説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池システムのスタック4を冷却する熱媒体を熱媒体タンク5に供給する熱媒体供給配管7及び、排気口10で排ガスが凝縮して発生する凝縮水を排出するドレイン配管11について、効率良く、安価で小さなスペースで配管内の凍結を防止する。
【解決手段】熱媒体供給配管7、及び、ドレイン配管11のうち少なくとも一方を熱媒体タンク5のオーバーフロー配管6の放熱で熱交換して温められるように、オーバーフロー配管6に沿わせて配置することで、配管内の凍結を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素と酸素を反応させ発電する燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムは、本体筐体内に燃料ガスである天然ガスなどから水素ガスを生成する改質器と、この水素ガスと酸化剤としての酸素(空気)との電気化学的反応により発電を行う燃料電池(以降、スタックと呼ぶ)と、スタックや改質器を円滑に作動させるための補助機器と、本体筐体内部の配管内などの水の凍結を防止するために筐体内部を加熱する凍結予防ヒータと、燃料電池システム全体の制御を行う制御装置を備えている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、前記特許文献1に記載された従来の燃料電池システムを示すものである。
図5に示すように、筐体101と、改質器102と、スタック103と、補助機器104と筐体101内部の凍結を防止する凍結予防ヒータ105と、制御装置106とで構成されている。制御装置106は、燃料電池システム全体の制御を行う機能と共に、スタック103で発生した電気エネルギーを商用電圧・周波数に変換する電力変換回路や、筐体101内部の温度を検知して凍結予防ヒータ105を制御する温度制御機能を備えている。この構成によって、スタック103の周囲温度を温度センサ(図示せず)によって検知し、その検知に基づき制御装置106で凍結予防ヒータ105を制御することによって筐体101の内部空間を加熱し、筐体101内の温度を凍結の恐れのない温度以上に保つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/034997号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、燃料電池システムの運転中に凍結予防ヒータ105を加熱して、筐体101の内部空間全体を凍結しない温度以上に保つために、凍結予防ヒータ105においてかなりの電力の消費が必要であり、燃料電池システムとしての発電効率が低下してしまうという課題があった。また、凍結予防ヒータ105は、筐体101の下部に設けられており、筐体101の上方に配置される補助機器104としての配管(例えば、スタック103の熱を回収する熱媒体タンクに熱媒体である冷却水を供給する配管)の周囲まで温めるには時間がかかり、配管内部で凍結が発生する可能性がある。また、このような、筐体101の上方に配置され、凍結予防ヒータ105からの距離が離れている配管の凍結防止には、配管に断熱材を被せて凍結防止を図っても良いが、断熱材を追加するコストがかかり、断熱材の分だけ配管用のスペースも多く必要になり、筐体101の小型化を妨げるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、燃料電池システムの運転中の筐体内部の配管の凍結防止を多くの電力を消費することなく効率良く行うことができ、さらに、凍結防止用の断熱材などの部品を追加することなく、安価で小さなスペースで実現することができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行う燃料電池を備える燃料電池モジュールと、燃料電池の熱を回収す
る熱媒体タンクと、熱媒体タンクから溢れる熱媒体を排水するオーバーフロー経路と、熱媒体タンクに熱媒体を供給する熱媒体供給経路と、燃料電池モジュールから排気される排ガス中の水分が凝縮した凝縮水を排水するドレイン経路とを備えている。そして特に、熱媒体供給経路、及び、ドレイン経路のうちの少なくとも一方と、オーバーフロー経路とが熱交換するように配置されるものである。
【0008】
これによって、燃料電池モジュールの運転中に熱媒体供給経路やドレイン経路を構成する配管など水分が流れる配管が、燃料電池の熱を回収した熱媒体が流れるオーバーフロー経路の配管の放熱により温められ、熱交換されることで、排熱されていたオーバーフロー経路の熱を有効利用して、効率良く、部品を追加することもなく、配管内部での水分の凍結防止を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の燃料電池システムは、燃料電池システムの運転中の配管の凍結防止を、排熱を利用して、効率良く安価で小さなスペースで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの構成図
【図2】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの配管を結束した状態を示す概略図
【図3】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの配管を断熱材で覆った状態を示す概略図
【図4】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの熱媒体タンクに発熱装置を設けた状態を示す概略図
【図5】従来の燃料電池システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行う燃料電池を備える燃料電池モジュールと、燃料電池の熱を回収する熱媒体タンクと、熱媒体タンクから溢れる熱媒体を排水するオーバーフロー経路と、熱媒体タンクに熱媒体を供給する熱媒体供給経路と、燃料電池モジュールからの排気される排ガス中の水分が凝縮した凝縮水を排水するドレイン経路とを備えている。そして特に、熱媒体供給経路、及び、ドレイン経路のうちの少なくとも一方と、オーバーフロー経路とが熱交換するように配置されている。これにより、燃料電池モジュールの運転中に、熱媒体供給経路、及び、ドレイン経路を構成する水分の流れる配管のうちの少なくとも一方が、燃料電池の熱を回収した熱媒体が流れるオーバーフロー経路の配管の放熱により温められ熱交換される位置に配置されることで、熱媒体供給経路、及び、ドレイン経路のうちの少なくとも一方の内部で水分が凍結することを抑制できる。
【0012】
第2の発明は、特に第1の発明において、燃料電池モジュールは、燃料ガスを改質して水素含有ガスを生成する改質器と、燃料ガスを燃焼して改質器を加熱する燃焼器とを備えている。そして特に、燃料電池モジュールから排気される排ガスは、燃料電池から排出される燃料電池排ガス及び燃焼器から排出される燃焼排ガスのうちの少なくとも一方である。これにより、改質器を備えた燃料電池システムにおいても、運転中に改質器を加熱する燃焼器の排ガス中の水分が凝縮した凝縮水が排水されるドレイン経路が、燃料電池の熱を回収した熱媒体が流れるオーバーフロー経路の配管の放熱により温められ熱交換される位置に配置されることで、ドレイン経路の配管の内部で水分が凍結することを抑制できる。
【0013】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、熱媒体供給経路、及び、ドレイン経路のうちの少なくとも一方と、オーバーフロー経路とが少なくとも一部で接触するよう
に配置されることにより、熱媒体供給経路、及び、ドレイン経路の配管のうち少なくとも一方が、オーバーフロー経路の放熱により、より確実に効果的に熱交換されることで、配管の内部での水分の凍結防止の効果を向上できる。
【0014】
第4の発明は、特に第2または第3の発明において、熱媒体供給経路、及び、ドレイン経路のうちの少なくとも一方は、改質器と隣接するように配置されることにより、熱媒体供給経路、及び、ドレイン経路の配管のうち少なくとも一方が、オーバーフロー経路からの放熱に加えて、改質器からの放熱による熱交換も行われることで、配管の内部での水分の凍結防止の効果を向上できる。
【0015】
第5の発明は、特に第1〜4のいずれか1つの発明において、熱媒体供給経路、及び、ドレイン経路のうちの少なくとも一方と、オーバーフロー経路との少なくとも一部をまとめて覆うように配置される断熱材を備えている。そして特に、熱媒体供給経路、及び、ドレイン経路のうちの少なくとも一方と、オーバーフロー経路とをまとめて断熱材で覆うため、オーバーフロー経路の放熱を利用して、熱媒体供給経路、及び、ドレイン経路のうちの少なくとも一方をより確実に加熱して熱交換することができ、配管の内部での水分の凍結防止の効果を向上できる。
【0016】
第6の発明は、特に第1〜5のいずれか1つの発明において、熱媒体タンクの内部に熱媒体を加熱するための発熱装置を備えることにより、燃料電池システムの起動時など、熱媒体タンク内の熱媒体が温まっていない場合でも、発熱装置で熱媒体タンク内の熱媒体を加熱した後、熱媒体供給経路で熱媒体を熱媒体タンクに供給し、加熱された熱媒体をオーバーフロー経路から排水することで、熱媒体供給経路及び、ドレイン経路のうちの少なくとも一方を加熱して熱交換することができ、配管の内部での水分の凍結防止を行うことができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムの構成図を示すものである。
【0019】
図1において、筐体1は、燃料電池システム本体の外郭を形成する筐体で、改質器2やスタック4、及びその周辺の構成要素を内部に収納するものである。改質器2は、触媒からなる改質部とこの改質部を加熱する燃焼器3により構成される。改質器2は、筐体1の中央部から下部にかけて配置される。
【0020】
スタック4は、セルを集合化して構成される。セルとは、触媒層を水素ガスや空気を送り込むための流路を形成したセパレータで挟持して構成されたものである。ここで、触媒層は、固体高分子電解質膜の両側に触媒を担持した燃料極と空気極を形成することで作られている。スタック4は、改質器2の斜め上方に配置される。
【0021】
熱媒体タンク5は、スタック4の発電時に水素ガスと酸素の化学反応によって発生する熱を回収し、スタック4を所定の温度に維持するための熱媒体としての冷却水を蓄えるものである。熱媒体タンク5には、熱媒体の水位を検知する水位センサ(図示せず)が設けられており、水位センサは後述する制御装置12により制御されている。熱媒体タンク5は、スタック4の上方に配置される。
【0022】
スタック4と熱媒体タンク5との間には、図示していないが、冷却水などの熱媒体を搬
送するための熱媒体循環配管や熱媒体循環配管内に冷却水を循環するための循環ポンプなどが設けられる。また、改質器2と熱媒体タンク5との間には、熱媒体タンク5の熱媒体を改質器2で改質水として使用するために、熱媒体タンク5と改質器2を結ぶ改質水供給配管(図示せず)や改質水供給装置(図示せず)などが設けられる。
【0023】
オーバーフロー配管6は、熱媒体タンク5から溢れる熱媒体を排水する配管である。オーバーフロー配管6の一端は熱媒体タンク5の上方に接続され、もう一端は、後述する凝縮水タンク8に接続され、熱媒体タンク5から排水された熱媒体は、凝縮水タンク8に流れ込む。熱媒体タンク5からオーバーフロー配管6を通って排水される熱媒体は、50度〜60度程度の高温である。オーバーフロー配管6は、例えば、樹脂製のチューブが使用され、オーバーフロー配管6には、断熱材など放熱を妨げる部品は装着されない。
【0024】
熱媒体供給配管7は、熱媒体タンク5に冷却水などの熱媒体を供給するための配管である。熱媒体供給配管7の一端は、後述する熱媒体供給装置9に接続され、もう一端は、熱媒体タンク5のオーバーフロー配管6の接続部より上方に接続される。熱媒体供給配管7には、例えば、樹脂製のチューブが使用される。
【0025】
凝縮水タンク8は、燃焼器3より排出された燃焼排ガスや、スタック4より排出された排空気や排水素ガスから得られる凝縮水を蓄積するものである。
【0026】
熱媒体供給装置9は、凝縮水タンク8内の凝縮水を熱媒体として熱媒体供給配管7を通して熱媒体タンク5に供給するための装置(例えば、電動式ポンプ)である。
【0027】
凝縮水タンク8と熱媒体タンク5の間には、凝縮水タンク8内の水をスタック4の性能に影響を及ぼさない熱媒体である純水に変換するイオン交換樹脂を供えたイオン交換装置(図示せず)が設けられ、熱媒体供給配管7で接続される。
【0028】
排気口10は、燃焼器3より排出された燃焼排ガスやスタック4より排出された排空気を筐体1の外部に排出する部分である。排気口10は、改質器2やスタック4より上方に配置される。排気口10と燃焼器3やスタック4との間には、図示していないが、燃焼器3やスタック4からの排ガスを排気口10に導くための配管が設けられている。
【0029】
ドレイン配管11は、排気口10において、排ガスが外気と接触することにより、排ガス中の水分が凝縮されて発生する凝縮水を排水するための配管である。ドレイン配管11の一端は、排気口10の下部に接続され、もう一端は、筐体1の下部に接続され、凝縮水が筐体1の外部に排出されるように設けられる。ドレイン配管11には、例えば、樹脂製のチューブが使用される。
【0030】
熱媒体供給配管7、及びドレイン配管11は、オーバーフロー配管6に沿わせてオーバーフロー配管6の放熱により熱交換が行える位置に配置される。また、熱媒体供給配管7、及びドレイン配管11は、筐体1の中央側に配置される。こうすることで、筐体1の壁側に配置した場合よりも、外気の気温による影響を受けにくくなり、配管内の水分の凍結防止効果が改善する。また、熱媒体供給配管7、及びドレイン配管11は、改質器2に隣接して配置してもよい。改質器2に隣接して配置することにより、改質器2の放熱により、配管が温められ、配管内の水分の凍結の防止効果を改善することができる。
【0031】
なお、熱媒体供給配管7あるいはドレイン配管11のどちらか一方(または、両方)をオーバーフロー配管6に沿わせ、オーバーフロー配管6の放熱により熱交換が行える位置に配置してもよい。また、熱媒体供給配管7あるいはドレイン配管11のどちらか一方(または、両方)を改質器2に隣接して配置してもよい。
【0032】
制御装置12は、低電圧回路と100V以上を扱う高電圧回路から構成されている。高電圧回路は、筐体1の外部の商用電源に接続され、スタック4で発電される直流電力を交流電力に変換して商用電源に接続された負荷に供給するインバータと交流商用電源を直流低電圧に変換する電源回路で構成されている。低電圧回路は、筐体1内の改質器2やスタック4等の各装置を制御する制御手段である。
【0033】
なお、筐体1の内部には、補助機器として、改質器2やスタック4を円滑に作動させるための装置や配管(図示せず)が構成されている。この補助機器の構成としては、例えば、筐体1の外部に設けられる貯湯槽と接続する貯湯配管や、筐体1の外部から都市ガスなどの原料ガスを供給し、原料ガスを改質器2に搬送する原料ガス配管や、原料ガスの供給を制御する制御弁、原料ガスを昇圧して改質器2に送るガス昇圧ポンプ、改質器2で生成された水素ガスをスタック4に搬送するための水素ガス配管、スタック4に空気を供給するための空気ブロワ、空気ブロワから供給される空気をスタック4に搬送するための空気配管、貯湯槽から供給される水を筐体1内で循環し、改質器2やスタック4の排熱を回収し、貯湯槽へ湯を搬送させる熱回収配管、熱回収配管内で水を循環させる循環ポンプ、改質器2やスタック4からの排ガスの熱を回収し熱回収配管内の水に伝達する熱交換器、フィルターなどからなる空気浄化装置、改質器2に原料ガスの改質反応のために必要な水を搬送するための改質水ポンプ、改質水ポンプから改質器2に搬送される水の量を制御する制御弁、燃料電池システムのメンテナンス時に燃料電池システム内の各装置から水を抜いて筐体1の外部に排出するための水抜き配管などがある。
【0034】
なお、筐体1の内部に、筐体内部を加熱する凍結予防ヒータを設けてもよい。この場合、筐体内部の凍結予防をより確実に行うことができる。
【0035】
次に、筐体1内の各装置間のその他の接続について説明する。改質器2は補助機器である原料ガス配管に接続され、筐体1外部から原料ガスの供給を受ける。スタック4は、改質器2と補助機器である水素ガス配管により接続され、改質器2から水素ガスの供給を受ける。また、スタック4は、補助機器である空気ブロワと空気配管で接続され空気の供給を受ける。制御装置12は、スタック4と電気ケーブルで接続され、スタック4で発電された直流電力を制御する。制御装置12と改質器2は電気ケーブルで接続され、制御装置12により動作を制御される。制御装置12と補助機器であるポンプや制御弁は電気ケーブルで接続され、制御装置12により動作を制御される。
【0036】
以上のように構成された燃料電池システムについて、以下その動作、作用を説明する。
【0037】
まず、筐体1外部の都市ガス管と接続された原料ガス配管から供給された原料ガス(例えば、メタン)が、制御弁によりガスの量を制御されながら改質器2に供給される。そして、燃焼器3により改質器2が加熱された後、改質反応により原料ガスから水素ガスが生成される。改質器2で生成された水素ガスは水素ガス配管を通ってスタック4へ供給される。一方、制御装置12に制御された空気ブロワによって、空気が空気配管を通してスタック4に供給される。スタック4では、供給された水素ガスと空気中の酸素を化学反応させて直流電力を発電する。発電された直流電力は、制御装置12のインバータにより交流電力に変換され商用電源に供給される。
【0038】
燃焼器3での燃焼により発生した燃焼排ガスは、燃焼器3から排出され、凝縮されて凝縮水を取り出される。凝縮水は凝縮水タンク8に送られる。凝縮水を取り出された燃焼排ガスは排気口10から筐体1の外部に排出される。
【0039】
スタック4での化学反応による発電で残った排水素ガスは、発電の際に発生する水蒸気
を含んだ状態でスタック4から排出され、凝縮されて凝縮水を取り出される。凝縮水は凝縮水タンク8に送られる。凝縮水を取り出された排水素ガスは、燃焼器3に送られ、改質反応の可燃燃料として使用される。
【0040】
スタック4での化学反応による発電で使われた空気は、発電の際に発生する水蒸気を含んだ状態でスタック4から排空気として排出され、凝縮されて凝縮水を取り出される。凝縮水は凝縮水タンク8に送られる。凝縮水を取り出された排空気は排気口10から筐体1の外部に排出される。
【0041】
排気口10で燃焼排ガスや排空気が凝縮することで発生した凝縮水は、ドレイン配管11を通って筐体1の外部に排出される。
【0042】
凝縮水タンク8に蓄積された水は、熱媒体供給装置9により、熱媒体供給配管7を通ってイオン交換装置を経由して後に熱媒体タンク5に運ばれ、スタック4の熱媒体としての冷却水として使用される。
【0043】
スタック4の発電時には、熱媒体タンク5から熱媒体が循環ポンプにより熱媒体循環配管を通ってスタック4に送られ、スタック4で発生する熱を除去し、スタック4を所定の温度に維持する。スタック4の熱を回収した熱媒体は熱媒体循環配管を通って熱媒体タンク5に送られ、熱媒体タンク5内の熱媒体が温められる。
【0044】
また、熱媒体タンク5からは、改質器2にも改質水供給配管を通って熱媒体が送られる。
【0045】
熱媒体タンク5の熱媒体の量が少なくなり、水位センサで熱媒体タンク5の水位が低いことが検知されると、制御装置12により熱媒体供給装置9が動作され、熱媒体供給配管7を通して凝縮水タンク8から熱媒体タンク5に熱媒体が供給される。
【0046】
その後、水位センサで熱媒体タンク5の水位が戻ったことが検知されると、熱媒体供給装置9での熱媒体の供給が停止される。
【0047】
熱媒体供給配管7により熱媒体タンク5に供給された熱媒体は、熱媒体タンク5に接続されたオーバーフロー配管6の位置まで達すると、オーバーフロー配管6を通って、凝縮水タンク8に排出される。このとき、熱媒体がオーバーフロー配管6を通ることで、熱媒体の熱がオーバーフロー配管6の表面から放熱され、熱媒体供給配管7やドレイン配管11が温められることで、熱媒体供給配管7やドレイン配管11の内部の水分が温められ、凍結が防止される。
【0048】
なお、オーバーフロー配管6と、熱媒体供給配管7、及びドレイン配管11は、その経路中のある区間を、図2に示すように、結束部品13(例えば、バンド)によって結束して、オーバーフロー配管6と熱媒体供給配管7、及びドレイン配管11を接触させてもよい。この場合、オーバーフロー配管6での放熱が、熱媒体供給配管7、及びドレイン配管11により効果的に伝わり、熱媒体供給配管7及びドレイン配管11の配管内の水分の凍結防止をより確実に行える。なお、熱媒体供給配管7あるいはドレイン配管11の一方のみをオーバーフロー配管6と結束してもよい。また、オーバーフロー配管6と熱媒体供給配管7、及びドレイン配管11を結束する際に、それ以外の配管も合わせて結束してもよい。
【0049】
なお、オーバーフロー配管6と、熱媒体供給配管7、及びドレイン配管11は、その経路中のある区間を、図3に示すように、断熱材14でまとめて覆う構成にしてもよい。こ
の場合、断熱材14で覆われることにより、オーバーフロー配管6の放熱がより効果的に熱媒体供給配管7、及びドレイン配管11に伝わり、熱媒体供給配管7及びドレイン配管11の配管内の水分の凍結防止をより確実に行える。なお、熱媒体供給配管7あるいはドレイン配管11の一方のみを、オーバーフロー配管6とまとめて断熱材14で覆ってもよい。また、オーバーフロー配管6と熱媒体供給配管7、及びドレイン配管11を断熱材14で覆う際に、それ以外の配管も合わせてまとめて断熱材14で覆ってもよい。また、断熱材14は、円筒状の断熱材を用いてもよいし、板状の断熱材を用いて巻きつけてもよい。
【0050】
次に、図4に示すように、熱媒体タンク5の内部にヒータ等の発熱装置15を設けた構成について説明する。この場合、燃料電池システムの起動時など、スタック4が発電していない期間において、熱媒体タンク5内の熱媒体が温まっていない場合でも、発熱装置15で熱媒体タンク5内の熱媒体を加熱した後、熱媒体供給配管7で熱媒体を熱媒体タンク5に供給し、加熱された熱媒体をオーバーフロー配管6から排水することで、熱媒体供給配管7あるいはドレイン配管11を温めることができ、配管内の凍結を防止することができる。
【0051】
以上のように、本実施の形態においては、熱媒体供給配管7、及びドレイン配管11のうちの少なくとも一方を、オーバーフロー配管6の放熱により熱交換できる距離に沿わせて配置することにより、スタック4の発電中に、熱媒体供給配管7、及び、ドレイン配管11のうちの少なくとも一方の内部で水分が凍結することを抑制することができ、排熱されていたオーバーフロー配管6の熱を有効利用して、効率良く安価に凍結防止を行うことができる。
【0052】
また、本実施の形態では、燃焼器3を備えた改質器2を備え、スタック4から排空気が排出され、燃焼器3から燃焼排ガスが排出されることにより、排気口10において排空気及び燃焼排ガス中の水分が凝縮した凝縮水が排水されるドレイン配管11が、オーバーフロー配管6の放熱により温められ熱交換される位置に配置されることで、ドレイン配管11の内部で水分が凍結することを抑制できる。
【0053】
また、本実施の形態の熱媒体供給配管7、及び、ドレイン配管11のうちの少なくとも一方と、オーバーフロー配管6とが結束部品13により結束されて、熱媒体供給配管7、及び、ドレイン配管11のうちの少なくとも一方と、オーバーフロー配管6とが少なくとも一部で接触するように配置される構成としても良い。これにより、熱媒体供給配管7、及び、ドレイン配管11のうち少なくとも一方が、オーバーフロー配管6の放熱により、より確実に効果的に熱交換され、配管の内部の水分の凍結防止の効果を向上できる。
【0054】
また、本実施の形態の熱媒体供給配管7、及び、ドレイン配管11のうちの少なくとも一方は、改質器2と隣接するように配置される構成としても良い。これにより、熱媒体供給配管7、及び、ドレイン配管11のうち少なくとも一方が、オーバーフロー配管6からの放熱に加えて、改質器2からの放熱による熱交換も行われることで、配管の内部での水分の凍結防止の効果を向上できる。
【0055】
また、本実施の形態の熱媒体供給配管7、及び、ドレイン配管11のうちの少なくとも一方と、オーバーフロー配管6との少なくとも一部を断熱材14でまとめて覆う構成としても良い。これにより、オーバーフロー配管6の放熱を利用して、熱媒体供給配管7、及び、ドレイン配管11のうちの少なくとも一方をより確実に加熱して熱交換することができ、配管の内部での水分の凍結防止の効果を向上できる。
【0056】
また、本実施の形態の熱媒体タンク5の内部に熱媒体を加熱するための発熱装置15を
備える構成としても良い。これにより、燃料電池システムの起動時など、熱媒体タンク5内の熱媒体が温まっていない場合でも、発熱装置15で熱媒体タンク5内の熱媒体を加熱した後、熱媒体供給配管7で熱媒体を熱媒体タンク5に供給し、加熱された熱媒体をオーバーフロー配管6から排水することで、熱媒体供給配管7、及び、ドレイン配管11のうちの少なくとも一方を加熱して熱交換することができ、配管の内部での水分の凍結防止を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明にかかる燃料電池システムは、燃料電池システムの配管の凍結防止を効率良く、安価で、小さなスペースで実現することが可能となるので、寒冷地向けの他の設備機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 筐体
2 改質器
3 燃焼器
4 スタック
5 熱媒体タンク
6 オーバーフロー配管
7 熱媒体供給配管
8 凝縮水タンク
9 熱媒体供給装置
10 排気口
11 ドレイン配管
12 制御装置
13 結束部品
14 断熱材
15 発熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行う燃料電池を備える燃料電池モジュールと、
前記燃料電池の熱を回収する熱媒体タンクと、
前記熱媒体タンクから溢れる熱媒体を排水するオーバーフロー経路と、
前記熱媒体タンクに熱媒体を供給する熱媒体供給経路と、
前記燃料電池モジュールからの排気される排ガス中の水分が凝縮した凝縮水を排水するドレイン経路と、
を備え、
前記熱媒体供給経路、及び、前記ドレイン経路のうちの少なくとも一方と、前記オーバーフロー経路とが熱交換するように配置される、燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池モジュールは、燃料ガスを改質して水素含有ガスを生成する改質器と、前記燃料ガスを燃焼して前記改質器を加熱する燃焼器と、を備え、
前記燃料電池モジュールから排気される排ガスは、前記燃料電池から排出される燃料電池排ガス及び前記燃焼器から排出される燃焼排ガスのうちの少なくとも一方である、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記熱媒体供給経路、及び、前記ドレイン経路のうちの少なくとも一方と、前記オーバーフロー経路とが少なくとも一部で接触するように配置される、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記熱媒体供給経路、及び、前記ドレイン経路のうちの少なくとも一方は、前記改質器と隣接するように配置される、請求項2又は3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記熱媒体供給経路、及び、ドレイン経路のうちの少なくとも一方と、前記オーバーフロー経路との少なくとも一部をまとめて覆うように配置される断熱材を備える、請求項1〜4のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記熱媒体タンクの内部に熱媒体を加熱するための発熱装置を備える、請求項1〜5のいずれか1つに記載の燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−109988(P2013−109988A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254558(P2011−254558)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】