説明

燃料電池用燃料カートリッジ

【課題】容器に収納された液体燃料を、手動によって安全かつ簡便に注出できる新規な構成の燃料電池用燃料カートリッジを提供する。
【解決手段】燃料電池用の液体燃料が収納される可撓性の容器10の口部14に、燃料電池に接続されて燃料を充填するためのプラグ30Pが設けられた燃料電池用燃料電池カートリッジであって、容器10の少なくとも一部には伸縮自在の部位としての蛇腹部15が設けられ、プラグ30Pには、自由状態では常時閉状態に保持され、燃料電池70と接続した際に開弁する弁機構部34が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に液体燃料を補給するための燃料カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の燃料電池用燃料カートリッジとしては、たとえば、特許文献1に記載のようなものが知られている。この燃料カートリッジは、液体燃料が収納される収縮性を有する第1の容器と、この第1の容器を内部に収納する剛性を有する第2の容器とを備えた構成となっている。第2の容器には先細の注出口が設けられ、注出口を下に向けて燃料電池の燃料タンクに通じる装着口に装着し、第1の容器と燃料タンクとを連通して、燃料を第1の容器から燃料タンクに補給するようになっていた。第1の容器から燃料が流出すると容器内が負圧になるが、第1の容器に収縮性を持たせているので、燃料を注出した分だけ容器が収縮し、容器内部に発生する負圧が解消されるようになっている。
【0003】
しかし、上記した従来の燃料カートリッジは、第1の容器が高剛性の第2の容器内に収納されているので、第1の容器および第1の容器に収容される液体燃料の保護を図れ、またカートリッジの構造を簡素化できて液体燃料の供給も安定して行えるものの、第1の容器を手で直接押圧操作できず、第1の容器の収縮性にばらつきが生じた場合には液体燃料が注出しにくくなるという問題があり、これらの容器を含むカートリッジを安定して大量生産するには未だ改善の余地があった。
【特許文献1】特開2005−71713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、容器に収納された液体燃料を、手動によって安全かつ簡便に注出できる新規な構成の燃料電池用燃料カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本請求項1に係る発明にあっては、燃料電池用の液体燃料が収納される可撓性の容器と、
前記容器の口部には燃料電池に接続されて燃料を充填するための接続具が設けられた燃料電池用燃料電池カートリッジであって、
前記容器の少なくとも一部には伸縮自在の部位が設けられ、
前記接続具には、自由状態では常時閉状態に保持され、燃料電池と接続した際に開弁する弁機構部が設けられていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記容器は、オレフィン系樹脂より構成される単層の容器、または一種または複数種のオレフィン系樹脂より構成される多層の容器であることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、前記容器は、ポリエステル系樹脂より構成される単層の容器、またはポリエステル系樹脂を含む一種または複数種のポリエステル系樹脂より構成される多層の容器であることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、前記容器は、多層構造を有し、少なくとも一層はオレフィン系樹脂よりなる層で構成され、少なくとも一層はポリエステル系樹脂よりなる層で構成され、これらを積層した多層構造の容器であることを特徴とする。
【0007】
請求項5に係る発明は、前記容器の外周の少なくとも一部は、該容器を保護するカバーによって覆われていることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、容器は有底筒形状で、筒状の胴部に伸縮自在の部位が設けられ、カバーは、複数のカバー部材として、容器の口部側と底部側のいずれか一方側から胴部を覆う胴部カバー部を有するカバー本体と、容器の口部側と底部側の他方側を覆い前記カバー本体の胴部カバー部に対して摺動自在に嵌合するスライド筒部を有する押し込みカバー部材とを備えた構成としたことを特徴とする。
【0008】
請求項7に係る発明は、前記カバー部材と前記押し込みカバー部材の少なくとも一方に、前記押し込みカバーを押し込んで伸縮自在の部位を伸縮させる際の前記押し込みカバー部材の押し込みストローク量を規制するストローク規制部材が設けられていることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、前記押し込みカバー部材の押し込みストロークの始端もしくは終端および始端と終端のそれぞれにストローク規制部材が設けられていることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、燃料電池との非接続時に、前記押し込みカバー部材の摺動を規制するストッパーが設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項10に係る発明は、押し込みカバー部材は底部側を覆う構成となっていることを特徴とする。
請求項11に係る発明は、押し込みカバー部材は口部側を覆う構成となっていることを特徴とする。
【0010】
請求項12に係る発明は、容器の伸縮自在の部位は少なくとも押し込みカバー部材のスライド筒部で覆われる部分に設けられていることを特徴とする。伸縮自在の部位がスライド筒部より長い場合も含まれるし、容器の胴部が全部伸縮自在の場合も含まれる。 請求項13に係る発明は、容器の伸縮自在の部位は少なくとも押し込みカバー部材のスライド筒部で覆われる部分から離れた位置に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項14に係る発明は、燃料電池カートリッジの不使用時は接続具を覆い、使用時は容器又は押し込みカバー部材に係止して容器を押し込む押圧部となるキャップが設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項15に係る発明は、容器の胴部には中心軸と交差する方向に伸縮自在の部位が設けられ、カバーは、容器の胴部において伸縮自在の部位の伸縮方向に相対移動自在に組みつけられる2つのカバー部材によって構成されることを特徴とする。
請求項16に係る発明は、伸縮自在の部位に、蛇腹機構が用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、燃料電池に接続具を接続し、容器の伸縮自在の部位を収縮させることで、液体燃料を燃料電池に充填することができる。
接続具には、自由状態では常時閉状態で、燃料電池に接続した際に開弁する弁機構部を設けているので、燃料電池に接続していない状態で、液体燃料が漏れるおそれがない。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、容器にオレフィン系樹脂を用いることにより、小さい押圧力で液体燃料を燃料電池に補給することができる。
なおここで、本明細書において特段の断りのない限り、オレフィン系樹脂とは、ポリエチレン、ポリプロピレンといった通常使われる樹脂、および目的等に応じてオレフィン系樹脂同士をブレンドした樹脂を総称するものとする。
請求項3に係る発明によれば、容器にPET等のポリエステル系樹脂を用いることにより、内容物に対する耐透過性に優れた強度の高い容器が得られる。
なおここで、本明細書において特段の断りのない限り、ポリエステル系樹脂とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートといった通常使われる樹脂、および目的等に応じてポリエステル系樹脂同士をブレンドした樹脂を総称するものとする。
請求項4に係る発明によれば、ポリエステル系樹脂とオレフィン系樹脂との多層構成とすることにより、内容物に対する耐透過性に優れ小さい押圧力で液体燃料が補給可能なバランスのよい容器を得ることができる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、カバーによって容器を保護することができ、容器の破損等を防止することができる。
請求項6に係る発明によれば、胴部に伸縮自在の部位を設け、胴部を覆うカバー本体に対して押し込みカバー部材を押し込んで伸縮自在の部位を圧縮する構成としたので、液体燃料を効率よく注出することができる。
【0016】
請求項7に係る発明によれば、ストローク規制部材によって、液体燃料の過剰な流出が防止され、燃料電池の電解質膜が保護される。
請求項8に係る発明によれば、ストロークの始端にもストローク規制部材を設けることにより、高温環境下に曝されて容器の内圧が上昇し容器が膨張しても、押し込みカバー部材が抜け出ることが防止される。また始端と終端の両方にストローク規制部材を設けることにより上記の利点の双方を得ることができる。
【0017】
請求項9に係る発明によれば、非接続時のストッパを設けることにより、不使用時の誤操作による容器内圧上昇等の誤操作を防止することができる。
【0018】
請求項10に係る発明によれば、押し込みカバー部材を底部側に設ければ、液体燃料充填時に片手でカバー本体を握りながら、指で押し込みカバー部材を押し込むことにより、簡単に充填することができる。
請求項11に係る発明のように、押し込みカバー部材を口部側に設けた場合には、カバー本体を握った状態で、燃料電池に向けて押すことで、相対的に押し込みカバー部材がカバー本体に押し込まれ、液体燃料の充填時の力が入れやすい。
【0019】
請求項12に係る発明によれば、伸縮自在の部位を押し込みカバー部材で覆われる部分に設けたので、伸縮自在の部位が押し込みカバー部材によって直接圧縮され、伸縮自在の部位を安定して伸縮させることができる。
請求項13に係る発明によれば、伸縮自在の部位をスライド筒部から離れた位置に設けたので、スライド筒部がストロークしても嵌合している部分は同じ位置関係で移動しスライド筒部がカバー本体内周に入り込まず、容器の容積を大きくすることが可能となり、容積効率がよい。また、胴部の全面を伸縮自在とした場合は、1回毎のストロークを大きくすることができ、1回あたりの吐出量を増やすことができる。
【0020】
請求項14に係る発明によれば、キャップの紛失を防止することができる。
また、カバーをカバー本体のみで構成し、キャップを押し込みカバー部材としても使用することができる。
【0021】
請求項15に係る発明によれば、容器の胴部には中心軸と交差する方向に伸縮自在の部位を設け、カバーを伸縮方向に相対移動自在に組みつけられる2つのカバー部材によって構成したので、カバーを握るだけで充填することができる。
請求項16に係る発明によれば、伸縮自在の部位を蛇腹機構としたので、コンパクトな構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係る燃料電池用燃料カートリッジを示している。
すなわち、図1に示すように、この燃料電池用燃料カートリッジ1は、液体燃料が収納される可撓性の容器10と、この容器10外周を覆って容器10を保護する高剛性のカバー20と、を備え、容器10の口部には燃料電池に接続して燃料を充填するための接続具としてのカップラーのプラグ30Pが設けられている。
容器10には弾力性を有する伸縮自在の部位である蛇腹機構を構成する蛇腹部15が設けられ、カバー20は、蛇腹部15を伸縮させる方向に相対移動可能に連結された複数のカバー部材としてのカバー本体21と押し込みカバー部材22とによって構成されている。
液体燃料としては、メタノール,ホルムアルデヒド,ギ酸,エタノール,アセトアルデヒド,酢酸,ブタン,ボロンハイドライド等、燃料電池の燃料として利用可能な各種液体燃料が使用可能である。
【0023】
容器10は有底円筒形状で、中空円筒状の胴部11と、胴部11下端を閉塞する底部12と、胴部11上端を絞った肩部13と、肩部13から上方に突出する円筒状の口部14とを備えた構成となっている。
容器の材料としては、液体燃料に応じて適宜選定されるが、この実施の形態では軟質のオレフィン系の樹脂材が使用される。一種または複数種のオレフィン系樹脂より構成してもよいし、一種または複数種をブレンドしたポリエステル系樹脂より構成される単層または多層の容器でもよい。
なお、この実施の形態では、容器10は多層構造を有しており、層構成としては、内容物の耐透過性、内容物への不純物溶出防止、容器としての操作性などを考慮し、外側より順に、ポリプロピレン(PP)/リプロ/線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)/環状ポリオレフィン/線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)/高密度ポリエチレンと線状低密度ポリエチレンとのブレンド(HDPE+L−LDPE)との多層構造となっているが、本発明においてはこの層構成に限定されるものではない。また、これら各層の厚みなどについては、内容物の特性、充填量、操作条件等を考慮し、適宜設定することができる。
単層の場合は、不純物溶出性を考慮し、HDPE(高密度ポリエチレン)単体やHDPE+L−LDPE(線状低密度ポリエチレン)をブレンドしたものが好適に用いられる。
多層の場合は、COC(環状ポリオレフィン)樹脂を中間層に用いて内容物に対する透過性を向上させるとともに内外層をオレフィン系樹脂(HDPE)で構成することが望ましい。また口部はプラグ30Pが装着されるため、変形しないことが望ましい。
また、ポリエステル系樹脂を用いる場合は、内容物の耐透過性に優れ、剛性が高く、容器の大量生産にも向いているため、本発明における容器として好適に用いられる。なお、ポリエステル系樹脂におけるポリエチレンテレフタレート樹脂は、その生成過程においてアンチモンやゲルマニウムといった金属触媒が用いられているが、本発明においては、内容物への不純物溶出防止の観点からチタン系触媒を用いて生成されたポリエチレンテレフタレート樹脂を使用することが望ましい。
【0024】
容器10は、押し込みカバー部材22によって、底部12が口部14に向けて押し込まれる構成で、容器10の胴部11には、その底部側の部分に蛇腹部15が設けられている。この蛇腹部15は、押し込みカバー部材22によって押し込まれる方向、すなわち、胴部11の中心軸N方向に伸縮自在となっている。
【0025】
蛇腹部15は、大径の山部16と、小径の谷部17が交互に繰り返される形状で、図示例では山部16の形状が三角形状となっている。もっとも、蛇腹部15の形状としては、三角形状に限定されるものではなく、例えば台形状や連続した円弧状といった中心軸方向に伸縮する種々の形状とすることもできる。蛇腹部15は自由状態では伸張状態で、押し込みカバー部材22を押し込むことによって収縮し、押し込み力が作用しないと伸長状態に弾性復帰する。
【0026】
カバー20は、容器10の口部14側と底部12側のいずれか一方、この例では口部14側から胴部11を覆う胴部カバー部21aを有するカバー本体21と、容器10の底部12を覆いカバー本体21の胴部カバー部21aに対して摺動自在に嵌合するスライド筒部22aを有する押し込みカバー部材22とを備えた構成となっており、液体燃料の充填時にカバー本体21を握って押し込みカバー部材22を片手で押し込み可能となっている。
カバー本体21は、上記胴部カバー部21aと、この胴部カバー部21aの上端から肩部を覆う肩部カバー部21bと、口部14を覆う筒状の口部カバー部21cと、を備えている。口部カバー部21cは、口部14に対して抜けないように固定されている。
【0027】
胴部カバー21aは、円筒形状で容器10の胴部11の肩部から底部12付近まで延びている。肩部カバー部21bは胴部カバー部21aの上端から内向きに環状に延びて肩部13を覆い、口部カバー部21cは肩部カバー部21bの内径端から口部外周に沿って上方に筒状に突出している。
容器の口部14外周には、上下2箇所に環状凸部14aが設けられ、一方、カバー本体21の口部カバー部21cには、環状凸部14aが嵌合する環状溝21dが設けられ、軸方向に抜けないように固定されている。口部14と口部カバー21cとの固定は、ねじ係合でもよいが、分解防止の観点では嵌合固定が望ましい。
【0028】
一方、押し込みカバー部材22は容器10の底部12側を覆う構成で、容器の底部12を覆う底部カバー部22bと、底部カバー部22bの外径端から上方に向かって延びる円筒形状のスライド筒部22aと、を備えており、容器10の底部12が底部カバー部22に当接している。
この押し込みカバー部材22のスライド筒部22aは、カバー本体21の胴部カバー部21a内周に嵌合する内嵌合構成となっている。
スライド筒部22aが内嵌合構成となっているので、スライド筒部22aとの干渉を避けるために、容器10の胴部11は、スライド筒部22aに対応してスライド筒部22aのスペース分だけ、底部12寄りの部分が絞られて小径部11aとなっている。この例では、この小径部11aに蛇腹部15が設けられており、小径部11aの長さは、スライド筒部22aの長さに蛇腹部15を加えた長さに設定されている。
【0029】
また、胴部カバー部21aの内周とスライド筒部22aの外周には、押し込みカバー部材22の最伸張位置において、軸方向に互いに係合する始端ストッパ41,42が突設されている。図示例では、胴部カバー部21a側の始端ストッパ41は胴部カバー部21aの開口端部内周に設けられ、スライド筒部22a側の始端ストッパ42はスライド筒部22aの挿入方向先端部外周に設けられている。自由状態では、蛇腹部15の弾性復元力によって始端ストッパ41,42が係合する位置まで伸張しており、容器10の底部12は押し込みカバー部材22の底部カバー部22bに当接している。
この始端ストッパ41,42は押し込みカバー部材22の抜け止め機構としても機能するもので、始端ストッパ41,42の係合面は90°で係合し、容易に抜けないようになっている。また、組立を可能とするために、挿入方向の先端部は傾斜面となっている。この始端ストッパ41,42によって、カートリッジが高温環境下に曝され容器の内圧が上昇し容器が変形しても、押し込みカバー部材22が抜け出ることが防止される。
【0030】
一方、スライド筒部22aの外周には、押し込みカバー部材22を押し込んで蛇腹部15を収縮させる際の押し込みカバー部材22の押し込みストローク量、すなわち容器10の蛇腹部15の収縮量を所定量に規制するストローク規制部材としての終端ストッパ50が突設されている。この終端ストッパ50は、スライド筒部22aを外周側に厚肉に張り出して胴部カバー部21aの開口端51と軸方向に対向するようになっており、胴部カバー部21aの開口端51に係合して押し込みカバー部材22の押し込み量を規制するようになっている。
したがって、この実施の形態では、押し込みカバー部材22の押し込みストロークの始端と終端が、始端ストッパ41,42と終端ストッパ50によって一定のストローク量に規制され、一回の押し込みによる注出量を正確に計量することができる。
【0031】
プラグ30Pには、自由状態では常時閉状態に保持され、燃料電池70と接続した際に開弁する弁機構部34が設けられている。
この実施の形態では、図1(C),図2(A),(B)に示すように、燃料電池70に設けられるソケット30Sに着脱自在に接続されるものであり、プラグ30Pとソケット30Sを合わせてカップラーを構成する。
プラグ30Pは、ソケット30Sに差し込まれる突出連結部31aを備えたプラグ本体31と、プラグ本体31を固定するための押さえキャップ33と、突出連結部31aに設けられる流路31bを開閉する弁機構部34とを備えている。弁機構部34は、自由状態では常時閉状態に保持され、燃料電池に接続した際に開弁する構成となっている。
プラグ本体31は、容器10の口部14に嵌合する大径の基部31cを備え、突出連結部31aと基部31cとの間には階段状に徐々に大径となる段差部31dが設けられている。また、突出連結部31aの先端部外周には環状溝31eが設けられている。
【0032】
押さえキャップ33は、プラグ本体31に嵌合する小径ホルダ部33aと、この小径ホルダ部33aより大径で口部カバー部21cにねじ込まれる大径ホルダ部33bとを有している。大径ホルダ部33bの内周に雌ねじが設けられ、外周に雄ねじが設けられた口部カバー部21cにねじ込み固定されている。また、小径ホルダ部33aの外周には雄ねじが設けられ、プラグ30Pを覆うキャップ60がねじ込み固定される。
【0033】
弁機構部34は、図2(A),(B)に拡大して示すように、容器10の口部14内周に嵌着されるバルブホルダ34aと、バルブホルダ34aに軸方向に移動自在に保持され、プラグ本体31の容器内部側の端面に設けられるバルブシート34bと、バルブシート34bに対して接離自在のバルブ34cと、このバルブ34cをバルブシート34bに対して常時押し付ける方向に付勢するスプリング34gと、を備えている。
【0034】
バルブ34cは、円板状のバルブ本体34dと、バルブ本体34dの下面から中心軸に沿って下方に延びるガイド軸34eと、バルブ本体34dの上面中央から中心軸線に沿って上方に延び、プラグ本体31の突出連結部31a内周に摺動自在に挿入されるバルブステム34fとを備えている。バルブ本体34dは、ゴム状弾性材製のシールリング34hを介してバルブシート34bに接離するようになっている。
また、バルブホルダ34aはフランジ付き有底筒形状で、筒状部34a1が口部14内周に嵌着され、フランジ部34a4がシール部材34iを介して容器の口部14の開口端に密封接触している。底部34a2によって開弁時のガイド軸34eの移動を所定量に規制するようになっている。また、バルブホルダ34aの筒状部34a1には、底部寄りの位置に容器内部と連通する通孔34a3が設けられている。
【0035】
ガイド軸34eは、バルブ本体34dの移動方向を軸方向に案内するもので、バルブホルダ34a内周に軸方向に摺動自在に保持される。ガイド軸34e外周には液体燃料の流通を許容するための溝が複数設けられている。
バルブステム34fは、バルブ34cと一体的に設けられ、バルブ34cのバルブ本体34dから上方に突出連結部31a内周に摺動自在に挿入されている。このバルブステム34fの外周にも液体燃料の流通を許容するための溝が複数設けられている。バルブステム34fの上端は閉弁状態でほぼ突出連結部31aの先端開口部付近に位置している。
【0036】
次に、ソケット30Sについて説明する。
このソケット30Sは、バルブ132と、バルブ132を常時閉方向に付勢する付勢手段としてのスプリング133を有する弁機構部130を備えており、プラグ30Pが連結されるとスプリング133のばね力に抗してバルブ132が開弁方向に移動する構成となっている。
【0037】
弁機構部130は、燃料電池70に設けられた装着孔71内周に装着されるソケット部材140に組み付けられている。装着孔71内周には円筒状のハウジング141が嵌合され、図示例ではソケット部材140はハウジング141を介して装着孔71内周に固定されている。ソケット部材140は、装着孔71の電池外側の開口部から内側に入り込んだ位置に固定されるもので、ハウジング141の開口部側の空間がプラグ30Pの突出連結部31aが差し込まれる連結空間となっている。また、連結空間に面するハウジング141の内周には、連結突出部31aの外周に設けられた環状溝31eに係合する環状凸部141aが設けられている。
【0038】
ソケット部材140の電池内部側の端面にはバルブシート131が設けられ、バルブ132がバルブシート131に対して電池内部側から接離自在となっており、スプリング132のばね力によってバルブシート131に対して所定の圧力で押し付けられ、通常は閉弁状態に保持されている。
【0039】
バルブ132は、円板状のバルブ本体132aと、バルブ本体132aの下面から中心軸に沿って下方に延びるガイド軸132bと、バルブ本体132aの上面中央から中心軸線に沿って上方に延び、ソケット部材140の貫通孔140aを通して連結空間内に突出するバルブステム132cとを備えている。バルブステム132c外周には、流路を構成する溝が多数設けられている。
また、ソケット部材140には、バルブステム132cを覆うように、弾性体ホルダとしてのゴムホルダ142が設けられている。ゴムホルダ142は、軸方向に伸縮自在で、プラグ30Pが連結された際に、その先端が突出連結部31aの先端面に対して密封状態で接触し、シール状態で内側に流路を確保できるようになっている。
【0040】
次に、上記構成の燃料電池用燃料カートリッジの使用方法について説明する。
この燃料電池用燃料カートリッジは、バッグ等に入れて携帯することを想定しており、燃料電池の燃料が無くなると、バッグから取り出して液体燃料を充填する。
剛性の高いカバー20によって容器11外周全体が覆われているので、バッグ等に収納して持ち歩いても、カバー20によって容器11が保護され、容器の破損等を防止することができる。
また、プラグ30Pの弁機構部34は常時閉状態となっているので、押し込みカバー部材22を押しても弁機構部34のバルブ34aがバルブシート34bに押し付けられるだけで、弁機構部34が閉弁状態に保持され、液体燃料が漏れることが無い。
携帯時には、プラグ30Pがキャップ60で覆われているが、仮にキャップ60が外れていたとしても、プラグ30Pの突出連結部31aの通路は細く、内部のバルブステム34fが誤って押されるおそれは無い。
また、押し込みカバー部材22のスライド筒部22aを内嵌合としているので、出っ張りがなく、バッグに収納した状態でも引っ掛かりにくく、また分解されにくい。
【0041】
使用する際には、図1(C)に示すように、キャップ60を外し、図2(A),(B)に拡大して示すように、プラグ本体31の突出連結部31aをソケット30Sのハウジング141内周に差し込む。すると、ソケット30S側のバルブステム132cが突出連結部71の先端から通路31b内に進入し、プラグ30P側のバルブステム34fに突き当たり、バルブ34aがスプリング34gのバネ力に抗して押し込まれバルブシート34bから離れ開弁状態となる。
一方、ソケット30S側の弁機構部130も、バルブ132がバルブステム132cによってスプリング133のバネ力に抗して押されてバルブシート131から離れて開弁する。
【0042】
注入する際には、片手でカバー20を握り、指で押し込みカバー部材22の底部カバー部22bを押し込む。押し込みカバー部材22を押し込むと、容器10の蛇腹部15が中心軸N方向に収縮し、液体燃料が注出される。押し込み量は、押し込みカバー部材22のスライド筒部22a外周に設けられた終端ストッパ50がカバー本体21の開口端51に当接した時点で規制されるので、一定量の液体燃料を正確に注出することができる。
この例では、蛇腹部15を押し込みカバー部材22で覆われる胴部11の小径部11aに設けたので、蛇腹部15が押し込みカバー部材22によって直接圧縮され、蛇腹部15を安定して伸縮させることができる。
【0043】
次に、本実施の形態1の各種変形例について説明する。
以下の変形例の説明では、主として上記実施の形態1と異なる点についてのみ説明するものとし、同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略するものとする。
図3は、変形例1を示している。
この変形例1は、容器の蛇腹部15を押し込みカバー部材22のスライド筒部22aが嵌合する部分から離れた位置に設けたものである。すなわち、蛇腹部15が、容器胴部11の小径部11aではなく、カバー本体21に収納される大径部11bに設けられている。
このように、蛇腹部15をスライド筒部22aから離れた位置に設ければ、スライド筒部22aがストロークしても、スライド筒部22aが嵌合している部分は変形しないので、容器10の外周に蛇腹部15の収縮分のスペースを設ける必要がなく、容積効率を可及的に大きくすることができる。
【0044】
図4(A),(B)は、この変形例1の、燃料電池との非接続時、すなわち未使用時に、押し込みカバー部材22の摺動を規制するストッパとしてのストッパリング80を装着したものである。図示例では、ストッパリング80は、弾性変形可能の断面C字形状の部材で、伸長状態のカバー本体21の開口端51と押し込みカバー部材22の終端ストッパ50の間に露出するスライド筒部22a外周に填め込まれている。
このストッパリング80は、薄肉円筒を一部切断した構成で、使用する際には拡げて外し、未使用の際には再び填め込んで押し込みカバー部材22を押せないようにする。着脱を容易にするために、適宜つまみを設けてもよい。
このようにすれば、不使用時に誤操作によって押し込みカバー部材22を押し込んだとしても、容器10の内圧上昇を防止することができる。
【0045】
図4(C)乃至(E)も、燃料電池との非接続時、すなわち未使用時に、押し込みカバー部材22の摺動を規制するものであるが、この例ではストッパとしてストッパ凸部81を設けたものである。このストッパ凸部81は、伸長状態のカバー本体21の開口端51に係合する位置に設けられ、開口端51に係合して押し込めないようになっている。
一方、カバー本体21には、周方向一箇所にスリット82が設けられており、使用する際には、押し込みカバー部材22を回転させてストッパ凸部81をスリット82位置に合わせ、ストロークさせるようになっている。
【0046】
図5は、変形例1において、燃料電池カートリッジの不使用時はプラグ30Pを覆っているキャップ61を、使用時は押し込みカバー部材22に係合させて容器10を押し込む押圧部とするものである。
キャップ61を押し込みカバー部材22に係合してキャップ61を介して押し込みカバー部材22を押し込むようにしたものである。
【0047】
この例では、カバー本体21の端部が、始端ストッパ41より底部側に延長され、押し込みカバー部材22を覆うカバー延長部21eが設けられている。このカバー延長部21eの端部は伸長状態の押し込みカバー部材22の底部カバー部22b位置まで延びており、そのままでは押し込みカバー部材22を押し込みにくい構造となっている。
キャップ61は、プラグ30Pの連結突出部31を覆う断面ハット形状のキャップ本体62と、キャップ本体62の開口端部に環状連結部63を介して連結されプラグ30Pの押さえキャップ33外周にねじ係合するねじ筒部64と、環状連結部63からねじ筒部64と反対方向に延びてキャップ本体62を取り囲む外筒部65と、を備えた構成となっている。
【0048】
キャップ本体62は、天板部62aと、天板部62a周縁から円筒状に延びる内筒部62bとを備え、内筒部62bの端部がプラグ30Pの押さえキャップ33の上端に当接する。
ねじ筒部64は円筒形状で、内周面にプラグ30Pの押さえキャップ33外周に設けられた雄ねじに係合するめねじが設けられている。また、ねじ筒部64下端内周には僅かな内向き突起64aが設けられている。
外筒部65は、キャップ本体62の内筒部62bと所定間隔を隔てて延びる円筒形状の部分で、上端が天板部62aと同じ高さまで延び、外周には、押し込みカバー部材22に係合して押圧部とした場合のストローク規制用の終端ストッパとなるストッパリブ65aが、複数設けられている。
【0049】
一方、押し込みカバー部材22の底部カバー部22bには、キャップ61のねじ筒部64の開口端部内周に係合する環状凸部22cが設けられている。この環状凸部22cの外周には、僅かな外向き突起22dが設けられ、キャップ61のねじ筒部64下端内周に設けられた内向き突起64aと弾性的に係合するようになっている。
使用時には、キャップ61を外し、キャップ33のねじ筒部64の開口端部を、押し込みカバー部材22の底部カバー部22bに突設された環状凸部22c外周に嵌合し、キャップ本体62の天板部62aを押圧部として押圧する。
【0050】
押し込みカバー部材22のスライド筒部22aは、全長にわたってカバー本体21の内周に没入しているので、終端ストッパは設けられておらず、キャップ61の外に設けられたストッパリブ65aがカバー本体21のカバー延長部21eの端部に当接して押し込みストロークが規制される。
図示例では、キャップ61を押し込みカバー部材22に係合させているが、押し込みカバー部材を無くして、容器10の底部12に係合させて直接容器10を押し込むようにしてもよい。
【0051】
図6は、変形例2を示している。
この変形例2は、カバー20の押し込みカバー部材22を口部14側に設けた例である。
カバー本体21は、容器10の底部12側から胴部11を覆う胴部カバー部21aを有する構成で、押し込みカバー部材22は容器10の口部14側を覆いカバー本体21の胴部カバー部21aに対して摺動自在に嵌合するスライド筒部22aを有する構成となっている。
すなわち、カバー本体21は、胴部カバー部21aと、底部12を覆う底部カバー部21fを有する構成となっている。また、押し込みカバー部材22は、スライド筒部22aと、肩部13を覆う肩部カバー部22eと、肩部カバー部22eから筒状に突出して口部14を覆う口部カバー部22fとを有する構成となっている。
【0052】
スライド筒部22aはカバー本体21の胴部カバー部21a内周に嵌合する内嵌合構造で、胴部11の小径部11aが口部14側に位置し、この小径部11aに蛇腹部15が設けられている。
押し込みカバー部材22を口部14側に設けた場合には、カバー本体21を握った状態で、燃料電池に向けて押すことで、相対的に押し込みカバー部材22がカバー本体21に押し込まれ、蛇腹部15が収縮して所定量の液体を注出することができる。
【0053】
図7は、変形例3を示している。
この変形例3は、押し込みカバー部材22のスライド筒部22aを、カバー本体21の胴部カバー部21a外周に嵌合する外嵌合構成とした例である。
図示例の場合、押し込みカバー部材22のスライド筒部22aの中途部を絞って段付き構成となっており、この段部をカバー本体21の胴部カバー部21aの開口端と軸方向に対向させて終端ストッパ50としている。
このようにすれば、カバー本体21の胴部カバー部21aの内周側にスライド筒部22aが嵌合するスペースが不要となるので、実施の形態1よりも容積効率がよくなる。図示例では、蛇腹部15の外径が容器の胴部11の外径と同じに設定されているが、蛇腹部15が小径となっていてもよい。小径となっている場合でも、小径部の長さは蛇腹部15分だけですみ、実施の形態1よりも容積効率がよくなる。
また、この変形例3では、胴部カバー部21aの外周とスライド筒部22aの内周に、押し込みカバー部材22の最伸張位置において、軸方向に互いに係合する始端ストッパ41,42が突設されている。図示例では、胴部カバー部21a側の始端ストッパ41は胴部カバー部21aの開口端部外周に設けられ、スライド筒部22a側の始端ストッパ42はスライド筒部22aの挿入方向先端部内周に設けられている。
【0054】
図8は、変形例4を示している。
この変形例4は、変形例3において、変形例1と同様に、蛇腹部15を押し込みカバー部材22のスライド筒部22aが嵌合する部分から離れた位置に設けたものである。すなわち、蛇腹部15が、小径部15aではなく、カバー本体21に収納される大径部21bに設けられている。
スライド筒部22aがストロークしても嵌合している部分は同じ位置関係で移動し、容器10の外周に蛇腹部15の収縮分のスペースを設ける必要がないので、容積効率を可及的に大きくすることができる。
【0055】
図9は、本発明の実施例の形態2に係る燃料電池用燃料カートリッジを示している。
この燃料カートリッジ201は、液体燃料が収納される可撓性の容器210と、容器210外周を覆って容器210を保護する高剛性のカバー220とを備え、容器210の口部213には燃料電池に接続されて燃料を充填するための接続具としてのプラグ230Pが設けられている。
【0056】
この実施の形態2では、容器210は前後に扁平で縦長の有底四角筒形状で、四角筒形状の胴部211と、胴部211下端の底部212と、胴部211上端の肩部213とを有し、肩部213の中央から口部214が上方に突出する構成となっている。
容器210の胴部211には全長にわたって中心軸N方向に伸縮する伸縮自在の部位である蛇腹部215が設けられている。蛇腹部215は胴部211の全長ではなく、部分的に設けてもよいが、全長に設けることで、収縮時に胴部に作用する応力を胴部全体に均一に分散することができる。
蛇腹部215は、大径の山部216と、小径の谷部217が中心軸N方向に交互に繰り返される形状で、図示例では山部216の形状が三角形状となっている。もっとも、蛇腹部215の形状としては、三角形状に限定されるものではなく、例えば台形状や連続した円弧状といった中心軸方向に伸縮する種々の形状とすることができる。
【0057】
カバー220は、複数のカバー部材として、容器210の口部214側から胴部211を覆う胴部カバー部211aを有するカバー本体221と、容器210の底部212側を覆いカバー本体221の胴部カバー部221aに対して摺動自在に嵌合するスライド筒部222aを有する押し込みカバー部材222とを備えた構成となっている。
この実施の形態2では、実施の形態1と異なり、液体燃料の充填時にカバー本体221を握るのではなく、カバー本体221には指掛け部229,229が左右に張り出しており、この指掛け部229,229に人差し指と中指を掛け、注射器のように、親指で押し込みカバー部材222を押し込むようになっている。
カバー本体221は、下端部が開いた中空直方体形状で、四角筒形状の胴部カバー部221aと、容器210の肩部213を覆う肩部カバー部221bと、この肩部カバー部221bから筒状に突出して容器210の口部213を覆う口部カバー部211cとを備えている。
また、胴部カバー部221aの左右の側壁228,228間の間隔は容器210の胴部211の左右幅よりも大きく、側壁228,228と容器210の左右側面との間には隙間が設けられている。そして、左右の側壁228,228外側面の下端部に、上記指掛け部229,229が設けられている。
押し込みカバー部材222は、スライド筒部222aの下端が底壁222bによって閉塞され上端部が開放された直方体形状で、スライド筒部222aに容器210の下半部が挿入され、容器210の底部212が底壁222bに当接している。
【0058】
また、胴部カバー部221aの内周とスライド筒部222aの外周には、押し込みカバー部材222の最伸張位置において、軸方向に互いに係合する始端ストッパ241,242が突設されている。図示例では、実施の形態1と同様に、胴部カバー部221a側の始端ストッパ241は胴部カバー部221aの開口端部内周に設けられ、スライド筒部222a側の始端ストッパ242はスライド筒部222aの挿入方向先端部外周に設けられている。自由状態では、蛇腹部215の弾性復元力によって始端ストッパ241,242が係合する位置まで伸張しており、容器210の底部212は押し込みカバー部材222の底壁222bに当接している。この始端ストッパ41,42によって押し込みカバー部材222の抜け止め機構としても機能する。この始端ストッパ241,242の係合面も90°で係合し、容易に抜けないようになっている。また、先端部は傾斜面となっており、組み立て時の挿入は容易となるようになっている。
【0059】
一方、スライド筒部222aの外周には、押し込みカバー部材222の押し込み量、すなわち容器210の蛇腹部215の収縮量を所定量に規制する終端ストッパ250が突設されている。この終端ストッパ250は、スライド筒部222aを外周側に部分的に張り出しカバー本体221の開口端と軸方向に対向するようになっており、カバー本体221の開口端に係合して押し込みカバー部材222の押し込み量を規制するようになっている。
プラグ230Pの構成については、実施の形態1のプラグ30Pと同一の構成なので、同一の構成部分については、同一の符号を付して、説明は省略するものとする。
【0060】
次に、上記構成の燃料電池用燃料カートリッジの使用方法について説明する。
スクイズ時には、図9(D)に示すように、押し込みカバー部材222をカバー本体221内に押し込む。容器210の胴部211は、押し込みカバー部材222の底壁222とカバー本体221の肩部カバー部221bとの間で圧縮され、液体燃料が注出される。押し込み量は、押し込みカバー部材222に設けられた終端ストッパ250がカバー本体221の下端部に当接した時点で規制されるので、一定量の液体燃料を注出することができる。
押し込む際には、カバー本体221の側壁228,228から張り出す指掛け部229,229に指を掛けて支持することにより、容易に押し込むことができる。
【0061】
図10,図11は本発明の実施の形態3に係る燃料電池用燃料カートリッジを示している。
この燃料電池用燃料カートリッジ301は、液体燃料が収納される可撓性の容器310と、この容器310外周を覆って容器310を保護する高剛性のカバー320と、を備え、容器310の口部313には燃料電池に接続して燃料を充填するための接続具としてのプラグ330Pが設けられている。
この実施の形態3では、容器310の胴部311に、中心軸Nと直交する方向に伸縮自在の部位である蛇腹部315が設けられ、カバー320は、容器310の胴部311において蛇腹部315の伸縮方向に相対移動自在に組みつけられる2つのカバー部材としての、カバー本体321と、押し込みカバー部材322とによって構成されている。
【0062】
容器310は前後に扁平な縦長の中空構造で、胴部311と、胴部311下端の底部312と、胴部311上端の肩部313とを備え、肩部313の中央に上方に突出する口部314が設けられている。
蛇腹部315は、胴部311の一方の側面311aから中心軸N付近まで設けられている。図示例では、上下方向に延びる複数の縦溝315aが、胴部311の前面311bおよび背面311cに、中心軸Nに対して直交方向に所定ピッチでもって設けられている。縦溝315aは、側面311aに近い方が深く、中心軸Nに近づくにつれて浅くなっている。
【0063】
カバー320のカバー本体321は、一方の側壁が開いた前後に扁平な中空の直方体形状の箱体で、四角筒形状の胴部カバー部321aと、容器の肩部を覆う肩部カバー部321bと、底部を覆う底部カバー部321cと、容器310の口部314を覆う口部カバー部321dとを備えている。
胴部カバー部321aの一方の側壁に開口部329が設けられ、この開口部329を覆うように押し込みカバー部材322が装着されている。
押し込みカバー部材322は、その下端部がカバー本体321の開口部329の下端縁の枢支部329aを中心にして回動自在に取り付けられ、押し込みカバー部材322の自由端部が容器310の側面311aを中心に向かって押圧する構成となっている。
なお、特に図示していないが、押し込みカバー部材322は開口部329から外側に抜け出るのを規制する抜け止め手段が適宜設けられる。
プラグ330Pの構成については、実施の形態1のプラグ30Pと同一の構成なので、同一の構成部分については、同一の符号を付して、説明は省略する。
【0064】
次に、上記構成の燃料電池用燃料カートリッジの使用方法について説明する。
スクイズ時には、図11(A),(B)に示すように、押し込みカバー部材322をカバー本体321内に押し込み、容器310の胴部311の側面を、容器中央に向かって圧縮し、液体燃料を注出する。
押圧操作を止めると、蛇腹部315の弾性復元力によって押し込みカバー部材321が初期状態まで自動的に復帰する。また、容器310は押し込みカバー部材322とカバー本体321によって全周的に覆われるので、容器310を適切に保護することができる。
この実施の形態3の場合には、実施の形態1,2と異なり、容器310の中心軸Nに対して直交方向に押し込む構成なので、カバーを握るだけで、液体燃料を注出することができる。
なお、蛇腹部315の伸縮方向は中心軸Nと直交する方向に限らず、たとえば、図11(C)に示すように、押し込みカバー部材322の回動方向に合わせて、中心軸Nと直交する方向に対して傾けた構成としてもよく、要するに中心軸Nと交差する方向に伸縮する構成であればよい。
【0065】
図12,図13は本発明の実施の形態4に係る燃料電池用燃料カートリッジを示している。
この燃料電池用燃料カートリッジ400は、液体燃料が収納される可撓性の容器410と、容器410の口部413には燃料電池に接続して燃料を充填するための接続具としてのプラグ430Pと、を備えたもので、上記した各実施の形態と異なり容器を覆うカバーが設けられていない。
【0066】
容器410は有底円筒形状で、中空円筒状の胴部411と、胴部411下端を閉塞する底部412と、胴部411上端を絞った肩部413と、肩部413から上方に突出する円筒状の口部414とを備えた構成となっており、この実施の形態では、胴部411の底部よりの部分に弾力性を有する伸縮自在の部位である蛇腹部415が設けられている。蛇腹部415は、
底部412から口部414に向けて中心軸N方向に押し込まれる構成となっている。
容器410の材質は、一種または複数種をブレンドしたポリエステル系樹脂より構成される単層または多層の容器が用いられる。たとえば、PET,PEN,PETとPENをブレンドした単層構造のものが適用可能である。
容器の成型方法は、1軸又は2軸の延伸ブロー成形による。
【0067】
プラグ430Pは、自由状態では常時閉状態に保持され、燃料電池70と接続した際に開弁する弁機構部34が設けられている。実施の形態1と異なり、カバーに対してプラグ430Pを固定する押さえキャップ33が不要なので、プラグ本体31が容器410の口部414に固定されているだけである。
プラグ本体31及び弁機構部34の構成及び作用は、実施の形態1と全く同様なので、同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。
使用する際には、図12(B)、図13(A),(B)に示すように、プラグ30Pの突出連結部31aを燃料電池のソケット30Sに差し込み、プラグ30Pの弁機構部34及びソケット30Sの弁機構部140を開弁し、容器410の底部412を押し込むことによって蛇腹部415を収縮させて内部の液体燃料を燃料電池70内に注出する。
【0068】
なお、上記実施の形態では、実施の形態1乃至3のように、カバーによって容器全体を覆うものと、実施の形態4に示すようなカバーの無い容器のみの構成について説明したが、カバーによって容器を覆う場合には、必ずしも容器全体を覆う必要はなく、容器の一部を覆うような構成でもよい。
また、伸縮自在の部位として蛇腹機構を例にとって説明したが、蛇腹構造である必要はなく、伸縮する構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る燃料電池用燃料カートリッジを示すもので、同図(A)はキャップを外した状態の正面図、同図(B)は正面断面図、同図(C)は押し込みカバー部材を押し込んだ状態の正面断面図、同図(D)は同図(A)の上面図である。
【図2】図2(A),(B)は、図1のカートリッジのプラグと燃料電池側のソケットによって構成されるカップラーの非連結状態、連結状態の説明図である。
【図3】図3は図1の実施の形態1の変形例1に係る燃料電池用燃料カートリッジを示すもので、同図(A)は正面断面図、同図(B)は押し込みカバー部材を押し込んだ状態の正面断面図である。
【図4】図4(A)は図3の燃料電池用燃料カートリッジに用いられる不使用時のストッパの構成例を示す説明図、同図(B)はストッパ装着状態の部分正面図、同図(C)乃至(E)はストッパの他の態様を示す説明図である。
【図5】図5は図3の燃料電池用燃料カートリッジのさらなる変形例を示すもので、同図(A)はキャップ装着状態の正面断面図、同図(B)はキャップを押し込みカバー部材に装着した状態の正面断面図、同図(C)はキャップを用いて押し込みカバー部材を押し込んだ状態の正面断面図である。
【図6】図6は図1の実施の形態1の変形例2に係る燃料電池用燃料カートリッジを示すもので、同図(A)は正面断面図、同図(B)は押し込みカバー部材を押し込んだ状態の正面断面図である。
【図7】図7は図1の実施の形態1の変形例3に係る燃料電池用燃料カートリッジを示すもので、同図(A)は正面断面図、同図(B)は押し込みカバー部材を押し込んだ状態の正面断面図である。
【図8】図8は図1の実施の形態1の変形例4に係る燃料電池用燃料カートリッジを示すもので、同図(A)は正面断面図、同図(B)は押し込みカバー部材を押し込んだ状態の正面断面図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態2に係る燃料電池用燃料カートリッジを示すもので、同図(A)は正面図、同図(B)は平面図、同図(C)は同図(B)のC−C線断面図、同図(D)はスクイズ時の断面図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態3に係る燃料電池用燃料カートリッジを示すもので、同図(A)は正面縦断面図、同図(B)は側面縦断面図、同図(C)は横断面図である。
【図11】図11(A)は図7の燃料カートリッジのスクイズ時の正面縦断面図、同図(B)は同図(A)の横断面図、図11(C)は蛇腹部の伸縮方向が異なる例を示す半縦断面図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態4に係る燃料電池用燃料カートリッジを示すもので、同図(A)は正面断面図、同図(B)は燃料充填状態の正面断面図である。
【図13】図13(A),(B)は、図12のカートリッジのプラグと燃料電池側のソケットによって構成されるカップラーの非連結状態、連結状態の説明図である。
【符号の説明】
【0070】
1 燃料電池用燃料カートリッジ
10 容器
11 胴部、11a 小径部
12 底部
13 肩部
14 口部
14a 環状凸部
15 蛇腹部(伸縮自在の部位)、16 山部、17 谷部
20 カバー
21 カバー本体
21a 胴部カバー部
21b 肩部カバー部
21c 口部カバー部
21d 環状溝
21e カバー延長部
21f 底部カバー部
22 押し込みカバー部材
22a スライド筒部
22b 底部カバー部
22c 環状凸部
22d 外向き環状突起
22e 肩部カバー部
22f 口部カバー部
30P プラグ(接続具)
31 プラグ本体
31a 突出連結部、31b 流路、31c 基部、31d 段差部、31e 環状溝
33 押さえキャップ
33a 小径ホルダ、33b 大径ホルダ
34 弁機構部、
34a バルブホルダ
34b バルブシート
34c バルブ
34d バルブ本体
34e ガイド軸
34f バルブステム
34g スプリング
34h シールリング
30S ソケット
130 弁機構部
131 バルブシート
132 バルブ
132a バルブ本体
132b ガイド軸
132c バルブステム
133 スプリング
140 ソケット部材、140a 貫通孔
141 ハウジング,141a 環状凸部
142 ゴムホルダ
41,42 始端ストッパ
50 終端ストッパ
51 開口端
60 キャップ
70 燃料電池
71 装着孔
80 ストッパリング
81 ストッパ凸部
82 スリット

61 キャップ
62 キャップ本体、62a 天板部、62b 内筒部
63 環状連結部
64 ねじ筒部、64a 内向き環状突起
65 外筒部、65a ストッパリブ

201 燃料カートリッジ
210 容器
211 胴部、212 底部、213 肩部、214 口部
215 蛇腹部(伸縮自在の部位)、216 山部、217 谷部
220 カバー
221 カバー本体
221a 胴部カバー部
221b 肩部カバー部
221c 口部カバー部
222 押し込みカバー部材
222a スライド筒部
222b 底部カバー部
228 側壁
229 指掛け部
230P プラグ
241,242 始端ストッパ
250 終端ストッパ
N 中心軸

301 燃料カートリッジ
310 容器
311 胴部
311a 側面、311b 前面、311c 背面
312 底部
313 肩部
314 口部
315 蛇腹部(伸縮自在の部位)
315a 縦溝
320 カバー
321 カバー本体
321a 胴部カバー部
321b 肩部カバー部
321c 底部カバー部
321d 口部カバー部
322 押し込みカバー部材
329 開口部
329a 枢支部
330P プラグ

400 燃料電池用燃料カートリッジ
410 容器
411 胴部
412 底部
413 肩部
414 口部
415 蛇腹部(伸縮自在の部位)
430P プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用の液体燃料が収納される容器と、
前記容器の口部には燃料電池に接続されて燃料を充填するための接続具が設けられた燃料電池用燃料電池カートリッジであって、
前記容器の少なくとも一部には伸縮自在の部位が設けられ、
前記接続具には、自由状態では常時閉状態に保持され、燃料電池と接続した際に開弁する弁機構部が設けられていることを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項2】
前記容器は、オレフィン系樹脂より構成される単層、または、オレフィン系樹脂を少なくとも一層含む多層の容器であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項3】
前記容器は、ポリエステル系樹脂より構成される単層、または、ポリエステル系樹脂を少なくとも一層含む多層の容器であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項4】
前記容器は、少なくとも一層はオレフィン系樹脂よりなる層で構成され、少なくとも一層はポリエステル系樹脂よりなる層で構成され、これらを積層した多層構造の容器であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項5】
前記容器の外周の少なくとも一部は、該容器を保護するカバーによって覆われていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項6】
前記容器は、有底筒形状で、筒状の胴部に伸縮自在の部位が設けられ、
カバーは、複数のカバー部材として、容器の口部と底部側のいずれか一方側から胴部を覆う胴部カバー部を有するカバー本体と、
前記容器の口部側と底部側の他方側を覆い前記カバー本体の胴部カバー部に対して摺動自在に嵌合するスライド筒部を有する押し込みカバー部材とを備えた構成としたことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項7】
前記カバー部材と前記押し込みカバー部材の少なくとも一方に、前記押し込みカバー部材を押し込んで伸縮自在の部位を収縮させる際の前記押し込みカバー部材の押し込みストローク量を規制するストローク規制部材が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項8】
前記押し込みカバー部材の押し込みストロークの始端もしくは終端および始端と終端のそれぞれにストローク規制部材が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項9】
燃料電池との非接続時に、前記押し込みカバー部材の摺動を規制するストッパーが設けられていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項10】
前記押し込みカバー部材は、前記容器の底部を覆う構成となっていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項11】
前記押し込みカバー部材は、前記容器の口部を覆う構成となっていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項12】
前記容器の伸縮自在の部位は、少なくとも押し込みカバー部材のスライド筒部で覆われる部分に設けられていることを特徴とする請求項6乃至11のいずれかに記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項13】
前記容器の伸縮自在の部位は、押し込みカバー部材のスライド筒部で覆われる部分から離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項6乃至11のいずれかに記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項14】
燃料電池カートリッジの不使用時は接続具を覆い、使用時は容器又は押し込みカバー部材に係止して容器を押し込む押圧部となるキャップが設けられていることを特徴とする請求項5乃至13のいずれかの項に記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項15】
前記容器の胴部には中心軸と交差する方向に伸縮自在の部位が設けられ、
前記カバーは容器の胴部において伸縮自在の部位の伸縮方向に相対移動自在に組み付けられる2つのカバー部材によって構成されることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項16】
伸縮自在の部位は、蛇腹機構が用いられていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかの項に記載の燃料電池用燃料カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−81041(P2009−81041A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249279(P2007−249279)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】