説明

燃料電池発電システム

【課題】触媒活性の低下を抑制し、フラッディングなどの性能低下を引き起こさない、発電効率及び耐久性を向上できる燃料電池発電システムを提供すること。
【解決手段】発電開始時、または、発電停止時にアノード側ガスケット5aとカソード側ガスケット5bの内の少なくとも一方の内周面で反応ガス中の水蒸気成分を凝縮させて、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面の近傍の不純物を除去するので、フラッディングを引き起こすことなく、アノード2a及びカソード2bの不純物による触媒活性の低下を抑制することができ、発電効率及び耐久性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノード及びカソードの不純物による触媒活性の低下を抑制し、発電効率及び耐久性の向上を図った燃料電池発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な燃料電池発電システムは、図7に示すように、電解質21を挟んで互いに対向して設けられた燃料ガスが供給されるアノード22aと、酸化剤ガスが供給されるカソード22bからなる燃料電池23を複数積層して構成されるスタックを備える。
【0003】
燃料ガス及び酸化剤ガスは、それぞれのガス流路が設けられたセパレータ24a及び24bを通じて、それぞれアノード22a及びカソード22bに供給される。
【0004】
そして、燃料電池23とセパレータ24a及び24bの間には、燃料ガス及び酸化剤ガスが外部へ漏れないようにガスケット25a及び25bが配置されている。
【0005】
上記構成のスタックに、アノード22aに燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段26と、カソード22bに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段27が接続されていて、制御手段28により、所望の発電状態となるように制御されている。
【0006】
一方、従来の燃料電池発電システムは、様々な不純物に影響を受け、発電性能の低下が起こる場合があった。
【0007】
不純物には、燃料電池発電システムを構成する樹脂材料や金属材料などの部材から発生する内的不純物と、大気などの外部から混入する外的不純物とがあり、これらの不純物がアノード22aやカソード22bを被毒あるいは被覆して、発電反応を起こりにくくさせ、発電性能を低下させていた。
【0008】
従来の燃料電池発電システムは、こうした不純物による影響を取り除くため、発電中に、制御手段28が、燃料ガスあるいは酸化剤ガスの流量を減少させたり、アノード22aあるいはカソード22bを加圧したり、スタックの温度を下げたりして、アノード22aあるいはカソード22bの触媒層中に凝縮水を生成し、内部に蓄積した不純物をこの凝縮水で洗い流して除去していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−218050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来のアノードあるいはカソードの電極面内の触媒層中に凝縮水を生成して、内部に蓄積した不純物を凝縮水で除去する方法では、発電中に電極面内に余剰水分が残っていると反応ガスが閉塞して、電圧が降下するフラッディング現象を起こしてしまうため、電極面内の余剰水分を除去する必要があった。余剰水分を除去するためには、所定の時間、燃料ガスあるいは酸化剤ガスの流量を増加したり、低加湿ガスを供給したりする必要があり、制御が複雑になり、多くの処理時間を費やすだけでなく、発電に寄与しない反応ガスの消費量が無駄に増えることになり、効率の面で未だ改善の余地があった。
【0011】
また、本発明者らが鋭意検討した結果、燃料電池発電システムを構成する部材の中でも、燃料ガス及び酸化剤ガスをシールするために設けられるガスケットから発生する不純物が発電性能に与える影響が大きいことを見出した。
【0012】
ガスケットなどのシール材には、弾力性などの機能を持たせるために可塑剤などの添加剤が配合されている場合が多く、これらの添加剤が、ガスケットが圧縮されたり、高温や水蒸気に曝されたりすることにより、滲み出たり、溶出したりする場合があり、アノード及びカソードに対して不純物となることがある。
【0013】
ガスケットは、電解質や、アノード及びカソード、あるいは燃料ガスや酸化剤ガスと、直接接触する機会が多く、発電性能に与える影響が大きい。
【0014】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、主に発電反応に寄与する電極面内の中央寄りの触媒層において、触媒活性の低下を抑制し、凝縮水が生成するのを抑制し、フラッディングなどの性能低下を引き起こさない、発電効率及び耐久性を向上できる燃料電池発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来の課題を解決するために、本発明の燃料電池発電システムは、燃料電池を冷却するための冷却流体を供給、排出するための燃料電池冷却流体流路の上流から分岐され、アノード側ガスケットとカソード側ガスケットの内の少なくとも一方を冷却するように配置されたガスケット冷却流体流路と、アノード側ガスケットとカソード側ガスケットの内の少なくとも一方の内周面で燃料ガスあるいは酸化剤ガスに含まれる水蒸気成分を凝縮させる凝縮水制御手段とを備え、発電開始時、または、発電停止時に、所定の時間、水蒸気成分の凝縮能力を増加させるものである。
【0016】
これにより、電解質や、アノード及びカソード、あるいは燃料ガス及び酸化剤ガスに対して、直接接触する機会が多いガスケットの内周面の近傍の不純物が除去され、アノード及びカソードの不純物による触媒活性の低下を抑制するので、発電効率及び耐久性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、触媒活性を低下させる不純物を除去することができ、発電効率及び耐久性に優れた燃料電池発電システムを実現できる。
【0018】
また、不純物を多く含むガスケットの内周面の近傍のみに凝縮水を生成し、主に発電に寄与するアノード及びカソードの電極面内の中央寄りの触媒層において、凝縮水を生成しないので、凝縮水によるフラッディングを防ぐことができる。
【0019】
また、発電開始時、または、発電停止時に凝縮水を生成することにより、凝縮水によるフラッディングが起こりやすい状況になっても、発電への影響が最小限に抑えられ、高い発電効率を維持することができる。
【0020】
また、多少の不純物が出る可能性のある部材を用いても、これを除去することができるので、システムの低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池発電システムの概略構成図
【図2】(a)同システムのアノード側セパレータの燃料ガス流路面の平面図(b)同システムのカソード側セパレータの酸化剤ガス流路面の平面図(c)同システムのカソード側セパレータの燃料電池冷却流体流路面の平面図
【図3】(a)同システムの発電停止時の運転シーケンスを示すフローチャート(b)同システムの発電開始時の運転シーケンスを示すフローチャート
【図4】同システムの発電特性を示す特性図
【図5】(a)本発明の実施の形態2における燃料電池発電システムの発電停止時の運転シーケンスを示すフローチャート(b)同システムの発電開始時の運転シーケンスを示すフローチャート
【図6】(a)本発明の実施の形態3における燃料電池発電システムの発電停止時の運転シーケンスを示すフローチャート(b)同システムの発電開始時の運転シーケンスを示すフローチャート
【図7】従来の燃料電池発電システムの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の発明は、電解質の両面にアノード及びカソードが配置された燃料電池と、前記燃料電池を挟んで互いに対向するように配置したアノード側セパレータ及びカソード側セパレータと、前記アノード側セパレータに設けられており前記アノードに反応ガスとしての燃料ガスを供給、排出するための燃料ガス流路と、前記カソード側セパレータに設けられており前記カソードに反応ガスとしての酸化剤ガスを供給、排出するための酸化剤ガス流路と、前記アノード側セパレータの前記燃料電池側の面内の前記アノードの外側の部分に配置されて前記燃料電池に当接し前記燃料ガスをシールするためのアノード側ガスケットと、前記カソード側セパレータの前記燃料電池側の面内の前記カソードの外側の部分に前記アノード側ガスケットに対向するように配置されて前記燃料電池に当接し前記酸化剤ガスをシールするためのカソード側ガスケットと、前記燃料電池を冷却するための冷却流体を供給、排出するための燃料電池冷却流体流路と、前記燃料電池冷却流体流路の上流から分岐され、前記アノード側ガスケットと前記カソード側ガスケットの内の少なくとも一方を冷却するように配置されたガスケット冷却流体流路と、発電開始時と発電停止時の内の少なくとも一方で前記アノード側ガスケットと前記カソード側ガスケットの内の少なくとも一方の内周面で前記燃料ガスあるいは前記酸化剤ガスに含まれる水蒸気成分を凝縮させる凝縮水制御手段とを備える。
【0023】
この構成により、発電開始時、または、発電停止時にアノード側ガスケットとカソード側ガスケットの内の少なくとも一方の内周面のみで反応ガス中の水蒸気成分を凝縮させて、電解質や、アノード及びカソード、あるいは反応ガスに対して、直接接触する機会が多く、発電性能に与える影響の大きいガスケットの内周面の近傍の不純物を除去するので、フラッディングを引き起こすことなく、アノード及びカソードの不純物による触媒活性の低下を抑制することができ、発電効率及び耐久性の向上を図ることができる。
【0024】
第2の発明は、第1の発明において、前記凝縮水制御手段は、前記ガスケット冷却流体流路を流れる前記冷却流体の流量を増加して、前記水蒸気成分の凝縮能力を増加させることを特徴とする。
【0025】
これにより、発電開始時、または、発電停止時のアノード側ガスケット及びカソード側ガスケットの温度を速やかに低下させることができ、より短い時間でアノード側ガスケット及びカソード側ガスケットの内周面で凝縮水量を増加させ、発電中にアノード側ガスケット及びカソード側ガスケットの内周面近傍の凝縮水中に溶出した不純物とともに、燃料電池から外部へ速やかに排出することができ、より多くの不純物を除去することができる。
【0026】
第3の発明は、第1の発明において、前記凝縮水制御手段は、前記燃料電池の発電量を
増加して、前記水蒸気成分の凝縮能力を増加させることを特徴とする。
【0027】
これにより、発電停止直前に燃料ガス及び酸化剤ガス中に含まれる水蒸気量を増加することができ、アノード側ガスケット及びカソード側ガスケットの内周面の近傍に凝縮する水分量が増えるので、より多くの不純物を除去することができる。
【0028】
第4の発明は、第1の発明において、前記凝縮水制御手段は、前記燃料ガスまたは前記酸化剤ガスの内の少なくとも一方の流量を増加させて、前記水蒸気成分の凝縮能力を増加させることを特徴とする。
【0029】
これにより、発電停止直前に燃料ガス及び酸化剤ガス中に含まれる水蒸気量を増加することができ、アノード側ガスケット及びカソード側ガスケットの内周面の近傍に凝縮する水分量が増えるので、より多くの不純物を除去することができる。
【0030】
第5の発明は、第1の発明において、前記燃料ガス流路に存在する燃料ガスの圧力を調整するアノード側圧力調整弁と、前記酸化剤ガス流路に存在する酸化剤ガスの圧力を調整するカソード側圧力調整弁とを備え、前記凝縮水制御手段は、前記アノード側圧力調整弁及び前記カソード側圧力調整弁を制御して、前記アノードと前記カソードの内の少なくとも一方の内部圧力を増加して、前記水蒸気成分の凝縮能力を増加させることを特徴とする。
【0031】
これにより、発電開始時、または、発電停止時の水蒸気分圧が増え、ガスケットの内周面の凝縮水量を増加させることができ、より多くの不純物を除去することができる。
【0032】
第6の発明は、第1の発明において、発電開始時、または、発電停止時、所定の時間、前記燃料電池の負荷を切り離して、開回路状態にすることを特徴とする。
【0033】
これにより、発電開始時、または、発電停止時に、カソードの電位が1V付近まで上昇し、カソード側のガスケットの内周面の近傍にある不純物が酸化され、除去されやすくなり、被毒されていたカソード触媒活性を回復することができる。
【0034】
第7の発明は、第1または6の発明において、発電停止時、前記燃料電池の負荷を一旦低負荷状態にしてから、開回路状態にすることを特徴とする。
【0035】
これにより、発電停止直前の生成水量が減少し、電極面に余剰水分が蓄積することを抑制するので、フラッディングによる電圧降下を防止することができる。
【0036】
また、燃料ガスおよび酸化剤ガスの量を減少させることにより、発電に寄与しない開回路状態における燃料ガスおよび酸化剤ガスの消費量を減少させるので、総合効率を高く維持することができる。
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0038】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における燃料電池発電システムを示す概略構成図である。
【0039】
図1に示すように、本発明の実施の形態1の燃料電池発電システムは、電解質1の両面
にアノード2a及びカソード2bを対向して形成した燃料電池3を備える。
【0040】
ここで、電解質1は、例えば水素イオン伝導性を有するパーフルオロカーボンスルフォン酸ポリマーからなる固体高分子電解質から構成される。
【0041】
また、アノード2aとカソード2bは、耐酸化性の高い多孔質カーボンに白金などの貴金属を担持した触媒及び水素イオン伝導性を有する高分子電解質との混合物からなる触媒層と、触媒層の上に積層した通気性及び電子伝導性を有するガス拡散層から構成される。
【0042】
このとき、アノード2aの触媒として、一般に、燃料ガス中に含まれる不純物、特に一酸化炭素による被毒を抑制する白金−ルテニウムの合金触媒が用いられる。
【0043】
また、ガス拡散層として、撥水処理を施したカーボンペーパーやカーボンクロス、あるいはカーボン不織布などが用いられる。
【0044】
そして、燃料電池3を挟むようにして、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4bが互いに対向するように配置されている。
【0045】
ここで、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4bは、主にカーボンなどの導電性を有する材料で形成される。
【0046】
図2(a)及び(b)にそれぞれアノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4bの燃料電池3側の反応ガス流路面の平面図を示す。
【0047】
アノード側セパレータ4aには、サーペンタイン状の燃料ガス流路41aが形成され、アノード2aに供給される少なくとも水素を含む燃料ガスは、燃料ガス入口マニホールド42aから供給され、燃料ガス流路41aを流通して、燃料ガス出口マニホールド43aへ排出される。
【0048】
そして、燃料ガスを外部及び別流体の流通路にリークさせないために、燃料電池3のアノード2aの外側の部分に当接してシールするようにゴム状の弾性体などからなるアノード側ガスケット5aが配置されている。
【0049】
一方、カソード側セパレータ4bには、アノード2aの燃料ガス流路41aに対向するように同様のサーペンタイン状の酸化剤ガス流路41bが形成され、カソード2bに供給される少なくとも酸素を含む酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口マニホールド42bから供給され、酸化剤ガス流路41bを流通して、酸化剤ガス出口マニホールド43bへ排出される。
【0050】
そして、酸化剤ガスを外部及び別流体の流通路にリークさせないために、燃料電池3のカソード2bの外側の部分に当接してシールするようにゴム状の弾性体などからなるカソード側ガスケット5bがアノード側ガスケット5aに対向するように配置されている。
【0051】
なお、燃料ガス流路41a及び酸化剤ガス流路41bの流路パターンは図示した並行する対向流に限定されるものではなく、他の流路パターンでもよい。
【0052】
そして、カソード側セパレータ4bの燃料電池3側面の反対の面には、燃料電池3を冷却するための冷却流体を供給、排出する燃料電池冷却流体流路6を形成した。
【0053】
図2(c)にカソード側セパレータ4bの燃料電池冷却流体流路6を形成した面の平面
図を示す。
【0054】
冷却流体は、燃料電池冷却流体流路入口マニホールド61から供給され、サーペンタイン状の燃料電池冷却流体流路6を流通して、燃料電池3で発生した熱と熱交換しながら高温になって燃料電池冷却流体流路出口マニホールド62から排出される。
【0055】
さらに、燃料電池冷却流体流路6の上流の一部には、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4bを介して対面するアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bを間接的に冷却するガスケット冷却流体流路8が設けられており、熱交換する前の温度の低い状態の冷却流体が、先にガスケット冷却流体流路8を流通して、間接的にアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bを冷却した後、再び燃料電池冷却流体流路6の上流に戻り、燃料電池冷却流体流路6を流通して、燃料電池3で発生した熱と熱交換しながら高温になって燃料電池冷却流体流路出口マニホールド62から排出される構成とした。
【0056】
そして、冷却流体を外部及び別流体の流通路にリークさせないために、燃料電池冷却流体流路6及びガスケット冷却流体流路8の外周をシールするために、ゴム状の弾性体からなる燃料電池冷却流体ガスケット7を配置した。
【0057】
この構成により、ガスケット冷却流体流路8をアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bに近接してコンパクトに配置することができ、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bを効率的に冷却することができる。
【0058】
なお、燃料電池冷却流体流路6及びガスケット冷却流体流路8は、アノード側セパレータ4aの燃料電池3側の反対の面に形成してもよく、また、単独で燃料電池冷却流体流路6及びガスケット冷却流体流路8を形成したセパレータを別途設けてもよい。
【0059】
そして、上記構成の燃料電池3と各セパレータ4a及び4bからなるセルを複数積層し、両端に電流を取り出すために集電体9及び端板10を配置し、締結してスタックを構成した。スタックの周囲には外部への放熱を防止して排熱回収効率を高めるため、断熱材11を配置した。
【0060】
そして、冷却流体を溜める冷却流体タンク12と、冷却流体を任意の流量で供給する冷却流体ポンプ13と、燃料電池3で発生する熱と熱交換して高温になった冷却流体とさらに熱交換してお湯を作る熱交換器14を図1のように配置した。
【0061】
そして、アノード2a側に水素を含む燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段15と、カソード2b側に大気中の酸素を含む酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段16を接続した。
【0062】
ここで、燃料ガス供給手段15は、都市ガスなどの原料ガスから触媒毒である硫黄化合物を除去する脱硫器151と、燃料ガスの流量を制御する燃料ガス供給手段152と、都市ガスを改質して水素を生成する燃料処理器153を備える。
【0063】
さらに、燃料処理器153は、少なくとも改質部と、一酸化炭素変成部と、一酸化炭素除去部とで構成される。
【0064】
ここで、例えば原料ガスにメタンを用いた場合、改質部では、水蒸気を伴って(化1)及び(化2)に示した反応が起こり、水素が発生する。
【0065】
【化1】

【0066】
【化2】

【0067】
なお、改質部で起こる全反応をまとめると(化3)に示す反応が行われる。
【0068】
【化3】

【0069】
しかし、改質部で生成した改質ガス中には水素以外に10%程度の一酸化炭素が含まれている。そして、一酸化炭素は、燃料電池3の運転温度域においてアノード2aに含まれる白金触媒を被毒して、その触媒活性を低下させる。そこで、改質部で発生した一酸化炭素を、一酸化炭素変成部で(化2)の反応式に示すように、一酸化炭素を二酸化炭素に変成する。これにより、一酸化炭素の濃度が約5000ppmまで減少する。
【0070】
さらに、濃度が低減した一酸化炭素を、一酸化炭素除去部で(化4)で示す反応により、大気中などから取り込んだ酸素で選択的に酸化する。これにより、アノード2aの白金触媒の触媒活性の低下を抑制できる約10ppm以下までに一酸化炭素の濃度が減少する。
【0071】
【化4】

【0072】
また、発電中にアノード2aに空気を供給するエアブリード手段を設けて、燃料処理器153で生成した燃料ガスに1〜2%程度の空気を混合した。これにより、わずかに残る一酸化炭素の影響をさらに軽減させた。
【0073】
なお、燃料ガス供給手段15は、上記水蒸気改質法に限られず、オートサーマル法などの水素生成方法でもよい。また、燃料ガスに含まれる一酸化炭素濃度が低い場合はエアブリード手段を省略してもよい。
【0074】
次に、酸化剤ガス供給手段16について、具体的に説明する。酸化剤ガス供給手段16は、酸化剤ガスを取り込んで流量を制御する酸化剤ガス流量制御手段であるブロワ161と、酸化剤ガス中の不純物を除去する不純物除去手段162と、酸化剤ガスを加湿する加湿器163で構成される。
【0075】
ここで、酸化剤ガスとは、少なくとも酸素を含む(あるいは酸素を供給することのできる)ガスの総称であり、例えば大気(空気)が利用される。
【0076】
そして、スタックのアノード2a及びカソード2bの出口に、それぞれ、燃料ガス流路41aに存在する燃料ガスの圧力を調整するアノード側圧力調整弁17aと、酸化剤ガス流路41bに存在する酸化剤ガスの圧力を調整するカソード側圧力調整弁17bを配置して、アノード2a及びカソード2bの内部圧力をそれぞれ制御できるようにした。
【0077】
そして、燃料電池冷却流体流路6及びガスケット冷却流体流路8に流れる冷却流体の流量と、アノード2aに供給する燃料ガスの流量と、カソード2bに供給する酸化剤ガスの流量と、発電量と、アノード2a及びカソード2bの内部圧力を制御して、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面の近傍に生成される凝縮水の量を調整する凝縮水制御手段を設けた。
【0078】
そして、燃料電池3に接続する負荷を制御する負荷制御手段を設け、発電量を制御できるようにした。
【0079】
次に、上記構成の燃料電池発電システムの動作について、具体的に説明する。
【0080】
まず、アノード2aに燃料ガス、カソード2bに酸化剤ガスを供給して、負荷制御手段を制御して燃料電池3に負荷を接続すると、燃料ガス中の水素は反応式(化5)で示すようにアノード2aの触媒層と電解質1の界面で電子を放出して水素イオンとなる。
【0081】
【化5】

【0082】
そして、放出された水素イオンは、電解質1を通ってカソード2bへと移動し、カソード2bの触媒層と電解質1の界面で電子を受け取る。このとき、カソード2bに供給された酸化剤ガス中の酸素と反応して、反応式(化6)で示すように水を生成する。
【0083】
【化6】

【0084】
上記反応をまとめると(化7)に示す反応が行われる。
【0085】
【化7】

【0086】
そして、負荷を流れる電子の流れを直流の電気エネルギーとして利用できる。また、上記一連の反応は発熱反応であるため、燃料電池3で発生した熱を、燃料電池冷却流体流路6から供給される冷却流体により熱交換して回収することにより、お湯などの熱エネルギーとして利用することができる。
【0087】
冷却流体タンク12に溜まった冷却流体は冷却流体ポンプ13により、まずガスケット冷却流体流路8に供給され、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bを間接的に冷却した後、次いで、燃料電池冷却流体流路6に供給され、燃料電池3で発生した熱と熱交換してスタックから排出され、熱交換器14に供給され、水と熱交換され、再び温度を低下させた後、冷却流体タンク12に戻り、循環する構成になっている。
【0088】
ところで、上記構成の燃料電池発電システムに使用されている部材には、金属材料や樹脂材料といった様々な材料が用いられているが、これらの部材から発生する不純物が燃料電池3の発電反応を阻害し、発電性能を低下させる場合がある。
【0089】
特に、燃料ガス及び酸化剤ガスをシールするために設けられるアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bは、電解質1や、アノード2a及びカソード2b、あるいは燃料ガス及び酸化剤ガスに対して、直接接触する機会が多いので、発電性能に与える影響が大きい。
【0090】
アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bには、弾力性などの機能を持たせるために可塑剤などの添加剤が配合されている場合が多く、圧縮されたり、高温や水蒸気に曝されたりすることにより、これらの添加剤が滲み出たり、溶出したりする場合があり、アノード2a及びカソード2bに対して不純物となることがある。
【0091】
予め不純物をあまり含まない材料を採用したり、洗浄、エージングなどの工程で不純物を除去したり、不純物の影響を小さくすることは可能であるが、量産性が低下したり、コストが増加したりするという課題があった。
【0092】
本発明の実施の形態1の燃料電池発電システムによれば、アノード2a及びカソード2bには、それぞれ水蒸気を含む燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されており、ガスケット冷却流体流路8に流れる温度の低い状態の冷却流体が、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bを間接的に冷却することにより、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面の近傍で、燃料ガス及び酸化剤ガス中に含まれる水蒸気を冷却して凝縮水を生成し、その凝縮水がアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bから発生する不純物を洗い流して除去するので、発電に対する不純物の影響を緩和することができる。
【0093】
さらに、凝縮水を生成する箇所がアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面の近傍のみに限られるため、主に発電に寄与する電極面内にフラッディングさせるような余剰水分が生成せず、発電性能に優れた燃料電池発電システムを得ることができる。
【0094】
また、発電開始時、または、発電停止時に凝縮水を生成する操作を行うことにより、凝縮水によるフラッディングが起こりやすい状況になっても、発電への影響を最小限に抑えるので、高い発電効率を維持することができる。
【0095】
次に、本発明の実施の形態1の燃料電池発電システムを用いて、凝縮水制御手段が発電停止時、及び発電開始時に、一旦発電量を増加させて、凝縮水量を増加させて、不純物を除去するときの、具体的な動作について、図3(a)及び(b)のフローチャートを用いて説明する。
【0096】
まず、図3(a)のフローチャートにおいて、凝縮水制御手段の発電停止時の動作について説明する。
【0097】
燃料電池発電システムに発電停止の信号が入力される(ステップ101)と、凝縮水制御手段がガスケット冷却流体流路8に流れる冷却流体の流量を増加し(ステップ102)、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bを間接的に冷却する冷却流体の冷却能力を増加する。
【0098】
これにより、発電停止直前のアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの温度が速やかに低下し、より短い時間でアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面で凝縮する凝縮水量が増加し、より多くの不純物を除去することができる。
【0099】
次に、凝縮水制御手段が、反応ガス流量一定のまま、一時的に発電量のみを増加して(ステップ103)、所定の時間が経過したら(ステップ104)、発電量を減少する(ステップ105)。
【0100】
一時的に発電量を増加することにより、反応ガスが反応して生成する生成水量が増加して、発電停止直前に反応ガス中に含まれる水蒸気量を増加することができ、アノード側ガスケット5aあるいはカソード側ガスケット5bの内周面の近傍に凝縮する凝縮水量を増加することができる。また、その後で、発電量を減少して、発電停止前に、生成水量を減少するので、電極面に余剰水分が蓄積することを抑制することができる。
【0101】
次に、負荷制御手段が、負荷を切り離し、燃料電池3を開回路状態にして(ステップ106)、所定時間経過後に(ステップ107)、燃料ガス及び酸化剤ガスを停止して(ステップ108)、燃料電池発電システムを停止する。
【0102】
燃料電池3を開回路状態にすることにより、カソード2bの電位が1V付近まで上昇し、カソード側のガスケット5bの内周面の近傍にある不純物が酸化され、除去されやすくなり、被毒されていたカソード2bの触媒活性を回復することができる。
【0103】
アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面で凝縮した凝縮水に溶解したアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bから発生した不純物は、次の発電開始時に供給される燃料ガス及び酸化剤ガスにより、凝縮水とともにスタックの外部へ排出される。
【0104】
そして、不純物を含む燃料ガス及び酸化剤ガスのオフガスはそれぞれ熱交換された後、冷却されて、不純物を含む水分が凝縮して分離される。
【0105】
不純物を含む水分は、一旦凝縮水タンクなどに溜められ、その後、活性炭やイオン交換
樹脂などから成るフィルターを通過して、再び改質水や加湿水として利用することができる。そして、不純物はフィルターに吸着除去される。
【0106】
次に、発電開始時のフローチャートを図3の(b)を用いて説明する。
【0107】
まず、燃料電池発電システムに発電開始の信号が入力される(ステップ201)と、凝縮水制御手段がガスケット冷却手段のガスケット冷却流体流路8に発電中に流す流量より大きな流量で冷却流体を供給する(ステップ202)。
【0108】
発電中に流す流量より大きな流量を流すことにより、発電開始直前のアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面の温度を低く保持することができ、反応ガス中に含まれる水蒸気成分が来たときに、より多くの凝縮水を生成することができる。
【0109】
次に、アノード2aに水蒸気を含む燃料ガスと、カソード2bに加湿された酸化剤ガスを供給して(ステップ203)、所定の時間、負荷制御手段が、燃料電池3を開回路状態に保持する(ステップ204)。
【0110】
これにより、カソードの電位が1V付近まで上昇し、カソード側ガスケット5bの内周面の近傍にある不純物が酸化され、除去されやすくなり、被毒されていたカソード触媒活性を回復することができる。
【0111】
そして、凝縮水制御手段がガスケット冷却流体流路8に流れる冷却流体の流量を低減させ、発電中の燃料電池3の温度を所望の温度にする流量に減少させる(ステップ205)。
【0112】
そして、燃料ガス及び酸化剤ガスの流量を所望の流量に設定して、負荷制御手段が、所望の発電量となるように負荷を制御して、発電を開始する(ステップ206)。
【0113】
上記構成及び上記運転シーケンスを用いて効果の確認を行った。
【0114】
まず、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bから発生する不純物が燃料電池3に与える影響を確認するため、比較例として、燃料電池冷却流体流路6を形成した面にガスケット冷却手段のガスケット冷却流体流路8がないカソード側セパレータ4bを用いたスタックを作製し、発電試験を行った。
【0115】
ここで、アノード2aに70%の利用率で燃料ガスを供給した。この時の燃料ガスの露点は約65℃であった。また、カソード2bには利用率が50%、露点が65℃となるように酸化剤ガスを供給した。そして、電流が一定に流れるように負荷制御手段を制御し、アノード2a及びカソード2bの電極面積に対し電流密度が0.2A/cmとなるように制御した。また、燃料電池3を冷却する燃料電池冷却流体流路6及びガスケット冷却流体流路8に流す冷却流体は、燃料電池冷却流体流路入口マニホールド61の近傍で約55℃、燃料電池冷却流体流路出口マニホールド62の近傍で約70℃となるように冷却流体の流量を制御した。
【0116】
上記運転条件で発電をしている状態において、ガスケット冷却流体流路8には、燃料電池冷却流体流路入口マニホールド61に近い温度の冷却流体が流通するが、熱交換した後の冷却流体が流れる燃料電池冷却流体流路出口マニホールド62の近傍を通るガスケット冷却流体流路8の冷却流体の温度はわずかに上昇していた。
【0117】
そして、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4bを介して、アノード
側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bを冷却している。
【0118】
一方、アノード2aには65℃の露点の燃料ガスが供給されているので、冷却されているアノード側ガスケット5aの内周面の近傍で、燃料ガス中に含まれる水蒸気成分が冷やされ凝縮して凝縮水が生成される。
【0119】
また、同様にカソード2bには65℃の露点の酸化剤ガスが供給されているので、冷却されているカソード側ガスケット5bの内周面の近傍で、酸化剤ガス中に含まれる水蒸気成分が冷やされて凝縮して凝縮水が生成される。
【0120】
そして、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面の近傍で凝縮した凝縮水にアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bから発生した不純物が溶出して溶け込む。
【0121】
次に、発電を停止するために凝縮水制御手段を制御して、冷却流体の流量を増加すると、燃料電池冷却流体流路出口マニホールド62の近傍の温度が約60℃まで低下した。
【0122】
これに伴い、ガスケット冷却流体流路8を流れる冷却流体の温度が燃料電池冷却流体流路入口マニホールド61の温度にさらに近くなり、ガスケット冷却流体流路8を流れる冷却流体全体の温度が低下し、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの温度をさらに低下させた。
【0123】
これにより、発電停止直前のアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面の凝縮水量が増加し、溶解した不純物とともに、それぞれ燃料ガス流路41a及び酸化剤ガス流路41bを通って、燃料電池3の外部へと排出される。
【0124】
そして、凝縮水制御手段が、一時的に発電量を0.3A/cmまで増加させ、所定の時間が経過した後、発電量を0.06A/cmまで減少させた。
【0125】
その後、負荷制御手段が、負荷を切り離し、燃料電池3を所定の時間、開回路状態にした。このときの単電池の電池電圧は約1Vであった。
【0126】
そして最後に、燃料ガス及び酸化剤ガスおよび冷却流体の供給を停止して、燃料電池発電システムを停止した。
【0127】
次に、燃料電池発電システムの発電を開始するために、凝縮水制御手段に発電開始の信号を入力した。
【0128】
ガスケット冷却流体流路8及び燃料電池冷却流体流路6には停止直前に流した時と同じ発電中よりも多い流量で、冷却流体が供給された。
【0129】
次に、アノード2aに水蒸気を含む燃料ガスと、カソード2bに加湿された酸化剤ガスを供給し、所定の時間、負荷制御手段が、燃料電池3を開回路状態に保持した。
【0130】
そして、凝縮水制御手段がガスケット冷却流体流路8に流れる冷却流体の流量を低減させ、発電中の燃料電池3の温度を所望の温度にする流量に減少し、燃料ガス及び酸化剤ガスの流量を所望の流量に設定して、負荷制御手段が、所望の発電量となるように負荷を制御して、発電を開始した。
【0131】
そして、定期的にこの発電と停止を繰り返して、電池電圧の傾き(劣化率)を調べた。
図4に単電池当りの電池電圧の経時的変化を示す。細点線が比較例の電池電圧の挙動を示している。白丸と細実線はその発電開始後一定時間経過後における電池電圧値の変化を示している。図4より、比較例の電池電圧は劣化率が大きく、経過時間とともに電池電圧が低下していることが判った。
【0132】
次に、本発明の実施の形態1の燃料電池発電システムを用いて、同様の運転条件で定期的に発電と停止を繰り返す発電試験を行い、劣化率について調べた。試験結果を同じく図4に示す。太点線が本発明の実施の形態1の電池電圧の挙動を示している。発電開始時に一定時間(1〜30秒程度)、燃料電池3を開回路状態にしているため、カソード2bの電位にほぼ等しい電池電圧が1V付近まで上昇していることが判る。また、発電停止直前に、所定の時間、発電量を増加して、その後発電量を低下して、再び一定時間、開回路状態にしているため、電池電圧は図4に示したように発電停止直前で一旦下がった後、段階的に上昇していることが判る。
【0133】
本発明の実施の形態1の燃料電池発電システムの構成と、運転シーケンスによれば、電池電圧はほぼ一定に推移し、電池電圧がほとんど低下しないことが判った。
【0134】
また、比較例のガスケット冷却手段を持たないアノード側セパレータおよびカソード側セパレータを用いて同様に構成した燃料電池発電システムを用いて、本発明の実施の形態1の運転シーケンスで運転した場合、電池電圧の劣化率の改善は見られたものの、発電中に電池電圧が振動したり、不定期に一時的な電圧低下が発生したりするフラッディング現象が見られ、不安定な発電状態になっていた。
【0135】
したがって、本発明によれば、触媒活性を低下させる不純物を除去することができ、発電効率及び耐久性に優れた燃料電池発電システムを実現できる。
【0136】
また、不純物を多く含むアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面の近傍のみに凝縮水を生成し、主に発電に寄与するアノード2a及びカソード2bの電極面内の中央部分には凝縮水を生成しないので、凝縮水によるフラッディング及びそれによる電圧降下を防ぐことができる。
【0137】
また、発電開始時、または、発電停止時に凝縮水を生成することにより、凝縮水によるフラッディングが起こりやすい状況になっても、発電への影響が最小限に抑えられ、高い発電効率を維持することができる。
【0138】
また、多少の不純物が出る部材を用いても、これを除去することができるので、システムの低コスト化を図ることができる。
【0139】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の燃料電池発電システムは、凝縮水制御手段が、発電開始時、または、発電停止時に、燃料ガスと、酸化剤ガスの内少なくともどちらかのガス流量を増加させて、含まれる水蒸気成分の絶対量を増加することで凝縮水量を増加させる点で、実施の形態1とは異なる。
【0140】
なお、凝縮水制御手段の制御以外の構成要素は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0141】
図5(a)及び(b)に本発明の実施の形態2の燃料電池発電システムのそれぞれ発電停止時及び発電開始時のフローチャートを示す。
【0142】
まず、燃料電池発電システムに発電停止の信号が入力される(ステップ301)と、凝縮水制御手段が、ガスケット冷却流体流路8に流れる冷却流体の流量を増加させ(ステップ302)、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bを間接的に冷却する。
【0143】
次に、凝縮水制御手段が、発電量一定のまま、一時的に燃料ガス流量または酸化剤ガス流量を増加して(ステップ303)、所定の時間が経過したら(ステップ304)、燃料ガス流量または酸化剤ガス流量を減少する(ステップ305)。
【0144】
一時的に燃料ガス流量または酸化剤ガス流量を増加することにより、含まれる水蒸気成分の絶対量が増加して、発電停止直前に反応ガス中に含まれる水蒸気量を増加することができ、アノード側ガスケット5aあるいはカソード側ガスケット5bの内周面の近傍に凝縮する凝縮水量を増加することができる。また、その後で、燃料ガス流量または酸化剤ガス流量を減少して、発電停止前に、水蒸気量を減少するので、電極面に余剰水分が蓄積することを抑制することができる。
【0145】
また、燃料ガスおよび酸化剤ガスの量を減少させることにより、発電に寄与しない開回路状態における燃料ガスおよび酸化剤ガスの消費量を減少させるので、総合効率を高く維持することができる。
【0146】
次に、負荷制御手段が、負荷を切り離し、燃料電池3を開回路状態にして(ステップ306)、所定時間経過後に(ステップ307)、燃料ガス及び酸化剤ガスを停止して(ステップ308)、燃料電池発電システムを停止する。
【0147】
燃料電池3を開回路状態にすることにより、カソード2bの電位が1V付近まで上昇し、カソード側のガスケット5bの内周面の近傍にある不純物が酸化され、除去されやすくなり、被毒されていたカソード2bの触媒活性を回復することができる。
【0148】
次に、発電開始時のフローチャートを図5の(b)を用いて説明する。
【0149】
まず、燃料電池発電システムに発電開始の信号が入力される(ステップ401)と、凝縮水制御手段がガスケット冷却手段のガスケット冷却流体流路8に発電中に流す流量より大きな流量で冷却流体を供給する(ステップ402)。
【0150】
発電中に流す流量より大きな流量を流すことにより、発電開始直前のアノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面の温度を低く保持することができ、反応ガス中に含まれる水蒸気成分が来たときに、より多くの凝縮水を生成することができる。
【0151】
次に、アノード2aに水蒸気を含む燃料ガスと、カソード2bに加湿された酸化剤ガスを供給して(ステップ403)、所定の時間、負荷制御手段が、燃料電池3を開回路状態に保持する(ステップ404)。
【0152】
これにより、カソードの電位が1V付近まで上昇し、カソード側ガスケット5bの内周面の近傍にある不純物が酸化され、除去されやすくなり、被毒されていたカソード触媒活性を回復することができる。
【0153】
そして、凝縮水制御手段がガスケット冷却流体流路8に流れる冷却流体の流量を低減させ、発電中の燃料電池3の温度を所望の温度にする流量に減少させる(ステップ405)。
【0154】
そして、燃料ガス及び酸化剤ガスの流量を所望の流量に設定して、負荷制御手段が、所望の発電量となるように負荷を制御して、発電を開始する(ステップ406)。
【0155】
上記運転シーケンスで燃料電池発電システムを動作させたところ、実施の形態1と同様の効果を示し、アノード2a及びカソード2bの内部圧力を上昇させるだけでも、凝縮水の量が増え、不純物に対する影響が緩和することが判った。
【0156】
また、実施の形態1の動作と組み合わせて、燃料ガスあるいは酸化剤ガスの流量を増加させるタイミングで、発電量を増加させることにより、さらに、アノード側ガスケット5aあるいはカソード側ガスケット5bの内周面の近傍に凝縮する凝縮水量を増加することができ、より不純物を多く除去することができる。
【0157】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3の燃料電池発電システムは、凝縮水制御手段が、発電開始時、または、発電停止時に、アノード側圧力調整弁17a及びカソード側圧力調整弁17bを用いて、アノード2a及びカソード2bの内部圧力を調整する点で、実施の形態1とは異なる。
【0158】
なお、凝縮水制御手段の制御以外の構成要素は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0159】
図6(a)及び(b)に本発明の実施の形態2の燃料電池発電システムのそれぞれ発電停止時及び発電開始時のフローチャートを示す。
【0160】
まず、燃料電池発電システムに発電停止の信号が入力される(ステップ501)と、凝縮水制御手段が、ガスケット冷却流体流路8に流れる冷却流体の流量を増加させ(ステップ502)、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bを間接的に冷却する。
【0161】
次に、凝縮水制御手段が、アノード2a及びカソード2bの内部圧力を増加させるようにそれぞれアノード側圧力調整弁17a及びカソード側圧力調整弁17bの開度を絞って制御して内部の圧力を上昇させる(ステップ503)。
【0162】
これにより、発電停止直前の水蒸気分圧が増え、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面の凝縮水量を増加させることができ、より多くの不純物を除去することができる。
【0163】
そして、所定の時間が経過したら(ステップ504)、負荷制御手段が負荷を切り離し、燃料電池3を開回路状態にして(ステップ505)、所定時間経過後に(ステップ506)、燃料ガス及び酸化剤ガスを停止して(ステップ507)、燃料電池発電システムを停止する。
【0164】
次に、発電開始時のフローチャートを図6(b)に示す。
【0165】
まず、燃料電池発電システムの発電開始の信号が入力される(ステップ601)と、凝縮水制御手段がガスケット冷却流体流路8に発電中より大きな流量で冷却流体を供給する(ステップ602)。
【0166】
次に、アノード2aに水蒸気を含む燃料ガスと、カソード2bに加湿された酸化剤ガスを供給して、所定の時間、負荷制御手段が燃料電池3を開回路状態に保持する(ステップ
603)。
【0167】
さらに、再度凝縮水制御手段が、アノード2a及びカソード2bの内部圧力を増加させるようにそれぞれアノード側圧力調整弁17a及びカソード側圧力調整弁17bの開度を絞って制御して内部圧力を上昇させる(ステップ604)。
【0168】
これにより、発電開始直前の水蒸気分圧が増え、アノード側ガスケット5a及びカソード側ガスケット5bの内周面の凝縮水量を増加させることができ、より多くの不純物を除去することができる。
【0169】
そして、所定の時間が経過したら(ステップ605)、凝縮水制御手段が、アノード側圧力調整弁17a及びカソード側圧力調整弁17bの開度を元に戻し、アノード2a及びカソード2bの内部の圧力を通常の発電するときの圧力に戻す(ステップ606)。
【0170】
そして、凝縮水制御手段がガスケット冷却流体流路8に流れる冷却流体の流量を低減させ、燃料電池冷却流体流路6に供給し、発電中の燃料電池3の温度を所望の温度にする(ステップ607)。
【0171】
そして、燃料ガス及び酸化剤ガスの流量を所望の流量に設定して、所望の発電量で発電を開始する(ステップ608)。
【0172】
上記運転シーケンスで燃料電池発電システムを動作させたところ、実施の形態1と同様の効果を示し、アノード2a及びカソード2bの内部圧力を上昇させるだけでも、凝縮水の量が増え、不純物に対する影響が緩和することが判った。
【0173】
また、実施の形態1と、2の内少なくとも一つの動作と組み合わせて、燃料ガスあるいは酸化剤ガスの内部圧力を増加させるタイミングで、発電量や反応ガス流量を増加させることにより、さらに、アノード側ガスケット5aあるいはカソード側ガスケット5bの内周面の近傍に凝縮する凝縮水量を増加することができ、より不純物を多く除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明の燃料電池発電システムは、不純物に影響を受けにくく、発電効率の向上が要望される、高分子型固体電解質を用いた燃料電池、燃料電池デバイス、定置用燃料電池コジェネレーションシステムに有用である。
【符号の説明】
【0175】
1 電解質
2a アノード
2b カソード
3 燃料電池
4a アノード側セパレータ
4b カソード側セパレータ
5a アノード側ガスケット
5b カソード側ガスケット
6 燃料電津冷却流体流路
8 ガスケット冷却流体流路
17a アノード側圧力調整弁
17b カソード側圧力調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の両面にアノード及びカソードが配置された燃料電池と、前記燃料電池を挟んで互いに対向するように配置したアノード側セパレータ及びカソード側セパレータと、前記アノード側セパレータに設けられており前記アノードに反応ガスとしての燃料ガスを供給、排出するための燃料ガス流路と、前記カソード側セパレータに設けられており前記カソードに反応ガスとしての酸化剤ガスを供給、排出するための酸化剤ガス流路と、前記アノード側セパレータの前記燃料電池側の面内の前記アノードの外側の部分に配置されて前記燃料電池に当接し前記燃料ガスをシールするためのアノード側ガスケットと、前記カソード側セパレータの前記燃料電池側の面内の前記カソードの外側の部分に前記アノード側ガスケットに対向するように配置されて前記燃料電池に当接し前記酸化剤ガスをシールするためのカソード側ガスケットと、前記燃料電池を冷却するための冷却流体を供給、排出するための燃料電池冷却流体流路と、前記燃料電池冷却流体流路の上流から分岐され、前記アノード側ガスケットと前記カソード側ガスケットの内の少なくとも一方を冷却するように配置されたガスケット冷却流体流路と、発電開始時と発電停止時の内の少なくとも一方で前記アノード側ガスケットと前記カソード側ガスケットの内の少なくとも一方の内周面で前記燃料ガスあるいは前記酸化剤ガスに含まれる水蒸気成分を凝縮させる凝縮水制御手段とを備えた燃料電池発電システム。
【請求項2】
前記凝縮水制御手段は、前記ガスケット冷却流体流路を流れる前記冷却流体の流量を増加して、前記水蒸気成分の凝縮能力を増加させる請求項1記載の燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記凝縮水制御手段は、前記燃料電池の発電量を増加して、前記水蒸気成分の凝縮能力を増加させる請求項1記載の燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記凝縮水制御手段は、前記燃料ガスまたは前記酸化剤ガスの内の少なくとも一方の流量を増加させて、前記水蒸気成分の凝縮能力を増加させる請求項1記載の燃料電池発電システム。
【請求項5】
前記燃料ガス流路に存在する燃料ガスの圧力を調整するアノード側圧力調整弁と、前記酸化剤ガス流路に存在する酸化剤ガスの圧力を調整するカソード側圧力調整弁とを備え、前記凝縮水制御手段は、前記アノード側圧力調整弁及び前記カソード側圧力調整弁を制御して、前記アノードと前記カソードの内の少なくとも一方の内部圧力を増加して、前記水蒸気成分の凝縮能力を増加させる請求項1記載の燃料電池発電システム。
【請求項6】
発電開始時、または、発電停止時、所定の時間、前記燃料電池の負荷を切り離して、開回路状態にする請求項1記載の燃料電池発電システム。
【請求項7】
発電停止時、前記燃料電池の負荷を一旦低負荷状態にしてから、開回路状態にする請求項1または6記載の燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−267563(P2010−267563A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119532(P2009−119532)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】