説明

燃料電池システム

【課題】膜の穴開き等の問題が電気化学的水素ポンプにて生じないように、かつ、不純物と共にシステム外に排出される水素量が十分に少なくなるように制御することが容易な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システムを、第1電気化学的水素ポンプ24の後段に、そのアノード側流路のアノード排ガス排出口近傍の部分まで水素が拡散するのに要する時間が第1電気化学的水素ポンプ24よりも短い構成/構造を有する第2電気化学的水素ポンプ25を備えたシステムとしておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料(アノードガス)として水素を使用する燃料電池システムの中には、燃料電池から排出されるアノード排ガスが、燃料電池のアノードガス供給口に戻されるものが存在している。そして、そのような燃料電池システムは、システム内を循環するアノードガス(アノード排ガス)中の不純物量が増えた場合に、アノード排ガス(窒素、ヘリウム等の不純物+水素)をシステム外に排出できるものとなっているのであるが、燃費(水素の利用効率)を向上させるためには、システム外に不純物と共に排出される水素量は少ない方が良い。
【0003】
そのため、電気化学的水素ポンプ(以下、単に、水素ポンプとも表記する)により水素を抽出してから(不純物濃度を高めてから)アノード排ガスをシステム外に排出する燃料電池システム(例えば、特許文献1参照。)が開発されている。
【0004】
より具体的には、アノード排ガスの一部が水素ポンプのアノード排ガス導入口(アノード側のガス導入口)に供給されるように、水素ポンプ及びガス流路を設けた上で、水素ポンプのアノード排ガス排出口(アノード側のガス排出口)に開閉弁を設けた燃料電池システムであって、水素ポンプ及び開閉弁に対して、『開閉弁を閉じた状態で水素ポンプの電極間に所定電流を流し、水素ポンプの電極間の電圧が規定電圧となったときに開閉弁を開ける制御』が行われる燃料電池システム(以下、従来システムと表記する)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−019124号公報
【特許文献2】特開2005−166515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水素ポンプ(電気化学的水素ポンプ)は、水素欠となっている部分(水素がない/水素が不足している部分)がカソード側に存在している状況下、電極間に比較的に高い電圧を印可すると、当該部分で、膜の穴開き〔触媒層の腐食反応〕や水の電気分解が生じ得るデバイスである。
【0007】
そのため、上記した従来システム内の水素ポンプも、膜の穴開き等の問題が生じないように制御する必要があるのであるが、アノード排ガス排出口を封止した状態(開閉弁を閉じた状態)で水素ポンプを使用する場合、水素ポンプのアノード側の各部の水素濃度は、アノードガス導入口からより離れた部分の水素濃度の方がより早く減少する。何故ならば、アノード排ガス排出口が封止されている場合、アノード側の各部分に、アノード排ガス導入口から当該部分までの距離分、水素が拡散により移動しないと、水素が補充されないことになるからである。
【0008】
従って、アノード排ガス排出口を封止した状態で水素ポンプを使用し続けると、アノード排ガス導入口から最も離れた部分(アノード排ガス排出口に最も近い部分)が最初に水素欠状態となる。そして、水素欠状態となっている部分が現れると、水素欠状態とはなっ
ていない部分に電流が集中するため、IR損失分、印可電圧が増大する。また、水素欠状態となっている部分が現れた後にも水素ポンプを使用し続けた場合には、水素欠状態となっている部分が広がっていくことになる。
【0009】
要するに、アノード排ガス排出口を封止した状態で水素ポンプを使用しつづけると、或る時点で(アノード排ガス導入口から最も離れた部分が水素欠状態となったときに)、水素ポンプに対する印可電圧が急激に上昇し始めるのであるが、印可電圧が急激に上昇し始めたときに開閉弁を開けるようにしたのでは、水素ポンプ内への水素の補充が間に合わず、高電圧が電極間に印可されて膜の穴開き等が生ずる可能性がある。
【0010】
そのため、従来システムは、開閉弁を開ける印可電圧を、膜の穴開き等の問題が生じないことが確実な、比較的に低い電圧に設定したものとなっている。
【0011】
そこで、本発明の課題は、電気化学的水素ポンプを備えた燃料電池システムであって、膜の穴開き等の問題が電気化学的水素ポンプにて生じないように、かつ、不純物と共にシステム外に排出される水素量が十分に少なくなるように制御することが容易な燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の燃料電池システムは、
水素がアノードガスとして供給される燃料電池と、
前記燃料電池より排出されるアノード排ガスからアノードガスとして再利用する水素を抽出するための第1の電気化学的水素ポンプであって、所定流量のガスをアノード側に流した場合に、平均流速V1のガスが、反応面上を平均距離L1移動した後、排出されることになる構成を有する第1の電気化学的水素ポンプと、
前記第1の電気化学的水素ポンプにより水素が抽出されたアノード排ガスからアノードガスとして再利用する水素を抽出するための第2の電気化学的水素ポンプであって、前記所定流量のガスをアノード側に流した場合に、前記平均流速V1よりも遅い平均流速V2のガスが、反応面上を、前記平均距離L1よりも短い平均距離L2移動した後、排出されることになる構成を有する第2の電気化学的水素ポンプと、
前記第2の電気化学的水素ポンプ内のアノード排ガスのシステム外への排出をON/OFFするための排出制御用開閉弁とを、備える。
【0013】
すなわち、本発明の燃料電池システムは、燃料電池より排出されるアノード排ガス中の不純物濃度を第1の電気化学的水素ポンプによって限界まで上げておかなくても、第2の電気化学的水素ポンプによりシステム外に排出されるガス中の不純物濃度を上げられる構成を有している。しかも、本発明の燃料電池システムが備える第2の電気化学的水素ポンプは、第1の電気化学的水素ポンプよりも、ポンプ内(ポンプ内のアノード側)の各部に水素(アノード排ガス)が供給されやすいもの〔“前記所定流量のガスをカソード側に流した場合に、前記平均流速V1よりも遅い平均流速V2のガスが、反応面上を、前記L1よりも短い平均距離L2移動した後、排出されることになる構成”を有するが故に、ポンプ内の各部に短時間で水素が拡散するもの〕となっている。
【0014】
そして、各部に水素が供給されやすい第2の電気化学的水素ポンプと、それに接続された排出制御用開閉弁とを、第2の電気化学的水素ポンプにて膜の穴開き等の問題が生ぜす、且つ、第1の電気化学的水素ポンプにて抽出しきれなかった量の水素が抽出されるように制御することは、容易なことである。従って、本発明の燃料電池システムは、膜の穴開き等の問題が電気化学的水素ポンプにて生じないように、かつ、不純物と共にシステム外に排出される水素量が十分に少なくなるように制御することが容易なシステムとなっていると言うことが出来る。
【0015】
なお、本発明の燃料電池システムを実現するに際しては、第1の電気化学的水素ポンプにより水素が抽出されたアノード排ガスを第2の電気化学的水素ポンプに供給するための流路中に開閉弁を設けておくことも設けておかないことも出来る。また、排出制御用開閉弁と第2の電気化学的水素ポンプとの間に、幾つかの電気化学的水素ポンプをさらに設けておくことも出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電気化学的水素ポンプを備えた燃料電池システムであって、膜の穴開き等の問題が水素ポンプにて生じないように、かつ、不純物と共にシステム外に排出される水素量が十分に少なくなるように制御することが容易な燃料電池システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】実施形態に係る燃料電池システムに用いられている各電気化学的水素ポンプの概略構成図である。
【図3】実施形態に係る燃料電池システムに用いられている2つの電気化学的水素ポンプの構成の違いを説明するための図である。
【図4】実施形態に係る燃料電池システムによる不純物濃縮動作の内容を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施形態に係る燃料電池システムは、燃料電池自動車に搭載するシステムとして開発したものである。図1に示してあるように、燃料電池システムは、燃料電池20、水素タンク21、機械式ポンプ22、第1電気化学的水素ポンプ24、第2電気化学的水素ポンプ25等からなる発電部12と、制御部11とを、備えている。
【0020】
まず、本燃料電池システムが備える発電部12の構成を説明する。なお、以下の説明において、電気化学的水素ポンプ(第1電気化学的水素ポンプ24又は第2電気化学的水素ポンプ25)のアノード排ガス導入口、アノード排ガス排出口とは、図2に模式的に示してあるように、それぞれ、電気化学的水素ポンプのアノード側流路(アノード側のガス流路)と連通しているガス導入口、ガス排出口のことである。また、電気化学的水素ポンプの水素排出口(図示略)とは、電気化学的水素ポンプのカソード側流路(カソード側のガス流路)と連通しているガス排出口のことである。
【0021】
発電部12(図1)の構成要素である燃料電池20は、複数の固体高分子型燃料電池セルをセパレータを介して積層した燃料電池である。
【0022】
この燃料電池20は、一般的な燃料電池(燃料電池スタック)と同様に、燃料電池20へのアノードガスの供給口であるアノードガス供給口、燃料電池20内を通過したアノードガス(以下、アノード排ガス表記する)の出口であるアノード排ガス出口、燃料電池20へのカソードガス(本実施形態では、空気)の供給口であるカソードガス供給口(図示略)、燃料電池20内を通過したカソードガスの出口であるカソード排ガス出口(図示略)を備えている。なお、図示は省略してあるが、発電部12は、この燃料電池20のカソードガス供給口及びカソード排ガス出口に接続されたカソードガス供給系(エアーコンプレッサ、加湿器等からなるもの)も備えたものとなっている。
【0023】
水素タンク21は、数十MPa程度の水素を貯蔵したタンクである。この水素タンク21は、主止弁41、減圧弁42等が設けられているアノードガス通路30によって、燃料電池20のアノードガス供給口と接続されている。
【0024】
燃料電池20のアノード排ガス出口には、アノード排ガスから水分を分離するための気液分離器23が接続されている。この気液分離器23は、水分除去後のアノード排ガスの排出口を2つ備えている。そして、気液分離器23の一方の排出口は、機械式ポンプ22を備えたアノード排ガス循環路32により、アノードガス通路30と接続され、他方の排出口は、第1電気化学的水素ポンプ24のアノード排ガス導入口とガス通路33によって接続されている。
【0025】
第1電気化学的水素ポンプ24の水素排出口は、アノード排ガス循環路32の途中(機械式ポンプ22よりも上流側の部分)とガス通路34によって接続されている。また、第1電気化学的水素ポンプ24のアノード排ガス排出口は、開閉弁44を備えたガス通路35により、第2電気化学的水素ポンプ25のアノード排ガス導入口と接続されている。
【0026】
第2電気化学的水素ポンプ25の水素排出口は、アノード排ガス循環路32の途中(機械式ポンプ22よりも上流側の部分)とガス通路36によって接続されている。そして、第2電気化学的水素ポンプ25のアノード排ガス排出口には、第2電気化学的水素ポンプ25のアノード側流路内のガスをシステム外へ排出するためのガス通路が接続されており、当該ガス通路には、システム外へのガスの排出をON/OFFするための開閉弁45が設けられている。
【0027】
発電部12は、以上、説明した構成を有するものであると共に、第1電気化学的水素ポンプ24として、その構成/構造を特に工夫していない電気化学的水素ポンプ(閉止弁44を閉じた状態で使用し続けると、アノード側流路のアノード排ガス排出口により近い部分の方がより早く水素欠となる電気化学的水素ポンプ)を採用したものとなっている。
【0028】
さらに、発電部12は、第2電気化学的水素ポンプ25として、図3に示したような構成を有する電気化学的水素ポンプを採用したものとなっている。すなわち、発電部12は、第2電気化学的水素ポンプ25として、所定流量Vのガスをアノード側流路に流した場合における反応面(電解質膜のアノード側流路側の面)上のガスの平均流速V2が、同条件における第1電気化学的水素ポンプ24の反応面上の平均流速V1よりも遅く、かつ、ポンプ内に入った後、ポンプ外に出るまでの間に反応面上を移動するガスの平均距離L2が、第1電気化学的水素ポンプ24の平均距離L1よりも短い電気化学的水素ポンプを採用したものとなっている。
【0029】
なお、本実施形態の燃料電池システムに実際に採用した第2電気化学的水素ポンプ25は、アノード側流路の高さが、第1電気化学的水素ポンプ24のそれと等しくなるように、かつ、アノード側流路の、ガスの流れ方向に垂直な方向の長さが、第1電気化学的水素ポンプ24のそれよりも長くなるように、構成(製造)したものである。
【0030】
次に、制御部11の構成及び制御動作を説明する。
【0031】
制御部11(図1)は、発電部12内の各部(機械式ポンプ22、エアコンプレッサ、減圧弁42、第1電気化学的水素ポンプ24等)を統合的に制御するための、CPU、ROM、RAM等からなるユニット(いわゆる電子制御ユニット)である。
【0032】
この制御部11が、第1、第2電気化学的水素ポンプ24、25、開閉弁44、45を除く各部に対して行う制御は、既存の制御部と本質的には同じものとなっている。このた
め、以下では、制御部11の、第1電気化学的水素ポンプ24等に対する制御内容のみを説明することにする。
【0033】
制御部11は、第1電気化学的水素ポンプ24及び開閉弁44に対しては、『開閉弁44を閉じた状態で第1電気化学的水素ポンプ24の電極間に予め定められている第1所定電流値の電流を流し、第1電気化学的水素ポンプ24の電極間への印可電圧が、“印可電圧が急上昇することを考慮して定めた第1規定電圧”となったときに開閉弁44を開ける制御』を行うように、プログラミングされている。
【0034】
また、制御部11は、第2電気化学的水素ポンプ25及び開閉弁45に対しても同様の制御を行うように、プログラミングされている。
【0035】
ただし、制御部11は、第2電気化学的水素ポンプ25及び開閉弁45に対しては、『開閉弁45を閉じた状態で第2電気化学的水素ポンプ25の電極間に予め定められている第2所定電流値の電流を流し、第2電気化学的水素ポンプ25の電極間への印可電圧が、“アノード側流路内の水素濃度のみを考慮して(印可電圧が急上昇することを考慮せずに)定めた第2規定電圧”となったときに開閉弁45を開ける制御』を行う装置となっている。
【0036】
すなわち、上記したように、発電部12が備える第1電気化学的水素ポンプ24は、閉止弁44を閉じた状態で使用し続けると、アノード側流路のアノード排ガス排出口により近い部分の方がより早く水素欠となるものとなっている。
【0037】
そのため、例えば、第1電気化学的水素ポンプ24のアノード側流路内の各部の水素濃度が図4(a)に示したものとなっている状態で開閉弁44が閉じられた場合、図4(b)に模式的に示したように、アノード側流路のアノード排ガス排出口により近い部分の方の水素濃度がより早く減少することになる。そして、その結果として、暫くすると、第1電気化学的水素ポンプ24に対する印可電圧が急激に上昇し始めるのであるが、既に説明したように、印可電圧が急激に上昇し始めたときに開閉弁44を開けたのでは、第1電気化学的水素ポンプ24内への水素(アノード排ガス)の補充が間に合わない危険性がある。
【0038】
従って、開閉弁44を開ける電圧(第1規定電圧)は、印可電圧が急上昇することを考慮して定めざるを得ない。
【0039】
一方、第2電気化学的水素ポンプ25は、上記した構成(図3参照)から明らかなように、アノード側流路のアノード排ガス排出口近傍の部分まで水素が比較的に短時間で拡散し得るものとなっている。しかも、そのアノード側流路に供給されるガスが比較的に水素濃度が低いガス(第1電気化学的水素ポンプ24によって既に水素が流出されているガス)であるが故に、第2電気化学的水素ポンプ25は、水素の抽出速度が比較的に遅い(アノード側流路からカソード側流路への水素の単位時間当たりの移動量が比較的に少ない)状態で機能させれば良いものとなっている。
【0040】
さて、アノード側流路のアノード排ガス排出口近傍の部分まで水素が比較的に短時間で拡散し得る第2電気化学的水素ポンプ25を、水素の抽出速度が比較的に少ない状態で機能させた場合、図4(a′)、図4(b′)に模式的に示したように、第2電気化学的水素ポンプ25のアノード側流路の各所で水素濃度が一様に減少することになる。
【0041】
そして、アノード側流路の各所で水素濃度が一様に減少する場合には、アノード側流路内の水素濃度のみを考慮して(印可電圧が急上昇することを考慮せずに)、開閉弁45を
開けるタイミングを決定できる。このため、制御部11として、第2電気化学的水素ポンプ25及び開閉弁45に対しては、『開閉弁45を閉じた状態で第2電気化学的水素ポンプ25の電極間に、予め定められている第2所定電流値の電流を流し、第2電気化学的水素ポンプ25の電極間への印可電圧が、アノード側流路内の水素濃度のみを考慮して(印可電圧が急上昇することを考慮せずに)定めた第2規定電圧となったときに開閉弁45を開ける制御』を行う装置を採用しているのである。
【0042】
以上、説明したように、本実施形態に係る燃料電池システムは、燃料電池20より排出されるアノード排ガス中の不純物濃度を第1電気化学的水素ポンプ24によって限界まで上げておかなくても、第2電気化学的水素ポンプ25によって、システム外に排出されるガス中の不純物濃度を上げられる構成を有している。しかも、燃料電池システムに採用されている第2電気化学的水素ポンプ25は、第1電気化学的水素ポンプ24よりも、アノード側流路内の各部に水素(アノード排ガス)が供給されやすいもの(アノード側流路のアノード排ガス排出口近傍の部分まで水素が拡散するのに要する時間が、第1電気化学的水素ポンプ24よりも短いもの)となっている。
【0043】
そして、各部に水素が供給されやすい第2電気化学的水素ポンプ25と、それに接続された開閉弁45とを、第2電気化学的水素ポンプ25にて膜の穴開き等の問題が生ぜす、且つ、第1電気化学的水素ポンプ24にて抽出しきれなかった量の水素が抽出されるように制御することは、上記したように容易なことである。従って、この燃料電池システムの、電気化学的水素ポンプ24、25関連の構成(図1、図3参照)を採用しておけば、他の部分の構成として上記したものとは異なるものを採用した場合であっても、膜の穴開き等の問題が電気化学的水素ポンプにて生じないように、かつ、不純物と共にシステム外に排出される水素量が十分に少なくなるように制御することが容易な燃料電池システムを実現できることになる。
【0044】
《変形形態》
上記した、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムは、各種の変形を行うことが出来る。例えば、実施形態の燃料電池システムのガス流路35から開閉弁44を取り除いておくことや、ガス流路35から開閉弁44を取り除くと共に、ガス流路35として、ガスが少量しか流れないものを採用しておくことが出来る。
【0045】
開閉弁45と第2電気化学的水素ポンプ25との間に、幾つかの電気化学的水素ポンプを追加することも出来る。また、第2電気化学的水素ポンプ25として、“アノード側流路の高さをより高くすることにより、平均流速V2が第1電気化学的水素ポンプ24の平均流速V1よりも遅くなるようにしたもの”を採用することも出来る。
【符号の説明】
【0046】
11・・・制御部
12・・・発電部
20・・・燃料電池
21・・・水素タンク
22・・・機械式ポンプ
23・・・気液分離器
24・・・第1電気化学的水素ポンプ
25・・・第2電気化学的水素ポンプ
30・・・アノードガス通路
32・・・アノード排ガス循環路
33、34、35、36・・・ガス通路
41・・・主止弁
42・・・減圧弁
44、45・・・開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素がアノードガスとして供給される燃料電池と、
前記燃料電池より排出されるアノード排ガスからアノードガスとして再利用する水素を抽出するための第1の電気化学的水素ポンプであって、所定流量のガスをカソード側に流した場合に、平均流速V1のガスが、反応面上を平均距離L1移動した後、排出されることになる構成を有する第1の電気化学的水素ポンプと、
前記第1の電気化学的水素ポンプにより水素が抽出されたアノード排ガスからアノードガスとして再利用する水素を抽出するための第2の電気化学的水素ポンプであって、前記所定流量のガスをカソード側に流した場合に、前記平均流速V1よりも遅い平均流速V2のガスが、反応面上を、前記平均距離L1よりも短い平均距離L2移動した後、排出されることになる構成を有する第2の電気化学的水素ポンプと、
前記第2の電気化学的水素ポンプ内のアノード排ガスのシステム外への排出をON/OFFするための開閉弁と
を備えることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−282783(P2010−282783A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133919(P2009−133919)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】