燃料電池システム
【課題】燃料電池の暖機を促進させることを目的とする。
【解決手段】本発明は、アノードガス及びカソードガスを燃料電池(1)に供給して発電させ、発電電力を車両の駆動モータ(53)に供給する燃料電池システムであって、燃料電池(1)の暖機時に、駆動モータ(53)に発電電力を供給して暖機を促進させる暖機制御手段(S4)を備えることを特徴とする。
【解決手段】本発明は、アノードガス及びカソードガスを燃料電池(1)に供給して発電させ、発電電力を車両の駆動モータ(53)に供給する燃料電池システムであって、燃料電池(1)の暖機時に、駆動モータ(53)に発電電力を供給して暖機を促進させる暖機制御手段(S4)を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムとして、燃料電池の暖機時に、補機に電力を供給して暖機を促進させるものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−512068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池の暖機時においては、燃料電池の発電電力を増大させるほど熱損失が大きくなって暖機性能が向上する。しかしながら、暖機時に通電可能な補機はカソードコンプレッサや冷却水の温度を上昇させるヒータなどに限られており、それらの補機が消費する電力以上の電力を発電することができなかった。そのため、従来の燃料電池システムのように補機に対してのみ電力を供給していたのでは、十分な暖機性能を得ることができないという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであり、暖機時における燃料電池の発電電力を増大させて、暖機性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、本発明は、アノードガス及びカソードガスを燃料電池に供給して発電させ、発電電力を車両の駆動モータに供給する燃料電池システムである。そして、燃料電池の暖機時に、駆動モータに発電電力を供給して暖機を促進させる暖機制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料電池の暖機時にこれまで燃料電池の発電電力を供給していなかった駆動モータに対しても、燃料電池の発電電力を供給することとした。これにより、燃料電池の暖機時に通電可能な電気部品として、補機のほかに駆動モータが追加されることになるので、燃料電池の発電電力を増大させることができ、暖機性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態による燃料電池システムの概略図である。
【図2】燃料電池スタックの温度と、燃料電池スタックの電流電圧特性と、の関係を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による暖機制御について説明するフローチャートである。
【図4】駆動モータ供給電力算出処理について説明するフローチャートである。
【図5】燃料電池スタックの出力電力と平均セル電圧とに基づいて、単位時間当たりの燃料電池スタックの発熱量を算出するマップである。
【図6】暖機完了予測時間と推定駆動モータ温度とに基づいて、第1最大駆動モータ供給電力を逐次算出するマップである。
【図7】暖機完了予測時間と推定インバータ温度とに基づいて、第2最大駆動モータ供給電力を逐次算出するマップである。
【図8】推定駆動モータ温度算出処理について説明するフローチャートである。
【図9】電力積算値に基づいて駆動モータの上昇温度を算出するテーブルである。
【図10】推定インバータ温度算出処理について説明するフローチャートである。
【図11】電力積算値に基づいてインバータの上昇温度を算出するテーブルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
燃料電池は電解質膜をアノード電極(燃料極)とカソード電極(酸化剤極)とによって挟み、アノード電極に水素を含有するアノードガス(燃料ガス)、カソード電極に酸素を含有するカソードガス(酸化剤ガス)を供給することによって発電する。アノード電極及びカソード電極の両電極において進行する電極反応は以下の通りである。
【0011】
アノード電極 : 2H2 →4H+ +4e- …(1)
カソード電極 : 4H+ +4e- +O2 →2H2O …(2)
【0012】
この(1)(2)の電極反応によって燃料電池は1ボルト程度の起電力を生じる。
【0013】
燃料電池を自動車用動力源として使用する場合には、要求される電力が大きいため、数百枚の燃料電池を積層した燃料電池スタックとして使用する。そして、燃料電池スタックにアノードガス及びカソードガスを供給する燃料電池システムを構成して、車両駆動用の電力を取り出す。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による燃料電池システム100の概略図である。
【0015】
燃料電池システム100は、燃料電池スタック1と、カソードガス給排装置2と、アノードガス給排装置3と、スタック冷却装置4と、電力系5と、電力系冷却装置6と、パークロック装置7と、コントローラ8と、を備える。
【0016】
燃料電池スタック1は、数百枚の燃料電池を積層したものであり、アノードガス及びカソードガスの供給を受けて、車両の駆動に必要な電力を発電する。燃料電池スタック1は、電力を取り出す端子として、アノード電極側出力端子11と、カソード電極側出力端子12と、を備える。
【0017】
カソードガス給排装置2は、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するとともに、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスを外気に排出する装置である。カソードガス給排装置2は、カソードガス供給通路21と、フィルタ22と、カソードコンプレッサ23と、カソードガス排出通路24と、を備える。
【0018】
カソードガス供給通路21は、燃料電池スタック1に供給するカソードガスが流れる通路である。カソードガス供給通路21は、一端がフィルタ22に接続され、他端が燃料電池スタック1のカソードガス入口孔に接続される。
【0019】
フィルタ22は、カソードガス供給通路21に取り込むカソードガス中の異物を取り除く。
【0020】
カソードコンプレッサ23は、カソードガス供給通路21に設けられる。カソードコンプレッサ23は、フィルタ22を介してカソードガスとしての空気(外気)をカソードガス供給通路21に取り込み、燃料電池スタック1に供給する。
【0021】
カソードガス排出通路24は、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスが流れる通路である。カソードガス排出通路24は、一端が燃料電池スタック1のカソードガス出口孔に接続され、他端が開口端となっている。
【0022】
アノードガス給排装置3は、燃料電池スタック1にアノードガスを供給するとともに、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスを、カソードガス排出通路24に排出する装置である。アノードガス給排装置3は、高圧タンク31と、アノードガス供給通路32と、減圧弁33と、アノードガス排出通路34と、パージ弁35と、を備える。
【0023】
高圧タンク31は、燃料電池スタック1に供給するアノードガスを高圧状態に保って貯蔵する。
【0024】
アノードガス供給通路32は、高圧タンク31から排出されるアノードガスを燃料電池スタック1に供給するための通路である。アノードガス供給通路32は、一端が高圧タンク31に接続され、他端が燃料電池スタック1のアノードガス入口孔に接続される。
【0025】
調圧弁33は、アノードガス供給通路32に設けられる。調圧弁33は、コントローラ8によって開閉制御されて、高圧タンク31からアノードガス供給通路32に流れ出したアノードガスの圧力を所望の圧力に調節する。
【0026】
アノードガス排出通路34は、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスが流れる通路である。アノードガス排出通路34は、一端が燃料電池スタック1のアノードガス出口孔に接続され、他端がカソードガス排出通路24に接続される。
【0027】
パージ弁35は、アノードガス排出通路34に設けられる。パージ弁35は、コントローラ8によって開閉制御され、アノードガス排出通路34からカソードガス排出通路24に排出するアノードオフガスの流量を制御する。
【0028】
スタック冷却装置4は、燃料電池スタック1を冷却し、燃料電池スタック1を発電に適した温度に保つ装置である。スタック冷却装置4は、冷却水循環通路41と、ラジエータ42と、バイパス通路43と、三方弁44と、循環ポンプ45と、PTCヒータ46と、水温センサ47と、を備える。
【0029】
冷却水循環通路41は、燃料電池スタック1を冷却するための冷却水が循環する通路である。
【0030】
ラジエータ42は、冷却水循環通路41に設けられる。ラジエータ42は、燃料電池スタック1から排出された冷却水を冷却する。
【0031】
バイパス通路43は、ラジエータ42をバイパスさせて冷却水を循環させることができるように、一端が冷却水循環通路41に接続され、他端が三方弁44に接続される。
【0032】
三方弁44は、ラジエータ42よりも下流側の冷却水循環通路41に設けられる。三方弁44は、冷却水の温度に応じて冷却水の循環経路を切り替える。具体的には、冷却水の温度が相対的に高いときは、燃料電池スタック1から排出された冷却水が、ラジエータ42を介して再び燃料電池スタック1に供給されるように冷却水の循環経路を切り替える。逆に、冷却水の温度が相対的に低いときは、燃料電池スタック1から排出された冷却水から排出された冷却水が、ラジエータ42を介さずにバイパス通路43を流れて再び燃料電池スタック1に供給されるように冷却水の循環経路を切り替える。
【0033】
循環ポンプ45は、三方弁44よりも下流側の冷却水循環通路41に設けられて、冷却水を循環させる。
【0034】
PTCヒータ46は、三方弁44と循環ポンプ45との間の冷却水循環通路41に設けられる。PTCヒータ46は、燃料電池スタック1の暖機時に通電されて、冷却水の温度を上昇させる。
【0035】
水温センサ47は、ラジエータ42よりも上流側の冷却水循環通路41に設けられる。水温センサ47は、燃料電池スタック1から排出された冷却水の温度(以下「スタック冷却水温」という。)を検出する。本実施形態では、スタック冷却水温を燃料電池スタック1の温度として使用する。
【0036】
電力系5は、電流センサ51と、電圧センサ52と、駆動モータ53と、インバータ54と、バッテリ55と、DC/DCコンバータ56と、を備える。
【0037】
電流センサ51は、燃料電池スタック1から取り出される電流(以下「出力電流」という。)を検出する。
【0038】
電圧センサ52は、アノード電極側出力端子11とカソード電極側出力端子12の間の端子間電圧(以下「出力電圧」という。)を検出する。
【0039】
駆動モータ53は、ロータに永久磁石を埋設し、ステータにステータコイルを巻き付けた三相交流同期モータである。駆動モータ53は、燃料電池スタック1及びバッテリ55から電力の供給を受けて回転駆動する電動機としての機能と、ロータが外力によって回転させられる車両の減速時にステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機としての機能と、を有する。
【0040】
インバータ54は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの複数の半導体スイッチから構成される。インバータ54の半導体スイッチは、コントローラ8によって開閉制御され、これにより直流電力が交流電力に、又は、交流電力が直流電力に変換される。インバータ54は、駆動モータ53を電動機として機能させるときは、燃料電池スタック1の発電電力とバッテリ55の出力電力との合成直流電力を三相交流電力に変換して駆動モータ53に供給する。一方で、駆動モータ53を発電機として機能させるときは、駆動モータ53の回生電力(三相交流電力)を直流電力に変換してバッテリ55に供給する。
【0041】
バッテリ55は、燃料電池スタック1の発電電力(出力電流×出力電圧)の余剰分及び駆動モータ53の回生電力を充電する。バッテリ55に充電された電力は、必要に応じてカソードコンプレッサ23やPTCヒータ46などの補機類及び駆動モータ53に供給される。
【0042】
DC/DCコンバータ56は、燃料電池スタック1の出力電圧を昇降圧させる双方向性の電圧変換機である。DC/DCコンバータ56によって燃料電池スタック1の出力電圧を制御することで、燃料電池スタック1の出力電流、ひいては発電電力が制御される。
【0043】
電力系冷却装置6は、電力系5の各電気部品を冷却する装置であって、電力系冷却水循環通路61と、電力系ラジエータ62と、電力系循環ポンプ63と、を備える。
【0044】
電力系冷却水循環通路61は、駆動モータ53、インバータ54、DC/DCコンバータ56及びバッテリ55を冷却するための冷却水が循環する通路である。
【0045】
電力系ラジエータ62は、電力系冷却水循環通路61に設けられる。電力系ラジエータ62は、電力系冷却水循環通路61を循環する冷却水を冷却する。
【0046】
電力系循環ポンプ63は、電力系冷却水循環通路61に設けられて、冷却水を循環させる。
【0047】
パークロック装置7は、駆動モータ53の出力軸531に設けられる。パークロック装置7は、ドライバによって選択されるシフトレバーの位置が駐車レンジ(Pレンジ)のときに、駆動モータ53の出力軸531が回転しないように、駆動モータ53の出力軸531を機械的に固定する装置である。パークロック装置7は、駆動モータ53の出力軸531と一体となって回転するパーキングギヤに、爪部材(パーキングポウル)を噛ませることで、駆動モータ53の出力軸531を機械的に固定する。
【0048】
コントローラ8は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ8には、前述した水温センサ47、電流センサ51及び電圧センサ52の他にも、外気温を検出する外気温センサ81や、シフトレバーの位置を検出するシフトレバー位置検出センサ82、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルストロークセンサ83、バッテリ55の充電量を検出するSOCセンサ84などの燃料電池システム100を制御するために必要な各種センサからの信号が入力される。
【0049】
コントローラ8は、これらの入力信号に基づいて、燃料電池スタック1の暖機制御を実施する。
【0050】
図2は、燃料電池スタック1の温度と、燃料電池スタック1の電流電圧特性(以下「I−V特性」という。)と、の関係を示す図である。
【0051】
図2に示すように、燃料電池スタック1のI−V特性は燃料電池スタック1の温度に応じて変化し、燃料電池スタック1の温度が低い場合ほど、同じ電流値の出力電流を燃料電池から取り出したときの出力電圧は低くなる。すなわち、燃料電池の温度が低いときほど、燃料電池の発電効率は低下する。
【0052】
燃料電池スタック1の発電効率が低下した状態で車両の走行を許可してしまうと、走行時に駆動モータ53の要求電力が大きくなって燃料電池スタック1の出力電流が増加したときに、燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回るおそれがある。ここで最低電圧は、予め実験等によって設定される電圧値であって、これ以上燃料電池スタック1の出力電圧が下回ってしまうと、燃料電池の電解質膜の劣化が促進される電圧値である。
【0053】
したがって、燃料電池システム100の起動後は、早期に燃料電池スタック1を暖機して、燃料電池スタック1のI−V特性が、駆動モータ53の要求電力が大きくなっても燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回ることのないI−V特性になるまで、燃料電池スタック1の温度を上昇させる必要がある。
【0054】
ここで、燃料電池スタック1の暖機速度を上げるには、暖機時における燃料電池スタック1の出力電流を増やして発電電力を大きくすることが有効である。以下、その理由について説明する。
【0055】
アノードガスとしての水素が有する化学エネルギを全て電気エネルギに変換できた場合には、燃料電池スタック1の出力電圧は、図2に示す理論電圧となる。
【0056】
しかしながら、燃料電池の内部では、抵抗分極や活性化分極、拡散分極などの様々な損失が発生するため、化学エネルギを全て電気エネルギに変換することはできず、化学エネルギの一部は熱エネルギとなって外部へ放出される。そのため、図2に示すように、損失として外部へ放出される熱エネルギの分だけ燃料電池スタック1の出力電圧が理論電圧よりも低くなる。
【0057】
そして、図2に示すように、燃料電池スタック1は、燃料電池スタック1の温度にかかわらず、出力電流が増加するほど出力電圧が低下する特性(I−V特性)を有している。
【0058】
そのため、燃料電池スタック1の出力電流を増やすほど外部へ放出される熱エネルギが大きくなるので、燃料電池スタック1の出力電流を増やすほど燃料電池スタック1の暖機速度が上がるのである。
【0059】
したがって、燃料電池スタック1の暖機時には、暖機速度を少しでも上げるために、可能な限り出力電流を増加させたい。しかしながら、走行許可の出ていない暖機時に通電可能な電気部品は、カソードコンプレッサ23やPTCヒータ46などの補機に限られるため、補機に通電する電流以上の出力電流を燃料電池スタック1から取り出すことができなかった。また、燃料電池の電解質膜の劣化を抑制するためには、燃料電池スタック1の出力電圧が予め定められた最低電圧を下回らないようにする必要もある。
【0060】
そこで本実施形態では、燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回らないように、暖機時にこれまで通電していなかった駆動モータ53に対しても通電することにした。これにより、燃料電池スタック1の出力電流を増加させて、暖機速度を上げることができる。以下、この本実施形態による暖機制御について説明する。
【0061】
図3は、本実施形態による暖機制御について説明するフローチャートである。コントローラ8は、本ルーチンを所定時間(例えば10ms)ごとに繰り返し実行する。
【0062】
ステップS1において、コントローラ8は、燃料電池スタック1の暖機が必要か否かを判定する。具体的には、水温センサ47によって検出されたスタック冷却水温が所定の暖機完了温度より低いか否かを判定する。この暖機完了温度は、走行許可を出すことのできる温度であって、燃料電池システム100の特性に応じて適時設定されるものである。コントローラ8は、スタック冷却水温が暖機完了温度よりも低ければステップS2の処理を行う。一方で、スタック冷却水温が暖機完了温度以上であれば今回の処理を終了する。
【0063】
ステップS2において、コントローラ8は、ドライバによって選択されるシフトレバーの位置が駐車レンジか否かを判定する。コントローラ8は、シフトレバー位置検出センサ72によって検出されたシフトレバーの位置が駐車レンジであればステップS3の処理を行う。一方で、シフトレバーの位置が駐車レンジ以外の走行レンジ(Dレンジ)や後退走行レンジ(Rレンジ)、中立レンジ(Nレンジ)であれば、ステップS7の処理を行う。
【0064】
ステップS3において、コントローラ8は、暖機時に駆動モータ53に供給する電力(以下「駆動モータ供給電力」という。)の算出処理を実施する。駆動モータ供給電力算出処理については、図4を参照して後述する。
【0065】
ステップS4において、コントローラ8は、駆動モータ53に駆動モータ供給電力を供給する。具体的には、燃料電池スタック1の発電電力が、補機(カソードコンプレッサ23及びPTCヒータ46)の消費電力と駆動モータ供給電力との総和となるように、DC/DCコンバータ56によって燃料電池スタック1の出力電圧を制御し、駆動モータ53に駆動モータ供給電力を供給する。
【0066】
このときコントローラ8は同時に、駆動モータ53が回転しないようにインバータ54の動作を制御する。具体的には、レゾルバ等のセンサによって駆動モータ53のロータの位置を検出し、磁界が駆動モータ53内で交番しないようにステータコイルに電流を流す。
【0067】
ステップS5において、コントローラ8は、駆動モータ53の温度を推定する推定駆動モータ温度算出処理を実施する。推定駆動モータ温度算出処理については、図8を参照して後述する。
【0068】
ステップS6において、コントローラ8は、インバータ54の温度を推定する推定インバータ温度算出処理を実施する。推定インバータ温度算出処理については、図10を参照して後述する。
【0069】
ステップS7において、コントローラ8は、駆動モータ53への電力供給を禁止する。
【0070】
図4は、駆動モータ供給電力算出処理について説明するフローチャートである。
【0071】
ステップS31において、コントローラ8は、電流センサ51で検出した出力電流と電圧センサ52で検出した出力電圧とを乗算して、燃料電池スタック1の発電電力を算出する。
【0072】
ステップS32において、コントローラ8は、電圧センサ52で検出した出力電圧を燃料電池スタック1の燃料電池の枚数で割ることで、各燃料電池の電圧の平均値(以下「平均セル電圧」という。)を算出する。
【0073】
ステップS33において、コントローラ8は、後述する図5のマップを参照して、燃料電池スタック1の発電電力と平均セル電圧とに基づいて、単位時間(演算周期)当たりの燃料電池スタック1の発熱量を算出する。
【0074】
ステップS34において、コントローラ8は、算出した燃料電池スタック1の発熱量を、予め定められた燃料電池スタック1の熱容量で割ることで、燃料電池スタック1の昇温速度を算出する。
【0075】
ステップS35において、コントローラ8は、所定の暖機完了温度とスタック冷却水温との温度差を算出する。
【0076】
ステップS36において、コントローラ8は、暖機完了温度とスタック冷却水温との温度差を昇温速度で割ることで、暖機が完了するまでに必要な時間(以下「暖機完了予測時間」)、すなわち、ステック冷却水温が暖機完了温度まで上昇するのに必要な時間を算出する。
【0077】
ステップS37において、コントローラ8は、後述する図6のマップを参照し、暖機完了予測時間と推定駆動モータ温度とに基づいて、暖機完了予測時間内に駆動モータ53の温度が所定の許容駆動モータ温度を超えない範囲で駆動モータ53に供給可能な最大電力(以下「第1最大駆動モータ供給電力」という。)を算出する。この第1最大駆動モータ供給電力は、換言すれば、暖機完了予測時間が経過したときに、駆動モータ53の温度を所定の許容駆動モータ温度まで上昇させるために駆動モータ53に供給しなければならない電力である。
【0078】
なお、許容駆動モータ温度は、駆動モータ53のステータコイルが劣化するおそれのある温度よりもやや低い温度であり、駆動モータ53の特性に応じて適宜設定される温度である。また、推定駆動モータ温度の初期値は、外気温センサ71によって検出された外気温に設定される。
【0079】
ステップS38において、コントローラ8は、後述する図7のマップを参照し、暖機完了予測時間と推定インバータ温度とに基づいて、暖機完了予測時間内にインバータ54の温度が所定の許容インバータ温度を超えない範囲で駆動モータ53に供給可能な最大電力(以下「第2最大駆動モータ供給電力」という。)を算出する。この第2最大駆動モータ供給電力は、換言すれば、暖機完了予測時間が経過したときに、インバータ54の温度を所定の許容インバータ温度まで上昇させるために駆動モータ53に供給しなければならない電力である。
【0080】
なお、許容インバータ温度は、インバータ54の構成部品である半導体スイッチが劣化するおそれのある温度よりもやや低い温度であり、インバータ54の特性に応じて適宜設定される温度である。また、推定インバータ温度の初期値は、外気温センサ71によって検出された外気温に設定される。
【0081】
ステップS39において、コントローラ8は、第1最大駆動モータ供給電力と第2最大駆動モータ供給電力との大小を比較し、小さいほうを、駆動モータ53及びインバータ54を劣化させることなく駆動モータ53に供給することができる最大電力(以下「最大駆動モータ供給電力」)として設定する。
【0082】
ステップS40において、コントローラ8は、最大駆動モータ供給電力で仮に駆動モータ53を回転駆動させたときに得られるトルク(以下「想定駆動トルク」という。)が、所定の上限トルク以上か否かを判定する。所定の上限トルクは、パークロック装置7によって駆動モータ53の出力軸531を機械的に固定した状態でそれ以上のトルクが駆動モータ53の出力軸531に作用すると、固定状態が解除されたり、又は、パークロック装置7を劣化させてしまうおそれのあるトルクである。コントローラ8は、想定駆動トルクが上限トルク以上であれば、ステップS41の処理を行う。一方で、想定駆動トルクが上限トルクよりも小さければ、ステップS42の処理を行う。
【0083】
ステップS41において、コントローラ8は、駆動モータ53を回転駆動させたときに得られるトルクが上限トルクとなる予め定められた所定の制限電力を、基本駆動モータ供給電力として設定する。これは、想定駆動トルクが上限トルク以上の場合に、最大駆動モータ供給電力を駆動モータ53に供給してしまうと、誤作動によって駆動モータ53が回転駆動したときに、車両が誤発進してしまうおそれがあるからである。
【0084】
ステップS42において、コントローラ8は、最大駆動モータ供給電力を基本駆動モータ供給電力として設定する。
【0085】
ステップS43において、コントローラ8は、スタック冷却水温に基づいて燃料電池スタック1の現在のI−V特性を呼び出し、呼び出したI−V特性に基づいて燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回らない発電電力の上限(以下「上限発電電力」という。)を算出する。
【0086】
ステップS44において、コントローラ8は、基本駆動モータ供給電力と補機の消費電力との総和、すなわち燃料電池スタック1の発電電力の要求値(以下「要求発電電力」という。)を算出する。
【0087】
ステップS45において、コントローラ8は、要求発電電力が上限発電電力以下か否かを判定する。コントローラ8は、要求発電電力が上限出力以下であればステップS42の処理を行う。一方で、要求発電電力が上限発電電力よりも大きければステップS43の処理を行う。
【0088】
ステップS46において、コントローラ8は、駆動モータ供給電力を、基本駆動モータ供給電力に設定する。これは、要求発電電力が上限出力以下であれば、駆動モータ53に基本駆動モータ供給電力を供給しても、燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回ることがないからである。
【0089】
ステップS47において、コントローラ8は、駆動モータ供給電力を、上限発電電力から補機の消費電力を引いた電力に設定する。これは、要求発電電力が上限出力よりも大きければ、駆動モータ53に基本駆動モータ供給電力を供給してしまうと、燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回るおそれがあるからである。
【0090】
図5は、燃料電池スタック1の発電電力と平均セル電圧とに基づいて、単位時間(演算周期)当たりの燃料電池スタック1の発熱量を算出するマップである。
【0091】
図5に示すように、燃料電池スタック1の発熱量は、燃料電池スタックの発電電力が大きくなるほど、また、平均セル電圧が低くなるほど、大きくなる。
【0092】
図6は、暖機完了予測時間と推定駆動モータ温度とに基づいて、第1最大駆動モータ供給電力を逐次算出するマップである。
【0093】
図6のマップに示すように、第1最大駆動モータ供給電力は、暖機完了予測時間が長くなるほど大きくなるように設定される。このように、暖機完了予測時間が長くなるほど第1最大駆動モータ供給電力が大きくなるように逐次修正することで、燃料電池スタック1の発電電力を大きくして暖機速度が速くなる(暖機完了予測時間が短くなる)ようにしている。
【0094】
また、第1最大駆動モータ供給電力は、推定駆動モータ温度が低くなるほど大きくなるように設定される。このように、推定駆動モータ53の温度が許容駆動モータ温度に到達すまでに余裕があるとき、すなわち推定駆動モータ53の温度が低いときほど第1最大駆動モータ供給電力が大きくなるように逐次修正することで、燃料電池スタック1の発電電力を大きくして暖機速度が速くなるようにしている。
【0095】
図7は、暖機完了予測時間と推定インバータ温度とに基づいて、第2最大駆動モータ供給電力を逐次算出するマップである。
【0096】
図7のマップに示すように、第2最大駆動モータ供給電力も、第1最大駆動モータ供給電力と同様に、暖機完了予測時間が長くなるほど、また、推定インバータ温度が低くなるほど大きくなるように設定される。このように設定した理由も同様である。
【0097】
図8は、推定駆動モータ温度算出処理について説明するフローチャートである。
【0098】
ステップS51において、コントローラ8は、駆動モータ53の初期温度を読み込む。本実施形態では、燃料電池システム100を起動したときの外気温を、駆動モータ53の初期温度として読み込む。
【0099】
ステップS52において、コントローラ8は、駆動モータ供給電力の積算値(以下「電力積算値」という。)を算出する。
【0100】
ステップS53において、コントローラ8は、図9のテーブルを参照し、電力積算値に基づいて駆動モータ53の上昇温度を算出する。
【0101】
ステップS54において、コントローラ8は、駆動モータ53の初期温度に駆動モータ53の上昇温度を足して、推定駆動モータ温度を算出する。
【0102】
図10は、推定インバータ温度算出処理について説明するフローチャートである。
【0103】
ステップS61において、コントローラ8は、インバータ54の初期温度を読み込む。本実施形態では、燃料電池システム100を起動したときの外気温を、インバータ54の初期温度として読み込む。
【0104】
ステップS62において、コントローラ8は、電力積算値を算出する。
【0105】
ステップS63において、コントローラ8は、図11のテーブルを参照し、電力積算値に基づいて、インバータ54の上昇温度を算出する。
【0106】
ステップS64において、コントローラ8は、インバータ54の初期温度にインバータ54の上昇温度を足して、推定インバータ温度を算出する。
【0107】
以上説明した本実施形態によれば、燃料電池スタック1の暖機時にこれまで燃料電池スタック1の発電電力を供給していなかった駆動モータ53に対しても、駆動モータ53が回転しないように燃料電池スタック1の発電電力を供給することとした。
【0108】
これにより、燃料電池スタック1の暖機時に通電可能な電気部品として、補機のほかに駆動モータ53が追加されることになるので、燃料電池スタック1の出力電流を増大させることができ、暖機速度を上げることができる。
【0109】
また、本実施形態によれば、燃料電池スタック1の発電電力に応じて暖機完了予測時間を逐次算出し、暖機完了予測時間と推定駆動モータ温度とに基づいて、暖機完了予測時間内に駆動モータ53の温度が所定の許容駆動モータ温度を超えない範囲で駆動モータ53に供給可能な最大電力(第1最大駆動モータ供給電力)を算出することとした。また、暖機完了予測時間と推定インバータ温度とに基づいて、暖機完了予測時間内にインバータ54の温度が所定の許容インバータ温度を超えない範囲で駆動モータ53に供給可能な最大電力(第2最大駆動モータ供給電力)を算出することとした。
【0110】
そして、第1最大駆動モータ供給電力と第2駆動モータ供給電力との大小を比較し、小さい方を、暖機時に駆動モータ53に供給する最大電力(最大駆動モータ供給電力)として設定することとした。
【0111】
これにより、暖機時に駆動モータ53に供給される電力値を、駆動モータ53及びインバータ54を劣化させることのない最大の電力値とすることができる。そのため、駆動モータ53及びインバータ54の劣化を抑制しつつ、燃料電池スタック1の暖機を可能な限り早く終了させることができる。
【0112】
また、本実施形態によれば、最大駆動モータ供給電力で仮に駆動モータ53を回転駆動させたときに得られるトルク(想定駆動トルク)が、パークロック装置7による駆動モータ53の出力軸531の固定力に応じて定まる所定の上限トルクよりも大きいときは、駆動モータ53に供給する電力を制限することとした。具体的には、駆動モータ53に供給する電力の最大値を、駆動モータ53を回転駆動させたときに得られるトルクが上限トルクとなる予め定められた所定の制限電力にすることとした。
【0113】
これにより、誤って駆動モータ53が回転駆動された場合であっても、パークロック装置7の固定力によって、車両の誤発進を防ぐことができる。
【0114】
また、本実施形態によれば、スタック冷却水温から現在のI−V特性を呼び出し、そのI−V特性から燃料電池スタック1の上限発電電力を算出することとした。そして、基本駆動モータ供給電力(最大駆動モータ供給電力又は制限電力)と、暖機時に駆動される補機(カソードコンプレッサ23及びPTCヒータ46)の消費電力と、の総和である要求発電電力が、上限発電電力よりも大きいときは、駆動モータ53に供給する電力をさらに制限することとした。具体的には、駆動モータ53に供給する電力の最大値を、上限発電電力から補機の消費電力から引いた電力値に制限することとした。
【0115】
これにより、燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回るのを抑制できるので、電解質膜の劣化を抑制することができる。
【0116】
また、本実施形態によれば、パークロック装置7によって駆動モータ53の出力軸531が固定されていないとき、すなわち、シフトレバーの位置が駐車レンジ以外のレンジであるときは、駆動モータ53への電力供給を禁止することとした。
【0117】
これにより、車両の誤発進を確実に防ぐことができる。
【0118】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0119】
例えば、上記実施形態では、駆動モータ53として同期モータを使用したが、誘導モータであっても良い。この場合、駆動モータ53が回転しないようにするには、モータ内で磁界が交番しないように巻線に電流が流れるようにインバータ54を制御すれば良い。
【0120】
また、上記実施形態では、駆動モータ53及びインバータ54の温度をそれぞれ推定したが、実際にセンサ等によって検出しても良い。
【0121】
また、上記実施形態では、上限トルクをパークロック装置7による出力軸531の固定力に応じて設定していたが、フットブレーキ等のその他の制動装置による固定力を考慮して設定しても良い。
【符号の説明】
【0122】
1 燃料電池スタック(燃料電池)
7 パークロック装置(固定装置)
53 駆動モータ
54 インバータ(駆動モータ制御装置)
100 燃料電池システム
S2 固定判定手段
S3 暖機時駆動モータ供給電力算出手段
S4 暖機制御手段、駆動モータ制御手段
S5 温度検出手段
S6 温度検出手段
S7 暖機時電力供給禁止手段
S43 上限発電電力算出手段
S45 判定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムとして、燃料電池の暖機時に、補機に電力を供給して暖機を促進させるものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−512068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池の暖機時においては、燃料電池の発電電力を増大させるほど熱損失が大きくなって暖機性能が向上する。しかしながら、暖機時に通電可能な補機はカソードコンプレッサや冷却水の温度を上昇させるヒータなどに限られており、それらの補機が消費する電力以上の電力を発電することができなかった。そのため、従来の燃料電池システムのように補機に対してのみ電力を供給していたのでは、十分な暖機性能を得ることができないという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであり、暖機時における燃料電池の発電電力を増大させて、暖機性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、本発明は、アノードガス及びカソードガスを燃料電池に供給して発電させ、発電電力を車両の駆動モータに供給する燃料電池システムである。そして、燃料電池の暖機時に、駆動モータに発電電力を供給して暖機を促進させる暖機制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料電池の暖機時にこれまで燃料電池の発電電力を供給していなかった駆動モータに対しても、燃料電池の発電電力を供給することとした。これにより、燃料電池の暖機時に通電可能な電気部品として、補機のほかに駆動モータが追加されることになるので、燃料電池の発電電力を増大させることができ、暖機性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態による燃料電池システムの概略図である。
【図2】燃料電池スタックの温度と、燃料電池スタックの電流電圧特性と、の関係を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による暖機制御について説明するフローチャートである。
【図4】駆動モータ供給電力算出処理について説明するフローチャートである。
【図5】燃料電池スタックの出力電力と平均セル電圧とに基づいて、単位時間当たりの燃料電池スタックの発熱量を算出するマップである。
【図6】暖機完了予測時間と推定駆動モータ温度とに基づいて、第1最大駆動モータ供給電力を逐次算出するマップである。
【図7】暖機完了予測時間と推定インバータ温度とに基づいて、第2最大駆動モータ供給電力を逐次算出するマップである。
【図8】推定駆動モータ温度算出処理について説明するフローチャートである。
【図9】電力積算値に基づいて駆動モータの上昇温度を算出するテーブルである。
【図10】推定インバータ温度算出処理について説明するフローチャートである。
【図11】電力積算値に基づいてインバータの上昇温度を算出するテーブルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
燃料電池は電解質膜をアノード電極(燃料極)とカソード電極(酸化剤極)とによって挟み、アノード電極に水素を含有するアノードガス(燃料ガス)、カソード電極に酸素を含有するカソードガス(酸化剤ガス)を供給することによって発電する。アノード電極及びカソード電極の両電極において進行する電極反応は以下の通りである。
【0011】
アノード電極 : 2H2 →4H+ +4e- …(1)
カソード電極 : 4H+ +4e- +O2 →2H2O …(2)
【0012】
この(1)(2)の電極反応によって燃料電池は1ボルト程度の起電力を生じる。
【0013】
燃料電池を自動車用動力源として使用する場合には、要求される電力が大きいため、数百枚の燃料電池を積層した燃料電池スタックとして使用する。そして、燃料電池スタックにアノードガス及びカソードガスを供給する燃料電池システムを構成して、車両駆動用の電力を取り出す。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による燃料電池システム100の概略図である。
【0015】
燃料電池システム100は、燃料電池スタック1と、カソードガス給排装置2と、アノードガス給排装置3と、スタック冷却装置4と、電力系5と、電力系冷却装置6と、パークロック装置7と、コントローラ8と、を備える。
【0016】
燃料電池スタック1は、数百枚の燃料電池を積層したものであり、アノードガス及びカソードガスの供給を受けて、車両の駆動に必要な電力を発電する。燃料電池スタック1は、電力を取り出す端子として、アノード電極側出力端子11と、カソード電極側出力端子12と、を備える。
【0017】
カソードガス給排装置2は、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するとともに、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスを外気に排出する装置である。カソードガス給排装置2は、カソードガス供給通路21と、フィルタ22と、カソードコンプレッサ23と、カソードガス排出通路24と、を備える。
【0018】
カソードガス供給通路21は、燃料電池スタック1に供給するカソードガスが流れる通路である。カソードガス供給通路21は、一端がフィルタ22に接続され、他端が燃料電池スタック1のカソードガス入口孔に接続される。
【0019】
フィルタ22は、カソードガス供給通路21に取り込むカソードガス中の異物を取り除く。
【0020】
カソードコンプレッサ23は、カソードガス供給通路21に設けられる。カソードコンプレッサ23は、フィルタ22を介してカソードガスとしての空気(外気)をカソードガス供給通路21に取り込み、燃料電池スタック1に供給する。
【0021】
カソードガス排出通路24は、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスが流れる通路である。カソードガス排出通路24は、一端が燃料電池スタック1のカソードガス出口孔に接続され、他端が開口端となっている。
【0022】
アノードガス給排装置3は、燃料電池スタック1にアノードガスを供給するとともに、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスを、カソードガス排出通路24に排出する装置である。アノードガス給排装置3は、高圧タンク31と、アノードガス供給通路32と、減圧弁33と、アノードガス排出通路34と、パージ弁35と、を備える。
【0023】
高圧タンク31は、燃料電池スタック1に供給するアノードガスを高圧状態に保って貯蔵する。
【0024】
アノードガス供給通路32は、高圧タンク31から排出されるアノードガスを燃料電池スタック1に供給するための通路である。アノードガス供給通路32は、一端が高圧タンク31に接続され、他端が燃料電池スタック1のアノードガス入口孔に接続される。
【0025】
調圧弁33は、アノードガス供給通路32に設けられる。調圧弁33は、コントローラ8によって開閉制御されて、高圧タンク31からアノードガス供給通路32に流れ出したアノードガスの圧力を所望の圧力に調節する。
【0026】
アノードガス排出通路34は、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスが流れる通路である。アノードガス排出通路34は、一端が燃料電池スタック1のアノードガス出口孔に接続され、他端がカソードガス排出通路24に接続される。
【0027】
パージ弁35は、アノードガス排出通路34に設けられる。パージ弁35は、コントローラ8によって開閉制御され、アノードガス排出通路34からカソードガス排出通路24に排出するアノードオフガスの流量を制御する。
【0028】
スタック冷却装置4は、燃料電池スタック1を冷却し、燃料電池スタック1を発電に適した温度に保つ装置である。スタック冷却装置4は、冷却水循環通路41と、ラジエータ42と、バイパス通路43と、三方弁44と、循環ポンプ45と、PTCヒータ46と、水温センサ47と、を備える。
【0029】
冷却水循環通路41は、燃料電池スタック1を冷却するための冷却水が循環する通路である。
【0030】
ラジエータ42は、冷却水循環通路41に設けられる。ラジエータ42は、燃料電池スタック1から排出された冷却水を冷却する。
【0031】
バイパス通路43は、ラジエータ42をバイパスさせて冷却水を循環させることができるように、一端が冷却水循環通路41に接続され、他端が三方弁44に接続される。
【0032】
三方弁44は、ラジエータ42よりも下流側の冷却水循環通路41に設けられる。三方弁44は、冷却水の温度に応じて冷却水の循環経路を切り替える。具体的には、冷却水の温度が相対的に高いときは、燃料電池スタック1から排出された冷却水が、ラジエータ42を介して再び燃料電池スタック1に供給されるように冷却水の循環経路を切り替える。逆に、冷却水の温度が相対的に低いときは、燃料電池スタック1から排出された冷却水から排出された冷却水が、ラジエータ42を介さずにバイパス通路43を流れて再び燃料電池スタック1に供給されるように冷却水の循環経路を切り替える。
【0033】
循環ポンプ45は、三方弁44よりも下流側の冷却水循環通路41に設けられて、冷却水を循環させる。
【0034】
PTCヒータ46は、三方弁44と循環ポンプ45との間の冷却水循環通路41に設けられる。PTCヒータ46は、燃料電池スタック1の暖機時に通電されて、冷却水の温度を上昇させる。
【0035】
水温センサ47は、ラジエータ42よりも上流側の冷却水循環通路41に設けられる。水温センサ47は、燃料電池スタック1から排出された冷却水の温度(以下「スタック冷却水温」という。)を検出する。本実施形態では、スタック冷却水温を燃料電池スタック1の温度として使用する。
【0036】
電力系5は、電流センサ51と、電圧センサ52と、駆動モータ53と、インバータ54と、バッテリ55と、DC/DCコンバータ56と、を備える。
【0037】
電流センサ51は、燃料電池スタック1から取り出される電流(以下「出力電流」という。)を検出する。
【0038】
電圧センサ52は、アノード電極側出力端子11とカソード電極側出力端子12の間の端子間電圧(以下「出力電圧」という。)を検出する。
【0039】
駆動モータ53は、ロータに永久磁石を埋設し、ステータにステータコイルを巻き付けた三相交流同期モータである。駆動モータ53は、燃料電池スタック1及びバッテリ55から電力の供給を受けて回転駆動する電動機としての機能と、ロータが外力によって回転させられる車両の減速時にステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機としての機能と、を有する。
【0040】
インバータ54は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの複数の半導体スイッチから構成される。インバータ54の半導体スイッチは、コントローラ8によって開閉制御され、これにより直流電力が交流電力に、又は、交流電力が直流電力に変換される。インバータ54は、駆動モータ53を電動機として機能させるときは、燃料電池スタック1の発電電力とバッテリ55の出力電力との合成直流電力を三相交流電力に変換して駆動モータ53に供給する。一方で、駆動モータ53を発電機として機能させるときは、駆動モータ53の回生電力(三相交流電力)を直流電力に変換してバッテリ55に供給する。
【0041】
バッテリ55は、燃料電池スタック1の発電電力(出力電流×出力電圧)の余剰分及び駆動モータ53の回生電力を充電する。バッテリ55に充電された電力は、必要に応じてカソードコンプレッサ23やPTCヒータ46などの補機類及び駆動モータ53に供給される。
【0042】
DC/DCコンバータ56は、燃料電池スタック1の出力電圧を昇降圧させる双方向性の電圧変換機である。DC/DCコンバータ56によって燃料電池スタック1の出力電圧を制御することで、燃料電池スタック1の出力電流、ひいては発電電力が制御される。
【0043】
電力系冷却装置6は、電力系5の各電気部品を冷却する装置であって、電力系冷却水循環通路61と、電力系ラジエータ62と、電力系循環ポンプ63と、を備える。
【0044】
電力系冷却水循環通路61は、駆動モータ53、インバータ54、DC/DCコンバータ56及びバッテリ55を冷却するための冷却水が循環する通路である。
【0045】
電力系ラジエータ62は、電力系冷却水循環通路61に設けられる。電力系ラジエータ62は、電力系冷却水循環通路61を循環する冷却水を冷却する。
【0046】
電力系循環ポンプ63は、電力系冷却水循環通路61に設けられて、冷却水を循環させる。
【0047】
パークロック装置7は、駆動モータ53の出力軸531に設けられる。パークロック装置7は、ドライバによって選択されるシフトレバーの位置が駐車レンジ(Pレンジ)のときに、駆動モータ53の出力軸531が回転しないように、駆動モータ53の出力軸531を機械的に固定する装置である。パークロック装置7は、駆動モータ53の出力軸531と一体となって回転するパーキングギヤに、爪部材(パーキングポウル)を噛ませることで、駆動モータ53の出力軸531を機械的に固定する。
【0048】
コントローラ8は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ8には、前述した水温センサ47、電流センサ51及び電圧センサ52の他にも、外気温を検出する外気温センサ81や、シフトレバーの位置を検出するシフトレバー位置検出センサ82、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルストロークセンサ83、バッテリ55の充電量を検出するSOCセンサ84などの燃料電池システム100を制御するために必要な各種センサからの信号が入力される。
【0049】
コントローラ8は、これらの入力信号に基づいて、燃料電池スタック1の暖機制御を実施する。
【0050】
図2は、燃料電池スタック1の温度と、燃料電池スタック1の電流電圧特性(以下「I−V特性」という。)と、の関係を示す図である。
【0051】
図2に示すように、燃料電池スタック1のI−V特性は燃料電池スタック1の温度に応じて変化し、燃料電池スタック1の温度が低い場合ほど、同じ電流値の出力電流を燃料電池から取り出したときの出力電圧は低くなる。すなわち、燃料電池の温度が低いときほど、燃料電池の発電効率は低下する。
【0052】
燃料電池スタック1の発電効率が低下した状態で車両の走行を許可してしまうと、走行時に駆動モータ53の要求電力が大きくなって燃料電池スタック1の出力電流が増加したときに、燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回るおそれがある。ここで最低電圧は、予め実験等によって設定される電圧値であって、これ以上燃料電池スタック1の出力電圧が下回ってしまうと、燃料電池の電解質膜の劣化が促進される電圧値である。
【0053】
したがって、燃料電池システム100の起動後は、早期に燃料電池スタック1を暖機して、燃料電池スタック1のI−V特性が、駆動モータ53の要求電力が大きくなっても燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回ることのないI−V特性になるまで、燃料電池スタック1の温度を上昇させる必要がある。
【0054】
ここで、燃料電池スタック1の暖機速度を上げるには、暖機時における燃料電池スタック1の出力電流を増やして発電電力を大きくすることが有効である。以下、その理由について説明する。
【0055】
アノードガスとしての水素が有する化学エネルギを全て電気エネルギに変換できた場合には、燃料電池スタック1の出力電圧は、図2に示す理論電圧となる。
【0056】
しかしながら、燃料電池の内部では、抵抗分極や活性化分極、拡散分極などの様々な損失が発生するため、化学エネルギを全て電気エネルギに変換することはできず、化学エネルギの一部は熱エネルギとなって外部へ放出される。そのため、図2に示すように、損失として外部へ放出される熱エネルギの分だけ燃料電池スタック1の出力電圧が理論電圧よりも低くなる。
【0057】
そして、図2に示すように、燃料電池スタック1は、燃料電池スタック1の温度にかかわらず、出力電流が増加するほど出力電圧が低下する特性(I−V特性)を有している。
【0058】
そのため、燃料電池スタック1の出力電流を増やすほど外部へ放出される熱エネルギが大きくなるので、燃料電池スタック1の出力電流を増やすほど燃料電池スタック1の暖機速度が上がるのである。
【0059】
したがって、燃料電池スタック1の暖機時には、暖機速度を少しでも上げるために、可能な限り出力電流を増加させたい。しかしながら、走行許可の出ていない暖機時に通電可能な電気部品は、カソードコンプレッサ23やPTCヒータ46などの補機に限られるため、補機に通電する電流以上の出力電流を燃料電池スタック1から取り出すことができなかった。また、燃料電池の電解質膜の劣化を抑制するためには、燃料電池スタック1の出力電圧が予め定められた最低電圧を下回らないようにする必要もある。
【0060】
そこで本実施形態では、燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回らないように、暖機時にこれまで通電していなかった駆動モータ53に対しても通電することにした。これにより、燃料電池スタック1の出力電流を増加させて、暖機速度を上げることができる。以下、この本実施形態による暖機制御について説明する。
【0061】
図3は、本実施形態による暖機制御について説明するフローチャートである。コントローラ8は、本ルーチンを所定時間(例えば10ms)ごとに繰り返し実行する。
【0062】
ステップS1において、コントローラ8は、燃料電池スタック1の暖機が必要か否かを判定する。具体的には、水温センサ47によって検出されたスタック冷却水温が所定の暖機完了温度より低いか否かを判定する。この暖機完了温度は、走行許可を出すことのできる温度であって、燃料電池システム100の特性に応じて適時設定されるものである。コントローラ8は、スタック冷却水温が暖機完了温度よりも低ければステップS2の処理を行う。一方で、スタック冷却水温が暖機完了温度以上であれば今回の処理を終了する。
【0063】
ステップS2において、コントローラ8は、ドライバによって選択されるシフトレバーの位置が駐車レンジか否かを判定する。コントローラ8は、シフトレバー位置検出センサ72によって検出されたシフトレバーの位置が駐車レンジであればステップS3の処理を行う。一方で、シフトレバーの位置が駐車レンジ以外の走行レンジ(Dレンジ)や後退走行レンジ(Rレンジ)、中立レンジ(Nレンジ)であれば、ステップS7の処理を行う。
【0064】
ステップS3において、コントローラ8は、暖機時に駆動モータ53に供給する電力(以下「駆動モータ供給電力」という。)の算出処理を実施する。駆動モータ供給電力算出処理については、図4を参照して後述する。
【0065】
ステップS4において、コントローラ8は、駆動モータ53に駆動モータ供給電力を供給する。具体的には、燃料電池スタック1の発電電力が、補機(カソードコンプレッサ23及びPTCヒータ46)の消費電力と駆動モータ供給電力との総和となるように、DC/DCコンバータ56によって燃料電池スタック1の出力電圧を制御し、駆動モータ53に駆動モータ供給電力を供給する。
【0066】
このときコントローラ8は同時に、駆動モータ53が回転しないようにインバータ54の動作を制御する。具体的には、レゾルバ等のセンサによって駆動モータ53のロータの位置を検出し、磁界が駆動モータ53内で交番しないようにステータコイルに電流を流す。
【0067】
ステップS5において、コントローラ8は、駆動モータ53の温度を推定する推定駆動モータ温度算出処理を実施する。推定駆動モータ温度算出処理については、図8を参照して後述する。
【0068】
ステップS6において、コントローラ8は、インバータ54の温度を推定する推定インバータ温度算出処理を実施する。推定インバータ温度算出処理については、図10を参照して後述する。
【0069】
ステップS7において、コントローラ8は、駆動モータ53への電力供給を禁止する。
【0070】
図4は、駆動モータ供給電力算出処理について説明するフローチャートである。
【0071】
ステップS31において、コントローラ8は、電流センサ51で検出した出力電流と電圧センサ52で検出した出力電圧とを乗算して、燃料電池スタック1の発電電力を算出する。
【0072】
ステップS32において、コントローラ8は、電圧センサ52で検出した出力電圧を燃料電池スタック1の燃料電池の枚数で割ることで、各燃料電池の電圧の平均値(以下「平均セル電圧」という。)を算出する。
【0073】
ステップS33において、コントローラ8は、後述する図5のマップを参照して、燃料電池スタック1の発電電力と平均セル電圧とに基づいて、単位時間(演算周期)当たりの燃料電池スタック1の発熱量を算出する。
【0074】
ステップS34において、コントローラ8は、算出した燃料電池スタック1の発熱量を、予め定められた燃料電池スタック1の熱容量で割ることで、燃料電池スタック1の昇温速度を算出する。
【0075】
ステップS35において、コントローラ8は、所定の暖機完了温度とスタック冷却水温との温度差を算出する。
【0076】
ステップS36において、コントローラ8は、暖機完了温度とスタック冷却水温との温度差を昇温速度で割ることで、暖機が完了するまでに必要な時間(以下「暖機完了予測時間」)、すなわち、ステック冷却水温が暖機完了温度まで上昇するのに必要な時間を算出する。
【0077】
ステップS37において、コントローラ8は、後述する図6のマップを参照し、暖機完了予測時間と推定駆動モータ温度とに基づいて、暖機完了予測時間内に駆動モータ53の温度が所定の許容駆動モータ温度を超えない範囲で駆動モータ53に供給可能な最大電力(以下「第1最大駆動モータ供給電力」という。)を算出する。この第1最大駆動モータ供給電力は、換言すれば、暖機完了予測時間が経過したときに、駆動モータ53の温度を所定の許容駆動モータ温度まで上昇させるために駆動モータ53に供給しなければならない電力である。
【0078】
なお、許容駆動モータ温度は、駆動モータ53のステータコイルが劣化するおそれのある温度よりもやや低い温度であり、駆動モータ53の特性に応じて適宜設定される温度である。また、推定駆動モータ温度の初期値は、外気温センサ71によって検出された外気温に設定される。
【0079】
ステップS38において、コントローラ8は、後述する図7のマップを参照し、暖機完了予測時間と推定インバータ温度とに基づいて、暖機完了予測時間内にインバータ54の温度が所定の許容インバータ温度を超えない範囲で駆動モータ53に供給可能な最大電力(以下「第2最大駆動モータ供給電力」という。)を算出する。この第2最大駆動モータ供給電力は、換言すれば、暖機完了予測時間が経過したときに、インバータ54の温度を所定の許容インバータ温度まで上昇させるために駆動モータ53に供給しなければならない電力である。
【0080】
なお、許容インバータ温度は、インバータ54の構成部品である半導体スイッチが劣化するおそれのある温度よりもやや低い温度であり、インバータ54の特性に応じて適宜設定される温度である。また、推定インバータ温度の初期値は、外気温センサ71によって検出された外気温に設定される。
【0081】
ステップS39において、コントローラ8は、第1最大駆動モータ供給電力と第2最大駆動モータ供給電力との大小を比較し、小さいほうを、駆動モータ53及びインバータ54を劣化させることなく駆動モータ53に供給することができる最大電力(以下「最大駆動モータ供給電力」)として設定する。
【0082】
ステップS40において、コントローラ8は、最大駆動モータ供給電力で仮に駆動モータ53を回転駆動させたときに得られるトルク(以下「想定駆動トルク」という。)が、所定の上限トルク以上か否かを判定する。所定の上限トルクは、パークロック装置7によって駆動モータ53の出力軸531を機械的に固定した状態でそれ以上のトルクが駆動モータ53の出力軸531に作用すると、固定状態が解除されたり、又は、パークロック装置7を劣化させてしまうおそれのあるトルクである。コントローラ8は、想定駆動トルクが上限トルク以上であれば、ステップS41の処理を行う。一方で、想定駆動トルクが上限トルクよりも小さければ、ステップS42の処理を行う。
【0083】
ステップS41において、コントローラ8は、駆動モータ53を回転駆動させたときに得られるトルクが上限トルクとなる予め定められた所定の制限電力を、基本駆動モータ供給電力として設定する。これは、想定駆動トルクが上限トルク以上の場合に、最大駆動モータ供給電力を駆動モータ53に供給してしまうと、誤作動によって駆動モータ53が回転駆動したときに、車両が誤発進してしまうおそれがあるからである。
【0084】
ステップS42において、コントローラ8は、最大駆動モータ供給電力を基本駆動モータ供給電力として設定する。
【0085】
ステップS43において、コントローラ8は、スタック冷却水温に基づいて燃料電池スタック1の現在のI−V特性を呼び出し、呼び出したI−V特性に基づいて燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回らない発電電力の上限(以下「上限発電電力」という。)を算出する。
【0086】
ステップS44において、コントローラ8は、基本駆動モータ供給電力と補機の消費電力との総和、すなわち燃料電池スタック1の発電電力の要求値(以下「要求発電電力」という。)を算出する。
【0087】
ステップS45において、コントローラ8は、要求発電電力が上限発電電力以下か否かを判定する。コントローラ8は、要求発電電力が上限出力以下であればステップS42の処理を行う。一方で、要求発電電力が上限発電電力よりも大きければステップS43の処理を行う。
【0088】
ステップS46において、コントローラ8は、駆動モータ供給電力を、基本駆動モータ供給電力に設定する。これは、要求発電電力が上限出力以下であれば、駆動モータ53に基本駆動モータ供給電力を供給しても、燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回ることがないからである。
【0089】
ステップS47において、コントローラ8は、駆動モータ供給電力を、上限発電電力から補機の消費電力を引いた電力に設定する。これは、要求発電電力が上限出力よりも大きければ、駆動モータ53に基本駆動モータ供給電力を供給してしまうと、燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回るおそれがあるからである。
【0090】
図5は、燃料電池スタック1の発電電力と平均セル電圧とに基づいて、単位時間(演算周期)当たりの燃料電池スタック1の発熱量を算出するマップである。
【0091】
図5に示すように、燃料電池スタック1の発熱量は、燃料電池スタックの発電電力が大きくなるほど、また、平均セル電圧が低くなるほど、大きくなる。
【0092】
図6は、暖機完了予測時間と推定駆動モータ温度とに基づいて、第1最大駆動モータ供給電力を逐次算出するマップである。
【0093】
図6のマップに示すように、第1最大駆動モータ供給電力は、暖機完了予測時間が長くなるほど大きくなるように設定される。このように、暖機完了予測時間が長くなるほど第1最大駆動モータ供給電力が大きくなるように逐次修正することで、燃料電池スタック1の発電電力を大きくして暖機速度が速くなる(暖機完了予測時間が短くなる)ようにしている。
【0094】
また、第1最大駆動モータ供給電力は、推定駆動モータ温度が低くなるほど大きくなるように設定される。このように、推定駆動モータ53の温度が許容駆動モータ温度に到達すまでに余裕があるとき、すなわち推定駆動モータ53の温度が低いときほど第1最大駆動モータ供給電力が大きくなるように逐次修正することで、燃料電池スタック1の発電電力を大きくして暖機速度が速くなるようにしている。
【0095】
図7は、暖機完了予測時間と推定インバータ温度とに基づいて、第2最大駆動モータ供給電力を逐次算出するマップである。
【0096】
図7のマップに示すように、第2最大駆動モータ供給電力も、第1最大駆動モータ供給電力と同様に、暖機完了予測時間が長くなるほど、また、推定インバータ温度が低くなるほど大きくなるように設定される。このように設定した理由も同様である。
【0097】
図8は、推定駆動モータ温度算出処理について説明するフローチャートである。
【0098】
ステップS51において、コントローラ8は、駆動モータ53の初期温度を読み込む。本実施形態では、燃料電池システム100を起動したときの外気温を、駆動モータ53の初期温度として読み込む。
【0099】
ステップS52において、コントローラ8は、駆動モータ供給電力の積算値(以下「電力積算値」という。)を算出する。
【0100】
ステップS53において、コントローラ8は、図9のテーブルを参照し、電力積算値に基づいて駆動モータ53の上昇温度を算出する。
【0101】
ステップS54において、コントローラ8は、駆動モータ53の初期温度に駆動モータ53の上昇温度を足して、推定駆動モータ温度を算出する。
【0102】
図10は、推定インバータ温度算出処理について説明するフローチャートである。
【0103】
ステップS61において、コントローラ8は、インバータ54の初期温度を読み込む。本実施形態では、燃料電池システム100を起動したときの外気温を、インバータ54の初期温度として読み込む。
【0104】
ステップS62において、コントローラ8は、電力積算値を算出する。
【0105】
ステップS63において、コントローラ8は、図11のテーブルを参照し、電力積算値に基づいて、インバータ54の上昇温度を算出する。
【0106】
ステップS64において、コントローラ8は、インバータ54の初期温度にインバータ54の上昇温度を足して、推定インバータ温度を算出する。
【0107】
以上説明した本実施形態によれば、燃料電池スタック1の暖機時にこれまで燃料電池スタック1の発電電力を供給していなかった駆動モータ53に対しても、駆動モータ53が回転しないように燃料電池スタック1の発電電力を供給することとした。
【0108】
これにより、燃料電池スタック1の暖機時に通電可能な電気部品として、補機のほかに駆動モータ53が追加されることになるので、燃料電池スタック1の出力電流を増大させることができ、暖機速度を上げることができる。
【0109】
また、本実施形態によれば、燃料電池スタック1の発電電力に応じて暖機完了予測時間を逐次算出し、暖機完了予測時間と推定駆動モータ温度とに基づいて、暖機完了予測時間内に駆動モータ53の温度が所定の許容駆動モータ温度を超えない範囲で駆動モータ53に供給可能な最大電力(第1最大駆動モータ供給電力)を算出することとした。また、暖機完了予測時間と推定インバータ温度とに基づいて、暖機完了予測時間内にインバータ54の温度が所定の許容インバータ温度を超えない範囲で駆動モータ53に供給可能な最大電力(第2最大駆動モータ供給電力)を算出することとした。
【0110】
そして、第1最大駆動モータ供給電力と第2駆動モータ供給電力との大小を比較し、小さい方を、暖機時に駆動モータ53に供給する最大電力(最大駆動モータ供給電力)として設定することとした。
【0111】
これにより、暖機時に駆動モータ53に供給される電力値を、駆動モータ53及びインバータ54を劣化させることのない最大の電力値とすることができる。そのため、駆動モータ53及びインバータ54の劣化を抑制しつつ、燃料電池スタック1の暖機を可能な限り早く終了させることができる。
【0112】
また、本実施形態によれば、最大駆動モータ供給電力で仮に駆動モータ53を回転駆動させたときに得られるトルク(想定駆動トルク)が、パークロック装置7による駆動モータ53の出力軸531の固定力に応じて定まる所定の上限トルクよりも大きいときは、駆動モータ53に供給する電力を制限することとした。具体的には、駆動モータ53に供給する電力の最大値を、駆動モータ53を回転駆動させたときに得られるトルクが上限トルクとなる予め定められた所定の制限電力にすることとした。
【0113】
これにより、誤って駆動モータ53が回転駆動された場合であっても、パークロック装置7の固定力によって、車両の誤発進を防ぐことができる。
【0114】
また、本実施形態によれば、スタック冷却水温から現在のI−V特性を呼び出し、そのI−V特性から燃料電池スタック1の上限発電電力を算出することとした。そして、基本駆動モータ供給電力(最大駆動モータ供給電力又は制限電力)と、暖機時に駆動される補機(カソードコンプレッサ23及びPTCヒータ46)の消費電力と、の総和である要求発電電力が、上限発電電力よりも大きいときは、駆動モータ53に供給する電力をさらに制限することとした。具体的には、駆動モータ53に供給する電力の最大値を、上限発電電力から補機の消費電力から引いた電力値に制限することとした。
【0115】
これにより、燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回るのを抑制できるので、電解質膜の劣化を抑制することができる。
【0116】
また、本実施形態によれば、パークロック装置7によって駆動モータ53の出力軸531が固定されていないとき、すなわち、シフトレバーの位置が駐車レンジ以外のレンジであるときは、駆動モータ53への電力供給を禁止することとした。
【0117】
これにより、車両の誤発進を確実に防ぐことができる。
【0118】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0119】
例えば、上記実施形態では、駆動モータ53として同期モータを使用したが、誘導モータであっても良い。この場合、駆動モータ53が回転しないようにするには、モータ内で磁界が交番しないように巻線に電流が流れるようにインバータ54を制御すれば良い。
【0120】
また、上記実施形態では、駆動モータ53及びインバータ54の温度をそれぞれ推定したが、実際にセンサ等によって検出しても良い。
【0121】
また、上記実施形態では、上限トルクをパークロック装置7による出力軸531の固定力に応じて設定していたが、フットブレーキ等のその他の制動装置による固定力を考慮して設定しても良い。
【符号の説明】
【0122】
1 燃料電池スタック(燃料電池)
7 パークロック装置(固定装置)
53 駆動モータ
54 インバータ(駆動モータ制御装置)
100 燃料電池システム
S2 固定判定手段
S3 暖機時駆動モータ供給電力算出手段
S4 暖機制御手段、駆動モータ制御手段
S5 温度検出手段
S6 温度検出手段
S7 暖機時電力供給禁止手段
S43 上限発電電力算出手段
S45 判定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードガス及びカソードガスを燃料電池に供給して発電させ、発電電力を車両の駆動モータに供給する燃料電池システムであって、
前記燃料電池の暖機時に、前記駆動モータに発電電力を供給して暖機を促進させる暖機制御手段を備える、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記駆動モータを制御する駆動モータ制御装置を備え、
前記暖機制御手段は、
前記燃料電池の暖機時に前記駆動モータに供給する電力を算出する暖機時駆動モータ供給電力算出手段と、
前記燃料電池の暖機時に前記駆動モータに電力を供給するときは、前記駆動モータが回転しないように前記駆動モータ制御装置を制御する駆動モータ制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記駆動モータ又は前記駆動モータ制御装置の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記暖機時駆動モータ供給電力算出手段は、
前記燃料電池の発電電力に応じてその燃料電池の暖機完了予測時間を算出し、
前記燃料電池の暖機完了予測時間と、前記駆動モータ又は前記駆動モータ制御装置の温度と、に基づいて、前記燃料電池の暖機完了予測時間内に前記駆動モータ又は前記駆動モータ制御装置の温度が所定の許容温度を超えないように、前記駆動モータに供給する電力を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記温度検出手段は、
前記駆動モータに供給した電力の積算値に基づいて前記駆動モータ又は前記駆動モータ制御装置の温度を推定することで、前記駆動モータ又は前記駆動モータ制御装置の温度を検出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記暖機時駆動モータ供給電力算出手段は、
前記燃料電池の暖機完了予測時間が長いときほど、前記駆動モータに供給する電力を大きくする、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記暖機時駆動モータ供給電力算出手段は、
前記駆動モータ又は前記駆動モータ制御装置の温度が低いときほど、前記駆動モータに供給する電力を大きくする、
ことを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記暖機時駆動モータ供給電力算出手段は、
前記燃料電池の温度に応じてその燃料電池の上限発電電力を算出する上限発電電力算出手段と、
前記駆動モータに、算出された供給電力を供給したときに、前記燃料電池の発電電力が前記上限発電電力を超えるか否かを判定する判定手段と、
を備え、
前記燃料電池の発電電力が前記上限発電電力を超えると判定したときは、前記燃料電池の発電電力が前記上限発電電力となるように、前記駆動モータに供給する電力を制限する、
ことを特徴とする請求項2から請求項6までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記駆動モータの出力軸を固定する固定装置を備え、
前記暖機時駆動モータ供給電力算出手段は
前記駆動モータに、算出された供給電力を供給してその駆動モータを回転駆動させたときに得られるトルクが、前記固定装置による前記駆動モータの出力軸の固定力に応じて定まる所定の上限トルクよりも大きいときは、前記駆動モータを回転駆動させたときに得られるトルクが前記上限トルクより小さくなるように、前記駆動モータに供給する電力を制限する、
ことを特徴とする請求項2から請求項7までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記駆動モータの出力軸が固定されているか否かを判定する固定判定手段と、
前記燃料電池の暖機時に前記駆動モータの出力軸が固定されていないと判定したときに、前記駆動モータへの電力供給を禁止する暖機時電力供給禁止手段と、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項1】
アノードガス及びカソードガスを燃料電池に供給して発電させ、発電電力を車両の駆動モータに供給する燃料電池システムであって、
前記燃料電池の暖機時に、前記駆動モータに発電電力を供給して暖機を促進させる暖機制御手段を備える、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記駆動モータを制御する駆動モータ制御装置を備え、
前記暖機制御手段は、
前記燃料電池の暖機時に前記駆動モータに供給する電力を算出する暖機時駆動モータ供給電力算出手段と、
前記燃料電池の暖機時に前記駆動モータに電力を供給するときは、前記駆動モータが回転しないように前記駆動モータ制御装置を制御する駆動モータ制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記駆動モータ又は前記駆動モータ制御装置の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記暖機時駆動モータ供給電力算出手段は、
前記燃料電池の発電電力に応じてその燃料電池の暖機完了予測時間を算出し、
前記燃料電池の暖機完了予測時間と、前記駆動モータ又は前記駆動モータ制御装置の温度と、に基づいて、前記燃料電池の暖機完了予測時間内に前記駆動モータ又は前記駆動モータ制御装置の温度が所定の許容温度を超えないように、前記駆動モータに供給する電力を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記温度検出手段は、
前記駆動モータに供給した電力の積算値に基づいて前記駆動モータ又は前記駆動モータ制御装置の温度を推定することで、前記駆動モータ又は前記駆動モータ制御装置の温度を検出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記暖機時駆動モータ供給電力算出手段は、
前記燃料電池の暖機完了予測時間が長いときほど、前記駆動モータに供給する電力を大きくする、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記暖機時駆動モータ供給電力算出手段は、
前記駆動モータ又は前記駆動モータ制御装置の温度が低いときほど、前記駆動モータに供給する電力を大きくする、
ことを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記暖機時駆動モータ供給電力算出手段は、
前記燃料電池の温度に応じてその燃料電池の上限発電電力を算出する上限発電電力算出手段と、
前記駆動モータに、算出された供給電力を供給したときに、前記燃料電池の発電電力が前記上限発電電力を超えるか否かを判定する判定手段と、
を備え、
前記燃料電池の発電電力が前記上限発電電力を超えると判定したときは、前記燃料電池の発電電力が前記上限発電電力となるように、前記駆動モータに供給する電力を制限する、
ことを特徴とする請求項2から請求項6までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記駆動モータの出力軸を固定する固定装置を備え、
前記暖機時駆動モータ供給電力算出手段は
前記駆動モータに、算出された供給電力を供給してその駆動モータを回転駆動させたときに得られるトルクが、前記固定装置による前記駆動モータの出力軸の固定力に応じて定まる所定の上限トルクよりも大きいときは、前記駆動モータを回転駆動させたときに得られるトルクが前記上限トルクより小さくなるように、前記駆動モータに供給する電力を制限する、
ことを特徴とする請求項2から請求項7までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記駆動モータの出力軸が固定されているか否かを判定する固定判定手段と、
前記燃料電池の暖機時に前記駆動モータの出力軸が固定されていないと判定したときに、前記駆動モータへの電力供給を禁止する暖機時電力供給禁止手段と、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−27246(P2013−27246A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162354(P2011−162354)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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