説明

燃料電池システム

【課題】特別な機器を設けることなく、水素含有燃料の性状の変化に応じて適切な運転を行うことのできる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム1は、発電状態判定値と推定値とを比較し、推定値に対する発電状態判定値の増減に基づいて、水素含有燃料の供給量を調整している。燃料電池システム1運転中の所定のタイミングにおける電流及び発電状態判定値が取得された場合、制御部11は当該電流に基づいて推定値を特定し、その推定値と発電状態判定値とを比較する。発電状態判定値が、ベースデータとなる推定値から変化していなければ、性状変化はないと判断できる。一方、発電状態判定値が、推定値から増減していた場合、性状変化があると判断できる。このとき、制御部11は、水素含有燃料の供給量を調整することによって、燃料電池システム1の運転状態を性状変化前の状態に近づける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムで用いられる水素含有燃料は、性状(組成や熱量など)が変化する場合がある。従来より、水素含有燃料の性状変化に対応するための燃料電池システムとして、例えば、特許文献1及び特許文献2に示す燃料電池システムが知られている。特許文献1に示す燃料電池システムは、水素含有燃料の性状及び流量を計測する燃料性状計測手段と、燃料電池の状態を判定する燃料電池判定手段と、燃料電池の出力を制御する出力制御手段と、最適制御パラメータを演算して出力する燃料電池運転制御手段と、を備えている。この燃料電池システムは、水素含有燃料の性状の変化に応じて、水蒸気供給量、燃料供給量、酸化剤供給量、燃料利用率、酸化剤利用率、電流密度、出力電圧、出力電流の何れかを制御して、熱自立状態を維持している。
【0003】
特許文献2に示す燃料電池システムでは、複数の燃料電池毎にエリアサーバーが設けられている。センターサーバーは、設定した燃料電池システムの制御パラメータをエリアサーバーに送信する。各燃料電池システムは、エリアサーバーに送信された制御パラメータに基づいて、運転を行う。制御パラメータは、水素含有燃料の性状に基づいて、燃料や水蒸気や空気などの流量を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−49056号公報
【特許文献2】特開2003−282116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る燃料電池システムは、水素含有燃料の性状を計測するためのセンサーが必要となるため、設置やメンテナンスのためのコストが増加するという問題がある。特許文献2に係る燃料電池システムでは、燃料電池システムのメーカーや機種毎に管理すべき制御パラメータが増加する。従って、データ管理のためにコストが大幅に増加するという問題がある。また、通信網にトラブルが発生した場合、燃料電池システムの運転に支障が生じる可能性がある。更に、エリアサーバーが管理する燃料電池システム群の中において、燃料電池システムごとに水素含有燃料の性状に差が生じた場合も、運転に支障が生じる可能性がある。従って、特別な計測機器や通信網を用いることなく、水素含有燃料の性状の変化に対応することのできる燃料電池システムが求められていた。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、特別な機器を設けることなく、水素含有燃料の性状の変化に応じて適切な運転を行うことのできる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池システムは、水素含有燃料を用いて水素含有ガスを発生させる水素発生部と、水素含有ガスを用いて発電を行うセルスタックと、を備える燃料電池システムであって、セルスタックでの発電における電流を取得する電流取得部と、セルスタックでの発電における発電パラメータの測定結果に基づく発電状態判定値を取得する発電状態判定値取得部と、電流に対して予め定められた発電パラメータの推定値を取得する推定値取得部と、発電状態判定値と推定値とを比較する比較部と、推定値に対する発電状態判定値の増減に基づいて、水素含有燃料の供給量を調整する供給量調整部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る燃料電池システムは、発電状態判定値と推定値とを比較し、推定値に対する発電状態判定値の増減に基づいて、水素含有燃料の供給量を調整している。発電パラメータは、燃料電池システム内において、セルスタックでの発電状態によって影響を受けるものである。従って、他の条件が一定であれば、発電パラメータの測定結果に基づく発電状態判定値の変化は、発電に用いられる水素含有燃料の性状の変化を示す。発電パラメータの推定値は、電流に対して予め定められる値であり、性状変化を判断するためのベースデータとして用いることができる。燃料電池システム運転中の所定のタイミングにおける電流及び発電状態判定値が取得された場合、推定値取得部は当該電流に基づいて推定値を特定し、比較部は、その推定値と発電状態判定値とを比較することができる。発電状態判定値が、ベースデータとなる推定値から変化していなければ、性状変化はないと判断できる。一方、発電状態判定値が、推定値から増減していた場合、性状変化があると判断できる。このとき、供給量調整部が、水素含有燃料の供給量を調整することによって、燃料電池システムの運転状態を性状変化前の状態に近づけることができる。発電パラメータとして、水素含有燃料の性状変化を想定していないような通常の燃料電池システム内で設けられているセンサーや機器で測定可能なものを用いることで、燃料電池システムは、特別な機器を設けることなく、性状変化に対応することができる。以上によって、燃料電池システムは、特別な機器を設けることなく、水素含有燃料の性状の変化に応じて適切な運転を行うことができる。
【0009】
また、燃料電池システムは、発電状態判定値の変化量が所定の閾値より大きい状態が、所定時間継続したか否かを判定する第一判定部と、第一判定部によって、変化量が閾値より大きい状態が所定時間継続したと判定されたとき、システムを停止する第一システム停止部と、を更に備えることが好ましい。水素含有燃料の性状変化による影響で想定される以上に、発電状態判定値が大きく変化し、その状態が所定時間継続した場合、水素含有燃料の供給異常と判断できる。このとき、第一システム停止部がシステムを停止することができる。
【0010】
また、燃料電池システムは、発電状態判定値の推定値に対する変化量が所定の閾値より大きいか否かを判定する第二判定部と、第二判定部によって、変化量が閾値より大きいと判定されたとき、システムを停止する第二システム停止部と、を更に備えることが好ましい。水素含有燃料の性状変化による影響で想定される以上に、発電状態判定値が推定値から大きく変化した場合、直ちに水素含有燃料の供給異常と判断できる。このとき、第二システム停止部がシステムを停止することができる。
【0011】
例えば、発電パラメータは、セルスタックでのスタック電圧である。所定の電流に対するスタック電圧は、水素含有燃料の組成に応じて変化する。また、セルスタックは、水素含有燃料による水素含有ガスを直接用いて発電するものであるため、スタック電圧は組成の変化に応じて速やかに変化する。従って、発電パラメータとしてスタック電圧を用いることによって、燃料電池システムは、水素含有燃料の性状変化に対して、応答性の高い制御を行うことができる。
【0012】
例えば、発電パラメータは、セルスタックの発電に基づく交流電力である。交流電力は、スタック電圧と同じく、水素含有燃料の性状変化に対して高い応答性を示す。更に、燃料電池システムは、水素含有燃料が熱量不足であった場合に、ヒーター等によって熱量不足による影響を抑制する場合がある。このような場合、電圧への影響が少なくても、熱量不足における補機損失は増加する。従って、電圧への影響が少ない場合であっても、交流電力を発電パラメータとすることで、水素含有燃料の性状変化に対応することができる。従って、発電パラメータとして交流電力を用いることによって、燃料電池システムは、水素含有燃料の性状変化に対して、応答性の高い制御を行うことができる。
【0013】
例えば、発電パラメータは、セルスタックからのオフガスを燃焼させたオフガス燃焼温度である。オフガス燃焼温度は、水素含有燃料が有する熱量に影響を受けるため、性状変化に対して高い応答性を有する。従って、発電パラメータとしてオフガス燃焼温度を用いることによって、燃料電池システムは、水素含有燃料の性状変化に対して、応答性の高い制御を行うことができる。
【0014】
例えば、発電パラメータは、セルスタックのスタック温度である。スタック温度は、水素含有燃料の熱量の細かい変動に対する追従性が低い。すなわち、スタック温度は、水素含有燃料の熱量の変動が平均化されたパラメータとみなすことができる。従って、発電パラメータとしてスタック温度を用いることによって、燃料電池システムは、測定結果の平均処理を行うことなく、水素含有燃料の性状変化に対応することができる。
【0015】
例えば、発電パラメータは、システム内の排熱の回収量である排熱回収熱量である。排熱回収熱量は、水素含有燃料が有する熱量に影響を受けるので、性状変化に応じて変化する。例えば、気温が高い環境下では、熱回収前の熱媒体及び熱回収後の熱媒体は、いずれも温度が上がる。また、気温が低い環境下では、熱回収前の熱媒体及び熱回収後の熱媒体は、いずれも温度が下がる。あるいは、熱回収後の熱媒体の温度がシステムによって一定となるように制御されている場合、気温が高い環境下では、熱回収前の熱媒体は温度が上がり、熱媒体流量は増加する。また、気温が低い環境下では、熱回収前の熱媒体は温度が下がり、熱媒体流量は減少する。従って、熱回収前の熱媒体と熱回収後の熱媒体の熱量の差に基づく排熱回収熱量は、気温による影響を受け難い。従って、発電パラメータとして排熱回収熱量を用いることによって、燃料電池システムは、気温の影響を受けることなく、水素含有燃料の性状変化に対応することができる。
【0016】
例えば、発電パラメータは、システム内の排熱を回収する排熱回収器の入口温度である。排熱回収器は、水素含有燃料が有する熱量に影響を受けるので、性状変化に応じて変化する。ここで、燃料電池システムは、オフガス燃焼部での失火などによるオフガスの不完全燃焼の対策として、燃焼触媒を備える場合がある。この場合、オフガス燃焼部で失火となっても、水素含有燃料の熱量は、燃焼触媒によって排ガスの熱量に反映される。従って、発電パラメータとして排熱回収器の入口温度を用いることによって、燃料電池システムは、オフガス燃焼部で失火となった場合でも、水素含有燃料の性状変化に対応することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特別な機器を設けることなく、水素含有燃料の性状の変化に応じて適切な運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック構成図である。
【図2】図2は、制御部の構成を示すブロック構成図である。
【図3】図3は、排熱回収器の周辺構成を示す概略図である。
【図4】図4は、発電パラメータに対する推定値を示すマップの一例である。
【図5】図5は、第一実施形態に係る燃料電池システムの制御処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、第二実施形態に係る燃料電池システムの制御処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は、第三実施形態に係る燃料電池システムの制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
[第一実施形態]
図1に示されるように、燃料電池システム1は、脱硫部2と、水気化部3と、水素発生部4と、セルスタック5と、オフガス燃焼部6と、水素含有燃料供給部7と、水供給部8と、酸化剤供給部9と、パワーコンディショナー10と、制御部11と、を備えている。燃料電池システム1は、水素含有燃料及び酸化剤を用いて、セルスタック5にて発電を行う。燃料電池システム1におけるセルスタック5の種類は特に限定されず、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)、及び、その他の種類を採用することができる。なお、セルスタック5の種類、水素含有燃料の種類、及び改質方式等に応じて、図1に示す構成要素を適宜省略してもよい。
【0021】
水素含有燃料として、例えば、炭化水素系燃料が用いられる。炭化水素系燃料として、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。炭化水素系燃料として、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料が挙げられ、これらの炭化水素系燃料は従来の石油・石炭等の化石燃料由来のもの、合成ガス等の合成系燃料由来のもの、バイオマス由来のものを適宜用いることができる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料として、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットが挙げられる。
【0022】
酸化剤として、例えば、空気、純酸素ガス(通常の除去手法で除去が困難な不純物を含んでもよい)、酸素富化空気が用いられる。
【0023】
脱硫部2は、水素発生部4に供給される水素含有燃料の脱硫を行う。脱硫部2は、水素含有燃料に含有される硫黄化合物を除去するための脱硫触媒を有している。脱硫部2の脱硫方式として、例えば、硫黄化合物を吸着して除去する吸着脱硫方式や、硫黄化合物を水素と反応させて除去する水素化脱硫方式が採用される。脱硫部2は、脱硫した水素含有燃料を水素発生部4へ供給する。
【0024】
水気化部3は、水を加熱し気化させることによって、水素発生部4に供給される水蒸気を生成する。水気化部3における水の加熱は、例えば、水素発生部4の熱、オフガス燃焼部6の熱、あるいは排ガスの熱を回収する等、燃料電池システム1内で発生した熱を用いてもよい。また、別途ヒータ、バーナ等の他熱源を用いて水を加熱してもよい。なお、図1では、一例としてオフガス燃焼部6から水素発生部4へ供給される熱のみ記載されているが、これに限定されない。水気化部3は、生成した水蒸気を水素発生部4へ供給する。
【0025】
水素発生部4は、脱硫部2からの水素含有燃料を用いて水素リッチガスを発生させる。水素発生部4は、水素含有燃料を改質触媒によって改質する改質器を有している。水素発生部4での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。なお、水素発生部4は、セルスタック5に要求される水素リッチガスの性状によって、改質触媒により改質する改質器の他に性状を調整するための構成を有する場合もある。例えば、セルスタック5のタイプが固体高分子形燃料電池(PEFC)やリン酸形燃料電池(PAFC)であった場合、水素発生部4は、水素リッチガス中の一酸化炭素を除去するための構成(例えば、シフト反応部、選択酸化反応部)を有する。水素発生部4は、水素リッチガスをセルスタック5のアノード12へ供給する。
【0026】
セルスタック5は、水素発生部4からの水素リッチガス及び酸化剤供給部9からの酸化剤を用いて発電を行う。セルスタック5は、水素リッチガスが供給されるアノード12と、酸化剤が供給されるカソード13と、アノード12とカソード13との間に配置される電解質14と、を備えている。セルスタック5は、パワーコンディショナー10を介して、電力を外部へ供給する。セルスタック5は、発電に用いられなかった水素リッチガス及び酸化剤をオフガスとして、オフガス燃焼部6へ供給する。なお、水素発生部4が備えている燃焼部(例えば、改質器を加熱する燃焼器など)をオフガス燃焼部6と共用してもよい。
【0027】
オフガス燃焼部6は、セルスタック5から供給されるオフガスを燃焼させる。オフガス燃焼部6によって発生する熱は、水素発生部4へ供給され、水素発生部4での水素リッチガスの発生に用いられる。
【0028】
水素含有燃料供給部7は、脱硫部2へ水素含有燃料を供給する。水供給部8は、水気化部3へ水を供給する。酸化剤供給部9は、セルスタック5のカソード13へ酸化剤を供給する。水素含有燃料供給部7、水供給部8、及び酸化剤供給部9は、例えばポンプによって構成されており、制御部11からの制御信号に基づいて駆動する。
【0029】
パワーコンディショナー10は、セルスタック5からの電力を、外部での電力使用状態に合わせて調整する。パワーコンディショナー10は、例えば、電圧を変換する処理や、直流電力を交流電力へ変換する処理を行う。
【0030】
制御部11は、燃料電池システム1全体の制御処理を行う。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイスを含んで構成されたデバイスによって構成される。制御部11は、水素含有燃料供給部7、水供給部8、酸化剤供給部9、パワーコンディショナー10、その他、図示されないセンサや補機と電気的に接続されている。制御部11は、燃料電池システム1内で発生する各種信号を取得すると共に、燃料電池システム1内の各機器へ制御信号を出力する。
【0031】
本実施形態に係る燃料電池システム1は、水素含有燃料の性状変化に応じ、適切な運転を行うことができる。制御部11は、水素含有燃料の性状変化に応じ、適切な制御処理を行うことができる。図2に示すように、制御部11は、電流取得部101と、発電状態判定値取得部102と、推定値取得部103と、比較判定部(比較部、第一判定部、第二判定部)104と、システム停止部(第一システム停止部、第二システム停止部)105と、調整部(供給量調整部)106と、を備えている。
【0032】
制御部11の電流取得部101は、セルスタック5での発電における電流を取得する機能を有する。制御部11の電流取得部101は、セルスタック5での発電における掃引電流を測定することによって、電流を取得する。制御部11の電流取得部101は、パワーコンディショナー10の測定部16からの検出結果に基づいて、掃引電流を測定する。制御部11の発電状態判定値取得部102は、セルスタック5での発電における発電パラメータの測定結果に基づく発電状態判定値を取得する機能を有する。制御部11の発電状態判定値取得部102は、燃料電池システム1内の各計測点に配置されたセンサーや計測器からの検出信号を受信する。制御部11の発電状態判定値取得部102は、受信した検出信号に基づいて、発電状態判定値を取得する。
【0033】
発電パラメータの値は、セルスタック5での発電状態によって変化する。セルスタック5での発電状態は、水素含有燃料の組成や熱量(すなわち性状)に影響を受けるものである。従って、他の条件が一定である場合、発電パラメータの値の変化は、水素含有燃料の性状の変化を示す。水素含有燃料の性状変化を前提としていない通常の燃料電池システムに設けられている範囲のセンサーや機器によって測定可能なものを、発電パラメータとして採用することが好ましい。
【0034】
発電状態判定値は、発電パラメータの測定結果に基づいて得られる値である。発電状態判定値は、発電パラメータに対して予め定められた推定値と比較することにより、セルスタック5の発電状態を判定することができる値である。発電状態判定値として、発電パラメータの測定値そのものを用いてもよく、測定値を平均処理した値を用いてもよく、比較し易いように測定値を演算処理した値を用いてもよい。
【0035】
具体的に、発電パラメータとして、セルスタック5でのスタック電圧を用いることができる。制御部11は、パワーコンディショナー10の測定部16からの検出結果に基づいて、スタック電圧を取得することができる。所定の掃引電流に対するスタック電圧は、水素含有燃料の組成に応じて変化する。また、セルスタック5は、水素含有燃料による水素リッチガスを直接用いて発電するものであるため、スタック電圧は組成の変化に応じて速やかに変化する。従って、発電パラメータとしてスタック電圧を用いることによって、制御部11は、水素含有燃料の性状変化に対して、応答性の高い制御を行うことができる。
【0036】
また、発電パラメータとして、セルスタック5の発電に基づく交流電力を用いることができる。制御部11は、パワーコンディショナー10の測定部16からの検出結果に基づいて、交流電力を取得することができる。交流電力は、スタック電圧と同じく、水素含有燃料の性状変化に対して高い応答性を示す。更に、燃料電池システム1は、水素含有燃料が熱量不足であった場合に、ヒーター等によって熱量不足による影響を抑制する場合がある。このような場合、電圧への影響が少なくても、熱量不足における補機損失は増加する。従って、電圧への影響が少ない場合であっても、交流電力を発電パラメータとすることで、水素含有燃料の性状変化に対応することができる。従って、発電パラメータとして交流電力を用いることによって、制御部11は、水素含有燃料の性状変化に対して、応答性の高い制御を行うことができる。
【0037】
また、発電パラメータとして、オフガス燃焼温度を用いることができる。制御部11は、オフガス燃焼部6の燃焼温度を測定する温度センサー17からの検出結果に基づいて、オフガス燃焼温度を取得することができる。オフガス燃焼温度は、水素含有燃料が有する熱量に影響を受けるため、性状変化に対して高い応答性を有する。従って、発電パラメータとしてオフガス燃焼温度を用いることによって、制御部11は、水素含有燃料の性状変化に対して、応答性の高い制御を行うことができる。
【0038】
また、発電パラメータとして、セルスタック5のスタック温度を用いることができる。制御部11は、セルスタック5のスタック温度を測定する温度センサー18からの検出結果に基づいて、スタック温度を取得することができる。スタック温度は、水素含有燃料の熱量の細かい変動に対する追従性が低い。すなわち、スタック温度は、水素含有燃料の熱量の変動が平均化されたパラメータとみなすことができる。従って、発電パラメータとしてスタック温度を用いることによって、制御部11は、測定結果の平均処理を行うことなく、水素含有燃料の性状変化に対応することができる。
【0039】
また、発電パラメータとして、システム内の排熱の回収量である排熱回収熱量を用いることができる。図3に示すように、制御部11は、排熱回収熱量を測定する測定部19からの検出結果に基づいて、排熱回収量を取得することができる。測定部19は、排熱回収器20に対する熱媒体の流量及び温度に基づいて、排熱回収量を測定することができる。排熱回収器20は、流入させた熱媒体W1によって排ガスの熱を回収し、高温となった熱媒体W2を熱利用部(不図示)へ供給する。排熱回収熱量は、水素含有燃料が有する熱量に影響を受けるので、性状変化に応じて変化する。更に、例えば、気温が高い環境下では、熱回収前の熱媒体W1及び熱回収後の熱媒体W2は、いずれも温度が上がる。また、気温が低い環境下では、熱回収前の熱媒体W1及び熱回収後の熱媒体W2は、いずれも温度が下がる。また、熱回収後の熱媒体W2の温度がシステムにより制御されている場合は、温度の変わりに熱媒体の流量Fが変化する。この場合、例えば、気温が高い環境下では、熱回収前の熱媒体W1の温度が上がり、熱媒体流量Fは増加する。また、気温が低い環境下では、熱回収前の熱媒体W1の温度が下がり、熱媒体流量Fは減少する。従って、熱媒体W1と熱媒体W2の熱量の差に基づく排熱回収熱量は、気温による影響を受け難い。従って、発電パラメータとして排熱回収熱量を用いることによって、制御部11は、気温の影響を受けることなく、水素含有燃料の性状変化に対応することができる。
【0040】
また、発電パラメータとして、システム内の排熱を回収する排熱回収器20の入口温度を用いることができる。図3に示すように、制御部11は、排熱回収器20の入口温度を測定する温度センサー21からの検出結果に基づいて、入口温度を取得することができる。排熱回収器20は、水素含有燃料が有する熱量に影響を受けるので、性状変化に応じて変化する。ここで、燃料電池システム1は、オフガス燃焼部6での失火などによるオフガスの不完全燃焼の対策として、燃焼触媒を備える場合がある。この場合、オフガス燃焼部6で失火となっても、水素含有燃料の熱量は、燃焼触媒によって排ガスの熱量に反映される。従って、発電パラメータとして排熱回収器20の入口温度を用いることによって、制御部11は、オフガス燃焼部6で失火となった場合でも、水素含有燃料の性状変化に対応することができる。
【0041】
制御部11の推定値取得部103は、電流に対して予め定められた発電パラメータの推定値を取得する機能を有する。推定値は、ベースとなる所定の条件下において、電流に対して予め定められる値である。推定値は、例えば、燃料電池システム1の運転において、燃料の性状、燃料利用率、燃料供給量、その他のパラメータについて理想的な条件とした場合の値に設定することが好ましい。推定値は、制御部11内での演算処理により推定される値であり、例えば、マップやテーブルとして制御部11に予め記憶され、所定のタイミングで読み出される値でもよく、または、所定の計算を行うことで算出される値であってもよい。発電パラメータとしてスタック電圧を用いた場合、推定値は、例えば図4のXに示すようなグラフを描く。図4に示す推定値Xは、燃料の性状、燃料利用率、燃料供給量、その他のパラメータについて燃料電池システム1を最適に運転できる条件とした場合の、掃引電流とスタック電圧の関係を示す。制御部11の推定値取得部103は、燃料電池システム1の運転における各条件(例えば、燃料、水、酸化剤の供給量等)に応じて、推定値のマップやテーブルを複数記憶しておき、制御処理時における運転条件に基づいて適切なマップやテーブルを読み出してもよい。発電パラメータとしてスタック電圧以外のものを用いる場合、各発電パラメータについて、電流に対して予め定められる推定値を用いる。
【0042】
制御部11の比較判定部104は、発電状態判定値と推定値とを比較する機能を有する。制御部11の比較判定部104は、燃料電池システム1の運転に関する条件及び取得した電流に応じた推定値を読み出し、取得した発電状態判定値と比較する。発電状態判定値が推定値から増加した場合、制御部11の比較判定部104は、性状変化により、水素含有燃料の単位量あたりの熱量や発電量が増加したと判断する。また、発電状態判定値が推定値から減少した場合、制御部11の比較判定部104は、性状変化により、水素含有燃料の単位量あたりの熱量や発電量が減少したと判断する。制御部11のシステム停止部105は、所定のタイミングで燃料電池システム1のシステム停止を行う機能を有している。
【0043】
制御部11の調整部106は、推定値に対する発電状態判定値の増減に基づいて、水素含有燃料の供給量を調整する機能を有する。制御部11の調整部106は、発電状態判定値が推定値から増加した場合、水素含有燃料の供給量を減少させる。制御部11の調整部106は、供給量を減少させることによって、発電状態判定値が推定値に近づくように制御する。制御部11の調整部106は、供給量が減少するように設定された制御信号を、水素含有燃料供給部7に出力する。制御部11の調整部106は、発電状態判定値が推定値から減少した場合、水素含有燃料の供給量を増加させる。制御部11の調整部106は、供給量を増加させることによって、発電状態判定値が推定値に近づくように制御する。制御部11の調整部106は、供給量が増加するように設定された制御信号を、水素含有燃料供給部7に出力する。制御部11の調整部106は、供給量が上乗せ、または差し引かれた状態の制御信号を用いて、その後のシステム制御を行う。制御部11の調整部106は、推定値に対して上限値や下限値などの閾値を設定し、閾値を超えた場合に、水素含有燃料の供給量を調整してもよい。あるいは、制御部11の調整部106は、発電状態判定値が推定値から変化するたびに供給量を調整してもよい。
【0044】
次に、図5を参照して、本実施形態に係る燃料電池システム1の制御処理の一例について説明する。図5に示す処理は、水素含有燃料の性状変化を監視すると共に、性状変化が起こった場合に、当該性状変化に対応した制御を実行する処理である。図5に示す例では、発電パラメータとしてスタック電圧が用いられ、発電状態判定値として平均処理されたスタック電圧の測定値が用いられる。図5に示す処理は、制御部11において所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0045】
図5に示すように、制御部11の電流取得部101は、掃引電流Iを測定する(ステップS10)と共に、発電状態判定値取得部102は、スタック電圧Eを測定する(ステップS20)。制御部11の電流取得部101及び発電状態判定値取得部102は、S10及びS20で測定した掃引電流I及びスタック電圧Eの平均処理を行う(ステップS30)。次に、制御部11の発電状態判定値取得部102は、発電状態判定値X1を取得する(ステップS40)。制御部11の発電状態判定値取得部102は、S30において平均処理されたスタック電圧Eの測定値を発電状態判定値X1として取得する。
【0046】
次に、制御部11の推定値取得部103は、掃引電流Iに対する発電パラメータの推定値Xを取得する(ステップS50)。制御部11の推定値取得部103は、S30において平均処理された掃引電流Iの測定値に対する、スタック電圧の推定値Xを取得する。図4の例において、制御部11の推定値取得部103は、掃引電流Iに対して、点Pにおけるスタック電圧を推定値Xと特定する。
【0047】
次に、制御部11の比較判定部104は、発電状態判定値X1と推定値Xとを比較すると共に、比較結果に基づいて水素含有燃料の供給量を調整する。具体的に、制御部11の比較判定部104は、発電状態判定値X1が、推定値Xに対して設定された上限閾値Xmaxより大きいか否かを判定する(ステップS60)。図4の例において、発電状態判定値X1が点P,Pにおけるスタック電圧であった場合、制御部11の比較判定部104は、発電状態判定値X1は上限閾値Xmax以下であると判定する。一方、発電状態判定値X1が点Pにおけるスタック電圧であった場合、制御部11の比較判定部104は、発電状態判定値X1は上限閾値Xmaxより大きいと判定する。制御部11の比較判定部104は、S60において、発電状態判定値X1が上限閾値Xmaxより大きいと判定した場合、水素含有燃料の供給量を減少させる処理を行う(ステップS70)。S70の後、制御部11は、システム停止判定処理へ移行する(ステップS100)。
【0048】
制御部11の比較判定部104は、S60において、発電状態判定値X1が上限閾値Xmax以下であると判定した場合、発電状態判定値X1が、推定値Xに対して設定された下限閾値Xminより小さいか否かを判定する(ステップS80)。図4の例において、発電状態判定値X1が点P,Pにおけるスタック電圧であった場合、制御部11の比較判定部104は、発電状態判定値X1は下限閾値Xmin以上であると判定する。一方、発電状態判定値X1が点Pにおけるスタック電圧であった場合、制御部11の比較判定部104は、発電状態判定値X1は下限閾値Xminより小さいと判定する。制御部11の調整部106は、S80において、発電状態判定値X1が下限閾値Xminより小さいと判定した場合、水素含有燃料の供給量を増加させる処理を行う(ステップS90)。S90の後、制御部11は、システム停止判定処理へ移行する(ステップS100)。制御部11は、S80において、発電状態判定値X1が下限閾値Xmin以上であると判定した場合、水素含有燃料の供給量を調整することなく、システム停止判定処理へ移行する(ステップS100)。図4の例において、発電状態判定値X1が点Pにおけるスタック電圧であった場合、制御部11は、水素含有燃料の供給量を調整することなく、S100へ移行する。
【0049】
制御部11の比較判定部104は、システム停止に関する指令の有無を判定する(ステップS100)。具体的に、制御部11の比較判定部104は、外部からのシステム停止指令や、インターロックによるシステム停止指令の有無を判定する。制御部11のシステム停止部105は、S100において、システム停止指令があると判定された場合はシステム停止処理を行い(ステップS110)、図5に示す処理を終了する。制御部11の比較判定部104は、S100において、システム停止指令が無いと判定した場合は、図5に示す処理を終了し、所定のタイミングで再びS10,S20から処理を開始する。
【0050】
図5に示す制御処理は、燃料電池システム1の運転中に常時実行してもよく、所定の期間を設けて定期的に実行してもよい。常時実行する場合、制御部11は、推定値のマップやテーブルを燃料電池システム1の運転における条件に合わせて複数記憶しておくことで、運転中に条件を変更して制御している場合も性状変化を監視することができる。定期的に実行する場合、制御処理時における運転の条件を毎回一定となるように制御することで、記憶しておく推定値のマップやテーブルを減らすことができる。
【0051】
以上により、燃料電池システム1は、発電状態判定値と推定値とを比較し、推定値に対する発電状態判定値の増減に基づいて、水素含有燃料の供給量を調整している。発電パラメータは、燃料電池システム1内において、セルスタック5での発電状態によって影響を受けるものである。従って、他の条件が一定であれば、発電状態判定値の変化は、発電に用いられる水素含有燃料の性状の変化を示す。発電パラメータの推定値は、電流に対して予め定められる値であり、性状変化を判断するためのベースデータとして用いることができる。燃料電池システム1運転中の所定のタイミングにおける電流及び発電状態判定値が取得された場合、制御部11は当該電流に基づいて推定値を特定し、その推定値と発電状態判定値とを比較することができる。発電状態判定値が、ベースデータとなる推定値から変化していなければ、性状変化はないと判断できる。一方、発電状態判定値が、推定値から増減していた場合、性状変化があると判断できる。このとき、制御部11は、水素含有燃料の供給量を調整することによって、燃料電池システム1の運転状態を性状変化前の状態に近づけることができる。これにより、性状変化前と同じく燃料電池システム1にとって最適な運転状態にて、燃料電池システム1が運転を続行することができる。発電パラメータとして、水素含有燃料の性状変化を想定していないような通常の燃料電池システム内で設けられているセンサーや機器で測定可能なものを用いることで、燃料電池システム1は、特別な機器を設けることなく、性状変化に対応することができる。以上によって、特別な機器を設けることなく、水素含有燃料の性状の変化に応じて適切な運転を行うことができる。
【0052】
[第二実施形態]
図6を参照して、本発明の第二実施形態に係る燃料電池システム1について説明する。第二実施形態に係る燃料電池システムにおいて、制御部11の比較判定部104は、発電状態判定値の変化量が所定の閾値より大きい状態が、所定時間継続したか否かを判定する機能を有する。水素含有燃料の性状変化による影響で想定される以上に、発電状態判定値が大きく変化し、その状態が所定時間継続した場合、制御部11の比較判定部104は、水素含有燃料の供給異常と判断する。制御部11のシステム停止部105は、変化量が閾値より大きい状態が所定時間継続したと判定したとき、システムを停止する機能を有する。
【0053】
図6は、第二実施形態に係る燃料電池システム1の制御処理の一例を示すフローチャートである。まず、制御部11の発電状態判定値取得部102は、発電状態判定値の変化量を得るための値として、前回の制御処理で取得した発電状態判定値を前回値X2として取得する(ステップS120)。なお、初回の制御処理であって前回値が存在しない場合は、初期値X0を前回値X2として用いる。次に、第一実施形態と同様のS10〜S50の処理を実行する。S50の後、制御部11の比較判定部104は、発電状態判定値X1の変化量が閾値Y1よりも大きい状態が、所定時間継続したか否かを判定する(ステップS130)。ここでの変化量とは、発電状態判定値X1と前回値X2との差の絶対値である。なお、変化量としては、発電状態判定値X1の変化の度合いを示すものであればどのような値を用いてもよい。例えば、発電状態判定値X1の前回値X2からの変化率を用いてもよい。
【0054】
制御部11の比較判定部104は、S130において変化量が閾値Y1より大きい状態が所定時間継続したと判定した場合、水素含有燃料の供給異常が発生していると判断し、システム停止部105は、システムを停止する(S110)。システム停止後、図6に示す制御処理は終了する。
【0055】
制御部11の比較判定部104は、S130において変化量が閾値Y1より大きい状態が所定時間継続していないと判定した場合、発電状態判定値X1の変化量が小さく、供給異常は発生していないと判断する。あるいは、制御部11の比較判定部104は、測定値の振動などによって発電状態判定値X1が瞬間的に変化したにすぎず、供給異常は発生していないと判断する。このとき、制御部11は、第一実施形態と同様のS60〜S90を実行する。S60〜S90を実行した後、発電状態判定値X1を前回値X2として設定する(ステップS140)。ここで設定した前回値X2は、次回の制御処理におけるS120で用いられる。なお、制御部11は、性状変化が変化したと判断してS70、S90で燃料供給量を調整した場合、調整後の発電状態判定値X1を再度取得し直し、取得し直した発電状態判定値X1を前回値X2として設定してもよい。
【0056】
S140の後、制御部11は、第一実施形態と同様のS100、S110を実行する。制御部11は、S100において、システム停止指令があると判定した場合はシステム停止処理を行い(ステップS110)、図6に示す処理を終了する。制御部11は、S100において、システム停止指令が無いと判定した場合は、図6に示す処理を終了し、所定のタイミングで再びS10,S20から処理を開始する。
【0057】
[第三実施形態]
図7を参照して、本発明の第三実施形態に係る燃料電池システム1について説明する。第三実施形態に係る燃料電池システムにおいて、制御部11の比較判定部104は、発電状態判定値の推定値に対する変化量が所定の閾値より大きいか否かを判定する機能を有する。水素含有燃料の性状変化による影響で想定される以上に、発電状態判定値が推定値から大きく変化した場合、制御部11の比較判定部104は、直ちに水素含有燃料の供給異常と判断できる。制御部11のシステム停止部105は、変化量が閾値より大きいと判定されたとき、システムを停止する機能を有する。
【0058】
図7は、第三実施形態に係る燃料電池システム1の制御処理の一例を示すフローチャートである。まず、制御部11は、第一実施形態と同様のS10〜S50を実行する。S50の後、制御部11の比較判定部104は、発電状態判定値X1の推定値Xに対する変化量が閾値Y2よりも大きいか否かを判定する(ステップS160)。ここでの変化量とは、発電状態判定値X1と推定値Xとの差の絶対値である。なお、変化量としては、発電状態判定値X1の推定値Xに対する変化の度合いを示すものであればどのような値を用いてもよい。例えば、発電状態判定値X1の推定値Xからの変化率を用いてもよい。
【0059】
制御部11の比較判定部104は、S130において変化量が閾値Y2より大きいと判定した場合、水素含有燃料の供給異常が発生していると判断し、システム停止部105は、システムを停止する(S110)。システム停止後、図7に示す制御処理は終了する。
【0060】
制御部11の比較判定部104は、S160において変化量が閾値Y2以下と判定した場合、供給異常は発生していないと判断する。このとき、制御部11は、第一実施形態と同様のS60〜S90を実行する。S60〜S90を実行した後、制御部11は、第一実施形態と同様のS100、S110を実行する。制御部11は、S100において、システム停止指令があると判定した場合はシステム停止処理を行い(ステップS110)、図7に示す処理を終了する。制御部11は、S100において、システム停止指令が無いと判定した場合は、図7に示す処理を終了し、所定のタイミングで再びS10,S20から処理を開始する。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る燃料電池システムは、実施形態に係る上記燃料電池システム1に限定されない。
【0062】
例えば、図4〜図7に示す例では、発電パラメータとしてスタック電圧を用いた場合について説明したが、他の発電パラメータを用いて制御処理を行ってもよい。また、燃料電池システムは、第二実施形態及び第三実施形態を組み合わせた制御処理を行ってもよい。これによって、水素含有燃料の供給異常を一層確実に監視できる。
【符号の説明】
【0063】
1…燃料電池システム、4…水素発生部、5…セルスタック、11…制御部、101…電流取得部、102…発電状態判定値取得部、103…推定値取得部、104…比較判定部(比較部、第一判定部、第二判定部)、105…システム停止部(第一システム停止部、第二システム停止部)、106…調整部(供給量調整部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有燃料を用いて水素含有ガスを発生させる水素発生部と、
前記水素含有ガスを用いて発電を行うセルスタックと、を備える燃料電池システムであって、
前記セルスタックでの発電における電流を取得する電流取得部と、
前記セルスタックでの発電における発電パラメータの測定結果に基づく発電状態判定値を取得する発電状態判定値取得部と、
前記電流に対して予め定められた前記発電パラメータの推定値を取得する推定値取得部と、
前記発電状態判定値と前記推定値とを比較する比較部と、
前記推定値に対する前記発電状態判定値の増減に基づいて、前記水素含有燃料の供給量を調整する供給量調整部と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記発電状態判定値の変化量が所定の閾値より大きい状態が、所定時間継続したか否かを判定する第一判定部と、
前記第一判定部によって、前記変化量が前記閾値より大きい状態が所定時間継続したと判定されたとき、システムを停止する第一システム停止部と、を更に備えることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記発電状態判定値の前記推定値に対する変化量が所定の閾値より大きいか否かを判定する第二判定部と、
前記第二判定部によって、前記変化量が前記閾値より大きいと判定されたとき、システムを停止する第二システム停止部と、を更に備えることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記発電パラメータは、前記セルスタックでのスタック電圧であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記発電パラメータは、前記セルスタックの発電に基づく交流電力であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記発電パラメータは、前記セルスタックからのオフガスを燃焼させたオフガス燃焼温度であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記発電パラメータは、前記セルスタックのスタック温度であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記発電パラメータは、システム内の排熱の回収量である排熱回収熱量であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記発電パラメータは、システム内の排熱を回収する排熱回収器の入口温度であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−142120(P2012−142120A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292678(P2010−292678)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】