配管
32bv1,32bv2…三方弁
33,33a,33b…気液分離器
33bv…三方弁
34,34a,34b…循環配管
34bv1,34bv2…三方弁
35,35a,35b…排水配管
36…配管
37…貯水タンク
38…排水弁
39i…窒素供給配管
39o…窒素排出配管
40,40A…制御ユニット
100,100a,100b…燃料電池システム
200…車速センサ
1000,1000A…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を搭載した車両であって、
排気口を有し、前記燃料電池のカソードから排出されたカソードオフガスを流すためのカソードオフガス排出配管と、
前記カソードオフガスに含まれる水を回収するための第1の水回収部と、
前記カソードオフガス排出配管から分岐して接続され、前記カソードオフガスを前記第1の水回収部に流すための分岐配管と、
前記車両が停車した状態で前記燃料電池による発電を行うときに、前記分岐配管を介して、前記カソードオフガスを前記第1の水回収部に流し、前記車両が停車していない状態で前記燃料電池による発電を行うときに、前記分岐配管を介して、前記カソードオフガスを前記第1の水回収部に流さないように、前記カソードオフガスの流路を切り換えるカソードオフガス流路切換部と、
を備える車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両であって、
前記燃料電池は、固体高分子からなる電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池であり、
前記車両は、さらに、前記第1の水回収部によって回収した水を酸化剤ガスと混合して、前記燃料電池のカソードに供給する水供給部を備える、
車両。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両であって、さらに、
前記燃料電池のアノードから排出されたアノードオフガスを流すためのアノードオフガス排出配管と、
前記アノードオフガス排出配管に接続され、前記アノードオフガスに含まれる水を回収するための第2の水回収部と、
前記第2の水回収部によって回収された水を、前記カソードオフガス排出配管における前記分岐配管との接続部の前記カソードオフガスの流れ方向についての上流部に流すための排水配管と、
を備える車両。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の車両であって、
前記第1の水回収部は、前記車両が走行しているときに、前記第1の水回収部によって回収した水を、前記車両の外部に排水する排水部を備える、
車両。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の車両であって、
前記第1の水回収部は、着脱可能に備えられている、
車両。
【請求項6】
車両に搭載される燃料電池システムであって、
燃料電池と、
排気口を有し、前記燃料電池のカソードから排出されたカソードオフガスを流すためのカソードオフガス排出配管と、
前記カソードオフガスに含まれる水を回収するための第1の水回収部と、
前記カソードオフガス排出配管から分岐して接続され、前記カソードオフガスを前記第1の水回収部に流すための分岐配管と、
前記車両が停車した状態で前記燃料電池による発電を行うときに、前記分岐配管を介して、前記カソードオフガスを前記第1の水回収部に流し、前記車両が停車していない状態で前記燃料電池による発電を行うときに、前記分岐配管を介して、前記カソードオフガスを前記第1の水回収部に流さないように、前記カソードオフガスの流路を切り換えるカソードオフガス流路切換部と、
を備える燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−27288(P2013−27288A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163326(P2011−163326)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】