説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池システムにおいて、空気供給部から水素生成装置に供給される空気供給量が適正であるかを判断する。
【解決手段】選択酸化部17に空気供給量指示値に応じた空気を供給する空気供給部19と、選択酸化部の温度を検出する選択酸化温度検出部26と、選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度に基づいて空気供給部へ空気供給量指示値を出力する運転制御部16とを備え、運転制御部は、燃料電池が有する任意の発電量を発電した後の予め設定される期間、燃料電池を電力負荷の変化に追従させず動作させ、空気供給部を予め設定される指示値で動作させ、指示値から予想される予想選択酸化温度と選択酸化温度検出部で検出される検出選択酸化温度との温度差が所定温度差以上であれば、予め設定される指示値に対応する空気が、空気供給部から指示通りに供給されていないと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化石原料等から一酸化炭素濃度の低い水素含有ガスを生成する水素生成装置を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
分散型エネルギー供給源として、小型装置でも高効率な発電を可能とする燃料電池スタック(以下、単に「燃料電池」という)を用いた燃料電池システムの開発が進められている。燃料電池システムは、発電部の本体である燃料電池に、水素含有ガスと酸素含有ガスとを供給して、水素と酸素との電気化学反応を進行させて発生させた化学的なエネルギーを、電気的なエネルギーとして取り出して発電するシステムである。
【0003】
一般的に、水素含有ガスはインフラストラクチャーから供給されていない。そこで、従来の燃料電池システムは、既存のインフラストラクチャーから供給される都市ガス又はLPG等を原料とし、Ru触媒やNi触媒を用いて600〜700℃の温度で水蒸気との改質反応させる改質部を備えた、水素生成装置が設けられている。なお、改質反応により得られる水素含有ガスには、通常、原料に由来する一酸化炭素が含まれ、その濃度が高いと、燃料電池の発電特性を低下させる。そこで、水素生成装置には、改質部の他に、200℃〜350℃の温度で一酸化炭素と水蒸気との変成反応を進行させて一酸化炭素を低減させる、Cu−Zn系触媒や貴金属系触媒を備える変成部、及び、100℃〜200℃の温度で一酸化炭素を選択的に酸化反応させてさらに一酸化炭素を低減させる、Ru触媒やPt触媒を備える選択酸化部等の反応部が設けられる。また、燃料電池システムの効率向上のため、燃料電池の発電時にアノードから排出される水素含有ガス(以下、「アノードオフガス」という)を水素生成装置で燃焼させ、改質反応に用いられることが多い。
【0004】
さて、水素生成装置は、上述のように、改質部、変成部、選択酸化部等で構成されており、定常時、過渡期において、一定量の水素及び一酸化炭素濃度の低い水素を生成するためには、各反応部における触媒の温度を一定範囲内に厳密に制御する必要がある。そこで、改質部、変成部、選択酸化部の下流側近傍に温度検出器を設置し、改質部においてはその温度検出器の検出温度に基づいて改質部の加熱量を増減、選択酸化部においてはその温度検出器の検出温度に基づいてその上流側に設けた冷却器の冷却量を増減することで各反応部の温度を適正に制御する構成がとられている(例えば、特許文献1参照)。また、変成部の温度検出器の検出温度に基づいて予熱蒸発器への水供給量を増減、あるいは、加熱部への燃焼用空気供給郎を増減することで変成部の温度を適正に制御する構成がとられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−180905号公報
【特許文献2】特開2008−019159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、空気供給部から水素生成装置に供給される空気供給量を計測する流量計など空気流量計測手段の異常により、空気指示値に対応する空気供給量が水素生成装置に適正に供給されなければ、一定量の水素及び一酸化炭素濃度の低い水素を生成することはできない。そして、選択酸化部の過昇温、あるいは、一酸化炭素による燃料電池の被毒に繋がり、発電運転の継続が不可能になる。さらには、燃料電池システムの故障に繋がる。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、簡便でかつ速やかに空気供給部から水素生成装置に供給される空気供給量が適正であるかを把握できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の燃料電池システムでは、原料と水が供給されて改質反応により水素含有ガスを生成させる改質部と、改質部の温度を検出する改質温度検出部と、改質部に原料供給量指示値に応じた原料を供給する原料供給部と、改質部に水供給量指示値に応じた水を供給する水供給部と、改質部により生成された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減させる変成部と、変成部の温度を検出する変成温度検出部と、変成部により低減された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度をさらに低減させる選択酸化部と、選択酸化部に空気供給量指示値に応じた空気を供給する空気供給部と、選択酸化部の温度を検出する選択酸化温度検出部と、選択酸化部で一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガスと酸素含有ガスが供給されて発電し、電力供給先の電力負荷の変化に追従して発電する燃料電池と、選択酸化部で一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガスのうち燃料電池で消費されなかった残りの水素含有ガスを燃焼させて改質部の改質反応に必要な熱を供給する燃焼部と、選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度に基づいて空気供給部へ空気供給量指示値を出力する運転制御部とを備え、運転制御部は、燃料電池が有する任意の発電量を発電した後の予め設定される期間、燃料電池を電力負荷の変化に追従させず動作させ、空気供給部を予め設定される指示値で動作させ、指示値から予想される予想選択酸化温度と選択酸化温度検出部で検出される検出選択酸化温度との温度差が所定温度差以上であれば、予め設定される指示値に対応する空気が空気供給部から指示通りに供給されていないと判断する構成としたものである。
【0009】
これによって、簡便でかつ速やかに空気供給部から水素生成装置に供給される空気供給量が適正であるかを把握できることとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の燃料電池システムによれば、空気供給部から水素生成装置に供給される空気供給量が適正であるかを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1における水素生成装置の特徴的な動作の1サイクルを模式的に示すフローチャート
【図3】本発明の実施の形態1における水素生成装置の特徴的な動作の1サイクルを模式的に示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態1における水素生成装置の特徴的な動作の1サイクルを模式的に示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、原料と水が供給されて改質反応により水素含有ガスを生成させる改質部と、改質部の温度を検出する改質温度検出部と、改質部に原料供給量指示値に応じた原料を供給する原料供給部と、改質部に水供給量指示値に応じた水を供給する水供給部と、改質部により生成された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減させる変成部と、変成部の温度を検出する変成温度検出部と、変成部により低減された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度をさらに低減させる選択酸化部と、選択酸化部に空気供給量指示値に応じた空気を供給する空気供給部と、選択酸化部の温度を検出する選択酸化温度検出部と、選択酸化部で一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガスと酸素含有ガスが供給されて発電し、電力供給
先の電力負荷の変化に追従して発電する燃料電池と、選択酸化部で一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガスのうち燃料電池で消費されなかった残りの水素含有ガスを燃焼させて改質部の改質反応に必要な熱を供給する燃焼部と、選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度に基づいて空気供給部へ空気供給量指示値を出力する運転制御部とを備え、運転制御部は、燃料電池が有する任意の発電量を発電した後の予め設定される期間、燃料電池を電力負荷の変化に追従させず動作させ、空気供給部を予め設定される指示値で動作させ、指示値から予想される予想選択酸化温度と選択酸化温度検出部で検出される検出選択酸化温度との温度差が所定温度差以上であれば、予め設定される指示値に対応する空気が空気供給部から指示通りに供給されていないと判断する構成としたものである。これによって、簡便でかつ速やかに空気供給部から水素生成装置に供給される空気供給量が適正であるかを把握できることとなる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明の運転制御部を、予想選択酸化温度と検出選択酸化温度との温度差が所定温度差以上のときであって、予想選択酸化温度より検出選択酸化温度の方が高い場合、予め設定される指示値に対応する空気が空気供給部から多く供給されていると判断し、予想選択酸化温度より検出選択酸化温度の方が低い場合、予め設定される指示値に対応する空気が空気供給部から少なく供給されていると判断するものである。これによって、簡便でかつ速やかに空気供給部から水素生成装置に供給される空気供給量の増減を適正に把握できることとなる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1の発明の運転制御部を、予想選択酸化温度と検出選択酸化温度との温度差が所定温度差以上のときであって、予想選択酸化温度より検出選択酸化温度の方が高い場合、空気供給部への指示値を減量するよう制御し、予想選択酸化温度より検出選択酸化温度の方が低い場合、空気供給部への指示値を増量するよう制御するものである。これによって、空気供給部から水素生成装置に供給される空気供給量が適正であるかを判断し、空気指示値に対応する空気供給量を補正することができる。その結果、一定量の水素及び一酸化炭素濃度の低い水素を生成することができる。また、選択酸化部の過昇温、あるいは、一酸化炭素による燃料電池の被毒、さらには、燃料電池システムの故障を未然に防ぐことができる。さらには、流量計などの空気流量計測手段が不要となり、燃料電池システムのコストダウンを図ることができる。
【0015】
第4の発明は、特に、第1の発明の運転制御部を、予想選択酸化温度と検出選択酸化温度との温度差が所定温度差以上のとき、空気供給部からの空気供給量が異常であると判断し警報を出力するものである。これによって、空気供給部から水素生成装置に供給される空気供給量が異常であるかを判断し、警報を外部出力することができる。
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明による実施形態をより具体的に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
〈燃料電池システムの構成〉
図1は、本発明に係る燃料電池システムの実施の形態1を示す概略構成図である。
【0018】
燃料電池システム100は、水素含有ガスを生成させる水素生成装置1と、水素生成装置1から供給された水素含有ガスを用いて発電を行う燃料電池8と、水素生成装置1から燃料電池8へ切換弁9Aを介して水素ガスを供給する水素ガス供給経路12と、燃料電池8で排出されるアノードオフガスを水素生成装置1の燃焼部2へ切換弁9Bを介して供給するオフガス供給経路14とを備えている。切換弁9Aは燃料電池バイパス経路23により切換弁9Bに接続されている。なお、一般的な固体高分子型の燃料電池8と同等の構成なので、その他の構成の詳細な説明は省略する。
【0019】
水素生成装置1は、水素生成装置1に水を供給する水供給部3と、硫黄成分を含む炭化水素系の原料を通過させて、原料に含まれる硫黄成分を吸着して除去する脱硫部5と、脱硫部5を通過させた後の原料と水供給部3から供給される水とを用いて水素含有ガスを生成させる改質器22と、脱硫部5に供給される原料の流量(原料流量)を制御するための原料供給部4と、原料供給部4や水供給部3の動作を制御する運転制御部16とを備えている。
【0020】
改質器22は、螺旋状で、水供給部3から供給される水を蒸発させるとともに、原料と水蒸気の混合ガスを予熱する水蒸気発生部15と、原料と水蒸気との改質反応を進行させる改質部20と、改質部20で生成した水素含有ガス中の一酸化炭素と水蒸気とを変成反応させて、水素含有ガスの一酸化炭素濃度を低減させる変成部13を有している。また、変成部13を通過した後の水素含有ガス中に残留する一酸化炭素を、空気供給部19から変成部13を通過した後の水素含有ガスに供給される空気を用いて、主に酸化させて除去する選択酸化部17とを有している。改質部20にはRu系の改質触媒、変成部13にはCu−Zn系の変成触媒、選択酸化部17にはRu系の選択酸化触媒が設けられている。また、改質部20における改質触媒(あるいは水素含有ガス)の温度(反応温度)を検出する改質温度検出部21、変成部13における変成触媒(あるいは水素含有ガス)の温度(反応温度)を検出する変成温度検出部24、選択酸化部17における選択酸化触媒(あるいは水素含有ガス)の温度(反応温度)を検出する選択酸化温度検出部26を備えている。
【0021】
また、改質器22は、改質部20における改質反応に必要な反応熱を供給するための燃焼部2を備えている。燃焼部2は、加熱源となる燃焼ガスを燃焼させるバーナー、及び燃焼部2に燃料用空気を供給する、燃焼空気供給部となる燃焼ファン18を有している。燃焼部2で燃焼させる燃焼ガスは、水素ガス供給経路12から燃料電池バイパス経路23を介して、あるいは燃料電池8を経てオフガス供給経路14から燃焼部2に供給される。改質器22によって生成された水素含有ガスは、水素ガス供給経路12を介して燃料電池8に供給される。
【0022】
また、改質部20と水蒸気発生部15は、燃焼部2で発生させた燃焼排ガスから、内筒11の壁面を介して熱を供給される構成となっている。また、水蒸気発生部15は、中筒25の壁面を介して変成部13、選択酸化部17と熱交換が行われる構成となっている。なお、改質部20、変成部13及び選択酸化部17の構成において、一般的な構成と同様な構成部分についての図示、及び詳細な説明は省略する。
【0023】
脱硫部5に供給される炭化水素系の原料は、炭化水素等の少なくとも炭素及び水素元素から構成される有機化合物を含む原料であればよく、例えばメタンを主成分とする都市ガス、天然ガス、LPG等である。ここでは、原料の供給源として都市ガスのガスインフラライン6を用い、そのガスインフラライン6に脱硫部5が接続されている。脱硫部5は、上流側及び下流側に配置された脱硫接続部7に着脱可能な形状を有しており、脱硫部5の硫黄成分に対する吸着量が飽和して吸着特性が低下すると、新しい脱硫部5に交換できる構成となっている。本実施の形態における脱硫部5には、都市ガス中の付臭成分である硫黄化合物を吸着させる、ゼオライト系吸着除去剤が充填されている。また、脱硫接続部7は、原料の流通を制御する弁機能も有し、例えば構成に電磁弁が設けられる。なお、脱硫部5は、水添脱硫を用いた構成としてもよい。
【0024】
水供給部3は、流量調節機能を有するポンプを有している。原料供給部4は、脱硫部5と改質器22とを接続する原料供給経路10に配置され、改質器22に供給される原料の流量を制御することによって、ガスインフラライン6から脱硫部5に供給される原料の流
量を制御している。なお、原料供給部4は、脱硫部5に供給される原料の流量を制御できればよく、原料供給部4の下流側に配置されていてもよい。本実施の形態では、原料供給部4はブースターポンプを有しており、例えば入力する電流パルス、入力電力等を制御することにより、脱硫部5に供給される原料の流量を調節する機能を有している。
【0025】
運転制御部16は、改質器22の水素含有ガスの運転動作を制御する制御部であり、ここでは、原料供給部4から改質器22に供給される原料の供給量、水供給部3から改質器22に供給される水の供給量、空気供給部19から改質器22に供給される空気の供給量などの制御、脱硫接続部7や切換弁9A、9Bなどの動作の制御を行う。また、燃料電池8の運転動作も制御する(詳細な動作説明は省略する)。なお、運転制御部16は、半導体メモリーやCPU等により、改質器22の運転動作シーケンス、原料積算流量など運転情報等を記憶し、状況に応じた適切な動作条件を演算し、かつ、水供給部3や原料供給部4、空気供給部19等の運転に必要な構成に動作条件を指令する。
【0026】
〈燃料電池システムの運転動作〉
次に、燃料電池システム100の起動動作、発電時の運転動作、及び停止動作を、水素生成装置1の動作を中心にして説明する。
【0027】
停止状態から水素生成装置1を起動させる場合、運転制御部16からの指令により、原料は原料供給部4から原料供給経路10を通して改質器22へ供給される。水蒸気発生部15、改質部20、変成部13、選択酸化部17を経た原料は、水素ガス供給経路12、燃料電池バイパス経路23を介してオフガス供給経路14から燃焼部2へ供給され、燃焼部2で着火されて改質器22の加熱が開始する。
【0028】
燃焼部2での加熱開始の後に、水供給部3を動作させて改質器22に水を供給し、水と原料との改質反応を開始させる。本実施の形態では、メタンを主成分とする都市ガス(13A)を原料とする。水供給部3からの水供給量は、都市ガスの平均分子式中の炭素原子数1モルに対して水蒸気が3モル程度になるように制御される(S/Cで3程度)。さらに、空気供給部19を動作させて改質器22に空気を供給する。空気供給部19からの空気供給量は、水素含有ガスに含まれる酸素量が一酸化炭素の約2倍のモル数となるよう制御される。改質器22では、改質部20で水蒸気改質反応、変成部13で変成反応、選択酸化部17で一酸化炭素の選択酸化反応を進行させる。この時、改質温度検出部21で検出される温度に基づいて、改質部20、変成部13,選択酸化部17が各反応に適した温度になるように、燃焼部2の燃焼を制御する。
【0029】
一酸化炭素濃度を所定濃度(本実施の形態では、ドライガスベースで20ppm以下)まで低減させた後、切換弁9A、9Bを動作させ、水素ガス供給経路12を通して水素含有ガスを燃料電池8に供給することで、燃料電池8において発電動作が行われる。また、燃料電池8で排出されるアノードオフガスは、オフガス供給経路14を通り、燃焼部2へ供給される。なお、発電運転の際には、運転制御部16は、改質温度検出部21の検出温度が所定温度となるよう、原料供給部4、水供給部3、空気供給部19、及び燃焼ファン18の動作を制御することで原料供給量、水供給量、空気供給量、燃焼空気供給量を制御する。
【0030】
燃料電池システム100の運転を停止させる場合、運転制御部16からの指令により、切換弁9A、9Bを動作させて、燃料電池8に供給している水素含有ガスを、燃料電池バイパス経路23を通して燃焼部2に供給する。その後、水供給部3と原料供給部4と空気供給部19の動作を停止させて、水と原料と空気の供給を停止させ、水素生成装置1の動作を停止させる。なお、水素生成装置1の停止動作には、切換弁9A、9Bを動作させて改質器22を封止する動作や、改質器22が降温して体積減少する量に相当する量の原料
を供給する動作等の、改質器22内に外気の混入を極力防止する動作を併設して行うことが好ましい。
【0031】
次に、本発明の実施の形態1に係る水素生成装置1の特徴的な動作について、図1及び図2、図3、図4を参照しながら説明する。
【0032】
図2、図3、図4は、本発明の実施の形態1に係る水素生成装置1の特徴的な動作の1サイクルを模式的に示すフローチャートである。なお、実際には、燃料電池システム100の発電運転の際、例えば、図2、図3、図4に示す1サイクルの動作が断続することなく連続して実行される。
【0033】
さて、水素生成装置1において水素含有ガスの生成が開始されると、燃料電池システム100が備える運転制御部16は、電力負荷の変化に追従するよう水素含有ガスの生成量を制御する。具体的には、原料供給部4、水供給部3、空気供給部19、燃焼ファン18の動作を制御することで原料供給量、水供給量、空気供給量、燃焼空気供給量を制御し、電力負荷に応じた量の水素含有ガスを生成するとともに、改質温度検出部21の検出温度を所定温度に制御する。
【0034】
この動作に対して、本実施の形態1では、電力負荷の変化への追従制御を停止し(ステップS1)、追従制御停止の直前の電力負荷において固定発電運転を行う。このとき、運転制御部16は、電力負荷毎に予め設定されている指示値で、原料供給部4、水供給部3、空気供給部19、燃焼ファン18を動作させる(ステップS2)。ここで、各供給部の動作が正常であれば、各指示値1に対する各供給量1は同等である(指示値1=供給量1)。そして、選択酸化温度検出部26で検出される選択酸化温度が安定したときの選択酸化温度Tを取得する。このとき、同時に改質温度検出部21で検出される改質温度T、変成温度検出部24で検出される変成温度Tを取得する(ステップS3)。
【0035】
そして、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される上限温度(各指示値1から予想される選択酸化温度より所定値以上高い温度)T以上であるか否かを判定する(ステップS4A)。ここで、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される上限温度T以上ではないと判定した場合(ステップS4AでNO)、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度T(各指示値1から予想される選択酸化温度より所定値以上低い温度)以下であるか否かを判定する(ステップS4B)。ここで、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度T以下ではないと判定した場合(ステップS4BでNO)、選択酸化温度T、及び、改質温度T、変成温度Tを再び取得する。
【0036】
一方、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される上限温度T以上であると判定した場合(ステップS4AでYES)、空気供給部19、原料供給部4、水供給部3の少なくとも一方の指示値1に対して供給量1が供給されていない(指示値1≠供給量1)と判断し、さらに選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される上限温度THH(各指示値1から予想される選択酸化温度より所定値以上高い温度)以上であるか否かを判定する(ステップS5A)。ここで、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される上限温度THH以上であると判定した場合(ステップS5AでYES)、異常と判断し、アラームを出力する(ステップS6)。一方、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される上限温度THH以上ではないと判定した場合(ステップS5AでNO)、改質温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される改質下限温度TRL0以上かつ改質上限温度TRH0以下であるか否かを判定する(ステップS7A)。
【0037】
そして、ステップS7AでNOと判定した場合、原料供給部4、水供給部3の少なくとも一方の指示値1に対して供給量1が供給されていない(指示値1≠供給量1)と判断し、フローチャートAへステップする。なお、ここでは、選択酸化部17、及び、空気供給部19を中心に説明するため、フローチャートAの説明は省略する。一方、ステップS7AでYESと判定した場合、変成温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される変成下限温度TSL0以上かつ変成上限温度TSH0以下であるか否かを判定する(ステップS8A)。そして、ステップS8AでNOと判定した場合、原料供給部4、水供給部3の少なくとも一方の指示値1に対して供給量1が供給されていない(指示値1≠供給量1)と判断し、フローチャートBへステップする。なお、ここでは、選択酸化部17、及び、空気供給部19を中心に説明するため、フローチャートBの説明は省略する。
【0038】
一方、ステップS8AでYESと判定した場合、空気供給部19への指示値を下げ、空気供給量を減量する(ステップS9A)。ここで、空気供給部19からの空気供給量の減量は、予め設定される減量データに従い実行される。
【0039】
そして、運転制御部16は、ステップS9Aにおいて空気供給部19からの空気が減量された後、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される上限温度TH0(各指示値1から予想される選択酸化温度より所定値以上高い温度)以下ではないと判定した場合(ステップS10AでNO)、再び空気供給部19への指示値を下げ、空気供給量を減量する(ステップS9A)。一方、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される上限温度TH0以下であると判定した場合(ステップS10AでYES)、さらに、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TLL以下であるか否かを判定する(ステップS11A)。
【0040】
ここで、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TLL以下であると判定した場合(ステップS11AでYES)、異常と判断し、アラームを出力する(ステップS12)。一方、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TLL以下ではないと判定した場合(ステップS11AでNO)、さらに、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TL0以上かつ上限温度TH0以下であるか否かを判定する(ステップS13A)。ここで、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TL0以上かつ上限温度TH0以下ではないと判定した場合(ステップS13AでNO)、空気供給部19への指示値を上げ、空気供給量を増量する(ステップS14A)。
【0041】
ここで、空気供給部19からの空気供給量の増量は、予め設定される増量データに従い実行される。そして、再び選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TH0以下であるか否かを判定する(ステップS10A)。一方、運転制御部16が、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TL0以上かつ上限温度TH0以下であると判定した場合(ステップS13AでYES)、このときの空気供給部19への指示値を供給量1における新指示値1と設定する(新指示値1≒供給量1)(ステップS15A)。
【0042】
一方、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度T以下であると判定した場合(ステップS4BでYES)、空気供給部19、原料供給部4、水供給部3の少なくとも一方の指示値1に対して供給量1が供給されていない(指示値1≠供給量1)と判断し、さらに選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TLL(各指示値1から予想される選択酸化温度より所定値以上低い温度)以下であるか否かを判定する(ステップS5B)。
【0043】
ここで、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TLL以下であると判定した場合(ステップS5BでYES)、異常と判断し、アラームを出力する(ステップS6)。一方、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TLL以下ではないと判定した場合(ステップS5BでNO)、改質温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される改質下限温度TRL0以上かつ改質上限温度TRH0以下であるか否かを判定する(ステップS7B)。そして、ステップS7BでNOと判定した場合、原料供給部4、水供給部3の少なくとも一方の指示値1に対して供給量1が供給されていない(指示値1≠供給量1)と判断し、フローチャートAへステップする。
【0044】
なお、ここでは、選択酸化部17、及び、空気供給部19を中心に説明するため、フローチャートAの説明は省略する。一方、ステップS7BでYESと判定した場合、変成温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される変成下限温度TSL0以上かつ変成上限温度TSH0以下であるか否かを判定する(ステップS8B)。そして、ステップS8BでNOと判定した場合、原料供給部4、水供給部3の少なくとも一方の指示値1に対して供給量1が供給されていない(指示値1≠供給量1)と判断し、フローチャートBへステップする。なお、ここでは、選択酸化部17、及び、空気供給部19を中心に説明するため、フローチャートBの説明は省略する。
【0045】
一方、ステップS8BでYESと判定した場合、空気供給部19への指示値を上げ、空気供給量を増量する(ステップS9B)。ここで、空気供給部19からの空気供給量の増量は、予め設定される増量データに従い実行される。
【0046】
そして、運転制御部16は、ステップS9Bにおいて空気供給部19からの空気が増量された後、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TL0(各指示値1から予想される選択酸化温度より所定値以上低い温度)以上ではないと判定した場合(ステップS10BでNO)、再び空気供給部19への指示値を上げ、空気供給量を増量する(ステップS9B)。一方、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TL0以上であると判定した場合(ステップS10BでYES)、さらに、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される上限温度THH以上であるか否かを判定する(ステップS11B)。
【0047】
ここで、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される上限温度THH以上であると判定した場合(ステップS11BでYES)、異常と判断し、アラームを出力する(ステップS12)。一方、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される上限温度THH以上ではないと判定した場合(ステップS11BでNO)、さらに、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TL0以上かつ上限温度TH0以下であるか否かを判定する(ステップS13B)。ここで、運転制御部16は、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TL0以上かつ上限温度TH0以下ではないと判定した場合(ステップS13BでNO)、空気供給部19への指示値を下げ、空気供給量を減量する(ステップS14B)。
【0048】
ここで、空気供給部19からの空気供給量の減量は、予め設定される減量データに従い実行される。そして、再び選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TL0以上であるか否かを判定する(ステップS10B)。一方、運転制御部16が、選択酸化温度Tが運転制御部16の記憶部に予め設定される下限温度TL0以上かつ上限温度TH0以下であると判定した場合(ステップS13BでYES)、このときの空気供給部19への指示値を供給量1における新指示値1と設定する(新指示値1≒供
給量1)(ステップS15B)。
【0049】
このように、本実施の形態に係る水素生成装置1は、空気供給部19、原料供給部4、水供給部3における指示値と供給量のずれを補正する点で、従来の水素生成装置1の動作と異なっている。
【0050】
ここで、原料供給部4、水供給部3、空気供給部19、燃焼ファン18を各指示値1で動作させたとき、改質温度T、変成温度T、選択酸化温度Tが指示値1から予想される改質温度、変成温度、選択酸化温度より高くなる、あるいは低くなる理由を説明する(ステップS4A、ステップS4B)。
【0051】
まず、改質温度T、変成温度T、選択酸化温度Tが指示値1から予想される改質温度、変成温度、選択酸化温度より高くなる、あるいは低くなるとき、原料供給部4から供給される原料供給量が原料指示値に対して供給されていない、水供給部3から供給される水供給量が水指示値に対して供給されていない、あるいは、空気供給部19から供給される空気供給量が空気指示値に対して供給されていないことが考えられる。
【0052】
ここで、燃焼ファン18の場合は、燃焼ファン空気供給量が燃焼ファン空気指示値に対して供給されているか否かを燃焼ファン電圧と燃焼ファン回転数との関係から確認することができる。なお、例えば、燃焼ファン18の上流側、あるいは、下流側に燃焼ファン空気流量計を設置し、燃焼ファン空気供給量が燃焼ファン空気指示値に対して供給されているかを確認してもよい。
【0053】
では、まず、空気供給部19から供給される空気供給量が空気指示値に対して供給されていない場合を説明する。
【0054】
選択酸化部17における空気と一酸化炭素との反応は発熱反応であり、発熱量は空気供給量に依存する。よって、空気供給量が空気供給量1より少量であったときは、選択酸化温度は下降し、逆に、空気供給量が空気供給量1より多量であったとき、選択酸化温度は上昇する。
【0055】
一方、空気供給部19から供給される空気供給量が空気指示値に対して供給されていなくても、空気指示値と空気供給量との差異が少量であれば、改質温度TR、変成温度Tの温度変化には殆ど影響はない。それは、選択酸化部17における空気と一酸化炭素との反応は発熱反応であり、空気供給量により選択酸化部17の温度は多少変動するが、改質温度、変成温度に比べると選択酸化温度は十分に低いからである。また、空気指示値と空気供給量との差異が多量(空気指示値>空気供給量)である場合は、選択酸化部17において空気と一酸化炭素との反応が低減され、一酸化炭素を除去できないため、燃料電池8が一酸化炭素により被毒され、発電運転の継続が不可能となるからである。また、空気指示値と空気供給量との差異が多量(空気指示値<空気供給量)である場合は、空気と一酸化炭素との反応は発熱反応であるため、選択酸化部17の温度は上昇し、一定温度を超えると、水素含有ガス中の水素がメタン化し、選択酸化部17の温度は過昇温する。したがって、この場合も水素生成装置1の運転、及び発電運転の継続が不可能となるからである。
【0056】
次に、原料供給部4から供給される原料供給量が原料指示値に対して供給されていない、あるいは、水供給部3から供給される水供給量が水指示値に対して供給されていない場合を説明する。
【0057】
まず、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料
供給量が原料供給量1、水供給量が水供給量1より少量であったとき、改質温度は上昇する。これは、改質触媒上における原料と水の改質反応は吸熱反応であり、S/Cが低いほど吸熱反応が進行せず、吸熱量が小さくなるからである。
【0058】
また、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1により多量で、水供給量が水供給量1であったとき、改質温度は上昇する。これは、原料供給量が増加することにより生成される水素含有ガスの発熱量が増加し、燃料電池8からのオフガスの発熱量が増加するからである。また、改質触媒上における原料と水の改質反応は吸熱反応であり、S/Cが低いほど吸熱反応が進行せず、吸熱量が小さくなるからである。
【0059】
逆に原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1、水供給量が水供給量1より多量であったとき、改質温度は下降する。これは、改質触媒上における原料と水の改質反応は吸熱反応であり、S/Cが高いほど吸熱反応が進行し、吸熱量が大きくなるからである。
【0060】
また、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1より少量で、水供給量が水供給量1であったとき、改質温度は下降する。これは、原料供給量が減少することにより生成される水素含有ガスの発熱量が減少し、燃料電池8からのオフガスの発熱量が減少するからである。また、改質触媒上における原料と水の改質反応は吸熱反応であり、S/Cが高いほど吸熱反応が進行し、吸熱量が大きくなるからである。
【0061】
ここで、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1より少量、かつ、水供給量が水供給量1より少量であったときは、原料供給量、水供給量のどちらかが少量のときに比べると、改質温度は大きく変化しない。これは、原料供給量が減少することにより生成される水素含有ガスの発熱量が減少し、燃料電池8からのオフガスの発熱量が減少するが、原料供給量と水供給量とがともに減少するため、改質触媒上における原料と水の吸熱反応における吸熱量が小さくなるためである。
【0062】
逆に、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1より多量、かつ、水供給量が水供給量1より多量であったときは、原料供給量、水供給量のどちらかが多量のときに比べると、改質温度は大きく変化しない。これは、原料供給量が増加することにより生成される水素含有ガスの発熱量が増加し、燃料電池8からのオフガスの発熱量が増加するが、原料供給量と水供給量とがともに増加するため、改質触媒上における原料と水の吸熱反応における吸熱量が大きくなるからである。
【0063】
一方、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1、水供給量が水供給量1より少量であったとき、変成温度は上昇する。これは、水蒸気発生部15へ供給される水供給量が減少するため、中筒25を介して行われる水蒸気発生部15と変成部13との熱交換が抑制されるためである。また、変成部13の上流に位置する改質部20の温度が上昇するからである。これは、改質触媒上における原料と水の改質反応は吸熱反応であり、S/Cが低いほど吸熱反応が進行せず、吸熱量が小さくなるからである。
【0064】
また、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1により多量で、水供給量が水供給量1であったとき、変成温度は上昇する。これは、原料供給量が増加することにより生成される水素含有ガスの発熱量が増
加し、燃料電池8からのオフガスの発熱量が増加するからである。また、変成部13の上流に位置する改質部20の温度が上昇するからである。これは、改質触媒上における原料と水の改質反応は吸熱反応であり、S/Cが低いほど吸熱反応が進行せず、吸熱量が小さくなるからである。
【0065】
逆に原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1、水供給量が水供給量1より多量であったとき、変成温度は下降する。これは、水蒸気発生部15へ供給される水供給量が増加するため、中筒25を介して行われる水蒸気発生部15と変成部13との熱交換が促進されるためである。また、変成部13の上流に位置する改質部20の温度が下降するからである。これは、改質触媒上における原料と水の改質反応は吸熱反応であり、S/Cが高いほど吸熱反応が進行し、吸熱量が大きくなるからである。
【0066】
また、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1より少量で、水供給量が水供給量1であったとき、変成温度は下降する。これは、原料供給量が減少することにより生成される水素含有ガスの発熱量が減少し、燃料電池8からのオフガスの発熱量が減少するからである。また、変成部13の上流に位置する改質部20の温度が下降するからである。これは、改質触媒上における原料と水の改質反応は吸熱反応であり、S/Cが高いほど吸熱反応が進行し、吸熱量が大きくなるからである。
【0067】
ここで、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1より少量、かつ、水供給量が水供給量1より少量であったときは、原料供給量、水供給量のどちらかが少量のときに比べると、変成温度は大きく変化しない。これは、原料供給量が減少することにより生成される水素含有ガスの発熱量が減少し、燃料電池8からのオフガスの発熱量が減少するが、水蒸気発生部15へ供給される水供給量が減少するため、中筒25を介して行われる水蒸気発生部15と変成部13との熱交換が抑制されるためである。また、同時に、変成部13の上流に位置する改質部20の温度が大きく下降しないからである。これは、原料供給量と水供給量とがともに減少するため、改質触媒上における原料と水の吸熱反応における吸熱量が小さくなるためである。
【0068】
逆に、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1より多量、かつ、水供給量が水供給量1より多量であったときは、原料供給量、水供給量のどちらかが多量のときに比べると、変成温度は大きく変化しない。これは、原料供給量が増加することにより生成される水素含有ガスの発熱量が増加し、燃料電池8からのオフガスの発熱量が増加するが、水蒸気発生部15へ供給される水供給量が増加するため、中筒25を介して行われる水蒸気発生部15と変成部13との熱交換が促進されるためである。また、同時に、変成部13の上流に位置する改質部20の温度が下降するからである。これは、原料供給量と水供給量とがともに増加するため、改質触媒上における原料と水の吸熱反応における吸熱量が大きくなるからである。
【0069】
一方、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1、水供給量が水供給量1より少量であったとき、選択酸化温度は上昇する。これは、水蒸気発生部15へ供給される水供給量が減少するため、中筒25を介して行われる水蒸気発生部15と選択酸化部17との熱交換が抑制されるためである。また、選択酸化部17の上流に位置する改質部20の温度が上昇するからである。これは、改質触媒上における原料と水の改質反応は吸熱反応であり、S/Cが低いほど吸熱反応が進行せず、吸熱量が小さくなるからである。
【0070】
また、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料
供給量が原料供給量1により多量で、水供給量が水供給量1であったとき、選択酸化温度は上昇する。これは、原料供給量が増加することにより生成される水素含有ガスの発熱量が増加し、燃料電池8からのオフガスの発熱量が増加するからである。また、選択酸化部17の上流に位置する改質部20の温度が上昇するからである。これは、改質触媒上における原料と水の改質反応は吸熱反応であり、S/Cが低いほど吸熱反応が進行せず、吸熱量が小さくなるからである。
【0071】
逆に原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1、水供給量が水供給量1より多量であったとき、選択酸化温度は下降する。これは、水蒸気発生部15へ供給される水供給量が増加するため、中筒25を介して行われる水蒸気発生部15と選択酸化部17との熱交換が促進されるためである。また、選択酸化部17の上流に位置する改質部20の温度が下降するからである。これは、改質触媒上における原料と水の改質反応は吸熱反応であり、S/Cが高いほど吸熱反応が進行し、吸熱量が大きくなるからである。
【0072】
また、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1より少量で、水供給量が水供給量1であったとき、選択酸化温度は下降する。これは、原料供給量が減少することにより生成される水素含有ガスの発熱量が減少し、燃料電池8からのオフガスの発熱量が減少するからである。また、選択酸化部17の上流に位置する改質部20の温度が下降するからである。これは、改質触媒上における原料と水の改質反応は吸熱反応であり、S/Cが高いほど吸熱反応が進行し、吸熱量が大きくなるからである。
【0073】
ここで、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1より少量、かつ、水供給量が水供給量1より少量であったときは、原料供給量、水供給量のどちらかが少量のときに比べると、選択酸化温度は大きく変化しない。これは、原料供給量が減少することにより生成される水素含有ガスの発熱量が減少し、燃料電池8からのオフガスの発熱量が減少するが、水蒸気発生部15へ供給される水供給量が減少するため、中筒25を介して行われる水蒸気発生部15と選択酸化部17との熱交換が抑制されるためである。また、同時に、選択酸化部17の上流に位置する改質部20の温度が大きく下降しないからである。これは、原料供給量と水供給量とがともに減少するため、改質触媒上における原料と水の吸熱反応における吸熱量が小さくなるためである。
【0074】
逆に、原料供給部4を原料指示値1、水供給部3を水指示値1で動作させたときの原料供給量が原料供給量1より多量、かつ、水供給量が水供給量1より多量であったときは、原料供給量、水供給量のどちらかが多量のときに比べると、選択酸化温度は大きく変化しない。これは、原料供給量が増加することにより生成される水素含有ガスの発熱量が増加し、燃料電池8からのオフガスの発熱量が増加するが、水蒸気発生部15へ供給される水供給量が増加するため、中筒25を介して行われる水蒸気発生部15と選択酸化部17との熱交換が促進されるためである。また、同時に、選択酸化部17の上流に位置する改質部20の温度が下降するからである。これは、原料供給量と水供給量とがともに増加するため、改質触媒上における原料と水の吸熱反応における吸熱量が大きくなるからである。
【0075】
なお、本実施の形態1では、選択酸化温度T、改質温度T、変成温度Tの上限値をT、THH、TH0、TRH0、TSH0、下限値をT、TLL、TL0、TRL0、TSL0としたが、例えば、空気供給部19、原料供給部4、水供給部3、燃焼ファン18を各指示値1で動作させ、空気供給部19.原料供給部4、水供給部3の少なくとも一方の指示値(供給量)をずらしたとき、選択酸化部(過昇温)、あるいは、燃料電池(被毒)、水素含有ガス中の水素量、一酸化炭素濃度、または、改質部20、変成部13
、選択酸化部17の各触媒、あるいは改質器22の構造体等に、例えば発電効率低下などの不具合を生じさせ得る空気指示値、原料指示値、水指示値を予め実験、シミュレーション等で算出しておき、空気供給部19、原料供給部4、水供給部3をその空気指示値、原料指示値、水指示値、燃焼ファン18を指示値1で動作させ、安定した時の選択酸化温度、改質温度、変成温度を上限値、下限値と設定してもよい。
【0076】
次に、原料供給部4、水供給部3、空気供給部19、燃焼ファン18を各指示値1で動作させたとき、選択酸化温度Tが指示値1から予想される選択酸化温度より高くなる(T≧THH)、あるいは低くなる(T≦TLL)とき、異常と判断し、アラームを出力する理由を説明する(ステップS5A、ステップS5B)。
【0077】
まず、原料供給部4、水供給部3、空気供給部19、燃焼ファン18を各指示値1で動作させたとき、選択酸化温度Tが指示値1から予想される選択酸化温度より高くなる(T≧THH)場合であるが、前述のとおり、空気指示値と空気供給量との差異が多量(空気指示値<空気供給量)であることが考えられ、場合によっては、選択酸化部17の温度は過昇温し、水素生成装置1の運転、及び発電運転の継続が不可能となるからである。
【0078】
一方、原料供給部4、水供給部3、空気供給部19、燃焼ファン18を各指示値1で動作させたとき、変成温度Tが指示値1から予想される変成温度より低くなる(T≦TLL)場合であるが、前述のとおり、空気指示値と空気供給量との差異が多量(空気指示値>空気供給量)であることが考えられ、場合によっては、一酸化炭素を除去できず、燃料電池8が一酸化炭素により被毒され、発電運転の継続が不可能となるからである。
【0079】
なお、アラームを出力した場合、燃料電池8、および水素生成装置1の運転を停止すればよい。また、サービスメンテナンス会社と顧客宅の燃料電池8とをオンラインで接続し、アラーム出力時にサービスメンテナンス会社に通報するようにしてもよい。また、選択酸化温度の上限値THH、下限値TLLを何通りか設定することで、軽度の異常であれば、サービスマンが故障部品を入手し顧客宅に出向くまでの期間、継続運転をしてもよい。もちろん、異常を監視した上で継続運転を行うため、安全性は確保できる。なお、ここではステップS5A、ステップ5Bについて説明したが、ステップS11A、ステップ11Bも同様の理由である。
【0080】
次に、原料供給部4、水供給部3、空気供給部19、燃焼ファン18を各指示値1で動作させたとき、選択酸化温度Tが指示値1から予想される選択酸化温度より高くなるとき、選択酸化指示値を下げ、選択酸化温度Tが指示値1から予想される選択酸化温度より低くなるとき、選択酸化指示値を上げる理由を説明する(ステップS9A、ステップS9B)。
【0081】
まず、選択酸化温度Tが指示値1から予想される選択酸化温度より高くなる場合、前述のとおり空気供給量が空気供給量1より多量であることが考えられる。よって、空気指示値を下げることで、空気供給量を減量させる。このとき、同時に選択酸化温度は下降する。逆に、選択酸化温度Tが指示値1から予想される選択酸化温度より低くなる場合、前述のとおり空気供給量が空気供給量1より少量であることが考えられる。よって、空気指示値を上げることで、空気供給量を増量させる。このとき、同時に選択酸化温度は上昇する。
【0082】
そして、選択酸化温度が、予め設定した選択酸化部の過昇温、あるいは、一酸化炭素による燃料電池の被毒、さらには、燃料電池システムの故障を未然に防ぐことができる選択酸化温度域であるTL0≦T≦TH0(ステップS13A、ステップS13B)に到達したときの空気指示値を、空気供給量1に対する新空気指示値1として新たに設定する(
ステップS15A、ステップS15B)ことで、空気指示値に対する空気供給量のずれを正常値と同等、あるいはそれに近い値に補正することができる。
【0083】
その結果、一定量の水素及び一酸化炭素濃度の低い水素を生成することができる。また、選択酸化部の過昇温、あるいは、一酸化炭素による燃料電池の被毒、さらには、燃料電池システムの故障を未然に防ぐことができる。
【0084】
なお、実施の形態1では改質温度検出部21、あるいは、変成温度検出部24を設けているが、将来センサーレス化が進んだ場合においても、改質温度検出部21で検出される改質温度、あるいは、変成温度検出部24で検出される変成温度のいずれかにより、原料供給部4、水供給部3からの原料供給量、水供給量が適正であるかを判断し、原料指示値に対応する原料供給量、水指示値に対応する水供給量を補正することができる、または、原料供給部4、水供給部3からの原料供給量、水供給量が異常であるかを判断し、アラームを外部出力することができるため、一定量の水素及び一酸化炭素濃度の低い水素を生成することができ、さらには、水素生成装置の故障を未然に防ぐことができることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、空気供給部から水素生成装置に供給される空気供給量が適正であるかを判断し、さらに空気指示値に対応する空気供給量を補正することができ、一定量の水素及び一酸化炭素濃度の低い水素を生成することができる。また、空気供給部から水素生成装置に供給される空気供給量が異常であるかを判断し、アラームを外部出力することができ、選択酸化部の過昇温、あるいは、一酸化炭素による燃料電池の被毒、さらには、燃料電池システムの故障を未然に防ぐことができる。さらには、流量計などの空気流量計測手段が不要となり、コストダウンを図ることができる燃料電池システムに有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 水素生成装置
2 燃焼部
3 水供給部
4 原料供給部
5 脱硫部
6 ガスインフラライン
7 脱硫接続部
8 燃料電池
9A、9B 切換弁
10 原料供給経路
11 内筒
12 水素ガス供給経路
13 変成部
14 オフガス供給経路
15 水蒸気発生部
16 運転制御部
17 選択酸化部
18 燃焼ファン
19 空気供給部
20 改質部
21 改質温度検出部
22 改質器
23 燃料電池バイパス経路
24 変成温度検出部
25 中筒
26 選択酸化温度検出部
100 燃料電池システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料と水が供給されて改質反応により水素含有ガスを生成させる改質部と、
前記改質部の温度を検出する改質温度検出部と、
前記改質部に原料供給量指示値に応じた原料を供給する原料供給部と、
前記改質部に水供給量指示値に応じた水を供給する水供給部と、
前記改質部により生成された前記水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減させる変成部と、
前記変成部の温度を検出する変成温度検出部と、
前記変成部により低減された前記水素含有ガス中の一酸化炭素濃度をさらに低減させる選択酸化部と、
前記選択酸化部に空気供給量指示値に応じた空気を供給する空気供給部と、
前記選択酸化部の温度を検出する選択酸化温度検出部と、
前記選択酸化部で一酸化炭素濃度が低減された前記水素含有ガスと酸素含有ガスが供給されて発電し、電力供給先の電力負荷の変化に追従して発電する燃料電池と、
前記選択酸化部で一酸化炭素濃度が低減された前記水素含有ガスのうち前記燃料電池で消費されなかった残りの前記水素含有ガスを燃焼させて前記改質部の改質反応に必要な熱を供給する燃焼部と、
前記選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度に基づいて前記空気供給部へ前記空気供給量指示値を出力する運転制御部とを備え、
前記運転制御部は、前記燃料電池が有する任意の発電量を発電した後の予め設定される期間、前記燃料電池を電力負荷の変化に追従させず動作させ、前記空気供給部を予め設定される指示値で動作させ、前記指示値から予想される予想選択酸化温度と前記選択酸化温度検出部で検出される検出選択酸化温度との温度差が所定温度差以上であれば、予め設定される指示値に対応する空気が前記空気供給部から指示通りに供給されていないと判断する燃料電池システム。
【請求項2】
前記運転制御部は、
予想選択酸化温度と検出選択酸化温度との温度差が所定温度差以上のときであって、
予想選択酸化温度より検出選択酸化温度の方が高い場合、予め設定される指示値に対応する空気が前記空気供給部から多く供給されていると判断し、
予想選択酸化温度より検出選択酸化温度の方が低い場合、予め設定される指示値に対応する空気が前記空気供給部から少なく供給されていると判断する
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記運転制御部は、
予想選択酸化温度と検出選択酸化温度との温度差が所定温度差以上のときであって、
予想選択酸化温度より検出選択酸化温度の方が高い場合、前記空気供給部への指示値を減量するよう制御し、
予想選択酸化温度より検出選択酸化温度の方が低い場合、前記空気供給部への指示値を増量するよう制御する
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記運転制御部は、
予想選択酸化温度と検出選択酸化温度との温度差が所定温度差以上のとき、
前記空気供給部からの空気供給量が異常であると判断し警報を出力する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−119244(P2012−119244A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269859(P2010−269859)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】